PandoraPartyProject

シナリオ詳細

プレゼントする歯車を求めて
プレゼントする歯車を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●お姉さんの名前聞き忘れた!
 歴代、鉄帝軍人の家系として名を馳せるワインバァグ家の男子に伝わる格言の中にこんな言葉がある。
 【天啓に全てを委ねよ、さすれば己が武勇は拓かれん】
 ワインバァグ一族初代当主は丸太を愛し、三代目当主は巨大なハエ叩きに魅了され、七代目当主は蜂蜜を塗りたくった自身の肉体のぬらぬらした輝きを武器として戦場で武勲を上げて来た。
 勿論これらは当主に限らず、一族の男子全員が直感的に愛用した武装を生涯大事にする事となる。
 変態武神凱(ナンダァレ・スゲェ)と呼称されるこの奇妙な一族の戦闘スタイルは正しくオンリーワンのそれであった。
 中略。一体なぜこのような変態一族の話が出たのかと言えば、このワインバァグ一族の歴史に新たな一頁が加わろうとしているからだ。
 所変わり、ゼシュテル鉄帝国のとある砦にて。その一幕を覗く事が出来る。
「ゼシュテルに名を刻みし誇り高き戦士ワインバァグ家の序列第六位、パーティパン・ティティーの名を懸けて。
 貴女を生涯の伴侶として愛し、愛されんが為に最高の栄華をもたらす事を此処に誓う。銀の君よ、我輩と結婚してくれ────!!!!」
「答えはノー。回れ右して帰りなさい」
「はぁやぁあああい!!!!」
 三日三晩考えた愛の告白を一瞬で玉砕された、齢九歳の少年パーティパンは黒のレース下着を重ねたマスクの下で涙を溢れさせる。

 彼は日課の全裸ジョギングの最中に見かけた領主の城(ワインバァグではない)に忍び込んで武器になりそうな下着をタンスから数枚ほど拝借した矢先、運命の出会いを果たした。
 衛兵に見つかり追いかけ回されて逃げ込んだ一室のベッドに居た銀髪の女。怪我人であろう彼女は体の至る所に包帯を巻いている。
 そんな名も知らぬ女に、少年は出会って五秒で愛れの告白を敢行したのだった。
「……見て分かるでしょう。この通り子供の相手が出来る余裕は無いの、失せなさい」
「取り着くシマもない!? でも何だろうこの気持ち! お姉さん凄い、もっと言って!!」
「なんなのコイツ……パンツの精霊種か何かなの?」
 そろそろ少年の異様な勢いに圧され始めた銀髪の女が不安を覚えて表情を曇らせる。
「お姉さん。僕の名前はパーティパンですよはっはっは」
「本格的に何よお前は」
「よっこらせ。それでお姉さんは一体どんなお怪我を? ここは何処の誰の城なのでしょうか!」
「誰の城かも確かめずに入って来るとかヤバいわねコイツ。そして警備のザルさ加減。
 ……はあ、ここはドルベンシュゲイン子爵の砦よ。そして私は怪我もそうだけど病気なの、鉄騎種ならそう珍しい物でもないけれど」
 とりあえず適当でも何でも言ってとっとと帰らせよう。
 その程度の考えだったが、事態は良い方向へ風向きが変わるのを許してくれなかった。
「ふむふむ……この錆び付いたかのような患部。鉄喰菌に侵されてる。
 ようし、ちょっくらお姉さんの身体に合った機材(パーツ)採って来て男前な所魅せるよ! 覚悟しておいてください!
 結婚指輪をする為に左手薬指のジョイントに油差しといてね!」
「ちょっと待ったアンタもう来ないで……ッ」
「待っててね―――!!」
 病室の窓から飛び降りる少年。守衛の誰何の怒号。大騒ぎになる砦。
 銀髪の女は暫く呆気に取られた様子で窓の外を眺める事しかできないでいるのだった。

●花束よりも
 『迷走屋』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)は一輪の薔薇を手に持ったままブリーフィングに現れる。
「おはようございます皆様。
 ああ、これですか? さっきまで鉄帝からの依頼人と最後に話をしていたのですが。ふふ、可愛い男の子でした」
 これは造花です、とミリタリアは薔薇を机上に置いて。
「今述べたように今回の依頼は鉄帝の貴族からです。
 とある名家のお坊ちゃまが最近、とある女性に恋をしたとか……しかし病に侵されている為に逢瀬もままならないというお話ですね。
 今回、皆様にはそんな彼のお手伝いをしていただきます。ちょっとやんちゃでしたが仲良くしてくださいね?」

 ワインバァグ家の四男坊が出会った鉄騎の女性は、金属部位が露出している機械種がしばしば罹る病原体に侵されているのだと言う。
 これを治療するには代替か、初期症状時に一定の治癒術と薬剤を投与する事が求められる。
 どうやら依頼人の少年はその女性に良い恰好を見せたいようだ。イレギュラーズは彼と共に必要な部品を獲りに行き、無事に良い結果を迎えられるようにしてあげたい所である。
「獲る、とは? 珍しくない病気なら代替用パーツとか、治療技師とかありそうなものだが」
「そこがまた可愛いんですよ。どうも彼、その女性の肌にピッタリ合う物で特別な逸品を揃えたいそうです」
 ミリタリアは不愛想にも見えるいつものクールな表情に小さく微笑みを浮かべる。
「配布した資料をご覧ください。そちらが皆様に集めて頂くパーツと、それに該当する『モンスター』の情報です」

GMコメント

 ちくわサワ―です、よろしくお願いします。
 依頼人と一緒にピクニックに行きましょう、夏ですが今から行くのは雪山です!

 以下情報

●依頼成功条件
 依頼人が無事に最高のパーツをプレゼントする事

▼予備事項(依頼人からの伝言)
 「ふぉふぉふぉ、我輩が最高のデコぱんで包むのでローレットのお兄さんお姉さんには頑張ってモンスターをハントして欲しいですのじゃ」

●機材収集
 パーツ集め。
 銀髪の白い肌の薄幸そうな美女だという依頼人が執心のお相手は、『肩部ギア』『腕部ギア』『腕部金属皮膜』の三点が代替未完の様子。
 これらは特殊な機械型モンスターと戦闘し皆様が勝利する事で入手できます。求めているのは品質が高い天然(或いは高められた)物です。
 収集限界は特に定めませんが、皆様が【撤収時間】を設定する事によってリスクとリターンが変わります。

★【撤収時間】とは
 今回の依頼中、わりと依頼人も頑張れる子なので出来る限り付き合ってあげましょう。
 しかし無茶し過ぎると帰還が難しくなったり依頼人に危険が及ぶ場合もありますので、
 目安としては皆様のパンドラが減り始めるタイミングが継戦の見極めになるかと思われます。こちらを一人でも定めていればその通りに設定して判定します。

●ロケーション:雪山
 晴れた日中に向かいます。鉄帝北部でも比較的緩い環境、足場は多少雪が積もっているものの、戦闘に支障はありません。
 緩やかな傾斜の雪山の山頂には錆びた金属に覆われた建造物が佇んでおり、この建物の周囲に下記のエネミーが無数に彷徨い歩いています。

▼エネミー
 『アンティークドール』
 雪山の山頂に露出した建造物の周囲をスキップしている機械マネキン。至近まで近付いて抱き着いて来ます。

 『アンティークナイト』
 雪山の建造物の入口に近づくと奥から湧いて来る騎士の姿を模した機械。岩をも砕く膂力によって揮われるハンマーの威力は侮れません、が……殆どは脚部を損傷している様子。

 『A・メタモルフォーセス』
 この雪山で稀に目撃されている希少個体。滑らかなボディは視認した人間の姿を模写して真似る機能を有しており、過去にこの雪山へ訪れた鉄騎探索隊を撃退しています。
 中距離間を貫通するレーザーやレーザートンファーによる格闘等が確認されています。

 ※ドール、ナイトはそれぞれ発生域に近付くと戦闘カウントスタート。戦闘開始から6ターン毎に五体ずつ増えます。

●パーティパン・ティティー・ワインバァグ
 ワインバァグ一族の男子として覚醒して二年目。ぱんつへのリビドーをオーバードーズする事でアブソープションするリミッターブレイクなる技を編み出したらしい(本人も適当)
 実際は女性物下着を見て興奮した彼が行使するバフ効果のある神秘術である。
 彼がレンジ2以内にいる事で、範囲内にいる者の所有するぱんつや下着等または外見によってステータス上昇補正を受ける事が出来る。

▼銀の君
 とある砦で治療を受けていた鉄騎種の女性。
 銀髪と白い肌、白い流麗な金属部位が特徴的だが、肩部と右腕が錆び付き蝕まれている。
 軍人のようだが……

 以上。

 ちなみにぱんつなくともある程度効果のあるバフは受けられますので、おまけ程度に考えていただければと思います。
 もちろんその他スキル・アイテムなどの工夫でも色々展開に影響しますので是非。
 皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。

  • プレゼントする歯車を求めて完了
  • GM名ちくわブレード
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月09日 22時35分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
アニキ!
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
オリーブ・ローレル(p3p004352)
特異運命座標
津久見・弥恵(p3p005208)
嫣然の舞姫
岩倉・鈴音(p3p006119)
放課後のヴェルフェゴール
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ

リプレイ

●ぱんつなら平気だもん
 雪山の麓。
 『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)の怒号が雪山に響き渡る。
「―――雪山で全裸ジョギングさせるかあ!! 【子供には見せられないよ!】な仕事になるだろうが!」
「おぉふ!?」
 真っ裸の少年パーティパンは覆面パンツブリーフ一丁姿でびくっとする。
 すぐさま鈴音が『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)から受け取った毛布を数枚、少年に投げ放つ。
(すげぇ絵面だな……)
 『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)が思わず目を逸らす。
 雪山に来てるというのに防寒具ゼロの姿は色々とつらい。あれが正しい姿だよなあ、と視線を巡らせた先。ばっちりもこもこ、防寒装備の『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)が「……?」と小首を傾げていた。
「ふむ……しかし仮にも依頼を成功させれば病に蝕まれた女性が、それも鉄帝の民の一人が助かるのですね」
「病床に伏す女性の為に頑張る男の子。
 イケメンじゃないっ! ……これでパンツかぶらなきゃ、ありなしのありなんだけどなぁ」
 『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)が言った後、幾つかの溜息が重なる。
 馬車の中で下着を被る前の少年を見たが、普通に幼い男子さながらの顔つきだったのを『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)は確認している。
 動機としては悪くないのだが。幼くしてパンツを人生の友としている事が全てを台無しにしていた。
 ちらちらやたらと視線を感じる『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)が目を細め首を振る。
「好きな女性に贈り物をしたいという姿勢はとても立派なので喜んでお手伝い……って、私のパンツは見ちゃダメですよ」
「ダメなの!? じゃあそっちのお姉さんの下着は!」
「ん? 下着? 今日はドロワーズだけどそれがどうかしたかな?」
「ドロ……わーず? どれどれ」
「待ちなさい。黙って聞いていれば何というセクハラの数々……少しお話を」
 物知らぬ坊やのフリをして『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)に詳細を訊ねようとした所でオリーブに捕まる。
 暫く一同は兜から鳴るくぐもったオリーブの説教と依頼人の「はぁい」をBGMに雪山を往く事となる。
 とはいえ目的地は直ぐである。
 予め鈴音が天気を見極めて最適な日を選んだこともあり、環境・視界・時間経過による憂い等の問題を解消済み。イレギュラーズが雪山に聳え立つ錆びた建造物へ辿り着くのにそう時間は掛からなかった。
 それでも平時なら過酷そうな場所を選んだものだとブーケは思う。
「なんや、顔面ぱんつで隠したけったいな坊ちゃんやと思ったけど、相手の喜ぶ贈り物を考えて渡そうって小さくても紳士なんやねぇ。えらいなぁ」
「お兄さんもえらいよ! 何でかわかんないけど、ちゃんと皆の靴にアイススパイク着けてあげてるとことかエライ!」
 少年の頭を撫でながらブーケがウンウンありがとなぁ、と背中を丸める。
 土地が土地なら夏だったり水着の季節だったりする時期に、防寒具に包まっているブーケのその姿を見たメートヒェンから「そうだねえらいね」となぜか同意する相槌が入った。

 褒めて貰えたー、とほっこり微笑んでたり、首を傾げていたりする彼等の一方。
(……サーチに何も引っかからねぇな。こりゃひょっとすると)
「サンディさん。あの建造物の奥と、裏手の方から色々聴こえるんですが……そちらのエネミーサーチで何か分かっていますか?」
「そらきた。――詰まる所、そこが通常の鉄騎種とただの機械人形の違いなんじゃないかね?
 連中に敵対心は無いってよ」
「……! 皆さん、その場で戦闘態勢! 依頼目標エネミー、三方向から来ます!」
 索敵に重ね精度を高めるつもりだった弥恵のエコーロケーションが役に立ったといえる。
 今回彼等が戦う相手は見かけこそ人型の機械でも感情持たぬ人形のそれでしかない。ゆえにサンディのサーチ網に掛からなかったと見るが正解なのだろう。
「それじゃ皆さんよろしくお願いします!! 僕は後ろで大人しくしてるね! ……それとありがとう。ここまでついて来てくれた事に感謝してる」
 そろそろ戦闘が始まる。パーティパンはサンディから受け取った下着を手に、ポツリと零した。
「私も機械部分の露出は右目くらいとはいえ、鉄騎種としては他人事ではないからね。放ってはおけないよ」
「下着握り締めてなければ素直に褒められるんだけどなぁ」
「ふ――男児たるものそのくらいの勢いがいけないと思うのです。……適当言いました。
 こほん。
 ……ともあれ、恋路のお手伝いとあらばこの夕さんにまっかせっなさーい!!」

●埋もれた物
 数十秒後。イレギュラーズの前に現れたのは十体の機械人形達。
 軽快な、或いは重低音響かせ迫り来る光景はある種の恐怖心を煽る物がある。
 それは彼等が命無き人形だからだろうか。
「さて……この辺りではマネキンが多そうだね。来る前にちょっとした噂程度ではあったけど、当面はここに陣取って様子を見ようか」
 羽織っていた防寒コートを脱ぎ捨ててロングスカート揺れるメイド服を露わに、メートヒェンが手を打ち鳴らして人形達を呼びこむ。
 彼女が事前に軽く情報収集した所、どうやら希少個体が現れるのは建造物に近づき過ぎぬ位置で粘ると良いらしい。
 尤も……本当に希少な個体ならばそれで狩り尽くされてる可能性もあるので期待は薄い。
 或いは賽の目次第でといったところだろうか。

「『らぁん……らんらんらん……』」

(さすがに至近距離で見ると気味が悪いね、私が鉄騎だからかな?)
 メートヒェンに釣られたマネキン達がスキップして駆け寄って来るのを目の当たりにして背筋が冷える。
 一体、また一体とメートヒェンに襲い掛かる、締め上げて来る最中に聴こえる歌の様な音色が不気味さを際立たせていた。
 ギシ、と体が軋む音。
「団体さん、ごらいてーん!」
「思いの外釣れよったなぁ、大丈夫やろか」
 視界が暗くなりかけたメートヒェンの眼前でマネキンが宙を舞い、鮮血帯びたハチワレの兎が軽やかに爪先で蹴りつけた別のマネキンが火を噴いて怯む。
 駆け付けた夕子とブーケの側で戦鎚を振り上げていた騎士型人形の胸部が背中側から爆ぜ飛ぶ。
 視界に捉え難いが、よく目を凝らせばアンティークナイトを屠ったのは弥恵のドレスコートの裾から飛び出した半自律型ビットだと解る。
 コートの前を開けて冷気を浴びながら肢体を振り乱す彼女は、ビットの操作を己が舞踏と重ねて行っていた。例え相手が機械人形であろうと、見る者を魅了せんとする在り方は変わらない。
「お姉さんすっごぉい……」
「ボーイは巨乳の姉さんタイプが好みか」
「リンネの姉さんタイプも好きだけど、我輩としてはパンツの所在次第で……」
「ふ、そんな簡単に見せるか! 見ているがいいボーイ、技はチラのなかにあり!」
「ち、チラのなかに……ッ!?」
 分厚いコートを棄てた鈴音がスカートをバサッと棄てて跳ぶ。
 飛び込み、滑り込んだ先で周囲の前衛に浄化の鎧を一度に複数召喚し、味方を援護しながらついでにドールナイトをスキャンする瞬間に滅茶苦茶かっこいいポーズをキメて見せた。
「ぜぇ……ぜえ……! ぜ、前衛に報告……ドールとナイト双方ともに硬いけど脆い、事前情報通りだけどここで一つ追加!」
 慣れない連続行動に息を切らす鈴音がビシリと指を差す。
「――どの機体も動作を行う直前に数秒、何処かに【通信】してる! つまりハッキングとかそういうのが出来れば……」
「そのスキル、俺らの中で誰が持っとるん?」
「持ってないじゃん!!」
 ガァァッ!! と地団駄踏む鈴音。彼女のエネミースキャンで判明しているのはそこまでという事らしい。
 そうとくれば後の憂いが無くなったと思い、それぞれ予定通りに動いて良いのだと頷き合う。
 八重歯をにっ、と出して。槍を一揮いしたサンディが夕と共に前へ出る。
「じゃ、次の波がくる前に片付けようぜ!」
「早めに全滅させて行けばその分休める! 精霊さん、お願いします!」
「お。ちょっと借りるぜそっちの風」
「借り……えっ?」
 夕の声に呼応して光翼を形作ろうと宙を舞っていた、彼女の契約精霊が纏う風が何故かごっそりサンディに持って行かれる。
 向かう先はメートヒェンや夕子達の相手取る一群。
 柄を浅く持ち替え。半ば力任せにも見える大振りで得物を振り回して跳躍したサンディが夕から"借りた"風を更なる暴風へと昇華させ、一直線に頭上から飛び込み着弾。複数のマネキンがボディパーツを散らして上空へと打ち上げられた後に地へ叩き付けられる。
 辺り一帯に吹き荒れる暴風。続く夕が光翼を羽ばたかせた直後、無数の羽根が彼女を中心に騎士の姿を模した人形達を切り裂いて四散させた。
「ゆっちやるぅー!」
「派手ですね。岩倉さんのバフも効いていて全体の動きも良い――さて、これで第一波は最後です」
 ビットによる射撃に続いて夕子がマネキンを投げ落とす傍で、立ち上がろうとしたナイトをオリーブが関節部を衝き穿ち、破壊する。
 火花や爆散の気配は無く。どの機体も冷たくその場に崩れ落ちていった。

 弥恵とサンディが索敵を務めながら、一時の休息。
 戦闘が開始されて数十秒。あと一分もしない内に他の機械人形達が集まって来ることだろう。
「ひゃー、あんな凄い戦いぶりだったのになるべく壊さない様にしてくれたんだね。ぱんつにかけて感謝!」
 依頼人パーティパンがドールナイト達を解体しに掛かる。
 状態はどれもまずまず。そも、このロケーション自体は鉄帝の調査隊が『進行不可』と判を押しただけのダンジョン扱いという背景がある。腕試しに来る鉄騎の戦士や高品質のパーツで日銭を稼ごうという猛者が過去に居てもおかしくないのだ。
 ゆえに、数が要る。まだ依頼人の表情は芳しくない様だった。
「なんかこう、実のところ全然よく分かんねーが……歯車ってのは鉄騎種にとっちゃロマンチックなんかな」
「ロマンチック、かどうかは状況や人によるだろうけど。病気の自分のために集めてくれたものと考えれば、悪い気はしないんじゃないかな」
「まー俺も負けてらんないっつーか武器がパンツのガキにゃ負けてる気はねーが、これでイイ感じのムード出てたら今度鉄機レディのお相手するときの参考にしてやろ」
 くすくすとメートヒェンが微笑みながら頷く。
 そんな彼等の横でホカホカのお茶を啜っていたブーケがふと近くであらぬ方角を見つめている夕に気づいた。
「どないしたん。何や、ぼうっとしとる様やけど」
「ううん。何となく気になってる事があるだけで、特には問題無いんです」
「何が気になるん?」
 夕は促され、頭上を見上げた。
「実は私もここに来てからファミリアーを使って周囲を索敵してたんですよね。
 それで、気付いて……あの遺跡みたいな所からナイトとマネキンが出て来るのは解ったんですけど。その裏側の山頂付近の雪の中から一部出て来てるみたいでしてっ
 ……何だかその中にキラキラ反射してる物が見える気がするんです」
「なぁるほど……確かにそら怪しいわ、もしかするとお目当ての品見つかるかもしれんね」
「えー? なになにっ! 何か見つかった?」
 そこへ興味津々といった様子でブーケ達の間に夕子が入って来る。
「実は……」


 イレギュラーズの全体的ステータスを考慮した結果。依頼人も乗り気という事もあり、錆びた建造物の背後に見える山頂へ彼等は探索の範囲を広げる事にした。
 勿論、無理はせず。重傷に至る様な負傷者が出る前に帰還する方針だった。
「山頂かー。本当に天気調べて来て良かった!」
「せやねぇ、俺も吹雪の中ここ登れ言われとったら泣いてたわぁ」
「ブーケの旦那はなんか今も凄いがんばってるよ!」
「そー? おおきになぁ……ってボンはボンで何しとるん?」
「風でお姉さん達のパンツ見えないかなって!」
 パーティパンの音速スクワットが視界に入りぎょっとするブーケ。
 そんな彼の事もお構いなしに女性陣の後方を往く少年に、しかしただの一度もラッキースケベは降って来ない。
「なになに? みたいー? ゆーこのおぱんつみたいー?」
「見たい!!」
「ふふーん、見えるかなー……はい! ざんねんでしたー♪」
 鈴音に続き夕子もチラ魅せの技を見せつけて来る。少年は憤慨した。何故だ、ダイスによる判定(詳細は描けないよ!)で夕子と勝負をした結果がFB28もあるのに少年が敗北した。少年は憤慨した。
(あれだな。物欲センサーってやつじゃね)
 何となく傍目に夕子や弥恵の様子を見ていたサンディはこの現象に人知れず結論を出す。世の中には不思議な事があるなぁ。

「『らぁん……らんらんらん……』」

「「!」」
 歌が聴こえた瞬間、イレギュラーズが一斉に動き出す。
 道中の戦闘含め既に二十を越して五体余りの機械人形を撃破しているのだ、既に全員慣れて来ていた。
「ボーイのパンツ依存補正に負けるわけにいかないね! パンツは布に過ぎない。真の補正担当をみせてやるっ!
 前衛、メートヒェンさんを主軸に敵を殲滅せよ!」
「ちょー感謝! マジありがと♪」
 鈴音の気合いが微妙にパンツ補正を上回った(女性陣守備高の為)事で、前へ出る者達の身が軽くなる。
 ヒラリとコートと毛布が二枚雪面に落ちる。音も無く距離を詰めたブーケと弥恵の二人、片や月歩を連想させる軽快さでサマーソルトキックを放ち。片や月光を背にして舞い踊る華麗さを魅せながら、しなる美脚を多段蹴りの様に叩き込んでナイトを破壊する。
 横合いから土砂が地響きと共に打ち上がり、ナイトの戦鎚を受け止めたメートヒェンの壮絶なカウンターが勁打を通して打ち込まれ爆ぜ飛ぶ。
「やぁ! っと、下からも集まって来てるから止まってると囲まれちゃいそうですね……え?」
 光翼がマネキン達を切り刻み弾き飛ばした時、夕のファミリアーが自分達の元へ接近している銀光放つ物体を捉えていた。
 そのシルエットはマネキンでも、騎士でもない。
「みんな! こっちに何か来ます! 姿は銀の……」
「来ましたか。皆さん、それぞれ合言葉は覚えていますか」
「ばっちし覚えてる覚えてる! 『レオン』と『ざんげ』っしょ!」
「……あの、あー……」
「ん? どうかしたゆっち……げっ」
 オリーブに応じて夕子がふふんと合言葉を答えた瞬間。ファミリアーから見た情報を伝えていた夕が凍り付いていた。一同が彼女の目線を追った先で……弥恵が二人、よりにもよって同じ姿勢で固まっていた。
「お姉さんが増えた……」
「「いえ! 私が本物です! この舞いは誰にも真似なんて出来ません……っ!?」」
 パーティパンが混乱を口にすると、応じた弥恵が舞踏を見せようとするがまるで鏡の様にもう一方の弥恵も動き、声を発した。これはどうしたものか、と数瞬気まずい空気が流れた。
 ところがここで思わぬ解決の糸口が見つかる。
「こうなったら……!」
 そう。姿を模写された本人が『A・メタモルフォーセス』を攻撃すればいいのだ。狂熱的なダンスと共に弥恵が踏み出す。
 放たれる鋭い美脚の一撃。白き一閃は弧を描いて自身の偽物を打つ。
 刹那。彼女はビリッ!という嫌な音を聴いた。

 ずっっぱぁん!!
「え――きゃあぁぁぁ!? なんでー!?」
 何故かあらゆる装いの縫い目とかその辺が弾け飛んであられもない姿になる弥恵。そして偽物にめり込む踵落とし。
「偽物はあっちやな」
「いやブーケ毛布持ってんだろ渡してやれよ」
「うおおぉ!? この、鉄屑がぁ!!!!」
「くぁせdftぐじおlpもるすぁ――――!!」
 焦りに焦ったオリーブの会心の一撃がメタモルフォーセスの首(変身は解除済みなので全年齢)を消し飛ばし、錐揉み回転させる。
 このあと、パーティパンには刺激が強すぎるとして夕子とサンディが合体忍法桃色タイフーンとかやって敵も吹き飛ばしたり桜吹雪で隠したり滅茶苦茶混沌したのだった。

●そして歯車は
 馬車がギルド・ローレットへ戻る途中。依頼人パーティパンはイレギュラーズより一足先に下車する事となった。
 首都に程近い位置に見える砦の一つが彼の執心の相手がいるらしい。
「頑張ってねー。真心が伝わるといいね」
「うん! ローレットのお兄さん、お姉さん達も皆ありがとう! 挙式には必ず呼ぶからねー!」
「挙式て」
「ボンは気が早いなぁ」
(しかしプレゼントを夥しい数のセクシー下着で包んで渡すとは、碌な事にならないのでは……)
 それぞれが短い間を共にした小さな依頼主に手を振る後ろでオリーブが兜を俯かせる。
 砦に向かって駆けて行く少年の姿はあっという間に小さく、暫しの後に見えなくなる。
 再び動き出す馬車の中、夕子は相手の病気が治るといいなと思う。プレゼントの送り方はともかく。

 そんなイレギュラーズの思いを知ってか知らずか。
 あっさりと軽業を駆使して砦に侵入したパーティパンは今一度、運命の出会いを果たした病室の前へと来ていた。
「……よし」
 音も無く扉を開けて少年が中へ入って行く。
 大丈夫。彼等が手伝ってくれたのだから――




 ――遠く、砦から離れていく馬車の中から。
 イレギュラーズは空に花火が一つ打ち上がるのを見た。

成否

成功

MVP

岩倉・鈴音(p3p006119)
放課後のヴェルフェゴール

状態異常

なし

あとがき

――その後、とある女性軍人が復帰した噂をあなたは聞くかもしれない。

依頼は成功です。
お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様、無事に少年は女性に贈り物を届ける事ができた様です。

今回のMVPは自分の出来る事を最大限やろうと駆け回っていた貴女に。

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