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シナリオ詳細

Luxure
Luxure

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●逃走
 ──ね。今のうちに、逃げて。

 嫌だと言った。けれど檻に阻まれたその子は、私に外まで出る道を教えるとにっこり笑って。
「全員じゃ逃げられないわ。だから、あなたが"先に"出るの」
 行け、というように突き飛ばされる体。大きく体が傾き、背中から宙へと投げ出される。
「──っ!」
 声なき悲鳴が喉から漏れて、屋敷の窓から転落した私は大きな草むらの中へと落ちた。同時に、異変に気付いた犬たちがキャンキャンと吠え始める。
(いたい、けど)
 戻れない。戻って酷い目に遭うのは私だけじゃない。
 草が肌に薄く朱を描いたが、気にしている余裕もない。私は一刻も早くこの大きな屋敷(檻)から抜け出すべく、1歩を踏み出した。


●そして──。
「……つまり、君は『ローレットが自分たちを攫った』と言いたいわけだ」
「ええ」
 身体中が滲んだ血と土に汚れ、綺麗とは言い難い。けれど少女は確かに綺麗な容姿をしているのだろうと思わせた。
 傷だらけの少女を眺めながら、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は再び口を開く。
「それで? そうだとしたら、君はどうしてここに来たのかな。攫った相手を殺しにでも?」
 最も、この少女1人にどうにかなるイレギュラーズなどいないだろうが。
 少女はショウを睨み付けると、低い声で「いいえ」と告げた。
「私だって攫われた1人よ。敵いっこないことくらいわかるわ。
 私は、ローレットへ依頼をしに来たの」
 少女は机の上にいくつかの石を置く。ギルド内の明かりに煌めくそれは──宝石だ。
「これを報酬の代わりに。換金すれば十分な額でしょう?」
 ショウを睨み据える少女に、ショウはにっと笑みを浮かべて。
「──それじゃあ、話を聞かせてもらおうか」



「まあ、要するに復讐ってことだよね」
 イレギュラーズを集めたショウはそう切り出した。
「調べてみたんだけど、そこの貴族は大層人気が悪い。徴収は厳しく、少しでも見目の良い子ども──とは言っても少年、少女というような年齢だけれど──そんな彼らを連れて行ってしまうのだそうだ。
 後者に関しては、心当たりのある者もいるかもしれないがね」
 少女には名言こそしなかったものの、ローレットは確かに人攫いなどの依頼も受けている。ギルドの記録を遡れば、彼女が犠牲となった依頼の詳細も見つかるかもしれない。
 善悪関係なく、『中立』の立場で依頼を受けるのかローレットなのだから。
 貴族がそのような少年少女を集め、どうしているかという話は──ここでは割愛させて頂こう。
「彼女のオーダーは『貴族の殺害』と『仲間の救出』。仲間を脱出させた後は屋敷ごと貴族の亡骸を燃やしてほしいそうだ」
 彼女にとって、彼女の仲間にとって忌々しきそれを残さないように。
「何にせよ、獲物は追い詰めて喰らうだけだ」
「ええ。貴族たる者、「ノブレス・オブリージュ」……だというのに、許されざる所業ですわ!」
 静かに、或いは激しく闘志を燃やすジェイク・太刀川 (p3p001103)とガーベラ・キルロード (p3p006172)を横目に、アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム (p3p000669)がショウへ口を開く。
「貴族への襲撃……となれば、夜間の方が良いのかしら」
「そこは任せるよ。まあ、夜目が利くなら勿論有利だろうけどね」
 本邸である屋敷を守るほどの私兵であっても、夜目が利くかと言えば微妙なところ。しかし救助対象は昼間の方が視界も良く、逃げやすいと考えられる。
「しっかり子供たちも助けてあげねーとっスね」
「はい。早く助けて、笑顔にさせてあげましょう!」
 日向 葵 (p3p000366)とユーリエ・シュトラール (p3p001160)は互いに頷きあって。
「いつものように、見惚れさせて差し上げましょう」
 そう告げるのは津久見・弥恵 (p3p005208)。彼らの片隅で新田 寛治 (p3p005073)が何やら黙考しているが、このメンバーの中からまたファンドされるのか。それとも助けだした少年少女の中から逸材を見つけるのか。
 何はともあれ、面子は揃った。そうグリムペイン・ダカタール (p3p002887)は勿体ぶったように告げる。それはまるで、ストーリーテラーの如く。
「さあ──表紙を開こうか」
 イレギュラーズの新たな冒険。その、1ページを。

GMコメント

●成功条件
 貴族の殺害・屋敷ごと全焼させる
 囚われている少年少女の救出

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 不明点もあります。

●フィールド
 幻想国内の貴族邸。
 門より屋敷までの間には猟犬がおり、屋敷内に入っても警備の目があります。
 広い屋敷ですが、住人は貴族と囚われの者のみです。

●エネミー
・猟犬×6
 鋭い嗅覚と爪・牙を持ちます。
 複数回行動に優れていますが、防御技術は低め。他はそこそこです。

・私兵×25
 帯剣している兵士。部屋の前で警備している者もいれば、屋敷内の巡回・休憩中の交代要員もいます。
 全てと戦う必要はありませんが、必要に駆られるかどうかはイレギュラーズの動きにかかっています。
 攻撃力は低めですが、連携した攻撃を行います。

・貴族×1
 豚のような風体をした男です。センスが悪くゴテゴテした服を着た、ある意味典型的な貴族でしょう。
 武器は持っていないようですが、隠しているかもしれません。鈍足ですが、脂肪のおかげか防御技術は高いようです。

●救助対象
・少年少女×12
 見目の良い子供たち。どうやら数人ごと、ばらばらに捕まっているようです。
 依頼人の証言により、見知らぬ他人には極度に怯えることがわかっています。依頼人を含め、彼らは移動の際に細心の注意を払われており、屋敷の内部構造に関してはほぼ知り得ません。
 五体満足ですが、もしかしたら酷く体力を消耗した者もいるかもしれません。

●ご挨拶
 リクエストありがとうございます。愁です。
 「実は俺(私)、攫った依頼を受けていたんだ……」という設定は全然オッケーなのですが、その発言で(架空の依頼分の)悪名が増えるわけではないのでお気をつけください。
 お楽しみ頂けたら幸いです。よろしくお願い致します!

  • Luxure完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年09月07日 21時40分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
黒焔の薔薇
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
愛の吸血鬼
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
津久見・弥恵(p3p005208)
嫣然の舞姫
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige

リプレイ


 かつて、少年少女たちを攫った依頼──そのオーダーに関わった『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)と『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)から子どもたちの家を聞きだした『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は、町を駆けてその場所を順繰りに回っていた。
(ここか)
 鋭い嗅覚で家の匂いを覚え、ジェイクはすぐさま次の目標地点へ。12人分の家の匂いを嗅ぎ、覚えなければならない。
(これで、子どもの匂いを嗅ぎつけられたらいいんだが)
 彼らには帰る場所がある。帰りを待っている『家族』がいる。ジェイクの憧れるそこへ、何としても子どもたちを返してやらねば。
 そんな彼らが囚われている屋敷に今、1人の男が訪れていた。応対した相手が「貴方は、」とかつて会った際の姿を思い出す。
「ご無沙汰しております。本日はハーモニアの少年少女を売り込みに参りました」
 一礼した寛治は何の疑問も持たれずに門を通された。イレギュラーズの中には冒険者を本職とする者ばかりではない。寛治が人身売買のブローカーを名乗って訪れても──さらに言えば、過去の依頼をこなした実績もあれば、疑う余地はないというものだった。
 寛治は屋敷の者の後へ続きながら、庭で睨みつける猟犬たちへちらりと視線をくれると、屋敷へ足を踏み入れる。扉が閉められ、応接間へ案内される間に寛治はふと立ち止まる。あとからそれに気づいた案内役の男が不思議そうに振り返った。
「失礼。品のある絵画に目を奪われてしまいました」
 そう告げて再び足を踏み出した寛治の後ろで、小さな姿が廊下の影へと走って行く。灰色の小さなネズミ──それを使役する『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は、潜入成功に息をついた。
(新田さん、ありがとう!)
 心の中で礼を告げ、ネズミを介して見える物に集中する。私兵の足音に気をつけながらネズミはちょろちょろと1階を走り回り、その構造や部屋の中を探索した。
 応接間の前を通ると寛治の声が微かに聞こえてくる。もう1人の声は件の貴族か。話が盛り上がっているように聞こえるあたり、恐らく『商談』が上手く行っているのだろう。
「『遊ぶ』際の寝室も、よろしければインテリア等のご提案を。寝室の概要を教えていただければ、ご提案書をお持ちします。やはり、お屋敷の最上階にお誂えで?」
「ああ、やはり眺めは良い方が楽しめる──」
 ネズミの聴覚を介して聞こえてしまったその言葉に、ユーリエは表情を曇らせざるを得ない。『人の醜い所まで愛せ』とはよく言うが、それにだって限度というものがある。
(人を殺めるということはあまり気乗りしませんが、この貴族にはそういう感情すらも──)

(あの貴族、やることがマジで悪趣味っスけど……攫っていった子どもを助けるとか、中立ってのもラクじゃないっスね)
 屋敷を遠目に、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は表の門を観察する。特にこれといった技能を持ち合わせているわけではないが、それでも何かおかしなものが設置されていたら気づくだろう。
(こっち側は何もなし、か)
 目立った異変を感じず、葵はその場からそっと離れる。次に向かうのは裏口の見えそうな場所だ。その頭上をチチ、と青い小鳥が鳴きながら飛んでいき、葵が観察していた屋敷の屋根に留まる。その視線に映るのは屋根ばかり──ではなく、それを透視して屋根裏だ。誰かの部屋ではあるようだが、人も荷物もない。今はいない、住み込みで働く使用人のための部屋かもしれない。
(幼い子が、復讐……いえ、手を貸しましょう)
 束の間目を伏せた『ひとりの吸血鬼』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)は小さく頭を振った。その復讐を遂行し、少女の仲間を救う事が今回のオーダーだ。
 感覚共有された小鳥が場所を移り、屋敷のバルコニーへ留まる。ぐるりと見渡せば屋敷の中から庭、そして裏口まで良く見えて──丁度裏口から出てきた業者へ話しかける女の姿も目に出来た。
「おや、あんたは──」
「オーホッホッホ! ええ、私こそキルロード男爵家が長女、ガーベラ・キルロードですわ!」
 幻想にその領地を持つキルロード男爵家。長女である『noblesse oblige』ガーベラ・キルロード(p3p006172)の名を業者も知っていたようで「やはりガーベラ様でしたか」とにっこり笑う。
「あなた、この屋敷から出てきましたわよね? 何か噂話とかご存知かしら」
「そりゃあ、」
 と言いかけて業者が素早く視線を周囲へ走らせる。こちらへ、と建物の影へ移動したガーベラは潜めた声で「聞かれるとまずい話ですわね」と告げた。
「ええ、ええ、そりゃあもう。あの貴族の悪口なんて下町じゃあよく聞きますが、屋敷の周囲ではみんな口を噤んでいますから」
 腐っても領主、ということだ。その耳に入れば自分たちが、そして攫われた少年少女が何をされるか分かったものではない。
 業者から、そしてさらに何人かから情報を集めたガーベラは仲間たちの元へと戻る。そこへ「次回は商品リストをお持ちします」と約束を取り付けて出てきた寛治が合流した。
「どうだった」
「ええ、やはり寝室は最上階で──」
 寛治が交渉の最中に得た情報。アリシアやユーリエが放ったファミリアから掴んだ間取り。ガーベラの聞いた噂話。それらを纏め、こんなこともあろうかと、とアリシアが用意していたペンとメモで情報を残していく。
「こんな感じかな? それじゃあ夜まで待って──」
 グリムペインは屋敷をみて小さく目を細める。簡単に逃がしてしまえば物語の代役にだってなれやしない。
「──落第者には舞台の上からご退場願おうか」



 日が暮れ、明かりが灯される。それは屋敷も例外でなく、窓から従業員の動く影がちらほらと見えた。
 ユーリエの髪が銀に染まり、その頭上にパタパタと可愛らしいコウモリが呼び寄せられる。
「周りで何か見えたらキィって鳴いてね!」
「キィ!」
 返事の代わりに鳴いたコウモリ。小さく笑ったユーリエは、しかし屋敷を視界に収めると真剣な表情へと変わった。
「さあ、カチコミに行くっスよ」
 葵の言葉にユーリエ、アリシア、ジェイクが頷く。昼間に何もないことを確認した門をぶち破り、4名は表門から侵入した。
「来るぜ」
 いち早くジェイクの狼の鋭い嗅覚が死の匂いを感じ取る。同時に猟犬たちが気づき、吠えながら向かってきた。
 すぐさま葵が放ったのは真っ赤なコウモリ──の形をした、複数のエネルギー弾。キャン、と悲鳴を上げて何体かに被弾する。その間にアリシアは自らへ祝福の囁きをかけ、圧倒的な眼力でもって猟犬たちを睨みつける。
 葵に続いて銀の雨を降らせたジェイクは、猟犬たちの傷つく姿に苦いものを感じてしまって仕方がない。
(人間より、犬を殺す方が精神的に辛いぜ)
 狼の子と共に育った故か。その時のことを思いだしてしまっても、今ヒトの側に立っているジェイクは武器を向ける他ない。
 温度視覚で夜闇の薄暗さを補助していたユーリエは、向かってくる猟犬たちから急所を庇いながら赤黒い鎖を放つ。
「絶対に──仕留める!!」
 その強い意志と共に1体の猟犬へ鎖が巻き付き、苦しめる。その鎖によって何となくの位置を察した葵が勘の良い蹴りでシルバーのサッカーボールを猟犬へ命中させると、その体はぐったりと伸びて動かなくなった。
「まずは1体だ」
 葵が小さく呟き、次の相手へと視線を向ける。攻撃の矛先を向けられているユーリエへアリシアがブレッシングウィスパーを施す間に、同じように攻撃を向けられていたジェイクから再び銀の雨が降り注がれた。

 ──騒ぎに屋敷全体が慌ただしくなる、その最中に。

「今なら大丈夫そうですね」
 寛治の言葉にグリムペイン、ガーベラ、弥恵が続いて裏口へと近づく。グリムペインの手によって裏口の鍵はいとも簡単に解除された。
「おやおや、建て付けが悪いんじゃないかい?」
 ニィ、と笑みを浮かべたグリムペインは、音を立てないよう扉を小さく開けて。そこに人も獣も気配がない事を確認すると、4人はするりと滑り込むように侵入する。エコーロケーションで周囲を確認していた弥恵が、小さく眉を寄せて口を開いた。
「……そこに、1体いますね」
 まだ少し遠いか。しかし屋敷に近づく間には気づかれてしまうだろう。そうなる前にと賢治が愛用のステッキを構え、狙撃する。その衝撃に犬は素早く立ち上がってイレギュラーズを睨みつける──が、すぐには動きださない。いいや、動き出せないが正しいか。
「おっと、縄張りに入ってすまないね。だが──」
 グリムペインが向けたのは多重魔術。その口から低く「──所詮は犬か」と言葉が零れ落ちた。

「っ……こんなもんか」
 傷にジェイクが顔を顰めながら辺りを見回す。特に死の匂いは感じられない。
「よし、なら屋敷へ向かうっスよ。あっちが本番だ」
 まだ私兵とは1度たりとも交戦していない。貴族を狙う以上、彼らとの交戦は不可避だろう。
 閉じられていた扉を渾身の技で破壊し、4人は2組に分かれると私兵を探して走り出した。



 遠くで怒号が聴こえる。屋敷の私兵たちの声だろう。
「始まったみてぇだな」
「ならこちらも動きましょうか」
 弥恵はエコーロケーションで隠し部屋に気をつけながら探索を始める。この屋敷のどこかに囚われた少年少女と──殺害をオーダーされた貴族もいるはずだ。
(殺しは好むところではありませんが、綺麗ごとだけで生きているつもりもありませんし)
 生きていけるとも思ってはいない。そして、子どもの笑顔を曇らせる者に容赦する心は持ち合わせていない。
 傍らのガーベラは感情探知で子どもたちの心情を予想して探す。
 辛い、苦しい、助けて。そんな感情を幾つかの場所で感じ取った彼女は、他の3人に「こちらですわ」と案内を始めた。
(ノブレス・オブリージュ……貴族の義務を軽視し、民を……しかも幼子を自身の欲で虐げるなんて)
 この屋敷の貴族は、貴族に非ず。必ずやキルロード家の名に懸けて子どもたちを保護せんと、ガーベラは決意を胸に廊下を駆けた。
 正面から侵入した仲間たちによるものか、私兵の姿は1人として見当たらない。誰にも会わずに屋敷を移動した4人は、ガーベラが立ち止まったことでその足を止めた。
「ここですわ!」
 ガーベラがドアノブに手をかける。だが、どうやら鍵がかかっているらしい。
「私が開けよう」
 グリムペインが代わりに扉の前へ立ち、ワイズキーでまた鍵を開ける。扉を開くと、幾つかの檻とそこへ入れられた子どもが3人。彼らはグリムペインの姿を見て怯えた色を瞳に宿した。
「オーホッホッホ! 私はガーベラ・キルロード! 皆様を助けに来た者ですわ!」
 続いて発されたガーベラの言葉に彼らは次いで困惑の表情となり、グリムペインと寛治、そしてガーベラを順繰りに見回す。
「私達が来たからにはもう安心ですわ。さあ、ここから逃げましょう」
 ガーベラがそう声をかけている間にグリムペインが檻の鍵を開け、子どもたちを解放する。
「さあ──『もう大丈夫だ』」
 彼の瞳が妖しく煌めき、それを目にした子どもはその瞳から怯えの色を消した。うん、と小さく呟く声にも先ほどまでの怯えは見られない。
「催眠、ですか」
「ああ、もう堪能したからね」
 寛治が小さくそう口にすればグリムペインはそう返して。そう、保護に回った2人は奇しくも攫った依頼に参加していたのだ。
「誘拐依頼を受けた者が助けに来たら、どうゆう顔をするのか。ふふ、ちょっと興味があったんだ。君は?」
「私は仕事であれば、何事も確実に遂行する。ナンノブマイビジネス、それだけです」
 さあ、次へ行きましょう。そう告げて、寛治は廊下へと体を向けた。

 私兵を半分ほど倒しただろうか。合流地点と定めていた階段付近に続々とイレギュラーズが集まる。暗殺班と保護班が合流すると、ユーリエは途中で保護した子どもを保護班の面々へと渡した。
「もう大丈夫だからね」
「うん……」
 SPLで回復を施した子どもは、しかしまだ不安げな表情でイレギュラーズを見る。無理もない、まだここは屋敷の中なのだから。
「俺たちの方も見つけたが、待機させてる。玄関を入ってすぐ左だ」
 ジェイクの言葉にグリムペインと弥恵が向かい、暫しして3人の子どもを連れて戻ってきた。
「これであと見つかっていない子は1人ですわ」
「こちらもまだ、貴族が」
 ガーベラの言葉にアリシアが首を振る。まだ依頼は完遂できない。恐らくどちらも、いるのは2階だろう。
「さっさと行くぜ」
 ジェイクの言葉に皆が頷き、階段を駆け上がって順繰りに部屋を回る。鍵がかかっていればグリムペインが解除し、私兵に遭遇すれば戦闘不能へと追い込んで。
「おい、子どもが脱走しているぞ!」
「なんだあいつらは!」
 口々に戸惑いの声を上げる私兵の元へ、寛治が放った自走式爆弾が一直線。その爆破によろめいた敵の足元へ斬撃が走る。
「ぎゃあああ!」
「ふふ、その足が小さすぎるのかしれないね?」
 グリムペインが楽し気に笑って。次に開けた部屋では、少女が1人静かに待っていた。
「ずっと騒がしいなって思ってたの。あなた達は助けに来てくれたのかしら? 殺しに来たのかしら?」
「もちろん、助けに来たんですよ。もう大丈夫です」
 弥恵が安心させるように声をかけ、グリムペインが檻の鍵を外す。その内心は先ほどよりもさらに楽しくて仕方がない。だって──。
(怯えずに状況を把握しているんだね。ああ、将来が楽しみだなあ)
 良い主人公の素質を持つ少女。出来る事なら、いつか──再び見る事ができたらと思う。
 保護組が最後の1人を救出する、その間に暗殺組が廊下を走り抜けて最後の部屋を蹴破るように開けた。
「貴様らか、この屋敷で暴れているのは!」
 そう怒るのは煌びやかな豚──ではなく、この屋敷の貴族。葵が放った強烈なシュートは腹の肉がぼよんと返す。痛そうだが致命傷では、ない。
「だ、誰に向かってこんなことをしているのだ! おい! 誰か!」
「もういねぇよ、誰も」
 ジェイクの銃弾が炎を起こし、貴族を焼く。振り払ってもその炎は取れず、苦痛に顔を歪めた貴族は懐から銃を取り出した。
「許さん……この私がこんな終わり方など!」
 発砲音。けれどそれによってできた傷はユーリエが治してしまう。1人に対して多人数というのは、あまりにも一方的なもので。
「殺せって言われると気乗りはしねぇけど、これも依頼っスから──精々あの世で悔いるっスよこの外道が!」
 先ほどよりも数段速度の上がった一撃が、貴族の体へと吸い込まれた。



 ごうごうと燃える屋敷を背に、イレギュラーズと子どもたちは屋敷から全力で逃れる。弥恵の応戦する追手がいなくなり、十分な距離を取ってようやく彼らは立ち止まった。
 見知らぬイレギュラーズ──その中にはかつて自分たちを攫った者の姿もあり、不安を見せる少年少女たち。その前にガーベラが立ち、優雅かつ真摯に謝罪の礼を取る。
「キルロード家の名に懸けて、必ず皆様をご家族の元へ戻すとお約束しましょう」
「家に……?」
「私たち、帰れるの……?」
 その言葉は思いもよらないものだったのだろう。子供たちは目を瞬かせ、互いを見て、またガーベラを凝視する。ガーベラは安心させるように頷いた。
「今後、何かの報復がないよう根回しも致しますわ」
「家族の元へ戻って、普通の暮らしをして……そうしたらいつか、私の舞いを見て笑顔を見せて下さいね」
 もしよろしければ歓声も、と弥恵が微笑んで告げる。少しずつ子どもたちから張り詰めた雰囲気が解けていく気配がした。
「帰る……うん。私たち、帰る。帰って、ただいまって言うの」
「弟、元気にしてるかな」
「お兄さん、お姉さん、助けてくれてありがとう」
 口々に望みを言い、待つ者に思いを馳せ、イレギュラーズへ礼を言う子どもたち。だが、そこへジェイクは厳しい声をかける。
「俺たちに感謝はいらない。仕事でお前たちを助けただけだ」
 その言葉にはっと子どもたちが凍りつく。そう、このヒトたちは『仕事』で自分たちを助けたのだと忘れてはいけない。その仕事が別の内容であっても──自分たちも含めた暗殺や、また誰かを攫ってつれてくるといった内容であっても──それを遂行するヒトたちなのである。
 小さな怯えが瞳に混じったのを見て、ジェイクは子どもたちから視線を逸らす。そして、ただひと言。
「──今後、お前たちがローレットと関わりのない人生を送れることを祈るよ」
(俺のような人間が、子どもたちと関わるべきではない)
 そう心に念じて、ジェイクは彼らに背を向けた。
「さあ、行くぜ。家までくらいは送ってやる」
 ジェイクの言葉に他の者も続き。グリムペインを先頭に、不安げな者がいればアリシアやユーリエが手を引いて共に町へと戻って行く。

 ずっと、祈っている。子どもたちが危ないことに巻き込まれないように。復讐なんて考えなくて済むように。
 ──『家族』とともにいつまでも、平和で平穏な暮らしができるように。

成否

成功

MVP

ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige

状態異常

なし

あとがき

 リクエスト、ありがとうございました。
 無事12人の少年少女たちを救出、屋敷は全焼となりました。また、領主であった貴族が死んだことにより、誰かが変わりに民の上へ立つこととなるでしょう。

 それではまたのご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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