シナリオ詳細
<冥刻のエクリプス>小さき戦士たちを救え!
オープニング
●疾走!
『蛍火』ソルト・ラブクラフト(p3n000022)が息を荒げながら、戦いが始まっている市街地をイレギュラーズたちと疾走する。
目的地は、貧しいものや孤児が多くいる町はずれの貧民街だ。
今回、探偵サントノーレとイレギュラーズの調査により、様々な事が分かった。
一連の事件は大いなる魔種ベアトリーチェによる仕業であり、ベアトリーチェに人間的な支配欲があるかは不明ではあるが、無数の死者や雑霊を従えた彼女の勢力が、フォン・ルーベルグを制圧せんと動き出したのは明白だった。
ローレットの活躍で、適性勢力の扇動の効果は限定的なものに終わった。
月光事件の被害者たちは、悲しみを希望に変え、魔種に立ち向かう事を決意してはくれたが、やはり未だ彼らの状態は万全ではないのが現実だった。
天義中枢、つまり内部的な問題を抱えている事に、民衆も薄々は感づいている。
魔種を利用してでも、我欲を叶えようとする輩は存在していた。
現在、フォン・ルーベルグ内部には、大教会に籠城するアストリア枢機卿の戦力がネメシス王宮を牽制する動きを見せているし、城壁外からは王宮執政官エルベルト側と思われる戦力が彼女を救援する構えを見せている。
全く持って不愉快かつ、煩わしい敵である。
とはいえ、イレギュラーズの強烈過ぎる活躍により、アストリアの私兵『天義聖銃士(セイクリッド・マスケティア)』は半壊状態となっていて、彼女が拠点である『サン・サヴァラン大聖堂』にて籠城を余儀なくされているのは、そういう事だ。
ローレット側としては、天義という大国が魔種の手に落ち、『滅びのアーク』が激増する事態を何としても防ぐ必要がある。
この度の作戦は、天義聖騎士団と連携し、この事態を打破せよ! というのが、ローレットのからの指令だった。
立ちはだかる敵を武器で払い、ソルトはローレットのメンバーと走り続けながら、先ほどの記憶を思い返していた。
急遽街中に現れた下級のアンデッドや狂人は、現在民衆を襲い始めており、被害が既に出てしまっている。
イレギュラーズたちの参戦で、戦線は持ちなおしてはいるが、すべての範囲まで気遣えるほどの余裕は、まだない。
ソルトもまた市街地にて、一戦士として戦っていたが、そこに幼い子供が助けを求めやって来たのが、今回の疾走の発端だった。
――じーちゃんが、怪我して逃げ遅れてるんだ!
声変わりもしていない、まだ7歳くらいの子供の悲痛な声を聞いて、その場に居合わせたイレギュラーズは顔を見合わせ、力強く頷いた。
聞けば、街に現れたアンデッドたちから逃げる途中、彼らを守り育ててくれた孤児院老人が、足に大けがをおってしまい、動けなくなってしまったと言う。
老人は逃げるように子供たちへと言ったが、彼らは幼い少年に伝言を託し、持ち慣れない武器を取り、何とか老人を守ろうと戦っていると言うのだ。
このままでは、老人を含めた子供たちまでもが命を落としかねない。
子供を知り合いの傭兵に預け、イレギュラーズたちは目的地へと急いだ。
どうか、間に合ってほしいと。
●
「たぁあああ!」
既に命亡き死者たちが、まるで生者を求めるようにその血に塗れた手を伸ばす中、武器を握った、まだ幼き子供たちは、懸命にそれらと戦っていた。
不慣れな武器を振り回しながら、円陣を組むような体勢で、何とか敵の攻撃を凌いでいる。
幸運にも、敵は弱いアンデッドだった事、市街地中心に勢力が集中しており数が少なかった事で、何とか彼らは誰一人として欠けることなく立っていた。
しかし、子供は子供。
体力はどんどん失われていき、身体の小さな子供たちの動きは徐々に鈍くなっていた。
それでも、一番年長である少年が居るからこそ、彼らはまだ諦めていないのだが、このまま行けば、彼らに待っているのは死だけなのは明白だろう。
戦うことの出来ない少女は、傷ついた老人を抱き寄せながら、神へと祈った。
「お願いします、神様!」
年長者の少年の持っていた剣が、アンデッドの手で弾かれ、少年が尻もちをつくのを視界の端に捉えた少女は、そう大きく叫んだ。
- <冥刻のエクリプス>小さき戦士たちを救え!完了
- GM名ましゅまろさん
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年07月10日 23時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●8人の光
戦いの開始から半刻ばかり。
年端も行かない少年たちの懸命な抵抗もむなしく、現れたアンデッドたちによってじわじわと追い詰められ、既に皆が疲れ果てていた。
「あっ!」
年嵩の少年の剣が弾き飛ばされ、アンデッドの鋭い爪が振りかぶられると同時、少女の悲鳴が木霊する。
誰もが少年の死を予感した。
――だが、少年にその一撃は届かなかった。
「よう頑張ったね」
和装を軽やかに翻し、『流転の閃華』ユイ・シズキ(p3p006278)がその爪を刀で受け止めていたからだ。
そして怯んだアンデットを、刀で流れるようにはじき返すと少年たちを庇うように立ちふさがった。
「さすがに俺も、子供への虐殺には意を唱える、な!」
それとほぼ同時、『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)のストライクチェーンの一撃が、アンデッドの身体ごと木っ端みじんに吹き飛ばす。
そこへ、更に『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)の言葉と共に銃弾の雨が降り注ぎ、アンデッドを駆逐していく。
「SET,Fire.Clear。敵戦力の破壊を確認。敵残存戦力の接近に対しての対応へ移る」
蜂の巣になっていく横から、別のアンデットが死角より現れると、『孤兎』コゼット(p3p002755) が華麗な飛び蹴りを決め、アンデットを吹き飛ばした。
「神様じゃないけど、たすけに来たよ。あとはまかせて」
明らかに援軍たちが優勢である事は素人目にもわかる光景だが、知性の無いアンデッドは諦める事を知らずにわらわらと少年たちへと寄ってくる。
実力差はあるものの、一定距離に近づいていた、他のアンデッドを犠牲にしながら滑り込んだその中の一体が、老人を抱きかかえた神へと助けを願った少女へと魔の手を伸ばした。
しかし、その動きは『天義の希望』黒騎士(p3p007260)にとって阻まれる。
「残念だったな、此処に神など居ない」
黒衣の男は少女の神を否定した言葉と共に、黒鋼の大剣でアンデッドの頭を一撃で切り落とした男は、しかしこうも続けた。
「だが――だがしかしだ」
全身黒ずくめ。
頭部は髑髏を模した畏怖すら覚える兜。
されど彼は騎士を名乗る。
神に非ず、光に非ず。
されど彼は今此の時確かに『救い』となるべくやって来た。
「特異運命座標。イレギュラーズ。滅びに抗う勇者達。そう呼ばれる者なら、此処に来た。黒騎士<ブラックナイト>。そう呼ぶが良い」
同時、『応竜』華懿戸 竜祢(p3p006197)が疾走し、前方から向かってくるアンデッドたちを鋭い剣戟で次々と屠って行く。
怯える少年たちを庇うように立ちふさがったのは、黒・白(p3p005407)。
「いいねえ。格好良いよ、最高だよ。だからここで死なせて『同胞』になんてさせない。そのためにボク【達】はここに来たんだ。だから後は任せな。兄弟」
外見は年端もいかぬ子供と言っても良い風貌だが、その内面はまるで複数の人物が内包されているかのような不思議な雰囲気だ。
少年たちは、白の中にどこか自身に近しい魂を感じたのだろうか。
静かに頷いて見せると、白は満足そうに僅かに笑った。
差し迫ったアンデッドをすべて倒した竜祢は、尻もちをついた少年へと手を差し伸べ言う。
「くくっ、幼くして勇敢を示すか! その胸に宿る眩い程の輝き、実に素晴らしい! 誰かの命を守る為に自分の命を張るなどとそうそう出来る事ではない。少年達よ誇るがいい、お前達は今この瞬間、英雄となった!」
少し驚きながらも、震える手で少年は竜祢の手を取る。
「その勇姿、他の誰が忘れようと私は覚え続けようじゃないか! だがまだまだ若い、お前達には未来がある。ここで絶えていい命ではない」
その言葉に同意するよう、『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が頷く。
「よく持ちこたえた。後はこっちに任せておけ」
『辺境の村で牧師をしていた?』ナイジェル=シン(p3p003705) が少女と老人の近くへと寄りながら、黒き教本をゆっくりと閉じる。
「ならば、後衛にて癒し手としての役割を引き受けるとしよう」
懐から呪符を取り出すと、一度少女を見た後、敵へと向き直った。
「我らが教義に異端、異教などという概念は無く、全ての者は等しく平等に救われるべきもの。故に救いを求める者あらば、私は教義に従いそれを与えるのみだ」
呟くような言葉が終わる頃、周囲に集まっていた下級のアンデッドはすべて物言わぬ躯と化していた。
しかし、ほぼ時を同じくして、奥からこれまでとは違ったアンデッドたちが姿を見せる。
外見は変わらぬ朽ちたアンデッドだ。
しかし、纏う殺気が違う。
その気は紛れもなく、戦い慣れた者のものだ。
「おっと、少し語りすぎてしまったな……この場は私達に任せてもらおう!」
竜祢の言葉と共に、激戦の火蓋が切られた。
●14体のアンデッド
「……そちらには行かせるわけにはいかないな!」
素早い動きで爪を振るうアンデッドを、シールドバッシュで弾き飛ばしながら、マカライトは子供たちへと近づけさせないように場所を陣取った。
範囲攻撃を使える仲間のために、器用にアンデッドたちを追いやっていくよ様子は鮮やかだった。
しかし、先ほどのアンデッドよりは知恵が回るのか、子供たちを庇おうとする動きは理解しているようだ。
その隙を狙い、毒の牙と爪を突き立てようと迫るアンデッドたちを挑発するように、コゼットが跳挑発止を使用しその激しい動きで敵を引き付ける。
「だいじょうぶ、ぜったいそっちには行かせないから、安心して」
身軽な動きで、懸命にかわしながらコゼットは敵の動きを見極めていく。
たとえ当たったとしても、多少の毒ならば耐える自信はあった。
「たぁっ!」
コゼットが軽やかに回し蹴りをアンデッドに食らわせると、その勇ましい様子に、子供たちの心は僅かに浮上したようだ。
白は、そんな子供たちを庇いつつも子供たちを立たせ、老人と共に守りやすい場所へと誘導する。
避難させたかったが、下手に移動させるよりも近くに置いた方が守りやすいと踏み、ナイジェルの近くに子供たちを移動させた。
「ローレットには良いオバケもいるんですよ?」
まだ怯えている子供たちを和ませるために白がそう言うと、子供たちはやや不思議そうな表情で目を瞬かせた。
だが、白の気持ちは伝わったのだろう、顔を見合わせた後頷いて見せた。
「信じて見ていて、兄弟」
そう言い残し、白は前線へと戻っていく。
白を見送りつつ、ナイジェルは癒し手として味方の動きに注意を払いながら、視界の端で、傍へと移動してきた老人の怪我を見る。
見た感じではおそらく生死に影響はないと踏んだものの、このまま放置はしては置けない。
(余力が残っていれば、老人の足の怪我も治療しておくとしよう)
そう決めながら、ナイジェルは前線の傷を負った仲間へと癒しの光を放った。
「指一本、触れさせんよ」
ユイは、ナイジェルと子供たちを守れる位置に陣取り、子供たちへの接近を決して許しはしなかった。
自分達を育ててくれた老人の為に、恐怖を抑え、勇気を振り絞ってアンデットに立ち向かう。
「……ええなぁ、その心意気。まだ小さいのに立派やわぁ」
その幼いながらも粋な心意気に、ユイは人として尊敬の念を抱いた。
「義侠の徒としては見捨てるわけにはいかんよねぇ……せやから子供も老人もこの命この剣にかけて必ず助けんとね」
たとえ、この身にどのような攻撃来ようとも、これ以上は傷一つつけさせるつもりはない。
迫りくるアンデッドの攻撃に、体勢を崩しながらもユイはアンデッドから視線を逸らさない。
子供たちの不安な表情がちらりと見えると、ユイは笑った。
「ウチらは必ずみんな助ける約束するから……みんな応援してあげてな」
その言葉に、ただ固まって怯えていただけの子供たちも、拳を握りしめる。
大きな声の子供たちからの応援が上がると、ユイは抜刀の構えで敵を迎え撃つ。
「と言う訳や、弱き者を狙うこの外道共が……相手が屍鬼ならこっちも遠慮なく全力で切捨てさせてもらうさかい……往生しいや」
気合の一閃が、一体のアンデッドの身体を真っ二つに引き裂いたのは、僅か一瞬の事だった。
前線で一番多くのアンデッドを引き寄せているのは、黒騎士だ。
戦いが始まってすぐに、3体並んだアンデッドたちを、暴風を纏った乱撃により薙ぎ払った際に、アンデッドたちの本能が反応した結果だったが、ある意味ではその本能は正しいと言えるし、悪手とも言えた。
しかし、黒騎士にとっては都合の良い展開だった。
(いずれにしろ俺は長く戦うには向かん。力を使い切れればそれで充分だ)
子供達の声援は、黒騎士にも届いている。
(俺は闇の騎士。光など似合わない男だが、何やら『天義の希望』のひとりにされたらしい)
正直な所、柄ではないと思う。
「だが、それならそれで構わん。俺は戦い――護るべきものを護るだけだ」
それが、今の黒騎士の意志だ。
アンデッドの濁った目が、こちらを睨みつけているように見えて、マカライトは僅かに眉を寄せた。
まるでその目が、こちら側ではないのかと言っているように見えたからだ。
しかし、それは失敬な話である。
邪神憑きと呼ばれた者と、知性無きアンデッド、同じにされるのはさすがに不愉快な話だった。
「万人がそうじゃないとはいえ、一部の輩のせいで天義にはあまりいい印象はなかったが……体張って人を守ろうとしてる子供を見過ごす理由はない。そういう事だ」
善か悪かと言われれば善とは言えない生き方だが、それくらいの善の心は持ち得ている。
ドリルの強烈な一撃を食らわせながら、マカライトは不敵に笑った。
●決着の時
「くくっ、今更痛覚があった所で怯むような存在でもないだろうに……」
竜祢は、一体ずつ確実に敵を屠る為、愛用の武器、翠牙・千遍万禍を振るい大立ち回りを演じていた。
見るからに重量級のそれを竜祢は苦も無く操っている。
痛みなど感じないアンデッドだったが、痛覚はなくとも身体が捥げればその場に立っている事は難しい。
既にズタズタになったアンデッドへと一撃を食らわせ、脳天を勝ち割った竜祢は、周囲の状況を見て口角を上げた。
敵との実力差はほぼ無い上、数はあちらが多く、またこちらには戦えない者が居るのだから、負ける気は無いがやや苦しい戦いではあった。
竜祢もまた深傷を負い、ナイジェルの癒しで立ってはいるものの、やはり庇わなければいけない者が居るのは大きかった。
守りを厚くすれば攻撃が薄くなるからだ。
しかし、その表情は戦局の割に嬉々としていた。
そう、確かに一体ずつ的確に倒す事、それが重要だ。
しかし、それに加えて効率よく敵を殲滅する方法も取る事も求められる。
そうやって、作戦通り敵は一定の所に纏まっている。
いや、正確には、ヴィクターによって上手く一か所へと纏められていた。
精密な技術で子供たちから引き離された上、範囲攻撃を持つ者たちの射影距離へと追い詰められた事に、アンデッドたちは気づいていない。
――敵を一撃で屠る機会、それを竜祢たちは待っていた。
味方の傷を癒しながらその様子を見ていたナイジェルは、戦況が変わる事を予想し、不敵に笑った。
「なるほど、ここはさすがと言わざるを得ないか」
その言葉に不思議そうにする老人と子供。
しかし、ナイジェルはその件に関してはそれ以上は告げず、老人へと近づきその足へと手を触れた。
「すでに決着はついたと言って良い。余力がある、傷を癒そう」
癒しの光が老人の怪我を癒し、見る見るうちに傷は塞がった。
そして、その後すぐに辺りを揺るがすほどの大きな音が響き渡る。
見れば、ヴィクターが放ったN-A48型手榴弾が炸裂するとほぼ同時に、白のロベリアの花の霧が対象を包み込んでいた。
初手でも使用されては居たが、ここ一番での悪意の霧はアンデッドたちの闘志を奪っていく。
それでもなお、立っていたアンデッドたちだったが、両サイドから黒騎士と竜祢が既に構えを取っていた。
「逃がさんよ」
「これで終局だ」
巨大な獲物を持った二人の強烈な一撃が、アンデッドたちの胴体を薙ぎ払うと、その身体は粉々になって空へと消えていく。
気づけば、14体居たアンデッドは残すところ、三体となっていた。
それでも、負けという事実に気づくことの出来ないアンデッドたちは、子供たちへと向かって行く。
だが、子供のたちへの道には、コゼットとマカライトが待ち構えている。
子供を守ることを優先させた二人だったが、二人は守りながら戦いつつも、範囲攻撃の射程へ追い詰める様、的確に動いていた。
「出来るだけ纏まる位置に誘導出来れば重畳だと思ったが、上手く行ったな」
「うん、残りは三体。こっからは、あたしたちの番だね」
二人の余力はまだ十分に残っている。
コゼットは一度毒に倒れたが、ナイジェルの力で現在はしっかりと大地を踏んでいる。
全力で構えた二人は、己の最大の一撃を蹴りの一撃とドリルへと込める。
アンデッドたちが二人へと辿り着いた一瞬、それぞれの一撃が頭部を砕き、アンデッドたちの身体は無残にも大地へと崩れ落ちた。
残りは、一体。
既にボロボロになっている最後のアンデッドは、滅びる前にきっとこう思ったに違いない。
一矢報い居る事が出来たのだと。
しかし、その牙が子供たちへと届く前に、アンデッドへと伸びたナイジェルの手から放たれた聖なる光が、その愚かな思考と共に、その命を滅ぼした。
こうして、14体のアンデッドはすべて駆逐された。
●戦い終わって
「敵の気配は近くにはない様だ」
アンデッドが他にも徘徊している可能性があるとして、周囲を探っていた竜祢がそう告げると、少年たちはあからさまにほっとした様子で息を吐いた。
「ほんに、よう頑張ったよ」
やんわりとユイが微笑むと、一番小柄な少年が声をあげて泣き出した。
生死がかかっていたからこそ、なんとか今まで切れなかった張りつめていた糸が切れたのだろう。
「おじいさん守って、戦って、カッコよかったよ。がんばって戦ってくれたから、あたしたちも間に合ったよ」
「勇気ある行動だった」
コゼットとヴィクターが元気づけるようにそっと肩を叩くと、少年たちは嬉しそうにうんうんと頷き、笑顔を見せた。
そんな子供たちを見つめる老人の表情は優しく、どこか誇らしげだ。
「あらかたの怪我は治癒した。……ご老体、応急処置は施したが、念の為に、避難後にしかるべき場所で治療を受けるべきだ」
「感謝の言葉もない」
「感謝の言葉は不要だ。私は教義に従ったのみ……救いを与える事こそが、私の目的だからね。……さて、この後はどうする。私は街中をもう少し見て回ろうと思っている」
仲間の怪我を癒したナイジェルが口を開くと、面々は顔を見合わせ、それぞれの見解を述べた。
「……無事を確認できたので、次の戦場に行くのです」
まだ余力を残している白がそう返すと、どうやらここから二手に分かれる様だ。
「あたしは、安全な避難所まで、この子たちを護衛していくよ。おじいさんも心配だしね」
コゼットは、子供と老人の護衛を引き受けるようだ。
子供たちも心強そうにしている。
「私も同行しよう。子供は歩けるようだが、そちらはまだ下手に身体を動かさない方が良いだろう」
ヴィクターがそう言うと、老人はゆっくりとお辞儀をした。
「有難い。世話になります」
「硝煙臭いが其処は我慢して欲しい」
その言葉に、少年たちがくんくんと鼻をならしながら匂いを嗅いだのを見て、老人が慌てるが、ヴィクターは特に気にしていない様だ。
「避難誘導にファミリアーをつけよう。出来る限り危険を避けて通れる筈だ」
マカライトの手から一匹の黒猫が現れて、その場でくるりと軽快に一回転をした。
「なに、この争いも無事に終わる。……大丈夫、安心して待ってな」
子供たちの不安を拭うため、マカライトが堂々とした態度で断言した。
今この戦場には、多くのイレギュラーズが戦っている。
どこも激戦だろう。
だが、たとえどんな事しても、勝利を手に入れようとしている筈だ。
それが、イレギュラーズなのだから。
子供も、その言葉を信じた様子で、戦いが終わって初めて、心からの笑顔を浮かべた。
コゼットとヴィクターに護衛されながら、老人と子供が後方へと避難して行くのを見送った後。
残りの面々は再び戦場へと帰っていった。
――その手に勝利を掴み取る為に。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした!
今回は、戦闘依頼という事で戦闘描写を多めにする形を取りました。
楽しんで頂けたら幸いです。
また、次回もぜひ皆様の戦いを拝見できればと思っておりますのでよろしくお願いします。
GMコメント
ましゅまろさんです!
今回の私の決戦は、純粋な戦闘です。
場所は市街地の外れ。
貧民街になります。
怪我を負い逃げられなくなった老人を守るため、子供たちが武器を取って戦っています。
幸運にも敵は、皆さんがその場所にたどり着くまでは弱いアンデットしかいないため、何とか凌いでいますが、最後の文章の通り、ついに少年も力尽きて武器を弾き飛ばされてしまいます。
皆さんは、ここにカッコよく登場し、敵を撃破してください。
少年に伸びたアンデッドの魔の手を阻むことは、まだ間に合います。
皆さんが合流した後、追撃のアンデッドたちが現れますが、子供たちが戦っていたアンデッドよりもやや手練れです。
数は14体おり、14体で皆さん8人とほぼ互角と見て良い位の能力です。
(最初に襲っていた弱いアンデッドたちは、モブ敵のため、さくっとやられますので、この14体の数に入っていません)
アンデッドの攻撃は、毒のある噛みつきと、鋭利な爪での格闘です。
回復手段はありませんが、痛みで怯んだりはしませんので、明確に叩きのめす必要があります。
老人の怪我は、歩くことはできないもののすぐに死に至るような怪我ではありません。
充分、敵を片付けた後でも助かりますので、そのあたりはご安心ください。
また、今回は戦闘中心の描写中心となります。
ソルトも地味に戦っていますが、何も話しかけられなければ、特に会話はありません。
(`・ω・´)かっこいいヒーロープレイングをお待ちしています!
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