PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ふわふわ浮かぶアンチクショウ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 春の柔らかな日差しを受けて、畑の緑はさわさわと風に揺れていた。
 ここは取り立てて何の特徴もない農村である。貧しくも慎ましく、敬虔に日々を生きている。厳しい冬を無事に乗り越え、また新しい実りを求めて精を出すのだ。

 が、得てしてそううまくはいかない。
 ゴブリンだ。
 緑肌の不作法者どもは、冬越えの喜びも遠慮なくぶちこわしに来る。
 丹精込めた畑を踏みにじり、家畜や女子供に襲いかかり、食料をかすめ取っていく。
 ただでさえ蓄えの少ない村だ。早急に解決しないと手遅れになる。

 そこで、村の力自慢が名乗りを上げた。
 ゴブリン如き、高い金を払ってわざわざ依頼を出すまでもない。待ち伏せして追い払ってやればすぐに済む。
 男達はそう息巻くと、ゴブリン退治に出かけていった。

 その結果。
 たかがゴブリン相手に、男達は大きな傷を負って帰ってきた。
 死人が出なかったことだけは幸いだが、これではとても手に負えない。大切な働き手が動けなくなっただけでもかなりの痛手だ。これ以上の被害は村の存続に関わる。
 村長は急ぎ、領主に依頼を出してくれるよう嘆願書をしたためた。


「ゴブリンに親玉がいたそうなのです!」
 集まったイレギュラーズの顔を見回して、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はそう切り出した。
「目撃証言を合わせると、おそらくグレムリンだと思うのです。ふわふわの蝙蝠みたいな形で、ちょっとした魔法が使えるです」
 男達曰く、『いきなり突風が吹いてきた』『目の前が光ったと思ったらびりっとした』という。恐らくは風と電撃を扱うのだろう。
 他のグレムリンの特性として、機械にいたずらをして故障させる、というものがある。既に村の水車や井戸といったものに不具合が出ているらしい。
「知能はお子様くらいなので、そうと分かっていれば対処は出来ると思うですが……」
 問題は、『親玉の頭がお子様レベル』ということだ。
「遊びを邪魔されたから、仕返しに来る……と思うのです。それも手下を引き連れて。グレムリンにはそういうケースがある、と聞いたのです」
 だとすれば、相当数のゴブリンが群れを組むと考えた方が良いだろう。

「悪い子にはお仕置きなのです。村の人たちのためにも、よろしくお願いするです」
 ぺこりと頭を下げて、ユリーカはそう締めくくった。

GMコメント

●目標
 グレムリン、およびゴブリンの討伐。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 現場への到着は昼過ぎ。

 敵の群れは昼過ぎ頃に村に押し寄せます。
 事前に特に何もしなければ、問題なく間に合います。

 村の守りは簡単な木の柵がある程度です。
 開けた土地で、建造物以外は視界を遮るものはあまりありません。
 村の西側に森があり、その中にグレムリンやゴブリンの住処があります。

●敵情報
 知能はかんしゃくを起こした子供並み。
 統率は取れていませんが、数を頼りに襲ってきます。
 自分たちが不利だと感じた場合、逃げ出すこともあります。

『グレムリン』2体
 ふよふよ浮いている、毛むくじゃらの蝙蝠のようなモンスターです。
 ゴブリンたちを顎で使います。ガキ大将のような頭ごなしの統率なので、ゴブリンたちの信頼はありません。
 ゴブリンを前にけしかけ、自分たちは後ろから魔法で攻撃してきます。
・ショック:遠距離の貫通攻撃。威力は低いが連発が利く。電撃。
・ブラスト:遠距離の列攻撃。風でなぎ払う。
・ショット:遠距離の単体攻撃。威力は高いが連射が利かない。純粋なエネルギー攻撃。

『短剣のゴブリン』7体
 粗悪な短剣で武装したゴブリンです。
 連携も何も無く、がむしゃらに攻撃してきます。
・斬り付ける:至近の物理単体攻撃。

『毒短剣のゴブリン』2体
 見た目は同じゴブリンですが、短剣に毒を塗り込んであります。
 自分の得物が他のゴブリンにとって特別であることに慢心しています。
・斬り付ける:至近の物理単体ダメージ、毒

 このたびGMとなりました、むらさきぐりこと申します。
 最初ということで、シンプルなハック&スラッシュです。
 よろしくお願いします。

  • ふわふわ浮かぶアンチクショウ完了
  • GM名むらさきぐりこ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月01日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
シクリッド・プレコ(p3p001510)
海往く幻捜種
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人

リプレイ


 太陽が天頂に差し掛かろうという頃だった。
 二台の立派な馬車が駆けてくる。寒村には似つかわしくない来訪者に村人たちは色めきだったが、ローレットの冒険者だと分かるや否や安堵の息を漏らした。
「悪いが時間がねえ。それよりこいつらを頼む」
「こっちもよろしくね」
 到着して早々、『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)と『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は、馬車馬を村に預ける。何をするつもりなのだろうと村人が思っていると、イレギュラーズは驚くべき行動に出た。
「足跡はあっちに集中しているわね。ここで良さそう」
 そう言って『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192)は村の西側を示す。研ぎ澄まされた美咲の視界は、敵の癖を的確に見抜いていた。
「分かりました」
 『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)はこくりと頷くと、馬車をそちらの柵に引っ張っていく。

 そしてそれを蹴倒した。立派な作りの馬車を、容赦なく横転させたのである。
 あまりといえばあまりの行為に目を丸くする村人を、美咲は家に避難するよう促して追い払う。

 悪路の疾走に耐えてきた馬車はとても頑丈だ。故にそのまま巨大で頑丈な盾とする。そんな大胆な作戦であった。
「あとはこのように、誘い込むように配置しましょう」
「了解ッス」
 エルを手伝う形で、『海往く幻捜種』シクリッド・プレコ(p3p001510)が倒れた馬車を動かす。村の外側に向けて八の字を描くように二つ配置した。
「……漏斗みたいなのです」
 『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656) の素直な感想に、その通りだとエルは頷いた。ここに誘い込むためのバリケード、数を絞るための策だと。

「……皆様、そろそろ時間のようです。迎撃準備を」
 『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172) が静かに告げる。空に放った使い魔の視界が、村めがけて突撃してくる魔物どもを確かに捉えたのだ。
「やっぱそんなに余裕はなかったか。ま、これだけでも十分かなー?」
 欲を言えばもう少し細工したかったが仕方ない。『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412) は独りごちると、指揮を執るべく楽器を構えた。


 ギャアギャアと汚いわめき声が耳に届く。
 ゴブリンたちの動きは乱雑で、統率が取れているようには見えない。その上、それぞれの個体は大した脅威に見えない。
 だが、単純に数が多い。数が多いというのはそれだけで暴力となり得るのだ。

 ならば。
「速攻、仕掛けていこうかー」
 取るべき戦法は、相手の射程外からの先制。不意打ちの手段は揃っている。
 ストラディバリウス――伝説の名を冠す楽器をリンネが操ると、全員の戦意が高揚していく。高鳴る鼓動は赤色の彩として現れ、集中力を高める効果を持っていた。
「よっしゃ! まずは一発、まとめて食らわせてやるよ!」
「さくっと終わらせるわ」
 次いで、マグナと美咲の手から電流が迸る。二条の雷は瞬く間にゴブリンどもを貫いた。ギャアという悲鳴と共に焦げた臭いが漂う。
 それでも絶命させるには至らなかった。薄汚れた緑の魔物はギラギラと瞳に殺意を乗せて、イレギュラーズめがけてなだれ込んでくる。
「おいおい、思ったより頑丈だな!」
「抵抗力が高い個体なのかしら?」
 一匹も落とせなかったのはやや想定外だが、それでも最低条件はクリアしている。これで『敵意は完全にこちらに向いた』。
 連中は迷うことなくひとかたまりになってこちらに向かってくる。馬車のバリケードを迂回してくるような面倒な事態にならない。

 ばちり。
 しかして大人しくやられてばかりの敵でもなかった。
 意趣返しとでも言わんばかりに電撃が飛んでくる。それも二発――。

「ばちばち!?」
 反射的に前に出て、ミミがそれらを受けとめた。
 全身を駆け抜ける痛烈な刺激に若干の後悔を覚える。
 痛いのは嫌だ。逃げたい。それはどうしようもないミミの本質だ。いくらやったところで慣れるものではない。
 けれど今回の役割はコレなのだ。啓示に従って集まってみれば、最も盾役向きなのがミミだった。つまり『みんなの盾になれ』ということである。
 ――なんかもう、ほんとド根性必須な啓示が多すぎませんか最近!
 内心でブーたれるも、神様は何も答えてはくれない。

 だが、ミミの一歩は間違いなく天佑神助である。
 さらに焼け焦げたゴブリンどもは背後に向かってギィギィと罵倒の声を上げる。するとゴブリンに隠れるように位置取っていたグレムリンの姿が露わになった。
 どうやらミミが移動したことで照準がずれ、電撃がゴブリンをも巻き込んだらしい。

「どうやら制御は出来ないみたいッスね!」
 シクリッドが叫ぶ。神秘の力を失ってもなお、相手の神秘を見抜く知識においてずば抜けていた。
 あのグレムリンの放つ電撃は、始点と終点を定義してエネルギーを直線的に走らせる類の原始的な術なのだろう。味方を巻き込まないための制御は一切されていないのだ。
「大きな隙、だね」
 ウィリアムが同意する。無作為な攻撃にこちらにも少なからず被害は出ているが、それでも位置取り次第では敵陣を自爆させられる。
「自分とミミさんでコントロールしてみるッス。支援と回復お願いするッスよ!」
「こうなったら悪ガキ同士自滅させてやるです」
 ウィリアムは頷き、回復魔法を二人にかける。応急処置が済むと、すぐに二人は前に出た。

 マグナもそれに続いた。そして深紅の鋏となっている左腕で、手近なゴブリンを殴り飛ばす。グレムリンへの罵倒に気を取られていた個体は、あっさりと吹き飛んだ。
「敵前で仲間割れとか余裕ぶっこいてんじゃねえぞ!」

「……ガキの喧嘩に呼ばれた親の気分だわ……」
 村人にとって脅威だということは理解している。それでもそう思わずにはいられない有様だ。
 ぽろりとこぼれた美咲の感想に、ドラマは薄く微笑んだ。
「童話の悪魔もあんなものですよ。人の醜い部分の象徴、アレはそういった生物なのでしょう」
 ならば、それに相応しい舞台に送りましょう。ドラマの手にした魔道書が開くと、不思議の国を描き出す。

 ――あなたはわたし、わたしはあなた。くるくる回るワンダーランド。永遠に終わらないお茶会で、ウサギとネズミがこんにちは。
 カラスと机が似ているのはどうしてかしら? 分からなければ鍋の中で、分かったなら女王様
 可笑しくもおぞましい不思議の国が、ゴブリンどもの精神をかき回す。

 ――生意気、生意気だ。蹂躙されるべきおもちゃのくせに、逆らってくるなんて生意気だ!
 事ここに至って、グレムリンとゴブリンの持つイレギュラーズへの認識はそんなものだった。
 『かんしゃくを起こした悪ガキども』という表現は、まさしく正鵠を射ていたのである。
 故に、グレムリンの電撃が誘導されていることに気づかない。
 ゴブリンが機嫌を損ね、倒れ、気がつけば半数まで減っている。そんな自分たちの圧倒的不利な状況にも気づこうともせず、ただひたすらに悪態だけを吐く。

 ――なんて卑怯なやつら! 影に隠れてこちらを撃ってくるなんて! やたら頑丈な連中だけを出してきて、後は影に引っ込んでいる臆病者ども!
 自分のことを棚に上げ、グレムリンの片割れはキィキィと喚いた。
 お仕置きをしなければならない。分からせねばならない。あいつらには自分が下だと叩き込まねばならない。
 そう信じ込んだグレムリンは、倒れた馬車に向けて飛んだ。

 破裂音。
 次の瞬間、グレムリンの頭部が吹き飛んだ。

「一つ、仕留めました」
 無駄にならなくてよかったと心底ほっとしながら、エルは銃をリロードする。
 特注のマグナム弾だからこそ、この威力だ。……そして、自身の財布へのダメージもバカにならない。
 本当に、外さなくて良かった。


 押さえつけていた片割れが倒されたことで、連中もようやく自分たちの状況が理解出来たのだろう。
 残ったゴブリンたちは一転して逃げだそうとした。
 だが、もう遅い。それが許されるタイミングは、とっくに過ぎ去っている。
「逃がさないよー?」
 リンネの楽器が音を奏でるごとに、地面がぐずぐずと崩れていく。冥府の底へ引っ張り込む亡者のように敵の足に絡みつく。ゴブリンどもは足を取られ、たまらず地面を転げ回る。

 空を飛ぶグレムリンはぎりぎり難を逃れ、慌てて飛び去ろうと引き返す。だが、リンネがそれを見逃すはずがなかった。
「マグナ、そっちー」
「オーケイ!」
 軍師の采配に、猟犬は疾駆する。甲殻が陽光を照り返し、一陣の赤い閃光となって戦場を滑る。
「……逃がさねぇぜ? 色んなやんちゃ、後悔してもらわなきゃならねぇからな!」
 マグナの鋏がグレムリンの顔面を殴りつけ、一切の戦意を喪失させ――いや。

 ――いや、いや、バカめ! こっちには奥の手があるんだぞ!
 錯乱しながらも、グレムリンはマグナに向けて純粋なエネルギー弾を射出する。電撃よりも遙かに強烈な一発だ。連発は出来ない奥の手だが、こんなに近けりゃよく当たる!
 さながら銃弾めいたそれは、マグナの土手っ腹を容赦なくぶち抜いて、

 ――すぐさま傷が塞がった。グレムリンは今度こそ打ちのめされたかのような顔をする。
「サンキュー、ウィリアム!」
「ひとまずは大丈夫かな。後でまた見せてね」
 倒れた馬車、遮蔽の向こうにウィリアムはいる。電撃の余波で万全とは言いがたいが、ここまで来れば回復に専念しても大丈夫だろうという余裕が感じられた。

 ――例え強烈な一発でも、回復対象が一人で済むならそれほど苦労はしないのだ。
 むしろイレギュラーズにとって、乱雑に電撃を飛ばされる方がよっぽど厄介だったのだ。
 ゴブリンを巻き込むというメリット以上に、多人数が一度に傷を負うというデメリットの方が大きい。癒やしの手数は、それこそ有限だったのだから。
 もちろんグレムリンはそんなことに気づかず、たとえ気づけたとしてももう遅い。

 もはや、趨勢は決した。
 グレムリンは戦意喪失手前、ゴブリンどももほとんど瀕死で身動きが取れない。依頼完了は目の前だ。

 なので、美咲はバリケードから前に踏み出した。
「ねえ、最後くらいは派手に決めてもいいかな?」
「派手に決める?」
 エルが首をかしげると、美咲は右手を軽く開いて、
「ばぁん」
 といたずらっぽく笑った。

「あら、それは素敵だと思います。お話の締めには丁度良いかと」
 ドラマはくすくす笑いながら賛同した。そして手近なゴブリンを魔道書から呼び出した手で掴み、美咲の周りに放り投げる。

「ミミもいいと思うですよ」
 ――ミミがまだ逃げてないのに逃げ出すヘタレとか、そのくらいでいいと思うのです。
「それじゃあ、ほいっとッス」
 ミミと二人でゴブリンを抑えていたシクリットが、ゴブリンを放り投げた。

「んじゃ、こいつもまとめてやっちまってくれ」
「最後は派手に爆発オチ、それもいいよねー」
 そしてマグナとリンネがグレムリンを放り投げ、美咲の周りには瀕死の生き残りが集まることとなった。
 それを確認すると、美咲はにこりと笑って、詠唱を開始した。

 ――実際の所、美咲にとって詠唱は不要なモノである。
 転がっている敵どもをその魔眼で見つめれば、今すぐにでも灰燼に帰することが出来るだろう。
 でも、まあ。今回の敵は所詮、
 ――ガチになって『視る』必要もありません、ってね。
 詠唱が組み上がる。美咲の周りを炎が渦巻く。それは高密度の熱量となって――

 轟。

 かくして、グレムリンとゴブリンどもは、骨も残さず塵と化した。
 これにて、討伐は無事に完了したのである。


 後日談。

「おお、傷が……!」
 討伐完了報告ついでにお見舞いをしたイレギュラーズは、怪我をしたという男衆の治療を行っていた。
 幸い人数分の治療回数は残っていた。全快とは行かなかったが、無事に働けそうだ。
「ありがとうございます、ありがとうございます……! これでこの村は安泰です……!」
 感動のあまり噎び泣く村長と男衆に、担当のウィリアムは柔らかく微笑んだ。
「いやいや、大げさだよ。全快させられれば良かったんだけど」
「そんなことはありません。とても、とてもありがたい……」
 感涙にむせぶ村人達を見て、ああ、良かったと独りごちるウィリアムだった。

 エルは戦場を歩きながら、敵の死骸を探していた。
 最後にトドメを刺した奴らはともかく、自分が撃ち抜いたグレムリンなどの肉片や血痕はきちんと残っている。
「他の魔物が寄ってくるかも、だしね……」
 地面を掘って、遺骸を埋める。なるべく痕跡を消しておこうと、虱潰しにエルは戦場を調べて回った。

 ドラマは村の子供達の相手をしていた。
「――まあ大変。兎を追いかけて木の洞に入ったら、そこは不思議の国だったのです……」
 子供達はドラマの語り口に目を輝かせて聞いている。娯楽の少ない寒村、『物語』を聞ける機会などそうそう無いのだ。
 この世には素敵な物語がたくさんある。その素晴らしさを少しでも知ってもらえたら嬉しいと、ドラマは朗読劇を続けていく。

「柵……はそんな被害ないかな。良かった」
 美咲は村の柵をチェックして回っていた。馬車のバリケードが攻撃をほとんど防いでくれたお陰で、施設への被害は最低限で済んだのだ。
 ロープが若干焦げているが、これなら美咲でもきちんと補修できるだろう。念のためにメモを取っておいて、あとは村人に任せればいい。
 とはいえ、
「……馬車、使えるかなあ……」
 車軸はまだ回る。しかし作戦のためとはいえ、攻撃を受け続けた床板が大丈夫なのかどうかが疑問だった。つまり……最悪、帰りは徒歩なのでは?

「よーし、とりあえずこれで一通り潰せたかなー?」
「魔物が棲み着きそうなところは埋められたッスね」
「オレとしちゃ、まだ暴れたりねぇんだがな」
「ポーションも安くないのです……。経費でも限界があるかもなので勘弁してくださいなのです……」
「お、おう。悪ぃ。結構使わせちまったもんな」
 リンネ、シクリッド、マグナ、ミミは念のため西の森を探索し、魔物が残っていないか確認に出ていた。
 果たして即座に問題になるようなことはなかった。念のため巣穴候補を潰して回ったが、しばらくは大丈夫だろう。

 こうして寒村のゴブリン騒動は、イレギュラーズの活躍により、無事に解決したのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
見事な連携でした!

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