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シナリオ詳細

砂漠のハゲ鷹

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂漠にピッカリハゲ頭
 『傭兵』国家が押さえる交通の要衝、ラサ砂漠。大陸の各地を陸路で行き来しようとすれば、大抵この砂漠を通ることになる。商人達はラクダ隊を組織し、傭兵達に金を払ってこの砂漠を進むのだ。
 かくして世の交易路の多くが収斂するこの砂漠は、陰謀の温床ともなりやすい。今もまた、事件が一つ起きようとしていた。

 砂漠の丘陵を、ラクダが列を成して走る。その背中には大量の積荷が載せられていた。砂漠を進むとある隊商の一団である。
 そんな彼らを取り囲むように、ラクダに跨った別の一団が攻め寄せていた。砂漠でも軽快に走るラクダは、簡単に隊商を囲い込んでしまう。ハゲ頭の男は弓を構えながら先頭の商人に向かって叫んだ。
「ほうら! 命が惜しけりゃその積荷を全部置いていくこったな!」
「……今回の商談には我が家の命運がかかっているのだ。そうおいそれと渡すわけにはいかん」
 白いターバンで顔を覆い隠した傭兵が、曲刀を抜き放ってハゲ頭の乗るラクダへと襲いかかる。男はラクダの腹を蹴ると、素早く間合いを取り直した。空から降り注ぐ太陽の輝きが、男のハゲ頭を眩しく照らした。
「なら残念だったな! この『砂漠の禿鷹』に睨まれた時点で、お前の命運は尽きちまったってわけだ!」
 ラクダに跨る弓兵達は、一斉に弓を引き絞る。砂漠を大きく駆け回り、複合弓から放たれた鋭い一矢は傭兵の腕や足を次々撃ち抜く。傭兵部隊は彼らへ追い縋ろうとするが、ラクダと人の足では勝負にならない。遠巻きに矢で貫かれ、次々砂の上に伏していった。
「くっ……」
 ラクダはあっという間に間合いを詰め、隊商を取り囲む。弓兵達が再び矢を番える横で、彼女は
「別にお前らの命が取りたくてこんなことやってんじゃあねえんだ。その荷物をここへ確かに置いていきゃあ、俺はもうそれ以上何もしない。元の国にとっとと帰してやるからよ。さあどうする」
 何本も矢を向けられては、もう断る術など無い。商人は無念の表情を浮かべ、じっと俯くのであった。

●ハゲタカ狩り
「今日の任務は、近頃砂漠に出現する盗賊の退治なのです」
 コルクボードに留めた地図のど真ん中に、ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はピンを突き立てる。
「最近、毛織物を運ぶ商人達を狙った襲撃が相次いでいるのです。ラクダの足を生かして一気に近づいて、護衛の傭兵さんを襲った後、そのまま商人を脅して荷物を奪っているみたいですね。皆さんも戦う時は、砂漠に脚を取られて集中攻撃を受けないように気を付けてくださいね」
 金に糸目を掛けずに雇った傭兵団でも容易く排除されてしまうお陰で、あっという間に輸送が滞るようになってしまった。そうユリーカは付け足す。
「そんな襲撃を指揮しているのは、『砂漠の禿鷹』というハゲの傭兵さんらしいですよ。その道では仕事を選ばない事で有名で、この一件も誰かから良からぬ依頼を受けて動いている……かもしれないのです」

「とにかく、依頼主の人からはデッドオアアライブと言われてるので、とにかく悪い傭兵さんを退治して、どんな商人さんも怯えず動ける砂漠を取り戻してくださいね」

GMコメント

●目標
 盗賊の討伐。生死は問いません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 昼間。砂漠の丘陵で戦闘を行います。
 空から眩しい日差しが照り付け、非常に暑いです。常にイレギュラーズの体力を奪っていくでしょう。

●敵
☆砂漠の禿鷹
 それなりに名の知れた傭兵。金さえ積めば仕事は選ばないため、毀誉褒貶様々付きまとう男でもある。ハゲ。
・攻撃方法
→騎射攻撃……移動しながら攻撃を行います。的が絞れずこちらからの反撃は難しいでしょう。
→駱駝突撃……曲刀を抜いて突っ込みます。直撃を喰らえば吹っ飛ばされてしまうでしょう。

☆ラクダ騎兵×9
 禿鷹が率いるラクダ騎兵。気性の荒いラクダを乗りこなしていることが既に高い実力を示している。
・攻撃方法
 禿鷹を参照。

●TIPS
・戦闘を通さない和解は不能。戦って実力を示してやろう。



影絵企鵝です。砂漠の動物と言えば……と考えながらシナリオを練っていたら、いつの間にかハゲが出てきました。マヌケな容姿ですが実力は十分です。押し切られないように気を付けてくださいね。

ではよろしくお願いします。

  • 砂漠のハゲ鷹完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月02日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
リナリナ(p3p006258)
天狼 カナタ(p3p007224)
夜砂の彼方に

リプレイ

●ものすごいハゲ!
「毛織物の取引? あー、もう駄目だ。参ったもんだぜ」
 ラサの酒場。アルパレストの紹介状をちらつかせるレイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)に向かって、ジョッキを傾けながら商人は応える。
「……ちょっと北に進んだだけで積み荷を置いてけの大合唱だ。馬鹿な奴が毛織物を独占しようとしてんだな」
「なるほど。この件についてはワタシ達が何とかするつもりだ。そういうわけだから、砂漠用の装備一式、ちょっと優遇させてもらえないかね」
「何とか? はあん、そうだなぁ。それならうちにある装備を貸してやるさ。これから需要も上がって来るんだ。このまま独り占めにされんのもしゃくだしな――」

 そんなわけで、イレギュラーズの一行は行商の身なりで砂漠を進んでいた。日除けのターバンやら白い長布やら纏って、リナリナ(p3p006258)が用意した馬車を“メカ子ロリババア”に繋いで引かせている。車輪も砂漠用である幅広のそれに履き替え、準備は万全だ。
「ハゲ! ボスがハゲ! むおー、ハゲハゲ盗賊団だなっ!」
 御者の席に腰を下ろし、リナリナはマンモの肉を齧る。亘理 義弘(p3p000398)は暢気に足をばたつかせる彼女を見遣った。彼も普段のヤクザスーツではなく、眩い陽光を撥ね返す白い外套に身を包んでいた。
「盗賊というよりは傭兵だな。そいつらを叩き潰して交易路の安全を確保するのが今日の仕事だ。ラクダを自在に操るような奴等だ。砂漠の戦いなら経験豊富だろう。余裕はねえ。全力で――」
「おー、リナリナわかった! 毛織物を狙うのも毛不足が原因だなっ! とにかく毛がある人も、無い人も、みんな毛織物不足で困ってる! ハゲハゲ団倒す! 毛織物の流通回復! おー、任せろ!」
 白い骨を脇へ放り出してリナリナは叫ぶ。義弘はやれやれと首を振った。
「本当にわかってんのか……?」
 馬車で2人がそんなやり取りを繰り広げている間に、馬車の後ろでは藤野 蛍(p3p003861)が桜咲 珠緒(p3p004426)の肩を支えながらともに歩いていた。親友同士の2人はお揃いのベールを着込んでいる。
「……ふう。流石に、真昼の砂漠は暑いですね……何だか頭がくらりと……」
「ちょっと、珠緒さん、平気?」
 蛍はじっと珠緒の顔を覗き込む。病弱な彼女の額には、汗すら浮かんでいなかった。ただ頬をうっすら染めて、彼女は息を荒くしている。
「はい。……ちょっと足下はおぼつきませんが、水分補給と、塩分補給は、怠らずに」
「そうは言うけど……」
 玉のような汗を浮かべながらも、蛍の足取りは確かだ。天狼 カナタ(p3p007224)はそんな2人組を見遣る。
「まあ、水分を取ってれば楽にしのげる暑さってわけでもないからな。早めに仕事は済ませた方がいいだろう」
 彼は白い外套を被っていた。銀の毛皮は日光を反射する。周りの仲間に余計なダメージを負わせかねないのだ。毛皮の上から外套も着るとなるとどうしても蒸し暑いが、周りに迷惑をかけるよりはマシであった。
「毛織物狙いか。懐かしいな、この銀の毛皮を狙う阿呆共などが居たものだ」
 カナタは皮肉交じりにふんと鼻を鳴らす。ベールで顔まで覆いながら、彼の言葉に合わせて岩倉・鈴音(p3p006119)はかたかたと肩を揺らした。
「砂漠で商品奪ってチンケな盗賊人生とは。ほんとの実力があるなら、まっとうに稼ぐ冒険者であるべきだネ!」
 鈴音は懐から取り出したCDのケースをじっと眺める。太陽の下で輝くそれは、今回の秘策となる予定だ。ロゼット=テイ(p3p004150)は尻尾をくるりと丸めた。
「まあ、盗賊と言っても志向性はあるからねえ。ただの盗賊なら、もっと嵩張らない積み荷を襲う方が実入りは良さそうだし。酒場の商人も言ってたけど、どこかの陰険な商人に雇われたってところかな」
 深緑との関係悪化が囁かれる今日この頃。やれ奴隷商売がどうのという話は、ラサのオアシスを離れていた彼女の耳にも届いていた。肩身の狭いであろう知り合いを思うと、たまにはラサの為にも働かねばという気分になるのであった。
 各々思案を巡らせたり暑さに喘いだりしながら砂漠を行く一行。その間にも暑さは体力を容赦なく奪っていく。元々虚弱体質な珠緒は、砂の塊に躓きほんの少しよろめいた。蛍は彼女を抱きとめ、仲間達を見渡す。
「ちょっとマズいかも。休憩した方が……」
「いや。残念ながら待ってはくれなさそうだねえ」
 レイヴンは首を振る。その手は既に弓へ伸びていた。砂漠の彼方には、既にラクダの群れの姿が見えていた。先陣を切るのは、革鎧の上から白い布を巻きつけた男。しかし禿頭は燦然と輝いていた。珠緒はそれを見て思わず息を呑む。
「この暑さで禿頭を晒し続けているとは……恐るべしなのです」
「やれやれ。……傭兵と深緑が揺れているような時期だっていうのに……」
 彼は素早く矢を放つ。曲刀を抜いた禿鷹は素早く矢を切り払い、歯を剥き出しにしてイレギュラーズを見渡す。
「おっと! ここに今日も今日とて商人が近づいてると聞いて来てみりゃ……随分と面構えが違うじゃねえか」
 ラクダ騎兵達は一斉に走って横列を組む。テイは禿鷹の正面に躍り出ると、短剣を抜き放ってくるりと宙返り、その場で素早く身構えた。
「そうだよ。これなるはロゼット族のマギ、テイ。砂漠がへんてこりんなこの時期に商人を襲って回るような不届き者がいるって聞いたから、ちょっと懲らしめに来たのさ」
 素早い名乗り口上。禿鷹は鼻で笑うと、ラクダの腰を2度素早く叩いて走り出す。
「そうかそうか! 俺たちゃまんまと嵌められたってわけだ。まあいい。ひ弱い護衛ばかり相手にするのも飽きてきたところだ。ちょっと楽しませてくれや!」
 右へ左へ、馬車を取り囲むように駆け出す騎兵達。複合弓を引いて、矢の雨を次々射かけてくる。その場で構えて矢を受け止め、カナタはぐるりとラクダの群れを見渡す。
「砂漠の禿鷹……ああ、名前は聞いた事があるな。禿鷹の飛行種という噂もあったが……なんてことはない。タダのハゲだったか」
 狼は高らかに吼える。被食者を畏怖させるその叫びは、しかし気性の荒いラクダには通用しない。溜め息をついたカナタは、腰を下ろして深く構えた。CDプレイヤーを担いだ鈴音は、その隣を駆け抜け群れの中へ突っ込んでいく。
「このハゲぇ! この岩倉鈴音が良いもん聞かせてやる! ローレットのありがたいお念仏を聞いてマジメに働けやァ!」
『社長、私と夜のファンドをしませんか? ……ええ。貴方自身の人生の投資です。夜明けまで話し合いましょう? ロゼでも飲みながら……』
 金儲けの話が流れるCDかと思っていた鈴音。しかしそこから流れてきたのは何やらムーディな声色。仲間達の顔は白け、鈴音は首を傾げる。
「あり?」
「うるせぇ!」
 禿鷹は顔を顰めて叫び、騎兵達は曲射で一斉に鈴音を射貫く。流石に防ぎきれなかった鈴音は砂に倒れ込む。彼女は歯を食いしばると、混沌の力で無理矢理傷を癒して跳ね起きた。
「いったあ! 何すんのさ!」
『貴方の人生、私に預けて頂けませんか? 私が何倍も豊かにして差し上げますわ。さあ、この胸に……』
「恥ずかしくねーのか、夜伽の語りなんて大音量で流して」
 溜め息をつく禿鷹。顔を顰めた鈴音は、プレイヤーを拾い上げて音量つまみをマックスにする。
「うるさい! こうなったらもう押し切るしかないんじゃ!」
 女性の甘い声色が砂漠に響く。禿鷹は興の削がれた顔をしている。リナリナは咄嗟にベールを脱ぎ捨てると、背負ったジェットパックを吹かした。
「じゃーん! ハゲハゲ団、アウト! イクゾーッ!」
 空高く舞い上がったリナリナは、そのまま右脚を突き出し急降下。禿頭は小盾で受けるが、同時に激しい爆発が炸裂する。ハゲとラクダは一斉によろめく。
「るら~! ネングの納め時!」
「くそっ! ならこっちも機動戦だ! 掻き回してやれ!」
 遠巻きに矢を放っていた騎兵達は、一斉に曲刀を抜き放って四方から突撃を始める。テイは短剣を逆手に持ち構えると、珠緒の傍へと一歩引いて身構える。2人が一斉に押し寄せてきた。背の高いラクダの上から、一気に身を乗り出して次々とテイを斬りつける。その身を捻って致命傷を避けながら、テイは握りしめていた短剣を頭上でくるりと振り回す。
「魔女を傷つけたら、それ相応の報いは受けてもらうよ」
 間合いを取り直そうとする騎兵達を、テイは刃の先に浮かぶ闇の月で照らし出す。その瞬間、不意に癇癪を起したラクダが騎兵達を砂の上に振り落とした。
「ぐあっ」
 そこへ一気に間合いを詰める義弘。拳を固めた彼は、両腕に髑髏模様のオーラを浮かべた。
「さあて、降りやがったな」
 曲刀を構えて振り返った兵士に向かって、鋭い右ストレートを叩き込む。ぐらついた仲間の横から、もう1人が袈裟懸けに斬りつけてきた。義弘はスウェーで躱すと、その鳩尾に一撃を叩き込む。息を詰まらせその場に崩れ落ちる兵士。おまけの一発を叩き込もうとしたとき、騎兵がもう1人突っ込んできた。ラクダの突進を受け、義弘は砂漠の丘陵を転げ落ちる。何とか立て直すが、別のラクダがさらに突っ込んできた。全身の骨が軋むが、何とか耐えきり駱駝上の男へ無理矢理殴り掛かる。
「ヤクザなめてんじゃねえぞ」
 そんな義弘の背後にふわりと空を駆けて蛍が近寄り、奉仕精神で生み出した光の珠を放つ。義弘の傷を癒しながら、蛍はくるりと背後を振り返る。3人の騎兵が珠緒へ押し寄せている。テイと鈴音が受けに回るが、1人が漏れて珠緒に曲刀を振り上げた。ラクダはぶすぶす唸ると、そのまま走っていなくなる。
「やめなさい!」
 蛍は鋭く叫び、曲刀を抜き放って騎兵の頭上から襲い掛かる。ラクダごと怯んだ騎兵の脇へ回り込み、刀を振り回して騎兵をその場に突き落とす。そのまま珠緒の傍に舞い降り、傍に寄り添う。
「大丈夫?」
「ええ。……助かりました」
 珠緒は小さく首を振り、鈴音に気付けの光を当てる。その身体から力を絞り出すほどに、だんだん意識が遠くなってくる。しかし珠緒は自らを奮い立てる。親友がそばで右に左に飛び回って力が尽くしているのだ。勝手に倒れているわけにはいかなかった。
 その背中に黒い翼を生やして、まるで天使のようにレイヴンは砂漠の空を飛び回る。騎兵の放つ矢を身を捻って躱しながら、反撃とばかり弓を引き、その鏃を天へと向ける。
「君らは暑さには強いだろう。が、寒さはどうかね?」
 放った矢は光となって砕け散り、やがて光は大きな雹と化して次々傭兵達の頭上に降り注ぐ。禿鷹の禿げ頭にも幾つも直撃した。
「いてっ! ……急に冷やしたら頭がくらってするぜ」
 禿鷹は素早く弓を引き、レイヴンの翼を矢で射抜く。バランスを崩し、レイヴンはよろめきながら地面に降り立った。レイヴンはローブを翻すと、騎兵達へ狙いを定める。
「やってくれるね。……けど」
 魔力の塊を放つ。騎兵の1人は鞍から吹っ飛び地面に墜落した。落ちた男を見遣り、禿鷹は舌打ちする。
「ひ弱が」
 落馬しそのまま砂の上に打ち倒される騎兵達。数が少なくなった瞬間を見計らって、カナタは咄嗟に前線へ躍り出る。騎兵3人が曲刀を抜きながら押し寄せる。カナタはその場に沈み込むと、一瞬にしてその身を躍らせ、ラクダも騎兵もまとめてその身を爪で切り裂いた。噴き出した血が砂を染め上げる。そのまま彼は腰を落として構えると、牙を剥き出し禿鷹へと押し寄せた。リナリナが跳び回って付きまとい、禿鷹はそれに応じるのに精いっぱいとなっていた。
「ハゲハゲ団どうやって毛織物とソレ以外区別してるんだ? 眼が良いのか? それとも情報貰ってる? ハゲハゲ団を雇ってる黒幕のハゲがいる? むー、リナリナ、難しくてよくわからないゾッ!」
「別に客はハゲじゃねーぞ」
 暢気なリナリナの態度は、禿鷹の調子を狂わせる。リナリナの手加減した一撃にも防戦一方となっていた。カナタはその隙に間合いを詰め、禿鷹の腕に噛み付いた。手甲を砕いてその牙を食い込ませる。
「くそっ。鶏肉は旨いくせに、貴様は砂っぽくて喰えたもんじゃねーな!」
 元々食う気は無かったが、適当な文句を叩きつけてカナタはラクダの胴を蹴りつけ一気に間合いを離す。禿鷹は呻き、その頭を押さえる。
「何か仕込みやがったな、てめえ」
 魔法のロープで兵士を縛り上げながら、鈴音は振り返る。その眼で素早く禿鷹の状態を見極め、彼女は叫ぶ。
「今のはだいぶ効いたみたいだぞ! 一気に捻り上げろ!」
「おー! リナリナ、狩るゾ!」
 咄嗟に跳び上がったリナリナは、禿鷹のラクダに乗っかり腕を回して首を引っ掛け、そのまま砂の上に投げ倒す。呻いた禿鷹が首をもたげたところに、素早くその鳩尾へ肘鉄を叩き込んだ。
「うげっ……」
 禿鷹は一声呻くと、その場にぐったりと伸びる。騎兵の一人を掴み上げたまま、義弘は首をぐいと傾ける。
「終わったみてえだな」
 気付けば、ラクダ達は戦場から逃げ去り、騎兵達は揃って砂漠に取り残されていた。イレギュラーズは彼らを縛り上げ、盗賊騒ぎに見事ケリをつけたのである。

●お前、ハゲだよ…
 戦いが終わり、ラクダに逃げられた傭兵達は数珠繋ぎで砂漠の上に転がされた。既に陽は地平線の彼方に重なり、日暮れの砂漠に涼しい風が吹き抜ける。馬車の荷台に腰を下ろし、珠緒と蛍は2人揃って溜め息吐いた。
「……大分涼しくなりましたね」
「暑いね……はぁ、このままじゃパンダみたいな日焼けになりそう」
 眼鏡を外し、蛍は溜め息をつく。燦々とした光を浴びた眼鏡のフレームが、ほんのり熱くなっていた。纏わりついた砂埃をそっと吹きながら、彼女は捕虜となった傭兵達を見遣る。仲間達が既に取り囲み、彼らに対して尋問の準備を進めていた。
「さて、と……」
 ベールを揺らした鈴音は、じっとハゲの顔を覗き込む。
「君達は、この仕事を一体誰に依頼されたんだい?」
「傭兵なら雇い主がいるだろ、裏にいるのは一体何なのか、洗いざらい話してもらうぜ」
 義弘は屈みこみ、傭兵達の顔をじっと覗き込む。縛り上げられたままの傭兵達だが、彼らはふてぶてしい顔のまま一切答えようとしない。鼻面に皺寄せ、カナタは牙をぐいと剥き出す。
「……言うわけないな。ラサはそういうところだ。噛み殺すか」
 特に容赦をするつもりはないカナタ。その言葉も脅しではなかった。しかし彼らは手下に至るまで眉一つ動かさない。馬車からぽんと飛び降りた蛍は、眼鏡を掛け直して歩み寄っていく。
「それだと一瞬で終わっちゃうわよ。服全部剥ぎ取ってここに置いていくってのはどうかしら」
 こっちは脅し。しかしその気を察したのか、禿鷹はゲラゲラ笑う。
「そいつぁ面白え。せっかくならお前が脱がせてくれよ。下も全部な」
 頬にすっと朱が差し、蛍は咄嗟に脚を振り抜き禿鷹の頭を蹴りつけた。拳を固めて押し黙る彼女の横で、テイはひょいと禿鷹に近寄り、その尻尾をゆったり振った。
「ほらほら、魔女に呪われて人生お釈迦なんて嫌だろう。永遠に不運に付きまとわれたいかい、ねえ」
 金色の瞳を月のようにキラキラとさせて、彼女は禿鷹のハゲ頭をごしごし撫でる。
「私たちだって鬼じゃない。教えてくれたら、悪くはしない。そもそもお前たちは利用されただけだろう。義理立てなんて、砂の民の流儀じゃあないさ」
「お前さんの稼業は金次第なんだろう? だがここで死んじまったら金もただのゴミになっちまうんだぜ?」
 今度は義弘がハゲ頭を鷲掴み、眼光を鋭く睨みつけた。ハゲはにやりと笑う。
「まあな。俺達は金で動く。算盤持とうが槍を持とうが、そいつは変わりゃしねえ。だからこそ、脅された程度で口を割ってちゃ話にならねえ。信用がなきゃ、誰も雇っちゃくれなくなる。それで食いっぱぐれちゃ、俺たちゃ死んだのと同じだ」
「いいの? 本当に身ぐるみ剥がして置いていくわよ」
 セクハラされた蛍は一言一言に怒りを滲ませている。禿鷹は小さく肩を竦めた。
「怖い怖い。まあ大方見当はついてんだろう。別に依頼主がばれないようにやれと言われちゃいないからな」
 ふてぶてしい態度に顔を見合わせるイレギュラーズ。肉を食べつつ仲間と傭兵達をきょろきょろ見渡していたリナリナは、急に骨を投げ出して叫んだ。
「リナリナ、よく分からないけどわかったゾ! ハゲハゲ団、ハゲだけは襲わないんだな! そしてハゲだけが毛織物で得をするんだゾッ!」
「別に客はハゲじゃねえ」
 傍若無人なリナの言葉に、禿鷹は小さく肩を竦めた。レイヴンはやれやれと肩を竦めた
「仕方ない。然るべきところに突き出すついでに、今まさに生き生きと毛織物商売している商人の身元を探るとするか。後は商人達がうまくこなしてくれるだろう」



 街へ戻って聞き込むと、今まさに毛織物を方々で売り捌いている商人の存在が明らかとなった。イレギュラーズは依頼人にその商人の存在を合わせて報告。商人達は一丸となってこれを非難し制裁を行い、己だけが得をしようという愚か者は、見事に砂を噛む羽目に遭ったのであった。

 おわり

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

という事でハゲでした。この度はご参加いただきましてありがとうございます。また砂漠の依頼を出すと思うので、その時にはよろしくお願いします。

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