シナリオ詳細
エディの誕生日
オープニング
●なんでもない日。
ローレットの傭兵である『狗刃』エディ・ワイルダー(p3n000008)。3月30日に彼は生まれ、若い頃からローレットに所属しその刃を奮って傭兵としての名声を高めてきた。
それ以外の生い立ちについて当人はあまり語らないが、少なくとも明るい話ではなさそうなので周囲の仲間がそれを問いただす事は無い。
誕生日についても、その辺り気にしないのか本人が毎年忘れている。他人に言われてようやく思い出すくらいだ。
「そういえばエディ、貴方のパステルブルーな誕生日ね」
「あぁ、だが年を取っても嬉しい年頃じゃなくなった」
情報屋相手にそんな反応を返して、粛々と仕事の話を進める。それが毎年の通例だ。
今年も相変わらずそんなやり取りが行われたのであろう事は長年ギルドに仕えたものなら想像に容易かった。
「彼も意地っ張りよね。あんな照れ隠しする必要はないのに」
少しむっつりとした顔でそう述べる年齢不詳の情報屋、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)。
彼女が不機嫌そうにしている理由は藪蛇だから置いておくとして、イレギュラーズがエディに秘密で集められたワケを清聴する事にした。
「けれど、仲間の誕生日をお祝いしないのも煤けた色みたいに意地が悪い話よね」
その様に言ってから、彼女は段取りを話す。お花見という体でパーティーの用意しておくから、イレギュラーズ達にはエディを誘ってそれに参加してもらいたいと。もちろん彼にはお祝いだというのは内緒だ。
場所は花見桜の観光名所。一般客相手に稼ぎ時だからとお祭り事の露店なども開かれており、桜にちなんだ酒やお菓子がヨリドリミドリ。
誕生日に肖って御馳走を楽しむのもいいし、エディと盃を交わしてもいい。彼も繊細な人間ではないから、よほど行儀の悪い事をしなければ難しい事はないだろう。
――もっとも彼女としては、先刻の仕返しも兼ねて仲間達に祝われて照れているエディの顔を見てやりたいといったところだが。それをわざわざ口にするほど彼女は煤けてない。
「まぁ、せっかくの祝い事。貴方も参加してもらえると私も嬉しいわ。…………あ、下着なんて持ってきちゃダメよ?」
気さくな冗談を言う様にして色彩の魔女は穏やかに微笑んだ。しかし目が笑ってなかった。
- エディの誕生日完了
- GM名稗田 ケロ子
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年04月21日 22時35分
- 参加人数12/50人
- 相談10日
- 参加費50RC
参加者 : 12 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(12人)
リプレイ
●お花見街道
山桜がほころぶ此処は、一般の親子連れや若者達のグループ、あるいは男女のカップルが多く見受けられた。
市民にとってもかけがえのない憩いの場であった。しかし賑わう場所に行儀の良くない人間も混じるものだ。
「何処に目つけてるんだ嬢ちゃん」
年端も行かない少女が、柄の悪い男性に絡まれていた。肩をぶつけられた事に難癖を付けているといった所であろう。少女は怯えながらも相手に抗議したが、男は不愉快そうにする。
「いいから黙って財布を寄越しやがれ!」
男は拳を振り上げる。少女や周囲の人間達は思わず身構えた。だが、拳が振り下ろされる前に鈍い音が響き、男の方が地面に倒れ伏す。
軍人風の女性が男の後頭部に一撃加えた様であった。治安兵といった様子ではなさそうだが。
「何があったんだ?」
ローレットの一行が騒ぎを聞きつけてやって来て、その場に居た軍人風の女性、フィーアの顔を見た。彼女は大した事ではないと首を振る。
各々はそれで納得した様な反応を示し、エディもそれに頷いた。
「怪我人が居るなら治療してもらおう。治安兵が近くにいる」
察しが良いのか悪いのか、生真面目にそう言うエディである。
●サプライズ
「こんな麗らかなポカポカ陽気の中お花見もお祝いもできるなんて呑気でいいことですわあ」
場所取りをしてもらっている予定地へ仲間達と共に歩みながら、そう話題を向ける獣種のブーケ。
「張り詰めた気も安らぐだろう」
「避けられへん戦いもあるんやさかい、遊べる時に遊びましょ」
そう言い合うエディとブーケ。周囲には見た目肉食系の人間が多く、兎のブーケにとって多少身が竦む思いもあるが、この場でそれを言うのも野暮だろうと笑い返す。
ブーケの何処かしら緊張している様子を見て、エディは「彼の近くに居ると落ち着くぞ」とグレイルを指さした。
「……僕?」
実際、彼にはその性質があるのだから的外れではないが。きょとんとするグレイルと顔を見合わせて、ブーケはクスリと鳴らす。
「いやぁ、かないませんわ」
グレイルも狼の獣種。いわゆる肉食系だ。
「此処のはずだが」
予定地に辿り着いた一行。だが場所取りをしている仲間達の姿が無い。どころか、周囲の木々は局所的に花を付けていない。
道に迷ったか。エディが首を傾げていると頭に乗っていた小人のリリーが何か思い出したかの様に話し始めた。
「さくらのきのしたには、ひとがうまってるんだって」
「怪談話か?」
「うん。きれーなおんなのひとがー」
エディの耳元で彼女なりに精一杯、声を作っている。話している内に、後ろから形容し難い女の啜り泣く声がした。リリーは「きゃあ」と声をあげ、他の者も慌てて振り向く。その先には、和服を着た半透明の女の姿があるではないか……。
耳元の叫び声にエディは顔を顰めながらも、その啜り泣く女に向けて声を掛ける。
「あまり驚かせてくれるな、政宗」
「あは、バレちゃってる?」
泣き真似をやめ、パッと艶やかな笑顔を浮かべる政宗。すぐに霊体化のギフトを解いた。同時に、並木の枝々が移り変わっていく様にして桜が開花していく。
「れでぃーすめーん、じぇんとるめーん」
甲高い少女の声が響いた。キューアが仲間達と共に奇術じみた事を仕掛けていた様子だ。
「ふふふ、ごめんねぇ。エディさんお誕生日おめでとう!」
「たんじょーびおめでと、エディさん、リリーからははなたばをよういしたよっ」
余興が落ち着いてから、政宗とリリーが二人してその様にして言葉とプレゼントをエディに贈った。彼らだけでなく、他の者も次々に贈り物をしていく。
当のエディは目を丸くしていたが、やがて誕生日に因んだ代物が幾つも紛れている事を把握している様だった。
●宴会騒ぎ
それから一段落し、皆が席に着いて料理や飲み物が行き届いてから仲間の一人が乾杯の音頭を取った。
「わざわざ手間の掛かる事をしてくれなくともいいだろうに」
「すまんな」
エディの物言いに、苦笑いするウェール。彼は食べ物を用意した次第だが、可愛らしいデザートを目の前にするエディの姿が予想以上に似合わなかった。桜クリームのシフォンケーキとビターチョコの2ホール。砂糖菓子付き。
「誕生日用の蝋燭とライターも用意しなきゃな。お祝いの歌は三十路として俺も恥ずかしいから歌わないが」
俺だって同じ位だぞ、と狗刃が目を細めた。だからといって、突っ跳ねる器量は彼に無い。相手が妙に気合を入れて振る舞っているから尚更だ。
「日々が荒波のような激務だからこそ、節目というのは大事だよね。うん。きっと」
宥める様に桜色のサイダーをエディに酌をするアクセル。
「それじゃあ、エディさんの代わりに一つ頼もう」
「りょうかい。エディお誕生日おめでとうー!」
演奏を頼まれ、その心得のあるアクセルが楽器と声色で祝いの歌を奏で始めた。それに聞き惚れたのであろうか、誕生祝いの歌にも関わらず一般の客も幾らか聴衆に来たのが見て取れる。
思わず額を手で覆うエディ。
「祝うからには何か……エディさんの喜ぶことをしたいけど……」
その様子をグレイルが不安そうに見ていた。きっと嫌がっている風に映ったのであろう。
「十分に喜んでいる」
エディはその様に言葉を返した。本心だ。だが俺は器用な人間ではないと言いたげに、グレイルを見返す。
「知り合って大分経つけど……エディさんのこと何も知らない……」
その態度に思い悩んだ風に言葉にするグレイル。
「だからさ……これを機会にエディさんのこともっと教えて欲しいな好きな物とか……趣味とか……」
言わんとする事を理解したのか、エディは静かに頷いてからグレイル含めた仲間へ向けて言葉にした。
「俺はエディ・ワイルダー。ローレットギルドの傭兵で趣味は、武器を手に入れる事だ」
「改めて……グレイルです……好きなものは紅茶で趣味は散歩かな……?」
その様にお互い自己紹介をしてから、グレイルはエディに手製のドックタグを贈る。
「ホンカク的に飲むのはハジメテだよね。オレはイグナート。ヨロシク!」
グレイルに続けて、盃を交わしながらイグナートも軽い自己紹介を述べる。
「あぁ、改めて宜しく頼む」
珍しく機嫌の良さそうなエディを見て、他の仲間も自己紹介も兼ねて酒を飲み交わしに来た。
「俺はカイト! ところで、エディって何歳なんだ?」
カイトの羽毛に桜の花びらが入り込んでいる様子を見て多少笑みを浮かべながら、受け応えるエディ。
「今年で三十になる」
「え、三十? 若作りしてない?」
驚いた仕草で花びらがはらりと落ちる。カイトは通りでしっかりしてる訳だと納得した。
そしてふと「そういえば」とイグナートが言葉にした。
「パンツを持ってこいって言われてたんだけれど、エディが好きそうなパンツは見つからなかったんだ」
エディの顔が強張る。横で聞いていたカイトは笑顔で乗ってきた。
「闇市にレオンやブルーのパンツはあるけどエディのパンツはまだ出品されてないんだよなー。……褌派?」
「エディさんという方の誕生日パーティーするって聞いてきたんだけど! だれだっけ! あれ? なんだっけ、ぱんつの悪名がついた人なら知ってるんだけど……」
露店巡りから帰ってきた所で話を耳にしたクソ犬、もといロクが純粋無垢な顔で聞いてきた。
「ぱんつさんのお名前は……?」
ヒソヒソと声を潜める一般人達。わなわなと震えたエディは、拾い上げた石礫を二人に投げつける。
「ピィ!」「わぁ、なんで怒るのさぱんつさん」
二人ともそれを当てられまいと、すぐさま遮蔽物へ逃げて行く。
「エディ、なにかあったノカ?」
不思議そうにするイグナート。エディはどう説明したものかと溜息をついていた。
●そーしてこれから
「先輩。お疲れ様ッス!」
後始末を始めようという所でエディに声を掛けるヴェノム。
「三十過ぎると肉体の維持は大変になると聞く所存。故に毎日のけあをしなければなりません」
だから、自分に何なり命じてくれと彼女は言う。両手をワキワキしてるのは気の所為か。
「また誤解されるか、茶化される」と軽く返すエディ。建前はさておき、こういう席でも仲間に命令するという事は性に合わないのが本音だろう。
ヴェノムは承知した風に「ちぇー」とわざとらしく残念がった後、呟く様に口にする。
「実際、感謝してるす。僕、あんまり人と関わるの得意じゃないんで」
真面目な話と受け取ったのか。返す言葉を悩み始めるエディ。ヴェノムはそれを眺めて、苦笑した。
「何だかんだでよくしてくれるエディ先輩とか。ありがたいす。なんで、まぁ。もう少しだけ付き合ってほしいっすよ。せーんぱい?」
ヴェノムの言葉を聞いてから、納得した様に頷いてエディは口を開く。
「いわれなくとも、最後まで付き合うさ」
傭兵としてローレットの仲間達に尽くすのも悪くない。仲間にこの様な場を儲けられて、改めて思うエディであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
エディさん、誕生日おめでとうございます。私も彼と共に、最後まで歩んでいければいいな。歩んでいけるのかな。と生真面目に考えつつ、こんな感じで今回は幕を下ろします。
ともかく、誕生日にご参加いただきありがとうございました。
GMコメント
エディさん、十歳。稗田ケロ子です。
環境情報:
本日は快晴ナリ。本日は快晴ナリ。時刻は昼頃から夕方の間、場所は幻想地帯の自然公園。
見栄っ張りな貴族が自領の名所として整備してるせいでやたら環境が整ってる。春は露店の税を徴収する代わりに一般開放されてるのでかなり盛況。
数十メートルの道沿いに桜の木々が敷き詰められて、その下に露店やそれを食するイス・テーブルが配置されている形。
露店にありそうなものは基本的にあるので、輪投げや射的とか露店があるかもしれない。エディや他の人と競争したい人はプレイングで提案宜しくお願いします。(相談掲示板で提案すると他の人も参加したりし易いかも)
流れとしては名所に到着⇒パーティー用意されている席で飲み食い、ですが上記の提案含めてPCさん達の積極的に採用する予定なので進行は自由かつ可変的になると思います。
NPC:
『狗刃』エディ・ワイルダー
他の依頼ヨロシクお花見だと聞いて興味本位でやってきた。自分の誕生日のパーティも執り行われるとは露にも思ってない。
話を振ると大体乗ってくれるのでこの機会に聞きたい事聞けるかも。
ちなみに酒は大量に飲ませようとすると、性格が崩れる前に眠る。
注意事項:
・一行目に同行者IDまたは【グループ名】を添えて下さると迷子防止に。
・あまりに度が過ぎたおふざけ等、倫理的にアウトなのは描写出来ません。(未成年の飲酒や喫煙はダメヨ!)
あと念の為付記しておくと、ぱんつ類はエディさんは凄い嫌な顔しそうですがGM的にはOKです。ただし周囲から奇異の目で見られて一緒にギャグ時空に放り込まれる可能性高いです。
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