PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ほろほろ、ころり
ほろほろ、ころり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●村の伝説
 この入り組んだ岬のどこかに、波神様がいるそうだ。

 其れは、生まれた子どもが親から最初に聞く昔話。
 村の成り立ちと、毎年初夏に訪れる“海の娘たち”のための昔話。

 波神様は気性が荒く、隙あらば女子どもを攫って食べてしまっていた。
 ついに女は一人になって、このままではそのうち男も狙われる、皆食べられる、と村人が怯えていた。
 女は岬へ出向いて、こう呟いた。

『波神様、どうかわたしを最後にして下さいませ。皆怯えております。山は高く、谷は深い。私たちは、此処で生きていくしかないのです』

 そう言って岬に身を投げた女だったが……柔らかい手が彼女を包み、砂浜へ押し上げた。
 何者か、と女が見ると、其れは美しいうろこを持つ海の娘たちだった。

『貴方の素晴らしい行いに感動しました。私たちはよき隣人として、波神様を鎮める手立てを教えてあげましょう』
『神殿を立てて、これなる私たちの涙を奉納してください。波神様は人の怯えを食べているのです。涙の分の悲しみがあれば、波神様は安らかに眠れます』

 女は涙を受け取って村に帰り、悲しみに暮れていた男衆を驚かせると、海の娘たちの言葉を皆に伝えた。村人たちは其の言に従った。すると波神様は途端に大人しくなったんだ。
 ほら、この時期になると岬に海の娘たちが来るだろう? あれはね、昔村人を救った娘の子孫なんだよ。
 波神様は彼女らの涙によって、安らかに眠っておられるんだ――


●ローレットにて
「――という昔話があるんだけどね」
 丁寧に紙芝居(でも絵で心は動かない)で説明してくれたグレモリー・グレモリー(p3n000074)は、無表情でぱたん、と紙芝居を伏せた。
「実際に、海の娘――つまりマーメイドたちから涙を貰って波神様に備えているんだ。けれど……今年は何故か彼女らは無表情になってしまって、涙を流してくれないらしい。なので何か泣ける話とか泣けるものを持ってきて……という依頼なんだ」
 無表情といえば、いい手本が目の前にいますけどね。
 イレギュラーズたちの考えは本人には届かない。
「彼女らは村と友好関係にあるから、傷付けてはいけないんだけど……わさびとかならOKらしいよ。というか今まで使った事がないっていうから驚きだよね。今までどうやって? って聞いたら、波神様の昔話で泣いてたっていうんだから。多分、飽きちゃったんじゃないかな」
 そりゃ毎年毎年聞いてれば飽きるよね、とグレモリーは頷く。
「なので、彼女らに新しいネタを提供してあげて欲しい。彼女らは新しいネタを待っている。そして僕も、新しいネタに困っている。依頼が終わったら、どうなったか聞かせて欲しい。絵の参考になるかもしれない」
 よかったら、村人にも何かネタを提供してあげると、喜ぶかも知れない。本の流通とか。
 ――其れってつまりド田舎なのでは。
 グレモリーが提示した場所を確認すると、成る程、海洋でも相当辺境な処にある村のようだった。


●娘たちの本音
「最近ほんと退屈よね……」
「わかりみ……何か新しい事ないかしらね。あといい男」
「そういえば、そろそろ涙の時期じゃない? あんた何用意した?」
「タマネギ。毎年これでやってる……そろそろ耐性付きそう……」
「私は泣ける音楽……貝殻で……失恋系の」
「そろそろネタ切れよね……もうあの昔話では泣けないし……そういえば海洋の更に向こうの国では、流行りの人たちがいるらしいわね」
「良い男とかいるかな!?」
「さあ、どうかしらね~。みんなムキムキだったりするかも」
「其れでも良いわ! 一度会ってみたい~!」

「あーあ、何か新しい事ないかな~」

GMコメント

こんにちは、奇古譚です。
のんびりと人魚の涙を集めてみませんか?(わさびとかで)

●目的
 “海の娘たち”から涙の粒を採取せよ(最低10個)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●立地
 入り組んだ岬が特徴的な海辺の村です。
 “海の娘たち”の涙を毎年波神様の神殿へ奉納する儀式があります。
 その儀式まで、あと数日しかありません。

●エネミー
 海の娘たちx10

 ※彼女たちは村の神様のような存在なので、傷付けてはいけません!※
 何故かチベットスナギツネみたいな顔つきになってしまい、泣く事を忘れてしまいました。
 それまでずっと村の昔話を聞いていたというので、飽きてきたのかも知れません。
 というか飽きてました。


 チベスナの顔って、忘れられませんよね。

 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • ほろほろ、ころり完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年06月16日 21時25分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
こう見えて71歳っきゅ!
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
秋宮・史之(p3p002233)
女王忠節
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
聖女の小鳥
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
繋ぐ命
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
海のヒーロー

リプレイ


 さて、イレギュラーズは娘たちとの対面を明日に控えていた。
「こういう処では神様を大事にしなきゃいけないんだ、俺には判る」
 俺のとこでも捧げものの風習があったからな、と『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)は頷く。そうだね、と頷く『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)。
「俺の料理でなんとか、彼女たちの涙を誘えるように頑張るよ」
「料理ならレーさんも負けないっきゅ。頑張るっきゅ!」
 ぐ、と『森アザラシと魂無き犬獣人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)が拳を握る。
「それでは、わたくしは準備をして参ります。料理は十分でございましょうから、お酒ですわね」
 す、と『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)が席を立つ。傍観者の立ち位置が多い彼女にしては珍しく、なんとなくやる気が見えているような。
「どうせ涙なら、嬉し涙の方がええ。よろしゅう~」
 『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)がエリザベスに手を振る。そうだな、と同調するのは『聖女の小鳥』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)。
「女性の悲しい涙は苦手だ。どうせなら後腐れなくすっきりと泣いて貰うのが良いよな。俺も準備に行って来る、何かあったら呼んでくれ」
 いそいそと席を立つベルナルド。日は暮れたものの、まだ村人たちは起きている時間帯だ。エリザベスと彼はこの小休止の時間を狙い、情報収集するつもりなのだろう。そこに声を上げたのは『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)。
「ベルナルドさん、あたしも行っていい? 村人さんたちにお手紙のお願いしなくっちゃ!」
「ああ、そういやそうだったな。じゃあ一緒に行くか」
「うん!」
 一つに結い上げた髪をしっぽのように揺らし、フランもまた立ち上がる。
 彼らを見送りながら、カイトは娘たちに思いを馳せる。
「――まあ、毎年泣くっていうのも大変な話だよな」
「そうだな! オイラも最近泣いたのいつだったか、あんま覚えてねーや」
 『とっかり』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)が首を傾げる。彼は今回が初仕事。でも泣ける話は仕入れてきたぜ! と意気揚々。
「お、お前も話で泣かせるのか? 俺もだ。どんな話だ?」
「えーっとな……なんだったかな……タイトルはあんまり泣けるのかわかんねーんだけど……」


●女子会……えっ? 今なんて?
「海の娘たちには、指定の場所で待つようにと若い娘に伝えさせております。どうかこの村のため、娘たちのため、そして波神様の為、お願い致します」
「あたしはまだこっちで準備があるから、みんな、宜しくね!」
 恭しく頭を下げる村の長老と、手を振るフラン。残りの7人はそれぞれに頷き、馬車と共に岬へ向かう。馬車の中には調理道具と素材がどっさり。落とさないように慎重に、時に皆で協力しながら指定された地点へ向かうと――

『あー! 見た事ない顔が来た! みんなー! 来たわよー!』

 黄色い声が飛んだ。
 はて、とブーケが視線を向けると、其処には波間に漂う美しい娘たち。頬をあけいろに染めて、見た事のない顔にきゃあきゃあと楽し気な声をあげている。
「まあ、こんなに歓迎してくれるやなんて」
「よっぽど村の方々がマンネリ……いえ、なんでもございません。何もいっておりません」
 エリザベス、其れは言わない約束だ!
「おー! ねーちゃんたちが“うみのむすめ”か?」
『そうね、私たちをそう呼ぶ人は少なくないわ。でも、普通に人魚とかマーメイド、ディープシーで良いわよ』
 リーダー格らしき、うねる金髪の娘が言う。極彩色の尾を揺らし、ぴちゃん、と波の立つ海面に波紋を残した。
 まずはそれぞれ自己紹介をする。こちらから、と名乗り上げるイレギュラーズ。
『ありがとう。私はレイニよ。……にしても、8人と聞いていたのだけど?』
 あの人かっこよくない?
 私はあの鳥っぽい人が好み~。精悍~!
 私は断然シノくんかな! 折り目正しい男の子ってカンジ~!
 かしましい娘たちをよそに、リーダー格のレイニは不思議そうに見回す。そう、其処にはフランの姿がない。
「ああ、彼女は後から来るよ。少し体調がね」
『体調が? そう……私たちは陸の深いところを見た事がないけれど、此処まで来るのは大変なのでしょう? 旅の疲れが出たのかしらね……』
 憂いと心配の色を浮かべるレイニに、心の中で謝る史之。
 このお詫びは是非料理で返せたらと思うのであった。

『――で』
 レイニがふと、面白げな表情を浮かべる。
『私たちを涙させるために来たんでしょう? 私たち、ずっと楽しみにしていたの。貴方達がどういう方法で泣かせに来るかってね』
『ふふふ! どこまで予想を外れて来るか楽しみね!』
「其処まで気にしてくれるのは嬉しいっきゅ! プロデューサー冥利に尽きるっきゅ!」
「そうだね。俺も腕を奮う甲斐があるってものだよ」
「そうですわね。では――始めましょう。女子会を」

 ん? いま何て?

「女子会でございます」
『ジョシ、カイ……?』
『アタシ聞いたことある! なんかー、女子だけでわいわいしてキャッキャして、秘密のお話いっぱいするみたいなー!』
『えー、でも男の子を仲間はずれにしちゃうの? それはちょっと……』
「問題ありません。男子と女子の比率を考えれば此処は圧倒的に男子<女子。ちょっと男子~数少なすぎるわよ~という程。そしてこれを考えたのはブーケ様でございますし、女子会で問題ありません。皆で語りあかすのです、普段は言えなかったあんなことやこんなことを」
 エリザベスが女子会をガン推ししてくる。お、おう、と頷く海の娘たち。お、おう、と頷くイレギュラーズ(ブーケとフラン(不在)を除く)。
 という訳で、波と陸の狭間にて、不思議な女子会が開かれる事となったのであった。



 バトラーは調味料の一振りにも手は抜かない。
 下味は胡椒で整える。ソースには山ほどの山椒と唐辛子を加え、色鮮やかな赤色に仕上げる。赤は食欲を増進する色だというが、娘たちもそうだろうか。
 ぱっぱと水切りした豆腐にソースを加え、炊いた焚火に鍋を翳して煮込む。
『ん……鼻がつんとするわ』
『やーん、もう涙が出そう!』
「そう、これはとある国に伝わる激辛料理だよ」
 史之は笑い、娘たちの為の大皿に、出来上がった四川風麻婆豆腐を流し込み、スプーンを添える。其れをレイニに渡すと、彼女は不思議そうな顔をした。
 娘らが不思議そうに観察している間に、更にごま油とにんにくを用いたピータン、そしてハバネロドレッシングがまばゆいサラダを作る。激辛に激辛を重ね、さあ泣けといわんばかりのメニューだ。
 この間に、レーゲンも料理を馬車から持ってくる。陸の素材をふんだんに使った、素朴な料理たち。これは村人たちが用意した、海の娘たちへの感謝の気持ち。更に馬車に積み込んでいた石窯で焼いたパンも添える。知己に教わったレシピの真似っこだが、思いが伝わる良いパンだとレーさんは思っているっきゅ!
「さあどうぞ」
『あむ』
 娘たちの一人が遠慮なく、スプーンで麻婆豆腐を食べた。こ、これは!!
『か、から~い!! 辛いって言うか、いたーい!』
 ほろほろ、ころん。
 レイニが抜け目なく、泣き出した娘の涙を貝殻の器に受け取る。硬質な音がして、極彩色の小さな球が受け皿に落ちた。
『そんなに辛いの?』
『すごく辛いよレイニ~! やーん、史之くんの意地悪~!』
「はは、そう言われると思って、ちゃんとデザートには甘いものを用意してあるよ」
『からいってどんな感じ? 私も食べてみたい!』
『私も~!』
 海の娘たちは好奇心の赴くまま、麻婆豆腐やピータンを食べ、涙ぐむ。
「辛いのが嫌という方には、紅茶とパンがあるけんね」
「甘いお酒がお好きとお伺いしました。こちらに桃を蜂蜜で漬けたお酒もご用意しておりますわ」
 ブーケとエリザベスが今度は甘さで娘たちを誘う。
 きゃあきゃあ、と食事を楽しむ娘たち。其れを見て、矢張り女の子は笑顔が良い、と史之は思う。涙を食べる波神様とは相いれないだろうなあ、とも思うけれど、其処はまあ、置いておいて。これは月餅も要りそうだ、と腕をまくり、調理を始める。バトラーは迎えた客人の為に、腕を振るう事を惜しまないのだ。其れが大切に思うあの人の領地であれば、尚更。
「紅茶にね、お酒とジャムを入れるんよ。甘いんじゃなくて、ちょっぴり辛い奴」
 ブーケが用意した紅茶に、いちごジャムと蒸留酒を入れる。其れは多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけない。寒い地方に伝わる飲み方なのだと、ウィンクを一つ。
「こちらは村秘蔵のお酒でございます。娘様方の中には、嗜んだ方もおられるのでは」
 エリザベスが問うと、飲んだことあるー! と手を挙げる娘がちらほら。喜色を浮かべているので、確かに彼女たちの好物なのだろう。
「女子会はお酒で乾杯してからが本番でございます」
 何故か男装したエリザベスが、酒のグラスを娘たちに配る。ブーケもティーカップの並んだトレイを持ち歩き、希望する娘たちに配り歩いた。その後ろをレーゲンが歩き、パンと小分けにした料理を配る。
『ねえ、パンはさっき焼いてたのを見たけど、この料理は?』
「それは村人さんからの感謝の証っきゅ! 前日に頼んで作って貰ったんだっきゅ!」
『えっ……何それ、エモい……』
 ほろり、と泣く娘。さっとレイニが貝殻の受け皿で、彼女の涙を受け止めた。

「――ていうかよ」
 和気藹々と宴会ムード漂うなか、貧乏ゆすりをしているカイト。
「どうした? さっきから緊張したような風だが」
 イーゼルを組み立て、大き目のキャンバスを置きながらベルナルドが不思議そうに。紅茶(お酒なし)をお裾分けしてもらって美味しく飲んでいたワモンも不思議そうに、彼を見る。
「だってよォ。女子会だろ……? 其の、秘密の花園ってやつじゃないのか!?」
「ヒミツノハナゾノ? そうなのか?」
「はは、そんな事を気にしていたのか。ワモン、これは秘密でも何でもないぞ。ただの宴会だ。楽しくみんなで食べたり飲んだりするんだ」
「そうなのか! カイトは気にしすぎなんだな!」
「いや別に、良いなら良いんだけどよ……」
 彼が緊張するのも無理はない。お酒と料理で程よく空気がこなれて来た頃合いを見計らい、涙を誘う話をしなければならないのだ。しかし海の男には度胸がなくちゃいかん。
「カイトがきんちょうするなら、オイラが先にお話するぜ?」
「ん? ああ……じゃあそうして貰うか。わりィな、ワモン」
「いいってことよ!」



「っはあ! 間に合った!」
 ぱっと茂みをかき分けてフランが現れた頃には、すっかり場の空気はどんちゃん騒ぎになっていた。
 ベルナルドが村の風景を描き、幸せそうな村人たちを描くのを見つめている集団。史之にデザートのお代わりを要求する集団。お酒をサーブするエリザベスと、料理を配るレーゼン。其れを見守るブーケ。
「間に合った!?」
「おう、ちょうどオイラが泣けるはなしをするところだぜ!」
 ぴょこ、と片手を挙げてワモンがフランを呼び寄せる。フランは持っていたものをウエストポーチに素早く仕舞うと、其の輪の中に入った。金髪の美しい娘――リーダー役だろうか――に笑いかけられ、どきりとする。
『体調はよくなった?』
「え!? あ、うん! だいじょぶ! だいじょぶ、だいじょぶ!」
『そう、なら良いのよ。ワモン、さあ、話をして頂戴な』
『ワモンくんのお話ききたーい!』
『かわいい~!』
「おう! じゃあオイラが超泣けるはなしをしてやるぜ!」

 タイトルは「マッチョ売りの少女」。
 シャイネンナハトの夜、一人の少女が道行く人たちにマッチョを売ろうと声をかけていました。
 ――マッチョはいりませんか?
 けれど、誰も買ってくれません。このままマッチョが売れないと、お父さんに怒られてしまいます。
 そうしているうちにも時間はすぎ、一生懸命に売ろうとしても、マッチョは売れません。
 少女はとうとう、空腹と寒さで倒れてしまいます。
 寒い……このままでは死んでしまう……そうだ、マッチョを使って温まろう……
 少女は勢いよくマッチョを壁にこすりつけました。するとマッチョは勢いよく燃え上がり――炎の中に、美味しそうなお肉が見えました。少女が思わず手を伸ばすと……なんと、驚くべきことに其のお肉は本物だったのです。
 こすられたマッチョが最後の力をふりしぼり、少女の為にお肉となったのです。
 其のお肉を食べた少女はマッチョとなり、この煌く聖夜を乗り切ったのでした。

「うう、マッチョ……話してるオイラが泣けてきちまうぜ……!」
『ま、マッチョ~~!!』
『娘の為に力を使うなんて、健気……!』
 お酒の力ってすごい。そう思うイレギュラーズであった。ころんころん、娘たちのかんばせを転がり落ちる雫。極彩色の球となり、レイニの受け皿に落ちる。
『わたし、今度マッチョ売りの少女が来たら絶対マッチョ買う!』
「おう、そうしてくれ! オイラもマッチョの精神を見習いたいぜ!」
「……俺、この後に話をするのか……」
「頑張れ、カイト」
「カイト様のお話、楽しみですわね」
「マッチョも良い話だけど、どんな話が出て来るのかな!」
 猟師には度胸が(略)。マッチョの余韻から覚める頃合いを見計らって、カイトは語り出す。

 水面を境に、向かい合うばかり。触れる事も出来ぬのに惹かれあう男と女がいた。
 ある日、もう来れないのだという男に、女は逆さ周りの銀時計を渡す。
 そして時は経ち、男は老人となった。そして青年に託した、銀時計。
 海へ返してくれ。
 その願いを叶えるために、青年と船は星満ちる海へと漕ぎ出す。くるり、回る感覚。すべてが裏返り、ああ此処だ、と確信した青年が銀時計を沈めると――幼い少女が水面を駆け、若い男と共に鏡海の底へと消えて行った。
 不思議な体験を経て、帰ってきた青年。老人を訪ねると返事はなく、幸せそうな顔で永遠の眠りについていた。

「……ってェ話だ」
 沈黙が降りる。せっせ、とレイニが動き回っている。娘たちはほろほろと泣き崩れていた。
『う、海ネタは卑怯だわ~! そうなのよ! 私たちが恋をしても、寿命が邪魔をするのー!』
『ううっうぐっ、しあ、しあわせになってよかったねえっううっ』
「幻想的なお話ですわね」
「すごーい! じゃあこの流れに乗ってあたしもお配りするね!」
 ウエストポーチから持ってきたカードを取り出すと、海の娘たちに配るフラン。“いつもありがとう”“涙は大切に保管しています”……などなど、書かれたメッセージに首を傾げる娘たち。
「其れはね、村の人たちに書いて貰ったメッセージカードだよ! 今まで沢山感謝してる分をちょっとでも伝えるお手伝いが出来たらなって!」
『まあ、……そうなの』
『うわーん! こんな畳みかけられて泣かない方がおかしいよ~!』
『こっちこそ、波神様が穏やかだから自由に遊べて……ううっ』
「何回でも読めるように、あとでボトルに詰めて渡すね!」
『ありがとう。……ところでベルナルド、貴方はさっきから何を描いていたの?』
『そうそう! 村の人たちとか書いてたよね!』
 大事にメッセージカードを持ったまま、ベルナルドの傍にあるキャンバスに釘付けになる娘たち。ベルナルドは少し待っててくれ、と言い、キャンバスに向かう。
 暫し沈黙が降りる。其れは話し飽いて訪れる、心地の良い沈黙。出来た、とベルナルドが呟く。其処には、陸と海。陸には村人、海には娘たち。
『……』
「この絵を市井に出して、君たちの事を知ってもらうのと……村との絆を感じて貰えればいいなと思ったんだ。今の時間と平穏は、君たちや村人のご先祖が代々守ってきたものだからな」
『……そう。この絵は、なんといえばいいのか判らないけれど……』
 すごく、素敵ね。
 そう言って、レイニが一筋涙を流した。 ころん、極彩色がまた一つ。

 宴が終わっても、イレギュラーズの仕事は終わらない。
 村人たちへのレーゲンによる教導や、ベルナルドの絵を画界へ広める事。まだまだ任務は残っているが――今はただ、宴の陽気に酔いしれていよう。
 辛い料理で泣き、甘いデザートで笑い。パンの想いで泣いて、酒と紅茶で笑うのだ。
 イレギュラーズも海の娘も、皆笑顔。嬉し涙がたくさん流れて、極彩色に夜を彩る。
 夜は更けていく。笑い声と内緒話、かしましい声に歌声まで混ぜながら。
 ――どっとはらい。

成否

成功

MVP

秋宮・史之(p3p002233)
女王忠節

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした!
 皆さんのプレイング、とても楽しく読ませて頂きました!
 ああ、こういう方法もあるんだなあと、予想を超えて来る皆さんのアイデア! すごい!
 MVPは名シェフ……ならぬ名バトラー、秋宮さんに差し上げます!
 ご参加ありがとうございました!

PAGETOP