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シナリオ詳細

魔法使いたちの祭典

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『マジシャンズ・カーニバル』
 鉄帝東部の町、アンガロン。古代遺物から読み出した魔術や深緑の超魔術。練達で開発された電脳魔術に海洋に伝わる海の魔法。世界中のありとあらゆる魔法使いたちが、この年、この月、この町へと集まってくる。
 それは9月に開催される『マジシャンズ・カーニバル』のためである。
「『マジシャンズ・カーニバル』は魔術師たちの祭典。
 より強く、より美しく、より熱く戦う魔術師こそが、このアンガロンでは誉れとなる。
 これは勝つことではなく……『戦うこと』を競う祭典だ」
 高級な紳士服を纏った黒人男性、ピリーズ・ラパエ。
 イレギュラーズたちを鉄帝アンガロンのカフェへ呼び出した依頼人であり――魔術闘技ギルド『セクターI』のギルド長であった。
 両目は青い宝石にかわり、視力はないようにみえるが、彼はギフト能力によってあなたの顔や姿を正確に視認できているようだった。
 ピリーズが静かに手を翳すと青いモンシロチョウが突如として群れを成し、風のように通り抜けていく。気づけばテーブルには高級そうなティーセットとカップケーキ。ピリーズはポットを手に取り、ひとりずつ紅茶を注いでいく。
「我々セクターIもこの大会に参加するつもりだ。
 それにあたって……ローレット諸君。君たちに『対戦相手』になってもらいたい」

 ピリーズが説明したように、マジシャンズ・カーニバルは戦いの勝敗を競う大会ではない。
 『戦う姿』を見せつけ、その芸術点によって競う大会なのだ。
 個人武力を愛好する鉄帝らしく、それでいてちょっと風変わりな催しである。
 ピリーズは大会の概要を説明すると、次に大会参加メンバーのリストを提示した。
「我々が望むのは、このメンバーと『いい勝負』をすることだ。
 派手であるほどよい。美しいほどよい。強くたくましいほどよい。
 見る者を魅了し、虜にするのだ。
 むろん、どちらが勝っても問題ない」
 出場メンバーは以下の通りだ。

 『ヘブンスモーカー』レインボウ
 『深淵よりの使者』ディープス
 『デッドマンズコール』スカルノワール
 『永遠の花嫁』ホワイトブーケ
 『贖罪血統』ブラッドレイド
 『風紀委員長』キャンパスノート
 『魔女殺しの魔女』ビブリオ
 そしてギルド名と同じ『セクターI』を称号にもつピリーズ・ラパエ

「以上八名。誰とあたってもらってもいい。組み合わせも人数も、そちらに合わせよう。
 なにせ、ローレットは自由に動いてこそ……らしいからな」

GMコメント

■依頼内容
 『いい勝負』をすること、のみ!

 セクターIのメンバーと戦い、観客をとりこにしましょう。
 メンバーの名前と特徴を書いておきますので、自分に合うなーと思った人物を第1~第3希望まで述べて相談掲示板ですりあわせるとよいでしょう。
 そのうえで『ぼくとあなたが一緒に戦えばもっとステキ!』といった提案を交わしていくことで、戦いがより魅力的になっていくはずです。
 パンドラの使用は自由ですが、使っておくとパフォーマンスの保険になるでしょう。

ピリーズ・ラパエ
青いモンシロチョウの群れを纏った黒人男性。
両目は青い宝石に変わっているが、常人よりもよく見える
蝶を用いた魔術を得意とする

レインボウ
BS使い。ダメージ系BSを重ねた後に呪殺攻撃を叩き込む。
虹色の葉巻きをくわえた凜とした老婆。魔術性のたかい煙を操る。

ディープス
BS使い。拘束系BSを重ねた呪殺攻撃のコンボを好む。
半魚人系ディープシー。代々伝わる魔術ワンドを行使する。

スカルノワール
高名な死霊術士で本体は骨。かりそめの肉体を纏った青白い髪の美女。

ホワイトブーケ
範囲攻撃使い
ウェディングドレスとブーケロッドを持った魔女。
花を使った魔術が得意。

ブラッドレイド
防御が硬いヒーラー。
長身の男性。
『青罪の血』を身体に流す魔法使い。
血液を凝固させて剣や鎧にかえる。

キャンパスノート
防御の硬いヒーラー。怒り付与能力をもつ。
ガクランに眼鏡をかけた男。
紙使い。魔術を書き込んだシートを剣や盾に変えて戦う。

ビブリオ
威力特化の魔術師。レンジにとらわれない攻撃バリエーションをもつが、範囲攻撃は苦手。
魔女殺しの魔女。ルーンの刻まれた炎の剣を使う。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 魔法使いたちの祭典完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月08日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
すずな(p3p005307)
信ず刄
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
クリスティアン・メルヴィル(p3p007388)
Star Lancer

リプレイ

●祭典の夜は熱にうかれて
 アンガロンは二年に一度、祭りの季節がやってくる。
 『マジシャンズ・カーニバル』と呼ばれるその祭りでは、古今東西から集結した魔術師たちがその技の美しさと戦いの興奮を競い合う。
 鉄帝らしくもあり、らしくなくもある……これは『戦いの芸術点』を競うスポーツなのだ。
 それゆえ町には出店が並び、観光客も大勢押し寄せては賑わいを見せるのだ。
 秒単位で色の変わるマジックチョコレートバーや妖精の幻が飛び交うフェアリーキャンディ、魔術師の祭りでは定番となりつつある毒なしリンゴ。
 そんな、ちょっぴり独特な空気に触れて、『闇之雲』武器商人(p3p001107)はおなじみに『ヒヒヒ』という笑いを浮かべた。
「魔法使いたちの祭典、かァ。魔術を齧っている身としては是非愉しみたいものだねェ……」
「俺は魔術師っつーか転星術師だけどな。いいねぇ。大好物だぜ、こういうの」
 ガナッシュという魔術材料に使われる紫唐辛子をまぶしたポテトスナックをざらざらと口に放り込む『Star Lancer』クリスティアン・メルヴィル(p3p007388)。
 話に聞いた鉄帝感とはだいぶ違うものの、闘技場を中心とした盛り上がりようはやはり鉄帝、といった印象を抱かせた。やはり実際来てみるものである。「魔法使いの祭典、私も魔法使いと云えば魔法使いかね……」
 腕組みをして露天を眺める『イルミナティ』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)。
「錬金術士も魔術師……か」
 ラルフ自身は科学に近い感覚でみてはいるが、錬金術はいわゆる総合学とみられている世界もあるという。科学魔術神学哲学、その他あらゆる要素が融合しているとも。
「鉄帝は相変わらず小気味良いお国柄ですね! 分かり易くて好ましく思います」
 一足遅れた夏祭りの様子に、ちょっぴり浮かれた様子の『血風三つ穿ち』すずな(p3p005307)。
 浮かれついでに渦巻きがずっと回り続ける棒付きキャンディを手にしていた。
「本当、わくわくしますね! それもあの武器商人さんとタッグを組めるとは」
 『ハッピーエンドを紡ぐ女』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)が同じキャンディをぺろぺろしながら、これから向かう闘技場を見上げた。
 先の曲がった円錐型の建物。『魔女の帽子』のような建物といってもいいかもしれない。
 中に入ってみると、すり鉢状の観客席と強力な魔術結界で仕切られたヤードが見える。
 会場入りしたイレギュラーズたちを出迎えるように、依頼主でもある『セクターI』のメンバーが振り返った。
 代表して手を広げるピリーズ・ラパエ。
「ようこそ。今日はいい戦いができることを期待している」
 そんなピリーズに、『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は挑発的な態度をとってみせた。
「おや、蝶を侍らせるとは、随分高慢な方で御座いますね。
 僕は胡蝶族。胡蝶は夢と現の狭間を行き来する僕と同じ特別な存在。
 人如きに使役されるなど、侮辱以外のなにものでも御座いません。
 僕が勝ったら、蝶を使役するのを辞めて頂きましょう」
「ふむ……よろしく頼む。まずは試合の流れを決めるために少し打ち合わせをしようか」
 ピリーズは小さく首を傾げる様子をみせたが、どうやら(理由は分からないが)幻の態度を好意的にとったようだ。
 話題を変えるように『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)がスカルノワールの前に立ち、握手を求めるように手を出した。
「依頼を受けた以上は頑張ります。出来るだけ派手に戦って下さいね、スカルノワールさん。自分は派手な戦いが不得手なので……」
「とんでもありません……。私の場合、ストイックな方のほうが助かりますの」
 オリーブの手を握り、どこか儚く微笑むスカルノワール。
 同じように『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)もホワイトブーケと握手をして、丁寧に作られたウェディングドレスを眺めた。
「花嫁衣裳、女の子の憧れデスよねぇ。試合を盛り上げるなら、悪役のように振舞ってみるのも面白そうデスぅ♪」
「あら、素敵。ぜひそうしましょう!」
 掴んだ手をぶんぶんと上下に振るホワイトブーケ。
 このあとセクターIとイレギュラーズは食事をしながら戦いの流れを打ち合わせし、試合の時間を待った。
 そして、やがて……。

●戦華
 虹色の葉巻きを加えた老婆、レインボウ。
 ガクランに眼鏡をかけた委員長タイプのキャンパスノート。
 対抗するように身構えるのは、我らがイレギュラーズ。
 不気味な『なにか』を沸き立たせた武器商人。
 巨大テーブルナイフをたずさえたウィズィニャラァム。
 両者にらみ合う……なかで、ウィズィニャラァムは思わせぶりに二歩ほど前に出るとスカートの裾をつまんで見せた。
「さあて、紙はハサミに負けるのが世の道理ですが、私のナイフはどうですかね!」
「僕のノートはナイフごときで……君! みだりに肌を露出させるんじゃあない!」
「なんのことですかねー」
「言いながらひらひらとさせるんじゃあない!」
「ヒヒヒ……」
「クク……」
 武器商人とレインボウはおかしそうに肩をふるわせ、互いに一歩ずつ前に出た。
 武器商人の周囲をうずまく『なにか』が形無き形を取り始める。
 足掻く怠惰、泥濘む色欲、揺蕩う嫉妬、目醒む憤怒――そして『爪繰る色欲』。
 武器商人から放たれた『なにか』を、レインボウははき出したブルーの煙でかき消した。
「こいつぁ厄介な術式だねえ。ガチでアタシを潰そうってかい」
 武器商人は更に『“旧き夜”』を発動させ、レインボウめがけてあやしく迫る。
「――さあ、Step on it!! 戦いの始まりです!」
 一方でウィズィニャラァムは頭上に掲げたハーロヴィットをくるくると回転させると、キャンパスノートめがけて思い切り投擲した。
「貫け! 私の! ハーロヴィット!!」
 鎧にかけられた特殊な効果によって槍(ナイフ)そのものが推進力をもち、キャンパスノートめがけて飛んでいく。
 展開した紙片を頑丈な盾に変えナイフを打ち弾こうとするキャンパスノート……だが、盾を無理矢理貫通してキャンパスノートへと突き刺さった。
 刃に塗られた毒がしみこみ、キャンパスノートは飛び退きながら自己回復を始める。

 そんな彼らの間を抜けるように、ピリーズと幻の戦闘が勃発していた。
 奇術用のステッキをくるくると回し、脱いだシルクハットを叩いて大量の蝶を飛び立たせる幻。
「蝶術――いや、幻術か」
「いいえ、奇術でございます」
 幻の生み出した蝶が巨大な蝶となり、新たにわき出した大量の花がピリーズを包み込んでいく。
 巨大な蝶が形を変え、剣となって花にうもれたピリーズを突き刺した……が、散った花からはモンシロチョウの群れがぱっと飛び去るだけだった。
 群れは別の場所に集合し、その内側からピリーズが現われる。
 どうやら回避や防御の能力が高いようだが……ピリーズが服の内側からじわりと血をにじませているのを幻は見逃さなかった。幻の鋭い攻撃をかわし切れてはいないのだ。
「蝶の使役をやめる気になりましたか」
「……ふむ」
 ピリーズは表情を変えず、両手を広げて新たな蝶をどこからともなく呼び出した。

「錬金術師――受けよ、我が贖罪の刃!」
 繰り出された斬撃を、ラルフはおおきく飛び退きながら魔導拳銃を連射。
 血の鎧を変化させて防御すると、ブラッドレイドはさらなる斬撃を放った。
 避けきれない。防御姿勢で吹き飛ばされ、ラルフはワンバウンド転がってから再び立ち上がった。
「なかなかの威力と装甲だ。では、これはどうかな」
 特殊な弾を魔導拳銃に装填。膝立ち姿勢から三連射する。
 再び盾を用いて攻撃を防ぐも、着弾と同時に浸透した蠍姫の毒に盾が暴れたように歪んだ。
「ぬう……! 交代だ、ディープス!」
「ギョギョ!」
 半魚人がブラッドレイドと入れ替わるように飛び込み、ラルフのさらなる射撃を水の盾で防御した。
「ギョギョギョ!」
 突如、ラルフの周りに水の柱が出現。彼の身体に絡みつき、動きを強制的に止めてしまう。
「――頼む、クリス!」
「任せとけ」
 クリスティアンはラルフに代わってディープスとの間に割り込むと、それまでため込んでいた星のエネルギーを魔石から解き放った。
「参宿に座す巨星、脈打つ星、ジャウザーの手。その掌に握る予兆を顕示せよ。成すは極死、屍の星槍――参宿星槍《巨星崩光(ベテルギウス・バースト)》!」
 星の光が破壊光線となってはしり、ディープスを飲み込んでいく。
 直撃をうけそうになったディープスだが、水のうねりを用いて光を散らし、半身が焼けるだけで済んだ。
「ギョギョ……メルヴィル家の星詠。幻鉄戦争の英雄の血ですね?」
「こういうのも、おもしろいだろ?」
 そうしている間にラルフは拘束を解き、同じく毒を取り払ったブラッドレイドも再び戦いへと加わっていく。
「冠位魔種を打倒したイレギュラーズの一角が! この程度で倒れるかってな!」

 顔まで覆う兜をかぶり、オリーブはスカルノワールへと詰め寄った。
 武器は上質な長剣。
 頑丈な全身鎧を纏い、鉄帝仕込みのストイックな剣術で責めるオリーブ。
 対するスカルノワールは彼から距離を取りながらも死骸盾を展開。召喚された骸骨兵たちがオリーブを迎え撃つ。
「――ッ」
 鎧の奥できらりと光るオリーブの目。
 しっかりとした踏み込みから繰り出される戦鬼暴風陣が、骸骨兵たちを薙ぎ払っていく。
 戦い方はストイックだが、だからこそ隙ができづらい。
(別に負けても問題は無いですが、皆さんの負担を増やす訳にはいきません。何より、わざとでなく負けるなんて悔し過ぎます!)
 剣を再び構え、突撃をかけるオリーブ。
 スカルノワールは更に無数のアンデッドを生成し、オリーブへとけしかけ始めた。
 そんな二人がぶつかり合うそのすぐ横で、美弥妃は黒いドレスを翻して見せた。
 観客の目を引く艶やかな足首。大きく開いた背。しなを作ってホワイトブーケに挑発的な笑みを向けると、黒い羽根の扇子を広げた。
「花嫁と花の魔法、とーっても素敵デスぅ……でも、幸福そうなその姿を不幸で塗り替えるのも一興だと思いませんかぁ?」
 美弥妃は扇子から隠し刃を露出させると、ホワイトブーケめがけて急速に接近。
 周囲から不運を惹きつけると、闇の月を浮かび上がらせた。
「月夜で足を踏み外したら純白ドレスも台無しデスねぇ?
 な・の・でぇ……気をつけてくださいよぉ?」
「……っ!」
 顔を狙って繰り出された暗器扇子を、先端が花束になったロッドで受け止めるホワイトブーケ。
 美弥妃は運命操作型の攻撃を連発していくことでホワイトブーケの対応力そのものを奪う作戦のようだ。
 大きく飛び退き、花吹雪の魔法を仕掛けるホワイトブーケ。
 爆発した花弁の中を、すずなが急速に駆け抜ける。
「いち剣士、武士として! 『魔女殺しの魔女』殿との勝負を望みます!」
「いいでしょう」
 ルーンソードを撫で、炎を燃え上がらせるビブリオ。
 すずなの繰り出した首を狙った斬撃を剣で受け流すようにかわすと、炎が残るうちにすずなへと切り返した。
 すずなの刀身がビブリオの剣を受け、刀身を滑っていく。
 走る火花がさらなる炎を巻き起こし、二人の顔を茜色に照らし出す。
 ざん、と二人の踵が強く大地を打った。
 互いに必殺の間合い。防御を捨てた不退転の構えである。
 スローにのびた世界の中で、すずなは大きく目を開く。
 六つの閃きが連続して走り、ビブリオの腕や足、胸や顔を切りつける。
 対するビブリオは繰り出された斬撃を六つに分裂した炎の刃で打ち返すことで回避。
 ルーンソードの突きをすずなの顔面へと繰り出していく。
 のけぞり、ねじり、首めがけてさらなる斬撃を放つすずな。
 素早く身を屈めて剣の下を潜り、転がることで身をひくビブリオ。
「私が退くことになるとは……それが、噂に聞く『剣神』の剣というわけですか」
「私にあるのは加護だけですよ。束縛が強くて困りますが……」
 顔の位置まで持ち上げた刀を返すすずな。刀身に映った彼女の目が、遠い夜空のように光った。

 戦いは互角の展開を見せていた。
 オリーブは周りの様子を確認しながらも、スカルノワールへの攻撃を続けていく。
(基本に忠実に、有利な間合いを保ち、敵の行動に正しく対処し、素早い攻撃を重ね、隙を生み出し畳み掛ける。何と言われようとそれが自分の戦い方であり、自分が思う最も美しい戦い方です!)
 連続で繰り出されるオリーブの剣を、呼び出したアンデッドで防御していくスカルノワール。
「強い、ですね。私も全力を出す程度では足りないかもしれません」
 スカルノワールは袖の下から黒くて細い骨を数本取り出すと、オリーブめがけて投擲した。
 空中で凶暴な死霊となって襲いかかる骨。
 その一方で、美弥妃とホワイトブーケは真正面からぶつかり合っていた。
「花は丁寧に1本1本摘んでしまいましょーかぁ。
 花が散る瞬間の美しさ……魅せてくださいねぇ?」
 砕ける地面。足をとられたホワイトブーケがバランスを失った所へ、美弥妃めがけて飛来した無数の石が巻き添えになるように集中した。
「散りません。私はホワイトブーケ……永遠の花嫁ですから!」
 ロッドを防御から攻撃の構えに転じ、花の魔力砲撃を発射。
 美弥妃とそのすぐそばにいた仲間を巻き込んで甘い香りが突き抜けていく。

「……!」
 幻は戦況を冷静に分析しながらも、ピリーズと互角の戦いを繰り広げていた。
 弾丸のごとき速さとナイフのような切れ味で飛ぶ蝶によるガトリング射撃を、わき上がる花の幻をぶつけることで相殺をはかる。
 タネも仕掛けもある奇術。だが、それ故に騙される本物の魔法である。
 はらはらと散った花が蜃気楼のように消え、幻ひとりが残される。
 ステッキを片手で突きつけるように構えた幻に、ピリーズは両腕を広げる姿勢で応えた。
 彼の肩や指先にとまるモンシロチョウたち。
「一つ誤解を解いておくと……この蝶たちは使役しているのではない。
 彼らは、私のファミリーだ。何よりも強力で、何よりも信頼できる。
 そしてだからこそ分かることがある、夜乃幻。きみも……強かな蝶だと」

「嗚呼、"捕まえた"。ヒヒヒ……さて、よろしく頼むよ砲台」
「まかせて城塞!」
 『破滅の呼び声』のささやきに成功した武器商人は、紙片を剣に変えて斬りかかるキャンパスノートの攻撃を受け止めた。
 まるで無防備に身体を貫かれているように見えるが、武器商人の身体は瀕死の状態のまま維持された。
 どころか、武器商人を倒すまでに使用した魔力が逆流し、キャンパスノートの肩が激しく裂け、出血していく。
「きみはまさか……『幻霊蹂躙』の武器商人か!」
 首を振り、武器商人から離れようとするキャンパスノート。
 しかしその背後には既にウィズィニャラァムが回り込んでいた。
 それまで投擲に用いていた槍(ナイフ)を、本来の使い方どおりに両手でしっかり構えキャンパスノートの背中へと突き刺していく。
「これが私の正真正銘の必殺技! 全開の! 通常攻撃ですッッ!!」

「さぁ、ご照覧あれ――我が太刀筋を!」
 すずなは刀を正面に構え、飛来する茜色の光に目を開いた。
 大きく後退して距離をとり炎の刃を連続して発射してくるビブリオ。
 すずなはその全てを刀で弾く――かのように見えたが、すずなの刀をすり抜けた青い炎がすずなの身体を切りつけ、肉体を燃え上がらせた。
(愚直に、ひたすら真っ直ぐに――修羅の如き一刀を目指して!)
 ダメージには退かない。どころか、ビブリオとの距離を急速に詰めた。
 対するビブリオは防御も回避もおこさず、真っ向からすずなの突きを受け入れた。
 ビブリオの肉体を貫く剣。
 一方で、すずなの肉体をルーンソードが貫いている。

「我が手に座す牙持つ侵獣、荒みて餓えれば御霊を喰らう。竦然せよ、汝は天狼の好餌也! ――『井宿星槍《天狼噛牙(シリウス・バイティング)》』!」
 振りかざしたクリスティアンの両手から星空のごとく無数のきらめきが広がっていく。
 きらめきがつなぎ合わされ、無数の『星の槍』とかえると、その全てを一斉に解き放った。
「ギョギョ!」
 空中に大量の水の槍を形成し迎撃をはかるディープス。
 更に呼び出した水の槍を発射し、クリスティアンへと投げつける。
 対して、クリスティアンはそれを防御しながらも星の力を溜めていた。
「併せろラルフ!」
「戦うならば美女と語らいながらも悪くないがこうして血潮熱くなる決闘も悪くない」
 攻撃のタイミングをあわせ、飛び出したラルフが左腕を構えた。
 全身のエネルギーを魔力へと変換。義手の左腕に集中させると、義手がスマートな大砲へと変化する。
「その武装は!?」
 目を見開くディープス。危機を察したブラッドレイドが飛び出し、二人は血の壁を形成した。
「少しだけ教えよう。これぞ生体融合魔導兵器――『メギドイレイザー』」
「『ベテルギウス・バースト』!」
 ラルフとクリスティアン、二人の破壊光線が螺旋状に交わり、ディープスたちへとぶつかっていく。

 こうして試合は熱狂のうちに幕を閉じた。
 イレギュラーズたちの戦いもまた、鉄帝魔術師たちに強く刻まれることになっただろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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