シナリオ詳細
水場に住み着く水妖達
オープニング
●返り討ちに遭う傭兵達
ラサ傭兵商会連合、通称傭兵。
砂蠍残党狩りでの共闘もあって、彼らからもローレットから依頼が舞い込むようになってきた。
自由を愛する土地柄であるこの傭兵では、商人と傭兵団が結びつく連合体が構成されており、商人達からの依頼で傭兵達が動くことも多い。
一見すれば、傭兵達がほとんどを解決してしまいそうな気もするが、意外にもそうではない。
例えば、利害が不一致となった傭兵達が小競り合いを行ったり、複数の団体があるからこそ権力者争いが起こったりもする。
また、傭兵達の強さも一様ではない。
駆け出しの者達が不相応な依頼を受け、返り討ちに遭ってしまうなんて事件も発生する。
とある傭兵の一隊が受けたのは、水場に住み着いた水妖セイレーン討伐依頼。
上半身は水着を纏った女性、下半身は魚のそれを持ち、全身が水のような質感のモンスター達だ。
どこか現れたのかはわからないが、3体の水妖達は竪琴を手に水場へと近づく者を片っ端から惑わし、自らの虜としてしまう。
それだけでも十分害悪だが、相手は惑わせた者を自分の欲のまま好き勝手に操り、最終的にはその肉を喰らってしまうのだというから穏やかではない。
さて、傭兵達もそんな危険な相手の討伐へと乗り出したのだが、どうやら彼らには荷の重い依頼だったらしい。
「うふふ……」
妖艶な笑みを浮かべるセイレーン達は竪琴の音を鳴り響かせ、さらに歌声を響かせることで傭兵達を惑わせる。
ほぼ無防備になったのであれば、こちらのもの。
新たなおもちゃを手に入れた彼女達はどうしようかと顔を見合わせ、子供のように無邪気な笑いを浮かべるのだった。
●水場の確保と傭兵達の救出を
ローレットへと舞い込むラサからの依頼。
それを受け、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)がイレギュラーズ達を傭兵の首都、ネフェルストへと呼び寄せていた。
「海種の私には、少し乾きすぎる場所ですね……」
水分摂取にも少しばかり苦慮する場所ではあるが、情報屋なのだからと、アクアベルは気合を入れて依頼について語り始める。
依頼内容は、傭兵国内某所の水場の確保。
そこにはどうやら、セイレーンと呼ばれる女の姿をした水妖が3体住み着いたとのことで、その討伐を行うのが目的だ。
「ただ、残念なことに、依頼を受けたのは私達が2組目なんです」
先に、傭兵の一隊がその討伐に向かったのだが、2、3日経っても帰ってくる様子はない。
どうやら、セイレーンに惑わされ、下僕とされてしまっているようなのだ。
「精神攻撃を得意とする相手です。その対策は行うべきだったのでしょうが……」
傭兵達も屈強な相手でないからとタカをくくったのだろうが、それで逆に手を煩わせるのだから始末に負えない。
説教の一つもしたいところだが、この水妖達は気まぐれに下僕とした相手の肉を喰らうこともあるという。
「早めに救い出さないと、手遅れになるかもしれません」
すでに、場所と敵能力はアクアベルが調べてくれており、資料として纏めてくれている。
それを元に、手早くセイレーンの討伐に当たりたい。
事後は、救出した傭兵達へと説教や小言を言うのもいいし、依頼に対する心構えを一から叩き込むのもいいだろう。
説明を終え、現場へと向かうメンバーをアクアベルは見送って。
「行ってらっしゃいませ。無事のお帰りをお待ちしていますね」
彼女は依頼の仲介窓口として、しばらくネフェルストに留まる様子。
イレギュラーズ達はアクアベルを残し、現場の水場へと向かうのである。
- 水場に住み着く水妖達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年03月31日 21時50分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●荒野と水妖
ラサ傭兵商会連合、通称傭兵付近の荒野。
作戦の為、馬の獣種の『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)が用意した馬車を物陰に止めてから、イレギュラーズ一行はそこから現場に近づいていた。
乾いたこの地方において水は貴重であり、水場が奪われてしまうことは周辺に住む者の死活問題ともなりかねない。
「こんな暑い所でお水が使えないなんて大変ね~」
髪で片目を隠し、色黒な肌の『おばロリババア』レスト・リゾート(p3p003959)。
少女にも見える容姿だが、こう見えて他メンバーの誰よりも長生きしている幻想種だ。
メンバーが受けた依頼は、こんな地の水場に出没した水妖退治とのこと。
「セイレーンたちって、どこから来たんだろう?」
ギフト『デュアルアバター』によって、男女のアバターを使い分けられる『ハム子』主人=公(p3p000578)がそんな疑問を抱く。ちなみに公は今回、女の子の姿を取っていた。
目的地へと近づく公の眼には小さな水辺にしか見えず、自然発生するようには見えないのだが。
「ここ、荒野。水妖何処から来た?」
同じく、『原始力』リナリナ(p3p006258)もそれを聞いて思い浮かべようとするが、原始少女の彼女には難しすぎた様子。
「それとも、雨季の際に取り残されたりしたんだろーか」
公が語る推論にもあるが、荒野や砂漠には全く雨が降らないわけではない。
ごくまれに振る雨を荒野の地面は吸収できず、洪水となって辺りに押し寄せることがあるのだ。
ところで、最初この事件の話を聞いた『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)。
黒目に黒髪の眼鏡っ子の彼女は異世界ならではのセイレーンの奏でる竪琴の音色や、歌声に興味を惹かれていたのだが……。
「ひ、人食べるの? ……食物連鎖のお勉強は間に合ってるわ」
魔物の恐ろしさをそれだけで実感し、身震いしてしまっていたようだ。
情報屋アクアベルの話によれば、傭兵も帰ってこないということから、彼らの身も案じる状況だとレストも考えて。
「皆で協力して、花マルな感じで解決しちゃいましょ~」
それにメンバー達は同意し、間近に迫ってきた水場へと足早に駆けていくのである。
水場には遮蔽となる岩場はあるが、日の光を完全に遮るほどではない。
現場に近づくにつれ、恋属性の魔法少女の『恋の炎を散らす者』無限乃 恋(p3p006272)は強力な恋フィルターを全開にして。
「眩しい太陽! 熱い砂浜……っぽい砂漠! 寄せては返……さないけどそう思っとく! 波! そして、岩陰!」
他世界のごく普通の女子高生風の見た目をしたからすれば、荒野の水場すらもそれっぽい出会いの場所に早変わり。
「……うん、わかる。ここは数多の恋を生んだ、伝説のナンパスポットに違いないわ」
3人のセイレーンは目を付けたこの場に居つき、逆ナンしているように、恋には見えるらしい。
「おぉ……、大分ひどい事になっている」
だが現状は、ごく普通の異世界の青年『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)が目にしたように思う者がほとんどだっただろう。
「はああっ!」
「おのれ、負けるものか」
その岩陰にある水辺では、5人の男性傭兵達が剣で互いに斬り合っていた。
男性達の殺し合いを、水場の中から楽しそうに眺めているのは、全身が水のような質感の魔物セイレーン達。
そいつらは代わる代わる竪琴の音色を鳴り響かせ、男性達を惑わし続けて争わせていたのだ。
「やっぱり、事前準備って大切だよね」
改めて、情報屋のありがたみを感じる威降は、自身も気を付けようと考える。
幻想出身で、その日暮らしの生活をしていた過去を持つ少年『鳶指』シラス(p3p004421)は、念入りに厄除けの術をその身に施してきていた。
「手間かけさせやがって。だが、これでセイレーンの歌なんて恐くないぜ」
これだけの備えが出来るのも、事前情報のたまものだ。
「でも、今回は良かったね。傭兵さん達は大変だろうけど、まだ何とかなる範囲だ」
まだ、今の状況ならば、彼らを救い出せると威降は意気込む。
「とにかく、傭兵さんたちを助けて上げなくっちゃ!」
公も、彼らが依頼を失敗するだけでなく、他の旅人に被害を出すと仕事を続けるのも難しくなっちゃうだろうと気にかけ、その救出を目指す。
「リナリナのお仕事は分かる!」
傭兵救出もそうだが、水妖退治。
それによって水場を取り返すことだとリナリナも認識するが、仲間達の作戦は今一つ理解できなかったようだ。
「おー、任せろ!」
とりあえず、腕を振り上げて気合を入れるリナリナである。
「おっけい、あたしも恋に生きる乙女、相手にとって不足無し!」
傭兵君達を賭け、セイレーンへと勝負を申し込む恋は策があるのか、水着姿になって水辺へと進み出る。
「商人と傭兵は持ちつ持たれつ。将来の仕事仲間かもしれないしな」
武装商人の一家出身のラダは、彼らが大けがしてしまう前にと仲間と共に作戦を開始するのである。
●水妖の抑え、傭兵の救出を
まず、メンバー達は水妖に魅了されている傭兵達から対処を始める。
メンバーの中で真っ先にシラスが飛び出し、彼らの目を覚まさせる為にと傭兵達の刃を『捻れ七竈』で捌き始める。
「これでも結構、鍛えてるんだ。駆け出しの攻撃をしばらく捌く位なら訳無いぜ」
彼がタイミングを計る間に、他のメンバー達も前に出てくる。
そこへ、水着姿の恋が正攻法とばかりに飛び出す。
相手が水着姿をしているという話もあり、恋はこの格好で立ち回るのだが、それだけではない。
ジムやエステで美術的で高めなレベルのプロポーションだと自負する彼女は、色彩感覚を生かして光源、陰影のコントラストまで計算し、可愛らしく見せる術をこれでもかと披露する。
傭兵達がこちらを見たその瞬間に、彼女は魔眼で魅了を解除しようとした。
とはいえ、相手の催眠は戦闘スキルによるもの。
非戦スキルでの上書きは難しいとすぐに察した彼女は恋電波を発し、彼らの気を引こうと動いていたようだ。
「さあ、質問! 彼女にするならどっち!?」
ただ、彼らが今なお催眠状態にあるのは変わらず、その刃をイレギュラーズ達へと向けてきていた。
「あら……?」
「また獲物が来たわね」
そこで、セイレーン達はイレギュラーズ達の存在に気づき、艶めかしい笑いを浮かべてメンバー達を惑わせようとしてくる。
「傭兵さん達の救出は皆に任せるよ。そのための時間と隙はボクが作る!」
蛍は持ち前の抵抗力と『白梟の誇り』の力で惑わされぬようにしつつ、水妖どもの抑えに全力で当たる。
持ち前の委員長気質をオーラとして発し、蛍は水妖達の気を引こうとしていく。
レストもまた、頭一つ抜けた抵抗力の持ち主。
水妖になどに惑わされぬ力を持つのもそうだが、レストはそれだけではなく、相手の能力を阻害する簡易封印を施して。
「は~い、悪い子は静かにしましょうね~」
「かっ……!?」
セイレーンの1人が声を出せなくなり、戸惑うところに公が別の敵をマークする。
公もまた精神耐性を施しており、傭兵救出の邪魔はさせぬようおびき寄せる為にと魔砲を撃ち込んでいたようだ。
また、リナリナは大きく水場を回り込み、こっそりと水場の遮蔽となっている岩場へと登っていた。
(這いつくばって待機! 待機! 這いつくばる。ここ大事!)
低姿勢のまま胸を張る彼女には傭兵救出作戦が難しく、不殺スキルが使いづらいと認識していた。
自分は足を引っ張るではと思い至り、リナリナは絶好のタイミングで飛び出せるよう、傭兵対応班が役目を果たすのを待つ。
その間に、傭兵対応班の対処は進む。
「ローレットが来たぞ。早く目を覚ませ!」
シラスが大号令を発して傭兵の目を覚まさせる。
なんのきっかけでまた彼らが魅了されるか分からないと判断したシラスは、傭兵から武器を取り上げて遠くへと放り投げていた。
また、一行はセイレーンの歌が止まっていることで、時間経過で我を取り戻すのを待つ。
威降も自身が名乗り口上で引き付けていた傭兵が目覚めたことで、使役する式神にラダの馬車へと移動するよう指示を出させる。
最後の手段で蹴り倒すことも考えていただけに、早めに目を覚ましてくれたことを安堵するばかりだ。
同じく、馬車の持ち主であるラダ。
「全員乗ったら、ここを離れてくれ。救急箱は好きに使っていい」
彼女も傭兵達にそう指示を出すと、我を取り戻した彼らは傷を庇い合うようにしてこの場から離れていくのだった。
●確実に撃破を
この場に残るのが水妖、セイレーンだけとなれば、後は手早く片付けるのみ。
「この程度の広さなら、問題なく間合いに入るな」
シラスはまず個別に見定めた敵1体目掛け、そいつを中心に空間を瞬間的に圧縮していく。
「見た目は美しい海種だろうと魔物は魔物、容赦はしない」
相手は人を弄ぶだけでなく、その肉を喰らいすらしてしまう魔物だ。容赦などできようはずもない。
傭兵を奪われ、歌えず、歌えてもまるで魅了されぬ相手に、セイレーン達は戸惑いを隠せない。
そこで、音で状況を察し、馬車へと傭兵達が向かうのを目視で確認したリナリナも水場へと飛び降りていく。
「ここ水妖禁止! ガオォォォ~!!」
「新手!?」
ジェットパックを使って位置を調整するリナリナは、恐竜の声真似をすることで、セイレーン達の身を竦め、さらに全員を水場から弾き飛ばしてしまう。
その間も、レストは敵能力を阻害する封印を水妖達へと施し続ける。
精神耐性を施すメンバーも多いが、そのレストの簡易封印は傭兵達がスムーズに逃げ出すことに一役買っていたのは間違いない。
「…………!」
実力行使にと直接攻撃を仕掛けてこようとするセイレーンだが、近距離で使う抱擁、尻尾の攻撃すらも封じられている状況は敵にとって痛手だろう。
近づいてきた敵へ公は剣に変えた『グリードマン』で切り込み、相手の運気を強制的に落とした上で恍惚状態にしてしまう。
「…………」
思ったよりも早く傭兵達の救出が完了したこと、そして、相手の能力を封じていたこともあり、蛍は余裕をもって水妖と対する。
足元が水場でややぬかるんでいる点は簡易的な飛行術式で少しだけ浮遊し、機動力を維持しつつも委員長特有の圧迫感で相手を引き付けようとする。
できれば、蛍は自分に3体とも引き付けようとしていたが、そこは恋も自らの魅力でセイレーンを挑発する。
「この魅力と熱視線で、敵の心だって鷲掴み!」
怒りのままに、敵は細腕や竪琴で殴りかかってくるが、そんなダメージなどさほど痛くもない。
避難を済ませて飛び込む威降は足もとに注意しつつ、妖刀『不知火』を手に、神速の刺突を仕掛けてセイレーンの体を穿つ。
前衛陣がうまく対処してはいたが、距離を取るラダは岩陰からライフル銃『Schadenfreude』の銃口を出し、アタッカーとターゲットを合わせて狙撃していくのである。
●その歌声は響かないし、響かせない
事前情報なしで戦えば、水妖セイレーンはイレギュラーズとて苦戦する相手には違いない。
汎用性のある装備一式では、どうしても魅了による被害からは逃れられぬ部分がある。
だが、今回は事前情報と被害に遭っている傭兵達のおかげで十分に対処できた。
そんな人心掌握に長ける敵に特化したイレギュラーズ達が相手では、セイレーン達もなすすべはない。
「おー、人食べる水妖全員アウト!」
リナリナは剣『掘り出し物』をつかみ、仲間が狙う水妖目掛けて刃を振り下ろす。
敵は蛍と恋が主だって押さえつけているが、まずは蛍が相手取る1体に攻撃が集中する。
リナリナがうまく陸へと吹き飛ばしていたこともあり、蛍は相手を煽りながら仲間達に攻撃を託す。
(人の心を惑わせ、破滅させてきたセイレーン達が、今度は怒りの為に破滅を迎えるなんて、因果応報、かな)
やってきたことを考えれば、憐れみの情すら抱かぬ相手。
そいつへとシラスは再度、空間を瞬間的に圧縮していく。
「………………!!」
断末魔の声すら上げられず、どろりとその身を崩していく水妖。
ただ、シラスもそのスキルを行使することによって、かなりの負担を強いられ、顔をしかめていたようだった。
2体目。
こちらは水着姿の恋が敵の心をつかんだまま、平手打ちしてくる相手をあしらっていた。
恋は相手を抑え続けながらも、合間に鮮やかな火花を発生させて、セイレーンの体を燃やしていく。
公も相手をマークしつつ、刃で切り込む。
運命に愛された公の使う『ラッキーストライク』は、気づけば勝因となる一撃を繰り出すといもの。
それによって、恍惚とした敵がややボーっとした態度を取り始めたところで、狙撃するラダが狙い撃つ。
リナリナがうまく陸上におびき寄せてくれたことは、ラサ出身のラダにとっては実にありがたい。
(しかし、この荒野と砂漠のどこから湧いたんだか!)
敵が陸上にいるなら、水の抵抗力によって銃弾の威力を弱めずに済むし、何よりも水を汚さずに済む。
水の大切さはその身に染みて知っている彼女は水妖の頭を撃ち抜き、その1体を倒していった。
残りは1体。
威降は妖刀での刺突を繰り返していたが、突然、目の前のセイレーンが声を上げる。
「ふう、やっと声が出たわ」
自身のスキルが使えることを察した敵は、イレギュラーズの多くに歌声が効かぬことを承知していたからか、その尻尾を叩きつけようと跳び上がる。
「は~い、大人しくしましょうね~」
だが、レストがすかさず、簡易封印を再びそいつへと施していく。
「…………!!」
力を失って地面へと落ちてしまうセイレーンへと、リナリナが勢いのままに斬りかかっていく。
続けざまに、公が儀礼剣『ジ・エンド』へと武器を持ち換え、相手の体へと深く突き刺した。
その刀身には、呪いの力も込められている。
「…………」
しばらく口をパクパクさせていた水妖はやがて力尽き、その身を荒野の地面へと崩してしまったのだった。
●この先は慎重な対応を
まずは、メンバー達も事後処理へと当たる。
ラダの発案で、倒した水妖の死体は水場から話して埋めていく。
その間に、武器を回収しに戻ってきた傭兵達へとラダが問いかける。
「怪我はどうだ?」
威降も合わせ、彼らの状態を確認する。
互いに斬り合った傷がまだ痛むようではあったが、応急処置で済ませられる程度の傷で、大事には至っていないようだ。
「今回は失敗してしまったけれど、お勉強になった事も多かったわよね~?」
レストが優しく慰めるものの、さすがに自分達が助け出される立場になったことに少なからずショックを覚えてしまっていた。
「あまり自分を責めてはダメよ? 次の機会に活かせば、大丈夫なんだから~」
そんな彼らを安心させるべく、レストは水場の水でお茶を淹れて振る舞っていた。
「これを機に、ラサの人達も水辺の魔物について理解を深めてくれるといいわね」
蛍の一言に、ラダは少し考える。
確かに、この辺りではそう頻繁に出る魔物ではないだろうが……。
「ラサじゃ水妖を相手する機会も少ないし、運が悪かったとも言えるか」
これにめげずに活動してほしいが、準備は大事だとラダは話す。
「そうですね。情報に気を付けてくださいね」
「これを教訓として慎重さを身に付けられたら、きっと大成できると思うわ!」
威降が包帯を巻きつつ彼らに注意を促すと、蛍もまた傭兵達を元気づける。
少しずつ元気を取り戻していた傭兵達に、恋も近寄ってきて。
「傭兵君たちも、あの位で魅了されてたら、伝説のナンパ師にはまだまだよね」
どこから、伝説のナンパ師が出てきたのかはさておき。
だから、あたしが鍛えてあげると、恋は彼らを魔眼で見つめる。
「えい!」
悲しいかな、恋に惑わされてしまう傭兵達。
準備ができぬままだったからということをひいき目に見ても、この先が思いやられると感じてしまうイレギュラーズ達である。
それを目にし、シラスは改めて情報、準備の大切さを感じながら、報告へと戻っていく。
「片付けて来たぜ、いつも助かるよ」
情報屋は俺達の命綱だと語るシラスに、情報屋アクアベルは恥ずかしがりながらも笑顔を浮かべて礼を返すのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはレストさんへ。
完全に傭兵達を戦場から離脱させてしまったのは、正直想定外でした。
今回も参加していただき、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
傭兵からの依頼、どうか受注していただきますよう願います。
●敵……水妖、モンスターの類です
◎セイレーン×3体
海種にも見える容姿をしておりますが、モンスターの類です。
人々を惑わして好き勝手操った挙句、最終的にはその肉を喰らってしまいます。
以下のスキルを使用します。
・惑わしの歌(神遠扇・魅了)
・永眠のいざない(神中域・乱れ)
・熱い抱擁(物至単・混乱)
・テールアタック(物近列・飛)
●NPC……傭兵×5人
いずれも男性5名。
剣と弓or銃と近遠対処できる程度に武装しています。スキルでの回復手段を持ち合わせていません。
能力的には、駆け出しの域は出ている程度といったところ。
少し上の依頼を受けた挙句、準備不足もあって体のよい獲物となってしまった残念な傭兵達です。
残念ながら、戦闘開始の地点では全員がセイレーンに惑わされています。
こちらからスキルで回復は可能ですが、常に彼らは惑わされる可能性がありますので、何らかの対策が必要でしょう。
●状況
荒野ばかりの傭兵において、貴重な水場を奪う水妖の討伐を目指します。
現場は岩場が火の光を遮る物陰となり、水が地面から湧き出る場所です。
その深さは一番深いところで1m程度。広さは縦7m、横10mほど。
到着地点では、水場に浸かるセイレーン達は操る傭兵達を水辺で互いに操って戦わせているようです。
敵はイレギュラーズに気づくと操る傭兵達を差し向けつつ、攻撃を仕掛けてきます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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