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シナリオ詳細

Bヘミングのレコード
Bヘミングのレコード

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 黒髪のバイオリン奏者と、黒人のピアニスト。
 二人の演奏が溶け合うように混じるバーでのこと。
 黒からグレーの色調だけで作られた『鮮やかな』ドレスを纏ったプルー・ビビットカラー(p3n000004)が、木製の椅子に腰掛けて目を閉じていた。
 バーボンのグラスが円形のテーブルに置かれ、ウェイターは足早に立ち去っていく。
 ややあって、梔子の花を髪につけたシンガーがうっとりと歌い始めた。
 曲はグレイス・ジェイ・ジーンズで忘れ得ぬ日々の君。
 低く色艶のある声が、とどける蜂蜜のように演奏へと溶け込んでいった。
 プルーは濡羽烏羽と色の名前を呟いたのち、薄く目を開く。
 そうして、あなたがテーブルの向かいに座ったことに、ようやく気がついたようだった。
「この海洋王国には、いくつもの音楽が伝わっているわ。混じり合う文化と人種、そして移ろう歴史の中で生まれたいくつものね……」
 からんと小さな音をたてて崩れるグラスの氷。
 プルーはグラスの縁を指で撫で、細く高い音を鳴らした。
「けれど長い歴史の中で喪われた音楽も沢山あるの。だから、そういう遺失譜面の行方が分かっただけでも、その業界の人間にとっては奇跡のような出来事なのよ」

 なぜこんな話を前置きにしたのか。それは依頼の重要性を一度伝えておくべきだと、プルーが考えたからである。
 であると同時に、依頼主が今回『回収』するレコードに並々ならぬ重要性を感じているという事実を意味していた。
 『Bヘミングのレコード』。それが回収目標の名前である。

「『Bヘミングのレコード』は円盤状のプレートで、音楽の譜面が特殊な魔術暗号によって記録されているの。これを回収することが今回の依頼内容になるわね。
 そのレコードは今、エイレム沖の海底に沈んだ船の中に残されているわ。
 ダイバーチームがサルベージに当たったけれど、シーモンスターに遭遇してしまったことで回収を中断。ダイバーチームも相当な怪我を負うことになったの。
 そこでシーモンスターの駆除と、レコードの回収。この二つが私たちローレットに依頼されたってわけ」
 プルーはファイルを開くと、水中活動装備の写真をとりだした。
 水中におけるある程度の活動と十全な戦闘行為を可能とするこの装備は、かつて大渦事件の際に用いられたものと同じ装備である。
 そんな写真と共に提示されたのが、チョウチンアンコウにも似たシーモンスターだった。
「『アンダーランプ』という種で、普段は沈没した船や岩陰に隠れて暮らす大人しいモンスターなんだけれど、以前に起きた大渦事件の影響で凶暴化したままになっているらしいわ。ダイバーチームが怪我をしたのも、それを予測に入れていなかったせいね。
 勿論、レコードのある沈没船をすみかとしているから、駆除は必須よ。
 額から伸びた電球のような部位から魔力を放射して獲物を攻撃する能力をもっていて、強い顎は人骨程度の堅さなら噛み砕いてしまうわ。
 群れの中でも階級のようなものがあって、強くて偉いものは住処の中に、弱いものはその周辺に群がる習性をもつの。
 だからまずは船のずっと手前で小さいものを駆除していって、次に船のすぐそばで大きくて強い個体と戦うことになるでしょうね」
 どちらにせよ、休憩する時間はとれそうにないので継続しての戦闘を意識しておく必要があるだろう。
「レコードの回収ができたら、またここへいらっしゃい。上手にできたら、一杯奢るわ」
 プルーはグラスを飲み干すとコインを多めに置き、『あとは楽しんで』と言って店を出て行った。

GMコメント

■■■今回の相談会場■■■
 バー『エイトフラッグ』。
 ネオフロンティア海洋王国南部に位置する店で、ムードのよいバーです。
 カニ料理が美味しいのと、お酒の取りそろえが良いこと、そして定期的に店にやってきて歌うシンガーが魅力のようです。
 依頼が始まるまで時間もありますので、おくつろぎのうえでご相談くださいませ。
(当依頼では巡り会った仲間と街角感覚のロールプレイをはさんでの依頼相談をお楽しみ頂けます。互いのPCの癖や性格も把握しやすくなりますので、ぜひぜひお楽しみくださいませ)

■■■クエストフロー■■■
 この依頼は大きく分けて二つの戦闘、厳密には四つのパートに分かれます。
1:船で目的ポイント上へゆく。
 水中戦闘装備を整え、海中へとダイブする。
 障害になるものはないので特別なプレイングは必要なし。
 特にシナリオ成否に影響はありませんが、自前の船をつかっても構いません。
2:アンダーランプと戦闘する
 潜水するイレギュラーズたちをみつけ、アンダーランプが自然と集まり襲いかかってきます。
 群れを成しては居ますが(範囲攻撃の餌食になるだけで特にメリットがないため)団子状になって襲いかかるわけではないので、いくつもの方向から次々に襲いかかるイメージをしておいてください。
 総数は不明ですが、ある程度蹴散らせば多くは恐れを成して逃げるでしょう。
 暫くしのぎながら深度を進めていくことになります。
3:キングアンダーランプと対決する
 巨大な個体『キングアンダーランプ』と戦います。
 一体だけしかいませんがとても強くて凶暴なので8人で力を合わせて戦いましょう。
4:沈没船からレコードを見つけて持ち帰る
 モンスターを倒し終えたら船内を探索し、レコードを持ち帰ります。
 あまり長くいると逃げたアンダーランプたちが戻ってきて大変なことになるので、必要な探索を終えたらすぐに帰るようにしましょう。

■■■エネミーデータ■■■
●アンダーランプ(小)
 海中を泳ぎ回る比較的大人しいシーモンスターですが、以前の魔種騒動の影響から凶暴化が著しいようです。
・魔力放出(神中単【Mアタック30】)
・かじりつく(物至単【必殺】、低命中)

●キングアンダーランプ
 群れを守るために存在する巨大なアンダーランプです。
 一体だけしかいませんが、その分高い戦闘力をもっています。
 作戦やスキル構成を考える際には【虚無】【喪失】の存在に注意してください。より厳密に言うとAP回復やAP総数に気を配るとよいでしょう。
・拡散魔力放出(神中扇【Mアタック100】【虚無2】)
・大きな顎でかじりつく(物至単【必殺】【喪失】)
・突進(物至単【移】【飛】)

■■■フィールドデータ■■■
 今回の戦闘は主に海中になります。
 水中装備を支給されているため、水中での呼吸その他ができなくても十全に戦闘が可能です。
(PCが泳げないという設定をつけても別にいいっちゃいいですが、一定のダイバー講習を受けた後戦闘に支障の無い範囲で活動ができることになります。ペナルティをつけるつもりはありません。
 ただ少なくとも海には潜らなければならないので、その点だけはご注意ください)
 今回、海中でのペナルティその他はないものとし、上下の移動も平地の機動力計算と同等に行なえるものとします。
 また海底は暗いですが、海中装備にライトが付属しているので多少は問題ないはずです。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • Bヘミングのレコード完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年06月17日 23時40分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
黄昏き蒼の底
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
朱鬼
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽

リプレイ

●レコードとロマンと海
 耳に残るバイオリンの音色。
 まるで音楽の船から桟橋に下りたかのようにくらりと揺れる心で、イレギュラーズたちは目的の船へと乗り込んだ。
 『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)の所有する船『白夜壱号』である。
 碇を上げ帆を張るマリナ。
「音楽はよくわかりませんが……海に沈んだお宝をサルベージは海の男のロマンでごぜーますね。私は女ですが」
 おきまりの文句を語尾に加えて、マリナは舵を握り込む。
 冒険とロマンを乗せて、夢とお宝を探しに、一隻の船が海へと滑り出していく。

 夏にさしかかる海は存外に暑く照りつけるもので、『黄昏き蒼の底』十夜 縁(p3p000099)は木箱の影に隠れるようにして甲板に腰を下ろしていた。
 陶器製の酒瓶のフタを開き、中身を豪快に飲み下す。
「音楽はそこそこ好きだが……まさか海に潜らなきゃならんとは、参ったね」
 『ある事情』から水に入ることを避けてきた十夜といえど、さすがに筋を通さねばならない時があるようだ。
「よし、か弱いおっさんは全員が戻るまで船の番を……て、わかった。行くよ」
 振り返ってじっと見つめてくるマリナに手を上げて降参のジェスチャーをとる十夜。
 十夜がこの調子なのはいつものことで、いつもなんだかんだいって仕事はしっかりこなしているのをマリナは知っていた。海洋仕事は船が絡みやすいからか、見知ったメンバーが集まりやすいところがあった。今更知らない相手でもない、という話である。
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は同じ木箱に背を預けるようにして、海から流れる風を気持ちよさそうに浴びている。
「失われた曲とは、またロマンのある話だな。
 文化の収集も私の目的ではあるし、私としてはその事業に関わることが出来て願ったり叶ったりだよ。
 終わったら礼の曲を聴かせて貰うというのはどうかな」
「ああ、そりゃあいい。美味い酒が飲めそうだ」
「同感でござる。歴史に埋もれた価値ある名曲……酒の友には格別でござろうな」
 海図を広げていた『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)がうーむといって唸った。
 その隣では『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)がどこか楽しそうにまだみぬ音楽のうたを空想のまま歌っていた。
「ところでその『れこおど』というのは、円盤に音楽が記録されたものなのでしょうか。暗号、と聞きましたが」
「暗号が音楽になっているのでござるよ。暗号通りに演奏する機械にかけることで音楽が再現されるのでござる。それらが記録されているので『レコード(記録)』なのでござるよ」
「なるほど……背景はどうあれ、こうして再び奏者の手を巡るのも、縁なのでしょう」

「そろそろ目的地かの」
 『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)はポチにとっておいたカニ身をあげると、荷物をまとめた風呂敷を結んだ。
「目的の回収物は『Bヘミングのレコード』……で、その周辺にいる『アンダーランプ』を追い払い、回収する時間を稼ぐ、と。
 凶暴化したとは聞いたが、大渦というのは……あの大渦か」
 潮は魔種チェネレントラの起こした大事件おことを思い出していた。確かにあの時は海の中は大混乱だったものだが……。
「傷跡というのは、そう簡単に言えぬものじゃのう」
「ポジティブに考えましょう!」
 『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)がシャドウボクシングのポーズで唱えた。
「アンダーランプというくらいだからきっとでっかいアンコウです。
 アンコウ鍋や唐揚げを食べるチャンス! だと思いませんか!」
「余裕があったら持ち帰りたいのう。しかし」
「レコードが優先。わかってますとも」
 夕は海中行動装備を装着すると、鼻をつまんでぴょんと船から飛んだ。

●ディープブルー
 海に感じる恐怖の根源は、その冷酷なまでの弱肉強食にあるという。
 無限に思えるほどに広い世界で、いつ自分が殺されるかもわからない恐怖。
 暗く深く見通せない青い闇の先に何がいるかわからない恐怖。
 八人のイレギュラーズたちはそんな冷たい世界の中へ、深く深く沈んでいく。
「アンダーランプでござる!」
 下呂左衛門は刀を抜くと、歌舞伎芸能のごとく見栄をきって名を名乗り上げた。
 彼の様子に気づいて猛烈なスピードで集まるアンダーランプたち。
 腕や足への噛みつきや、至近距離からの魔力放出によって下呂左衛門の体力やスタミナがめりめりと削られ始めた。
「夕殿、今のうちに!」
「ほんとは温存したほうがいいんだろうけど……!」
 『仕方ないですね』と言って夕は光の翼を展開。
 きりもみ回転でアンダーランプたちの間を突き抜けると、光の翼でアンダーランプたちを次々と切り裂いていく。
「蹴散らすには便利ですけど、消耗が激しすぎ!」
「スタミナ(AP)が底をつかないように注意してください。喪失や虚無の影響はかなりのものですよ」
 雪之丞は刀の柄を霊気の込もった拳でコツンと叩くと、下呂左衛門が集めきれなかった分のアンダーランプたちの注意を引きつけ始めた。
 魚雷のように飛んできたアンダーランプの噛みつきを刀で止める……が、四方八方からアンダーランプたちが群がり魔力放出を仕掛けてきた。
 見えない牙が精神に食らいつき、スタミナを直接食いちぎっていく。
 雪之丞は傘を回転させることで水流を海だし、彼らから受ける実ダメージを軽減。潮たちに攻撃の合図を出した。
「まずい。ダメージは防げてもAPへの被害が防げんぞ」
「スピード勝負ってわけかい。やれやれ、こりゃあ困ったねえ」
 潮と十夜はそれぞれ腕まくりをすると、アンダーランプの群れの中へと飛び込んでいった。
 十夜の手刀と蹴りがそれぞれアンダーランプを破壊。潮はアンダーランプの頭を掴み、握力で無理矢理握りつぶした。
「そこじゃ――」
 さらにはサメの形をしたオーラを放ち、追加で現われたアンダーランプを食い破る。
「援護射撃を頼む!」
「ああ、任せておけ」
 ゼフィラとカタラァナはそれぞれ協力し、アンダーランプの撃破につとめた。
 もらい物のリボルバー拳銃をアンダーランプ一匹ずつにピンポイントで打ち込み、破壊していくゼフィラ。
「暗い海中で自ら光を放つとは、いい射撃の的だ」
 ゼフィラはゴーグルの下で僅かに片眉をあげた。
「ここはあくまで『道中』でごぜーます。大物が出るまで勢いをつけるのです」
 フリントロック拳銃を両手持ちで構えるマリナ。
「とはいえ、スタミナは温存していきましょー」
 弾丸が海中を回転して進み、アンダーランプの頭部を打ち抜いていく。
 雪之丞たちの引きつけを抜けた個体がマリナへ接近するが、噛みつく攻撃を腕で受け、銃のグリップで殴りつける。アンダーランプの頭部を大きくへこませ、マリナは死んだアンダーランプを腕から外して放り投げた。
「あんこう鍋の具には、小さすぎますねー」


 冷たい海水をかき分けるように進むマリナは、ようやく海底に横たわる沈没船を発見した。
 追いすがってくるアンダーランプをフリントロック拳銃で肩越しに撃ち殺し、目をこらして船を見つめる。
「あれで間違いねーですね」
「ということは、『キングアンダーランプ』がこの近くに――」
 アンダーランプを切り捨て、雪之丞は船へと身構えた。
 と、その時。
 船の横っ腹に空いた大きな穴からキングアンダーランプが飛び出し、突如として拡散魔力砲撃を放ってきた。
 オレンジ色の光が波のように襲いかかり、雪之丞はそれを刀で切り裂くように防御する。
 が、直撃をさけたにも関わらず雪之丞の身体に無視できない規模のダメージが浸透した。
「アンダーランプの魔力を浴びすぎましたか……ですが」
 そうとわかれば対策は難しくない。
 雪之丞は勢いよくキングアンダーランプへ接近し、巨大なボディの側面に刃を立てて駆け抜けた。
 硬い鱗を切り裂いて、赤い血が海中に煙のごとく広がっていく。そんな血の中を突き抜け、アンダーランプがマリナたちへと襲いかかる。
 突進をクロスアームでガードし、海中を勢いよく飛ばされるマリナ。
 器用に海中で姿勢を制御すると、回転の途中途中で意識を加速。スローになる風景の中でキングアンダーランプに持ち玉の限りを叩き込んでいく。
 一方でゼフィラは戦闘のどさくさに紛れて船のかげに入り、キングアンダーランプの背後から思い切り銃撃をくらわせた。
 ゼフィラの存在に気づいたキングアンダーランプが反撃の魔力砲撃を浴びせてくるが、下呂左衛門が割り込みをかけて気合いを入れた。
「とっておきでござる!」
 両手をばちんと打ち合わせた途端、下呂左衛門の身体に水の鎧が装着される。
 魔力砲撃のダメージを七割ほどカットする……が、オレンジ色の魔力光が身体に浸透し下呂左衛門の身体を直接むしばんだ。
「長くは持ちそうにないでござる。が……それまでは任せるでござる!」
 戦いの基本はリソース運用。『できることをやる』というのはここでは、HPの限りを尽くして盾の役割に徹することをさす。
 カタラァナの援護射撃をうけながら、潮がライトヒールを連射。
 開いた手のひらから暖かい色の小さなサメオーラを発射すると、傷口にしみこませて出血や裂傷を治癒していった。
「拡散魔力放出に気をつけるんじゃ。APがつきていれば防御の高さも関係ないぞ」
「そのぶん回復を急げばいいわけですよねっ」
 夕は『いただきます』のハンドジェスチャーをすると、頭上に巨大なあんこう鍋を召喚。
 フライパンとお玉をがんがん打ち合わせると、美味しい具材をぽこぽこ発射して下呂左衛門たちに食べさせた。
「おっと、おっさんは海のもんは遠慮しとくよ」
 十夜は夕に手のひらを翳し、キングアンダーランプに突進。
 腹に勢いよく踵を打ち込んだ。
 あまりの衝撃に血を吐くアンダーランプ。
 破れかぶれに魔力を乱射しまくるが、十夜は構わずアンダーランプの提灯部分を掴み取り、豪快なスイングで沈没船に叩き付けた。

●Bヘミングのレコード
 キングアンダーランプの撃破に成功したはいいが、味方のダメージもかなり無視できないものになっていた。
「あんこう鍋の具材を持ち帰る余裕はなさそうですね。早いところ、レコードを見つけ出しましょう」
 キングアンダーランプが飛び出してきたあの大穴から船へと侵入する雪之丞。
 そこはどうやらホールだったようで、光を失ったシャンデリアとステージが栄光ある時代の面影を残していた。
「演奏が行なわれていた場所……のようですが」
「けどレコードってCDとかDVDみたいなやつなんですよね。ならもっと個人の部屋とかにあるんじゃないですかね」
 夕が指で円盤の形を作ってみせた。
 雪之丞が『でぃー……ぶい……でぃー……?』と目を細めたが、なんとなく意図は伝わったらしい。
「私は偉い人の部屋を調べてみます。船長さんの部屋とか」
「てつだいますよー」
 マリナが大型のライトを点灯し、カタラァナと共に船内の通路を照らし始めた。
「船長室なら恐らくあっちだ。私はVIPルームとバーを探すことにするよ」
 ゼフィラはてきぱきと船内のあちこちを指さすと、『見つけたら即撤収だ』と言ってホールの壁を直接透過していった。
 沈没した船の見取り図は手に入らなかったが、同種の船の見取り図を事前に手に入れることはできた。船の形をして同じ目的をもつ以上、大なり小なり似た形になっていくはずだ。
 ゼフィラは小魚を払いながらVIP向けの高級そうなバーへと入っていくと、棚の中にレコードリストを発見した。
「うむ、やはり私には戦闘よりこっちの方が合っているな」
 リストに指をはわせ、そのうちの一枚をスッと抜き取る。
 板状のケース。Bヘミングと読めるサインが、ケース表面にははしっていた。
「おーい! そろそろ撤収した方が良いぞ! 魚が戻ってきておる」
 船の外で潮が呼んでいる。
 ゼフィラはレコードを鞄に詰めると、バーの壁を透過して脱出しよう……として、ふと手を止めた。

「お、やってるねぇ」
 バーの扉が開き、十夜がどこかシニカルに笑った。
 海洋のバー『エイトフラッグ』。
 ムーディーなステージの上には、モノクロカラーの衣装を纏った夕がカタラァナの演奏でしっとりとしたラブソングを歌っている。
 バーは貸し切り状態で。一番よい席には海洋貴族の男。周りのテーブルには潮や下呂左衛門たちがついていた。
 貴族の男はコインの沢山はいった袋をテーブルに置いて、部屋に入ってきたゼフィラたちに手招きをした。
「鑑定は済んだよ。本物だ」
「ご苦労」
 貴族の男はレコードと袋を交換するように押すと、やさしくケースから円盤を取り出した。
 黒いつやのある薄い円盤である。石のように硬く、一見しただけでは価値のわからないものだ。
「Bヘミングの遺失曲が見つかるだけでよかったところを、サインケースまで見つけてくるとは。素晴らしい……」
 貴族の男は特殊な箱状の機械を取り出し、円盤を機械にセットした。
 ぷつぷつという音に次いで、クラシックギターの音が広がっていく。
 それは聞く者の魂をどこか遠い故郷に還らせるような、古い昔話を思い出させるような、不思議な音色の音楽であった。
「……なるほど。確かに、こいつは沈没船に相応しい『最高』のお宝だ」
「然様」
 下呂左衛門と十夜は杯を小さく乾杯し、雪之丞や潮たちは腕組みをして音楽を聞き入っていた。
 この小さな音楽会は、夜が更けるまで続いたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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