シナリオ詳細
闇討ちされる闘技場参加者達
オープニング
●
鉄帝、ゼシュテル鉄帝国。
そのほとんどが鉄騎種で構成されたこの地においては、武力が尊ばれる。
何をするにおいても、力さえあれば全てを納得させられる。例え、国家元首である皇帝位でさえも。
力ある者が正義。単純なれど、絶対的な力を持つもの達が君臨していることで、意外にも治世を保っているという国家性を持つ。
そんな国において、最大の娯楽とされている大闘技場ラド・バウ。
鉄帝国民を中心に、混沌各地から参加者、そして、観客が訪れる。
複数のランクに分けられたこの闘技場で、上位へとランクアップすることはそれだけで名誉、名声を手にすることができる。
だからこそ、自身の全力を尽くして参加者達はそこへと上り詰めようとする。……どんな手を使ってでも。
ある時、闘技場の近辺にて、こんな事件が起こる。
「また、闇討ちかよ……」
「これで6人目らしいぜ……」
闘技場参加者達ばかりを狙う闇討ち。
今回で、7件。
1人だけ難を逃れはしたが、6人が被害に遭って戦闘不能へと陥り、闘技場への参加を棄権に追い込まれた。
だが、その助かった1人、ハルバード……槍斧使いのマッティがこの状況について語った。
「相手は6人組……その内の1人は見たことのある顔だった」
男は、闘技場に参加する拳闘士。
その名は……。
●
幻想、ローレット。
鉄帝のその事件は遠く離れたこの地にまで、依頼という形となって届くこととなる。
「……由々しき事態ですね」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ (p3n000045)は顔を顰める。
闘技場参加者を闇討ちする者達。
その討伐依頼がローレットへと張り出されており、アクアベルがその解決に意欲を見せるイレギュラーズ達へと説明していた。
次に狙われる者が分からぬ状況もあり、闘技場サイドも警戒を強めはするも、それ以上の対応ができないとほとほと困り果てているらしい。
「ですが、狙われる人はある程度目星がつく状況には至っています」
襲われたのは鉄騎種の男性が多めだが、それは全参加者の絶対数が多いからであって参考にはならない。
続き、戦闘スタイルは槍使い、斧使い、魔法戦士、魔術師……バラバラでこれまた外れ。
ただ、一定ランク以上の者ばかりという点に関しては、共通項とはなりうる。
さらに、襲われた者の対戦相手。
未遂の1人を入れれば、4人の相手に共通の該当者がいた。
「拳闘士クルッピ……一時はその力量に一目置かれていた人物よ」
なお、スレンダーな若者で、男性である。
その名前に、笑いを殺すイレギュラーズの姿もちらほら。
「その反応に、本人も相当コンプレックスを抱いていたことも確認されています」
とはいえ、彼が闇討ちの犯人であるとの決め手には欠けていたのだが、未遂で逃れた闘技場参加者マッティがこのクルッピの顔を見たらしい。
「そのマッティさんは今度、クルッピさんと対戦予定があるそうです」
マッティはまだ、身内以外にはクルッピに襲撃されたことは誰にも漏らしてはいない。おそらく犯人も見られたことに気づいてないだろうということだ。
それは、マッティが再び狙われていたことを懸念していたからということ。そして、彼自身もこの度重なる闇討ちを止めたいという気持ちがあってこそ、ローレットへと直に相談を持ち掛けたようだ。
アクアベルは自らの予知能力も合わせ、鉄帝到着の日の夜、闇討ちが行われることを示唆する。
「鉄帝到着は夕方。そのままマッティさんと落ち合い、街を歩いて敵を誘き寄せるとよいかと思います」
彼と街を歩いていれば、敵はどこかで襲撃を仕掛けてくるはずだ。
アクアベルには、鉄帝の裏通りが視えたとのこと。襲撃時は人目をはばからずに襲ってくる為、周囲の人々の避難も頭に入れておきたい。
また、敵も素顔が割れることを警戒し、覆面をして襲ってくる。本性を暴いて返り討ちにするといいだろう。
「マッティさんは対決を控えています。できるだけ怪我しないよう守ってあげてくださいね」
依頼人自ら囮役を買って出てくれているのだから、せめてしっかりと守ってあげたい。
また、相手はクルッピである可能性が極めて高いが、闇討ちする相手が大怪我するのは自業自得と言える。こちらは完膚なきまでに叩きのめすといいだろう。
「以上ですね。どうか、この卑劣な闇討ち事件に終始符を」
よろしくお願いしますと、アクアベルは依頼を受けたイレギュラーズ達へと丁寧に頭を下げたのだった。
- 闇討ちされる闘技場参加者達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年06月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
夕方、鉄帝へとやってきたイレギュラーズ達。
「今回は闘技場の花形である剣闘士とお忍びでお散歩……じゃなくて護衛依頼ですねっ!」
愛嬌のある黒髪少女『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)が元気に叫ぶ。
「なんと狙ってくる相手も剣闘士っ! なんてこったいっ!」
それぞれからサインをもらわなきゃと、ヨハナは目を輝かせる。
「俺、結構ここの人達好きですよ。強さに真っすぐで」
黒髪短髪ですらりと引き締まった体を持つ青年、『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)は一部曲がっている人がいるとはいえ、闘士になる人は違うと思っていたと、やや残念そうに語る。
「どれだけ技を磨こうとも、一線を踏み外せばその技が無為に終わる……」
ミステリアスな印象を抱かせる和装の女性、『月下美人』久住・舞花(p3p005056)もまた、名誉、名声を駆けた闘技場というのはそういうものだと認識していたのだが……。
「まあ……、こういう手合いは何処にでも居るものなのね」
「腕はあっても筋を通せぬ、呼び名なんぞに縛られるとは程度が知れる」
黒い和服に身を包んだ青年『墨染鴉』黒星 一晃(p3p004679)は、今回の犯人に呆れを見せる。
「勝てばOK、ということで闇討ち。まー、わからんではないわ」
神秘を受け継ぐ家系出身、その瞳に虹色の魔眼を備える『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192)は一定の理解を示すが、彼女もまた今回の相手に失笑すらしていて。
雇った仕事人は確かに優秀なのだろう、だがしかし。
「対抗される状況まで考えたのか怪しいあたり、お粗末よね」
いずれにせよ、襲ってきた相手は、強者の器ではなさそうだ。
「力が主義とはいえ、闇討ちで獲る栄光が良いとは私は思わない」
全身真白な異世界のエルフ、『鳳凰に付き添いし白十字』イージア・フローウェン(p3p006080)が犯人の考えを全否定する。
「つまらないマザーファッカーだな」
怒りを露わにする鍛え上げた肉体を持つボクサー、『拳闘者』郷田 貴道(p3p000401)も相手の所業を蔑みすらしていて。
マザーファッカーは別の言葉で言うなら、くそったれ野郎といったところだ。
「オーディエンスの居ない場所でやり合っても、盛り上がりに欠けるだろ」
元居た世界で、貴道はその場の観客だけでなく、世界中にテレビ放映されるボクシングの世界で生きてきた。
それを楽しんできた彼からすれば、今回の犯人のやり方はゴミにも等しい行為に映っていた。
「つまり、正々堂々とタコ殴りにしていいという訳だな?」
白髪の仙狸の女性、『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は現地へと向かいつつ、端的に今回やることを語る。
頷き合うメンバー達は丁度、依頼人の姿を発見して。
「……マッティです。今日はよろしくお願いします」
槍斧を背に担ぐ鉄騎種の青年は、丁寧にイレギュラーズ達へと頭を下げたのだった。
●
さて、イレギュラーズ達は依頼人マッティを囮にする形で裏路地を歩き、敵を釣り出す事になる。
「裏通りに引き込む方が、敵味方お互いの目的に適って良いでしょう」
大通りでの戦闘は民間人を巻き込む公算が高く、敵も奇襲場所にこちらを選ぶ可能性が高いと舞花が踏んだからだ。
マッティを先導する形で、汰磨羈が頭にギフトの黒猫を乗せ、死角を見張らせる。
「で、相手の名前は何だったか。クルクルパー? ああ、クルッピか」
「うーん、どうだったかな。どうでもいい名前とかあまり覚えないから」
敢えて少し大きめの声で汰磨羈が会話するのは、威降だ。
「でも、研鑽を積むより楽な方へ逃げた人には、お似合いだと思うよ」
2人は適度に警戒しつつ、裏通りを歩く。
美咲もまた距離を置き、ぶらぶらと通りを眺めながら散策する体で随行していた。
(マッティの近辺は、防御に長けた方が固めてくれる手筈だけど……)
そのマッティの周囲を、イージアが固めている。
敵は手練れの暗殺者を雇っている事もあり、不意打ちを警戒しながらイージアは共に行動していた。
「…………」
20mほど後方からは、一晃が無言で後を追う。
貴道も後方にいるが、彼の巨躯は目立つ為、あまり近づかぬように歩いていたようだ。
そして、ヨハナもすぐ駆け付けられる距離でマッティを尾行し、付かず離れずの位置を保って暗殺者の接近を警戒する。
「それと、折角鉄帝のストリートに来たんですから、見物もしたいんですよねっ!」
お土産は後になるだろうが、ゼシュテルパンやジャンクフードを買いたいと彼女は考えていたようだ。
ただ、交差する通りから、覆面を被った集団が一斉にマッティを狙っていくのを、ヨハナは見逃さず。
「きゃ――――っ! 皆さん逃げてくださいなーっ!」
彼女の声に、人通りの少ない裏路地で一斉に鉄帝の住民達が振り返る。
「覆面パンツ狩りですっっ! この方達っ、辻パンツ狩りですっ!」
「へ、変態だー!」
さらに、威降がスピーカーボムを使って追い打ちをかけ、闇討ち集団はいとも簡単に変態集団へと早変わり。
「ノンケのパンツだろうが、構わないで剥いちまうヤベー奴らですよっ!」
元々、覆面姿で怪しい連中だが、ヨハナの何の脈絡もなく出てきたその言葉は、妙な説得力を生む。
「ちっ……!」
舌打ちする覆面はヨハナを止めようとするが、彼女は止まらない。
「皆さん逃げてっ! 女性の方は特に逃げてっ! おうちに籠ってしっかり戸締りしてーっ!」
何やら怪しげなシチュエーションとあって、住民達も距離をとって逃げ出していく。
『パンツが取引材料にされるのは混沌じゃよくある事なので、みんな逃げるんじゃないかな、たぶん』
……とは、後のヨハナの談である。
「ちょっと危ないから離れててね」
その周囲への呼びかけの間、美咲も声をかけるのだが、路地裏の騒動とあって野次馬も集まってきてしまう。
「言うだけ言っておけば、後は自己責任ってことでいいよね」
さすがに、仲間達の視線もあったので、美咲は軽い態度で虹色の虹彩を煌めかせて魔眼を働かせ、野次馬数人に『余所へ行く用事を思い出してもらっていた』。
「それでは――、予定通りに」
「分かりました。ご武運を」
舞花や威降の依頼を受け、マッティは人々の避難に当たりつつ、防御態勢をとる。
そのそばにいたイージアが護衛として身構え、周囲への被害を軽減する為に保護結界を発動した。
「野郎……!」
覆面の一人はファイティングポーズをとり、他は怪しい色に輝くナイフを取り出す。
多少煽られても、敵は目的を見失いはせず、マッティを追いかけようとする。
「私達を……ローレットを無視しますか?」
舞花は敵陣に踏み込みつつ、名乗り口上を上げる。
無視するなら構いはしないが、がら空きの背中を晒したならば……と、舞花は相手を牽制する。
「彼に手を出したくば、私達を抜く事ですね」
舞花が気を引く間に、美咲が敵の背後へと回り込む。
本業が暗殺者だという連中だ。まっすぐにかかってこないことは織り込み済み、現状、先手を打っているのはこちらだ。美咲はこのまま仲間達と迎撃に当たる。
「ヘイ、クルッピってのは、どいつだい?」
そして、距離を詰めてきた貴道が闇討ちする者達へと呼びかけ、これ見よがしに笑い出す。
「……く、くく、クルッピって、おいおい恥ずかしくないのかい?」
「ぐぬぬ……!」
格闘スタイルの覆面が声を漏らす。
そいつがクルッピだと疑わぬ貴道は、さらにそいつを煽る。
「よくその歳まで生きてこれたな、ミーなら自殺ものだぜ?!」
「こいつらをやってしまえ……!」
マッティから狙いをそらさせたならこちらのもの。単純な奴だと貴道は口角を吊り上げる。
「闇討ち。それも人を雇って……馬鹿馬鹿しいね」
敵を迎え撃つ威降は、率直な感情をぶつけて。
「自分が信じられなくなったのなら、潔く引っ込みなよ」
その間に、一晃が不意打ち気味に接敵し、覆面の一人目掛けて速力を破壊力に変換した一撃を突き入れた。
「ぐっ……!」
「勝利の栄光を求めるのなら、気にせずにいいものを」
敵も反応速度が速く、致命傷には至らぬが、奇襲には成功したこともあり、一晃は覆面どもへ……トリッピへと呼びかける。
「まあいい、お前の強さを称え、ラド・バウの歴史に名前は刻み込んでおいてやる」
一晃は改めて、妖刀『血蛭』の影打を構えて。
「頂点を目指すために、対戦相手を闇討ちし続けた男とな!」
「やれ、こいつらの口を封じてしまえ!」
トリッピは我を忘れ、雇った仕事人達に指示を出し、飛びかかってくる。
「誰かに止めて貰わなきゃ、踏ん切りがつかないのかな?」
そんな相手に、威降は小さく頭を振った。
「よし分かった。ボコボコにしてあげよう!」
自らの生命力を使って作り出した疑似妖刀を威降が握る。
「全力で轢かせてもらいます!」
イージアも『星官僚のタクト』を手にし、マッティの護りと覆面どもの迎撃へと当たっていくのである。
●
飛びかかってくる覆面集団……拳闘士トリッピと彼の雇った仕事人……暗殺者達。
「墨染烏、黒星一晃。一筋の光と成りて、堕した拳を打ち砕く!」
一晃はマッティが傷つく可能性を潰すべく、ナイフを振るってくる暗殺者へとカウンターとして己の刃を縫い付けていく。
一度受ければ、その邪剣に刻まれた箇所から体を硬直させてしまう。
クルッピが挑発に乗っていたことで、貴道も暗殺者の対処へと移る。
「HAHAHA、ユーは勝つ自信が無いから、つまらないことをやってるんだろう! なんせクルッピだからなぁ!」
戦う間もクルッピを煽り続け、貴道は攻め来る暗殺者に殴り掛かる。
「言わせておけば……!」
そいつは気を高め、一気に前方へと放出してくる。
「いやしかし。闇討ちに頼る程度の奴には、その名前すら惜しいというモノ」
貫通する気の威力はかなりの威力ではあったが、汰磨羈もまたなおもクルッピを煽り、良い名を与えようと告げて。
「そうだな……影でプルプル震えるチキン野郎、プルプルのプルッピ。どうだ?」
煽る汰磨羈は小刻みに動いて暗殺者のナイフを捌きつつ、闘気を火焔と変えて両腕の直刃『陽虔』『陰劉』で叩き込んでいく。
「闇討ちで獲る名誉名声が嬉しい?」
避難誘導を行うマッティを護るイージアもまた、クルッピへと呼びかけた。
茨の鎧を纏うイージアは殺意を漲らせ、襲い来る暗殺者に対して紫水晶龍の呪いを集中させた右腕でタクトを振るう。
「己の『現在』から目を背ける者の何処が強いのさ」
「…………!!」
もはや、怒りで我を見失っているクルッピ。
舞花はそれを冷静に見ながらも、自分に近寄ってきた暗殺者達を相手する。
1体であればと、舞花は防御しながらも水月鏡像の如く近場の敵へと斬魔刀で切りかかっていく。
威降もマッティを襲わんと回り込もうとする敵2体を見逃さず、生み出した妖刀から発する呪いの斬風を浴びせ、暗殺者の気を引いていた。
美咲も攻撃を行うが、スキルの全ての自らのギフト『虹色虹彩』で発動させる。
近づく彼女は瞳の色を変化させ、格闘術式と同様に殴打を浴びせかけていく。
「顔も見せない相手とか、何仕込んでるやらだし、触れたくないじゃない?」
汚物を扱うような美咲の反応にはヨハナも苦笑しつつ、すかさず飛んでくる毒ナイフをマッティに当たらぬよう受け止める。
「こんなのなんともないよっ!」
タイミング悪く遮蔽物もなかったが、ヨハナは持ち前の前向きさで毒に耐えきり、その意志の力を破壊力に変えて暗殺者へと『アインシュタイン=ローゼン鍵』で殴り掛かっていくのだった。
怒り狂う拳闘士トリッピは主に挑発する貴道、汰磨羈へとメインに、格闘術を叩きこんでくる。
決して、トリッピは弱くない。彼の乱打連撃は相手するメンバーの体を激しく殴りつけ、体力を削っていた。
その間に、別メンバー達が次々に暗殺者どもを仕留めていく。
美咲が至近にまで攻め込んできた敵に鬱陶しさを覚え、衝術で真上へと飛ばす。
そいつに対し、斬魔刀を振るう舞花が高速斬撃を浴びせかけ、暗殺者を昏倒させてしまった。
さらに、近寄ってくるなと言わんばかりに美咲がもう1体真上に飛ばすと、そいつにはヨハナが近づき、鍵のような杖で力の限り殴りつけて地面へと叩き落としていた。
さらに、1人を引きつけていた威降が気配を消し、敵と攻防を繰り広げる。
「風巻・威降……相手になるよ」
暗殺者2体に名乗りを上げる威降は閃光玉で視界を封じられながらも、相手の気を引き続ける。
高めの抵抗力で威降は上手く敵のナイフをやり過ごしはしていたが、さすがに命を奪うことに長けた敵2体を一度に相手するのはさすがに厳しい。
気配を消した威降が1体を見事に手刀で仕留めてみせたものの。
もう1体に背中からナイフを突きつけられて。
「うっ……」
威降は意識を途切れさせてしまった。
「タダで済むとは思ってないよね?」
しかし、彼の回復に当たっていたイージアが紫水晶龍の呪いを集中させ、その暗殺者を切り裂いて倒してしまう。
小さく息つく彼女はすぐ、仲間の回復に戻ったのだった。
数人でクルッピを囲う残りのイレギュラーズ達は、暗殺者を攻め立てる。
「オーディエンスの前で恥かきたくないもんなぁ」
貴道は暗殺者1体を殴り倒し、なおもクルッピを挑発し続けていた。
「クルッピってだけでも、恥が服着て歩いてるようなもんだから恥の上塗りだ! なあ、クルッピちゃん、HAHAHA!」
「おのれ……!」
敵意を引きつける貴道は相当なヘイトを買ったらしく、彼目掛けて暗殺者たちもナイフを投げつける。
ナイフを幾本も受けながらも、貴道は暗殺者1人を練り上げた気の奔流と共に殴りつけて倒してしまうが、それでも暗殺者の凶刃を受けて血を吐き、崩れ落ちかける。
だが、貴道はしっかりと踏み留まって。
「HAHAHA、勝てるなんて思うなよ、チキンども? ユー達とミーじゃあ、格ってもんが違うからなぁ!」
ただ、彼の傷が深いこと、そしてクルッピがマッティへと視線を向けていたこともあり、イージアが助けへと入る。
「貴方のやってる事は闘技参加者への侮辱だよ、このピッピ野郎が」
言葉で挑発しつつ、イージアは貴道の傷を治癒魔術で癒していく。
残る2体には、一晃と汰磨羈が一斉に仕掛ける。
一晃は大柄な体を活かし、高い位置から速度を活かして妖刀を一閃させた。
青き彗星に貫かれた暗殺者は声を上げる間もなく伏していく。
その一晃を狙い、ナイフを投げつける最後の暗殺者。
一晃がナイフを切り払う隙に、低い姿勢から汰磨羈が飛び込む。
相手の足目掛け、汰磨羈が掌打を叩きこむと敵の体を五角柱結界が包み込んでいった。
その中へと、汰磨羈は2つの楔を突きこむ。
物質を抉る陽楔と非物質を貪る陰楔。
それらは幾何学的な奇跡を描いて結界内を跳ね回り、暗殺者の体を貪っていく。
「うわああああっ……」
結界と暗殺者の姿が消えたのを確認し、汰磨羈はトリッピを見やる。
「拳闘士クルッピ。戦士の意地、見せていただきます」
間髪入れず、飛び込む舞花が幻惑の剣で、敵へと切りかかった。
さらに、メンバー達がそれぞれ攻撃を仕掛ける中、一晃が妖刀を一閃させて相手の方を貫き、同時に汰磨羈は敵の腹へと飛び込み、掌打を食らわせる。
「どうした、クルッピ。貴様の実力、その程度ではあるまい」
すると、ようやく観念したのか、クルッピは両膝をがっくりとつき、うな垂れてしまったのだった。
●
全ての暗殺者達を倒し、残るはクルッピただ1人。
「降伏してくださいっ」
ヨハナが武器を突き付けた態勢で敵に言い放つ。
「剣闘士の資本は体ですし。なによりこうまでして勝ちたい一途さは素敵だと思います」
彼にも……未来のチャンピオン候補のサインをもらっていないと言うヨハナだが、クルッピは小さく鼻で笑う。
「今のクルッピなぞ、名前を刻む価値もあるまい」
一晃も告げる。戦って栄光を得るのが拳闘士であるならば、闇討ちに頼らずとも笑う者がいなくなるくらい強くなればいい、と。
だが、そいつはなお諦めてはおらず、マッティを狙って拳を突きつけようとする。
しかし、その拳はマッティのハルバードに遮られた上、美咲が背後頭部から衝術を叩きつけた。
「あら、混沌にも土下座ってあるのねー」
「最後までやるつもりなら、付き合いますけどね!」
威降も仲間に従う形で、相手を威嚇する。
貴道、イージアにも見下ろされ、舞花もまた一言。
「これが最後です。降伏を要求します」
メンバー達がマッティへと判断を仰ぐと、彼は小さく頷いて。
「正々堂々勝負したいところですが、同じ参加者が被害に遭っている状況では……」
彼は心苦しくも、その判断を運営に委ねることにしていたようだ。
間違いなく、最低でも数回の参加停止、最悪出入り禁止までありうるだろう。
「ぐ……」
肩を落とすマッティへ、汰磨羈が言い放つ。
「真面目に精進しろ。そこまで出来るのなら、な」
その強さは決して侮れぬ力量があるからこそ、彼女もそう呼びかける。
この男が改めて己の強さを追い求めることを願いつつ、イレギュラーズ達はマッティと共に大闘技場へと闇討ちの犯人を突き出しに向かうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはマッティへと向かう暗殺者を引きつけながらも、
1体を仕留めていたあなたへ。
今回は参加いただき、本当にありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいです。
闘技場の参加者を闇討ちする外道どもの討伐を願います。
こちらでは、補足のみ行います。
●敵……8体
○拳闘士×1体
名前は、クルッピ。鉄騎種。
スレンダーながらも、卓越した技量を持ちます。
しかしながら、対戦相手を闇討ちする外道です。
・格闘……(A)物近単・連
・旋風脚……(A)物中範・崩れ
・烈破衝……(A)神遠貫
・乱打連撃……(A)物近列・連
・極鋭殲滅撃……(A)神近単・溜1・ブレイク
○仕事人×7体
いずれも、鉄騎種。
幾つかの状態異常を使い分けます。
暗殺者が本業ですが、
闘技場参加者を棄権させる必要がある為、
闘技場出場者を殺さず、
戦闘不能へと追い込める程度には力ある者達です。
・毒ナイフ……(A)物近単・毒・連
・麻痺ナイフ……(A)物中単・麻痺
・閃光玉……(A)神中範・暗闇
・ナイフ投擲……(A)物遠単・致命
●NPC
○マッティ
20代青年、鉄騎種。
軽装鎧を纏うハルバード(槍斧)使いです。
能力はそこそこで、
クルッピとサシなら問題なく戦える技量はありますが、
さすがに数で劣勢すぎる為、このままだと重傷は必至です。
頼めば戦えますし、その力もありますが、
彼自身が依頼者であり、囮となっていること、
闘技場での決闘前ということもあり、
基本的には守るほうが心証は良いでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet