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シナリオ詳細

この庭は、可愛いあの子達でできている
この庭は、可愛いあの子達でできている

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

◆この庭は、可愛いあの子達でできている

 麗しい朝だ。
 貴族の男は、豪奢な寝台から身を起こす。
 横でぐったりと眠っている、ちっちゃな生き物を起こさないように。

 私室の出窓から庭を見下ろす。自分一人の手で毎日丹精した庭。
 肥料が良いのか、花も木も艶々と伸び栄えている。
 男は、庭の一番目立つところに生えている、くすんだ薄紅の薔薇に目を留める。

 ああ、あの薔薇の花の下は……目一杯愛したのに、何故か死んじゃったあの娘。
 生まれた子供が獣種なら、正室にもしてあげたのに。なんで娘ちゃんは僕と同じ人間種になっちゃったのかなぁ。
 まあいいや。子供のいない従姉に押し付けたけど、あいつは教育熱心だし。
 可愛がってもらってるみたいだから、会いに行かなくてもいいや。

 今はもうこの世に居ない内縁の妻と、特に興味もない我が子のことを一瞬だけ考える。
 海洋に嫁いだ従姉からの『実の父なら時には会いに来なさい』という手紙を破り捨ててゴミ箱へ。
 6年前から数えて、これで丁度30通目。従姉はしつこいな。

 こういった、俗世の難しいことを少しでも考えると心が荒む。
 そうだ、荒んだ心は癒せばいい。

 男は寝台へ踵を返す。
 ちっちゃな生き物――項垂れるように気絶している、獣種の幼い少年へのしかかるように抱きつく。
 部屋の片隅では、ひよこにも似た鳥種の幼女がピクリとも動かないまま倒れている。

 かわいいね、かわいいね。ピクピクするところはもっとかわいいね。
 動かなくなっても、お庭で綺麗なお花になれるんだよ。
 だから、大丈夫……

◆変態貴族に誅罰を

「皆にお客さんだ」
 ギルド・ローレット……の、区切られた一室。イレギュラーズを集めた『黒猫の』ショウ(p3n000005)は開口一番、そう言った。

 イレギュラーズの前に出てきたのは、暗い顔をした一人の初老の紳士。
「私は、とある貴族の家で家令をしております。皆様に……私がお仕えする当主様を殺して頂きたいのです」
 深刻な面持ちで依頼内容を告げる紳士。眉間には、深い皺が刻まれている。

「当主様は、些か奇妙な……個性的な……その、幼児性愛をお持ちでして。それだけなら見て見ぬふりをしたのですが……愛でた幼子を、その手で殺すのをお好みなのです」
 凌辱の果てに殺してしまう。それも犠牲者が幼児とあっては黙っていられぬ。

「獣種や鳥種の子供ばかり……特に、その種族の特徴が大きな子供ばかりを、どこからか連れてこられるのです。どう連れてくるやら、私めどもも見当がつかず……」
 獣種なら獣の、鳥種なら飛行生物の。そういった外見特徴が占める割合の多い子供ばかり。
 使用人すら見当もつかないなら、貴族同士のネットワークか、何かしら金にモノを言わせているか。

「最近は、自分の身を護るためかゴロツキのような者も雇いまして……かなり、後ろ暗いのは確かです」
 始末の悪いことに、屋敷の警備兵として雇われている。
 家令にも追い出せないどころか、彼にすら大きな顔をしたり、武器を鳴らして威嚇するのだそうだ。

 しかし、当主を殺すのはいいが、貴族家が潰れれば貴方も困らないかというイレギュラーズの問いに。
「当主様には獣種のご愛妾様との間にご息女が一人おありになります。お生まれになるやいなや、お顔を見ることも無く養子に出してしまいましたが……」
 その娘を次の当主に据えればこの貴族家は継続可能、ということだ。養い親も後見人になるという。

 ところで、娘を生んだ愛妾はどうなったのかと聞くと……
「ご息女様は当主様と同じ人間種でお生まれになりまして……期待していた獣種の子を産まなかったからと、当主様はご愛妾様を……」
 言葉を濁す家令。これまでの経緯からして、顛末はおおよそ想像がつく。

 それにしても、何故今になって依頼をしてきたんだと、イレギュラーズが問う。
「息子の嫁が鳥種で、先日子供が出来たと言われまして……これまで見なかったことにしていましたが、万が一孫がと思うと……勝手な、私情で申し訳ございません……」
 涙を流し、その場に崩れ落ちる老紳士。
「これまで、ご当主様の凶行を止められなかった私が言えることでは無いのですが……皆様、お願いします。どうか……」

 家令の肩をポンと叩き、ショウがイレギュラーズへ呼びかける。
「お客さんからの依頼内容は以上だ。皆、気を抜かずに頑張ってきてくれよ」

GMコメント

 皆さん、お世話になっております。瑠璃星らぴすです。
 今回は悪い貴族に天罰を下す依頼です。


◆成功条件
 貴族家当主の殺害
 
◆敵
 貴族家当主
 丸腰ですが、体格もあって突進の攻撃は侮れません。

 同好の士×2
 どちらか片方には魔術(神秘攻撃)の心得があるもよう。
 ですが、それも「下手の横好き」の域を出ません。

 当主配下のゴロツキ×10
 「屋敷の警備兵」として正式に手当てを貰っているゴロツキです(金さえ弾めば黙っているため)
 ナイフや剣、手斧などで武装しています。 

◆関係者

【家令】
 初老の紳士然とした男。人間種。
 長年この貴族家に仕えています。曾祖父の代から仕えているそう。
 最近、息子夫婦(息子の嫁は鳥種)に子供ができました。

【貴族家当主】
 大柄かつでっぷりとした体を、金襴緞子の服に押し込めた男。人間種。
 表向きは庭を丹精するのが趣味の風流人として通っています。
 接する人間によって態度を変える癖があるようで、王侯貴族相手では年相応の紳士の振る舞いをしますが、使用人や子供達へはワガママで幼稚、衝動的な言動をします。
 実は奇矯な趣味を持っており、鳥種や獣種の幼児を愛でるのが無上の喜び。
 愛でているうちに毎回「勢いあまって」絞め殺したり圧死させたり、衰弱死させてしまうのですが、その死体を庭に埋めています。

【愛妾】
 故人。獣種。
 年齢によるものか単に小さいのかは不明ですが非常に小柄な女性でした。
 元々はラサの豪商の長女でしたが、父親が商売で天文学的数字の大損を出して売り飛ばされました。
 大富豪の娘として受けた教育のおかげで物腰は上品。
 理知的な会話もでき、非常に幼く見える容姿もあり、当主お気に入りの愛妾だった様子。

【子供達】
 種族は獣種と鳥種ばかり。
 当主自ら攫ってきたり、売り飛ばされた子供達です。
 これまでの犠牲者数は不明。
 現在邸宅内には3人(生死は不明)

≪今回未登場≫
【当主の実娘】
 6歳。人間種。
 海洋の貴族に嫁いだ当主の従姉の養女として引き取られました。
 実父からは名前すら付けて貰えなかったようです。
 現在国内にはいません。

【当主の従姉】
 人間種。
 適当で大雑把な性格故に幻想の貴族社会に馴染めず、海洋の貴族家に恋愛結婚で嫁いでいった当主の従姉。
 家族仲は極めて良好。ファビュラスママ。
 従弟である当主の悪事は全く知りません。子に冷淡な父だと思っているのみ。
 現在国内にはいません。

◆情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • この庭は、可愛いあの子達でできている完了
  • GM名瑠璃星らぴす
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月14日 22時15分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
フレイ・カミイ(p3p001369)
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige
東 政宗(p3p006667)
手折りの刄
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
黒鴉の花姫
ミザリー・B・ツェールング(p3p007239)
本当はこわいおとぎ話
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
魅惑の魔剣

リプレイ


 草木も眠る丑三つ時。

 イレギュラーズは、今回の依頼を持ち掛けた老執事に導かれ、ある屋敷の前まで来ていた。
 瀟洒な意匠の鉄門に守られたるは、古めかしくも壮麗な館。そして、それを取り囲むように広がる庭園。
 この下に、夥しい数の子供の亡骸があると思うと、鮮やかに咲く花は何やら毒々しくも思える。
 遠目に、邸内の一室にまだ灯りがともっているのが見えた。

「……綺麗な庭ですね。訳さえ知らなければ……私も騙されていたでしょうか」
 月明かりに照らされて、夜闇にも花色が映える庭を一瞥し。『幻灯グレイ』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)が目を伏せてそっと呟く。

「皆様お揃いでしょうか。では、こちらから……」
 門前で待っていたのは、ローレットでも会った執事。錠前を開け、イレギュラーズを招く。
「……皆様、どうか。ご武運を」
 門をくぐる若者たちを見送った執事は……力なく、その場に蹲った。

 真っ先に歩き出したのは、確かな怒りを目に宿した『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)である。
「理解できないわね…趣味は理解できなくもないけど、殺すなんて」
 童子童女を愛でる趣向「だけ」ならまだ理解はできる。彼女自身も、幼い異性なら年齢によっては守備範囲に入ってくる。しかし、殺してしまうとなれば理解の埒外。
 そうでなくとも……利香のスタンスとして、権力に溺れて金銀の玉座でふんぞり返ってる連中は生理的に虫唾が走る。

「たとえ幼子を愛でる気持ちがあったとしても、『YESロリータNOタッチ』は徹底するべきだ」
『手折りの刄』東 政宗(p3p006667)の持論。
 子供は飽くまで守る存在だ。未来を潰すような真似は大人としてやってはならない。
 政宗としてはそこが許せぬ。

 夜の暗がりを纏って若きイレギュラーズは進む。
『農家系女騎士令嬢様』ガーベラ・キルロード(p3p006172)は、貴族の生まれとしての誇りと矜持故。
 その手を、血が出そうな程握りしめていた。
「【ノブレス・オブリージュ】」
 ギッ……と、歯ぎしりの音すら聞こえてくる。未来ある幼子の前途を欲で閉ざし死すらも弄ぶ。
「貴族であるならば、愛すべき民を慈しみ守るものですわ。……風上にも置けません」

 野性的な雰囲気を纏う快男児が、忌々しげに吐き捨てる。
「……クソ不快な庭だ。後で燃やしちまおう」
 フレイ・カミイ(p3p001369)の視界には、いきいきと咲く花達も醜悪な肉塊に映っただろうか。眉間に、微かに皺が走る。伏せきれぬ怒りの発露。

 それでも、自分のペースを崩さない者もいる。『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)と 『御伽噺』ミザリー・B・ツェールング(p3p007239)の二人だ。
 当主様は素晴らしいご趣味をお持ちね、とにこやかに微笑む魔剣の少女。
 初陣は豚さんのお仕置きなのです!と意気揚々な、どことなく呪わしい雰囲気を纏う娘。

「…………」

「皆、ちょっと待って」
 最後尾を行く魔女めいた出で立ちの墓守の乙女、『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)はふと立ち止まる。
 銀の籠を掲げて、呟く。
「……皆、お話できる?」
 死に親しむ黒き鳥の娘は、殺され埋められた子供達の魂に語りかける。

 音もなく、アイリスの目にだけ現れる夥しい人数の子供達。
「皆、どこに閉じ込められてたの?」
 彼ら、彼女らは一斉に邸宅の真ん中。正面の二階を指差す。
 執事に聞いた、当主の部屋だ。

 彼女は、子供達に三つの道を示す。
 アイリスの持つ灯りに導かれ、行くべき場所へ行くか。それとも、彼女の持つ銀の籠に宿って色々なものを見て回るか。
「ここで、あなたたちを殺した奴に復讐してから、選ぶ?」
 その言葉に、さまよえる子らの魂は一斉にアイリスに纏わりつく。
 霊に親しむ力のない面々も、アイリスが何かに包まれている、と察知するほどの密度で。

「行こう。あなたたちを殺した奴のところへ」


 邸宅へ侵入する8人。アイリスの後についてゆく無数の魂。
 二手に分かれ、先を急ぐ。

 物音を聞きつけてゴロツキ達が飛び出してきた。
 これが日中で、品のある装いの者ばかりなら彼らもそれなりのTPOを弁えて通しただろう。
 しかし、明らかにどっこいどっこいな服装の者も混じっていて、しかもこんな真夜中だ。

「なんだぁ、お前ら……ふん。別嬪じゃねえか!おい、服脱げ!!」

「オーホッホッホ!私はキルロード家が長女、ガーベラ・キルロードですわ!……愚者に味方する愚民共、死になさいな」
 ガーベラの名乗りと高笑いに、どうしてだかくぎ付けになる『警備兵』たち。
 もっとも、一番視線が集中しているのは彼女の豊かな胸元だとか、括れた腰だが……

 寄ってくる男どもの酒臭い息が鼻をつく。
 武器を持っている者と相対しているようには思えぬ態度と物言いからして、相当酒は回っているようだ。

 ゴロツキ10人、食い止めるのはガーベラとミザリー、そしてクローネ。
 クローネには、チェルシーに渡した小さき従者からの反応が気がかりだ。
 集中していないときは反応が鈍いが……

「出来れば、貴方達との戦闘は避けたかったのですが……」
 人形めいた吸血姫が手を翳せば、黒い立方体が先頭のならず者を包む。
「な、グハッ!!」
 得体の知れぬ黒に包まれたかと思えば、ありとあらゆる苦痛と呪いに苛まれたならず者の口からは真っ赤な泡が噴き出す。
 
 ガーベラの魔技・殺戮道格闘術が唸り、固まっていたゴロツキどもが次々に関節を極められて崩れ落ちる。
「はーい、ガーベラさん一発KOー!ミサも頑張りまーす!」
 ミザリーの……いや、ミザリーに付き従う影から射出された魔弾が、ならず者の脳天を鋭く打ち抜く。

「豚さんに雇われている人間に慈悲など無用なのですっ」
 脳天を貫かれたり、クローネの行使したスケフィントンの娘でいたましい死骸と成り果てたゴロツキ。
 骨が折れる音を立てて、それを飲み込むのは【ロー君】とミザリーが呼ぶ影。いや、黒い何か。
 それへ、兄弟のように親愛を込めて語りかける少女……
「次にご飯になりたいのは誰なのですか?」

 まだ、辛うじて息のあるゴロツキの精神が、完全に狂気のうちに沈んだのは言うまでも無い。

 一方、別動の者たちが、当主の部屋を見つける。しかし、まだ入らない。
 暗がりに潜み、好機を伺う。猛獣が、獲物を狙うかのようにじわじわと。
 例えば、気配を殺した自分達にも気付かない与太者も「敢えて」

 一人チェルシーだけが己の魅力と魔性の瞳を活性化させ、心細げな素振りで入り込む。
 翼は剣のままだが、暗がりでは鳥のようにも見える。

「ごきげんよう?道に迷っちゃったの。勝手にお邪魔してもよろしかったかしら。おじさま?」
 男達の視線が、突然現れた若い娘に注がれるが……

「なぁんだ、鳥種っていってもあんまり鳥じゃないや」
「私もあれはチェンジだなぁ」
「それにしても見られちゃったなあ……埋めるの?売るの?」

 興味なさげにチェルシーから目を逸らす、鞠のような身体の男と、さほど太ってはいない男二人。
 覆いかぶさっている彼の下からちらりと見えた鳥種の少女は……顔まで鳥に近いようだ。
 蹲っている獣種の少年と、もう一人性別の分からない幼児も同様に、獣人といった趣の外見。
 つまりは、そういう性癖ということで。

 さも平然と、忍び込んだチェルシーを殺してしまうか売り飛ばすか、などと口にする。
 一人は大分年老いており、もう一人は風采が上がらぬ中年男だ。

「だ、旦那ぁ……コイツら、くせも……の……」
 一人、撃ち漏らしたゴロツキが這ってくるも、言葉を言い終えぬうちに床に転がり落ちる。

「……ガキ共は将来俺の女になるべく成長するんだ。ちゃーんと助けろよ。あ、男のガキは知らん」
 フレイが、ゴロツキにトドメを刺すように頭を踏みつけてその姿を現す。
「じゃあ男の子は私が引き取るわ♪…冗談はともかく、頼んだわよ?」
 利香も抜刀したまま、踵を鳴らして嫣然と近寄ってくる。

 口から血を吐き出して事切れた警備兵に、恐怖する貴族たち。
 風采の上がらぬ男は、懐からゴテゴテと悪趣味な杖を出して振りかざす。こいつが神秘の心得のある者か。

「わ、我々を何だと……」
「犯罪者、だろ?」
 政宗が、隅で蹲る子供の前へスッと足を進める。
 チェルシーも、気取られないようそれとなく子供達の盾に。

「助けに来るのが遅れてごめんな、怖かっただろ……?もう大丈夫だからな」
 政宗の言葉を耳にした子供達は、顔を上げる元気もないのか。ぴくりとした身じろぎで返事を示す。

「死ね!!!!!!」
 真っ直ぐに貴族を殴り殺そうとするフレイ。
「ひっ!この杖が目に入らぬか!魔法でお前らを殺せるんだぞ!!」
 風采の上がらぬ男が!魔弾にもならぬ魔弾を打ち出す。
 しかし、そのような非力にも程がある攻撃は、すかさず前に出た利香に跳ね返される。
 流れるように、利香の剣技が冴えた。
 杖も、体も真っ二つになる冴えない男。

「殺す!!!!!!」
 フレイは力の限り、今日の任務の目標である巨漢の貴族へあらん限りの拳を浴びせる。
 人間ってこんな音を立ててふっとぶのか?と不安になりそうな音だった。

 一人無傷のまま年老いた男へ相対する政宗。
 戦う力も一切無い、ただ金と権力だけにしがみつくだけの人間だ。
 彼の繰り出すアクセルビートの斬撃で、あっけなくその命も終わる。

 さあ、残るのは当主ただ一人。
 錯乱した当主は、奇声を上げながらあさっての方向へ突進する。
 その隙を見逃さず、政宗が組み敷かれていた子供を抱き寄せるように確保した!
 ……随分と顔面蒼白で、呼吸もしているのか分からない。
「……ごめんな。遅くなって、ごめんな」

 別働隊へ追いついたクローネが、厳しく投げかける。
「お前は、……殺めた子供の名を覚えていますか?」
「し!知らないよ!子供の名前何ていちいち覚えてないよ!」
 
 友人の遺体に怯えながら早口で、唾を飛ばし怒鳴る貴族。
「コンスタンツェ以外は、皆忘れた!!」
「でもあの子だって、獣種の男の子が欲しかったのに女の子で僕と同じ人間種なんか産んだんだもん!!早く獣種の男の子が欲しくて頑張ったのに、突然死んじゃったし!!」

 あまりにも身勝手な絶叫が、室内を谺する。
 どこまで自分のことしか考えられないのかと、イレギュラーズはあっけにとられて。

 ふと、貴族は近寄る気配に顔を上げる。

「皆。復讐していいよ。あいつだけ、ね」
 気がつけばアイリスが白豚の男の前に立っていた。
 本来なら霊感なぞ無い男には見えるはずもないのに、彼の視界には。

 たくさんの、血を流し、腐乱し、骨と化した子供達が蠢いていた。

 アイリスの見てきた、墓守としての死。そして、弄ばれ玩具を壊すように殺された子供達の怨念。
 それが、波のように押し寄せて、肥え太った貴族の肉を毟る。
 夥しい量の血を流すだけの肉塊へと変貌するのに、そう時間はかからなかった……

 その命も風前の灯火となった貴族……いや、貴族だった肉塊。
 声にも成らぬ、気道を通る空気の音だけが虚しく響く。

 その肉塊を利香は冷たく見下すものの、ミザリーがうきうきと
「豚の魂なんて喰らう価値もないわ……私は要らない」
「じゃあ、ロー君が貰うね!」

「や……め……」
 ボキボキという骨が折れメリメリという肉が裂ける音と共に。
 かつて貴族だったものは、真っ黒い影のようなものへ消えてゆくのだった……


 保護した子供達は三人。
 当主にのしかかられていた子供は残念ながら助からなかったが、他の二人はまだなんとか持ちこたえられそうな状態だった。
 すぐさま手配した医療施設へ収容された。

 墓守の少女の祈りと共に、快男児が庭に火をかけた。

 庭も、屋敷も炎に包まれる。屋敷内にいる、この件に加担していない使用人たちは執事の手によって避難も完了している。
 うまくやれば、野次馬に紛れて逃げ出せるだろう。

 燃え落ちる退廃と悪道の屋敷。

 翌日、何人かのイレギュラーズは灰となった邸宅を見に行った。
 これから綺麗さっぱり、屋敷も庭も新当主の下立てなおされるのだろうか。それはまだ分からない。
 他の貴族家にも、新当主を支持する者がいたのは何より心強いだろう。

 すっかり何も無くなった敷地内に一株だけ。
 庭の中央に植えられた薔薇だけが、不思議と燃えずに残っていた。
 イレギュラーズには知る由も無いのだが……

 その薔薇の品種は、コンスタンツェといった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

悪逆当主は斃れ、屋敷も庭も灰となりました。
次期当主の下、お家復興となるかは今後次第です。

皆様、お疲れさまでした。

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