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シナリオ詳細

発達した神聖経済学論理は不正義と見分けがつかない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●資本論考
 富が必ずしも不正義であるとは言い切れぬものの、過ぎたる富は不正義たりえよう。
 では、どれほどの富が人を不正義たらしめるかと問われれば、『天義』──聖教国ネメシスの知識人たちもしばし答えに窮し、かく答えざるを得ぬに違いない……すなわち、「その富にていかに神に献身するかによる」と。同じ財産を持つ者たちであったとしても、強欲商人と大司祭を比べれば、前者のみが不正義とされるのが“神の御心”に叶うとされるのだ。

 さてここで、ひとりの司祭が人々の間の富の不均衡を嘆いたとしよう。人々の営みは往々にして神の御心に反し、富むべき者の下から富を奪い、そうでない者の下へと集わせる。
 が……これをあるべき形に再分配しようにも、いかにして人の身で神の御心を推し測れよう? 否。ただ神の御業を受け取りし時のみ、その思し召しを知りうるのである。
 そこで司祭は思い立ったのだった。富の再分配を願う者たちが喜捨を行ない、それを神が望みたもうた者へと分け与える……これこそ神の御心に叶うに違いあるまい、と。無論、証券を発行する手間を考えたなら、集めた喜捨を残らず再分配資金とするわけにはゆかないが、この画期的富の再分配システムを維持するために司祭が幾ばくかの手数料を取ることくらいは、神もお認めになる範囲と言える──。

●ローレットにて
「──なんて戯言、通るわけなどございませんわ!!」
 憤慨した様子の『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)は、力一杯拳をテーブルに叩きつけながら天義から届いたばかりの依頼書の内容をまくし立ててみせた。
 標的は、ロットーなる背教者の男。彼は司祭という地位にありながらギャンブルの胴元を始め、民の財産を巻き上げた大罪人である、と依頼書には記されている。しかもどうやらその“副業”によって蓄えた潤沢な資金を使って、神殿騎士らも買収してしまったようだ、と依頼書には続く……そんな中でロットーを断罪できるのは、残念ながらローレットしかいないのだ。

「添えられていた情報によればロットーは、教会地下には秘密のアジトがあって──ああ穢らわしい──聖なる神のお膝元で富くじを生産しているらしいですわ!」
 羊皮紙を捲ったテレジアによれば、教会地下アジトを守る神殿騎士は10名ほど。彼らは堕ちた司祭オットーを護衛するだけでは飽き足らず、自らもくじの生産に手を染めているらしい!
 しかも彼らはくじの作りすぎでちょっと頭がおかしくなってしまったので、彼らは常に五分五分の確率でしか敗北しなくなってしまった……すなわちEXFちょうど50だ。

 遠慮なく完膚なきまでに叩きのめして下さいまし、と語るテレジアの眼差しは、やけに憎悪に満ち満ちていたように見えた。
 そんな彼女は依頼の説明をひと通り終えた後、手の中にこっそりと握っていた小さな紙片の束を力一杯ゴミ箱に叩き込んでいたのだが……その様子を、君たちは目撃していてもいいししていなくてもいい。

GMコメント

 おお、神は正しき運命をテレジアにお与えたもうた!

●神殿騎士×10
 依頼人であるロットーの町の領主は彼らがロットーに買収されたと考えていますが、実際にはそれまで信心深すぎてギャンブルというものに縁がなかったせいで耐性がなく、ころっとロットーの主張に感化されちゃった人たちのようです。哀れですがぶん殴ってマトモな神殿の矯正施設にしばらくぶち込んでやるしか治療法はありません。
 大型の人力印刷機械や各種材料などでごっちゃになった地下室のあちこちで作業しているので、各個撃破とかしてやってください。なお室内には障害物がたくさんあるので、機動力とか射程とかは全然活かせないかもしれません。

●ロットー司祭
 今回の断罪対象。彼のくじは本当に必要経費+正当な賃金くらいしか中抜きしてないらしく、他国のものと比べれば極めて良心的なのですが、賭博であることは間違いないですし、何より上のほうの「賃金出してるんだから営利でアウトだろ派」とか「神殿騎士の私物化は許されない派」とか「神に祝福されたはずの私が当籤しなかったので詐欺だ派」とかが大変おかんむりみたいです。
 皆様が突入した後は、こそこそと神殿騎士の間を行き来して逃げ回ります。頼るべき神殿騎士が全員倒れてしまったら降参します。

  • 発達した神聖経済学論理は不正義と見分けがつかない完了
  • GM名るう
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月17日 20時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
鞍馬 征斗(p3p006903)
天京の志士
シュラ・シルバー(p3p007302)
魔眼破り
プラウラ・ブラウニー(p3p007475)
普通のソードマスター

リプレイ

●突入! 教会地下アジト!
「やぁやぁ、我こそは忍びの紅牙斬九郎! 神の名を騙り金銭を奪う不届き者め。お上に変わって拙者等が纏めて成敗してくれる!」
 そんな『必殺仕事忍』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の名乗りと同時、幾つかの声があちこちで上がった。
「反ロットー派に雇われた者たちであるな!? 彼奴ら、言論封殺とは卑劣な真似を!」
「その行ないこそが師の正しさの証明に他ならぬと、反ロットー派の者どもは自覚せよ!」
 印刷道具らしき謎の木板や棒を手に手に、顔を覗かせる聖騎士ら。憤怒する彼らはこれが信仰上の対立だと信じて疑わないらしいけど……正直彼らの論争相手の半分くらいは、宗教論争に見せかけた金の恨みなんじゃなーい? そんな気が『エアーコンバット』ティスル ティル(p3p006151)にはしてならないんだよね。
 この空の彼方へと問いかけてみる。
「ねーテレジアさーん? そのゴミ箱にぶち込んだ紙はなーに?」
 だが自業自得なシスター・テレジアはともかくとして、依頼人たちに関しては何も言わぬが花だろう、と『夢終わらせる者』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は口を噤んだのだった。いかに依頼人の論拠が胡散臭かったからといって、依頼自体が罠なのでない限りは目を瞑っておく、それがローレットの誇るハイ・ルールというやつだ……もっともそれはエクスマリアが哀れな目の前の騎士たちに多少の手心を加えてやる上で、何の障害にもならないんだけど。

 先の大事件から数ヶ月。折角の再出発を妨げる“不正義”にマリアは想いを馳せた。それは『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)によれば、彼女の祖国ローマの誇る、かのガイウス・ユリウス・カエサルでさえも用いた施策だというが……その彼女さえサクソンの血筋を示す紅毛を振り乱し、それで誰から痛い目に遭いたいのかしらと挑発してみせている。
 司祭が自ら賭け事の胴元を演じるなどは、今まさに瓦解の只中にある西ローマにおいてさえ、顔を顰められるべき所業であった。……なーんて話を聞いたなら、『大体普通の町娘』プラウラ・ブラウニー(p3p007475)的には突撃して成敗してやらないわけにはいかないよね!
「神の信仰者さんが乱数を売ってはいけません!!」
「これは神の御心を知るための聖務なり! 汝にその何が解るというのだぐわー!?」
 かつての記憶に滂沱の涙を流したプラウラの手には、どー考えてもこんな狭い空間では何の役にも立たないキャノン砲が抱えられていた。おのれ残念賞ばかりの商店街のくじ引きめ……そんな怒りをさり気なく篭めて、砲身でしこたま殴りつけたなら、目の前の聖騎士はいつの間にか動かなくなっている。
 けれども……彼女はまだ気付いていなかった。彼女の傍の物陰に、密かに別の聖騎士が忍び寄っていたことに。
「全ては神の御心のままに!」
 聖句とともに聖騎士が振り上げた棍棒もとい印刷機の軸! だが……それが振り下ろされるより早く、2人めの聖騎士の背中には、硬い感触が当てられていた。彼の一挙手一投足は、全て『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)の野生の感覚に捉えられていたために。
「悪いが、依頼とあらばどんなことでもやるのがローレットでな」
 背中に突き当てられた感触は、すぐさま数え切れぬほどの熱い衝撃へと変化する。もんどり打った聖騎士が同僚と同じ目に遭わされるのは、おそらく時間の問題だろう……手足と変わらぬジェイクの拳銃は、獲物を運任せで狙いなどしない。ならば自らの命運さえ運任せにする聖騎士に、どうして引導を渡さぬことがあるだろう?
 ロットー司祭、お逃げください……最後の力を振り絞って聖騎士がそう呼びかけたのならば、部屋の奥でひえっという情けない声が上がった後に、物陰をどたばたと移動してゆく物音が立った。
 だがそんな司祭が逃亡を果たすには、手近な騎士たちを牽制するルチアの脇を通り過ぎるのみならず、その先の『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)もどうにかしなければならぬ。
 まるで少女のように儚げに微笑んだ征斗。彼が白みを帯びた手首にそっとナイフを当てたなら、舞い散った鮮血が鞭と化して司祭を護衛していた騎士を縛める。辺りに積んであった聖印入りのくじ券の山が、そのとばっちりを受けて真っ赤に濡れる。
「賭博なんて遊びであるべきなんだろうけど……そういえばそういう場所だったね……」
 何事も正義に関連付けたがるが故に歯止めの効かない天義のお国柄というものに、征斗は顔を顰めるのだった。どれほどの理論武装をしていたところで、ギャンブルが身を滅ぼすことが変わるわけではなかろう。
 賭け事は誰かを救うこともあるかもしれないが、それ以上に不幸をもたらすものである。……などという一般論は『大剣メイド』シュラ・シルバー(p3p007302)もよくよく承知しているから、彼女はちょっぴり申し訳ないばかりなんだけどね。
「!? 貴様ら……我らに何の恨みが!?」
 その聖騎士が気付いた時には、自身の『髪で』歩いてきたマリアの全身が、彼に覆い被さらんとしていたところだった。
 神をも殺す御伽の力が、敬虔なる神の僕を蹂躙す。対する聖騎士は信仰に身を託し、辛うじて命運を繋ぎ止めていたところ……そこへと少しばかり視線を逸らしたシュラが、紅蓮色の大剣を叩き込んで沈黙させた。いやー、神は御心に適う者に富を集わせるという理論が本当ならば、彼女は神に感謝しなければならないのだけど。随分と稼がせて貰った夏の闇市漁りを思い出す……なのにこうして彼らを叩っ切ってやらねばならないことが、彼女が彼らに対して申し訳なく思う理由だ。
 まあすぐに吹っ切るけどね。というのもその頃には聖騎士たちも完全に状況を認識していて、物陰を利用したちゃんとクレバーな戦術に切り替えていたからだ。メイド服型重鎧を着込み巨剣を叩き込むことに特化したシュラにとっては、幾分面倒な状況だ……まあ、だったらその物陰を作るあれこれを、彼女はその怪力無双で無理矢理脇に除けてしまうまでなんだけど。
「反ロットー派は、卑怯な戦術も厭わぬか!?」
「これだから我が国は、魔種どもに国を乗っ取られかけるなどという失態を犯すのだ!」
 咲耶と対峙していた聖騎士たちが、堪らず文句を喚き散らした。けれども……ははは、所詮は彼らなどぎゃんぶる脳に染まった俗物騎士どもよ。そう思い込んでやったなら、咲耶は圧倒的な精神的優位を保ったままで彼らをあしらうことができる。金の恨みで金を貰って賭博の胴元を潰すとは因果な仕事だが、その仕事、この紅牙斬九郎咲耶が預かろう! 未来の闇市資金のたm……もとい無辜の人々のために!
 咲耶が小太刀で聖騎士の棒を払ったならば、体勢を崩した聖騎士の脇腹にティスルの拳がジャストミートした。
「ぐふっ……だが効かぬわー!」
 それでも聖騎士は必死に耐える……が、今度は彼の服の襟を、ティスルはむんずと掴み取る。
「反、省……してきなさーい!!」
 そのままバックドロップ気味に投げ飛ばしたならば、どんがらがっしゃーんという音の後、めきりというあまり聞きたくない音が響いた様子が、辺りの者たちには聞こえたことだろう。思わず物陰の誰かが捧げた祈りを、ティスルの人助けセンサーが逃すことなく感知する。何その使い方。助けを呼ぶのが敵でも感知するとか反則すぎない?
 そんなわけでロットー司祭は逃げ道を探してうろうろしているところを見つかってしまったわけだが、彼をより怯えさせる出来事が、さらに彼の身に降りかかるのだった。
「司祭は……どこに行くのかな……? 戦うのは不得手だし、命を取らなければいけない状況にはしたくないし……降参してくれるといいんだけど……」
 征斗のこの世界に来てからの能力――氷の華の結界が、細かな雪の片へと分かれて吹き荒れる。それは混沌肯定により往時ほどの規模は出せぬといえども、並ぶさまざまながらくたを気まぐれに凍らせて、司祭にいつ自分の番が回ってくるのかと怯えさせることくらいは造作もない。……もっとも、もしも彼が恐怖に打ち克てたのだとしても。
「残念。この先は通行止めよ」
 全ての道はローマに通じるのだとしても、そこにルチアが立つ限り、その道は遥かに遠いものとなることだろう。今、ひとりの聖騎士が危機の最中にある司祭を救うべく、果敢にも作業椅子を構えて突撃してきた。なるほど彼の大柄な体格からの一撃は、サクソンの血の割に小柄なルチアを容易く翻弄してみせんとす……しかしルチアの修めし神学は、偶然の産物などに頼ることなき、真の調和による活力を彼女に与えてくれる!
 よく耐えたもんだ。だったら……その後は荒事師たちの出番だ。
「後は俺たちに任せておきな」
 ルチアを斃しきれずに動きを止めた聖騎士の急所のすぐ傍を、ジェイクの弾丸が貫いていった。それを認めて口許を歪める聖騎士。
「ふ……神はそなたを見放したようだ」
 血走った瞳でジェイクに壮絶な笑みを浮かべた聖騎士は、弾丸が急所を外れた理由がジェイクの慈悲の賜物であったことには気付いておらぬのだろう……ああ、この聖騎士に慈悲に敏感な感受性さえあれば、その後プラウラに思いっきりフルボッコにされることもなかったろうに!
「おま、やめ……そのキャノンの使い方は、不正義で、あるぞ……」
 そんな抗議をしてみても、聖騎士が懲りずに起き上がり続ける限り、プラウラのキャノン砲もまた繰り返し彼を叩きのめすだけだった。その悲劇に終焉をもたらしたのは……シュラの紅蓮の大剣だ。こいつで5人め……嘯くジェイクの声を背景に、メイドは紅い微笑みを残りの聖騎士らに向ける。
 ……ぶるり。
「か、神よ! どうか我らをお救いください!」
 懇願しながら身を隠そうとするロットー司祭のすぐ目と鼻の先に、メイドは手近な石製の何かの道具を投げつけてみせた。
「そこですね! 逃がしませんよ! 申し訳ないのですが……私の剣は、容赦なく命を喰らうんですよ!」
 それで司祭はすっかり蒼白になってしまったというのに、彼を護るべき聖騎士たちのうち幾人かは、どうにも咲耶から目を離せないでいた。仕方ないよね、彼ら的に“不正義”な人たちばかりの中にただひとり正々堂々名乗りを上げる人なんかがいたら、生真面目さが仇となって今の状況になってるような聖騎士たちは、無視せずこちらも堂々と決闘を受けて立たなくちゃダメだって気になっちゃうよね。
 そんなわけで彼らは咲耶にばかり気を取られている間に、もはやわざとやってるんじゃって感じのワンパターンな負け方で、ティスルに投げ飛ばされて気を失っていった。今更これが正々堂々とすべき戦いじゃないなんて思い出してももう遅い。
「6人めー! 7人めー!」
 あっという間に残り3。それでも――倒れぬ限りは立ち向かってくる聖騎士たちが、一矢さえ報いられずに果てのたかと問われれば、決してそうではないと答えねばならないだろう。
 ……が。

 ルチアの歌声が辺りに響く。
 勝利の福音を伝える賛美歌が。
 けれどもそれらが“聖なるもの”たちを癒すことはなく――力を与えるのは特異運命座標らのみ。
 大きく吹雪いた征斗の結界は、静かなる休息が彼ら全てにもたらされるであろうことを物語る先触れであっただろうか? ルチアの聖歌がただただ響き続ける教会地下で、騎士たちは次々に命運を閉じてゆく。

 彼らとて一度は信じたものを奪われたくなくて、必死であったことは間違いないだろう。誓おう、彼らは、曲がりなりにも聖騎士であった……それがたとえ強運の結果であるのだとしても、マリアの神話殺しの力を受けて、自らの信念に従い耐え抜いたのだから。
 ……だとしても。
「マリアの一撃は、欲に眩んだ剣で払えるほど、軽くは、ない」
 重ねて放たれる人理の意志が、剣(羊皮紙を伸ばすための棒)ごと彼らを吹き飛ばす。ジェイクの、ティスルのカウントが、8、9、10と次々進む。
 そうだ――『10』だ。同志たる聖騎士たちを全て失ったロットー司祭は、観念したようにがっくりと膝をつき――。

●“神聖経済学”の崩壊
「これ以上、抵抗するつもりがないのなら、手荒に扱うようなことは、しない」
 そんなマリアの言葉に従って、司祭はポケットの中の鍵束を彼女に差し出した。
「わかりました……この後は、審問の場で全てをつまびらかにする所存です。この教会のどこであれ、お望みのままにお調べください……」
 その鍵束の中にはきっと、彼がこれまでに売り上げたくじの代金を保管する、金庫のものも含まれているに違いなかった。だとすれば……それをみょーに私怨っぽさも含まれていそうな依頼人たちにそのまま引き渡してしまって、ほんとーに問題ないんだろーか? ティスルは内心首を傾げるばかりだ。
 ……まあ、捕らえた彼らを引き渡すまでがお仕事なんだから、きっとその辺は考えなくたっていいんだろうけど。だとしてもロットーたちを縛るついでに、簡単な“調査”をしたりしておくくらいのサービスを追加しておいたって誰も文句は言わないだろう、たぶん。
「私なんて、当たって6等だったのに……」
 ぺらりとくじ券をめくって溜め息を吐いたなら、大変共感したようにプラウラがしきりに何度も頷いた。でも……くじに外れまくった悲しみは、どれほど聖騎士たちをしこたま殴りつけたところで癒されてくれるわけじゃない。だから……。
 ロットーに立ち合わせ、金庫の中を覗いたならば、中の金貨が悪しき者たちに悪用されないようとっとと回収してしまう。
「お互いが求めあって得をする商いをしましょうー! とりあえず没収ですー!」
 うん……そんなことしてもこの金貨の山を自分のものにできるわけでもないし、これまたただの八つ当たりにしかならないんだけどね!

 結局はこの事件の顛末は、どこの世界にもありそうな、ギャンブルを巡る騒動だったのだ。自身の血で汚れたくじ券を拾い上げながら、そう、征斗は結論付ける。
 富くじを買う者は、普通なら損を承知で買うものだ。ただ――この国には特有の歪みがあって、そこに変な思惑がぶち込まれたというだけで。
 もしもロットー司祭が聖職者ではなく、一介の市民であったなら――? ルチアは考える。決して、くじやギャンブルが悪いわけではないと。
「でもせめて、その祭服を脱いでからやるべきだったわ」
 そう司祭に説いたなら……けれども返ってくるのはこんな言葉だ!
「それはあんまりでしょう! どこぞの神殿では、寄進を募る目的でのくじを発行しているとさえ聞くのに、何故私の時ばかりは許されないのです……!」

 結論:このクソ国め!

 だが司祭の嘆きを聞いた瞬間咲耶の脳内に、ひとつのあいであが電撃的に走るのだった!
(つまり……この男、神殿公認のくじを上回る魅力のくじを作ったということでござるな……? その当籤確率の機微、今後の闇市巡りの参考にしたいでござ……)
 おおっとげふんげふん。なんだかジェイクが睨んでるような気がする。だけど本当は彼は出発前のテレジアへの尋問を思い出して険しい顔をしていただけで、別に咲耶の妄想を責めているわけじゃない。
(結局テレジアの奴、くじに幾ら注ぎ込んだのか口を割らねえままだった)
 せっかくこっそり負け分くらいは返金させてやろうかと気を遣ってやったというのに……あの女、さては他人様に言えない金額ぶち込みやがったな。二度と賭け事なんぞやらせちゃいけねえ。

 そんなテレジアが「完膚なきまでに叩きのめして」と言っていたのを憶えていたマリアが、出荷前のくじの山と生産設備まで完膚なきまでに破壊し尽したことで、ロットー司祭の斬新すぎる経済施策が今後ともこの天義で行なわれる可能性は潰えた。さて……今回の報酬が入ったら、早速闇市に出かけないとね! ……と、どきわく中の咲耶だったが――彼女は闇市楽しみさのあまり、あろうことかシュラに対して、夏の闇市の成果はどうだったのかと訊いてしまった。訊いてしまったのだ!
「グワーッ!?」
 そう悲鳴を上げたきり轟沈した咲耶の前で立てられたまま、遣りどころなく虚空を漂うシュラの3本の指。
 その戦果が意味するものは……欲しかったアーティファクト3コ入手、だったのだろうか? それともまさかのレリック3コ?
 だが……彼女は恥ずかしそうに俯いて、小声で何事か囁くのだった。
「……ええと……、……さ、30万、G、です……」
 それ……絶対にテレジアにバレちゃダメなやつだから、今後は絶対に誰にも言わないようにしようね!!!

成否

成功

MVP

如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き

状態異常

如月=紅牙=咲耶(p3p006128)[重傷]
夜砕き

あとがき

 さっき、ちょっと気になって偉い人に訊いてみたんだけどね、テレジアのぱんつ、これまでに21枚売れたんだって。
 一体その売り上げのうち何割が、ロットー司祭に渡ったのかな? 気になるな。

 ……わし、知ーらないっ。

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