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シナリオ詳細

クルマエビ地獄大車輪祭り!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●みんなも知ってるチョー有名な海洋生物だね!
 君はクルマエビを知っているな!?
 そう、全長1メートル強厚さ30センチの車輪状に回転して海中を爆泳ぎすることで有名なあのクルマエビだね。
 3~4月の産卵期になると陸にあがり路上を集団で爆走する光景はあまりにも有名でご当地切手や絵はがきにもなったよね。
「けど今年のクルマエビはひと味違うのです!」
 お土産ショップで買ってきたらしいクルマエビストラップを握りしめ、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はキッと振り向いた。
「通常寿命は短いとされるクルマエビですがまれに数十年生きた個体……群れのボスとも言うべき個体が現われることがあるのです。
 全長10メートル。車輪厚はゆうに3メートル以上はある巨大なクルマエビ。
 その名も――クルマエビ地獄大車輪なのです!
 これが、それはもうとんでもなく美味! なのです!!!!!
 今町のヤローどももかり出されてますが、もっと人手が欲しいってことでローレットにも依頼が回ってきたのです!」

 海洋の本屋さんで売ってる『くるまえびちゃんを知ろう!(ミンミン書房より出版)』によると、クルマエビ地獄大車輪は百年に一度現われる群れのボスであり生態系を大きく変化させクルマエビの過剰繁殖やこれを天敵とする小魚類の激減を招くとして優先的に討伐が求められる個体であるという。
 古来からその討伐方法は定まっており、産卵期になって路上を爆走しはじめたクルマエビたちを大量に駆除していくとそれを深刻な敵対行為とみなしたクルマエビ地獄大車輪が海より現われるという。
 そこを叩けばミッション完了だ!

「幸いにも今は産卵期!
 町を爆走してるクルマエビを見つけて! 追いかけ! 倒しまくるのです!
 そして海からざっぱーしてきたクルマエビ地獄大車輪を迎え撃つのです!
 そのあーとはー!? そーでーす! 町では地獄大車輪祭りが突発的に開催され、地獄大車輪肉が振る舞われるのです!
 そのパーティーに参加してうかれるもよし、食べるもよし、あえて料理するもよしなのです!
 さあみなさん、れっつクルマエ――ぴゃあ!?」
 爆走してきたクルマエビがユリーカを軽轢きして去って行った。
「クルマエビだ!」
「つかまえろー!」
 そして走る! イレギュラーズ!

GMコメント

 こちらのシナリオは
・町のあっちこっちで爆走するクルマエビを捜索する
・クルマエビをばしばし倒しまくる
・クルマエビ地獄大車輪を倒す
・地獄大車輪祭りに参加する
 の四つをお腹いっぱいお楽しみ頂ける満干全席みてーなシナリオとなっております。
 各パートにとっかかりがありますので、順を追って説明していきましょう。

【まずクルマエビってなんだよ】
 クルマエビは海洋でもまあまあ有名な甲殻類です。
 大体日本で言うホタルイカくらいには有名で田舎ではよく見かけます。地獄大車輪は百年に一度どっかの地方へランダムに出るとされクルマエビ学者たちは研究を重ねていますが、その成果が実り今年この季節この土地に出ることが確定したのです。学者ってすげー。
 えっなに車エビはもっと小さいし車輪状に回転しない? 貴様さては異世界の民だな……?

【みつけろ、クルマエビ!】
 クルマエビが路上で爆走すると大体独特なと臭い音がします。
 まず若干磯くせえのもありますが、それ以上になんか『しゃりしゃりしゃり』っていう独特の走行音がします。これはクルマエビ特有の頑丈な殻が舗装された道路を走る際の音で耳がいいと聞き分けることができるでしょう。
 もっというとすげー空から見れば(ウォー○ーを探すのが上手い的な意味で)目のいい人は見つけることができるでしょう。
 他にも見つける方法は案外ありそうな気がするので、俺これいけるかもしんねえと思ったらレッツトライ!

【たおせ、クルマエビ!】
 クルマエビは機動力と反応速度がやばくてそうそう追いつけません。
 射撃しようにもすぐ射程外にとんでっちゃうんですね。
 なので場所を特定したら先回りして飛び出し、奇襲によって倒しましょう。
 あの形状とこの環境なんで一撃食らうと結構簡単にパタンといきます。
 強いて言えば接触をおそれてろくに固まらないので範囲攻撃を狙うと損かなってくらいです。

【でたぞ、クルマエビ地獄大車輪!】
 皆さんに限らず町の人らががんがんクルマエビを狩っているので、暫くすると群れのボスであるクルマエビ地獄大車輪が海から砂浜にざっぱーしてきます。
 これにはまとまった戦力と連携が必要なので、町の人たちはローレットチームに戦闘を全委託して引き下がってくれるでしょう。最終業務は一本化が大事。
 クルマエビ地獄大車輪は通常個体と大きく違って反応速度や機動力がフツーであるかわりに防御技術・特殊抵抗・CTが高いという特徴があり、『地獄大車輪アタック』と呼ばれる必殺技は恐ろしいの一言です。
 どうやって攻撃するかって? 見た目からもう一択だろ!

【地獄大車輪祭り】
 エビを食え!
 エビを焼け!
 その辺のおっさんとハイタッチして飲み交わせ!

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • クルマエビ地獄大車輪祭り!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月24日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
アルク・テンペリオン(p3p007030)
蒐集氷精

リプレイ

●さあみなさん、れっつクルマエ――ぴゃあ!
「ユリーーーカーーーーーーー!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はぺろーんってなったユリーカを抱え起こしてだれかたすけてくださーいと一旦叫んでみた。これがやりたかっただけだった。
 おでこに絆創膏ぺいっと貼り付け、救急ロバ馬車にぽいっと投げ込むと、焔はくるくると槍を頭上でヘリコプターよろしく回しながら鼻歌をうたいはじめた。
「えびさんえびさんくるまえび~♪ ボクの知ってる車海老とだいぶ違うけど――」
「そして高速で走る生き物にいい思い出はございませんが――」
 『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)のおでこにいまわしきおもひでがぴかぴかとよぎった。
 ミミズさんに天高く吹っ飛ばされたりマンボウさんに海へ撥ねられたりした思い出である。
 カメラを引き、おでこにピースサインを重ねるタント様。
「しかし、このわたくし――」
「「きらめけ!!」」
 背後の左右からにゅっと出てくる焔と雪之丞。
「「ぼくらの!!」」
 斜め上左右からにゅっと出てくるアクセルとカイト。
「「タント様ー!!」」
 真上からにゅっとはえてくる史之。
「ハッ、俺は一体!? 初出表記すら乗り越えて!?」
 『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)はあらためて眼鏡をちゃきっと直すと、腕時計型障壁発生装置の様子を確かめるようにぽんぽんと叩いた。
「えーっと、エビを追いかければいいんだったよね? 了解! 女王陛下、国の漁をお手伝いできる喜びを……!」
 何か自分の世界にひたりはじめた史之をよそに、『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)と『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)は談笑していた。
 なんかもう海洋の依頼で顔を合わせすぎて軽くファミリー感の出ている彼らである。
「もうクルマエビの時期かい。今年は一段と賑やかになったねぇ……」
「十夜は海の食べ物ダメじゃなかったか?」
「まあな。だから賭けエビして遊んだもんさ」
「あー、一番早く走るクルマエビを当てるゲーム」
 ぽんぽんと自分の頬を叩くカイト。
「陸じゃあ賑やかでいいんだけど、オフシーズンのクルマエビは漁師の敵なんだよな。置き網が破られたり魚が逃げたりさ。だからこの時期にできるだけ狩りたいんだよなあ」
「漁師も大変だねぇ」
「えっ、なに、みんなこの状況を自然と受け入れてるけど普通なの、これ?」
 『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が困惑した様子で海洋勢の顔をきょろきょろ見ていた。
「オイラがアウェーなの? オイラが山育ちだから? 海の生き物ってみんなこうやって陸に出てくるものなの?」
「違うと思う……けど……」
 『今はただの氷精』アルク・テンペリオン(p3p007030)が若干自信なさげに呟いた。
「え……よくあることなのか……? マグロも……? へえ……」
 なんか虚空と会話しているが、なんでも精霊と話している、らしい。
「まあ、なんにしろ、産卵期の生き物は美味いと相場が決まっているからな。沢山働いて、堪能させてもらおうか」
「この世界の生態系に慣れたつもりでしたが……まだまだ予想を裏切ってくるのですね」
 コホン、と咳払いする『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)。
「では早速ですが、班分けを決めましょう」
 一片を赤く塗った正方形の紙をぺぺっと八分割つすると、クジにかえて握り込んだ。
「せーのでひきましょう。せーの――」


「やれやれ、やっと追いついた。か弱いおっさんを走り回らせねぇでくれや」
「走ってないよね!? まだ!」
 ラムネ瓶を片手に赤いベンチに腰掛ける十夜。
 その頭上をアクセルがぐるぐると螺旋状に上昇飛行していた。
 あんまり広くない場所で周りに空圧的な迷惑をかけず安全に上昇するための飛び方である。
「走るのは場所の目星をつけてからだろう?」
「確かにそうだけど……うわっ、あっちこっちにいる! でもってあっちこっちで追い回されてる!」
 アクセルは高いところからあちこちでローリングしてるクルマエビたちを見回した。
 中でもノーマークかつ近場のクルマエビを探してみるが……。
「あれかな。ついてきて!」
 アクセルは強く笛を鳴らすと、手招きしながらクルマエビのいる方向へと飛んでいった。

 一方、路上を爆走するクルマエビ。
 その眼前(?)に、回避不能なレベルの唐突さでふらりと十字路から現われる者があった。
 走行音を正しく聞き分けて飛び出した十夜である。
 衝突――しかかったクルマエビを的確に蹴りつけると、クルマエビは斜めに乱れて転倒した。
「エビィ!?」
「なにこれエビーって鳴くの!?」
 急降下クローアタックでトドメをさすアクセル。
 その横を駆け抜けていくクルマエビを振り返り、再び空へと飛び上がった。
「一匹ゲット。さ、次に行くよ!」
 アクセルは翼を大きく羽ばたかせ――。


 羽ばたかせた翼に風を掴み、カイトは大空へと舞い上がった。
 直線道路を走り抜け風をとらえる上昇飛行方法だ。
「いい風が吹いてる。春の風だ」
 胸一杯に空気を吸い込むと、カイトは無数にあるクルマエビスポットのうちからこちら側へ転がってくるクルマエビを見定めた。
「聞こえるか焔! 西側からクルマエビが突っ込んでくる。道を塞いでてくれ!」
「えっびさん♪ えっびさん♪ とってもおいしいくるまえっびさん♪」
 一方の焔は上機嫌な鼻歌交じりで商店通りに歩み出ると、槍の両端に炎を宿して頭上でくるくると回し始めた。
 地面にまっすぐ炎のラインを描き、『ここから下がらないぞ』のサインとする。
 おまけに身体のまわりでぐるりと回し、水平に構えて通せんぼの姿勢を取った。
 そこへ突っ込むクルマエビ。
「焔、そっちへ行ったぞ!」
 空中からのUターン降下でクルマエビ後方から追いたてようとするカイト。
 対する焔はその場から一歩たりとも動かず、クルマエビの突撃を待った。
「今だ!」
「――『緋燕』!」
 振り込んだ槍から放たれた炎が巨大な刃となり、迫るクルマエビに直撃した。
 追い立てたカイトの足爪が突き刺さり、空中へと引っ張り上げる。
「おお、焼きエビだ! ウマいんだよなあこれ!」
 にこにこしながら頭上を飛び越えていくカイトを見送って、焔は槍や地面の炎をかきけした。
「焼きエビかあ……楽しみ」


「先の路地を右だよ。走れ走れ!」
「がんばれよ!」
 町の人々の声を受け、史之はヘロヘロになりながら猛ダッシュしていた。
「水分補給……!」
 スポーツドリンクをどこからともなく取り出して飲み干す史之。
 未遭遇のクルマエビから自分に対する敵意らしい敵意を感知できなかったのはこの際いいとして、縦横無尽に走り回るクルマエビをとらえるのはなかなか骨が折れた。
 バイクや馬車のように大通りだけ走っててくれれば楽だが、ひとんちの庭だろうがお店の中だろうが構わず爆走していくので移動先の予測がとても難しいのだった。
 が、所詮は道路交通のことわりを持たぬ者。
「ひい! クルマエビが店に!」
 コンビニを二倍くらいにしたような商店のドアを突き破り、クルマエビが店内を暴走していた。
 出入り口がひとつしかない暴走である。棚をなぎ倒し壁にぶち当たるも逃げ場らしい逃げ場はない。
「追い詰めましたわ!」
 ぜはーぜはーと荒い息をして、タントが店の出入り口で仁王立ちした。
 一足遅れて駆けつける史之。
「タント様! タントビームだ!」
「お任せあ――なんですのそれ!?」
 とかいいながらもとりま二本指をおでこに翳してビームを出してみるタント。
「エビーッ!?」
 側面にビームを受けたクルマエビは店内でカップ麺の棚と一緒に転倒。
「あっ意外と出ましたわタントビーム!」
「今だ!」
 史之のクロスアームタックル。
 レジカウンターとサンドする形で激突したクルマエビは頭を酷く打ち、そのままくったりと伸びたのだった。


 一方こちらは雪之丞。
 町の時計台の上に立ち、目を瞑って深くゆっくりと呼吸していた。
 雑多に混じり合う町中の音を、まるで綿毛を一本ずつほどくかのように分析していく。
 その中のひとつに、アルクが走りながら何かと語らう声が聞こえた。
「クルマエビは今どこにいる!?」
 風の精霊はいいました。
 『しらない』
 火の精霊はいいました。
 『どっかには居るんじゃない?』
 海の精霊はいいました。
 『地上?』
 エビの精霊はいいました。
 『この先50メートル道なりに進んで右方向です』
「詳しい!」
 普段こんなことまあないけど、季節と土地とタイミングと高位精霊(エビ)の機嫌がすごくよかったんだと思ってくれ。
 アルクは走る速度を上げると、曲がり角で素早くカーブをかけた。
 契約精霊(エビ)が猛烈に回転しながらクルマエビへと突撃。走行して逃げようとするクルマエビに直撃した。
 直後。
 屋根伝いに移動していた雪之丞が路上へと着地。
 クルマエビの進行ルートを阻むと、無理矢理横をすり抜けようとしたクルマエビに対して抜刀。コンマ三秒後にクルマエビの殻はばっさりと切り裂かれ、転倒したのだった。
 くるんと刀をまわし、鞘に収める雪之丞。
「狩りは順調のようですね。……おや?」
 雪之丞は鋭い聴覚で遠くの波音を察知した。
 浜へ打ち上がる巨大な車輪。
 否、きわめて長寿なボスクルマエビ。通称クルマエビ地獄大車輪の上陸である!


「目標確認! 誘導開始だ!」
 はるか上空からクルマエビ地獄大車輪を目視確認したカイトは、翼をいちど畳むと垂直に急降下。
 陸地目指してギュロギュロとキャラピラめいて進む巨大なエビ相手に真上からの煽りを仕掛けた。
 ボディすれすれをかすめるように飛び、目の前をわざとちらつくように低空飛行をはじめるカイトに、クルマエビ地獄大車輪は目を真っ赤に発光させて襲いかかる。
「おっと危ない!」
 身を車輪めいて転がす体当たり攻撃をギリギリのところで回避するカイト。
 クルマエビ地獄大車輪はその巨体からは想像も付かないようなこまやかな車輪さばきでターンとジャンプをかけると、再びカイトを狙って走り始める。
 回避直後でバランスを整えていたカイトに再びの回避は難しいか――そう思われた時、浜の砂をスライディングで巻き上げて、史之が颯爽と割り込んだ。
「障壁最大展開ッ!」
 巨大なシールドを展開し、自らをジャンプ台と変える史之。
 と同時に、十夜が柳風崩しを仕掛けてクルマエビ地獄大車輪を天高く跳ね上げた。
「ようやく本命のお出ましか。後は勇ましい連中に任せて、おっさんはのんびり酒でも飲んでていいかい?」
「いいわけないでしょ! アルク、焔、側面攻撃よろしく!」
「側面? ……なるほど」
 駆けつけたアルクは鳥籠を翳し、周囲の水分を集めて氷の鎖を生成した。
 小さな低級精霊に鎖を掴ませ、クエルマエビ地獄大車輪めがけて突撃させる。
 鎖の重量そのものがぶつかり、クエルマエビ地獄大車輪がわずかにバランスを欠いた。
「このまま押し倒すよ! 手伝ってアクセル君!」
 焔は槍を大砲でもうつように腰に構えると、先端からエネルギー内圧を高めた火炎球を発射させた。
 クエルマエビ地獄大車輪の側面に衝突。即座におこる爆発。
 こんどこそ傾いたクエルマエビ地獄大車輪に、アクセルは空中に呼び出した無数の岩を次々に発射させた。
「エビィー!」
 大きな声をあげ、横向きに転倒するクルマエビ地獄大車輪。
 クルマエビと一般的な車輪の大きな違いは、倒れてもまるまるのをやめれば別に普通に復帰できるということである。とはいえ最大の特徴である車輪状態を損なえば……。
「噂の地獄大車輪アタックは打てないはず!」
「えっ……地獄大車輪アタックって、ビームじゃありませんの? エビーム!」
 両手をおでこの左右に翳すように身構える(?)タント。
「この形状かのそんな不意打ちってある?」
「エビー!」
 クルマエビ地獄大車輪は頭をぐいっと上げると、真っ赤に発光した目を更に強く発光させた。
「きますわよエビーム!」
「えっうそほんとに!?」
「エビー!」
 そしてもっかい車輪状になってタント様を轢くクルマエビ地獄大車輪。
「ああああああああああああああああ」
「タント様あああああああああああああああああ!!」
 砂に上半身だけ埋まったまま足をじたばたさせるタント。
 がばっと顔をあげて砂をぺってした。
「ぺったんこに潰れるところでしたわ!」
「むしろ無事なのがすごい」
「クルマエビ地獄大車輪の本質はやはり車輪。
 ならばその重量と回転、利用しない手はありません」
 雪之丞は転がるクルマエビ地獄大車輪の前へスッと立ち塞がると、斜め飛び込み前転の要領で攻撃をかわしつつ、刀を逆手に握った逆向きに筋をあてなでることで、クルマエビ地獄大車輪の強固な殻を見事に切り裂いてしまった。
「エビー!?」
 血を吹き出し、どどーんと音を立てて倒れるクルマエビ地獄大車輪。
 駆け寄った町の人々が、グッと親指を立てて突きだした。
「グッジョブ!! 祭り最初の一口はくれてやるぜ!」


「おいひーですわー!」
 ブロック状の蒸しエビ肉を口に含み、目にお星様を作って見開くタント様。
 背景には赤と白の効果線みたいななんかがぺかぺかしていた。
 このエビ肉のうまいことうまいこと。
 殻を剥いて蒸したことで際立つ表面の紅色の鮮やかさもさることながら、エビ特有の香ばしさが塩の味わいと混じり合い、口に含んだ途端に広がるぷりっとした食感とチキン質の味わい。
 タント様はほっぺをハムスターめいてふくらませ、ひたすらもっきゅもっきゅやっていた。
「刺し身に焼きエビ、汁物も良さそうですね。
 ですが王道はやはり焼き……」
 鉄串に刺し連ねた四センチ大のエビブロック。それを歯で噛み千切れば、歯の先端に感じる熱さと炭にも似た香りが暴れるように鼻腔を抜ける。
 クルマエビ狩りを終えた町は祭りで大賑わいだ。
 大人も子供も集まって料理しては喰い振る舞っては語り合う。
 楽団は演奏をはじめダンサーは踊り出しクルマエビ地獄大車輪の頭が掲げられた特設キャンプファイヤーが燃え上がる。
 アルクに至っては山育ちということもあり新鮮な海料理に目の色を変えていた。
 とくに刺身がやばい。地球世界の古代中国の話になるが、内陸は海から離れすぎてるせいで魚の鮮度を保てず衛生的なリスクも増すため焼くか干すかのどっちかしかありえなかったが、海側ではこれを生食するという、非常に貴重かつ豪快な食べ方が愛された。
 混沌でもそうなのかは知らないが、少なくともアルクはエビのお刺身がとてもスペシャルであったようだ。
「どんどん焼くからね。飲み物は何がいい?」
 グローブをはめてエビ肉をバーベキューにしていく史之。
「おっさんはエビ食えねえんだ。場の空気だけサカナにするとして……冷酒でも貰おうかね」
「空きっ腹にお酒っていいの? いやしらないけど……おにぎりつける?」
 おにぎりを醤油で焼きながら十夜に出してやる史之。
 その一方では、カイトとアクセルがエビ料理に夢中になっていた。
 鍋をかき混ぜてお玉をあげるカイト。
 エビのすり身を団子状にしたものをスープにしたり、刻んだエビとでかい殻をまるごと鍋に突っ込んでご飯を炊いたり、天ぷらにして甘辛の和風タレをかけたりだ。
「漁師飯……いいよな!」
「中華も好きー!」
 一方でアクセルは餃子の皮にすり身を包んで蒸したりゆでたりしていた。
「まってこれ片栗粉とだし汁をアレしたやつで焼いて閉じたらうまいんじゃ……!?」
「楽しみ方が無限ー!」
 焔は細長くブロック状にしたエビの天ぷらに柚塩を僅かにつけ、カリッと豪快に囓ってみた。
 目を閉じれば、宇宙が見える。
「んーーーーーーーーー」
 この後、イレギュラーズと町の人たちはいくら食べても食べきれないようなエビを前に夜が更けるまで料理と祭りを楽しんだのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ごちそうさまでした!

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