PandoraPartyProject

シナリオ詳細

桜を散らすスキャッタルド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●春のお邪魔虫
 樹木、草花が芽吹き、色とりどりの花弁が開いて咲き誇る。
 春。
 自然と共にある深緑は、まさに秀色神彩の様相で活力に満ちあふれていた。
 様々な種類の草花は、混沌中の――否、場合によっては異世界の種目も見つけられることだろう。
 そう、例えば春を代表する桜。
 旅人ならば、一度は目にした事があるかもしれないその花も、深緑ならば見る事ができるのだ。
 美しく咲く桜花は、例え混沌の外から持ち込まれたものだったとしても、人の目を奪い、見事に咲き誇っていた。
 深緑に住む幻想種も、この日ばかりは花見に興じて、穏やかに一日を過ごす事だろう。
 そう、お邪魔虫さえいなければ――
「ウキキキーッ!!!」
 劈くような鳴き声が、桜の木の上より響き渡る。
 声の主はスキャッタルド。猿によく似た害獣だ。
 ボススキャッタルドが呼び声を上げれば、どこからともなく次々と群れが現れて――桜の木の上を占拠し暴れ回る。
 枝葉を揺らし桜を散らさせ、花見に来ていた人々の食料を奪い、暴れる。
 傍若無人たる無礼な振る舞いは留まる事を知らず、被害は拡大していく一方だ。
 生半可な魔物より強いこの害獣。放置していては桜のみならずあらゆる草木が被害にあうだろう。
 自然と共に生きる深緑としては、強制的な駆除は本意ではないが、一度懲らしめる必要があるだろうと重い腰をあげた。
 スキャッタルドの一斉排除運動。
 その運動にイレギュラーズもどうですか? と依頼として持ち込まれたのはすぐのことだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 桜舞う季節、花見頃ですね。
 桜を散らす悪い獣たちを駆除しましょう。
 

●依頼達成条件
 スキャッタルドの群れを撃破する。
 (不殺スキルがなくても宣言すれば不殺が可能です)

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態はおこりません。

●スキャッタルドについて
 群れの総数は三十体。
 猿によくにた中型の獣。
 群れでの活動を主体とし、とくにボスが司令塔となって連携して動く厄介な害獣です。
 アクロバティックな動きに、見た目通り素早く飛んだり跳ねたり、落ち着きがありません。
 高い反応に機動力、EXAが極めて高く、群れて連続攻撃を繰り出してきます。
 攻撃力や、防御技術は低いですが、兎に角数が多いので、油断すると一気に体力を削られます。
 またボスは飛び抜けて強く、流血・失血を伴う攻撃を繰り出してきます。耐久力も高くボスをどのように処理し倒すかが肝となるでしょう。

●依頼後について
 素早く駆除出来たならばお花見も出来ます。
 お弁当の準備をしておきましょう。

●戦闘地域
 深緑ファルカウ側に咲く桜の名所になります。
 時刻は昼すぎ。桜の木々がならぶ開けた広場での戦闘になります。
 戦闘場所に大きな障害物はないでしょう。自由に戦闘が出来るはずです。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 桜を散らすスキャッタルド完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月21日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女

リプレイ

●自由気儘なヤツラ
 春満開。
 そんな行楽シーズンに現れるは、無礼千万、無法の害獣スキャッタルド。
 重い腰をあげた深緑の一斉排除運動に参加することになったイレギュラーズは、担当地区の桜の前で、これはこれはと開いた口が塞がらなくなった。
 木々の上で走り回り桜を散らす猿(スキャッタルド)に、地面の上では奪った物だろう食料品のゴミが散乱し、見るも無惨な有様だ。
「ああ、スキャッタルドがこんなに……たまんないわね。
 桜を折られたりしたらたまったものじゃあないから、ここはお引き取り願いましょう。
 ちょっと痛い目見てでもね」
 惨状を前に『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)強気に言う。深緑出自の彼女からすれば、害獣たる猿がこれほど現れる状況は御免被りたい所だろう。
 一歩前にでたアルメリアに気づいた猿達が俄に警戒を帯びて注視する。中には威嚇の鳴き声を上げるものや、尻を叩いて挑発するものもいる。
「ぬぬ、むかつくわね……!」
「まあ、まあ。やらせときゃいいのさ。
 所詮、猿は猿って所だな。
 桜を荒らす、風情のわからぬエテ公には軽くお仕置きをして、この場からご退場していただこう」
 ホルスターから武器を抜き出し状態を確かめながら言うのは『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)だ。
 マナーのない花見。何て言うのは野生の獣ですら遠慮すると言う物で、我が物顔でのさばる害獣の存在は、花見を楽しむ者達にとってはすべからく敵であるのは間違いない。
 手早く片付けて、早く花見を楽しみたい物だ、とジェイクは不敵に笑う。
 イレギュラーズの登場は猿たちにプレッシャーを与えるようだ。警戒心むき出して木々を飛び回り走り回る姿は、まるで自分達の所有権を主張するよう。
 しかしその動きによって桜が大きく揺らされて散らされて行くのも事実だ。
「綺麗に咲いた桜を、あのように無粋な所作で散らすとは。
 皆さんが言うように、お仕置きとしてここには二度と来たくなくなるくらいに、徹底的に懲らしめるとしましょうか」
 メイド服に身を包む『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が傍若無人に振る舞う猿たちを鋭く睨む。その気迫たるや、猿たちにも理解出来るようで怯えと共に威嚇の鳴き声が高まった。
 猿たちが占拠する桜を見上げて『穢翼の回復術師』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が口を開く。
「この世界の桜も綺麗だよね」
『うむ、それを邪魔する猿どもは放置できんな』
「そうだね、折角の楽しみを邪魔されるのは、正直許せないから頑張らないとね」
 神様との会話。その言葉はこの場にいるイレギュラーズ全員の気持ちと同じだろう。
 ティアもまたお花見を楽しみにしたいところなのだ。それを邪魔する猿たちを放置するわけにはいかなかった。
 ティアの言葉を聞いて、隣に立つ『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)もガッカリしたように言葉を零す。
「せっかく咲いてんのにおちおち行楽も出来ないのは中々歯がゆいっスね……。
 でも花見の前に腹を空かせとくって考えれば、ってトコっスか。
 そうと決まればいっちょやるか」
 足で操る白いサッカーボールが空に舞うと猿たちがそれを注目する。
 猿たちもまさかその遊び道具であるサッカーボールが武器であるとは思いもしないだろう。
 花見を前にしたちょっとした腹ごしらえだ。葵はボールの上に足を置くと、キックオフの瞬間を待った。
 武器を手にするイレギュラーズを、猿たちは徐々に敵として認識し始める。
 それは即ち戦闘も辞さないという猿たちの心構えの変化であり、自由気儘に過ごしていた猿たちはやがて戦闘態勢へと移り変わっていった。
 それと同時、桜の木の一番上から、一際大きな猿が降りてくる。
「ああ、見るからにボスですね」
「これはわかりやすいッスね」
 ボス猿は歯を剥き出しにし大きく威嚇をする。その様子はまるで人間など恐れていないようだ。
 無駄に力があるせいか、恐れ知らずなスキャッタルド達。なるほど、無法になるのも頷けるという話だ。
「どーもーお猿さん、深緑治安維持隊です……。
 おいたが過ぎるので狩りに来ました、とりあえずボスは全部の毛を刈られると思うがいいさ……」
 なんてふざけた冗談を零しつつ、サイズがその本体である鎌を構える。
 サイズの言葉にあるように今回は深緑側の意向に添って、猿たちの撃退は不殺を貫く方針だ。毛を毟るということにはならないとは思うが、ある程度痛めつけることにはなると思われる。
 そんな猿たちへとやや気持ちを寄せるのは『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)だ。
「スキャッタルド達も花見を楽しみたいのかもしれないが……その為に他の人に迷惑かけるのは良くない。
 不殺とは言えしっかりお灸を据えないとな」
「ああ、そうだね。
 人々の安全を守り、心置きなく花見を楽しんで貰いたい。
 その為ならば、死力を尽くさせてもらう!」
 ポテトに頷いて、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が銀色に輝く美しい剣を構えた。
 合わせるようにポテトが保護結界を展開し桜を護る。戦いの余波で桜が傷付かないようにするこの保護結界はとても重要であり、大切な役目と言えるだろう。
 イレギュラーズがジリジリと桜へとにじり寄る。猿たちの主張する領分へと足を踏み入れれば、そこから即戦闘が開始されるだろう。
 ギリギリの距離を見極め、先手を取る。互いに警戒と威圧を繰り交わしながら、本格的な戦闘前の牽制合戦という様相だ。
 敵側の中心。ボス猿が一際大きな威嚇声を上げた。これ以上の前進を許さないとでも言うようだ。
 だが踏み込まなくてはならない。花見を楽しみにする人々の為、そして何よりもこのまま無法に振る舞い続ければ、いつか命を奪われることになってしまいかねない猿たちの為にも、ここが人の領分なのだと分からせる必要があるのだ。
 覚悟を決めたイレギュラーズは、互いに頷き合うと、一歩その領域へと踏み込んだ。
「ウキキキキーッ!!」
 甲高い鳴き声は威嚇のそれとは別で、まさにそれが戦闘開始の合図となるのだった。

●お邪魔虫を片付けろ!
 大凡三十にも及ぶスキャッタルド達が一斉に走り出す。
 ボス猿の指示するままに、飛んだり跳ねたり、縦横無尽に駆け巡りイレギュラーズを翻弄する。
 猿たちもまた自分達の領分を守ろうと必死なのは見て取れるが、それを許容するわけにはいかないのだ。
 猿たちの動きに対応するように、イレギュラーズが展開していく。
「まずは数を減らさないとな……いくぞ」
 高い反応を見せ、動き出したサイズが自身に魔力を纏わせる。そのまま一気に肉薄すれば、魔力纏う自身を振るい、切り裂いていく。
 高い機動力に翻弄されることもままありながらも、しかし、確実にダメージを与えることに成功するサイズ。
 とにかく数が多い相手だ。数を減らしていくことがなによりも重要になる。戦闘不能にさえ追い込んでしまえば、あとは勝手に逃げていくので、とにかくダメージを稼ぐことが重要と言えるだろう。
「この位置なら、上手く立ち回れそうね。ふふん、状態異常の回復は任せてもらおうかしら」
 先頭に立つリゲルの後ろについて立ち回るのはアルメリアだ。
 ヒーラーとして参加するアルメリアだが、今回のパーティーでは先輩ヒーラーが他にも二人いることから、シェルピアによる状態異常回復をメインに立ち回る。自身のスキルと効果を良く把握しており、役割として的確な判断と言えるだろう。
 当然、補助的な回復も可能であるし、現にダメージを多く負うことになっているサイズやリゲルへと治癒魔術を行使することもあった。
 癒やし手が多すぎることは火力不足につながり兼ねないが、今回に限って言えば敵の多さに合っており、必要十分な数だったと言えた。
 魔素を練り上げて作った緑の光の盾を構え、猿たちに狙われないように立ち回る。ヒーラーたる者、最後まで立ち続けなければならない、と気合いを入れた。
「状態異常の回復助かるよ。
 こっちは治癒で手一杯だからな」
 そんなアルメリアに感謝しつつ治癒の魔術を行使する先輩ヒーラーのポテト。
 単体回復、範囲回復を都度選択しながら、さらに活力の回復も管理する。敵の数が多いことで仲間の体力の消耗が激しいこともあり、これらを管理するポテトの役割は重要だ。
「連携されると厄介だが――誰も倒れさせはしない」
 特に盾役のリゲルは重要だ。フィアンセであることを抜きにしてもリゲルが倒れてしまえば一気に決壊してしまうことも考えられる。
 絶対に倒れさせないと固く誓った言葉通り、ポテトの回復に手抜かりはなかった。
「急所は外します。が……おいたをする手足は、痛めつけておきますね」
 鶫が愛用の狙撃銃『白鷺』を構え、猿たちへと引き金を引く。
 そして、猿たちの動きを抑制しながら、纏まったとみればメイド服のスカートの下より電子放射擲弾を取り出し、投げ込んだ。地面に転がったスタングレネードが自由電子を放射し猿たちを感電させる。
「数が多いのは困りもの。なので、着実に減らさせて頂きます」
 そうして今一度『白鷺』を構えれば、強かに敵を抉る死の凶弾によって、多くの猿たちを射貫いていった。
「一気に一掃と行きたいッスね――!」
 遠距離よりエネルギー弾を蹴り込む葵。
 血のように真っ赤なエネルギー弾はコウモリ型へと変化して群れる猿たちを追尾する。逃れようのないバットバーストに捕まれば、群れを巻き込んで爆発と誘爆が広がっていく。
 本来必殺属性を持つこの攻撃だが、今回に限って言えば葵本人の意思によって不殺を心がけており、その威力は止めを刺さないようにしっかりと減じている。多くの猿たちがこれに巻き込まれ、傷付き撤退していくのが見えた。
「まだまだ元気な奴もいるようッスね……ならこれをくらえ!」
 倒しきれない相手には、得意の強烈なシュートを見舞う。正確無比のコントロールから放たれる光線の如きボールの軌道は、狙い通り猿の頭を捕らえ倒した。
 ボス以外の猿を狙ってその数を減らさせるイレギュラーズの作戦通り、猿たちは徐々にその数を減らしていった。
 これに怒りを覚えるのはボス猿であり、自らも戦闘へと参じる形となる。
「人を傷つけたり食べ物を奪うことを、許すわけにはいかないんだ!
 腹が立つなら向かって来い! 受け止める! でも……引くわけにはいかないんだ!」
 猿たちの注意を引くリゲルが声を上げて、ボス猿の敵視を奪う。
 怒りのままにリゲルへと襲いかかるボス猿。強力な攻撃だが、怯むわけにはいかなかった。
「サポートするよ。――アウェイニング」
 ティアがリゲルの状態異常を消し去り賦活する。
 続けて魔力を編めば、放つは元の世界で多用していた呪いを付与する簒奪魔法。
 白き夜を思わせる真白な魔力が走り、猿たちに多様な異常を与えていく。
 アルメリア、ポテトと同じヒーラーとしての立ち位置であるティアは、このように状態異常の回復と活力の賦活を同時に行いつつ、また攻撃に手を割くことも多くあった。
 特にアクセルカレイドによる攻撃は猿たちの動きを阻害するのに有効で、多くの猿たちが苦鳴し血を流していったことだろう。
 三人のヒーラーの活躍によって、多くの傷害が軽減されたのは言うまでもない。特に盾役のリゲルは十分に支えられたと感じたはずだ。
 だが、十全な回復体制であったとしても不慮の事故というものは起きるものである。
「――ッ!」
 ボス猿へと肉薄し鎌を振るったサイズ。しかし目測を誤ったかその一撃は浅く弱い。振り返ったボス猿がサイズの喉輪を掴み地面に叩きつけると、その本体である鎌ごと砕くように我武者羅に拳を叩きつけた。
 怒濤の連続攻撃は、サイズの意識を奪うには十分であり、急ぎ敵視を稼ぎなおすリゲルが動き出すまで攻撃は続けられたのだった。
「それ以上は、やらせるものか――ッ!!」
 サイズを庇い立ちはだかるリゲルが、銀閃の如き剣を振るえば、自身を中心に眩い光が降り注ぐ。溢れんばかりの光にボス猿のみならず猿たち全員が目を覆った。
「皆! 今だ――!」
 リゲルの合図と同時にイレギュラーズの一転攻勢が始まった。
「さぁそろそろ終わりだぜ――!」
 ジェイクが引き金を引けば、どこからともなく砲弾の雨が降り注ぐ。多くを巻き込む制圧攻勢に猿たちが頭を抱え逃げ惑う。
 ボス猿が「恐れるな! 戦え!」と言わんばかりに鳴き声を上げる。それを見たジェイクが鋭い視線でボス猿を射貫いた。
「引くわけにはいかねえか。
 だが、引き際をわきまえねぇのは感心しねえな」
 狙い澄ましたように銃口を突きつけ引き金を引く。死を告げる魔性の弾丸は、まさに吸い込まれるようにボス猿の肩を射貫き、衝撃にボス猿が地面に倒れた。
 その瞬間、ボス猿は野生の勘で「こいつらには勝てない」と悟る。傷付く身体を引き摺り撤退を開始した。他の猿たちも多くは行動不能であり、ボス猿に従うように逃げ帰っていった。
「因果応報です。獣なら獣らしく、縄張りには気を付けないと」
 猿たちの撤退をスコープ越しに確認した鶫が、視線をはずしそう言葉にする。
「これに懲りて、暴れるのを止めてくれるといいんだけどな」
 逃げ出した背中に投げかけられたポテトの言葉は、猿たちに届くだろうか。
 舞い散る桜が、静かに戦いの終わりを告げていた。

●咲き誇る桜を見上げて
 猿たちより解放された桜は、心なしか嬉しそうに花を揺らしていた。
 戦い終わり、迷惑なお邪魔虫を排除すれば、そこは元の憩いの場に戻る。
「とはいえ、このまま、と言うわけには行きませんか。
 ――お花見をするにしても、まずは片づけないといけませんね?」
 鶫が一つ大きく息を吐く。目の前には猿たちが広げたゴミの山。まずはこれを片付けようと動き出した。
 そうして皆で協力して片付ければお待ちかねのお花見タイムという訳だ。
「さあ、皆食べてくれ! 俺とポテトの会心作だ!」
「リゲルがサンドイッチで、私がおかずだ。
 沢山作ってきたから良かったら食べてくれ」
 各種サンドイッチに、定番のおかず達。中にはエビチリやごま団子なんかもあってとても豪華だ。
「こいつは美味い! 飯もそうだが仕事の後の一杯は格別だねえ」
 すでに大騒ぎしそうなジェイクだが、そこは節度をわきまえて。
 本音を言えばリゲルやポテトのように恋人と来たかったものだが――それはまたの機会に取っておこう。
「桜を見ながらお酒飲むの良さそう」
『飲むのは良いがほどほどにな』
 桜を眺め食事を口に運ぶティアも、どうやら飲みたいようだ。飲んだティアの様子がどのように変化するのか、居合わせた者達の興味が向くところだろう。
「普段は気にかけないっスけど、こうやって眺めると結構いいもんっスね」
 葵も桜を見上げ目を細める。そうしていると一際聞こえるように腹の虫が鳴った。
「あーそうだ、メシ、これの為に頑張ってたんだわ」
 そう言ってサンドイッチを手に取り頬張った。ローストビーフの旨味が広がって実に美味い。
 戦闘の感想会などで盛り上がる面々の中、アルメリアは桜と自然会話で対話する。
「ふふ、そう。
 傷が付かなくて良かったわ」
 ポテトの保護結界のお蔭だろう。大きな傷もなく桜の木は咲き誇ることができている。そんな桜へと「おまじない」をしてあげる、とアルメリアが目を閉じ手を動かした。
「大樹ファルカウのご加護がありますように」
「なんだか良さそうなおまじないだな。ついでにこっちにも掛けてくれないか?」
 サイズが言うと、壊れた備え付けのベンチを指さした。サイズはこういったものを直すのが得意だ。了解したアルメリアが同じようにおまじないを掛ければ、サイズの手によって見る間に修理されていく。
 そうして花見を楽しんでいると、数匹のスキャッタルドが姿を見せ近寄ってくる。それは先ほど戦った猿だろうか。傷の跡が窺える。
「どれ、見せて見るんだ」
 ポテトが近づき怯む猿たちへ治癒の魔術を掛ける。傷を癒やしながらポテトは叱りつけるように言う。
「ここにはお前達以外に多くの命がある。人だけじゃない、桜の木だって生きているんだ。
 好きに暴れてはお前達の命を奪うことにも成りかねない。奪う、奪われるなんて、悲しいことだ。
 お前達が自重すれば一緒に楽しむことだって出来るだろう――だから、もう迷惑をかけないようにな?」
 母親のように叱りつける言葉は届いただろうか。少なくともスキャッタルド達は傷を癒やされると暴れることなく、物欲しそうに眺めたあと去って行った。
「猿たちが可哀相な気もするが……餌付けは最もやってはいけないことだ」
 それは自然の掟。人の手によって旨味を知れば、また増長し暴れ出すだろう。
 リゲルは硬くそれを守るのだと、気持ちに割り切りを付けるのだった。
「さあ、もう少し花見を楽しんでから帰ろう」
「それではお茶もお入れしましょう」
 片付けを終えた鶫も参加して、イレギュラーズの賑やかな花見は今しばらく続くようだ。
 緩やかで暖かな風が吹き、春を彩る桜の花びらが空に舞い散り踊る。
 深緑の誇る豊かな自然の一つは、こうして守られたのだった。

成否

成功

MVP

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

状態異常

サイズ(p3p000319)[重傷]
妖精■■として

あとがき

 澤見夜行です。

 皆さんのおかげで桜は守られ、この場所に花見に訪れる人々の笑顔が守られたことでしょう。
 しっかりと叱られたスキャッタルド達も少しは反省したはずです。二度と同じような事が起こらないと良いですね。

 MVPは多くの敵を引きつけ耐え抜いたリゲルさんに送ります。攻守のバランスが良かったですね。

 依頼お疲れ様でした!

PAGETOPPAGEBOTTOM