シナリオ詳細
あのスイカを割るのは貴方
オープニング
●海洋、とある村にて
「最近、天義でひどい騒ぎがあったようですね」
「そうですね……痛ましい事件だったようです。我々にも何か出来ないものか」
女性の村人2人が沈んだ顔で話し合っている。どうやら天義で起こった戦乱の噂は、海洋など諸外国にも広がっているようだった。
少なくない死者が出た、奇跡が起きた、様々な噂が取り付いてはいるものの――この戦乱で天義の住民の心がどれだけ乱されたかは、語るに及ばずというところだろう。
其れを案じない者はいない。次は自分たち、と憂うものもいれば、天義の民の心はいかばかりかと憂うものもいる。
心配げに村人の一人が言う。彼女らは後者、天義の民を案ずる側のようだった。
「うちの特産はスイカ……これからが食べ頃だけれど、スイカをただ届けたところで、食べてくれるかどうか」
「そうね……ただ切って食べるだけじゃなくて、何か、人を笑顔にできるような……」
「そういえば、幻想を拠点とする……ローレットが今回も活躍したとか」
は、とする村人。
幻想の希望、天義の希望たりえた彼らなら。この憂いの曇り空を晴らしてくれるに違いない。
「彼らなら、きっと……!」
●
「という訳で依頼だ」
グレモリー・グレモリー(p3n000074)は今日は半袖である。流石に暑いらしい。暑いせいか無愛想度も2割増くらいしてる気がする。
「今回はスイカを割る依頼だ。といっても、普通に割るんじゃなくて、芸術的に割って欲しいらしい」
はいこれ、地図。
海洋の地図を広げ、一点に赤いペンで丸を付けるグレモリー。やや天義に近い場所だ。
「村の特産がスイカなんだって。彼らは天義の騒ぎの噂を聞いて、自分たちにも何か出来ないか模索していたんだけど――スイカを届ける以外に思いつかなかったらしい。でも、ただスイカを届けるだけじゃ面白くないし、何より天義の人たちを笑顔にしたいんだって。ので、君たちに白羽の矢が立ったという訳」
つまり、かっこよくスイカを割って欲しい。
グレモリーは前置きが長い。結論はつまり、そういう事だ。
「出来れば村人が出来そうなかっこいい割り方を教わって、天義に届けた時にやりたいって言ってたよ。そういうのも含めて、考えてみて欲しい。割ったスイカが芸術的だとか、割り方がかっこいいとか、色々あると思うけど……」
まあ、僕の想像を超えていくのが君たちだからね。
と、丸投げするグレモリーなのだった。
- あのスイカを割るのは貴方完了
- GM名奇古譚
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年08月15日 23時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●はじまるよ!
「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 美味しくて楽しいスイカ割りの時間だぜ!」
「暇ならちょっと覗いてみないかい? 盛り上がる事請け合いだよ」
『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)と『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が声を挙げ、観客を集める。どうせやるなら派手に盛り上げようという考えだ。
「会場はこちらだよー! 入場料はいらないよー!」
「いらないぜー!」
『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)が『オイラは〇〇〇』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)を抱っこしながら、皆を会場へと案内する。ワモンの愛らしさもあって、女性客が次々と集まって来る。
客寄せ組とはまた別に、打ち合わせをしているもの達がいる。
「では、割ってもいいスイカは此処にある分だけ、という事で」
「ええ、お願いします」
雪村 沙月(p3p007273)が村人に確認し、十分です、と頷く。成程確かに、スイカ割りというイベントを行うには十分すぎるほどのスイカが並んでいる。
「できる事……他の奴が割っているのを解説するとかか?」
「あ、それ良いね。まさに催し物って感じだ」
『雨夜の惨劇』カイト(p3p007128)が考えを巡らせる。その背中を押すのは『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)。そういえば自分の世界でも、紙の鶴を千羽連ねて願いを託す風習があったな、と思い返し。
「お誂え向きの崖を見つけました……パーフェクトでございます」
バァーン!
奇妙なポージングで現れた『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)も、スイカ割りのための準備を終えたようだ。嫌な予感がひしひしとしますねぇ。
「随分とお客様も集まっておいでのようです。これは間違いなく盛り上がるかと」
「そうか。じゃあ、頑張らないとね」
「ああ。お互いどんな割り方になるのか楽しみだ」
●イッツショータイム
「みんなー! 来てくれてありがとな!」
簡易な飾りが施された砂浜のステージで、洸汰は声を上げる。子どもたちが洸汰にいちゃーん! と親し気に声をかけるのは、彼のギフトゆえか、人柄ゆえか。
「これからいろんなスイカ割りをやっていくから、面白そうだと思ったらやってくれよな!」
『えー、なお解説は俺、カイトでお送りするぜ。俺も後からスイカ割りをするけど、宜しくな。という訳でまずは清水洸汰、“スイカ千本ノック”!』
村人が小さめのスイカを準備する。ある程度積んだところで彼らは退場し、現れたのはぴょんぴょん、メカニックなトビンガルー。MEGA-Pyon-TAと名付けられた洸汰の友人だ。
『さて、ピッチャーはメガぴょんたくん。どんな投球を見せてくれるのか! ちなみに本物のぴょんぴょんたろーくんとメガぴょんたくんはちょっぴり仲が悪いらしいぞ!』
「いつでもいいぜ、メガぴょんた! 遠慮なく投げてくれ!」
答えるように跳ねたメガぴょんた。積まれたスイカを一個取り、洸汰に向かって――投げた!
「いいボールだぜ! よっ……と!!」
ぱかーん!
洸汰が振るうピンチヒッター、打球は見事真っ二つ。おお、と漏れるは観衆の吐息、わあと声を上げるのは子どもたち!
メガぴょんたは一定のリズムで洸汰にスイカを投げ、其れを次々と洸汰は砕いていく。中にはちょっと打点がずれて、ぼこっと割れてしまったものもあるが……やがてメガぴょんたが、もうないよ、と両腕を挙げた。
『洸汰選手、見事な打球だ! 流石戦闘で鍛えた腕力は伊達じゃない!』
「へっへー、どうだ!」
『えー、選手からの注意点です。くれぐれも打つときは小玉のスイカにすること。打つ方の腕がしびれてしまう可能性があります。という訳で洸汰選手が割ったスイカをお配りしますので、食べながらご鑑賞下さい』
村人が洸汰の割ったスイカを切り分け、子どもたちを優先して配っていく。時々砕けたものもあったりして、子どもたちはヘンな形! と笑っていた。
『続いてはエリザベス=桔梗院=ラブクラフト! 準備に時間がかかります、少々お待ちください』
一つのスイカがあった。
崖の際も際、落ちそうで落ちないギリギリのバランスを保つスイカが一つ。
『えー、此処からは見えづらいですが……崖の際でスイカを割るのか?』
「そう。わたくしが提唱したいのはズバリ、エクストリームスイカ割り。極限状態で敢えてスイカ割りを行い、そのイカレ……ごほん。クールさを競うというものです。基本的には特殊な訓練を受けた人間が行うものですが、一般の方でも度胸があれば挑戦できるものもあるかと存じます」
『成程。スリルを味わいながらのスイカ割り……』
「そうです。手始めにこの崖の上、そのキワッキワで割って見せましょう。落ちたらバラバラ、しかし此処で決めるのがローレットの冒険者というものでございます」
『おーっと、その割には崖に歩く腰がへっぴり腰!』
「ねえちゃん、がんばれー!」
『子どもたちから応援の声も飛んでいる! 頑張れエリザベス! しかしちょっとここからは見えづらいぞ!』
崖は高く、吹く風にスイカは揺れて今にも落ちそうだ。其れでも応援してくれる子どもたちのため、エリザベスは震える足に鞭を打つ……!
「えいっ」
ばこ、と鈍い音がして……半分になったスイカが崖から落ちてきた。
『成功! 無事成功! エリザベスは無事なのか!?』
「わたくしは無事でございます。が……見えにくいのと地形に左右されるのが少々難ありですわね。という訳で第二弾を用意しております」
観客も割れたなー、という感じで、いまいち盛り上がりに欠けている。そんなところに、大きな水槽ががらがらと運ばれてきた。洸汰も準備係に加わっている。スイカ割りはみんなでやるのが楽しいからね。
「水中でスイカ割り、でございます」
崖のふちに、気付けばエリザベスが立っていた。足が震えているのは見ない事にしてあげよう。崖の下に配置された水槽には、スイカが一つ沈んでいる。
エリザベスは其のまま、中空に足を踏み出し――
――どぼーん!
水しぶきが上がった。きゃあ、と歓声と悲鳴を上げる観客たち。
飛沫と泡が消え去ったそのあとには――なんと! 水槽の底にエリザベスがいるではないか!
「ごぼごぼごぼ、ごぼごぼっぼぼ」
『えー、此処からは俺が説明を。彼女は泳げないので沈み、呼吸を必要としないので溺れる心配もありません。一般の方は溺れないように準備をしてから割りましょう!』
エリザベスがぐっ、と親指を立て、スイカに向かって手を翳す。すると――ふわり、人魚のような幼い何かがハンマーをもって現れたではないか。其れはひれでするすると泳ぎ、ハンマーで――ぽこん。スイカを叩いて割った。
『えーこのように、神秘の力を持つ人にはうってつけの割り方となっております。また、視覚的にも涼しいかと』
再びぐっ、と親指を立てるエリザベス。しかし村人の中に神秘攻撃を持っている人はいるのだろうか。
「みぎー!」
「ひだりー!」
「そのまますすめー!」
子どもたちの歓声がする。史之のターンである。地面に四本棒を突き立て、そこにスイカを3~4個ほど縦に入れる。目隠しをして、横から棒で思い切り叩く――つまり、スイカの達磨落としだ。ゲストとして呼ばれた子どもは歓声につられて右へ左へと動きながら、狙いを定めていく。
「がんばれ! 思ったところで叩いていいよ!」
史之も一緒になって応援する。子どもは意を決したように棒を振り上げて――ぽこん、とスイカを打った。当然、子どもの力であるからスイカを割ったり吹き飛ばしたりは出来ないのだが……其処で史之が動いた。
赤光理力障壁を展開。包丁を利き手に持ち、蹴りで横合いに吹き飛ばしたスイカを綺麗に八つ切りにする。落下予測地点に障壁を据えると……すととととん。綺麗に切られたスイカが障壁の上にならんだ。
――おおっ!
にわかに上がる歓声。目隠しをした子どもは何が起きたのか判らずおろおろしている。彼の目隠しを外して、史之はほら、とスイカを見せた。
「君の勇気のおかげで、スイカがこんなにきれいに割れたよ」
「ええー! すごい!」
「はい、一番大きいのは君にあげる」
『これはすごい! 敢えて細かい解説は抜きにして、史之のお兄ちゃん力が全力全開だ!』
嬉し気に親の元へ帰っていく子どもを、微笑ましく見送るイレギュラーズ。他のスイカも順番に、観客へと配られた。
――ばきゅん! ぐしゃっ。
『おおーっと! ゼフィラの弾丸でスイカが粉々にー!』
「……うーん。真ん中を撃ちぬけばうまく割れると思ったのだが」
「お姉さんかっこいいー!」
「すごーい!」
スイカを銃で狙ったけれど、粉々にしてしまったゼフィラの図である。実弾ではやはり威力が強すぎるのか……と彼女は懐に銃をしまうと、不意に観客を振り返った。
「今のようにスイカを割ってみたい者はいるか?」
「はーい! ぼくやりたーい!」
「わたしもー!」
『おっと、これはガンマン気分になれる良い機会! 弾丸は安全なものを使用しますので保護者の方はご安心下さい!』
カイトも段々解説がノってきた様子である。砂浜はワイワイとして、楽し気な空気に包まれている。
粉々になったスイカは史之がジュースにするので撤収。新たなスイカが据えられて、何人かの子どもがゼフィラの元に集められた。
「そう、もう少し下目を狙って……いまだ」
「えいっ!」
――ぼこん!
良い感じに割れたスイカ。やはりこちらの方が……と神妙な顔をしつつ、史之からもらったスイカジュースを啜るゼフィラであった。
「ああー! ワモンさーん!」
「フランちゃーん!」
『はいはい、次はフランの番だからな。すぐにまたひんやりできるから』
引き離される二人だが、決してそういう仲ではない。ひんやりして嬉しい。女の子に抱っこされて嬉しい。そんな仲である。
「よ、よし! 気を取り直して……あたしの用意した割り方はね、“スイカ占い”だよっ!」
おお、と女子がどよめく。占いとスイーツが好きなのはどこの国も、どこの世界でも一緒らしい。
「割り方はシンプル! 目隠しなしで棒を振るだけ! 今日のあたしはフォーチュナー……未来を語る占い師! 願いが叶うかどうかを見てみるよ! という訳で誰かやってみたい人ー!」
「「「はーい!」」」
子どもと女性がわいわいと手を挙げる。同じくらいの年の女の子を一人フランは選び出し、棒を持たせた。
『占いか……ちなみに、何を占いたいのか聞いても?』
「あ、あの、……恋が、叶うかどうか……」
『おっと、触れてはいけない話題だったかな? これは失礼。しかし占いにはうってつけだな、フラン』
「そうだね! 結果は叩いてみてのお楽しみだよ、ではどうぞ!」
女性は照れで顔をほんのりと紅に染めながら、決意したように棒を振り上げる。一気に振り下ろして――ぼこんっ。
『おっと、これは……割れたが、結構偏っているな』
「あ……」
不安げにフランを見る女性。大丈夫、とフランは彼女にウィンクした。
「じゃじゃーん! 結果は、遠回りだけど叶います!」
わあっ、と女性の未来に、割れたスイカに歓声を上げる観客。嬉しそうに女性もますます頬を赤く染める。
「ちなみに、真っ二つならばっちり叶う、粉々ならすっごく叶う、ヒビだけなら苦労するけど叶う、だよ! 叶わない願いなんてない、だからみんなも信じて、ここ一番という時に試してみてね!」
『続いてはワモン・C・デルモンテ! しかし彼の姿が見えないぞ? 一体どこに……あー!』
芝居がかった動きでカイトが崖の上を指さす。そう、先程エリザベスがいた崖の上には――なんと! 今は人間(少年)の姿になったワモンがいるではないか!
「へへっ! オイラのスカイダイビングスイカスラッシュでかっちょいい切り口みせてやらぁ! 目をかっぴらいてしっかり見とけよっ!」
村人と洸汰が準備をする。まず毛布や要らない布などを重ねた簡易マットを敷く。其の上にスイカを置く。刃物はワモンの手にきらり、と光っている。
「目標はいっとーりょーだん! 真っ二つだぜ! いっくぜー!!」
ぴょん、とワモンが飛んだ。きゃあ、と悲鳴を上げる者、わあ、と歓声を上げる者。ひゅるるる、と崖を落ちていくワモンの胴体にはしっかり命綱がついている。
「(ぎりぎりを狙って――ここだ!!)」
――すぱぁぁぁん……!
真っ直ぐに迷いなく斬る。縦に真っ二つ、切られたスイカがずる、と開いて落ちた。わあっ、と歓声が上がる。
「小さい子は棒の方が安全かもな! 何処まで高いところから飛び降りて斬れるかを競う度胸試しもアリだと思うぜー!」
『なお、安全のためマットと命綱は必須でお願いいたします! という訳でやってみたい方ー!』
「「「はーい!」」」
子どもたちが一斉に手を挙げる。
元気よく飛び降りる者や、飛び降りられなくて泣いてしまう者、少し低めのところからやってみるものなどさまざまだったが、大盛況のうちにワモンの時間は終わった。
『さて……次は俺、カイトのスイカ割りです! フラン、頼むな』
「おっけー! ワモンさん、頑張ろうね!」
「おうよ!」
「よっ、名解説者! 待ってました!」
これまでのスイカ割りを解説してきた彼の出番に、観客が沸く。下準備は特になく、スイカを一つ置くと、距離を取ってカイトは深呼吸した。
「あー、『あー』、あー。」『マイクテス、マイクテス! ではでは、次はカイトおにーさんの出番だよ! すごくシンプルに見えるけど……』
「ああ、シンプルこそ基本だからな。まあ、一発芸として見てくれれば其れでいい」
『おっと、カイトおにーさん構えた! この構えは……!?』
カイトが動く。精神力を弾丸に変える――ソウルストライク。どん、と重い音を立ててスイカに当たる。ごくり、と見守る観客とイレギュラーズ。ぐらり、ぐらり、と揺れたスイカは……ぶるぶるぶる、と震えると、ぱん! と周囲に破片を飛び散らしながら割れた。
『わっ!? 破片が此処まで飛んできたよ! 一体何が……って、えええええ!?』
「うおおおおお!?」
フランが、ワモンが。そして他の皆も、信じられないと声を上げる。
なんと其処には、薔薇の形にフルーツカービングされたスイカの姿があるではないか!
『ええええ、すごい! これはすごいよカイトおにーさん! 一体どういう事なんでしょう!? 解説のワモンさん!』
「全くわかんねえ! 本人頼む!」
「あー……今の技は相手を恍惚とさせる技なんだが……スイカが自ら形を変えるのではないか? と考えて……いや、俺もこの形は予想外だわ。まあ、一発芸として心に収めておいてくれ。一般の人には難しいだろうから、こういう技術もあるという事で」
『そうだね! こんな綺麗なスイカ、もったいなくて食べられないよー!』
と、大盛況のなか場を後にするカイトだったが、心を燃やしている村人が数人いた。
「いや! 敢えてああやって削ったスイカを天義にもっていくのもありかも知れない……!」
「おう! 俺たちの腕の見せどころだな! ちょうどいいお手本があそこにあるんだ、やってみようぜ!」
「おうよ!」
『続いては沙月の番だ。シートの上に一列にスイカが並んでいるが……これを一斉に割るのか?』
「はい。といっても、特に派手な技を使う訳ではなくて……」
言うと、そ、と最初のスイカに手を触れる沙月。頭の中でイメージする。斬撃を飛ばして、其の軌道はスイカの中心線をなぞるように……
「いきます!」
ぱ、と沙月が切り上げるように手を振り上げると、見えざる斬撃が現れた。それらは少しスイカの中心からずれ、見事に――とはいかなかったが、一列に並んだスイカを二つに切り分ける。
少しの沈黙の後、おおおお! と歓声を上げる村人たち。極限までテンションが上がった彼らは、沙月の静かな動作に籠った熱情に敏感だ。
「一応、村人の皆さんに教えられたら、と思うのですが……」
「こ、これを俺たちに!?」
「まあ! 旦那が浮気した時にも使えそうだよ!」
「おっかあ、其れは俺が真っ二つになるからやめて……」
どっと笑い声が起こる。沙月は安心したように笑みを浮かべ、でも、と続けた。
「氷を張った桶にスイカをいれて、其の場で切って売る。其れだけでも、天義の方々には思いが伝わると思います。今までのパフォーマンスを否定する訳ではないのですが……風情を感じる食べ方は、私的には好みですから」
「そーだな! スイカを割って食う! 其れだけでチョー楽しいよな!」
「おう! ワモンさんもそう思うぜ!」
「おー! フランさんもそう思うぜー!」
「そうでございますね。最後は結局、スイカを割って食べるのですから」
「今こうやってみんなで食べて、ワイワイ騒いでるだけで楽しいもんね」
「そうだな、此処のスイカはとても美味しい。其れだけで励みになりそうだ」
『ゼフィラ、お前はちょっと食べすぎなんじゃないか?』
口々にいうイレギュラーズたちに、村人は笑いとちょっぴりの涙をこぼした。
天義の人々は、彼らが教わって不思議なスイカ割りをしたら何というだろう。普通に水桶に入れたスイカを切って渡したら、何というだろう。きっと同じだ。
ありがとう。
この五音。其れが、人と人を繋ぐ絆になるのだ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。
色んなスイカ割りの方法やアイデアがあって、楽しくプレイングを読ませて頂きました。
皆さんの思い、ぎゅっとリプレイに込めました。
清水洸汰さんに「ミスタ―スイカ割り」、カイトさんに「ミスター解説者」の称号を付与しております、ご確認ください!
MVPは秋宮史之さんです!だるま落としとは恐れ入りました!
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
こんにちは、奇古譚です。
スイカ関連の依頼が続きますが偶然です。スイカ食べたいです。
●目標
新しいスイカ割りの仕方を模索しよう
●立地
至って普通の村ですが、村人は優しい気質をしています。
だからこそ、今回の案に至った訳です。
怪我をすれば手当てをしてくれますし、お手伝いを頼めば快く引き受けてくれるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●エネミー
スイカx?
割ったスイカがかっこいいとか、
スイカの割り方がかっこいいとか、
そういうアイデアを募集中だ!
勿論君の得意技を生かして大いに結構だが、村人でも出来る割り方を考案すると喜ばれるぞ!
(割った後のスイカが綺麗なパターンの場合、冷蔵保存されて天義まで輸送されます)
●
スイカで天義を励まそう! 美味しいに正義も不正義もないのだから!
アドリブが多くなる傾向にあります。
NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
では、いってらっしゃい。
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