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シナリオ詳細

練達都市伝説 ハイスペック人面犬の発明

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ハイスペック人面犬の発明
「くくく、わーはっはっはっ! ついに……。そう、ついに、我が究極の発明が完成したぞ!」
 ここは、『練達』首都郊外にあるケーン博士の研究施設。
 ケーン博士は、長年の夢だった発明を成し遂げ笑いが止まらなかった。

 博士は一体、何を頑張って発明していたのか?
 それは、恐るべき答えとなるが、あえて言おう。
 ハイスペックな人面犬だ。
 お察しの通り、ケーン博士はマッドサイエンティストなのである。

「ふはは、今宵はとても良い夜だ。後で極上の赤ワインで乾杯したいくらいだぜ。だが、今夜の発明の完成は前夜祭に過ぎない。私が発明したハイスペック人面犬を野に放てば、『練達』中、いや、混沌世界そのものを征服する事も訳がないだろう。天才の私こそが、この世界を支配するのに相応しいのだ!」

 さらにお察しの通り、ケーン博士は、発明の実力は天才の域に達しているが、人間的には非常に残念な方だった。人面犬でどうやって世界征服どころか『練達』を征服できるのだろうか? いや、人面犬で人生とか人間が狂ってしまったケーン博士ならこう答えるだろう。「人面犬さえあれば、こまけぇことは、どうでもいいんだよ!」

 今夜は世界征服の為の前哨戦でもある。
 博士は檻に繋がれている人面犬達を解放して、首都の繁華街に放つ予定なのだ。
 ケーン博士の計算によれば、彼が用意した人面犬16匹もあれば繁華街程度ならば容易く陥落させる事ができるそうだ。

「さあ、行け、我が最強の発明品であるハイスペック人面犬達よ! 私の才能がこの世界のトップである事を証明するのだ!」
 博士は愛しい手下達に指令を出すが、肝心の人面犬達はやる気がない。
 がるるる、と唸って動こうとすらしなかった。

「おい、てめぇら! 行けよ! 暴れてこいよ!」
 ケーン博士が、ぴしゃり、と鞭を床に打つ。
 この無理やりな命令が人面犬達の怒りを誘発したようで……。

 わんわん、がぶり、むしゃり、ぐしゃり、ぐちゃぐちゃ、べろり、どろり、がぶがぶがぶ……!!
「うおおおおー!? ぐ、ぐわあああ……」
 ケーン博士は無惨にも食い殺されてしまったのであった。

(そ、そんなバカな……!! 私の科学が……敗れるとでも……言うのか!?)

●人面犬調査に向かうが……
「た、大変なのです!! 博士が……人面犬に食い殺されてしまったのです!!」
 ケーン博士の最期を扉越しに目撃してしまったのは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)だ。
 実は彼女、ローレットにとある通報があったのでケーン博士を調査していたのである。
 その通報内容とは、要するにケーン博士が怪しい研究をやっているらしいという事だ。
 噂では、夜に謎の犬を研究所付近の道路でドッグランさせていたとか。夜な夜な怪しい雄叫びが研究所の方から聞こえてきたとか。そもそも人面犬の発明なんかやってしまっているのではないか、とか色々と。
 それこそ都市伝説のレベルまで話が大きくなっていたのだ。
 ローレットとしても対応しない訳にはいかなくなったので、ユリーカが担当者になったのだが……。
 それなら、ケーン博士の所へ出向いて聞き取り調査をするのです、という話になった。
 しかし、博士から何度もはぐらかされたので、抜き打ち調査をする事になったのだ。
 そして今夜、調査へ向かうと、研究所が偶然……開いていた。
 気になったので中に入った所、博士が無惨な最期を迎えていたのである。

「がるるる……!!」
 人面犬達はかつての生みの親を食い殺した後、次の標的へ向かう。
 次はユリーカを食い殺すのだ!

「ひええーなのですー!!」
 ユリーカは血相を変えて必死で逃げだすものの……。
 研究所を出た所で、ぎりぎりで追いつかれた!
 だが、新米情報屋がここで最期を迎える事はなかった。
 なぜならば……。

「皆さん、出番なのですよ! バトンタッチなのです!」
 そう、あなた達がいるからだ。
 あなた達は今夜、ユリーカに頼まれて調査に同行していたのだ。
 各自調査の為、研究所周辺で散り散りになっていたあなた達はすぐに集合する。

 さて、ハイスペックな人面犬達を相手に決戦の火ぶたは切って落された。
 ケーン博士の悪しき研究が世に広まらない為にも、この場で退治してしまおう!

GMコメント

●目標
 ハイスペック人面犬(全16匹)を討伐する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
『練達』首都郊外のとある研究施設近辺が今回の戦闘場所です。
 場所が人気(ひとけ)のない所ですし、時間帯は夜ですので、戦闘場所に人はいません。
 戦闘場所そのものも特別広くも狭くもない近代的で一般的な道路です。
 外は暗い時間帯ですが、道路はライトアップされていますので視界に問題はありません。
 ガチな殴り合いの純戦に向いた場所ではあります。

●敵
 人面犬キング×1匹
 ハイスペックに改造された人面犬達のボスです。
 胴体の外見は大型犬で、危険を象徴する赤系です。
 頭がスキンヘッドのオヤジです。ですが、人面犬達に高い知能はなく人語は解しません。
 手下の人面犬達に比べて一際強く、都市伝説的な怪しさも満点のボスです。
 戦闘方法は以下。
・出血噛みつき(A):噛みつかれるととても痛いです。物至単ダメージ。BS出血。
・流血する遠吠え(A):危険な遠吠えでBS流血をばらまきます。神自域。低ダメージ。識別。
・失血突撃(A):血液の刃をまとって突撃して来ます。物近貫ダメージ。BS失血。
・総攻撃(A):手下の人面犬達を率いて総攻撃を仕掛けます。物特レ。
・出血系無効(P):出血系のBSが効きません。
・人面犬の王様(P):HP高、AP高、物攻高、EXF高、EXA高、抵抗低。

 不吉な人面犬×5匹
 ハイスペックに改造された不吉な人面犬達です。
 胴体の外見は大型犬で、不吉を象徴する黒系の姿です。
 ある程度の統率が取れた群れで人面犬キングを群れの頂点とします。
 戦闘方法は以下。
・不吉な噛みつき(A):不吉な噛みつきをします。物至単ダメージ。BS不吉。
・不運な遠吠え(A):運気の悪い遠吠えでBS不運をばらまきます。神自域。低ダメージ。識別。
・魔凶突撃(A):恐ろしい悪運をまとって突撃して来ます。物近貫ダメージ。BS魔凶。
・不吉系無効(P):不吉系のBSが効きません。
・運が悪い人面犬(P):CT高、FB高。

 痺れる人面犬×5匹
 ハイスペックに改造された電撃系の人面犬達です。
 胴体の外見は大型犬で、電撃を象徴する黄色系です。
 ある程度の統率が取れた群れで人面犬キングを群れの頂点とします。
 戦闘方法は以下。
・痺れ噛みつき(A):痺れを狙って噛みつきます。物至単ダメージ。BS痺れ。
・ショックな遠吠え(A):聞くとショックを受ける遠吠えでBSショックをばらまきます。神自域。低ダメージ。識別。
・電撃突撃(A):電撃をまとって突撃して来ます。物近貫ダメージ。BS感電。
・痺れ系無効(P):痺れ系のBSが効きません。
・痺れる人面犬(P):抵抗高、命中回避低。

 超速人面犬×5匹
 ハイスペックに改造されたスピード系の人面犬達です。
 胴体の外見は大型犬で、速そうな色の銀色系です。
 ある程度の統率が取れた群れで人面犬キングを群れの頂点とします。
 戦闘方法は以下。
・速い噛みつき(A):猛速度で噛みつきます。物至単ダメージ。BS足止。連。
・遅い遠吠え(A):聞くと鈍くなる遠吠えでBS泥沼をばらまきます。神自域。低ダメージ。識別。
・超速突撃(A):時間の停滞をまとって突撃して来ます。物近貫ダメージ。BS停滞。
・足止系無効(P):足止系のBSが効きません。
・速すぎる人面犬(P):反応高、機動高、EXA高、HP低、防技低、EXF低。

●略称
「プレイング」では文字数を使う為、例えば、以下のように名称を省略する事もできます。
・人面犬キング → 王犬
・不吉な人面犬 → 不吉犬
・痺れる人面犬 → 痺犬
・超速人面犬 → 速犬
 また、これら以外の種類の人面犬と魔物は出て来ません。

●その他
 NPCユリーカは戦闘には参加しません。

●GMより
 先日、ホラーサスペンス劇場っぽいシナリオを出しましたが、今回は都市伝説です。
 現在は、8月後半、晩夏。まだまだ夏です。晩夏の都市伝説劇場といきましょう。
 そして都市伝説と言えば、何と言っても人面犬!
 実は、皆さんと共に熱い人面犬バトルがしたいと思っていました。

  • 練達都市伝説 ハイスペック人面犬の発明完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月04日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
ロク(p3p005176)
クソ犬
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
天狼 カナタ(p3p007224)
夜砂の彼方に

リプレイ

●開戦
『アオオオン!』
『アオ、アオ、アオオン!』
 静かな夜道の街灯の下。人狼とコヨーテが共に雄叫びを轟かす。
 最初に叫んだ人狼、『彼方の銀狼』天狼 カナタ(p3p007224)は人面犬対策として雄叫びをした訳だが、内心複雑だ。
(奴らの注意を引けたか? ……俺は犬ではないからな? わんわんなんて吠えるわけないだろワオーン! あと、顔が人間の犬より顔が狼の人間のほうがカッコ良いからな!)
 人狼の後に続いたコヨーテ、『クソ犬』ロク(p3p005176)は愛しきロリババア達の事を心の中に思い浮かべる。ちなみにロリババア達は遠くから観戦している。
(さて、敵の気を引けたかな? わたしも犬じゃないけど! 気高く聡明で美しきコヨーテ様だけど! 世界征服を勘違いしたかわいそうなケーン博士はさておき、人面犬が向かって来るわね? 戦いをしっかり見ていてね、ロリババア達?)
「ぎゃおん!」
 人面犬の王は頭がスキンヘッドのオヤジで胴体が真っ赤な大型犬だ。
 この犬を先頭に奴らが突進して来る!
「うふふ!」
 突然、ロクが笑い出す。
「しかしアレだよね! ボスはつるつるでてかてかなんだね! わたしはふっさふさなのにね!」
 カナタも一緒になって笑う。
「くはは、おもしれえ! って、やっている場合か! ロク、奴らを例の地点まで誘導するぞ! さあ来い、人面犬共!」
 カナタは人面犬の知識を想起して、彼らに意思疎通を求めた。
 でも、高度な会話はできないので、わんわん、と吠えて挑発する。
「ぎゃん、ぎゃん!」
 気持ち悪い声で鳴く人面犬達は簡単に挑発に乗せられて追い駆けて来る!
 一直線の道路だが、途中で道が分かれた。
 カナタが右へ回り、ロクが左へ回る。
 人面犬達は一度、急ブレーキを掛けた。
 目の前には謎の餌があったからだ!

 さて、ここからは『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)達の担当だ。エリザベスは、人面犬達が罠に掛かった様子を街灯影から見ていて、謎の決めポーズを取って喜んだ。
(ギフトから取り出したトップブリーダー推奨のわんわんチャムですが、よほど美味しいのでしょうね? すぐに食いつきましたわ。これで篭絡できれば誰も傷つかずに済むハッピーエンドでございます)
 いや、ちょい待ち! 博士は既に食い殺されたぞ?
(そうでしたわね。『飼い犬に手を噛まれる』。いいえ、『飼いハイスペック人面犬に喉笛を噛み切られる』とでも言い直しておきましょうか?)
 ハッピーエンドになる事はなかったものの、人面犬達は次々と足止めをくらう。
 なぜなら……。
 開戦直後の事、『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)は焦っていた。
(大変っ! 情報屋さんを逃がすためになにか気を逸らせるようなものを……。なんてことだっ! ヨハナの作ったお弁当しかないっ! 皆で食べるために用意して来ましたが、背に腹は代えられず、お腹と背中はくっつきませんっ! 苦渋の決断っ! これをっ!)
 この飯が死ぬ程「まずかった」のだ。
 これを食べてしまった人面犬の中にはヨハナ飯の威力によって負傷した者達もいた。

「とうっ、じゃ!」
 暗闇から勢いよく現れて、食事中(卒倒中?)の人面犬に鈍重な槌の一撃を入れたのは、リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)だ。
(なんで『練達』って吹っ切れた博士が多いんじゃろ? いつものことだけど。まあ、こっちも負けてないがなぁ……)
 ケーン博士を悼みつつ? メーヴィンは、ある事を思い出して、ふう、とため息をつく。
 実はカナタ達から、一緒に吠えないか? と誘われていたからだ。
(儂は吠えんよ? 狐じゃし? 獣の本性とかは疼かぬよ?)
「そら!」
 遠くの街灯から魂の一撃を放ったのは『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)だ。
(……人面犬か。何とも奇妙な生物を作ったものだ。……だが我々のメンバーも奇妙な集団故、人のことは言えぬか)

 続々と皆、奇襲をしていくが……。
『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)は敵勢を見て笑っていた。
「くくく、この我が参上したからにはどんなナマモノが相手であろうと問題なs人面犬キモッ!? しかも多ッ!?」
 笑っていたのも束の間、ダークネスは人面犬のキモさに驚き迷走した。
「何アレコワイ無理絶対無理無理の無理兎に角生理的にむりいやまてとまれよるなこっちへくるなあっちへいけくるなくるなくるなせかいせいふくほうーー!!」
 説明しよう!
 総統は人面犬のおぞましさに呑まれ、正気を完全に失い暴れ出したのだ!
 その後も世界征服砲を撃って人面犬を襲うものの、器用にも味方には当たらなかった。
『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)は、威力のある罠を撒こうとも考えたが、今回はそれを用意するだけの余裕がなかった。代わりに、人面犬を挑発しつつ、暴れているダークネスの所へ誘導を試みる。
「なーにが人面犬よ。こちとら犬も美味しく頂ける文化出身なの。かのヒッポクラテースだって薬効があるって言ってたわ。さすがに人面の犬を食べる気はないけど、どちらが食物連鎖の上位にあるか、身をもって教えてあげるわ!」

 開戦の奇襲は成功だった。
 ここで人面犬の王は逆襲に出る。
「ぎゃおおん!」
 気味の悪い雄叫びを上げると同時に全ての人面犬が弾丸みたいに突進して来る!
 人面犬の王による総攻撃の命令が下ったのだ!
 乱れる突進攻撃が暴走する中、ルチアは癒しを歌う。
「皆、大丈夫!? 届いて、癒しの天使の歌声よ!」
 ルチアの咄嗟の判断による賢明な行動でイレギュラーズ側に倒れた者はいなかった。
 だが、今の総攻撃で陣形が乱れ、戦場が分かれてしまった。

●痺犬
 かなり遠くまで来たようだ。気が付いたらロクとヨハナは隣同士にいた。
 たしか総攻撃の時、痺犬が厄介だと思い対策していたのだが……。
 そのまま分断され、今、彼女達は3匹の痺犬と対面する形となった。
 なお5匹いたが内2匹は既に戦死している。

「びりびり、あおん!」
 電気仕掛けの音と同時に痺犬が突撃や遠吠えを仕掛けて来た!
 3匹連続の攻撃でロクとヨハナは電気系の衝撃を受けるが……。
 2人とも、けろりと笑っていた。
「怪奇っ! BSの通らない未来人っ! どうされようがヨハナにBSは通りませんっ!」
「残念ね、痺犬? 今ぐらいのだったらわたしを痺れさせるなんて無理よ?」
 2人は、青くなった人面犬達を見て、にやりと笑う。
「ではっ、必殺技で各個撃破ですっ!」
「ガシガシ引っ掻いていくよ!」
 すごく痛い!
 ヨハナの抵抗力超高めのレジストクラッシュの一撃、そして防御技術を取っ払うロクの爪引っ掻き攻撃も炸裂だ!
 無念にも状態異常を機能できない痺犬はばたばたと倒されるのであった。

●不吉犬
「はぁ、はぁ……。ここまで逃げれば……さすがにですわね?」
 総攻撃を受けた時、エリザベスは全力で走って逃げていた。
 不吉犬に追い回されながらも、なぜだか研究所裏の実験広場まで来てしまったようだ。
「ふう、ふう、どうやら……。囲まれたようだな?」
 少し後ろにはリュグナーが走って来ていた。
「ははは……。かよわい乙女に逃げ足なんてものを期待してもらっちゃあ困るわね?」
 ルチアが最後に追いつく。
 対して、向かって来る人面犬は不吉犬が3匹だ。
 もう2匹は前半の奇襲で落とされている。
「さて、前衛の方は……」
 エリザベスが言いかけて、皆、はっとした。
 この3人は全員が後衛向きでは?
「ぐるる……。ぎゃふううん!」
 不吉系の遠吠えと突撃が繰り広げられた!
 3人は衝撃を受けて悲鳴を上げ、ファンブルがぐんぐん上昇中!
 ルチアはファンブルが苦手だ。こんな不吉な状態異常なんてぶち壊してやれ!
「皆、恐怖に負けないで! 失敗するという恐怖に呑まれないで!」
 ルチア周辺でブレイクフィアーの聖なる光が冴え渡り不吉な力は退いていく。

「わたくしが前へ出ますわ!」
 エリザベスは覚悟を決めて、鴉のファミリアーを飛ばす。
 前衛でガチで戦うというよりは、実験広場に置かれた物陰に隠れながら、ファミリアーで囮になるという作戦だ。温度視覚持ちなので、物陰から相手が直に見えなくても、温度の色で位置が把握できるから便利だ。
「カー!」
 鴉が飛び回り、不吉犬達が追い回す。
 しばらく追い駆けっこが続いたが、鴉が追いつかれるその時……。
「地獄の狂気で自惚れろ……。その慢心が次の一手で命取りとなるだろう……」
 後方に隠れていたリュグナーが狂眼の魔力で不吉犬達を一網打尽する。
 奴らは精神状態が腑抜けて自惚れた上に、元々の高ファンブル持ち。
 次の3匹の突撃は、鴉を倒し、ルチアを傷つけたものの、ドラム缶に激突して頭がハマってしまった。
「さぁ、次で終わるがよい、人の顔を持つ獣よ! 文字通り存在せぬ都市伝説に変えてやろう!」
 リュグナーの心の奥底から芽生えたどろどろの黒い悪意の花が不吉犬達を包み込む。
「ああ♪ 呪われた♪ 人面犬の、海よ~♪」
 エリザベスが続き、呪い歌(Ver.人面犬)も贈り届ける。
 人面犬達は怪人2人に呪われてこの世を去るのであった。

●超速犬
 カナタは自分が置かれている位置に気が付いた時、はっとした。
「おいおい! ……こっちは俺1人かよ!?」
 しかも相手は超速犬5匹だ。
「がるる! ぎゅいん!」
 独特な鳴き声と同時に戦闘が開始された。
 凄まじい速度だ、次々と突撃して来るが、カナタは……。
「ちっ、いてえよ、バカ! ……くぅ、全く見えんぞ?」
 カナタの反撃が叶わない内に、次は雄叫びの衝撃攻撃が来たかと思ったら……。
 がぶ、ぐさ、ぐさ、と連続で超速度の牙に齧られる始末……。
 さらに速度の状態異常も入ってくるので、カナタの動きはどんどん鈍くなっていくのだ。
 一撃ずつの威力は低いが、猛速度の連続攻撃でついにカナタのパンドラが弾ける!
(くっ……。まずい。後がないぞ? ならば……!!)
 超速犬はいやらしい顔で笑っていた。
 次でこの人狼を仕留められれば、肉が食べられるからだ!
 じりじりと迫って、ついに敵勢が飛び掛かって来るが……。
「アオオオウ!! 燃えちまえ!」
 カナタ周辺で激烈な火炎が炎上する。
 近づいた超速犬達が次々と爆裂して業火に呑まれる!
「アウウウ!! んで、とどめだ!」
 カナタの怒りの反撃は収まらない。
 吹き荒れた暴風が燃えている人面犬達を窒息させ、次々と死骸へ変えていく……。
 凄まじい決闘だった。カナタはたった1人で5匹もの強敵を破ったのだ。
「ふっ、俺は……人面犬を……超えた……」
 力が尽きた人狼は、満足そうな笑みを浮かべて倒れた。

●王犬
「な、な、な、なんで、我が……よりによって最強最悪にキモイ王と……対決であろうか!?」
 ダークネスの焦りは尋常ではなかった。
 先程の総攻撃で友軍も敵軍も散りに散ったが、中でもキモさでも王である犬が前にいた。
「焦るでないダークネス殿! 力を合わせて撃破するのじゃ!」
 メーヴィンが近くにいたのがせめてもの救いだろう。タイマンにならなくて済んだからだ。
 とは言っても、未だに正気ではないダークネスは砲撃を繰り広げて逃げ回るばかりだ。
 だが、メーヴィンはダークネスというかく乱戦術がある事はプラスだとも捉えた。
 茨の鎧で自身を強化した上で、王に接近戦を挑む。
「とうっ、なのじゃ!」
 ダークネスに気を取られていた王犬の胴体をきつい槌の一撃で砕く。
 王犬は、ぐらついて、ダメージを受けた上に防御体勢も乱れる。
「んがあ!!」
 伊達にボスではない。
 痛いはずの一撃を受けても、次は猛攻に出た。
 切り裂く雄叫びが2人に突き刺さり、血が溢れて流れ出す……。
 その一方で、反撃の茨が王犬を刺す。
「やるのう? これでどうじゃ!?」
 メーヴィンが渾身の一撃で王犬の頭に強打撃を与えたが……。
 にやり、と気味悪く笑い、王は即座に立ち直る。
「ぐおおん!」
 そして、歪な紅の刃物を胴体から光らせて突撃だ!
「ぎゃあ!?」
 メーヴィンは勇敢に戦った。王犬はかなりの傷を負った。
 しかし、今の一撃には耐え切れず、彼女は力尽きてしまう。
「ぬおお!?」
 ダークネスも今の突撃攻撃で大打撃を受けたが、パンドラが弾けたお陰で助かった。
 慌てて砲撃するダークネスだったが、王犬は暗黒ビームをもろに受けても、まだ健在だ。
 しかも奴は、ぎらり、と牙を光らせてさらに攻めて来る!
 ぐさり!
 なんと、ダークネスのお尻が齧られてしまったのだ!
「うがあああ! もうむりしぬうう!!」
 説明しよう!
 総統はついに人面犬にお尻まで齧られて別の意味で戦闘不能に陥ったのであった!
 でも、彼女の奮闘は王にダメージを残す事で次へと繋がった事だろう。

***

 王犬が人肉を食事しようとした、正にその時……。

「仲間を傷つけるのはそこまでにして貰おうか?」
 大鎌を肩に担いだリュグナーが王犬の前に現れた。
「人面犬とかいやだなー、こわいなー。という訳で、王を倒しますわ!」
 エリザベスはタロットカードを構えてリュグナーの隣にいる。
「大変だわ! すぐに手当するわよ!」
 ルチアは焦った。メーヴィンとダークネスが血塗れで倒れていたからだ。

 ここでも前衛向きの人材は不在。
 ボス戦では、リュグナーが前に出て、エリザベスが後方支援だ。
 ルチアは一度離脱して、怪我人達の手当てに回った。
 一方、王犬は指揮官であり前衛向きでもある。
 向かって来る牙の一撃一撃が重い。
 リュグナーはその痛みにも耐えつつも、必死で大鎌を振るい、王犬を押しのける。
 たまにエリザベスからの飛び道具も入るが、この犬、なかなかに頑丈な様だ。
 リュグナーは血塗れになって潰し合いながらも、ある事がふと思いつく。
「半人間同士、戦闘を通じて分かり合えるものが……」
 いや、なかった。
 王犬はそんな思いを知る訳がなく強襲を仕掛けて来た。
「ぎゃおお!」
 血液の刃を纏った全力の突撃がリュグナーを、さらに後ろにいるエリザベスをも突貫する。
「くっ、やるな!?」
「あらー!」
 2人のパンドラの欠片が弾け飛ぶ。後がない……。
「私の歌を受け取って!」
 後方からルチアの天使の歌が響き渡り、前線で戦っていた2人は持ち直す。

***

 仲間がピンチな所に、ヨハナが颯爽と現れた。
 あれ、ロクは? もしや……彼女は既に……。
 ヨハナは「遅れてごめんなさいっ!」と謝った後、王犬へビシっと名乗り上げる。
「なーにが人面犬ですかっ! こちとら未来人と悪の総統とロリババア牧場の経営者がいるんですよっ! 明日にはヨハナ達全員が新たな都市伝説の仲間いりしてもおかしくありませんっ! メンツの濃さと話題性と都市伝説感でヨハナ達が負けるはずないでしょっ!」
 王犬に言葉は通じていない。
 だが、ヨハナの挑発姿勢にカチンときたらしく……。
「ぎゃーう!」
 紅の刃を光らせて猛烈に突撃して来る!
「うわっ!!」
 ヨハナに血液の状態異常は入らなかったが、今の一撃はかなりの重さだ。
 それでもヨハナは王犬と取っ組み合いになりながらも奴を押さえつけ、叫ぶ。
「『ヨハナごとやれ!』作戦、発動ですっ!」

 ついにこの時が来てしまった。
 リュグナーとエリザベスは覚悟を決める。
「すまぬ、ヨハナ!」
「ごめんなさい!」
 呪術師達は状態異常の魔術の中でも特別きつい一撃を放つ。
 あらゆる苦悶や激痛が込められたキューブ状の暗黒神秘に包まれて、ヨハナと王犬がじたばたもがく。ルチアは癒しの力を光らせるが……。
「ぐ、ぐはあ……なんてねっ! ヨハナは無事ですっ!」
 計算済みだった。ヨハナは抵抗力の高さで免れたのだ。
 もっとも、抵抗力が低い王犬は状態異常で倒されたのだが……。
「ぐへへ!」
 倒されても何度でも立ち上がるハイスペックさを発揮する。
 次の一撃でヨハナが……!!
『ピュー!!』
 ヨハナが突然、口笛を吹く!
『アオーン!』
 身を隠していたロクが全力で駆けて来たのだ!
 ぐしゃあああ!!
 必殺の牙の一撃で王犬の喉を切り裂く!
 直後、王犬は気味悪い断末魔の叫びをあげて帰らぬ犬となった。
 ロクは切り札だったのだ。

●事後
 ヨハナは大事な事を思い出した。
「皆さん、よいお知らせですよっ! お弁当、まだ鞄の底に残ってましたっ! 戦ったらお腹がすきましたので一緒に食べましょうっ!!」
 他の皆はぞっと青ざめた。新米情報屋に関しては既にいなかった。
 リュグナーがぼそりと漏らす。
「……あの弁当を食べるくらいなら、この人面犬かロリババアを焼いて食った方がマシやもしれんな」
 ルチアが即座に反応する。
「いずれも無理! 特にこの犬はゼッタイ食べないって!」
 エリザベスは死んだふりをした。
 起きたダークネスとメーヴィンも再び倒れた。
 そこにぼろぼろのカナタがやって来る。
「……だからヨハナ、その不気味なものは……しまっておけ。……ぐはぁ!」
 そして、倒れた。

 一方のロクは、ロリババア達を集めて教訓を語る。
「反逆ってこわいね。ケーン博士を反面教師として見習おう! さてロリババア達、今回の戦闘はタメになったかな?」

 改めて皆で話し合った結果……。
 恐怖のヨハナ飯はケーン博士と人面犬へのお供え物となった。
 合掌。

 了

成否

成功

MVP

ロク(p3p005176)
クソ犬

状態異常

ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)[重傷]
自称未来人
ダークネス クイーン(p3p002874)[重傷]
悪の秘密結社『XXX』総統
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)[重傷]
記憶に刻め
天狼 カナタ(p3p007224)[重傷]
夜砂の彼方に

あとがき

この度はシナリオへのご参加ありがとうございました。

ところで、なぜ、僕は人面犬の話を題材にしてしまったのでしょうか!?
きっと、暑さのせいです。
暑さにやられてしまっていたのでしょうね。

アオーン!(と、誤魔化すカラスGMでありました)

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