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シナリオ詳細

悪役令嬢は死の運命から逃れられないようです
悪役令嬢は死の運命から逃れられないようです

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●高貴なる学びの園。
 飛び立つ鳩と青い空。ここは幻想私立黄金学園。
 白馬に乗った身なりの良い青年が、美しい庭の前で馬をとめた。
 赤いバラを中心に色香り鮮やかに鉄柵に巻き付けた花々から、その向こうにたつ煉瓦作りの荘厳な校舎をのぞむ。
 白馬から下りた青年を、登校中の男女が足を止めてうっとりと眺めた。
「ご覧になって、『白椿の君(アレックス様)』よ」
「さすがはアイザウワー家のご子息、白馬で通うのがサマになってるな」
「フィッツバルディ家とも親交がある由緒正しき家柄だ。清廉潔白質実剛健。画に描いたように綺麗な貴族さ」
 そのすぐ後、金と黒でくっきりと彩られた馬車がとまり、礼をした執事によって扉が開かれた。
 現われたのは長い金髪を左右で螺旋状に巻いた美女。まるで朝バラのつぼみが開いたかのような美しい香りが広がり、足を止めていた学生男女もまた一様に見とれていた。
「まあ、『黒百合の君(フロリンデ様)』もいらっしゃいましたわ!」
「流石キリューイン家の長女。平民一生分の価値はあろうってドレスを平然と着こなしてるぜ」
「あの家もフィッツバルディ家と親交があって、アレックス様とは許嫁なんだろう? 将来の約束された女って感じだよな」
 口々に噂と感動の声が上がる中、アレックスとフロリンデは互いに顔を合わせ、そして小さく頷きあった。アレックスの差し出す手に導かれるように、スカートの広い金と黒ドレスを揺らして歩くフロリンデ。
 と、その次の瞬間。
「キャー! 暴れ馬よ!」
「めぎゅん!?」
 フロリンデは突如学園に闖入した暴れ馬に撥ねられ、打ち所が悪くてぽっくりいくのであった。

●君たちにとっては明日の出来事だ
「……という呪いがかかっておるのじゃ」
「なんですってぇ!?」
 幻想私立黄金学園でも名高い優秀生徒、『黒百合の君』フロリンデ・ベル・キリューインは頭を抱えた。具体的にはヘッド両サイドのでかい金髪ドリルヘアに手を突っ込んでわしわし回転させた。
「おぬしは山ほど恨みをかっておるようじゃのう。
 『登校中突然馬に撥ねられる呪い』の他にも――
 『不良グループにいきなり絡まれてボコされる呪い』
 『バナナの皮で滑って階段から転げ落ちる呪い』
 『食べ物に爆笑キノコエキスが入っている呪い』
 『許嫁に新しい彼女が出来てフラれる呪い』
 『便所飯がバレて学園中に広まる呪い』
 『騎士道部員の決闘を立て続けに受ける呪い』
 『病んデレ妹キャラに懐かれて刺される呪い』
 ――以上八種の呪い成分を配合しておる」
「そんな逆健康ドリンクみたいな呪いに!?」
 どうしてこうなった。フロリンデは苦悩した。
 確かに許嫁であるアレックスに言い寄る男女を片っ端からビンタして回ったし、不良で有名な毒蠍スコ吾朗のハッピーパウダー吸引をチクって退学に追いやったし、クラスカーストにおける自分の地位を脅かしそうになった女子生徒にバナナを仕掛けて連鎖的に窓からダイブさせたし、主催する舞踏会にダサい格好してきた女子に笑いキノコを食わせて見世物にしたし騎士道部員が家柄的に邪魔だったから2~3人インターハイ出場前に病欠させたしよく懐いてる妹分にメンタルの負担をかけさせ続けた結果最近病んできたが全く身に覚えが……。
「ハッ! 全部ですわ! わたくし学園と幻想王国のためによかれと思って……わたくしという美しい花が頂点で咲き続けることで学園が豊かになると思って……」
「そういうとこやで?」
 黒いローブを被った占い婆に言われ、フロリンデはぶんぶん首を振った。
「し、仕方ありませんわ。そこまで恨みを買っているなら正すが道理。
 このフロリンデ。キリューイン家の名に賭けましても更正いたしますわ!」
「わあ、いいこ」
 非を認める速さと切り替えの速さ。フィッツバルディ家とも親交があるという両家の人間ならではの思考であった。
「けど呪いは発動したから収まらんぞ」
「そんな!!!!」

 今更だが幻想私立黄金学園。
 ちょいちょい名前でてることからも分かるとおりレイガルテ・フォン・フィッツバルディの出資を受けた由緒正しき学園である。
 上流階級の幻想王国民に相応しい教養と技術を学ぶべく設立されたこの学園は多くの貴族子息を卒業させ、その後の地位や職業にさえ影響を与えるとも言われていた。ゆえに貴族のみならず金をもった商人の子や平民ながらも貴族推薦を受けた子らが通学し、中身はさながら幻想王国貴族界の縮図と化していた。
「そんな幻想虎の穴。我が孫がやらかしたことで死の危険が迫っておる!」
 さっきの占い婆。もといフロリンデの祖母レストラリア・ベル・キリューインは目をかっぴらいて叫んだ。
 円卓に集められたのは八人の転校生。
 居ずとも分かるだろう。そう、あなたと仲間たち……ローレット・イレギュラーズである。
 召使いの手によって、寸法ぴったりの学園制服と一瓶のイチゴ牛乳がイレギュラーズたちの前に並べられていく。
「それは幻想私立黄金学園の制服と、冥死牛乳イチゴ味じゃ。これを使うことでおぬしらは年齢性別種族を問わず誰がどう見ても学園生徒にしか見えないノー違和感学園生徒へと……一時的に変身できるのじゃ」
 便利ー、とか思ってると婆はもっかい両目を見開いて叫んだ。
「そのアイテムで学園の転校生として潜入し、我が孫を秘密裏に守るのじゃ! 守るのじゃー!!!!!!」

GMコメント

■オーダー!
 学園生徒となって数日間の間フロリンデを守りましょう。
 影ながら守ってもいいし、お友達として近づいてもいいし、いっそライバルのふりして接近しても構いません。
 悪役令嬢(改心済み)フロリンデには以下の呪いがかけられており、呪いが自然消滅するまでの数日間、以下の現象がおきないようにガードしておく必要があるのです。

 『登校中突然馬に撥ねられる呪い』
 『不良グループにいきなり絡まれてボコされる呪い』
 『バナナの皮で滑って階段から転げ落ちる呪い』
 『食べ物に爆笑キノコエキスが入っている呪い』
 『許嫁に新しい彼女が出来てフラれる呪い』
 『便所飯がバレて学園中に広まる呪い』
 『騎士道部員の決闘を立て続けに受ける呪い』
 『病んデレ妹キャラに懐かれて刺される呪い』

 なんか丁度良く八つあつので、一人一つずつ分担して解決にあたってみましょう。
 たとえば馬撥ねの呪いはずっとそばについていていざって時に飛び出し馬を殴り倒せばOKですし、不良グループのやつは事前に不良たちをボコしてまとめ上げておけば解決できそうです。
 折角のイージーシナリオですので、楽しい解決方法をお待ちしております!

■学園生徒になりきれ!
 あなたは今日から学園生徒です!
 誰がなんといおうと、たとえおっさんでもババアでも電柱かなんかでももれなく違和感のない学園生徒になれます。なれ。

 学園は皆さんがなんとなーく想像する悪役令嬢モノ異世界転生ファンタジーのアレにほどよく近い空気でできています。
 詳しいところは説明した通りなのですが、貴族がいて学園があってパーティや騎士っぽい部活動があって悪役令嬢がひでーめにあうとこだけ押さえておけばOKです。
 細かいところはアドリブでなんとかするので、割と軽い気持ちでロールしてみてください。

■■■アドリブ度(やや高め)■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 悪役令嬢は死の運命から逃れられないようです完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年07月19日 22時10分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
皆の翼
透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
蕩幻卿
ニーニア・リーカー(p3p002058)
堕天使ハ舞イ降リタ
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
津久見・弥恵(p3p005208)
嫣然の舞姫
ユイ・シズキ(p3p006278)
流転の閃華

リプレイ

●幻想私立黄金学園
 空になった冥死牛乳イチゴ味。そして折りたたまれた衣服。
 簡易更衣室のカーテンが開かれた時、そこには若々しい『戦場のヴァイオリニスト』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)の姿があった。
「んん……」
 首元に指を入れ小刻みに一度だけ首を振るアストラルノヴァ。
 元々身なりの良い彼である。学園の制服もパキッと着こなし胸を張っていた。
「しかし、8つの呪い……か。また難儀な呪いにかかったものだな。話を聞くに自業自と……」
 何気なく振り返ると、占い婆(今更だけどフロリンデの祖母レストラリア・ベル・キリューイン)と目が合った。
「そんな呪いから身を護る仕事も我々イレギュラーズの務め……」
 せやでという顔で頷くレストラリアと、ゆっくりと頷き返すアストラルノヴァ。
 一足遅れてカーテンから出てきた『有色透明』透垣 政宗(p3p000156)は、ミニスカートとへそがちら見えする女学生の服装に身を包んでいた。
「なぜそっちを着た……」
「うーん、なんとなく、可愛いから?」
 可愛い僕が可愛い服を着るのもおもしろくていいよね? みたいな魅惑的な顔をして、政宗はこびを傾げて見せた。
 実際に『可愛い僕』とか言いはしないが、自分の魅力的な容姿をわかって振る舞っている彼である。
「依頼だからっていうのもあるけど、あんまり不憫だし助けてあげようね。なんか見てるとすごぉく、愉快な子だしね?」
 久しぶりの学生生活! と言いながらスカートの裾をつまんで回る政宗。
「それにしても愉快な呪いですわねえ。死んでしまっては笑えませんし、愉快なままで解決するといたしましょうか?」
 カーテンから顔だけ出した『蕩幻卿』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)。
 一足遅れてシャッとカーテンを開くと、幼児用の服でもうっかり着ちゃったのかってくらい胸元がぱんぱんになっていた。ていうか実際ボタンは二つほどはじけ飛んでいた。
 同じ学生服でもアストラルノヴァ、政宗、メルトアイの三人で既にかなり着こなしかたが違うものである。
 ゆくゆくは国の政治に影響まで及ぼす貴族の学園にそういうのアリなのかなとふと思ったアストラルノヴァではあるが、レストラリアは『いいんじゃね』って顔をしてるし実際幻想貴族には乳放り出したような格好の人も少なくない。
 カッチリしているようで案外自由な世の中である。
 いっぽーでは。
「そこをなんとかなりませんか。教師と生徒の禁断の恋は必ずやフロリンデ様の呪いを打ち破るはずです」
 あえて牛乳をのまずいつもの格好をした『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)がタブレットPCを翳してレストラリアになにやらプレゼンしていた。
 プレゼンというか、若干ゴネてもいた。
「そうは言ってもレイガルテ・フォン・フィッツバルディの『黄金』が刻まれた由緒ある学園じゃからのう。教師どころか用務員ひとり選ぶのに政治が関わる世界じゃ。おぬしのコネクションもなかなかのものじゃが……学園を動かすには国家貴族社会そのものに圧力をかけるに等しい行為じゃ。さすがに……」
「できませんか」
「なんとかしよう」
「できるのですか!?」
 だってわしキリューイン家の女じゃし、といってサムズアップするレストラリアのバアア。
「ワシのツバメが教師気分を味わいたいからという理由で短期間の教育実習生枠にねじこんでやろう」
「ツバメの部分必要ないですよね」
「必要ないかァ?」
 ンー? といって顔を覗き込んでくるババア。
 この件に深入りするとろくなことがないなと察した『タケノコ派』ニーニア・リーカー(p3p002058)がシャッと背を向けて山たけのこを囓り始めた。
 説明しよう。山たけのことは幻想の山に自生する甘いタケノコである。こぶし大から指先サイズまでありチョコレートとビスケットに似た二層構造が深く高尚な味わいを……貴様読み飛ばしたな!? きのこ派か!?
「食べ物に爆笑キノコエキスが入るなんて……これはきっとキノコ派の陰謀に違いないね!」
 すごいことを言いながら窓から身を乗り出すニーニア(学生服バージョン)。
「相手がキノコなら、それを大義名分に学園にもいるであろうタケノコ派の同志が立ち上がるはず! オール・バンブー・タケノコ!」
「「オール・バンブー・タケノコ!」」
 そんなタケノコ派がそこらじゅうにいるわけ――もういる!?
「さぁ、聖戦の開始だよ!」

 章区切りが本当に聖戦のはじまりみたいに見えるがまだ冒頭パートである。
 学生服とリボンを装着し、スカートの裾をひらひらとさせる『流転の閃華』ユイ・シズキ(p3p006278)。
「日頃和服しか袖通さんから制服姿って新鮮やわぁ。これならだれが見ても件の令嬢のクラスメイトやなぁ?」
「でも君22さ――」
「クラスメイトやなぁ????」
 圧のある笑顔で半歩迫るユイ。
 両手を挙げて半歩下がる『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)。
「まあ待てって。この牛乳飲めば誰でも同い年になれっから。俺でもなれっから。一緒に飲もうぜほら。そっちの君も」
 も、と言われて振り返る『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)。
 年齢的に飲む必要がほぼなさそうではあるが、スタイルが良すぎるせいでえらく大人びてみえる弥恵である。
「この牛乳って、体格まで変わるんですか? そういう仕様だったでしょうか……」
「まあまあ細かいことはきにせんと」
「仲良くJKになろうぜJKに。あっでも俺イケメンになりてえ。爽やかイケメンになりてえ!」
 のむぜ! といって瓶をあの針でポンってやるやつで開くと、三人同時に冥死牛乳イチゴ味を飲み干した。
 かくして彼らイレギュラーズは……!

●学園モノといえば……ケンカだろ!
 名門学校といえど不良はいる。
 そして不良の世界にもコミュニティはある。
「フロリンデの野郎はよぉ……毒蠍センパイをよぉ……チクりやがってよぉ……」
「マジ許せねえよなぁ……」
 口に布マスクをして髪をリーゼントスタイルにした学ラン姿の集団が校舎裏で大量にウンコ座りしていた。
 こんなコテコテの不良が大量にいるのもすごいし名門学校でこれができるのももっとすごいが、そこに平気なツラして近づいていくペッカートはもっとすごかった。
「ちぃーっす」
「なんだぁ……てめぇよぉ……」
 片目を大きく見開き、ポケットに手を入れながら前屈みにガンとばしてくる不良たち。
「転校してきた新入りっす。君たちのトップに会わせて欲しいんだけど?」
「”ヘッド”はテメェなんかによぉ、会わねえんだよぉ」
「チョーシこいてっと埋めんぞオラァ、あァ?」
「あーはいはい帰りますよ……」
 ペッカートは両手をあげて降参し、帰るそぶりを一度見せてから……。
「とでもいうと思ったか!?」
 振り向きからの回し蹴りが不良のリーゼントを吹き飛ばした。
「ヒイッ!?」
 ニヤリと笑うペッカート。
「そこのお前焼きそばパン買って来いよ! もちろん俺の金で。全員分だぞ?これから全グループを潰しに行くんだからなァ!」

 ペッカートが学園の不良を緩衝材のプチプチみたいに潰していくなか……。
「奴が我々のインターハイ出場を邪魔したフロリンデ……」
「集団で取り囲むのは騎士道に反していても、一人一人次々に決闘を叩き付ければ……!」
 呪いに満ちた騎士道部の面々が校舎の影から登校中のフロリンデをのぞき見ていた。
 皆脱いだ手袋を握りしめ、一斉に叩き付けようと身を乗り出した――その時。
「フロリンデ嬢さんも人気者やねえ」
 投げた手袋をまとめてキャッチし、ユイがきらりと決め顔を作った。
「その決闘。ウチが代わりに受けたる」
「何ィ!?」
「だが手袋を代わりに受けた以上決闘をせざるをえない……!」
 そんなルールあったかな。
 とにかく。騎士道部員たちはそれぞれ剣をとり、一人ずつユイに戦いを挑んでいった。
 一方で刀を抜き、対抗の構えを見せるユイ。
「『覚悟』持って来とるんやろなぁ? どうなってもええ覚悟あるんやろねぇ?」

●歩いてるだけで死ぬフラグが立つ令嬢
 馬車から降りた黒ドレスの黒百合の君、フロリンデ。
 同じく白馬から下りた白椿の君、アレックス。
 学園の中でもカースト上位に君臨する二人が顔をあわせ、互いに小さく頷き合ったその時。
「キャー! 暴れ馬よ!」
 突如学園の門をくぐり、暴れ馬が闖入してきた。
 闖入の闖はこういう状況をあらわしているんだね。
 フロリンデはこの馬に撥ねられ命を落としてしまうのか。
 とか軽くフロリンデが現実逃避していると。
「ハッ……!」
 翼を広げ馬に飛び乗るアストラルノヴァ(と山口さん)の姿が。
「ん……よしよし。暴れてはいけないよ……」
 暴れ馬の手綱を掴み、どうどうとなだめるアストラルノヴァ(と山口さん)。
「レディに当たってしまうから。一緒に……あっちへ……行こう……美味しい牧草が在る場所をしってるから……ね」
 アストラルノヴァ(と山口さん)はなだめた馬と共にぱっからぱっから門の外へと出て行った。
「一体なんでしたの……ハッ、まさかあれがおばあさまに言われた呪い!?」
「そういうことですね」
「怪我は無かったかい?」
 左右にヒュッて現われた弥恵と政宗がフロリンデの両腕を掴み取り、さあさあ一緒に登校しましょうねといって校舎へと連行していった。
 その様子を呆然と見送るアレックス……を背後から見つめる女子二人。
「フロリンデ様……なぜ私以外の女とあんなに仲良く……殺して死ぬしか」
「アレックス様……どうしてフロリンデ様の許嫁に……」
 視線のアツさからこいつで間違いねえなと察したメルトアイと寛治が、それぞれの女子の肩を後ろからぽんと叩いた。
 では順に見ていってみよう。

「なにやら思い詰めておられるご様子。貴女のことが放っておけないのです」
 メルトアイは絡みつくような人当たりの良さでヤンデレ的後輩女子に接触していた。
 あとなんだろう人心掌握術を人身掌握術って書き間違えてるんだけどあながち間違ってなさそうなのがこわい。こわくない?
「ええ、ええ。思う存分甘えてくださってもよろしいですのよ♪ 私は全てを受け止めて差し上げますから……♪」
 こうしてヤンデレ女子を口説き落としたメルトアイはひとけのない空き教室に連れ込んでおーっとここからはよい子は眠る時間だぜ!
「心配など要りませんわ、私に全て任せて頂ければめくるめく快ら」
 おーっとよい子は眠る時間だつってんだろ!

「開幕状況説明パンチ!」
「「グワーッ!?」」
 解説しよう。開幕状況説明パンチとはシーン開幕と共に勝敗が決したことを説明する脚本上の技術のことである。
 女子生徒にからんでいた不良(仕込み)をワンパンでまとめて追い払った新田は、困惑する女子生徒に名刺を取り出した。
「ご無事ですかお嬢さん。私はこういう者です」
 ファンドとかかれた名刺を取り出しそうになって破り捨て、『教師』と赤の大文字で書かれた名刺を差し出した。
「あなたはまさか……キリューイン家のごり押しによって時期が違うのに教育実習生になったという青いツバメ」
「青くないしツバメではありませんがそれ以外はおおむね合っています。
 ですが不慣れなもので、学園を案内して頂けませんか。はい思い出圧縮カット」
 新田が指を鳴らすといくつものシーンがズームアウト方式でワンカットずつ流れた。
 校舎を説明する女学生と新田。おそろいのマフラー。銭湯へ通う夜。雪降るクリスマス。ドキドキのバレンタイン。桜の下であのパンがはみ出た紙袋もって歩いてるとこ。夏の海。秋のなんか。

「短い間でしたが……貴女とこの学園で過ごせた時間は、私の宝物です」
 各季節のカキワリ背景をかついで撤収していくスタッフ(仕込み)をよそに、新田とメルトアイは眼鏡を外し女子生徒から去って行った。
 入れ替わりに駆け込んでくるニーニア(たけのこ警察。付けひげ)。
「やつめ、まんまと盗み出しおった」
「あの人は何も盗んでません!」
「いいえ、奴は盗みました……あなたの心です」
「はい!!!!!!!!!!!!!!」

●悪役令嬢って地味にぼっちなところあるよね
「オッホッホ! あなたそんなことも知りませんのォ? ……よくわかる参考書を差し上げますわ」
 普段の悪役令嬢ムーブにバッファーをかけて振る舞うフロリンデ。
 その左右には身なりの良い弥恵とガーリーな政宗がそれぞれくっついていた。
「フロリンデちゃん、お昼にしない? 良い茶葉を頂いたから、一緒に飲もう!」
「それはいいですね。三人で一緒に食べましょう」
「えっでもわたくし高嶺の花として孤高に咲くことで世界が美しく――」
「そういうとこですよ?」
 弥恵と政宗に両腕を引っ張られるように中庭へと連行されるフロリンデ。
 が、そんな彼女の足下になぜか都合悪くバナナの皮が!
「はうわ!?」
「フロリンデちゃーーーーーーん!!」
 後方縦回転しながら階段を飛んでいくフロリンデ。
 と同時に弥恵が素早く飛びつき、空中でキャッチしたかと思うとくるくる踊りながら階下へと着地した。
 目撃していた生徒たちが目をこする。
「あれ、いまの……」
「これもお嬢様の名誉と命を守る為。お付き合いくださいね」
 シャッと生徒たちの背後に移動した弥恵が彼らの腰を抱き寄せるようにしていいにおいをさせた。
「ご協力いただけますね?」
「「はい!!!!!!!!!!!!!!!」」
 そのご弥恵はフロリンデと政宗の三人で中庭に出ると、政宗手作りのお弁当を囲んだ。
「紅茶には淹れるのに最適な温度があって……なんて、こんな事知ってるよね」
 政宗はにこにこしながらティーセットをひろげ、三人分のお茶をいれていった。
 近くになぜか置いてあったバナナの皮は弥恵がちょんとつまみあげてゴミ箱にぽい。
 弥恵と政宗はフロリンデに背を向けたまま顔を見合わせた。
「こうして常にそばについていればバナナで転ぶこともないですし……」
「ぼっちにならないって寸法だね。これで期間いっぱいまで乗り切ろう!」
 グッと拳を握り合う二人、であった。

 さいごに。
「うごくな! タケノコ警察だよ!」
 タケノコガン(ちっちゃい山たけのこが飛び出すガン)を構え、教室に踏み込むニーニア。
「爆笑キノコの栽培はタケノコ条約で禁止されてるんだよ! それに体育の時間、教室に忍び込んでフロリンデちゃんのお弁当にキノコを仕込んだ犯人はきみだね!」
 写真を突きだし、ニーニアはカッと目を見開いた。
「諜報部員!」
「はい! やつはキノコ過激派のテロリストであるという証拠があがっています!」
「工作部員!」
「はい! たけのこの折り紙つくりました! みて! かわいい!」
「強襲部員!」
「タケノコ派は不滅なり! キノコ派に明日は無いよ……!」
 以上全部を一人で(脳内で)こなしていたニーニアは、爆笑キノコ栽培マンにタケノコガンを突きつけてフリーズさせた。
「これもフロリンデちゃんを守るため……まっててねフロリンデちゃん。学園のキノコ派は、必ず撲滅するから!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 こうしてフロリンデは八つの呪いから解放されました。
 悪役令嬢ムーブはやみませんが自分なりに人に好かれるムーブを心がけているそうです。

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