PandoraPartyProject

シナリオ詳細

炎の壁を乗り越えて征け

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●なぜ触らせたんだ!!
 練達のとある研究所で、事件は起きる。
 首都セフィロトに本部を持つその研究所では、所謂下請けの業務を主に行っていた。
 中小ギルド(企業)さながらの本部から次々に押し付けられる注文、人員不足を補う前に完了してしまう現場の人間達の有能さが日々アダとなり続けている。
 労働と研究の回し車は止まらない。そんな地獄へ現れたのが本部(天国)からの使者であった。
 首都セフィロトの超技術に慣れ切った上層の人間は研究員達の日々の努力を讃え、同時に現場を引っ掻き回して行く。
 最終的に現場の人間は散々引っ掻き回されながらも上の人間が示した業務を果たし、再び終わり無き研究の沼に沈むのだろう。
 しかし、そういった様式美は今回だけ果たされなかった。

「マトリックスの不調? どこぞの旧式を弄り回すからエラーを吐くブルースクリーンなんか作り出すんですよ」
「いえ、こちらは本部から支給された精神エネルギーをアダプターで変換していてですね」
「大丈夫。俺の世界にだってフルダイブコンピュータはありましたよ、こんなのとは比較にならない程巨大なサーバーのね……」
 旅人だったのであろう、上層部の研究員はシステムだけでなく機材の殆どが現場の人間達に最適化されている事を忘れ弄り回す。
 それを止められなかった研究員に非は無い。何故なら相手は確かに天才のそれである、手を出す方が無粋だと心得ていたのだ。
 ところが。
「主任!! あれ、なんかヤバいの起動してます! コード8031、最終段階のファイヤーウォールが全データを焼き始めてます!!」
「嘘ォォン!? ちょ、待って待って。一旦シークエンスを……」
「大丈夫ですよこのくらい。ほらこれで何とかなるでしょう」
 ポチッとした音が鳴り、次いで研究員達の悲鳴が轟いた。
「主任!! ファイヤーウォールがなんか、今月の提出用ファイルとか研究資料を根こそぎ焼いてますけどォッ!?」
「ウアアアアアアア!!」

●難しい言葉は不要
 『完璧なオペレーター』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)が食事している横で、イレギュラーズは二人の貴族を前にしていた。
 彼等は幻想で主に商会を営むと同時に練達から貴重な珍品を扱っていた。
 そんな練達のとある研究所を懇意にしているのだと言う彼等は、先日練達から救援の報せを受けたらしい。
「我々も最近は執務が溜まっていてね、温泉巡りにうつつを抜かすモノではないな」
「いや、正しく。それはそうと正直言ってお手上げでね、私達も手が回らない身で特に何か伝手があるわけでもない。
 そこで君達ローレットの特異運命座標に依頼したい。練達へ赴き、研究所を救ってやって欲しいんだ」
 優雅に紅茶を一口。素敵な三色サンドイッチをむしゃりと、ミーティングしている横でミリタリアは食事を続けていた。

「難しい事は知らないが、話に聞けばブレインストロー研究所では精神力を基に仮想の世界へ
 自分の分身を作り動かせるとか、現実では体験出来ない行動を可能にしたり体験出来るらしい。
 どうにも……彼の研究所でそういった事象を可能とする機械が破壊の危機にあるらしいのだ」
 貴族の男は溜息交じりに頭を振る。
「詳しい事は現地で聞いた方が早いのだろうが、向こうからのオーダーは『ファイヤーウォールの撃破』との事だ。
 そう、“敵”が存在するらしい。明確に君達に襲い掛かる上に物理的に干渉して来る敵だ」
 苦悶の声に続いて咽る音。ミリタリアが丁度話し合っていた机上へ打ち上げられたマグロの如く飛び込んで来る。
 イレギュラーズは真剣な表情で訊ねた。
「その言い方、まさか現実で戦う相手じゃないのか……?」
「いやその通り。言い忘れていたね」
 貴族の男は懐からハンカチを取り出してミリタリアを横にずらした。

「君達には仮想空間へ潜り、増え続ける人型セキュリティシステムを殲滅して貰いたい」

GMコメント

 無双の真髄とは浪漫に在り――故・ムソウシュタイン。

 以下情報。

●依頼成功条件
 敵勢力の殲滅

●情報精度A
 不測の事態は発生しません。

●ステージNo.200748『近代都市』
 ロケーションとなるのは、超高層ビルが無数に並び立つ都市街になります。
 中央には高度約600mの紅い巨大電波塔が存在しており、この根元に皆様の姿とステータス等能力を模したアバターを転送。作戦を開始します。
 電波塔根元の外周は320m程度。周囲40m地点には時計の様に等間隔で12カ所方向、高度20mのビルが並んでいます。
 これらを中心に周囲700mに渡って無人の繁華街等が広がっていると皆様は事前に説明を受けます。
 大変広大ですが、特に探索や敵の逃走を考慮する必要は無いと思われますので何となくそういう都市なのだと頭に入れて貰えればと思います。
 ここで、全方向から敵が皆様の初期位置となる電波塔の破壊を狙って押し寄せてきます。

●ファイヤーウォール『FW-BERSERK』
 通称FW。練達首都に存在する中規模研究機関ブレインストローが機関のデータ保護に用いている独自のセキュリティシステム、要するに仮想空間の警備隊と説明されます。
 細かな機能は機密として教えられないと念を押されています。
 何らかのバグに無茶な動作が加わって暴走しており、研究所内のあらゆるデータを破壊して回っているようです。

 FWは次に上記ロケーションの都市で人型の大柄男性の姿となって仮想空間内のデータベースをアバター化した電波塔を破壊しに来ます。
 その数は作戦開始(皆様が仮想空間にダイブ後)時点で30。
 以降5T毎に12体ずつ中央電波塔から80m離れた地点で増殖しています。増殖は都市内に一体でも残っていると行われます。
 彼等は単騎の戦闘力は動きこそ派手ではあるものの非常に脆く、非力であるとされますので(想定として人間種一般市民Lv1以下)環境や地形を利用する事で優勢を保ち、これらを一体も残さず撃破して下さい。

 ・【格闘】至/近/物単
 ・【銃撃】近/中/物単
 ・【集団突撃※】物特特……(レンジ2以内の味方5人で㏋全損する代わりに中威力の扇攻撃)

☆仮想空間へのダイブにあたっての支援
 研究所からは皆様のダイブ時にある程度の物理・神秘の数値上昇操作が行われる他、各行動・機動・耐久値等にバフが乗せられるので
 非力な貴方もパワフルな貴女も取りあえず目の前の敵を殴れば吹っ飛び、何か避けようと思えばいつもより避けられるかもしれません。

 尚、アバターはあくまで皆様の元々の容姿に基づいた姿になります。

 以上。ちくわブレードですよろしくお願いします。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • 炎の壁を乗り越えて征け 完了
  • GM名ちくわブレード
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月14日 22時00分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
リジア(p3p002864)
Esc-key
アマリリス(p3p004731)
天義の守護騎士
ロク(p3p005176)
クソ犬
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女

リプレイ

●難しそうでフワッとした超技術の話
「電脳ダイブとか超久し振り過ぎて、やり方を忘れてしまっているかもしれませんわね。
 接続は有線? 無線? わたくしの自慢のダイヤルアップ接続が唸りを上げそうでドキドキですわ」
 上下左右全てが何らかの機材とそれから伸びる電線コードの類で埋め尽くされた空間。
 そこへ案内された『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)が熱暴走さながらトゥルルルしている横で、イレギュラーズ達は寝台装置を前に待機していた。
 暫くの後に現れた依頼人、主任研究者がそこへ横たわる様に指示する。
「すまないな、電脳空間もとい仮想世界へ入って戦って貰う事になるとは君達も思わなかったろう」
「むむ、電脳世界ですか。ネメシスにいたらあまり触れない類のものですね」
「肉体と乖離して潜るのは気味が悪いだろうが、我慢してくれるとありがたい」
「とんでもない、大変興味があります! とても便利で素晴らしいものだと聞いておりますので、壊されないようにお力添えしたいと思います」
 『天義の守護騎士』アマリリス(p3p004731)の聖女の様な微笑みを前に。次の瞬間、主任は涙した。
「!?」
「うっ、ぐ……すまない取り乱して……僕の上司が、研究所のシステムをもうなんかよくわからない凄い技術でFWを暴走させやがったせいで……」
「FWが暴走してデータ破壊に走るだなんて、初耳ですね……ウィルス化していませんか、それ」
 呆れた様に『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が言った。
 しかし主任は首を振る。
「してないんだよこれが……それが今回君達に潜って貰う理由だ。
 セキュリティのシグナルタグがそのままなせいで、これを迎撃する新たなソフトが『敵対象』として反応してくれないんだ。レーダーが使えないのはこれのせいでもある」
「大チョンボやらかす輩は迷惑じゃのう……」
 『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)が硬い寝台で足をぱたつかせる。
「強力過ぎるセキュリティも考えものですわね。今回の事件を機に設計を見直されては?」
「耳が痛い。練達の犯罪者にはハッカーもいるから強力にしてたんだ、そもそも暴走するとか有り得ない筈だったんだ……」
 次第に装置から蛍光色の光が溢れ始める中、主任は手元のモニターを指差した。
「チャットは無いが、現実世界から繋げた通信チャンネルを利用して役立ててほしい。
 戦闘が始まればこっちの体感速度じゃ指示まで出せないから……ん?」
 不意に肩を叩かれた主任が振り返る。
「勿論この美しく気高きコヨーテ様のアバターにもバフはかけてくれてるんだよねェ!」
「ぁ……ああ、要望通り間に合わせたので楽しみにしていてくれ」
「ワフーゥ! やったね!」
 『クソ犬』ロク(p3p005176)に頷いた主任は目を逸らした。
「……ところで、私の申請した仕様はどのように?」
「ツグミ氏のならば滞りなく、だが代わりに君は僅かな機動力を除いて他は通常ステータスとなる。構わないかい」
「数で負けている訳ですからね。少しでも多くの手数が欲しいです」
 目を閉じたままそう言った彼女に主任は「頼もしいよ」とサムズアップして装置を操作する。

 それぞれの意識が不思議な感覚と共に遠のいていく最中、主任は最後にポツリと。
「……ちなみにその装置でフルダイブしている君達はこちらで作製したアバターとはいえ、内部で手酷いダメージを受けると相応の負荷が全身にかかるので気を付けてね」
「オイ待てコラそれ先に言……ッ!」
 文句を言おうとする記憶ごとその声は途切れるのだった。

●幻想と混沌の狭間
 音と光の無い静寂。
 重力を感じず、水の中に居る様な冷えた暗闇を見た。
 暫くして現実とは異なる空間で覚醒した彼等は、唐突に感じる重力に従い一歩踏み出し。或いは後退った。
「うおおお!? なんだこれ!」
 雲一つ無い空の下、『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)の第一声がそれであった。
 頭上に伸びる超高層建造物を見上げ、自身の身体を触れて確かめるその姿。
 一同の視界端に映るウインドウ越しに見守る主任達を大いに満足させる反応となる。
「おお、これがさいばぁとやらの世界か、わくわくするのぅ」
「サイバーな感じって心が踊るな。この仮想空間に入るとちょっと強くなるらしいし? 最高だな」
「アレか……ソードアートみたいな……元の世界にいたら絶対体験できなかったろうな……流石練達だ」
 同じく身体の調子を確かめながら周囲を見渡す『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)に続き、クラウジアもまた普段目にしている世界とは異なる質感の景色に胸を躍らせていた。
 練達に馴染無い者、そも科学に触れる機会の少なかった者。ただでさえ珍しいフルダイブ技術ともなれば、興奮の色を示すのも当然である。
 そして触れた事のある者ならば。
「仮想世界にダイブ……前にも何回かやってるけど楽しいよねコレ! 練達ならではの遊び! こんな楽しいことができなくなるなんて絶対にだめだよ! データベースは守らなきゃ!」
「これほど素晴らしい物を創るお仕事なら、それだけ大変でしょう。
 この世界やその基盤であるデータを壊されてしまったらきっと、夜中の残業が増えて心が沈んでしまうに違いありません!
 別の国の民の命さえ、守らなければなにが騎士か!」
 自分はネメシスの騎士だけど、私の神様は隣人さえ愛せと教える神様だからだとアマリリスは強く頷いた。 
 そんな二人の言葉を聞いたウインドウ越しの研究者達が一斉に崩れ落ちた。
 特に琴線に触れたのだろう、エナジードリンクの山に頭を突っ込んで号泣している主任の声がイレギュラーズの脳内に響いて来る。

【あー、主任はちょっとログアウトしましたんで下っ端の私がオペレーターを務めますね。
 現在皆さんがいるのが電波塔の根元になります。ぶっちゃけそれが破壊されると主任また泣いちゃうんでホント頑張って下さい】
 ウインドウが切り替わり頭を下げる若い研究員が手を合わせる。
 それぞれ頷き。電波塔を背にして散開して行った。
 その中で一人。光の残滓を散らして上昇して行く天使の姿が、周囲の近代的な都市と対比してより鮮明に映って見えた。
 『Esc-key』リジア(p3p002864)は辺り一帯に広がる光景に細かい部分は異なるも懐かしさを覚えながら。しかし全ては仮想の物であると理解し、目を伏せた。
「しかし、こうした光景をここで見ることになるとはな……作ったものに興味はあるが、秘密、だったか。残念だ」
 こうした景色が人の手で作られているのは何時もと変わらず。
 そしてまた、仕事が破壊する事なのも何時も通りだった。

 一方で。
「ねえねえエリザベスさん、わたしのアバターどう? 強くて美しくて賢いコヨーテ様に見える?」
「そうでございますねぇ。一言で言えばモデルのよう。
 見違えるようにフサフサの美しい毛並みになっていますし、お顔もシュッとしてて、足も細く逞しくなっておりますわね」
「だよね!! 賢狼コヨーテ、ロク様の誕生だよ!!」
「しかし総合的に見てそのお姿は耳以外アフガンハウンドでは?」
「えっ」

●CHAIN BATTLE
 かくして、その時は来た。
【サーバーダウン確認! FW、No.200748へ侵入。システムエラー確認、最終防壁……突破された! 皆さん、来ます!】
 研究員の声が響いた直後。
 それまで雲一つなかった空に亀裂が走り、彼等には認知しようの無い何かが音を立てて破壊される。
 しかしそれによって生じる崩壊は不可視の法則が停止させる。直後に降り注いだ朱い粒子は渦を巻き、霧散した。
「エフェクトが派手ですわね」
【え、まだ何も映ってないみたいですけど……?】
 エリザベスの呟きに研究員の訝しむ声が聴こえる。どうやら仮想空間内にいるイレギュラーズにしか見えない物があるようだった。
「大事なのは電波塔だけか? ほかはぶっ壊しても怒られない?」
「タワーさえ無事なら問題無いそうじゃが」
 クラウジアがペッカートに応える。
 その際、遠くでアランが思わず周りを見回していた。どうにも頭の中で反響する通信は慣れない様だった。
 だが、慣れずとも”忘れる”事は容易だ。
「――来やがったな。
 さぁ来いよ……炎の壁ってんなら、俺を燃やし尽くしてから行け!!」
 霧散した朱い粒子が集い、形作った人形。北側へ駆けていたアランの向かう先にあるビルの上から跳躍して来たその影を真っ向から迎え撃った。
 閃光。背中から抜刀と同時に放った光芒が宙を滑り来る一体を消し飛ばす。
「……!」
 アランの眼前で驚いたように首を傾げたその影は、着地と同時に彼の横を走り抜けようとした。
 アバターの構築を終えたのだろう、見ればその姿は屈強な黒スーツの男性型へと変貌を遂げていた。
 振り抜いた大剣が光の残滓を散らす。
 石畳が踏み砕かれた直後、カクンと直角にターンしたアランが黒スーツ達の背中を捉え、瞬時に蹴り飛ばしたコンクリート片で打ち抜いた。
「そのグラサン取れよ……次俺を無視したら頭から真っ二つにすんぞ」
「……」
 黒スーツが振り向くも、そこにアランはいない。それが頭上を飛び越えて回り込んだのだと理解した無機質な人形達は、応じる様に懐から拳銃を取り出した。

 通信越しに鳴り響く銃声。
「でもこのグラサン、取れないけどね! なんでだろう?」
「アバターですからねぇ。同じ原理でアラン様のお帽子も逆立ちしても脱げないのでは」
 美しき長い被毛を風に乗せて、ロクが大きく息を吸った。
 天を仰いで挙げる咆哮。まるでオルガンパイプの音色そのままかのような遠吠えが衝撃波となり、黒スーツ達を正面から打ち据えた所へエリザベスが放った魔力の砲撃が薙ぎ払った。
「わたしの声ヘン!! 主任さーん! 今なんかわたしの声おかしかったんだけど!!」
【あ、遠吠えのプログラミングしたのオレっす。綺麗な音色の方が喜ぶかなって】
「わたしの声綺麗だった?」
「それはもう。アンティークのオルガンなんて目じゃないと思いますわ」
「さっきから通信越しにすんごい音出してたのそっちかの」
 電波塔へ向かわせまいと動くにつれ、エリザベスがクラウジアの隣へ移動する。
 そこには、マジックミサイルを放ちながら後退する少女の姿。
「むくつけき屈強な男が襲ってくるとか、その、あれじゃ、どんびきじゃぁ」
 こんなちっちゃい小娘に襲い掛かるとは、と半ば呆れた様に言い捨てる彼女。
 隙を突いた不意の銃弾が肢体を強かに打つも、追撃をステップで躱した魔女がその手を振り抜いて光弾を放つ。
 錐揉みして吹き飛んだ敵の肩を足場に飛び込む黒スーツ、迫る貫き手の攻撃を身捻っていなしたクラウジア。その刹那、突如瞬いて横から殺到した極太の光線が黒スーツ達をまとめて薙ぎ払ったのだった。
「なるほど。身体が軽くなるだけじゃない様でございますね」
 先程から上手く当たるエリザベス砲に微かな快感を覚えたエリザベスがドヤ顔で背を大きく反らしてポーズを決める。
 能力の上昇。機動力の上昇に伴い各射撃の精度すら変わる事に気付いた彼女は通信でそれを伝えた。
「現実で絶好調な時よりイイ感じだと思ってたら、なるほどな!」
 電波塔南から繁華街に差し掛かる十字路を二色の軌跡が奔る。
 心底愉快そうに町並みへ目を移しながら、バルコニーを足場に跳ぶペッカートが小気味良くブーツの踵を鳴らす。
 地上に転がる白く凍り付いた残骸達はいずれも黒スーツだったものだ。
「……!」
 大気を叩く重い炸裂音。花火の様に弾かれた銃撃を金色の瞳が一瞥し、返す様に一閃、描かれた破壊のルーンから雹が辺りに吹き荒んだ。
「……~~!?」
 横殴りの暴風と礫に足を止められたか、氷結した脚を見てから黒スーツは上を見上げる。
「プログラムごとフリーズさせてやるよ」
【今超コワイ単語聴こえたんだけど誰っすか言ったの!?】
 研究員の悲鳴などおかまいなしに繁華街へ叩き付けられた氷塊は弾幕にも等しい殲滅力を発揮するのだった。
 時折響くフリーズの言葉に研究員達が不安気に辺りを見回していたのだが。それはそれである。

 持ち場の敵を一掃したアランが視界の端を抜けた影を追う。
「オラァ待てやコラァ!!!」
 一条の光芒が黒スーツを射抜く。
 しかしその傍らを並走していた一体はそのままアランを振り切り、射程外へ逃れつつ電波塔へと接近して行ってしまう。
「させるか!!」
 鋭い一声。石畳を踏み砕いて一直線に黒スーツの男にアマリリスが肉薄する。
 銃口が端麗な顔立ちに突き付けられる。だが紅い瞳を一切揺らさず瞬かせた彼女は、その瞳と同じ色のマントを翻して光輝燦然と背から光翼を爆発させた。
 音も無くアマリリスを包み込んだ光刃はしかしその身を傷付けず。一種の繭の様に、全方位へ幾重にも重なった慈愛の斬撃が蹂躙する。
「――――!!」
 引き金を絞る間もなく引き裂かれた黒スーツは朱い粒子となって消滅した。
 地を滑る様に着地したアマリリスがアランへ目配せして「問題無い」と伝えると、元いた配置へと駆けて行く。
「ふぅ、バフの恩恵あれど油断は出来ませんね……敵残基はどうなっているのでしょう」
「アマリリス様達の方はクリアでございますねぇ。かくいうこちらも同じく、ですので現在はお隣さんのクラウジア様の方をお手伝いしてますわ」
 通信で入るエリザベスからの報せ。
 この電波塔の周囲を上空から俯瞰させている彼女のファミリアーが各々の状況を確認しているようだ。
 戦闘開始からまだ僅か数十秒。一分に満たぬ間でどれだけ減らせたのか。
「……あ、これはもうすぐ終わりそうでございますわね」
「あいたぁ! ちょ、研究員さーん! 足の裏の毛までフッサフサだから滑るんだけど!! ワン!!」
 ロクの怒りの一声が通信で繋がる一同を揺さぶるが、その一方で首を傾げる。
 もうすぐ終わる、とは。

 ──────
 ────
 ──
 ロクの気品溢れるエレガントシュートを食らって吹っ飛んで行く黒スーツを脇目に。
 飛び交う銃弾を尽く『破壊』するリジアの瞳が星空を映す。青白い光翼が羽ばたくその瞬間、無数の紋様が彼女の背から伸びて空間に軋みを齎した。
 普段と様相の異なる虚無の翼華、しかしリジアはそれも致し方無しと頷く。
「……如何に、仮想だとしても……例外なく崩壊を成す花を形作ることはできない、か」
 直後、FWが舞い降りた際に生じた破砕に近い衝撃の奔流がリジアの眼前に溢れ出した。
「……!」
「!!……!?……」
 二次元的破壊。
 空間というより、景色そのものを割った衝撃は容易く黒スーツ達を纏めて薙ぎ払って見せつける。
「……む」
 一瞬全滅させた様に思えたが。
 見れば、運良く生き延びた黒スーツが一体、繁華街の陰や障害物を縫うように移動して他の黒スーツと合流しているのが垣間見えた。
「そちらへ後退したようだ、鶫」
 上空へと昇りながら通信ウインドウへ語りかける。返答は無い。
 代わりに聴こえたのは複数の銃声が轟く音だった。

 ───ッ!!
 電磁加速と共に生じたプラズマが空気中に奔った刹那。
 爆ぜる様に射出された重金属弾頭が微かな軌跡を描いて大気の壁を破る衝撃音。超遠距離から瞬時に目標へ到達した瞬間、人型だったであろう残骸が繁華街特有のカラフルな石畳へ撒き散らされる。
 視点が変わる。
 近場の壁を蹴りつけて手近な屋根上へ飛び乗った鶫が耳鳴りがするほどの静寂の中を駆け抜けて行く。
 目を落とさずに次弾の装填を終えたコンバットメイドは。果たして人を超えた軽業を駆使して一気に移動、そして砲口を、先の一撃とは別角度となる位置から構えた。
 引き金を絞る感触すら煩わしい。
(なんて動き難い)
 再度行われる精密射撃。
 十字を描くように宙に引かれた白い軌跡に従い、瞬く間に三体の黒スーツ達が射抜かれ散って行った。
 通信から聴こえて来るリジアの声に微かに獣耳を反応させた鶫は視線を巡らせる。
 その時丁度、彼女とリジアの位置の中間を抜けようとする影を見つけた。
(ですが、些細な煩わしさに目を瞑れば充分手は足りますか……)
 鶫は着地と同時に水銀灯を、バルコニーを、或いは看板、屋根へと。次々と足場にして跳躍する。
 アタッチメントを用いるまでもない。彼女は視界に映った黒スーツの背中を狙い引き金を引いた。
 それが、最後だった。


 敵は全て消滅した。
 研究員達の歓喜の声が通信越しに挙がって暫く、イレギュラーズの身体が青い粒子となって虚空へ消え始めていた。
「もう終わりか……? チッ、全力を出し損ねたか」
 いずれも敵を瞬殺してきたせいか。半ば物足りなさそうにアランが剣を収める。
 早く、凛々しく逞しい元のコヨーテの姿に戻りたいと拗ねた様子を見せるロクをエリザベスがどうどうと落ち着かせている中。彼等の後方でリジアが仮想都市へ視線を向けていた。
「……少しだけ、複雑だ。名残惜しい……というものだろうか。
 所詮は仮想空間、偽りであるはずなのに、な」
 ビルのガラスに映る仮想空間内での自身の翼を見つめ、彼女は瞼を閉じた。
 未だ通信は開いたままだ。偶然その声を聞いた誰かが言った。
「──また、来れますよ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

依頼成功。
皆様の活躍により、研究所内に残されたデータ資料は強制デリートの魔の手から逃れました。
これによって彼等もこれからの研究を続けると同時に何らかの依頼も増えるでしょう。

お疲れ様でした。
楽しんで頂けたならば幸いです、またのご参加をお待ちしております。

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