シナリオ詳細
海洋近海掃海運動ご助力のお願い
オープニング
●オフシーズンの海洋
春の半ばへと差し掛かったこの頃のこと。
海洋の首都リッツパークの港に、多くの船舶が並んだ。
シーズンにはまだ早い――オフシーズンな海洋で何が行われるのかと言えば、それはシーズンに向けた準備に他ならない。
「野郎共ォ! 準備はいいかぁ!?」
「アイサー! どこもバッチリでさぁ!」
野太い声で船員をまとめ上げる船長に、忙しく動き回る船員達。その様子は荒々しく、ただの漁では見られないような重装備だ。
海洋近海掃海運動。
それは迫るシーズンに向けた準備。海洋近海に漂う危険なゴミや、大小問わず跋扈する海の魔物の掃除を、国を挙げて行う運動だ。
夏のバカンスへと誘う為には、こうした安心安全に配慮した運動が重要であり、それによって多くの利益を生み出すことから、例年の恒例行事となっていた。
今年もまた、多くの船舶が参加し、より大物――のゴミや魔物――を仕留めたと競い合うことだろう。
「野郎共ォ! 出港だァ!!」
「アイサー!」
帆が張り、風を受け船舶が一斉に動き出す。
冬の荒々しい波は落ち着き、やや冷たいながらも穏やかな波を切り、近海へと向け出港する。
その中には、我等がイレギュラーズの姿も見受けられるのだった。
●
「海洋近海掃海運動ご助力のお願い……?」
張り出された依頼書を眺めながら首を捻っていると、後ろから妖しい微笑みを浮かべ顔を覗き込んできた『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)と目が合った。
「ふふ、その依頼に目が行くなんて、さては貴方海洋でお仕事をしてみたいクチね」
そんなつもりがあったか、なかったかはともかく、多少なりとも気になるのは間違いない。
どんな依頼なのかと尋ねると、待ってましたと言わんばかりにメモ帳を開いてリリィがしゃべり出した。
「夏に向けて海洋近海の”危険”を無くそうという運動みたいね。
この場合の危険というのは、大型のゴミだったり、どこかの国が放流した機雷だったり、浜辺に出現しかねない海の魔物達等々。
とにかく夏の浜辺に出てこられると困るそんな奴等を片付けようってものみたい」
安心安全な海のバカンスを提供することで、観光客を楽しませお金を沢山使って貰おうということのようだが、なるほど海洋国家のシーズンに掛ける意気込みを感じる運動だ。
「特異運命座標ちゃんたちの存在もそこそこに知れてきて、その腕っ節も認められてる所、共に近海掃海を行ってさらなる交流を深めましょう、という意図もあるかもしれないわね。
ちなみに、お国からの依頼ということもあって、参加者は多いらしいわ」
国をあげての大運動。とはいえ、話を聞くに並大抵のものでは務まらない大変な作業のようだ。
「毎年結構な船が参加して、幾つもの船が沈んだり航行不能になったりするみたいね。多くは魔物に対処しきれずってことらしいから、油断しちゃ駄目なやつよ~」
クスクスとリリィが笑って、依頼書を掲示板から外すと、何やら書き込んでいく。
「はい。
参加するならこのメモを参考に、無事に帰ってきて頂戴。何だったら大物を仕留めて最優秀賞を狙ってみても良いかもね」
そんな賞があるのかどうかは不明だが、オフシーズンな海洋に行く機会でもある。
海の平和を守るというわけではないが、近海諸島を巡れば夏に遊びに行く場所の下見にもなるかもしれない。
色々と思案を浮かべつつ、ニコリと微笑むリリィから依頼書を受け取るのだった。
- 海洋近海掃海運動ご助力のお願い完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年05月24日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●掃海日和の大海原
晴れ渡る青空。青に煌めく大海原。
やや肌に冷たい潮風と波飛沫を感じながら、イレギュラーズは二隻の船に乗り込んで波を切り走っていた。
「遂にこのイベントの時期がやってきたのだわね!
今までは見ているばかりだったけど、今年は参加できるのだわね……楽しみなのだわ♪」
海洋出身だと言う『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は手を合わせニコニコと笑う。
海洋出身であれば、この行事は毎年の恒例だ。出港した船が、多くのゴミや獲物を持ち帰り、海を掃除してきたその光景を良く目にしたことだろう。
内容柄、それなりの腕っ節も求められる作業で有り、参加する機会は早々得られるものではないが、巡り巡ってローレットへ依頼として持ち込まれ参加出来たことは、華蓮に取ってみれば僥倖と言える。
「ふふふ、バッチリ掃除して海の安心・安全を守るのだわ!」
「ええ、夏になれば海洋には大勢の人がいらっしゃいますからね。やっぱり夏は海! ですものね」
別の船に乗っている華蓮の言葉が聞こえたように『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が頷き言う。訪れる人々が安全に楽しめるように、下準備はとても大事なことなのだ。
揺れる船の船首でビシッと指さしポーズを決めて、気取った優等生のように宣言する。
「そう、海の安全は、わたし、ココロが守ります!」
「……やる気があって大変よろしい。こりゃか弱いおっさんの出番はないねぇ」
うんうん、と頷きながら肩を揺らす『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)は、甲板に座り込んですでに休憩モードだ。
毎年の事とはいえ、この掃海運動実に肉体労働で在る事が知られている。
海洋に根を下ろす縁であればその事は良く承知であり、”か弱いおっさん”と自称する縁からすれば、その運動内容に一言苦言を漏らしたい所であった。
つまり、ゴミ拾いと魔物退治は分けてくれと。
「まったくだな! まあゴミの周りを魔物達が住処にしてるのかも知れないが、船乗り達の負担もかなりのものだぜ?」
乗り込む小型船『紅鷹丸』を操舵する『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)が相づちを打つと、縁はこの後の労力を想像し空を仰いだ。
「しっかし漁師としては全然オフシーズンじゃねーんだけどなあ……それで漁師の手が足らなくなってローレットに回ってきたか? うーん、ありえるな」
「……まあ、海の仕事が増えるのは良いことでごぜーますよ。
海はいつもお世話になっていますからね……日頃の感謝を込めてしっかりばっちり掃除していきましょう……ついでに海の邪魔者もです」
カイトの独り言を通信機で拾った『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)が、小型船『白夜壱号』を操舵しながら言う。
夏以外でローレットに海関係の仕事が回ってくることは、そう多くない。自らの力を十全に発揮できるこの機会は待ちに待ったものと言えるだろう。
「ええ、今日のこの運動は大事な準備です。治安がいいのは素晴らしいことですからね」
マリナに頷き返す『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)もまた海洋出身であり、本日の運動に対する意気は十分である。
波に揺られる船二隻。
近海諸島を通り過ぎ、目に映るは地平に広がる青き海。
「近海外縁ですの。ここまで来ると、そうゴミはほとんどありませんの」
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が海の中を覗き見て仲間に伝える。
掃海運動は近海に限定していることもあり、ここより先の外海に向かうメリットはあまりないだろう。
「それではこの辺りからゴミを拾いつつ戻りま……」
フロウがそう言って投げ網を持ち出そうとしたとき、不意に船が大きく揺れた。
「マリナ! 海中から何か来るぞ!」
「わかってるでごぜーますよ――!」
船を操舵するカイトとマリナが、海中より忍び来る巨大な影に対応し、船を走らせる。
巨大、そうとてつもなく巨大な影。
海の中を覗き見たノリアが、その正体を目にして、瞳を見開いた。
水柱が上がる。
幾つもの透明な触手が伸び、海面を叩く。その中央に大きく膨らんだ半透明のゼラチン質が姿を見せた。
「おー、でっかいクラゲ! でっかいクラゲ!」
『原始力』リナリナ(p3p006258)が言うように、それはクラゲに他ならない。他ならないのだが――あまりにも巨大。小型船などまるで一飲みできる極大サイズのクラゲに他ならない。
「こいつは……デスパラウゾンか……!」
記憶の片隅にあったその名前を呟く縁。
遥か外海に棲息し、あらゆる水棲生物を捕食する極大進化した魔物。遭遇したのならば気づかれないうちに逃げろと言う教えがあるが――
「放っておけば近海を荒らし回る可能性もありますね。
そうなっては大きな被害に繋がります。掃海運動とか関係なく放置はできません!」
ビシッとポーズをとって声高らかにココロが言う。
「そう言うことだな。しっかり掴まってろ! 少し荒っぽくいくぜ! 全速前進、でっかいクラゲをやっつけるぞ!」
持ち前の操船技術と風読みの力をもって、これに立ち向かおうとカイトが舵を取る。
「やるしかねーですね。こっちも援護に回るでごぜーますよ。
安心してくだせー、どうせ沈みません。海の男らしくちょっと荒々しくこっちもいきますよ」
「おぉー! 魔獣アスパラうどん!!
喰えるのか!? 喰えるのか!?」
リナリナのよく分からない名称が響く中、デスパラウゾン撃退戦が幕を開けた!
●大クラゲとの戦い
蠢く無数の触手が海面を叩き巨大な水柱を生み出していく。柱は波へと変わりイレギュラーズの乗る船を飲み込まんと波紋のように広がった。
ただそこにいるだけで、それは脅威となる。死の浮遊体(デスパラウゾン)は人の手にあまる極めて危険な海の危険災害と言ってよいだろう。
「でかいとは聞いていたが、一体何を食べたらここまででかくなるのやら……おちおちゴミも拾ってられねぇや」
海水の雨粒に目を細める縁。そう働く気はないものだが、サボっているのも印象が悪い。デスパラウゾンと派手にやり合うのは若手に任せるとして、間合いに入るまではそれらしく振る舞いたいところだが……デスパラウゾンはそれを許してはくれなさそうだった。
知性があるかどうかは不明だが、まるで波で遊ぶように触手を振り回し、潜っては浮かび上がるを繰り返すデスパラウゾン。好き勝手に暴れるその行動は予測不能で、対応が難しい。
「暴れすぎですの。あれじゃ船が近づくのも大変ですの。
わたしが囮役になって、まずは注意を引いてみますの」
被食者たるノリアは自らの利点を最大限に発揮するため、海に潜る。その巨大さ故にマーク・ブロックが機能するかはやや疑問だが、やらないでおく理由はない。ふしぎな貝殻を握りしめ、荒れる海の中をデスパラウゾン目がけて近づいていく。触手のジャングルを交い潜り、最接近すると、ノリアは身体に力を入れる。
(触手の根元の眼点――物を認識しているかは不明ですけど、もし見ているならこれをよく見るですの!)
マアナゴのレプトケファルス幼生であるノリアは、自らの尻尾をシェイプシフトで膨らませたり、細くしたりしてデスパラウゾンの気を引く。
そうして、まるでデスパラウゾンに気づいていないかのような、隙だらけな様子を見せる。稚魚を餌にする生物であれば、たまらず飛びつくに違いないものだ。
知性が無いように思われたデスパラウゾンだが、捕食者としての本能を刺激されたのだろう。このノリアの行動に即時反応を示す。
口柄に繋がる口が開き、口腕が蠢いてノリアを捕まえようと伸びていく。
「動きが止まりました。チャンスでごぜーます!」
食事に入ったデスパラウゾンが動きを止めたことで、海上で待ち構えていたイレギュラーズが一斉に攻撃に入る。
撃破を考える必要は無い。これ以上近海に侵入すれば痛い目に遭うということを分からせればいいのだ。
遠隔組を乗せたマリナは、近接組を乗せた『紅鷹丸』の位置を気にしながら攻撃レンジ内にデスパラウゾンを収めると、愛用の魔導銃を抜いて引き金を引いた。
海面に浮き出たゼラチン質の体表面に弾丸が突き刺さり、穿った穴を中心に凍結していく。
「とはいえ、巨大すぎて効果があるのか疑問符でごぜーますね……!」
「でかいって言ってもクラゲはクラゲだろう。
浮遊生物なら圧力を受けたままに進行方向変えるんじゃないか?」
そのカイトの考えは恐らく正しい。問題はそれを認識する圧力をイレギュラーズが出せるかどうかだ。
急がなければ、海の中のノリアが本当に捕食されてしまうかもしれない。短期決戦攻撃集中でこの極大生物を動かしてみせるしかないのだ。
船を操るカイトは操船をメインとしつつ、船をデスパラウゾンへと近づけて禽眼による蹴りを見舞う。
「さっさと終わらせて、陸でのんびり酒でも飲みたいんだがなぁ。……早いとこ倒れるか逃げちゃくれねぇかい?」
海面を叩こうという触手を手にした大盾で受け流し船を守る縁。やれやれと気怠そうに見せながらも肉薄し放つレジストクラッシュは確かな手応えと共にゼラチン質の傘を揺らす。
「十夜さん、カイトさんをお願いします! わたしはノリアさんを回復します!」
「か弱いおっさんはそう長くは持たねぇが……、仕方ないか、早いとこ頼むわ」
ココロは後を任せて海へと飛び込む。
少し潜ればノリアがデスパラウゾン口腕に掴まれながら、しかし必死の抵抗でデスパラウゾンを傷つけているのがわかる。
まさに捨て身の盾であるノリアは自らの体力と引き替えに大きなダメージを与えているのである。ココロはすぐさま治癒の魔力を編んで、ノリアの傷を癒やし時間稼ぎの猶予を増加させる。
「ヒトデ以外は怖くないからね! 来なさぁい!」
ココロに気づいたデスパラウゾンの触手が伸びる。帆立貝のディープシーであるココロにとって言葉通り天敵のヒトデ以外ならばそう怖い物ではないが、相手のサイズ感的に食べられてもおかしくはない。光輝の盾で触手から逃れながら、海面へと戻れば、巨大な傘へ向けてリリカルスターを放った。
「出し惜しみはなしです。――術式多重展開、連続解放!」
フロウもまた味方の攻撃に合わせて全力全開の攻撃へと移る。空間投影された魔方陣が回転し魔力を編めば、充填された魔力の塊が容赦の無い乱打となってデスパラウゾンの傘を揺らした。これには巨体を誇るデスパラウゾンもたまらず触手を振り乱して逃げようとする。
「自力で泳いで帰れる距離ではないので、お引き取り願います!」
暴れる触手がマリナの船を襲おうと迫る。マリナの加護によって船が沈むことはそうないはずだが――それは船の形が維持されていればの話だ。物理的に破壊され船の形を見失えばその保証は出来ないだろう。
瞬時に判断したフロウが触手へと接近し、銀に輝くスタータクトを振るえば、聖なる力を持った衝撃波が放たれ触手を打ち返す。
「たこ足! げそ足!」
弾かれた触手にしがみつき噛み付くリナリナ。しかしそれは期待した味を返すことなく――つまりとても不味かった。
「クラゲ食えない! 全く食えないゾッ!
刺激された食欲のぶつけ先が無いゾッ!!
酷い魔獣! 酷過ぎるマジュー!」
よほど美味しい物を想像していたのか、悲しみの涙目となったリナリナがジェットパックで姿勢制御を行い怒りの方向を上げた。
「むうぅぅ、リナリナ怒った! 怒った!
アスパラうどん死刑!! 死刑!!」
デスパラウゾンの傘の上、遥か上空へと飛び上がったリナリナがくるりと身体を回転させて反転、急降下する。
「コレは名前が美味そうだったカタキ! るらぁぁぁ~~!!」
デスパラウゾンの巨大な傘を揺らす、リナリナ怒りのダイナマイトキック。大きく傾いたデスパラウゾンが潜行していく。
「ほらほらこっちだわよ、かかってきなさいな! ……っと?」
海上に残った触手を、優れた防御技術で受け流し続けていた華蓮が、緩慢になった触手の動きに声をあげる。
「……逃げたのだわ。いえ、逃げたっていうより流れていった?」
「そうっぽいでごぜーますね。このまま近海から離れてって行ってくれれば良いのですが」
「あっ! そうだわ、ノリア!」
華蓮が気づいて海を覗き込むと、ココロがボロボロになったノリアを連れて海面に上がってきた。
「な、なんとか捕食されずに済んだのですの。生き残ったのですの」
「ああ、もうボロボロじゃないの! すぐ治すから船にあがりなさいな!」
傘に畳みかけたイレギュラーズの攻撃。そして海中でもノリアの水鉄砲が多くの圧力を与えた結果、その浮遊方向を変えてデスパラウゾンは去って行った。
一つの脅威が去ったことにホッとしつつ、イレギュラーズは被害の確認と治療補修を行うのだった。
●余力はあるか? ならばゴミ拾いだ!
「というわけで、相談の結果余力の或る限り掃海運動を継続することに決まったでごぜーますよ」
「力仕事は苦手なので大物は無理ですが……引き上げられそうなゴミくらいは拾っていきましょうか」
デスパラウゾンと遭遇した近海外縁はプランで言えばCであり、そこからネオフロンティアへ戻る道筋で辿れば近海諸島周辺での作業プランBを通り、ネオフロンティア周辺のプランAとなる。
プラン周辺の問題も把握しているので、無理はせずにゴミを集めようという方針だ。
「まずは近海諸島周辺に流れ着いたゴミと、セイレーンか。
セイレーンっていうと船乗りを誘惑して難破させたりって話だけど、それが合唱団組んでるって傍迷惑なもんだな」
「ま、ちょいと邪魔してやれば良いんじゃないかい。こっちも万全というわけじゃないしねぇ」
カイトが肩を竦め、縁がぼんやりと空を仰ぐ。疲労もそこそこ、本格的な戦闘はちょっと避けたい気分だ。
そうして波に揺られていれば、見えてきた近海諸島。
どこからともなく魅力的な歌が響いてきて、船を誘おうとする。周囲には難破した船の残骸や、どこからか流れ着いたゴミも増えてきた。
「それじゃゴミ拾い優先で、がんばりましょう!」
やっぱりビシッとポーズを決めたココロの声を合図に、プランB(ゴミ拾い優先)がスタートだ。
結果的に、ゴミ拾いは上々でそれなりの成果を得ることができた。フロウやココロといった水中親和のある二人が中心になってゴミを拾い、華蓮も空を飛んで効率敵に運べたと言えよう。
しかしやはりセイレーン十五体の相手をするのが厳しく、ここでも盾役となったノリアがセイレーンの歌に目を回し戦闘不能になると、イレギュラーズの被害も大きくなっていく。
「風も変わってきたな。無理せず撤退だ」
カイトの指示で近海諸島を離れていく。セイレーンを全滅させることは叶わなかったが、十分に損害を与えることが出来たはずだ。あとは他の参加者がきっとなんとかしてくれるだろう。
「さて、次はタマゴンでしたか。可愛い外見ながら凶悪な海獣でごぜーますが……」
「ちょいと手を出すのは厳しそうだな。これはゴミだけ拾ってって感じか。
珍味って聞いた気がするから食べて見たかったが――またの機会だな」
「やれやれ、もう一仕事あるのかい。そろそろ陸が恋しくなって来たんだがねぇ」
重く腰を下ろした縁のため息が蒼く晴れ渡る空へと登って消えた。
●掃海運動完了!
プランAでのゴミ拾いは中々にスリリングな経験となった。
「きゅきゅきゅーっ!」と可愛い鳴き声で凶悪に襲い来るコタマゴンとママタマゴンから逃げながら
兎に角ゴミを拾ってくると言う感じだ。
タマゴン周囲のゴミを少しばかり拾ったら、イレギュラーズは限界も近いということで戦術的撤退を見せたわけだが、その帰路で思いもがけない物と遭遇する。
「ゆ、幽霊船だ……!」
遠巻きに見てもわかる怪しげボロボロな帆船。目を凝らして見ればスケルトンパイレーツが獲物を狙って蠢いていた。
これはさすがに手が出せないと、遭遇した地点を記憶して、イレギュラーズは命辛々その場を後にした。君子危うきに近寄らず、だ。
その後はネオフロンティア港へと戻るだけである。イレギュラーズは平和な海に浮かんだゴミを回収しながら港へと進んだ。
途中、ココロが「トビンガルーの名前を付けたい!」と言って皆で命名大会が始まったりもした。『トビーン』『ぱらぞん』『ココガルー』などなど、自由気儘な名前が挙がったがココロが気に入った名前があったかどうかは本人のみぞ知ると言うところだろう。
そうして二隻のイレギュラーズの船は、多くのゴミと、魔物との戦い――その戦果を手にネオフロンティアの港へと帰ってきた。
日は傾き始め、ややオレンジに輝きだしたそんな頃、陸へと足をつけて大きく伸びをする。
「こんだけ働いたんだ、ちっと報酬を弾んでくれりゃ有難いんだがね」
口角を上げそういう縁は、我ながら実に働いたとゴミ処理場へと運ばれるゴミの山を見て言葉を零した。
最優秀賞とは行かなかったがイレギュラーズの活躍は十分すぎるものと言えただろう。
「さて、それじゃ一杯やるか!」
カイトの誘いに顔を綻ばせ、イレギュラーズは日が暮れだした港町へと繰り出すのだった。
掃海運動、お疲れ様でした!
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
掃海運動お疲れ様でした!
大物狙いからの余力を使ってゴミ拾いという作戦は十分な活躍をするに価するものでした。
全ルートを通ると幽霊船との遭遇が発生する仕組みでしたが、こっちはさすがに厳しいルートになってましたね。ただその遭遇ポイントを知れたことはとても大きかったです。
なんにしても掃海運動としては必要十分の働きが出来たのではないかなと思います。
MVPはその身を盾に多くの注意を引きつけたノリアさんへ贈ります。食べられないかハラハラしちゃいましたね。
依頼お疲れ様でした! ゆっくりお休み下さい!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
シーズンに向けた海の大掃除を致しましょう。
穏やかながら冷たい海上での大仕事です。
●依頼達成条件
いずれかの航海ルートを達成する。
■オプション
全ルート制覇
●情報確度
このシナリオの情報精度はBです。
情報に虚偽はありませんが、不測の事態が起こる可能性があります。
●航海ルートについて
この依頼ではゴミ拾いをしつつ魔物と戦って行きます。いずれかのルートを選びましょう。
航海ルートは船の進むルートとなりますが、ルートによって戦う魔物が異なります。
難易度はどのルートでも変わりませんが、全ルートを航行する場合に限り難易度が上昇します(想定外の敵との遭遇もあります)。
■プランA
・ゴミ拾いをしつつ、小型の魔物タマゴンベイビィを倒す。
キュートプリティな魔物タマゴンの子供が大量発生中。大きくなる前にそれらを殲滅して海の平和を取り戻そう。
プラン達成要件:タマゴンベイビィ二十体の撃破及びママタマゴン一体の撃破。
■プランB
・ゴミ拾いはほどほどに、船人を惑わすセイレーンの合唱団を壊滅。
近海諸島の東南の島にセイレーン達が集まり合唱団を作っているという。歌が始まれば多くの船が惑わされ沈められてしまうだろう。そうなる前に合唱団を壊滅させよう。
プラン達成要件:セイレーン十五体の撃破。
■プランC
・ゴミ拾いの場合じゃない! 大型の魔物デスパラウゾンを倒せ!
近海外縁にて遭遇した極大進化したクラゲ、デスパラウゾン。船ごと飲み込む痺れ触手に対処しながら、これを殲滅または近海より撤退させよ!
プラン達成要件:デスパラウゾンの撃破または、撤退させる。
●掃海艇について
イレギュラーズが持つ船舶も使用可能ですが、無くても貸し出される船舶があるので安心です。
但し貸し出し船舶には大した装備はありません。普通に航行できる程度です。
●戦闘地域について
海洋近海、船上及び海中での戦闘になります。
足場の不安定な船上、及び適正がなければ不自由な海中での戦闘となるでしょう。
場合によっては障害物もあるかもしれません。戦闘行動は、状況によりけり不自由になる場合もあります。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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