シナリオ詳細
Fw:暗殺者お見舞いのお知らせ
オープニング
●悪徳貴族の大掃除
金色の絨毯に薄着の少女が両手と膝をついている。
彼女の背に、革靴をはいた足がどんと乗せられた。
「うん、フットレストは奴隷にやらせるのが一番いいね」
赤髪の男がソファに腰を預け、優雅にくつろいでいた。
傍らに置いたデキャンタからグラスにワインを注ぎ、鼻を近づける。
「おい」
男は少女から足を下ろすと、顎を掴んで顔を寄せた。
「こいつは死ぬほど高級なワインだ。お前についた売値の百倍はする。飲みたいだろう?」
そう言って無理矢理口を開かせると、その口にワインを流し込んだ。
咳き込むようにワインを吐いたが、その後すぐに喉を押さえ、真っ赤なものを絨毯に吐き散らかした。注ぎ込んだワインよりずっと多い量だ。そして数秒と立たずに顔を赤くしめった絨毯につけ、ぴくりとも動かなくなった。
「最近増えたな、暗殺」
「皆さんが屋敷に籠もる時期ですから」
後ろに控えていた執事が表情を変えずに言った。
「それより、奴隷をいたずらに殺すのはおやめになってください」
「稼いでるんだ、そのくらいの楽しみは別にいいだろ。絨毯が汚れたから買い換えて、あと靴も」
赤髪の男は革靴を脱ぎ捨てると、肩越しに投げる。
執事はそれを受け取ると小さく舌打ちをした。
「ナリキン貴族はこれだから」
●吹雪と嵐は金を呼ぶ
窓に吹き付ける雪を背に、顔にタトゥーを入れた男が酒を飲んでいる。
その横では仮面の魔術師が。そのさらに横では傷だらけの盗賊が。
ひどく薄暗くどこか粗末なその酒場では、無口な店主がソーセージとチーズと安酒を黙々と配っている。
ここは幻想の端にある安酒場だ。裏の情報が日夜行き交うという意味では闇酒場といってもいい。
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそんな店の一角で、あぶり焼きしたソーセージにフォークを立てていた。
「雪が降ると暗殺者が儲かるってことわざを知ってるかい?
なあに、そのままの意味さ。雪が降るとお高くとまった貴族たちは家に籠もるだろう?
いつもあちこち飛び回る連中が一日家にいてくれるなんて絶好の暗殺日よりじゃないか。
雪道のせいで医者も呼びづらいし寒さで衛兵の指揮も低い。見回りをサボる奴まで現われる。
部下を大事にしないタイプの貴族はなおさらね。
だから暗殺の依頼も入るってわけさ」
ショウはソーセージを囓って麦酒をあおると、ドンとテーブルにカップを置いた。
右を見て左を見て、そっと皿とグラスを端によせ、耳打ちをするように顔を近づける。
「で、『やる』かい?」
ショウはオシャレ名刺のように長細いカードを扇状に広げると、それを顔の前に翳した。
「暗殺依頼が出ているのは合計で八件。
なあに、全部受けろとまでは言わないさ。最低三件は片付けてくれればOKだってさ。
依頼主? んー……『匿名希望の貴族様』ってことにしとこうかな。探りはナシで頼むよ。
一人で何枚もカードを引くのもナシで頼めるかな。これも依頼主からのオーダーさ。逆に、2~3人で一枚のカードを共有するのはアリだ。
さ、どれを引く?」
ショウが提示したのは幻想に点在する小貴族たちだ。
「金で貴族階級を手に入れた者、階級を乗っ取った者……どれも形だけの貴族だ。
けど形だけっていうのは厄介でね、権力を志の無い人間が振り回せばどうなるか……愚者にナイフの例えを出さなくても丸わかりだよね。
それで物価の暴落や社会の維持ができなくなるってケースも多いんだ。
ま、これも大掃除の一環ってところかな」
対象となる貴族もなかなかのもので、
闇市で奴隷を大量に買い付けては潰している者。
盗賊と結託して悪事を働く者。
民をいたずらに搾取し続ける者。
「貴族かくあるべしなんて言わないけどさ、やって損はない掃除だと思わない?」
ショウは最後にカードをテーブルに置くと、その上にコインをいくらか置いて席を立った。
「こいつは僕のおごり。好きなもの頼んでよ。じゃ、あとはよろしくね」
『匿名希望の貴族様』はローレットに期待してるらしいからさ、と言い残し、ショウは雪降る外へと出て行った。
- Fw:暗殺者お見舞いのお知らせ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年02月26日 21時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●命の時価
ピアノの音。オレンジ色のランプ。凍った窓と傾くテーブル。
『宿主』サングィス・スペルヴィア(p3p001291)は椅子に腰掛け、儀式呪具と会話を交わしていた。
銀髪がランプの淡い光にてらてらとしている。
そんな彼女の横に座って、語尾に読点(、)がつくかのようなかわったトーンで呟く『キネオラマ』媒 白日(p3p004709)。
「おねがいごと、よろこんで」
それだけいうと、アップルジュースをストローでちゅるちゅるとやっている。
言葉こそ少ないが、たまににっこり笑ったり頭を傾けたりと、感情は豊かそうな女性である。
「うん、組み分けはこれでよさそうだね」
ミルクコーヒーリキュールをコップごとくるくると回しながら『灰燼』グレイ=アッシュ(p3p000901)は紙に仲間の名前を書き付けた。
個別に暗殺を試みるメンバーとチームを作るメンバーの組み分け表だ。ペンを置くグレイ。
「以前、貴族からの依頼を受けて仕事をした覚えがあるね。今度は貴族さまが標的とは、皮肉なものだ」
「貴族の人ってさー、珍しいもの欲しがる割にその後の金払い渋る人とかクソ値切ろうとする人多いよね」
マンゴージュースをぐいぐいと飲み干す『盗賊のように抜け目ない』オロディエン・フォレレ(p3p000811)。
コップを音と立てて置くと、顔を突き出すように身を乗り出した。
「金払いも良くて毎回お茶菓子ごちそうしてくれたり、土産話を聞きたいってランチに招いてくれたりするお客様は大事にしてるよ。けど今回は真逆な人なんだよね」
一枚きりのカードを手にとる。
同じくカードを引いた『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)が、それを顔の前に翳した。
「ブレスオブリージュ……本来貴族は民の上に立ち、守り導くものだとルルは思っています。民を虐げ、甘い蜜を啜る貴族なんて害虫でしかないのです」
カードを掴み、ぴっと二つに引き裂く。
「ルルが粛清します」
「じゃ、私も」
『斬り裂き魔』国東・桐子(p3p000004)も同じようにカードを引いて頭上に翳して見せた。
「べつに余分に殺してもいいんだろ? 普通に切ったんじゃ面白くないし、な」
残るは数枚。そのうち二枚を引っ張り出して、『へっぽこタンク 』エリク・チャペック(p3p001595)と『クマ怪人』ヒグマゴーグ(p3p001987)はそれぞれ表情を変えた。
「私も引き受けますー。困っている人がいるという意味では同じかもしれないですねぃ」
「グマハハハ! ターゲットは格が低いとはいえ貴族! 成し遂げれば、俺と結社の名にも泊が付くと言うものよ!」
蜂蜜酒を豪快に飲み干し、テーブルにコップを叩き付けるヒグマゴーグ。
「さて、行こうか!」
●奴隷のツケ
スラム街をふらふらと歩く桐子。
雪の積もった街はいつも以上に冷たく、暗く、対照的に貴族の屋敷だけが大きく豊かそうだった。
まるで周囲の栄養を吸い上げて育つ花のごとく、その屋敷だけが豊かだ。
「…………ま、こんなもんか」
暗殺対象に指定された貴族たちのうち、桐子が目をつけたのは『ジャッカス』という貴族だ。
本当なら闘技奴隷を使い潰す(必然的に大量に閉じ込めている)貴族がいれば最高だったが、今回のターゲットにはそういう相手はいないようだ。代わりに、借金のカタに閉じ込めた人間を戦わせてギャンブルに使う奴隷は見つかった。桐子の情報網も伊達ではないのだ。
桐子はこの作戦のために着てきた白い服で雪景色になじむと、リピートサウンドに予め記録した悲鳴を鳴らした。
『キャー! だれか来てー!』
屋敷の守りは二人ほど。そのうち一人が悲鳴を聞きつけ、どちらが見に行くかで揉めていた。暫く揉めたのち、渋々一人が離れた所で桐子はさも重要そうな書簡を雪道に放り投げた。
「なんだ?」
怠けた郵便屋が大事な書類を屋敷の前に投げていったのだろうか。と、門番は舌打ちしながら近づいていく。
書類を拾った所で、物陰から桐子が飛び出した。
剣を振り込み、首を狙う。
クリティカルに首を切られた門番は吹き出る血を手で押さえながら死にものぐるいで抵抗したが……。
騒ぎを誰かが聞きつけただろうか?
幸運にも屋敷の中にざわめきは無かった。
情報網を使って調べたとおりに進んでいくと、鉄格子の奥でやせ細った者たちが閉じ込められていた。貴族のお遊びで殺し合いをさせられる者たちだ。
桐子は途中で用意した粗末なナイフを部屋の中に放り込み……。
「てめーらここで一生終わりてーか?武器ならここにある。やる気があれば標的殺して終わりだ。いつまで縮こまってやがる」
彼らを一喝し、奮い立たせた。
それぞれが武器を取る間、桐子は錠前を剣で幾度も殴りつけて無理矢理破壊。
音を聞きつけた護衛の人間たちが駆けつけるが、桐子には既に味方がいた。
「この屋敷にあるものは全てくれてやる。私は標的を殺して終わりだ」
剣をとり、桐子は駆けだした。
このしばらく後、桐子はなんとかターゲットに手傷を負わせることができたが、闘士たちが屋敷の用心棒たちに倒されてしまったことで状況不利とみて即座に逃走した。闘士を遊びで抱えておくことは、それを従属できる戦力を有しているということだったのかもしれない。
しかしとらわれていた闘士たちもまた逃げおおせ、大きな損害を受けた屋敷の貴族はその責を重く負われることとなる。
桐子の刃は、致命的なまでに届いたのだ。
●商売のツケ
「私、海洋から来た連雀商人ですっ!」
可愛らしい女性がおしとやかに笑った。
テーラードジャケットとスカートで整えたディープシーである。
やる気のなさそうな門番は『はあ』と応え、ろくに調べもせずに女性を通した。
もうお気づきだろうか。彼女がお仕事モードに整えたオロディエンであることに。
営業は城攻めに似ているという。
本来なら門扉に立つことからして難しいものを、城内に入り城主の眼前へ立ち、その上で金庫の中身を頂くに至る。
オロディエンは今まさに、木っ端な暗殺者では簡単に立ち入ることのできない貴族のプライベートルームへと立ち入っていた。
商売人としての身なりや振る舞いがそれを達成させたのだ。
見るからに成り金貴族。
悪趣味きわまるインテリアにオロディエンは作り笑いを崩しそうになるがそれをなんとか維持。
ごてごてに着飾った肥満体型の女貴族に、あるものを翳して見せた。
「珍しい香木の類を持ってきたんですがいかがでしょう? お誂え、リラックスとアンチエイジングの香りでございます」
金を手に入れると今度は時間も欲しくなるのが人の情なのか。
女貴族はアンチエイジングという言葉に醜く笑った。
狙いは暗殺だが、刃を差し込むまでは油断できない。オロディエンは商売知識の限りを使って香木を出来るだけ高く売りつけたいかのように見せかけ、暫く交渉と雑談を交わした。
とはいえこれは出来レース。女貴族の値切りっぷりに根負けしたかにみせかけて香木を安く売り渡すと、早速お使いくださいなと香料と炊き始めた。
息を止め、『それではごゆっくり』と言って部屋を出た。
深く吸えば二度と目覚めぬ薬品であることに気づくのは、翌朝か、その先か。
少なくとも、女貴族の死んだ後だ。
●驕りのツケ
誰でも無い誰かになりすましたルルリアは、ターゲットとなる貴族の屋敷へと向かっていた。
貴族によって国民がいたずらに傷つけられ、虐げられる。そんな世の中を知っている彼女としては、民を虐げる貴族を許してはおけない。
自分に出来る最大限を使って、悪しき貴族を討つのだ。
ある日のこと。
貴族の屋敷に一人の商人を名乗る人物が現われた。
自称商人は巧みとは言いいがたい営業を見せ屋敷の門番を怪訝にさせたが、逆にそのことで貴族の目にとまった。
貴族はその人物をかけだし商人だと見て、商品を死ぬほどに値切ってやろうと考えたのだ。
暗殺者の多いこの時期。護衛たちは余計な仕事が増えることを嫌がったが、主人の言いつけであれば断われない。
念のため周囲を護衛で固め、自称商人とけちな貴族による商談ともいえぬ商談が始まった。
たとえば挨拶。自称商人は高価なお菓子をお近づきにと献上し、さらにはお酒まで献上した。
他に商品をもっていない所からして、きっと菓子と酒を売る商人なのだろうと貴族は考えた。お試しにと差し出してきた酒をしこたま飲んで、買う約束はしていないといって放り出せばタダで手に入る。そんな風に。
「用心棒さんお仕事お疲れ様です。貴族さんの相手は大変でしょう? これをどうぞ……!」
自称商人はよいカモだった。酒を全て差し出して、呑みきれない分は用心棒たちにまで配った。
貴族は貨幣一枚も出していないのに『良い買い物をした』などと言って、上機嫌で自称商人を帰らせたのだった。
……と、ここまでの流れを見れば、これが商人などではないことがわかろうというものだ。
「さて、と」
変装を解いたルルリアは針金を使って裏口の窓をすみやかに解錠し、ベッドの下へと隠れた。気配を消し、闇に紛れる。
やがて酔っ払った貴族がやってきてベッドに横たわり、沈むように寝息をたてた頃……ルルリアは短剣を手にするりと現われるのだ。
「これで、苦しむ人たちは減るでしょうか」
ルルリアは窓から外へと飛び出した。
後に残るは風に揺れるカーテンと、雪の吹き込む窓と、息絶えた貴族だけ。
●裏面突破
「相手は暗殺に慣れてるようですし小細工は少なめに」
サングィスは透明な小瓶を数えていた。
持ち前の科学センスや医療知識によって揃えたいくつかの薬品だ。
よからぬ生活をしている貴族たちはそれだけ健康を害するリスクも負っている。だがそれを補って余りある金があり、その金で健康を買うのだが、具体的には薬を買っているのだ……と、思われる。
エリクと共にそれなりの変装をして、二人は貴族屋敷の扉を叩いた。
雪積もる日の来客である。
あからさまな暗殺者でなかったとしても面倒なことだ……とでも言いたげに、門番は嫌そうに扉をあけた。
「今は高貴な方に顔を繋ぐ機会ですので取次お願いできないでしょうか?」
「私は護衛です。お宅のご主人様は大丈夫だと思いますが、悪い人もいるのでね」
二人はそんな風に語りながら茶色い酒瓶を取り出した。
人の懐に入るかのような手際で門番の心を掴む。
門番も『中に入れるくらいなら』と言って屋敷の中へと入れてくれた。
サングィスたちを取り次いだのは屋敷の執事だった。ターゲットの目の前とまではいかなかったが、戦闘をせずにここまで入ってこられたのなら上出来だ。
「医療用の薬がこちらに。時期柄、毒物はありませんが……特殊な薬剤は御用意があります」
などと交渉をするふりをして、サングィスは商品の中に隠していたナイフを引き抜いた。素早く術を放ち、銃を抜こうとした執事をはじき飛ばす。
一方でエリクは剣を抜き、駆けつけた用心棒たちを挑発しはじめた。
ナイフや剣がぶつかり合い、護衛の男たちを突き飛ばす形でエリクたちは廊下へ転がり出る。
「お逃げください!」
ターゲットの貴族を逃がすように立ち塞がる護衛。
「私の名はエリク。貴方には冷えたエール程度の価値がある。嬉しいだろ?」
エリクは貴族たちに挑発をしかけながら、まっすぐに突っ込んでいった。
援護するようにサングィスが血のような色をした矢を放つ。
裏口から逃げようとした貴族はぐええと言って倒れ、床に転がった。
「貴族に義理立てするなら構いませんが、この辺でやめにしませんか。私たちは金品目的ではありませんし」
エリクの呼びかけに、今日限りで雇われていた護衛たちが見るからにやる気をなくす。
それが通用しない相手が突っ込んでくるが、エリクは盾を翳して応戦した。「さぁ、逃げましょうか」
『依頼は貴族の暗殺だったが?』
「目撃者がいるとまずいでしょう?」
サングィスが儀式呪具となにやら話している。すると可燃性の液体をカーテンに放ち、火をつけた。
燃える屋敷に慌てる護衛たち。
エリクたちはそれでも追いかけてくる執念深い一部の護衛と戦いながら、屋敷から逃走した。
●正面突破
グレイが杖を手に目を閉じている。
彼と五感を共有しているネコは貴族の屋敷の周囲を歩き回り、逃走するのに有効そうな扉や窓の位置を確認していた。
突入した自分たちが逃げるためではない。
「よし、ここだね?」
グレイはこんこんと裏口の扉をノックした。一瞬遅れて扉が激しい音を立てて壊れる。
「ここが僕らの玄関だ」
「グマハハハ、俺はヒグマゴーグ! にわか貴族の首を貰い受けに来たぞ!」
先行して飛び込んだヒグマゴーグが声と強い眼光でもって戦場の主導権を握りにかかる。
物音に反応して集まった護衛たちが一部ヒグマゴーグに集中し、襲いかかってくる。
ヒグマゴーグは拳を構え、飛来する銃弾を防御。そのまま突っ込んでいった。
無理矢理に体当たりを仕掛け、突き飛ばす。廊下に飛び出し、階段を見つけると、剣を振り込んできた相手に強烈なパンチを見舞った。
「見上げた仕事ぶりだが、命を懸けるほどの相手か? 死にたくなければさっさと逃げるのだな!」
相手は今日限りの護衛だったのだろう、ヒグマゴーグにかなわないとみるやすぐに逃げていく。
注意すべきは貴族が生きていることで甘い汁を吸っていられる護衛たち。つまりは古い連中だ。
儀式短剣を手に飛び出してくる護衛。見たところ魔術師のようだ。
「いっしょに、おどる? ――よろこんで」
戦いの意志ありとみた白日はナイフを手の中でもてあそびながら、相手へと襲いかかった。
相手は手を翳して魔術を放ったが、それを踊るように回避。
ゆらりと相手の背後に回り込むと、白日は相手の身体にナイフを差し込み恐ろしい魔術を直接に打ち込んだ。
横を通り過ぎながら、杖の先端でばちんと火花を散らしてみせるグレイ。
「これ以上の邪魔をするならキミたちも殺すことになるけれど」
「狼藉はそこまでにしてもらおうか?」
赤髪の男が屋敷の奥から現われる。
スキンヘッドの巨漢と小柄なナイフ使いを連れて。
「今すぐ帰るなら指を切るだけで許してやろう。金目のものを全て置いていくなら一本だけで許してもいい」
「ころしてっておねがいされた」
それが全てだとでも言うように、白日が階段を駆け上がっていく。
ナイフ使いが飛びかかり、至近距離でぶつかり合った。
同じく階段を駆け上がるヒグマゴーグ。スキンヘッドの巨漢とにらみ合い、拳と拳を正面からぶつけ合った。
一方、魔術師を倒し終えたグレイはゆっくりと貴族へと歩み寄っていく。
「く、くるな!」
貴族が銃を撃つが、グレイの周囲に展開した魔術が弾丸を勝手に弾く。
そうしている間に護衛たちは倒され、三人は貴族を囲むように立った。
「か、金なら……」
「ほほう。いくら出す?」
とヒグマゴーグは一度のるふりをしたが、すぐに拳を振り上げた。
「いや、やはり駄目だなぁ。貴族殺しの悪名は金では買えんからな!」
拳が、ナイフが、杖が振り下ろされる。
悪徳貴族がまた一つ、この世から掃除された。
こうして、幻想の地からいくつかの悪徳貴族が消え去った。
手を下したイレギュラーズたちは貴族暗殺の請負人として、闇にひっそりと名が伝わることだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
無事依頼を終えたのですね。
おけがをされたかたもいらっしゃるようですので、まずは身体を癒やし、おくつろぎくださいませ。
GMコメント
いらっしゃいませ、イレギュラーズの皆様。
暗殺の依頼をお受けになりますか?
これに成功することで幻想エリアでの悪名ポイントを獲得することができるでしょう。
相談会場は闇酒場『Laboratory cube』。
ショウの置いていったコインでお好きなものをご注文くださいませ。
【依頼内容】
『要人暗殺』
こっそり暗殺コースと、がっつり暗殺コースの二通りがございます。
最低3件こなせば依頼成功。モチロン多ければ多いほど素晴らしいですし、依頼主だって喜びます。
お好みのコースをそれぞれお選びください。
●A:こっそりコース(1PCにつき1件まで)
こっそりと貴族の暗殺を行ないます。
飲み物に毒を混ぜる。遊女として二人っきりになる。身内になりすます。寝室に潜む。その他殺し方色々。ご自身のスキルや性格、そして趣味でお選びください。
ターゲットを殺害できれば成功。見つかって逃げ切れなくてもOKとします。
(※今回は逃走や脱出に失敗した場合『戦闘不能』判定のみをつけることとします。パンドラを使用するともうワンチャン逃げ出す機会が得られます)
●B:がっつりコース(2~3PCで共同で1件ずつ)
この際正面から突っ込んで邪魔者をばしばし倒してターゲットを殺っちまおうぜというシナリオです。これもこれでれっきとした暗殺ですよね。
一人でこっそりやるのは性に合ってないという方や、隠れたり隠したりするのは苦手という方むけ。
貴族は屋敷に籠もっており、暗殺者の襲来もある程度予想しています。
『やる気の無い門番』や『金で雇われた用心棒』などを倒し、ターゲットを暗殺しましょう。
【貴族たちのお屋敷】
お屋敷ごとに細々した違いはありますが共通してある程度の広さがあります。
なんかしら荒稼ぎして豪遊しているため、金額の高いものを好みます。
好きなものは酒、美術品、女や男、その他諸々です。悪いことをしてるせいか強くストレスを発散できるものを好むようです。
暗殺に対応すべく門番をつけ、用心棒(1~2人程度)を雇っています。
外は大雪が降っており、外には出たくは無いようです。
時間帯はいつでも構いません。好きな時間を選んでください。
【おまけ】
雪の多い季節は暗殺者が儲かる……かどうかは定かではありませんが、少なくとも大雪のおかげで今回のお仕事が入りました。
相談する内容も少なくなるやもしれませんし、折角ですから皆さんの暗殺に対する考え方や貴族への不満を語り合ってみるのもいいかもしれませんね?
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
●注意
この依頼は悪属性依頼です。
成功時の増加名声がマイナスされ、失敗時に減少する名声が0になります。
又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。
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