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シナリオ詳細

無限あんパン海上奪還作戦
無限あんパン海上奪還作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『蒐囚壁財団』
「我々の目的は保護、確保、そして収容だ。君たちにはそのうちの『確保』を代行してもらう。ある団体と戦ってあるものを奪還するのだ。
 ローレット、世界の何でも屋。世界の破滅を防ぐ者。
 手段や姿勢は異なれど、世界の破滅を防ぐという一点において、我々は揺るがぬ同志だ。
 繰り返して名乗ろう。
 我々は『蒐囚壁財団』。
 世界の破滅を防ぐため、以上存在を絶えず研究し続ける組織である」

 四角い銀のサイコロめいた建物の一角で、イレギュラーズたちは黒い仮面の男と対面していた。
 いや、この場合ヘルメットと述べるべきだろうか。本来面覆にあたる半透明なシールド部分がなく、ほぼ全面をヘルメットの防御素材で覆ったかぶり物である。
 細く背の高い体格から、黒いマッチ棒のような男だと誰かが言った。
 彼は蒐囚壁財団に所属する研究員ウォーズ博士。
 無香料の消臭剤が充満したような部屋の中で、ウォーズ博士は白手袋の両手を組んだ。
「この世界には異常な存在がいくつも存在している。
 無論、魔法や科学やギフトといったものはそれに含まない。
 皆も分かっていると思うが、制御でき一般化した技術は異常存在たりえないからだ。
 我々が、そして君たちも述べる異常存在とは、そうした技術や知識をもってしても理解できないきわめて異常な現象、物体、生物、土地、その他あらゆるものを指す。
 異常存在を理解せぬまま、もしくは理解した気になったまま放置すれば目を覆うような悲劇を引き起こすだろう。
 我々はそうしたものをひとまず無害な状態に固定し、引き起こされるあらゆる状態を監視し研究し続けることで理解し、それらが異常と言えないレベルにまで理解しつくすことを目的としている。
 当然だが……異常存在に対して異なる目的を持つ人物及び団体も少なくない。
 金持ちに売って利益にする者や、芸術家気取りで笑えない悪戯をしかける者や、欲望の道具とする者や、狂信を捧げる者……そうした団体とは特に敵対的関係に陥ることが多い。
 今回が、そのパターンと言えるだろう」
 ウォーズ博士はスティック状の端末を操作し、空中に資料を投影し始めた。

●『清浄楽土慈善財団』と『無限あんパン』

 異常存在管理ファイル。ナンバー■■■■。
 通称『無限あんパン』。
 『無限あんパン』は小麦と小豆と砂糖を原料とする一般的醸成食品に見えます。
 『無限あんパン』を高熱による焼却や薬品による溶解などによって破壊することはできますが、一定時間後に同じような場所に破壊前の状態で再生成されます。(実験番号■■■■ー■■)
 『無限あんパン』は人間(人間種や旅人を含む基本的知的種族)による摂食行為によってのみ一時的に破壊、消費することができます。
 摂食によって消費された『無限あんパン』は1~2時間後に完全な状態で再生成されます。(実験番号■■■■ー■■)
 『無限あんパン』を摂食し消化した場合、対象は肉体的にきわめて健康な状態となり、空腹が満たされ、高い幸福感を得ます。(実験番号■■■■ー■■)
 対象は数日間にわたって飲食が必要なくなりますが、一定期間に達すると再び『無限あんパン』を要求するようになります。(実験番号■■■■ー■■)
 30~40日間にわたって『無限あんパン』を摂食し続けた対象は肉体の変化を起こしはじめ、5~10日間をかけて10~15個の『無限あんパン』へと変化します。(実験番号■■■■ー■■)
 摂食対象者が変化した後の『無限あんパン』は『無限あんパン』と同一の性質をもちます。

「以上が、我々の収容していた異常存在『無限あんパン』に関する君たちが閲覧可能なファイルだ。
 これが先日、『清浄楽土慈善財団』という団体によって収容サイト移送中に強奪された。
 『清浄楽土慈善財団』は異常存在による人助けを目的とした団体だが、異常存在の性質を理解しないまま感情的に利用するためしばしば大惨事を引き起こす。
 現在確認できただけでも強奪した『無限あんパン』数十個を幻想の恵まれない子供たちに配る活動を行なっている。武装チームを突入させることで子供たちの摂食を防いだが、またいつ同じ『善意の蛮行』に出るかわからない。
 我々は『無限あんパン』の性質を説明し返還を要求したが、彼らは話を信じなかった。どころか、彼らの持つ武装チームを用いてさらなる異常存在の強奪を計画している始末だ。
 よって我々は武装チームを一度引き下げ、第三者による奪還作戦を行なうことにした。
 その第三者というのが、君たちだ」

 狙うのは『清浄楽土慈善財団』の海上輸送船である。
 といってもコンテナ一つ分を運ぶだけの中型船だ。
 船には武装チームが配置されており、銃器やマジックアイテムによる武装が確認されている。
「言うまでも無く、他国へ向けた『無限あんパン』の輸送船だ。
 偵察によれば武装チームは10人で構成され、それぞれ優秀な戦闘員だ。
 我々から重要なアイテムを強奪できる程度には、だ。
 それだけ連携がとれ、戦闘力があり、頭もはたらくということだ。
 その知性と慎重さを異常存在の運用にも使って欲しいところだが、そうはならないから君たちを派遣せざるを得ないというわけだ」
 空間投影ウィンドウを閉じ、ウォーズ博士は深く頷いた。
「彼ら武装チームを倒し輸送船を制圧してくれれば仕事を終えていい。
 そこからの保護と収容は我々の仕事だ。いい仕事をしよう。よろしく頼む」

GMコメント

■オーダー
 『清浄楽土慈善財団』の輸送船を襲撃し、輸送中の『無限あんパン』を奪還する。
 このうちローレットが行なうべき役目は輸送船の武装チームを倒し船を制圧するところまでです。
 制圧後は監視していた蒐囚壁財団の依頼人たちが到着し、『無限あんパン』を再び保護収容します。

■エネミーデータとフィールドデータ
 『清浄楽土慈善財団』の武装チーム10人が船のデッキに配置されています。
 船のデッキは平たい構造になっており、巨大なフタを開くかたちで内部格納庫からコンテナを取り出すようです。直接関わる部分ではないので、『全長30~40m程度の楕円形でやや平たく硬い場所』と認識してもらえればOKです。
 襲撃には小型船を用いますが、これは全長15mほどの足場が少ない乗り物であるとし、近接戦闘を仕掛けるには輸送船に飛び乗る必要があります。(小型船からの射撃は可能ですが、双方の船がよく動くことを念頭においてください)

 武装チームはウォーカーとラサの傭兵で構成され、アサルトライフルや拳銃、コンバットナイフといった武装で固めたメンバーと魔術や格闘といった地力で戦うメンバーに分かれています。
 頭数を減らしあう勝負ではこちらが不利なので、ばらけてそれぞれでぶつかり合う戦法に持ち込みたいところです。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 無限あんパン海上奪還作戦完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月21日 21時55分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
大いなる者
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
白綾の音色
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
レッドが来たぞ
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
エル・ウッドランド(p3p006713)
イカダ漂流チート第二の刺客
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ

リプレイ

●大海原の奪還作戦
「あれはなんじゃ!」
 両手をグーにし顔の前でクロス。背を丸めて身体を縮める。
「タコか、美少女か、否――」
 そこから全身をバネにするイメージで思い切り身体を広げながら――『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)はジャンプした。
「妾じゃ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 普段の十倍くらい見せたがりのデイジー(2019水着バージョン)である。
 自慢のビッグドリーム号を海に滑らせ、その先頭で自己アピールをしまくるデイジーであった。
 そんな彼女の船に相乗りさせてもらいつつ、スティックチョコをぽりぽりやる『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)。
「今回の奪還対象は……無限あんパン? 不思議な食べ物もあるんだねー。元からこの世界にあったのかな。それとも誰かが作ったのかな?」
「さーあねー」
 『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)は持ち手の部分が黒猫っぽくなったカワイイクナイに指を通してくるくるやりつつ、船の手すりに腰掛けて遠くを見た。
「背景はともかく要するに傭兵仕事だよね。理解理解」
「しかし『清浄楽土慈善財団』という組織もどうしてあの無限あんパンを利用しようとしたのかは気になる所ですね」
 一方。花とリボンをあしらったサーベルの柄を拳でこつんこつんとリズミカルに叩きながら、『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)は物思いにふけっていた。
「恐らくですが、私の『悪食の魔女』でもあのあんパンは食べられないと思います。それを利用しようとするのは、無知か、それとも……」

「『善意の蛮行』とはなかなか面白い言い方だ」
 やや場所は離れて別のレンタル船舶。
 『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)は練達製の魔力エンジンを搭載したクルーザーの先頭で、暴風に腕を組んでいた。
「信念に妄信的なのは構わないんだが、無関係の者を巻き込むならただの迷惑行為……おにーさんとしても危険なドラッグに値する代物の流出は阻止したい所だね。君もそう思わない?」
「ええ、確かに……」
 『白綾の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)はクルーザーの手すりに寄りかかってフルートを吹いていたが、その手をぴたりと止めた。
「慈善活動も、超常の類を知識なく利用しようとすれば悲劇の元、ですね」
(尤も、移送中に強奪なんて手段に頼るようでは、この慈善活動も善意によるものではなく宗教活動の人気取りの一環なのかもしれませんが……)
 考えの前半だけを口に出し、後半を心にとどめて演奏を再開するLumilia。
 その音色に瞑目しつつ、『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は胸一杯に潮の香りを吸い込んだ。
「今日は沢山運動したあとあんパンをお腹いっぱい食べられるんでしたよね」
「だめでしょう食べちゃ。身体があんパンになってしまいますよ」
 『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)がシャッと振り返った後、ゆっくりと視線を遠くの空へと戻した。
「けど……確かにあんパンお腹いっぱい食べたら素敵かも……小豆はこしあんより粒あんがいいですね。すんだや白あんも大好きですけど古風な桜の塩漬けが乗ったやつも捨てがたいというか……」
「やめてっす! よけい食べたくなるっす!」
 耳をふさいで首を振るレッド。
 そんなふうにしているうちに、話にあった『清浄楽土慈善財団』の輸送船を発見した。
 同じくこちらを発見したであろう武装チームがライフルや拳銃を手に展開しているのが見える。
 それから――。

●海上の激突
 それから――デイジーによる第一撃が発射された。
「まずはこいつをくらうのじゃ! ディスペアー・ブルー(2019夏水着バージョン)!」
 絶望の海を歌うその水着は熱い得票数を帯びています。フレーバーからコピペしませんでした。
 デイジーがツボから放った水柱が大量のちっちゃいアメーバ状のなんかに変化し、こちらを狙う武装チームの一人へと群がっていった。
「突撃じゃー!」
 レバーをひいて船をぶつけにかかるデイジー。
 相手の船はそれをかわすためにカーブをきりはじめ、船側面に移動した兵士たちがデイジーの船めがけてアサルトライフルによる射撃を始めた。
 甲板を激しく弾が撥ねる中、シズカはロンググローブの固定リングを親指でシュッと撫でた。
 魔術の渦が身体を巻き、それまで感じていた船上の暴風がぴたりとやんだ。
 いや、シズカを取り巻く大気が彼女を中心に巻くようになったのだ。デイジーのビッグドリーム号が『清浄楽土慈善財団』の輸送船をかするように接触し、シズカはその勢いに乗って相手船舶へとジャンプ。
 同じく夕子とレッドも飛び上がり、三人が手すりを超え拳銃を構える敵兵士の目の前で浮かぶ一瞬が脳内でスローモーションのように引き延ばされた。
 膝を折ってどこか楽しそうに飛び上がる三人の少女。
 その先頭をゆくシズカの拳が、エアポンプの衝撃を乗せて兵士を殴り飛ばす。
 咄嗟にピボットターンをかけ、レッドたちに狙いをつける左右の兵士。
 甲板に着地したレッドと夕子はそれぞれ左右に分かれ、それぞれの兵士へと突撃した。
「皆が飛び移るまで静かにしてるっす!」
 赤いバリアが展開し、兵士の弾を空中で止めていく。
 甲板に赤い足跡を刻みつけ、レッドのバリアの反発力をそのまま乗せたショルダータックルが兵士の腰に叩き込まれた。
 人間、上半身の衝撃は耐えられても腰から下に与えられた衝撃は耐えづらいという特徴がある。アメフトの基本でありボディーガードの基本でもあるらしい。
「ちょりーっす。マジ卍。とりま秒で寝ててね!」
 一方で夕子は飛来するアサルトライフルの連射を身体で受けると、鋭い跳び蹴りによって兵士の防御を無理矢理に崩した。
 弾を受けた部分の服がリアクティブアーマーよろしくはじけて穴あき服になっていく。
 突き飛ばされた兵士が落とした銃を拾い上げて構えなおす。
「何者だ! L&S株式会社か! アンチオカルト連合か!」
「しらんし。あーしはただのJKよ!」
 飛来する銃弾をクナイで弾き、夕子はさらなる蹴りを繰り出した。

「始まりましたね、こちらも回り込みましょう」
「あいよ。おにーさんの運転で悪いね」
 ヴォルペは操作レバーを足で踏みつけると、『清浄楽土慈善財団』輸送船の反対側へと回り込んだ。
 豪快に船体をこすらせたデイジーの船と違って露骨に後ろへ回り込む彼らの動きに、『清浄楽土慈善財団』の武装チームは急いで展開を始めた。
 というのも、彼らの任務が輸送中の『無限あんパン』の防衛であるため、回り込みには素直に対応するほかないのだ。
 ばらけてぶつかり合いたいこちらとしては好都合である。
「無知は改め、罪は償わねばならない方々です。無闇に死んでも良いというわけではありません。可能な限りではありますが、犠牲を最小限に留めるため、ある程度勝敗が決すれば投降を勧めようと考えていますが……」
 どうですか? という視線に、乗り合わせたヴォルペとアウローラは別にいいよというリアクションをした。エルは『善意に酔ってる馬鹿な人たちにあの世で後悔させたい』と考えていたらしく若干の相違は起きたが、もとより双方無理に意見を通そうとしているわけではないようだ。
 依頼目的の範囲内で、自分のやりたいことをやりたいタイミングで行なう。そんな風に彼らの間に暗黙の取り決めが生まれた。
「まずは援護します!」
 エルはブルー・インパクトを構えると、ワイズシュートを打ち込み始めた。
 一方でLumiliaは『神の剣の英雄のバラッド』を演奏。同じ船内の仲間たちを一旦強化すると、ヴォルペに突撃を任せることにした。
 ――『俺の可愛い双子姫』。
 ヴォルペはというと運転を仲間に任せ、助走をつけて敵船へ飛び込み、銃撃を仕掛けてくる兵士へ跳び蹴りを食らわせた。
 そこへナイフを抜いて集まってくる敵兵。
「奏でるは魔法の重ね唄!」
 アウローラは魔曲・四重奏の構えをとり、パチンとウィンクをした。
 手にしたサイリウムスティックを振りかぶり、指揮棒のように突き出すと周囲に発生した無数のデジタル音符が敵兵めがけて飛んでいく。
 敵兵たちが射撃で対抗しようとした頃には、アウローラたちの船は一度敵船とすれ違い大きく距離をとっていた。
 ハンドルを握ってカーブさせ、再び船へと接近しはじめるアウローラたち。
「そろそろ、『コレ』の出番かな」
 スティックの先端をバチバチとスパークさせ、アウローラは笑った。

 夕子の首を狙ったコンバットナイフが正確に切断する――とみせかけて、ナイフはむなしくも空をきった。
「世界がどーとか関係ないわ! あーしはあーしのやりたいようにやるの!」
 背後から現われた夕子が兵士の首に腕を絡みつけ、逆手に握ったクナイを突き立てにかかる。
 咄嗟に手を掴んで攻撃をとめる兵士。それでも強引に首に刃を差し込もうとする夕子。
「恵まれない者たちを救うことの何が悪い!」
「誰も言ってないじゃんそんなこと。別にいーよ、あーしらが悪。あんたらが正義。でもって今から死ぬのは――」
 ぽふんと音を立てて夕子の姿が消えた。
 直後、兵士の脇腹にクナイが突き刺さる。
 コンテナの上に立っていた夕子が、ワイヤーを操って刺さったクナイを回収した。
「あんたの方だよ?」
 そんな夕子の後ろ。コンテナの上を豪快に走り抜けるレッド。
「火だるまになるがいいっす!」
 コンテナの端から跳躍したレッドは、自らに激しい炎を纏って兵士へと跳び蹴りを繰り出した。
 兵士の銃撃がレッドの頬や腕を掠っていくが、その全てをすり抜けて赤い靴底が直撃。
 靴跡が赤く激しく燃え上がり、兵士はたちまち炎に包まれた。
 炎を消そうと暴れ、手すりをこえて海へと転落していく兵士。
 そのすぐ横を、アウローラたちの船が走り抜けていく。
「アウローラちゃんの唄に聴き惚れて!」
 デジタルマイクを出現させ、『スピリット・カンターレ』を歌い始めるアウローラ。
 さながら海上ライブ会場とかした船に、兵士がアサルトライフルによる射撃を浴びせてきた。
 歌と弾幕が交差する。
 一方で同じ船に乗っていたエルが拳銃にカスタムパーツを装着し、マグナム弾を装填した。
「出費は覚悟の上……行きます!」
 ライフルで射撃を集中させてくる兵士めがけ、エルはマグナム弾を打ちまくった。
 そうした撃ち合いをしすぎたからだろうか、兵士たちは無意識のうちに数人で固まり、その間を駆け抜けるようにしてシズカがエルたちの船へと飛び乗った。
「距離をあけて……撃ち合います!」
 シズカはリングとサーベルを接触させて魔力伝達を行なうと、刀身を銃口に見立てて兵士たちへと向けた。
「切り裂け、ウインド・ボルト! 爆ぜよ、デトネイト・ボルト!」
 二連続で発射された『エレメンタル・ボルト』が兵士たちへと直撃。
 射撃に集中していた兵士たちの手から銃が跳ね飛び、兵士は思いきり転倒した。
 起き上がろうとしたところにヴォルペが素早き割り込み、兵士の腕を踏みつけた。
「こっちにはレディが沢山いるんでね。ちょっとは身体、張らせてもらうよ」
「……!」
 兵士たちの集中攻撃を受けながらも、ヴォルペはギラリと笑って倒れた兵士を殴りつけた。
「おーっと、いまこそ乱入のチャンスなのじゃー!」
 ツボの上でバランスをとるように立ち乗りしたデイジーがふわんと船へ乗り込むと、飛び降りる動きと共に『誘う青き月』の魔術を行使した。
 着地と同時にほとばしる月の幻が、兵士をたちまち無防備にさせる。
 返す刀ならぬ返す壺で『スケフィントンの娘』の魔術を完成させると、流れるように『悠久のアナセマ』の魔術へと発展させた。
 総合純威力2000オーバーの大技である。
 ここまでの攻撃を食らって立っているのは難しい。
「折角じゃ、最後は譲ってやるのじゃ」
 えっへんと胸をはってみせるデイジーに、Lumiliaは小さく礼を言って降り立った。
 翼を畳み、倒れた兵士へと指を突きつける。
 その時Lumiliaのしていた桜色の髪飾りが輝き、同じく桜色のエストックを生み出した。
 切っ先が兵士の喉へと向き、刺さる寸前で止まる。
「投降するのです。我々にとって生かす意味がないのと同じくらいに、殺す意味もありません。『積荷』を我々に渡すなら、このまま船で逃げ帰ることができるでしょう。仲間の治療もできるはずです。さもなくば、このまま海上で全員朽ち果てるしかありません」
 ルーン・ロベリアの魔術が剣に伝わり、その光が切っ先で止まる。
 兵士は目を瞑り、銃を落として手を上げた。

●回収
 輸送船はLumiliaとの約束通りに積荷を引き渡し、兵士や非戦闘員たちだけが撤退していった。
 といってもコンテナ一つ分を運べるほどの船をデイジーたちは持ってきていなかったので、輸送船に積み込まれた動力つきゴムボートで彼らを逃がすことになった。実質的な船のあけわたしである。
「ご苦労。諸君らの活躍、観察させてもらった」
 それから殆ど時間をおくことなく『蒐囚壁財団』の船が到着。
 マッチ棒のような男、ウォーズ博士が枯れ木のような腕を振った。
 こうして遠目に見ていると、マッチ棒というより棒人間にも見えてくる。
「まさかと思うが、『無限あんパン』に手はつけていまいな」
「そのはずです」
 振り返るLumilia。
 夕子は手をぱたぱたと振った。
「ま、食べなきゃ害がないんだから平和平和」
「やっぱりだめなのかのう。一個ぐらい食べられぬかのう」
「……試してみるかね?」
 ウォーズ博士がくるりと振り返った。顔がどこにあるのかわからないが、なんとなく振り返ったように見えた。
「無限あんパンを一つだけ摂食した対象に長期間無限あんパンを与えなかった場合どのような症状が出るのか実験したかった」
「なんじゃと?」
「食べるのやめるっす。絶対ヤバいことになるっす。ボク知ってるっす!」
「そうです! た、食べちゃ駄目ですよ!?」
 レッドとシズカが慌てた様子でデイジーの両腕を引っ張った。
「まあでも気持ちは分かります。あんパン食べたい……」
 うっとりとした顔で虚空を見上げるエル。
 もうあんパンなら何でもいいみたいな気持ちになっているらしい。
「とはいえあれを食べるのは嫌だよね。人があんパンになる時点で意味が分からないからなあ……あ、そういえば」
「うん、こんなこともあろうかと! 買って置いたよ!」
 アウローラちゃんえらい! と言いながらビニール袋を掲げるアウローラ。
「あんパンパーティーじゃー!」
 イエーイと言いながら飛び上がるデイジーたち。
 君らがそれでいいなら……という様子でウォーズ博士はコンテナを自分たちの船に積み込み、そのまま練達へと引き返していった。
 その後どのように扱われたかは……あずかり知らぬところである。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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