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シナリオ詳細

曰く、彗星が堕つる時

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●situation
 あの蒼穹から彗星が堕つる時、君は何をする――?

 伽藍洞に並んだのは頭蓋。からんと音立てたそれを蹴り飛ばした少年は薄汚れたシルク生地を踏み躙り乍ら下卑た笑みを浮かべていた。白滓の片は嘗て人間で会ったものであるとは思えない。
 そうだ。この世界には安寧なんてものはない。天空を飾った星々に、崩れ落ちた瓦礫の向こうに見遣る空色は幾重にも重ねたヴェールの如く穏やかな色を映しこんでいた。
 あの日見た空に見えた彗星は堕ちてきてしまったのだ。この地上に――遥か遠く、蒼穹より来たる災厄の様に。
 貴族が、庶民が、と口さがなく告げる大人たちなんて殺してしまえばいい。仕立ての良い服に身を包んだ下らない貴族の男に。輝く冠を載せて社交界で笑う女に。
 あの日、少年にとって『彗星が堕ちた』が如く鉄槌を下す時が来たのだと。嗚呼、そうだ。不幸と呼ばれることなど否定しなくてはならないのだ。すべてを勝ち取るには己が力でしかあるまい。
 今日は華やかなる社交の場に訪れるであろう貴族たちがこの道を通るはずなのだ。己が人生を踏み躙る不幸の悪意の種が。
 ほら、見上げて呉れ。あの蒼穹に見えるのは悪意をも晴らす彗星ではあるまいか。

●introduction
「よく来た、特異運命座標。我が屋敷まで足を運べた事光栄に思え……と言いたいが、今はまずこの出頭を評価しよう」
 荘厳たる意匠の置物が並んだ広場で、堂々たる姿勢を崩さぬまま屋敷の主、レイガルテ・フォン・フィッツバルディは特異運命座標たちをその双眸に移しこんだ。
「此度、諸君へのオーダーは我が屋敷にて行われる茶会に招く客人の暗殺の阻止だ。
 我が国は『不穏因子』の存在が多い事は諸君らも承知の上だろう。本件も、そのような『不穏因子(ならずもの)』が我が客人へと凶刃を向けんとしておるという情報を我が私兵が齎した」
 フィッツバルディ公の私兵たちは彼の行う茶会の警備を行うべく、準備を整えているらしい。客人の護衛を行うほどの人員的余裕が当日にはないとレイガルテは詰まらなそうに告げた。
「王も騎士を連れ合って遊楽へと向かうそうだ。我々も其方の警備に手を割かねばならぬ。
 どうだ、ギルド『ローレット』の諸君。幻想国に蔓延る悪意の芽を摘み取る手伝いをしてみる気はないかね」
 レイガルテは淡々と告げる。客人を狙うのは『貴族の統治によって棲家を追いやられた下等な庶民』であるのだと。
 己が事を彗星と名乗る盗賊団の少年は貴族と呼ばれる存在を憎み、レイガルテによる茶会を聞きつけて、客人の暗殺を企てたのだそうだ。
 レイガルテは言う。盗賊団たちは反抗的な性質で統治のためには村を焼き、『貴族と庶民の違い』をその身に刻ませるしかなかったのだと。
「――さて、良き報告を待っている」

GMコメント

菖蒲(あやめ)と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

●成功条件
 暗殺阻止です。盗賊の処遇についてはお任せいたします。

●盗賊団『彗星』
 幻想のフィッツバルディ領の端にある長閑な村を根城にしていました。
 かつて、領土の統治及び統制のために村を焼かれ、庶民である――いえ、『反抗分子』であると烙印を押された存在です。
 リーダーは少年。何度も暗殺依頼を企てて居ます。近接タイプです。
 そのほか人数は8名。遠近、攻防それぞれバランスが取れています。
 彼らにとって貴族は悪意の種。彗星を落とす如く、のうのうと生きる平和ボケした貴族に鉄槌を下すのです。

●貴族(暗殺対象)
 護衛対象のクラリット公。ご当主様とその奥さまです。態度が悪い。
 彗星に対しては特に悪いことをしたとは考えておりません。
 あたりまえでしょう? だって、反抗するのが悪いんですもの――
 得意運命座標の皆様にはある程度感謝しますが、まあ、駒ですよね。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

  • 曰く、彗星が堕つる時完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月01日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
野々宮 奈那子(p3p000724)
希望を片手に
ヴィンス=マウ=マークス(p3p001058)
冒険者
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ぺリ子(p3p002675)
夜明けのハイペリオン
アンジェリーナ・エフォール(p3p004636)
クールミント

リプレイ


 誰かを殺していい理由ってなんだろう――?
 明確に誰かを殺していいって、基準はどこにあるんだろう。私はきっと、甘いんだろう――積み上げられた価値観は、中々変わってはくれない。


 ガタガタと音を立て転がる車輪。その音を聞きながら遠く美しい星を見上げた『ロリ宇宙警察忍者巡査下忍』夢見 ルル家(p3p000016)は「彗星って飴のように食べれませんかな」と幼いかんばせに目いっぱいの期待を乗せていた。
 肌寒ささえも感じさせる冬風を頬に受け、金の髪を揺らしたルル家は周囲をきょろりと見回しては己が護衛する対象たる貴族が馬車の中から合図をする様子を眺めている。
「くちっ……」
 小さなくしゃみを漏らした『冒険者』ヴィンス=マウ=マークス(p3p001058)は失礼、と小さく一つ漏らす。ロリータドレスの裾をきゅ、と握りしめた彼女はポケットより棒付きキャンディを取り出して周囲を警戒するように己が得物ををゆっくりと構えた。
「さて、襲撃者が来るのはそろそろかな? 彼らの境遇には同情するが、仕事は仕事だ。気に入らないお貴族様相手でも、金を貰えば仕事はするさね」
「そう……ですね」
 幻想国の大貴族たるレイガルテにもあまり良い印象を抱けない『高みへ導くハイペリオン』ぺリ子(p3p002675)にとって今回の依頼はどこか引っ掛かりを感じている。しかし、仕事は仕事だ。足止め要因として働かねばならないとその拳に力を込めて。
「さて、本日のお仕事です。まずはお仕事を無事に遂行させることを考えましょう」
 エプロンドレスのフリルを揺らし、『クールミント』アンジェリーナ・エフォール(p3p004636)は冬風にその切り揃えた金の髪を揺らした。色違いの瞳はちら、と馬車の中の貴族たちを見据え、鼻をすん、と鳴らす。冬のかおりを肺いっぱいに吸い込んでアンジェリーナは落ち着き払った様子で仲間達を見遣った。
「……」
 言葉なく、息を飲みこんで『希望を片手に』野々宮 奈那子(p3p000724)は周囲を見回していた。耳を傾け、草木の揺れる音に、胸をざわめかせる不安を、奈那子は感じながらも緩やかに見まわしている。
「人を殺すって『案外普通な事』なんだね」
「旅人(ほかのせかいのかた)が見れば、違和感を感じるものなのかもしれないわね。
 私にとっては『歯車が狂っていた』って、それだけに過ぎないのだけれど――」
 現代日本より混沌世界に召喚された奈那子にとって慣れぬ世界の不条理は『断罪の呪縛』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)にとってはよく理解できる事象であった。
 馬車の中、尊大な態度で接してくる貴族を見遣れば『吐き気がする』とアンナは飲み込む様に俯いた。正義(ただしいこと)が何かを幼い少女は知らない。知らないが――貴族に向ける笑顔は嘘だと断罪されて然るべきものなのかもしれない。
「悪や正義の定義とは視点で変わるものだ。果たして、彼らが悪であるか正義であるか、それを語るにはスポットの当て方を考えねばならない」
 縦長の瞳孔は金の色の中出揺れ動く。緋色のう鱗をその身に纏わせた『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は己が血潮が非凡だからと疎まれたその過去を思い返す様に深く息を吐いた。
「楽しければいいのだけれど、果たして彼らは楽しいのかしらね?」
 馬車の中に置かれた剣は人としての意思をしっかりと持っている。無論、只の剣であるとは侮ってはならないだろう。
「……何かね、この件は」
 ふん、と鼻を鳴らしたクラリット公は置かれた剣をぞんざいに扱うかのように見下ろす。奥方も異質なものを見る様に特異運命座標たる剣――『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)を見下ろしていた。
「同乗するのは恐れ多いが、万一の事態の際は……近くにいた方が安全ではないかね?」
「致し方あるまい」
 表情を曇らせるクラリット公にシグは装飾品の中に埋もれる様にしながらもしかと護衛対象を眺めていた。


 聞こえた声音に耳を傾け、幼い忍者は拳を固める。にぃ、と唇を釣り上げて少女はマントをゆらりと揺らした。
「貴殿達の悪事もそこまで! 何故ならば! この宇宙警察忍者夢見ルル家がいるからです!」
 ふふん、と鼻を鳴らしたルル家。彼女の言葉にびくりと反応した少年達は『彗星』と名乗るには余りにも――余りにも弱弱しく見えた。
(……ふむ? 貴族と見れば見境なく殺すと云うにも余りにも弱そうだが)
 ヴィンスは周辺地理を確認してきたという情報を仲間たちと共有しながらも、少年の姿を値踏みするように見つめていた。リボルバー銃を握りしめた彼女は幼い外見をしているが『少女のかたち』の中には青年としての意識を抱えている。
 戦う力も持たぬ貴族たちにとっては脅威にほかならぬのだろうがヴィンスから見れば彼らは『相手を殺す』ことに対して妄執とも言えぬ思いを抱きそれだけで動き続けているようにも思えた。
 ゆっくりと振り仰いだアンナはこんこん、と軽く馬車の扉を叩く。なんだと言うように顔を覗かせたクラリット公にアンナは人好きする笑みを浮かべ「賊ですわ」と告げた。
「万が一、クラリット公や馬車が下賤な者達の血を浴びれば大変です。どうか退避をお願いしますわ」
「確かに……野蛮人の血を浴びてフィッツバルディ公の許へ行くのも失礼に値するな。お前の言葉は理にかなっている」
 ふん、と鼻鳴らしたクラリット公に対してアンナの眉が僅かに動く。馬車を目掛けて走り出した少年を一瞥し、剣はシャンと音鳴らす。
「なっ――」
「……ただの剣だと、思ったかね?」
 大剣は人のかたちを模って。シグは鼻を小さく鳴らす。馬車を護衛するように布陣する冒険者たちに僅かに眉根を顰めた少年は『彗星』の如く先ずはと幼い少女を――アンナを狙った。
「女子供だからって弱いと思ったのかしら」
 ロリータドレスを翻し、アンナが跳ね上がる。行く手を遮る様にその身を滑り込ませ薔薇を飾ったドレスはカーテンの様に踊る。
「それはお門違いね。生憎だけれど、『弱く』はないのよ」
「そうね。女子供は弱いという認識なら――刺激が強かったらごめんなさいね?」
 口元に笑み讃えアンジェリーナは短剣を指先でくるりと回す。肉薄する少年を受け止めたアンナが頭を下げたその場所を切り裂く様に投擲された一刃は鋭く少年の頬を切り裂いた。
「護衛を雇ったのか、金に糸目を付けないお貴族様らしい!」
 苦々しく吐き出した少年にペリ子は表情を曇らせる。少年たちは『金』で動く傭兵に対して悪意識を抱いている訳ではないのだろう。金で何事も解決しようとする貴族を断罪せんと願う姿を否定はできないと首振って。
 間合いを詰め、一気に少年の体を地面へと叩きつけたペリ子が顔を上げる。
「少しは歯ごたえを見せてね」
 グリモアールを手にしたルーキスの瞳が細められる。鋭利な爪先が固いグリモアールの背表紙を撫でる。
 少年たちの行く手を遮る様に降り注ぐ雨の中、ずんと前線へと飛び込んだヴィンスは銃弾を叩きつける。
 クラリット公を庇うように立ち回ったヴィンスの瞳に鋭利な光が宿り、只、少年たちをしかと見据えていた。
 打撃を展開させながら奈那子は複雑だと表情を歪める――だって、と唇は僅かに揺れ動いた。
 ――貴族に鉄槌を下すっていうのは、ただ殺す事で良いのかな。
 その言葉にびくり、と少年の肩が揺れた。ペリ子は何か考える様に拳へと力を籠める。
「私は、これはただの暴力で貴方たちも悪にみえる。
 ねぇ、正義と悪って立場や味方が変われば簡単に変わって、そういう言葉は簡単に使わない方が良いと思うよ」
 死ね。死んでしまえ。
 そんな言葉は彗星が堕ちるよりも簡単に、唇から零れ落ちるものなのだろう。
 悪と正義の在り方を考えるかのようにアンナは深く息を吐き出して肩を僅かに竦めてみせた。
「そうね、生来、『悪』だという人間はいないわ」
 少女の声音に奈那子は小さく頷く。貴族を殺そうというその動機が何であれど暴力に頼れば同じ場所まで落ちてきているようなものではないか、と声を震わせる。

 ――もっと違うやり方できないのかな

「故郷を燃やされ、のうのうと生き延びてる奴らを和解できると思ってるのかよっ!」
 声を荒げた少年に、そうじゃないと奈那子は首を振る。人を殺すことが悪だと、培われた倫理観は簡単には崩れぬもので。
「誰かが死ぬことを恐怖するのは当たり前の感情だ」
 ヴィンスは云う。宝を探すよりも尚、人の命は尊いのだと。肉薄した少年の肚の奥深くに届かせるように弾丸を打ち込んで、小さな肢体は跳ね上がる。
「そうだね。だからこそ、『見くびるな』よと我々は言うんだ。
 人を殺すのは怖いが――殺すことは存外簡単なのかもしれない。感情と行動は常に共に在るものではないからね」
 淡々と告げたルーキスにペリ子の瞳はゆらゆらと揺れた。水面のように心が揺れ動く――美しい彗星が空を描くその日に、少年達は『己こそが正義』だと信じてこの場所に訪れたのだから。
「畜生」
 ぽそりと漏らされたその言葉と共に重く一撃を放った少年にルル家は肩を竦める。
「解せませぬなぁ。貴族を打倒したいなら、このような行為は貴族らに弾圧の口実を与えるだけ。しかし何故襲撃を?」
 ぐん、と肉薄したルル家は掌でくるりと武器を回す。固い土を踏み締めた足先に力を込めて、少年の頭上へと躍り出た少女は靭やかな猫のように動いて見せる。
 ぐるんとその身を反転させてアンジェリーナの刃が鋭く切り裂けば、ルル家はちらりと目配せし唇を釣り上げた。
 ふわりとエプロンドレスを揺らしたメイドは恭しく一礼するように少年たちを見据えている。
「シグさん、力を貸して! 一緒にやろう! フェイズ・ソード! 魔剣ローデット!」
「太陽の少女よ……『剣を執り給え』」
 ペリ子の言葉にシグが小さく頷いた。すらりとした刀身をその手に握り締めた少女はその華奢な腕で一気に振り被る。
 人が剣に――世界から与えられた贈物の存在を目の当たりにした『彗星』は己が非力さを呪うように幾度も毒吐いた。
 畜生、畜生、また『負け犬』じゃないか。
「負け続けるのは何故だろうね? それは不利だという判断が遅いからかもしれない。
 状況の解らないお馬鹿には見せしめが必要? 理解したなら大人しくしてて、面倒は嫌いなんだ」
 淡々と告げたルーキスの翼が揺れる。整った天使のかんばせを歪めた彼女が降らせる毒は心にまでも滲み侵食するが如く――蝕みにその身を揺らした少年は足を震わせ、何度も何度も子供のように毒吐いた。
「殺してやる……!」
「言ったでありますよ。『不利』を悟れぬのは悪手だと」
 首筋にひたりと当てた武具は凍て付く氷を思わせた。幼さを湛えたかんばせにはその柔らかな色はない。
「貴殿達の怒りは正しかった。ですが行動が稚拙でありました。
 この国の為を思うならば本当に必要なのは何かを、改めて考えるとよろしいでしょう。」
 少女は『少女らしからぬ』言葉を口にする。――ルル家は言う、望みは最後まで捨てるべきではないと。
「ちくしょう」
 誰かが、そう言った。


「そう遠くない未来、この国は転機を迎えるはずよ。 もし次があるならそこが機かもね」
 少年の耳元で囁いてアンナは緩く目を細める。世界の変容は特異運命座標たちが現れた事が大いに影響しているはずだ。
 狂った歯車は動き出しているのだと、少女はしかと理解していた。縄の中でもがく様にその身を動かした少年にアンナは息を潜める。
「――多分無駄になるでしょうけど」
「話は終わったでありますか?」
 きょろりと周囲を見回したルル家は楽し気に微笑んだ。少年たちに視線を合わせ、無垢な子供の顔をしてルル家は「無駄な抵抗はやめろー」と楽し気に告げる。ロリ宇宙警察忍者巡査下忍ことルル家は愛刀を手にしたまま「それじゃあいくであります」と捕縛した少年たちを連れて歩み出した。
「償いが終わったら拙者の店に来ると良いです。トカゲと海水をご馳走しますよ」
「トカゲ……」
 呟く少年の背をぽん、と叩いてシグは小さく笑う。少年たちを悪だと断罪することは彼にとっても是とはしないものだ。
 課せられたオーダーはクラリット公を無事に茶会へと送る事だ。レイガルテもこれで満足していることだろう。
「我らへの依頼は飽くまでも『殺害の阻止』であるからな。………だが、敢えて一つ、アドバイスをするのならば――『物事はスマートに』である」
 ぱちりと瞬く少年たちにシグは小さく息をついた。手間でないなら見逃すこともありだとヴィンスは己が愛器を手にして目を伏せる。
「……謀略もまた、一つの戦争の形。……力及ばぬなら、力の有る者を……な」
「さて。余計な被害を出す前に牢にぶち込む事もありだが――そこに関しては今後考えていこうか」
 ゆっくりと歩むその足並みを追い掛けて、奈那子は肺いっぱいの息を吐き出す。寒さに白く染まった息は何よりも深く感じられた。
 この世界の常識は彼女にとっては全く別の意識の物なのだ。やけに身体が重い。引き摺る様に歩きながら奈那子は小さく呟いた。
「この人たちもこれが当たり前なんだろうな」
 ――生まれたときから、こうして誰かの上に立っていた。
 善も悪もなく、ただ、当たり前な事を当たり前のようにこなしてきただけなのだ。
「ご自分の言動と行動には注意なさった方がよろしいですわよ?」
 アンジェリーナは埃を払いながらクラリット公を見遣る。今回はレイガルテからの依頼があった為に特異運命座標たちは仕事としてこの場所へと訪れた。
 しかし――次があるとは限らないのだ。
 ペリ子とシグはアンジェリーナの言葉を耳にしながら息をつく。善悪をこの場で判断することはできないが、己が心を、言葉を投げかけるのには何の制限もない。
「それじゃ精々長生きしてくださいな、貴族様」
 くるりと背を向けてルーキスは空を見上げる。その色違いの両眼が映しこんだのは鮮やかなまでの蒼穹。
 空を飾った水棲は何処までも美しいものであったはずだ。
 少年がその両手を赤く染めながらも、もがき、得たかった物は鮮やかなる冬空のどこかに存在していただろうか。ほら、見上げて呉れ。あの蒼穹に見えるのは――

成否

成功

MVP

野々宮 奈那子(p3p000724)
希望を片手に

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 MVPは戦闘、心情のバランスの良い貴女へお送りします。慣れない世界でのご活躍をお祈りしております。

 またご縁がありましたら。

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