シナリオ詳細
盗掘団をやっつけろ!
オープニング
●厄介な奴等
大陸西部、迷宮森林。
深緑の領土であるこの広大な森には、旧時代の遺跡が多数確認されており、そのほとんどが手つかずのまま存在していた。
深緑に住まう幻想種のほとんどが、そこに莫大な財宝、歴史的価値のある品々が眠っていようと、それらを意味も無く掘り起こすことに積極的ではないのである。
なによりも深緑に取ってみれば、それら遺跡は貴重な文化遺産であり、積極的な調査を行うよりもまず先に保護を行っていく対象なのだ。
故にその周辺環境への注意は厳しいもので、迷宮森林、そしてそこに眠る遺跡を荒らすものがいれば、温和な性格である幻想種といえど、武器を手に簒奪者達に抵抗の意思を見せる。
そのようにして森の平和と自国の歴史的遺産を守っていたのだった。
その報告が入ったのは突然のことだった。
迷宮森林北西部に存在するサトゥナと呼ばれる遺跡。その周囲で不審な連中が行動しているのが確認されたのだ。
森を守る自警団に所属し、先頃一グループのリーダーとなったハーモニアの少女アルティナは、仲間と共にサトゥナ遺跡周辺で確認された足跡を追跡していた。
(……数が多い、それに足跡以外にも荷物を運搬した形跡がある……!)
それは森や遺跡を荒らす盗掘団が、実際に盗掘を行う前段階に行う準備行動の形跡に他ならなかった。
「これは、近いうちに実行に移す算段ね……。急いで対策を考えなくっちゃ」
大人数を相手にすることになるのは事前の調査で想像出来た。
圧倒的に人手が足らない現状を考えると、ただ別チームに応援を頼むだけでは駄目そうだ。
盗掘団などの思考、行動を想定できて、戦力的にも十分な人材――アルティナははっと頭を上げた。
「そうだ! 噂になってるあの人たちなら――!」
思いついたアルティナは、早速連絡を付ける為に行動を開始した。
●
「そんなわけで深緑の自警団から依頼が来たわ。
オーダーは、サトゥナ遺跡に忍び寄る盗掘団の撃退ね。
戦闘に制限はないけれど、迷宮森林及び遺跡を傷つけないことも頭に入れておかないといけないでしょうね」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が言うように、ただ盗掘団を撃退すれば良いと言うものではないだろう。
森を守る幻想種達に配慮することが必要になるはずだ。
「盗掘団は三十名近い結構な大グループね。
十名ほどは自警団のアルティナちゃんの方で対処してくれるはずだから、ウチで相手するのは二十名というところかしら」
戦闘に特化した連中ではないが、楽々と勝てる相手ではないはずだ。
幸いにしてイニシアチブは此方が取れている。相手が盗掘作業を開始するまでに戦力把握や罠設置、陣地構築などが出来るはずだ。少しでも戦闘を有利に進める作戦を考えよう。
「こうして関係を気づき上げていけば、迷宮や遺跡の探索なんかも依頼されるようになるかもしれないわね。
まずはその足がかりをつけて行きましょう。頑張ってきてね」
依頼書を受け取って、イレギュラーズは早速準備を開始するのだった。
- 盗掘団をやっつけろ!完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年03月26日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●陣地構築
迷宮森林北西部、サトゥナの遺跡。
盗掘団に対応するために依頼を受けたイレギュラーズがその場所を訪れると、自警団の若きリーダー、アルティナが歓迎してくれた。
「噂に聞く特異運命座標の皆さんが来てくれて助かったわ。
早速だけど、貴方達の知恵や経験を貸してくださいな」
盗掘団の襲撃に備えて、遺跡周辺では盗掘団が仕掛けた罠やマーキングの痕跡を除去する作業が行われていた。
「それじゃ俺達も動き始めようか。しっかり準備して、敵に泡を噴かせてやらないとね」
イレギュラーズ達は遺跡周辺に大がかりな罠設置、バリケードなどによる陣地構築を行う算段だ。
その陣頭指揮を執るのは『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)だ。威降の指揮の下、各人が出来る事を行っていく。
威降は式を使役し、周囲の木々を利用した頭上からの罠設置、そしてバリケードの構築に尽力する。
「一部甘いところも作って先の罠へと誘導するようにするんだ」
自警団のハーモニア達にも指示を出しながら、適切な作業を行ったと言えるだろう。
「……普段見かけない怖い人達はこの道を通って行ったんだね。
入り組んだ迷宮森林にあって、確かに最短なルートを通ってくるようだね」
自然会話で得た情報を整理しながら、『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)盗掘団の侵攻ルート予測する。敵は目に見えてわかるほどに効率的な行動を行うようだ。それならば、それを逆手にとって罠に嵌めることが出来るかも知れない。
威降へと新たな罠の設置、バリケードの位置調整などを提案しながら、敵の裏を掻く建設的な意見を伝えていった。
遺跡周囲の森を注意深く歩き回るのは『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)だ。身軽な動きは森に慣れ親しんだハーモニアのようでもある。
「……スンスン……微かに鉄の臭い、ということは……」
注意深く草木の茂みを調べていけば、中に仕掛けられた鉄製の弓矢のトラップを見つける。周囲の様子から自律作動ではないと思われた。恐らくは自警団に見つかったときに作動させる物なのだろう。
「こういう邪魔な物は、手早く回収だね」
『何だったらこちら側の罠として置き直してもいいんじゃないか?』
相棒(イン)の言葉にそれもありかと考えるも、スキルがないので自信がない。余計な事をしてリスクを増やすよりは、罠の設置に精通した人に頼むのが良いだろう。
そのようにして九鬼は遺跡の周囲を巡り、いくつもの罠を解除、破壊していった。
遺跡とバリケードの間の地上罠を担当するのは、『Storyteller』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)と『鳳凰』エリシア(p3p006057)の二人だ。
「まずはこの辺りだろうか。
ふむ、一つ一つ手堀りをしていては時間の無駄か。物は試しだ――ライトニングッ!」
力ある言葉と共に、生み出された一条の雷撃が地面に突き刺さる。盛大な雷鳴と共に土煙があがれば、なるほどスコップで掘るよりかは効率的に穴が掘れるようだ。
その成果を確認し一つ頷いたエリシアは続けざまに雷撃を走らせて、幾つも落とし穴を掘っていった。
「さて、暗き混沌(オラボナ)よ。ここに何を入れる?」
エリシアの問いにオラボナは自らの身体をまさぐり、その”ナニカ”を取り出した。
「我等『物語』の肉を贅沢かつ不断に用いれば、筆舌に尽くしがたい最良のフルコースとなるだろう。
必要とあらば甘く狂おしいホイップクリームに、脈動せし眼球症(コレ)を加えようではないか」
常人が見れば、即座に目を背けたくなる嫌悪物の塊を、穴の中に仕込んだ突起物に塗りたくる。その様子はまさに料理をデコレーションするかのようであり、然しものエリシアも取り乱す事はないとはいえ、直視を避けるようだった。
二人の設置する罠は足止め的な要素の多い物だが、戦闘を避けて遺跡へと向かう者が多くいる事が予想されることから、実に効果的だと思われる。
特にオラボナの料理(悪)は、狂人でもなければ堪えようのない物であるのは周知の通りだ。
「あっちは結構エグい罠作ってるわね!
そういうのは二人に任せてアタシは出来る事をやりましょうか!」
『不屈の紫銀』ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)も罠設置を手伝っていた。大がかりな罠はオラボナとエリシアに任せ、簡易的で小さな罠をコツコツと作っていく。
「この長い蔓を、こうして結んで……っと地面より少し浮かせれば闇夜には邪魔なものとなりそうね」
一見地味で効果が薄そうにも見えるが、大きな罠に紛れてこうした小さな罠が無数に存在するということは、大きな脅威へと変わる。
また罠の制作にそれほど時間や手間が掛からないのが利点だろう。
戦闘フィールドに無数に設置される罠は、それだけで地形的有利を握れると言う物だろう。
三人の手によって十分な罠が設置され、陣地構築は万全とも言える形になってきた。
最終確認をするように『沈黙の御櫛』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が遺跡周辺を注意深く観察していく。
「隠された罠は、多く、あったようだ。九鬼が、粗方、見つけたようだが、二重のチェックも、必要だろう」
一度確認した場所もぬかりなく確認する。各種スキルを用いて徹底的洗い出すチェック作業は、細かに、淡々と続けられた。
エクスマリアはそうした罠のチェックだけに留まらない。この遺跡に近づこうと言うものがいないか――そう偵察などの可能性も考慮して、微細な変化を確認すれば一つ一つ潰していった。
油断なく、慢心無く、細心の注意を払ったこの作業によって、陣地構築は完成されたと言って良いだろう。
「――力をカシてくれるといいんだけれどね。カレらも燃やされるのはイヤだろうし」
すべての作業が終わると、手の空いた『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が付近の植物たちへと意思の疎通を試みる。
幻想種の心得を持つイグナートは、確かにハッキリと植物たちの怯えや不安を感じ取った。それらを拭うように、これから起こるであろう出来事を伝え、協力を促した。
植物たちも、自身を大切にするハーモニア以外の出入りに大きな不安を抱えていたようだ。イグナートの意思を受け取れば、自らの生命を守るために協力することを約束してくれた。
とはいえ、植物疎通によって細かな意思伝達は難しい。侵入者の情報や、動きを大まかに伝えてくれるだけだろう。
「キミたちを燃やすようなブキ……チカラを感じたら教えてほしい」
伝えるだけ伝えてみて……その情報が得られれば、大きなアドバンテージになるかもしれない。
「ご苦労様です!
かなり堅牢な陣地が出来上がりましたね。さすがです!」
自警団の指揮を執っていたアルティナが陣地完成を労う。そうして万全の準備が整ったことを知らせた。
「後は盗掘団が来るのを待ち構えるだけです。
ここからは長丁場になりますから――まずは早めの夕飯としてしまいましょう」
そう微笑みかけたアルティナは、遺跡から少し離れたキャンプ地へとイレギュラーズを案内した。
夜が来る。
闇夜に紛れ、私利私欲を満たさんとする愚者が列を成して現れる。
遺跡を守る戦いが、静かに始まった。
●迎撃
深夜。
警戒していたイレギュラーズは不審な一団が近づいて来た事を、植物疎通によって知覚する。
同時、自警団もまた自然会話によってその事実を確認すると、遺跡周辺に緊張が満たされた。
「ダンタイ客のお越しだ。オレたちは二十、アルティナ達が十を片付けるんだよね。
オタガイにユダンせずに行こう!」
そう言い残してイグナートは森を先行する。躊躇せず遺跡へと侵攻する盗掘団の出鼻を挫く形で奇襲を掛けるためだ。
三十にも及ぶ一団が、一糸乱れぬ動きで進んでいるのが見えた。まさにプロと言うべき一団であり、装備もまた原始的なものから近代的なものまで充実しているといって良いだろう。
(そのイチとソウビ……主力はココか……!)
敵の位置を確認し、特に重装備の男達を見つけたイグナートは、瞬時飛び込む判断をした。闇に紛れ忍び足を駆使して突如男達の前に現れると、力を溜め込んだ右手を振り抜いた。爆裂する一撃が男達を業炎に包み込む。
「敵襲――!」「一人だ! 対応しろ!」
奇襲を受けた盗掘団はすぐに対応に走る。慌てふためくかと思ったが、立て直しが早い。やはり手慣れたプロということか。イグナートは直ぐに踵を返すと仲間が設置した罠の方へと逃げていく。
この奇襲によって一団の足並みが崩れたのは間違いない。明かりを消して遺跡周辺に潜んでいたイレギュラーズと自警団は、この奇襲を合図に戦闘態勢へと移行した。すぐに先行していた盗掘団がバリケードの前へと現れる事なる。
「バリケードだとぉ! チッ……壊せる場所は壊せ、でなきゃ回り込め!」
男達が陣地へと侵入を開始した瞬間、戦いは始まった。
「そこまでだよ! サトゥナ遺跡には近づけさせない!」
飛び出したアレクシア。ランタンに明かりを点せば、盗掘団達の姿が露わになる。同時、展開する保護結界が周囲を包み込んだ。
このタイミングを待っていたルーミニスが、イグナートに続く奇襲を見せる。
闇夜に紛れて展開しようとする盗掘団をエネミーサーチで把握すると、遺跡に近づけさせないように先手を打つ。
得意技”ヴァナルガンド・インパクト”が迷宮森林を揺るがした。突き抜ける衝撃に盗掘団メンバーの何人かが吹き飛び倒れる。隠れていた連中もあまりの威力に唖然とし固まった。
「無駄無駄! さっさと出てきて正々堂々やった方がいいわよ!」
力強く声をあげたルーミニスに、自警団の士気が上がる。
「全員彼女に続いて!」
アルティナが声を上げ、自警団が盗掘団に接敵する。それを確認したアレクシアは、魔力を編んで赤き花の如き魔力塊を生成、炸裂させる。敵愾心を抱かせる花の魔力が周囲に広がった。
アレクシアの範囲攻撃を合図にイレギュラーズも一斉に動き出す。中でも高い反応を見せたのはその時を待っていた威降だろう。
威降の操る式は期待通りにトラップを発動させていた。幾人かの盗掘団メンバーがその罠にかかり、頭を打って昏倒した。
「勝機――! もらったよ!」
そうして数が減ったところに威降が疾駆する。相手が身構えるより早く至近へと肉薄すれば手にした妖刀で一刀の元に切り伏せる。
「クッ……!? 手強いぞ、自警団じゃないな……!?」
こうしてイレギュラーズが姿を見せた事で、盗掘団もハーモニアの自警団以外の人間がいることに気づく。すぐに戦闘を主体とするやり方から遺跡へと滑り込みを掛ける方針へと変化していくのがわかる。バリケードの手薄なところを狙って盗掘団が走り込んでいく。
だが、その進行上にはオラボナとエリシアの仕掛けた罠が待ち受けていて――
「う、わぁぁあああ――ッッ!?」
穴へと落ちた盗掘団メンバーが次々に悲鳴めいた叫び声をあげる。オラボナ謹製のアレを見たのだろう。
「ご愁傷さまです。アレを見る事になるなんて、少し可哀相になりますね」
『悪人だ、容赦は要らないだろう? 斬り捨てろ』
やや同情の視線を向けた九鬼を、相棒(イン)が急かす。悪人を喰らうことこそが至上の喜びであるかのように。
「わかってる」
短く答えた九鬼が闇を走る。鋭い目つきで罠にかかった盗掘団メンバーを太刀風をもって次々に斬り捨てて行った。
「九鬼、左だ」
「――! ナイスアシストです!」
エクスマリアからの恍惚アシストを受けながら、九鬼とインが戦場を駆け回る。
イレギュラーズの迎撃によって多くの盗掘団メンバーが倒れた。しかし、それでも盗掘団の数は未だ多く、その侵攻を止めるに至る事はなかった。
また盗掘団の連中は、重火器を使用した火力によって道を強引に切り開こうとする。保護結界を使用していたが、相手側には破壊の意思しかなく、一時森に小火が起きる事もあった。自警団も慣れているのか、すぐに火は消化されたが、これによって生まれた隙を突かれ、敵の遺跡への侵攻を許してしまう。
遺跡内に置かれている文化的な小物などの遺産を、盗掘団は抱えられるだけ抱えて持ち逃げしようとする。
それを許すわけにはいかない。戦いは迎撃戦から宝物を奪い還す為の追撃戦へと展開していくのだった。
●追撃
宝物を持ち逃げしようとする盗掘団メンバーを確認すれば、すぐにイレギュラーズは対処に乗り出す。
注意深く戦場を見ていたエクスマリアは、遺跡への侵入を許したのを確認すると、すぐに踵を返し、遺跡へと追走した。
「それを、持ち出す事は、許しはしない」
闇色の金髪が、怒りを示すようにユラユラと揺れる。
交戦やむなしと判断した盗掘団が宝物を置いて挑みかかる。放たれる銃弾をエクスマリアは時に躱し、時に髪で受け流して間合いを詰める。
「チッ……この――ッ!?」
ナイフへと持ち替えて襲いかかろうとした盗掘団メンバーの動きが止まる。細いエクスマリアの髪が見えない糸のように男の身体を縛り、切り裂いたのだ。
動きの止まった盗掘団メンバーへと近づいて、その青藍たる瞳を見開く。
「見ろ、そして、魅入られろ」
エクスマリアの瞳を直視した男は恍惚にも似た状態となって――瞬間、男の顎へと地面から伸びた土塊の拳が直撃する。為す術無く男は昏倒し倒れた。
一人倒したが、この間にも難を逃れた盗掘団メンバーは宝物を持ち去ろうとしていた。
遺跡入口周辺は、それらを止めるイレギュラーズと、逃げだそうとする盗掘団メンバー、そしてそれを援護する盗掘団の入り乱れる形となった。
そんな戦場で猛威を奮った存在と言えば、オラボナだろう。
「此度の我等『物語』は遺跡へと侵入するものを陥れる魔物に相違ない。
恐れぬならば挑戦するが良い。
悉くを嘲笑い貴様等の鶴嘴ごと喰らい尽くして見せよう」
飛び交う銃弾、剣閃をその身で受け止めて、されど傷付く身体はその耐久性のおかげか致命傷とはならない。瞬時に自己再生が行われ、不沈を思わせる肉壁がそこにいた。
オラボナは、高い攻撃力を持つものの防御技術に弱点を持つルーミニスや、耐久力が低めな威降やエリシアを乱戦の直中にありながらよく庇い、戦線の意地に努める。そればかりか、宝物を持って逃げだそうとした――味方がノーマークの――者を見つければ、その特性たるギフトを展開し、入手すべき宝物を恐怖の対象へと変化させ宝物を捨て逃げ出させるなど、自身の持つ力を十全に発揮したと言えるだろう。
要所要所で男達の悲鳴が響く戦場は、ある意味アトラクションのような娯楽性を持っていたかもしれない。
「さあ、愚か者共よ。神聖なる地を汚した罪を清算する時間だ」
エリシアがユラリとその手突き出す。鳳凰と呼ばれし自身の力――権能の一部を開放し清浄なる炎を手繰る。
燃えさかる炎が戦場に燃え広がる。幻想的なまでの光景は業炎に包まれる者達すらも魅了する。
手繰る炎は一つだけではない。
乱戦となり、味方への配慮が必要となれば、個人へと向けた炎を放つ。美しさすら感じる赤橙の揺らぎは、畏怖すら感じさせるものと言えた。
エリシアの仕事は攻撃だけに収まらない。味方の体力を管理する仕事もある。アレクシア、エクスマリア、そしてエリシアの三人体制での回復はやや盗掘団の火力に押される面もあったが、十分に管理、維持できたと言えるだろう。
多くの敵の敵視を稼ぎ、攻撃の雨に晒されていたアレクシアは、しかし歯を食いしばり盗掘団に立ち向かう。
「どれだけ傷つこうが絶対に護る! お母さん達が守ってきたものなんだ!」
一人のハーモニアとして、ファルカウ、そして迷宮森林と共に生きる者達が守ってきたものを、同じように守りたいと強い意思を瞳に宿した。
イレギュラーズの活躍もあり、宝物の持ち去りはしっかりと防ぐことができた。こうなってくると盗掘団は割に合わない、という考えが頭に過ぎってくる。戦いは消極的な流れとなって、盗掘団はやがて撤退戦を開始する。
「次は未踏の遺跡を探すといいよ。……帰れたらね」
「逃がさない――!」
威降と九鬼が疾駆し、追撃を加えていく。多くの盗掘団は倒れ、幾人かは自警団に囲まれ投降をよぎなくされた。
全滅――とは行かなかったが、復讐など考えないであろうくらいの痛手は与えたように思われた。
「後詰めがいる、可能性もあるか」
深追いすれば逆にやられる可能性がある。エクスマリアは仲間達を止め、追撃を終わらせた。
斯くして、サトゥナ遺跡を巡る盗掘団との戦いは終わりを告げるのであった。
戦いが終わり、キャンプ地へと戻ったイレギュラーズ一行にアルティナが声を掛けた。見れば結構な傷だがかすり傷だと笑った。
「ご苦労様! 予想以上の戦果で本当に助かったわ。
盗まれた宝物は一個もなし! 大戦果よ」
ニコリと笑ったアルティナは、
「部外者に守らせるなんて、批判もあったけどこれなら胸を張って報告できるわ。
本当にありがとう。
……またお願いしてもいいかな?」
なんて、茶目っ気を出して尋ねてきた。
クスリと笑ったイレギュラーズは、
「またのご利用お待ちしています」
と、笑いながら返すのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
作戦、そして陣地構築のプロセスが皆さんとても頑張っていた印象です。
おかげで盗掘団は何も出来ず逃げ帰った形になりました。
アルティナも言ってましたが大戦果だったと思います。
MVPはその特性を十分に発揮していたオラボナさんへ贈ります。常人に対して強すぎますね!
その炎で敵味方を魅了したエリシアさんには称号が贈られます。
依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
迷宮森林に存在する遺跡を荒らそうとする者達が現れました。
自警団と協力して、これを撃退しましょう。
●依頼達成条件
盗掘団十五名以上の撃退(生死は問わず)
遺跡に眠る品々を奪われない事。
●情報確度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は起きません。
●盗掘団について
遺跡を荒らす事に情熱を燃やす悪い連中です。
どんな手段を取っても、お宝さえ手に入れればそれで良いという考えで、今回も様々な自然・遺跡破壊装備で挑むようです。
戦闘行動に優れているわけではないですが、出現する魔物退治なども行えるそこそこの連中が集まっています。
人数は三十人ですが、内十人はアルティナ班が対応します。
ステータスは平均的で、やや低め。至近~中距離をレンジとし、範囲攻撃も行ってきます。
数に任せて戦闘中でも遺跡へ侵入盗掘したアイテムを運びだそうとするのでご注意ください。
●戦闘地域
迷宮森林北西部にあるサトゥナの遺跡側です。
時刻は深夜。月光が降り注ぐ薄暗い森の中になります。
戦闘地域は、多くの木々に阻まれた場所になります。自由に立ち回れますが、敵も地形を駆使して行動してくるでしょう。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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