シナリオ詳細
最高の口づけ
オープニング
●未知なるセカイへ
財産家のフィーネ・ルカーノ (p3n000079)は残酷なショーをぼんやりと眺めながら新たな遊びを模索している。
「あああああああっ!? ああああっ!!」
拘束され、悲鳴を上げる男。先程から男の爪を剥がし、指を一本ずつ折っているのだ。
「俺が! 俺が何をしたっ!?」
男はフィーネに向かって叫んだ。
「え? ああ、何を……そうね、何をしたのかしら……貴方にとっては、忘れてしまうくらい小さなことなのね。良いわ、親指も折ってちょうだい?」
つまらなそうにフィーネはそう、指示し上品な欠伸をする。正直、この男に興味がない。ただ、フィーネはこの男を裁かねばならなかった。昨夜、男は鋭いナイフを振り回し、フィーネの指輪を指ごと盗もうとしたのだ。男は取り押さえようと、飛び込んできたボディーガードの太い首を瞬く間に裂き、簡単に殺してしまった。未遂であれば、良かったものの。単調な叫び声は続く。
「……え? 次はそうね、両足を……いいえ、やっぱり止めましょう。意味がないの……ただ、そう……」
フィーネは思い付いたように男が欲しがっていた指輪を外し、「どう? 指輪は貴方にあげる。欲しかったのでしょう?」と微笑む。途端に男の表情が和らぎ、幸福に変わる。フィーネはその顔をじっと、見つめ、ふっと笑う。
「……埋め込んでちょうだい。え、そう、額にでも……指輪を!」
「なっ──!?」
男は目を見開き、狂ったように叫んでいる。フィーネは溜め息をする。
(ああ、もっと刺激的で! センセーショナルなものを……)
ふと、フィーネは唇に触れ、情熱的な口づけを想った。
「このまま、デートにでも行こうかしら。ああ、でも……」
皆、フィーネの言いなりなのだ。デートでさえつまらない。
(ベッドで首を絞めて殺してしまえば少しでも……いえ、そんなことをしても……)
フィーネは苛立ち、ハッとする。
「ああ、そうだ! 便利なところがあるじゃないの……」
(ふふ、彼らにあたくしが想像もつかない口づけを贈ってもらえばいいの)
フィーネはくすくすと笑い、サングラスをかけ、とある場所へと赴く。
●誘われたくて
ギルド『ローレット』でイレギュラーズ達は『ロマンチストな情報屋』サンドリヨン・ブルー(p3n000034)とともに、依頼人のフィーネを眺めた。
(今度は何を思いついたのでしょうか……)
サンドリヨンは思う。
「あら、なぁに?」
フィーネは言う。
「あ、いえ。ええと、今日はどうされたのでしょうか?」
サンドリヨンは微笑む。
「そうね……ねえ、貴方……口づけをしたことはある?」
「え?」
サンドリヨンは目を丸くした後、瞬時に顔を赤らめる。
「あら、可愛い……」
フィーネは満足げにサンドリヨンを見つめ、形の良い唇をそっと動かした。
「ねーえ、お願いよ。あたくしに最高の口づけを贈ってくれないかしら? そう、場所はプライベートビーチでね。ああ、興奮で震えてしまうわ……ふふ、あたくしはただ、その身を任せて……口づけを待つの……想像しただけでもう駄目よ……ふふ、どんな風にあたくしを愛してくれるのかしら……」
フィーネは、ぽかんとするイレギュラーズ達を煽るように見つめる。
(ええと……要するに疑似恋愛で、フィーネさんをときめかせればいいのでしょうか?)
唯一、付き合いの長いサンドリヨンだけが、理解する。
- 最高の口づけ完了
- GM名青砥文佳
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年03月13日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
燦然と輝く太陽の下。
「一番はミミなのだー!」
『白パンのミミ』ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867) がインストルメントを掻き鳴らし、静かに降り立つ。
「元気なのね。あら?」
フィーネは突然、倒れ込む小さなコウモリを抱き留める。
「あ! ミミ、寝てたの!」
ミミはハッとし、フィーネを見上げる。
「面白いお嬢さんだこと」
フィーネの言葉にミミは笑う。
「じゃあね、じゃあね。飛ぶよ! ご招待! いざ、空へ!!」
固定帯を巻かれたフィーネは揺れる。ミミの身体をハングライダーのようにし、フィーネの両足が空を掻く。
「じゃ・じゃーん☆」
上昇は疾く速やかに。ミミは強い風と日差しに目を細めた。フィーネの髪とカシュクールワンピースが、激しく揺れている。
「凄いでしょ! あ、高いのだいじょぶ?」
「ええ。風が凄いけど」
フィーネは笑う。少しだけ自由になった気がする。
「思い切り動いてもきっと平気……そう、多分ね? ねねっ、ビーチの見所ってどこ?」
「見所? そうね、あそこのマングローブにアカショウビンがいるわ」
フィーネは指を指す。
「火の鳥! あっちダヨネ?」
「ええ」
「分かったヨ! あ、その鳥って食べれるの?」
「よく焼けば食べれるような」
「そっかー!」
ミミは楽しそうに笑いながら、身を捻り、羽ばたかずに滑空でそっと下降していく。フィーネは息を呑む。
「とーちゃくだよ!」
「ありがとう」
数分間の空の旅。ミミは固定帯を簡単に取り外し、叫ぶ。
「いた」
「そうね……」
「えいっ!」
ミミはフィーネに抱き着く。そのまま、肉を食べずに丸いと評判だった(家庭内で)歯でフィーネの耳を咥え、楽しそうに何度も甘く咬む。身体を離したミミは、日傘を開き、手渡す。
「はい、フィーネ」
「ありが──」
傾けたその一瞬でミミは口づける。目を見開くフィーネ。
「へへ、やったヨ★ 楽しかったネ! バイバイフィーネ、また会う日までっ」
ミミは手を大きく振りながら飛び立つ。
「キ・キ・キ! ご飯はどうしよっカナ~? ビーチを臨んで寝ようっカナ~? あ、フィーネに聞いたアレにしよ! あーれ、これっ そーれーもー るるるー」
急旋回をしながらミミは笑う。
『嘘憑き』ライア(p3p004430) は、汗をハンカチで拭うフィーネに微笑む。
「どう? 楽しんでる? 休憩をしよう」
ライアはブラッドオレンジジュースを手渡す。
「ありがとう。勿論、楽しんでるわ」
「良かった」
ライアは、人懐こい笑みを浮かべる。万華鏡のように変わる美しき、演者。フィーネは、ライアを真っ直ぐに見つめ、パラソルの下に腰を下ろす。潮騒が青いメロディを奏でる。ふと、フィーネを見つめるライア。
「ねぇ、そんなに見られると穴が開いてしまう」
すり抜ける海風。
「ああ……天気がよくて何よりだ」
ライアは顔を真っ赤にさせながら、視線を逸らした。純朴な青年を思わせる。
「そういえば、最近流行りの小説は読んだ?」
ライアは尋ねる。
「ええ、クローズド・サークルでしょう? 離島のパワースポットを訪れた主人公と友人が殺人事件を解決するのよね。読み終えた後、Fを想って泣いたわ」
「Fは確か、資産家の娘さんだったね。主人公達と犯人を捕まえようとしてそのせいで、殺されてしまった」
ライアは寂しそうに言った。
「ええ、とても好きだった。彼女の言動の全てを愛していたわ」
「彼女は魅力的だった。でも、Fのお蔭で事件は解決した」
「そうね、彼女の殺害は想定外だった……」
嘆息するフィーネをじっと見つめるライア。男性的な表情。子犬のような青年は何処にもいない。フィーネは小首を傾げようと──
「動かないで」
細い指先がフィーネの頬に優しく触れる。やや遅れて、瞼に口づけを一つ。
「まつげにゴミがついていたんだ」
息を吐くライア。
「ありがとう」
「そろそろ、行ってしまうのかい?」
「ええ、そうね。名残惜しいけど……」
立ち上がるフィーネ。見つめるライア。
ふと風が──
大きく揺れるフィーネ。伸ばされた細い腕。咄嗟に伸ばした腕。それは絡まる糸のよう。ライアは喉を鳴らし、砂に横たわるフィーネを見下ろす。
「フィーネ……」
ライアは唇を震わせ、愛おしそうに額へ。そして、ゆっくりと髪、頬に口づけて──
「ああ……」
互いに洩れるさざ波のような興奮。ライアは味わうように唇を重ねる。
『気まぐれドクター』松庭 黄瀬(p3p004236)は太陽の下で考え込む。
(口づけ、キス……治すことに興味はあるけど、恋愛はあんまり経験ないからなぁ。おっと、彼女のご到着だね)
「とても素敵だよ」
にっこりと笑う黄瀬。
「ありがとう。あら?」
フィーネと黄瀬は『死眼ノ蹂医』御幣島 十三(p3p004425)の眼差しに気が付く。すぐにフィーネは十三が愛しているであろう、黄瀬に腕を絡ませる。
「怖いヒトだよ、きみは」
肩をすくませながら、黄瀬は何処か楽しげだ。
「ねぇ、散策でもどうかしら?」
「いいねぇ」
ぴったりと密着し、砂浜を歩く。
「気を付けて、足元に海月が」
黄瀬は言う。頷くフィーネ。その背に強い視線を受けながら海を見つめる。鮮やかな魚の群れ。揺れる髪。
「どうかした? 楽しくはない?」
暗い顔の黄瀬に気が付く。
「いや、楽しいよ。でも、この恋は叶わない」
「何故?」
瞳に浮かぶ好奇心。
「ぼくときみが赦されざる恋をしているからかな」
「そう。それでも、あたくしは」
黄瀬は左右にかぶりを振る。
「……」
「二人で、同時に果てることで永久に一緒にいることを選ぼう?」
フィーネは眉を寄せる。黄瀬の手には一粒の毒薬。
「甘い祝福をぼくたちに」
黄瀬は毒薬に見立てたキャンディを放り込み、かみ砕く。
「大丈夫だよ、心配しないで。これでずっと、一緒にいられる」
(まぁ、ぼくは腐っても医者だから本当はそんなことしないし、そうなったら全力で治すわけだけど)
口づけは甘い死の味。尖ったキャンディが口内を犯し、フィーネは、離れようとする黄瀬に何度も唇を重ね、舌を吸う。
(なんたって、こんな……ぼくみたいなおっさんとキスしても嬉しくないでしょーに……あぁ……)
呻き、呼吸すら忘れ──
黄瀬は息を整えながら、「こんな茶番に付き合ってくれたお礼に毒薬(キャンディ)はどーぉ? まぁ、本物のキャンディ(毒薬)も持ってはいるけど、きみはまだ果てるつもりはないでしょ?」と笑う。
「そうね、あたくしはもっと生きていたいわ。貴方もそうでしょう?」
黄瀬の胸を指でなぞる。
●
フィーネは黄瀬から離れ、十三に歩み寄る。
「ごきげんよう」
フィーネの言葉に夕暮れに染まった、十三はハッとする。
(い、いけない。嫉妬してる場合じゃない。借金をチャラにするために依頼に集中しないと)
息を吸う。
「──おいで。見せたいものがあるんだ」
十三は紫色の瞳を細め、フィーネに手を伸ばす。くすりと笑うフィーネ。
「もう、いいのかしら」
「何のことだ? 解らないな」
十三は強引に手を引く。今度は黄瀬の視線が触れる。
誘われたのはビーチ。
「コニャックの水割りでもいい?」
「大好きだわ」
「それは良かった」
それから──
二人はグラスを傾け、ともに笑う。
「貴方の賭場の話、好きよ」
「ありがとう。今、グリーンフラッシュが」
近づき囁く十三。首を傾げるフィーネ。
「太陽が完全に沈む直前、水平線に緑の光が瞬いて見えるんだ。珍しい現象だから、前いた世界では「見た人は幸せになれる」なんて言われてたよ」
「そう……」
目を細めるフィーネ。十三はグラスを置き、腕を引く。瞬く間にバランスを崩すフィーネを、抱き留めるような形で背後から抱き締める。
「なあに、いきなり」
笑うフィーネの耳に唇を寄せ、十三はフィーネの黒い髪を梳くように撫で、「だからさ。俺が幸せにしても、いい?」と甘く、低く囁く。
そして、フィーネが何かを言う前に優しい口づけを耳へと贈り、腕に力を込めた。
「……さぁ、行こう。今日が終わってしまう前に」
「ええ、ありがとう」
見つめ合い手を繋ぐ。人肌の温もりとさざ波の音がフィーネを癒す。十三は指を絡ませフィーネを送り届ける。
●
『月影の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208) は、目を細める。颯爽と歩く美しい人。
「今日はどう、楽しませてくれるの?」
フィーネは立ち止まる。
「あ、ええと……」
弥恵の強ばった表情をじっと見つめるフィーネ。
「大丈夫よ、別に。あたくしが勝手に銃を向けたのだから。好きに呼んでくれてけっこう。でも、今日だけはフィーネと呼んで。その方が素敵だもの」
弥恵は頷き、フィーネを導く。フィーネは弥恵を盗み見る。淑やかな腰つき、手を伸ばせば触れられそうな無防備さ。一つ一つの動作が艶かしい。
振り返る。
「おば……いえ、フィーネ」
恥じらうように名を呼ぶ。水面に映る月と木製のステージ。
「なぁに?」
「私を見てください」
舞う。月光が宝石、ガラスの靴を濡らす。靡く髪、ダイナミックな動き。潮騒の心地よいリズム。弥恵は、触手のような視線を感じながら、全身を、激しく動かし続ける。時折、風の悪戯によって、下着が露になる。
フィーネが舞い終えた弥恵に近づく。
「美しかったわ。ただ、下着が見えていたけれども。まさか、誘っているの?」
弥恵の臀部に触れ、撫でる。
「あっ!?」
「冗談よ、本気にしないで」
飛び上がる弥恵にフィーネは笑う。
「もう、フィーネは」
弥恵は怒りながら、ふと、真剣な顔をする。伸ばした左手が、フィーネの視界を塞ぐ。世界も、弥恵もみな、消えていく。感じるのは闇と、音、そして、手の温もり。フィーネは闇の中で目を閉じた。途端に触れる、柔らかな唇。フィーネは笑う。そして、舌を滑り込ませる。
「──!?」
弥恵は顔を赤くしながら、フィーネにしがみつく。もう、何も考えられない。
「フ、フィーネ!」
弥恵は涙目でフィーネを見る。
「なぁに? とても良かったわ」
にたにたと笑うフィーネ。そして、あらと笑う。
「え?」
「貴女の下着」
指差した先に、弥恵の下着が落ちている。紐の切れたレースのパンツ。
「ぁ、きゃーー!? 下着が……! み、見ないでくださいませー!」
弥恵は目をぐるぐると回す。フィーネは騒ぐ弥恵を見つめ、楽しそうに笑う。
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062) は、悩ましげに息を吐く。
(フィーネさんに、ご満足いただけるキスができる自信が、ありませんの。でも……何度、繰り返したとしても、最後にはご満足いただかねばなりませんの……)
夜空は、ノリアがいちばん好きな光景――深い海の、はるか波間に弱々しく光る太陽が、ふり注ぐマリンスノーを白く照らす様子に、よく似ている。
「あたくしを楽しませてくれるのでしょう?」
「……フィーネさん、怒られてしまうかもしれませんけれど──」
くすりと笑うフィーネ。目を瞬かせるノリア。
「良いわ、聞きましょう。でも、まずは座ってもいい? こんなに美しい夜に焦ってはいけない」
「正直に、打ち明けますの」
ノリアはフィーネを見上げる。
「わたしには……焦がれる方がいますの。だから、いつか、必要になったとき……ゴリョウさんを失望させてしまうようなキスは、したくありませんの……」
「そう」
フィーネはノリアを眩しそうに見つめる。
「ですので、わたしは、フィーネさんのお話をよく聞いて、ご指導のとおりに、キスしますの」
視線は惑い、彷徨う。フィーネは微笑し、悪魔のように囁く。
伸ばした手がぎこちなく、フィーネの頬を撫でる。
「ふふ、くすぐったいわ」
「あ……」
震える身体、怯えたような視線をフィーネに。
「大丈夫よ、続けて?」
「フィーネさん」
声は擦れ、ノリアは頬に唇を寄せる。柔らかな肌、至近距離から見つめた瞳がノリアを見つめ返す。
「綺麗な瞳ね」
フィーネがノリアの首筋を撫で、首筋を吸う。
「あっ……!」
ノリアは震え上がり、無意識にフィーネに両腕を回し、耳に口づける。フィーネは笑い、ノリアは息を吐く。押し潰されそうになる心。それでも──
目を閉じ、唇に触れる。
「素敵な口づけだったわ」
フィーネは満足げに立ち上がる。
「フィーネさん……!」
ノリアは慌てる。触れた場所は、頬。
「別に何も言わなくていいわ。それに、好きな人となら、どんな口づけでもいいと、あたくしは思うの。だから、初めては彼にね?」
フィーネは妖艶に笑う。
闇を星と潮騒が払う。『永遠のキス』雨宮 利香(p3p001254) は颯爽と歩み寄るフィーネを知る。利香は誘うように手を伸ばす。
「フィーネちゃん、待っていたわよ」
「お待たせしたわね」
眼差しを強め、口角を上げる。手が簡単に触れ合う。月が照らす夜の砂浜。
「私と行きましょう?」
利香の息がフィーネの鼓膜を揺らす。
「ええ、貴女となら何処までも──」
フィーネは目を細め、利香の胸元を眺める。
「正直な人」
利香はくすくすと笑い、フィーネを労わる様にゆっくり歩き出す。足元のシーガラスが、冷たい光を反射させる。
「風がとても気持ちいいわねえ。こんな素敵な海岸に二人きりだなんて、贅沢しちゃってるわね」
利香は銀色の髪を揺らし、フィーネを見上げる。二人の肌を月光が彩り、風が通り過ぎていく。
「この時間が永遠なら良いのに。それに、潮の香りが心を穏やかにするようで……眠ってしまいそう。なんて、嘘。貴女がいるもの、眠れやしない」
フィーネは利香の手の甲に口づけ、「甘い」と笑う。利香は目を細める。
「ねえ、フィーネちゃん? あそこに行かない?」
波の音が響く。
「いいわ。あたくしは貴女に従うしかないのだから」
微笑むフィーネ。降り注ぐ月気。
二人はチェアに座り、砂浜に打ち付ける波を見つめる。波は砂を攫い、儚く散っていく。利香はフィーネの横顔を眺める。寂光が、フィーネに陰影を与える。
「フィーネちゃん」
利香はしなやかな指先に触れる。途端にフィーネが利香を見つめる。無防備な顔を利香だけに見せる。くすりと笑う利香。
「可愛いひと、今宵は素敵な夢を見せてあげるわ……これはそのおまじない」
利香は耳に唇を寄せる。熱い息がフィーネの身体に響き、甘い吐息を漏らす。そのまま、熱い舌先が蠢き、フィーネの耳を濡らす。
「好きよ、フィーネちゃん──」
笑う。利香は傾いた顎先を強く押し上げ、震えるフィーネの唇を吸う。漏れる甘い声。
「……ああ、御馳走様ね?」
利香はフィーネの濡れた唇の端を軽く舐め取り、サディスティックな笑みを見せた。
手なら尊敬
額なら友情
頬なら厚意
唇なら愛情
瞼なら憧れ
掌なら懇願
腕と首なら欲望
さてそのほかは、みな狂気の沙汰。
月の光が砂浜を照らす。規則正しい足音。
「最後は愛しい貴女の為に」
フィーネの笑みは、血など知らぬ貴婦人のよう。『性的倒錯者で快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)は口元を歪ませる。
「傷の調子はどうなのぉ?」
「もう、すっかりよ」
「それは良かったわねぇ。あら、血の匂い?」
濁りきった蒼眼を細める。
「やだわ、新しい服なのに。あたくしに纏わりついているのかしら?」
「困ったものねぇ。でも、気をつけなさいよねぇ、唯でさえ貴方狙われやすい質なんだからぁ」
「そう、皆、晴雲秋月のあたくしを愛しているの。ああ、治療はいいわ……」
甘く掠れた声。目視で傷を確かめようとするニエルを背後から抱き締める。
「フィーネ、どうしたのよぉ?」
ニエルは笑う。
「急に貴女が欲しくなった」
「甘えん坊さんねぇ。ねぇ、今までどんな雰囲気で、どんなキスをしたの?」
「ああ……」
毒に似た愛をニエルの耳に滴らせていく。
吐き出した愛は羨望を生む。
「あぁ、貴方と私の欲求は似てるから、とても羨ましいわぁ」
「なら、あたくしが何を望んでいるか解るでしょう?」
「そうねぇ、だからこそ」
(思い通りになってあげない)
背後のフィーネに片手を伸ばし、顎先を撫でる。指先をゆっくりと動かしながら、ニエルは指の腹で踊る様に唇に触れ、噛みつくように──
いや──
漏れる吐息。
ニエルはフィーネの腕を解き、離れる。唇を押し付けのは、喉。
「私は私を満たすために、貴方と関わっている。私は貴方を縛るつもりはないし、きっと貴方もそう。ねぇ、フィーネ? 互いが求め合う欲求を、これからも満たしましょう?」
ニエルは、にゅっと笑うフィーネを眺め、息を吐く。
私は絶対に愛さない。
愛すれば求めずにはいられない。
その人のすべてを。
その人のすべてを奪うため、その人を手にかけずにはいられない。
愛するからこそ……そのすべてを余すこと無く我が物としてしまいたくなる。
それだけは……絶対に駄目だ。
●
「フィーネ様」
フィーネに近づく十三。
「待っていたの?」
「そうだよ、一人は寂しいからね。それとこれを渡したくて」
気まぐれに十三は恋文をフィーネに手渡す。
「俺達との一日を経て、会いたくなった恋人がいたら……わざと見える場所にコレを置いとくと面白いんじゃない? お好きでしょ、悪戯するの」
「ええ、そうね。最高の遊びよ」
月影の元、猫のように笑う。
「愛しのフィーネへ 機械眼の騎士より」
記されたその中身は、今まで舐めたどんな菓子より甘い。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ああ、楽しかった。とても、幸せだった。ありがとう、愛しているわ──
MVPは、機械眼の騎士、貴方に与えましょう。
GMコメント
ご閲覧いただきましてありがとうございます。今回の依頼はフィーネ・ルカーノ (p3n000079)に最高の口づけを贈ることです。要するに口づけまでの疑似恋愛で、フィーネを攻めてください。女性を口説くのが得意な方、女性を口説いてみたい方、女性が好きな方、ムーディーな雰囲気が好きな方……etc、お待ちしております!!!
【注意】口づけは唇じゃなくても大丈夫ですが必ず、口づけはしてください。ただ、へっち過ぎるのはNGです。雰囲気と内容で、勝負してください。また、描写は基本的に個別ですが、例えば、プレイングを合わせて取り合うようなシチュエーションも可能です。
●目的
ムードを作って、最高の口づけを贈る事です。性別は勿論、問いません。また、口づけの回数は制限していません。
●時刻
昼間から夜まで
●依頼人
フィーネ・ルカーノ (p3n000079)
女性で財産家。日々、刺激を求め、ローレットによく依頼をします。偽るのが上手く、あちこちに恋人がいます。残酷で美しい物が好き。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●場所
フィーネ・ルカーノ所有のプライベートビーチ
白い砂浜、真っ青な海です。釣り、シュノーケリング、カヤックなど様々な遊びが出来ます。簡易シャワー、トイレ、寝袋とテントもあります。
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口づけとシチュエーションは無限大!!! 注意して欲しいことや、アドリブNGの場合は明記ください。
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