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シナリオ詳細

亡き女王よりの慟哭

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●白虎の女王
 ジャムラル虎はラサ北方のジャムラル山脈に生息する希少生物である。
 白い毛皮は魔を払うとされ、牙は剛勇をもたらし、目は叡智を授けるとも言われた。
 その話の真偽は定かで無いが、高級なものを欲するラサの富豪や幻想の貴族たちに高値で取引され、結果乱獲されることになった。
「今はジャムラル山脈のひとつ、バハル保護区に少数が残るのみ……って話さ」
 チョコレートのような色をした細い紙巻き煙草。
 のぼる煙の甘い香り。
 口の端に煙草をくわえたまま、パサジール・ルメスの女商人は薄く笑った。顔半分にまざまざと残るやけど跡から、彼女はこう呼ばれている。
 『ローストフェイス』バッケル。
「なんでこんな話をするかって?」
 バッケルはパカダクラのひく馬車の上で、あなたへと振り返った。
「これから出会うだろうからさ。乱獲されたジャムラル虎の……亡霊ってやつに、さ」

●ジャムラル山脈の都市伝説
 こんな話がある。
 ジャムラル山脈に開拓された道、通称『緑色商路』を通っていると、ときたま虎の亡霊に出会うことがあるという。
 虎は真っ白な毛皮を白い炎に包み、まるで燃え上がるようにして生まれた炎の虎を無数に呼び出し通行人を食い尽くしてしまう。
 それは乱獲されたジャムラル虎の亡霊であり、かつて悪徳猟師たちが巣と群れを丸ごと襲撃した恨みを今でも忘れていないからだ……という。

「なあに。この道を通ったからって必ず遭遇するわけじゃないさ。数十件に一度、そんな報告がある程度さね。けど、まあ、付き合いの長いアンタなら分かってるんだろう?」
 バッケルに『ローストフェイス』なんて名は、似たような都市伝説にキャラバンと顔の半分を焼かれたことに由来しているが、定着したのは……。
「アタシがこの手の都市伝説に、やたらと遭遇しやすいってコトを、さ」
 ス、と翳した煙草の先。
 燃える白い炎が見えるだろう。
 そして聞こえるだろう。うっそうとした熱帯の林の間から、グルグルと響く低い声が。
 気づいたときにはもう遅い。
 どこからともなく、それこそ燃え上がる炎のように現われた白く巨大な虎が一声吠えた途端に、あたりを大量の虎が……炎の虎が取り囲んでいた。
「さ、お仕事だよ。頼めるね?」

GMコメント

【オーダー】
 商人キャラバン『ローストフェイス』のバッケル。
 彼女の護衛を引き受けたローレット・イレギュラーズは、都市伝説ともいわれる『白虎の女王』と遭遇しました。
 既に周囲をぐるりと取り囲まれた状態であり、脱出はともかく逃走は困難。
 今まさに襲われる最中であり、話が通じるよな状況では断じてないようです。
 撃退し、この状況を切り抜けなければなりません。

【シチュエーション】
・戦闘エリアと護衛対象のNPC
 土と木に囲まれた熱帯雨林。
 馬車は合計3台あり、それぞれ道一直線になるように停車しています。
 道はまっすぐ続いていますが、横道にそれるには地面の凹凸が激しく木も複雑に並んでいるためパカダクラの馬車では不可能。
 囲むように布陣し、防衛してください。
 馬車のまわりを囲んでいる限りは虎たちもわざわざ皆さんをスルーして馬車や商人を襲う理由がないので、死にでもしないかぎりは間接的に防衛することができます。(商人に『かばう』コマンドを使う必要がありません)

・エネミーの初期位置
 白い炎の虎が20体ほどぐるりと取り囲むように出現しています。
 これらが一斉に襲いかかってくるでしょう。
 とりまとめている存在らしい『白虎の女王』は少し離れた場所からその様子を暫く観察しているようです。
 炎の虎が倒されることがあれば、直接襲いかかってくるでしょう。

・緑色商路:ジャムラル部
 ラサ北部にあるジャムラル山脈に通った道で通称『緑色商路』。
 深緑西部沿岸の土地への商業的接続を目的とした道です。

【エネミーデータ】
●白虎の女王
 かつてこの土地に住んでいたというジャムラル虎の女王。その亡霊とされています。
 直接的かつ攻撃的なコンタクトをとるモンスターに分類され。霊魂や精霊のカテゴリーからは外れるため各疎通スキルの対象になりません。
 攻撃には『火炎』系および『出血』系のBSがついている。
 非常に強力であることが雰囲気からわかる。

●炎の虎
 白い炎が虎の形をとったもの。
 手足は途中から消え、輪郭はゆらゆらと燃えている。
 攻撃には『火炎』系および『出血』系のBSがついている。
 およそ20体ほどおり、これらを倒さなければまず状況を変えることは出来ない。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 亡き女王よりの慟哭完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月17日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
リジア(p3p002864)
祈り
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
ビーナス・プロテウス(p3p007066)
渇愛の邪王竜

リプレイ

●過去は過去のままで
 ラサの熱帯雨林に続く道。
 かつてこの道を開拓したのは猟師の一団で、その被害を最も受けた動物こそがジャムラル虎であるという噂がある。
 その噂が都市伝説となり、こうして虎の女王を引き寄せているのかもしれない。
(古今東西、竜と虎は仲が悪いモノ。何より白虎を見ると意地悪な知り合いを思い出します)
 『渇愛の邪王竜』ビーナス・プロテウス(p3p007066)は当世界における制限の中で現時点において許される邪王竜の肉体としての肉体機能を活かすべく、取り囲む亡霊たちに身構えた。
 がちがちとロブスターハンドを打ち鳴らす『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)。
「話を聞く限りじゃあ虎どもに同情だってするさ。
 だからって大人しく喰われてやる義理もねえ。
 それはそれ、これはこれだ。いつまでもこんな所にいつないどく道理もねえ。行くべき所に送ってやぁ!」
 二人は食らいつくように飛びかかる虎の亡霊たちに対し、拳を引いて迎撃を始めた。

 銀のフルートに手をかける『白綾の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)。
(背景として、人の罪、なのかもしれませんが、真偽や善悪を考えている余裕はなさそうです)
 フルートの音色が森に高く響き渡る。『魔神殺しのバラッド』という、演奏者の生命力を引き替えにした呪歌である。
 音色に一度目を瞑り、『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)はライフルをコッキング(ここでは弾を銃身に入れる動作をさす。ラダのもつライフルはこれを手動のレバー操作で行なう)し、親指でセーフティーを解除した。
「同類として耳が痛い。
 話に聞き、こうして合間見えてなお、
 私は同じ轍を踏まないなんて言い切れないのだから」
 人は生きるために肉を食い、それゆえに等しく罪を犯すという。
 重要なのは罪を犯さないことではなく、認めていることであるともいう。
「感情移入そっち? ぼかぁね、なんかね、同類のゴーストがすみませんねって感じ?
 私悪くないんだけども! クラスメートとか同じ国の人がよそに迷惑かけた時みたいないたたまれなさがね! あるね!」
 余り気味の袖をぱたぱたと上下に振る『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)。
 しかし今は関係者でもなければ当事者でもない。
 いわば被害者。
 そしてこの場を切り抜けなければ、おそらくは大きなダメージを負うことになる。
 Lumiliaは呼吸のために口を離した。
「現状の打開のため、討伐させていただきます」

 馬車から降り、翼を広げる『Esc-key』リジア(p3p002864)。
「無念の残滓か。こうなるほどとは、生き物の業も深い」
 業を簡単な言葉に訳すと『もっと』だ。
 もっと生きたい。もっと復讐がしたい。業の深さとは、まさにそれである。
「私の役目ではないが、導くものがいないのならば……せめて送ることはしよう」
 もうできないのだと、誰かが教えなければならない。
 同じく馬車を降りた『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)が、指輪の光から青白く光るヴァイオリンを顕現させた。
「悲しい声……悲しい旋律……。
 人の招いた事が原因とは言え、やらない訳にはいかないわ」
 虎の亡霊たちの声に耳を傾けたなら、彼らの無念が聞こえるだろう。
 理不尽に潰された者の悲しみや、怒り。そして嘆きとしか言えぬ何かが。
「やるしかない……彼らを解放するためにも、やるしかない。
 一方的な武力的解決には、なってしまうけど」
「まあな、一方的さ。けどそいつはお互い様だぜ」
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は銃を抜き、スライドを引いてロックレバーを押した。
「ジャムラル虎の一族が怒りを残したのも当然だ。
 復讐のために亡霊になったって不思議じゃ無い。
 けどその上で言わせて貰う」
 銃のサイトが、虎の亡霊たちに、そして高い土より見下ろす女王の亡霊に向いた。
「お前達の魂はもっと自由であるべきだ。今、解放してやる」

●虎の革は売れたか
 キャラバンの馬車を取り囲むジャムラル虎の亡霊たち。
 足は炎のように途切れてはいるが、まるで地面を歩くようにのしのしと身体を揺らし、威嚇するように喉を鳴らしている。
 これまでもずっとそうしてきたのだろう。
 一人たりとも逃がさぬように、そして抵抗力であるところの傭兵――今はイレギュラーズたちを倒すことを優先すべく、一斉に襲いかかるタイミングと間合いを計っているのだ。
 女王が吠える。
 と同時に、虎たちは一斉に飛びかかった。
「来やがれ――白炎穿つは真紅の雷光! こいつで消し飛べ、『ライトニング』!」
 虎の攻撃を受けながらも強引にすり抜けたマグナは、集団の脇へと回り込み、サイドから串を通す要領でライトニングの砲撃を行なった。
 砲撃を受ける虎。そしてかわす虎。
 ビーナスはそこへ飛び込み、影触手を発生させた。
「眷属の皆さんよろしくお願いします」
 ビーナスの影に潜んでいた眷属の中から、冒涜的な黒き触手を呼び出したのだ。触手が周囲の虎たちをとらえようと襲いかかっていく。
 反時計回りにみて90度の展開角度をとったラダが、襲いかかろうとする虎たちから飛び退きライフルを乱射していく。
「取り囲まれてる。まずは包囲を脱しないとな……リジア」
「私が盾か。珍しいことだな」
 リジアは数歩だけ前に歩み出ると、翼を大きく広げて発光させた。
 腕や足に食らいつく虎たち。対抗して発射された翼よりの破壊エネルギーが虎を襲い、続けて馬車まで後退し天幕に飛び乗ったラダのプラチナムインベルタが虎たちを巻き込んで乱射された。
 素早く防御の構えをとるリジア。
 それをフォローするように、もう90度左側に展開したLumiliaが調和の音楽を奏で始めた。
 飛び上がるように、人の頭ほどの高さへと飛行。
 炎の虎たちは食らいつこうと飛びかかるが、ハッピーがそれを庇って腕を差し込んだ。
 『Look at me !!』を用いなかったのは命中信頼性の低さから空振りになるリスクをさけるためである。
 直接庇った方がはるかに確実なうえに、周囲の味方の強化も同時に行なえる。
 『戦場の花』の効果に加えて『神子饗宴』を用いて補正を引き上げていくのだ。
 その更に左側では、リアが『英雄作成』による付与効果を展開している。
(女王の怒りの旋律を込めて、奏でましょう……)
 リアはヴァイオリンの美しい音色を奏で上げることで、地面から無数の槍を呼び出した。
 食らいつこうとする虎たちを貫き、その場に停止させる。
 ジェイクは地面と水平に構えた拳銃を連射。あえてリアを全面に出したまま後退すると、ラダ同様後ろから拳銃による広域射撃を敢行した。
「俺はお前達を倒しに来たんじゃないぜ。
 解放しにきたんだ。こんな現世に、怒りに縛られることはない、ってな」

●ジャムラル虎の墓場
 包囲を脱し始めたイレギュラーズたちはキャラバンの馬車ごと大きく後退し、いまいちど戦闘陣形を立て直した。
 ハッピー、リア、Lumiliaというそうそうないレベルの潤沢な範囲強化を活かしつつ、ラダやジェイクといった遠距離攻撃に強いタイプを活かし、尚且つマグナやビーナスのような前衛タイプを活躍させるには当初の四方盾めいた陣形は不利だったからである。
「虎の亡霊たちは近接攻撃が主だ。味方ひとりに群がり団子状になった所を範囲攻撃で狙うのが、この場合は妥当だろう」
「大丈夫なのかよ、そんなことして」
 ラダとジェイクが馬車の上に飛び乗り、ジャムラル虎と取っ組み合いに発展しているビーナスたちを中心に狙いを定めた。
「これ以上頭数を残すとこちらの陣が崩壊する。味方は巻き込むことになるが、一方で……」
 顎でリジアとハッピーを指し示した。
「なるほどな。便利な味方もいたもんだ。――ハッピー、一つ頼めるか!」
「おまかせーあれーい!」
 ハッピーは両手を振り上げたまま地面と水平に幽霊ダッシュ。
 下半身のふわふわしたものを膨らませてマグナとビーナスを覆い込むと、頭上でマルを作って見せた。
「いつでもこいっ!」
「よし、うまく防げよ!」
 ジェイクはハッピーを中心に弾幕をはり、ラダも同じくライフルで弾幕を形成した。
 ジャムラル虎の亡霊たちを一斉に吹き飛ばす。直後、飛び込んだリジアが翼の破壊力を最大に引き上げて残ったジャムラル虎を薙ぎ払っていく。
「ぷいー、死ぬかと思った。あっもう死んでたんだった!」
 顔をぷるぷるとやるハッピーに、リアが慈愛のカルマートを奏でて体力を回復。
 ふらふらと消えかかった虎の亡霊たちに、Lumiliaの手刀が、ビーナスのビーナスキックが、マグナのクラブハンマーが叩き込まれる。
「炎だろうが幽霊だろうが、ぶん殴れるなら問題ねえ、ってな!」
「あとは女王だけ……ですね」
「あなたの怒り、受け止めてあげる……」
 リアやLumiliaたちの視線が、虎の女王へと向いた。
 高くあがる咆哮。
 白い炎を燃え上がらせて、ジャムラル虎の女王は彼らへと飛びかかった。

●女王よりの慟哭
「さあ、行くぜ女王、テメェの恨み――ぶつけてきやがれ!!」
 リアの支援によってAPを取り戻したマグナは、ロブスターハンドに赤い稲妻を纏わせて走った。
 助走をつけての跳躍。
 高く振り上げたハンマーに纏った雷をそのままに、虎の女王へと叩き付ける。
 女王は自らの白い炎を燃え上がらせてマグナへと突きつけた。
 衝突する炎と稲妻。
 威力でいえば炎が上。しかし根性で言えばマグナが上だった。
 吹き飛ばされてもなお、根性で起き上がる。
「まだだ……もっとぶつけて来やがれ!」
 再度の突撃に伴って、ビーナスもまた女王へと突撃した。
 邪王竜の腕力を込めたビーナスパンチを女王の顔面めがけて叩き付ける。
 二人の拳が合わさり、女王の炎を打ち破っていく。
 爆発。
 はじき飛ばされる虎の女王。
 一方でマグナとビーナスもまた吹き飛ばされ、草地をはずむように転がった。
「援護する、前衛を頼む!」
 ジェイクは拳銃をCARシステムで構えると的確に連射。
 ラダは転がるように逆扇状の陣形をとると、女王の額に狙いをつけた。
「私も商人だ。どう気をつけようが、彼等のような目にいつか誰かを遭わせるかもしれない。
 同じように復讐で喰い付かれるかもしれない。だが今もその時もきっと撃ち返そう。
 そうしてこその――」
 トリガーに祈りを込めて。
「私達(ジグリ)、だ」
 銃声。
 爆炎。
 交差して迫る炎を、Lumiliaとリア、そしてハッピーが迎え撃った。
「もしこれらの魔物が、人の罪で生み出されたものならば……」
「それを償うのが人の連帯責任なのかも知れないわね。あながち無関係とは言えないもの」
 人の社会は巡っている。
 誰かが殺した虎の肉が、毛皮が、それによって得られた金が、巡り巡って昨日自分が食べたパンになる。それが社会というものだ。
 どれだけ力を持っていても、一人だけで世界を完結できないなら、近しいものや親しいものの罪に感じ入るのは道理と言えるだろう。
「ごめんね! でもここでおしまい! あとはまかせな、ってね!」
 大きく腕を広げたハッピーが、迫る炎を口から派手に吸い込んだ。
 Lumiliaとリアの演奏が一つの音楽となって合わさり、激しく高鳴った振動がハッピーの胸を膨らませた。
 全てを吸いきった。
 その瞬間。
 はれた炎よりリジアが飛び出してきた。
 翼が光り、女王を覆っていた炎がガラス細工のように破壊される。
「その魂、いい場所へ行けるといいな」
 握った拳に破壊の力を込めて、リジアは虎の女王を殴りつけた。
 雪像のようにヒビ入り、砕け、散っていく女王の姿。
 ほんのりとした暖かい風だけが、残滓として残っていた。

●新しい都市伝説
「これでもう、『ジャムラル虎の亡霊』は現われねえってわけか?」
 マグナは岩に腰掛け、ほおづえを突いていた。
 戦闘が終わったからといってすぐにキャラバンを動かすことはできない。
 落とした物資を拾い集めたり馬車の点検をしたりと、やるべきことは沢山あるからだ。
 それに……。
「よし、と。こんなもんでいいかな」
 ジェイクは大きな岩を切り出して、道の端に小さな石碑を建てていた。
 顔を近づけて刻んだ文字を読むハッピー。
「しろ、びゃ、白虎の……女王、に……あん、や、やす、安らか……な、眠りを……?」
「…………」
 仲良くなりたそうにその様子を眺めるビーナス。
 リジアはそれを横目に、キャラバンへの馬車へと戻っていった。
 馬車ではもうじき再出発の準備が整うようだ。
 ラダもその準備に加わりつつ、バッケルのほうを向いた。
「しかし、本当に狙ったように都市伝説に出会うな」
「前世で何か悪いことでもしたのかね。まあでも、とりようによっちゃラッキーな不幸体質さ」
 見なよ、とバッケルが煙草の先端で石碑をさす。
 石碑の前では、Lumiliaとリアが鎮魂の音楽を奏でていた。
「ジャムラル虎の亡霊はもう出ない。都市伝説はおしまいだ。
 代わりに、あの子らが新しい都市伝説を作って伝えていくんだとさ」

 この後、ジャムラル山脈で虎の亡霊話が語られることは少なくなった。
 だがこの道を通る者たちが悲劇を忘れたわけではない。
 なぜなら。
『なあ知ってるか。この道を通る時に、墓に祈ると旅の無事が守られるんだと』
『そりゃあいい。是非祈っていきたいね。で、誰の墓なんだいそりゃあ』
『ジャムラル虎って知ってるか? 昔ここらに……』

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 new end――『あたらしい女王の伝説』

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