PandoraPartyProject

シナリオ詳細

最高の口づけ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●未知なるセカイへ
 財産家のフィーネ・ルカーノ (p3n000079)は残酷なショーをぼんやりと眺めながら新たな遊びを模索している。
「あああああああっ!? ああああっ!!」
 拘束され、悲鳴を上げる男。先程から男の爪を剥がし、指を一本ずつ折っているのだ。
「俺が! 俺が何をしたっ!?」
 男はフィーネに向かって叫んだ。
「え? ああ、何を……そうね、何をしたのかしら……貴方にとっては、忘れてしまうくらい小さなことなのね。良いわ、親指も折ってちょうだい?」
 つまらなそうにフィーネはそう、指示し上品な欠伸をする。正直、この男に興味がない。ただ、フィーネはこの男を裁かねばならなかった。昨夜、男は鋭いナイフを振り回し、フィーネの指輪を指ごと盗もうとしたのだ。男は取り押さえようと、飛び込んできたボディーガードの太い首を瞬く間に裂き、簡単に殺してしまった。未遂であれば、良かったものの。単調な叫び声は続く。
「……え? 次はそうね、両足を……いいえ、やっぱり止めましょう。意味がないの……ただ、そう……」
 フィーネは思い付いたように男が欲しがっていた指輪を外し、「どう? 指輪は貴方にあげる。欲しかったのでしょう?」と微笑む。途端に男の表情が和らぎ、幸福に変わる。フィーネはその顔をじっと、見つめ、ふっと笑う。
「……埋め込んでちょうだい。え、そう、額にでも……指輪を!」
「なっ──!?」
 男は目を見開き、狂ったように叫んでいる。フィーネは溜め息をする。
(ああ、もっと刺激的で! センセーショナルなものを……)
 ふと、フィーネは唇に触れ、情熱的な口づけを想った。
「このまま、デートにでも行こうかしら。ああ、でも……」
 皆、フィーネの言いなりなのだ。デートでさえつまらない。
(ベッドで首を絞めて殺してしまえば少しでも……いえ、そんなことをしても……)
 フィーネは苛立ち、ハッとする。
「ああ、そうだ! 便利なところがあるじゃないの……」
(ふふ、彼らにあたくしが想像もつかない口づけを贈ってもらえばいいの)
 フィーネはくすくすと笑い、サングラスをかけ、とある場所へと赴く。

●誘われたくて
 ギルド『ローレット』でイレギュラーズ達は『ロマンチストな情報屋』サンドリヨン・ブルー(p3n000034)とともに、依頼人のフィーネを眺めた。
(今度は何を思いついたのでしょうか……)
 サンドリヨンは思う。
「あら、なぁに?」
 フィーネは言う。
「あ、いえ。ええと、今日はどうされたのでしょうか?」
 サンドリヨンは微笑む。
「そうね……ねえ、貴方……口づけをしたことはある?」
「え?」
 サンドリヨンは目を丸くした後、瞬時に顔を赤らめる。
「あら、可愛い……」
 フィーネは満足げにサンドリヨンを見つめ、形の良い唇をそっと動かした。
「ねーえ、お願いよ。あたくしに最高の口づけを贈ってくれないかしら? そう、場所はプライベートビーチでね。ああ、興奮で震えてしまうわ……ふふ、あたくしはただ、その身を任せて……口づけを待つの……想像しただけでもう駄目よ……ふふ、どんな風にあたくしを愛してくれるのかしら……」
 フィーネは、ぽかんとするイレギュラーズ達を煽るように見つめる。
(ええと……要するに疑似恋愛で、フィーネさんをときめかせればいいのでしょうか?)
 唯一、付き合いの長いサンドリヨンだけが、理解する。

GMコメント

 ご閲覧いただきましてありがとうございます。今回の依頼はフィーネ・ルカーノ (p3n000079)に最高の口づけを贈ることです。要するに口づけまでの疑似恋愛で、フィーネを攻めてください。女性を口説くのが得意な方、女性を口説いてみたい方、女性が好きな方、ムーディーな雰囲気が好きな方……etc、お待ちしております!!!

 【注意】口づけは唇じゃなくても大丈夫ですが必ず、口づけはしてください。ただ、へっち過ぎるのはNGです。雰囲気と内容で、勝負してください。また、描写は基本的に個別ですが、例えば、プレイングを合わせて取り合うようなシチュエーションも可能です。

●目的
 ムードを作って、最高の口づけを贈る事です。性別は勿論、問いません。また、口づけの回数は制限していません。

●時刻
 昼間から夜まで

●依頼人
 フィーネ・ルカーノ (p3n000079) 
 女性で財産家。日々、刺激を求め、ローレットによく依頼をします。偽るのが上手く、あちこちに恋人がいます。残酷で美しい物が好き。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●場所
 フィーネ・ルカーノ所有のプライベートビーチ
 白い砂浜、真っ青な海です。釣り、シュノーケリング、カヤックなど様々な遊びが出来ます。簡易シャワー、トイレ、寝袋とテントもあります。

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 口づけとシチュエーションは無限大!!! 注意して欲しいことや、アドリブNGの場合は明記ください。

  • 最高の口づけ完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年03月13日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867)
子守りコウモリ
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)
性的倒錯快楽主義者
松庭 黄瀬(p3p004236)
気まぐれドクター
御幣島 十三(p3p004425)
自由医師
ライア(p3p004430)
嘘憑き
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

リプレイ


 燦然と輝く太陽の下。
「一番はミミなのだー!」
 『白パンのミミ』ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867) がインストルメントを掻き鳴らし、静かに降り立つ。
「元気なのね。あら?」
 フィーネは突然、倒れ込む小さなコウモリを抱き留める。
「あ! ミミ、寝てたの!」
 ミミはハッとし、フィーネを見上げる。
「面白いお嬢さんだこと」
 フィーネの言葉にミミは笑う。

「じゃあね、じゃあね。飛ぶよ! ご招待! いざ、空へ!!」
 固定帯を巻かれたフィーネは揺れる。ミミの身体をハングライダーのようにし、フィーネの両足が空を掻く。
「じゃ・じゃーん☆」
 上昇は疾く速やかに。ミミは強い風と日差しに目を細めた。フィーネの髪とカシュクールワンピースが、激しく揺れている。
「凄いでしょ! あ、高いのだいじょぶ?」
「ええ。風が凄いけど」
 フィーネは笑う。少しだけ自由になった気がする。
「思い切り動いてもきっと平気……そう、多分ね? ねねっ、ビーチの見所ってどこ?」
「見所? そうね、あそこのマングローブにアカショウビンがいるわ」
 フィーネは指を指す。
「火の鳥! あっちダヨネ?」
「ええ」
「分かったヨ! あ、その鳥って食べれるの?」
「よく焼けば食べれるような」
「そっかー!」
 ミミは楽しそうに笑いながら、身を捻り、羽ばたかずに滑空でそっと下降していく。フィーネは息を呑む。
「とーちゃくだよ!」
「ありがとう」
 数分間の空の旅。ミミは固定帯を簡単に取り外し、叫ぶ。
「いた」
「そうね……」
「えいっ!」
 ミミはフィーネに抱き着く。そのまま、肉を食べずに丸いと評判だった(家庭内で)歯でフィーネの耳を咥え、楽しそうに何度も甘く咬む。身体を離したミミは、日傘を開き、手渡す。
「はい、フィーネ」
「ありが──」
 傾けたその一瞬でミミは口づける。目を見開くフィーネ。
「へへ、やったヨ★ 楽しかったネ! バイバイフィーネ、また会う日までっ」
 ミミは手を大きく振りながら飛び立つ。
「キ・キ・キ! ご飯はどうしよっカナ~? ビーチを臨んで寝ようっカナ~? あ、フィーネに聞いたアレにしよ! あーれ、これっ そーれーもー るるるー」
  急旋回をしながらミミは笑う。
 
 『嘘憑き』ライア(p3p004430) は、汗をハンカチで拭うフィーネに微笑む。
「どう? 楽しんでる? 休憩をしよう」
 ライアはブラッドオレンジジュースを手渡す。
「ありがとう。勿論、楽しんでるわ」
「良かった」
 ライアは、人懐こい笑みを浮かべる。万華鏡のように変わる美しき、演者。フィーネは、ライアを真っ直ぐに見つめ、パラソルの下に腰を下ろす。潮騒が青いメロディを奏でる。ふと、フィーネを見つめるライア。
「ねぇ、そんなに見られると穴が開いてしまう」
 すり抜ける海風。
「ああ……天気がよくて何よりだ」
 ライアは顔を真っ赤にさせながら、視線を逸らした。純朴な青年を思わせる。
「そういえば、最近流行りの小説は読んだ?」
 ライアは尋ねる。
「ええ、クローズド・サークルでしょう? 離島のパワースポットを訪れた主人公と友人が殺人事件を解決するのよね。読み終えた後、Fを想って泣いたわ」
「Fは確か、資産家の娘さんだったね。主人公達と犯人を捕まえようとしてそのせいで、殺されてしまった」
 ライアは寂しそうに言った。
「ええ、とても好きだった。彼女の言動の全てを愛していたわ」
「彼女は魅力的だった。でも、Fのお蔭で事件は解決した」
「そうね、彼女の殺害は想定外だった……」
 嘆息するフィーネをじっと見つめるライア。男性的な表情。子犬のような青年は何処にもいない。フィーネは小首を傾げようと──
「動かないで」
 細い指先がフィーネの頬に優しく触れる。やや遅れて、瞼に口づけを一つ。
「まつげにゴミがついていたんだ」
 息を吐くライア。
「ありがとう」
「そろそろ、行ってしまうのかい?」
「ええ、そうね。名残惜しいけど……」
 立ち上がるフィーネ。見つめるライア。 
 ふと風が──
 大きく揺れるフィーネ。伸ばされた細い腕。咄嗟に伸ばした腕。それは絡まる糸のよう。ライアは喉を鳴らし、砂に横たわるフィーネを見下ろす。
「フィーネ……」
 ライアは唇を震わせ、愛おしそうに額へ。そして、ゆっくりと髪、頬に口づけて──
「ああ……」
 互いに洩れるさざ波のような興奮。ライアは味わうように唇を重ねる。

 『気まぐれドクター』松庭 黄瀬(p3p004236)は太陽の下で考え込む。
(口づけ、キス……治すことに興味はあるけど、恋愛はあんまり経験ないからなぁ。おっと、彼女のご到着だね)
「とても素敵だよ」
 にっこりと笑う黄瀬。
「ありがとう。あら?」
 フィーネと黄瀬は『死眼ノ蹂医』御幣島 十三(p3p004425)の眼差しに気が付く。すぐにフィーネは十三が愛しているであろう、黄瀬に腕を絡ませる。
「怖いヒトだよ、きみは」
 肩をすくませながら、黄瀬は何処か楽しげだ。
「ねぇ、散策でもどうかしら?」
「いいねぇ」
 ぴったりと密着し、砂浜を歩く。
「気を付けて、足元に海月が」
 黄瀬は言う。頷くフィーネ。その背に強い視線を受けながら海を見つめる。鮮やかな魚の群れ。揺れる髪。
「どうかした? 楽しくはない?」
 暗い顔の黄瀬に気が付く。
「いや、楽しいよ。でも、この恋は叶わない」
「何故?」
 瞳に浮かぶ好奇心。
「ぼくときみが赦されざる恋をしているからかな」
「そう。それでも、あたくしは」
 黄瀬は左右にかぶりを振る。
「……」
「二人で、同時に果てることで永久に一緒にいることを選ぼう?」
 フィーネは眉を寄せる。黄瀬の手には一粒の毒薬。
「甘い祝福をぼくたちに」
 黄瀬は毒薬に見立てたキャンディを放り込み、かみ砕く。
「大丈夫だよ、心配しないで。これでずっと、一緒にいられる」
(まぁ、ぼくは腐っても医者だから本当はそんなことしないし、そうなったら全力で治すわけだけど)

 口づけは甘い死の味。尖ったキャンディが口内を犯し、フィーネは、離れようとする黄瀬に何度も唇を重ね、舌を吸う。
(なんたって、こんな……ぼくみたいなおっさんとキスしても嬉しくないでしょーに……あぁ……)
 呻き、呼吸すら忘れ──

 黄瀬は息を整えながら、「こんな茶番に付き合ってくれたお礼に毒薬(キャンディ)はどーぉ? まぁ、本物のキャンディ(毒薬)も持ってはいるけど、きみはまだ果てるつもりはないでしょ?」と笑う。
「そうね、あたくしはもっと生きていたいわ。貴方もそうでしょう?」
 黄瀬の胸を指でなぞる。


 フィーネは黄瀬から離れ、十三に歩み寄る。
「ごきげんよう」
 フィーネの言葉に夕暮れに染まった、十三はハッとする。
(い、いけない。嫉妬してる場合じゃない。借金をチャラにするために依頼に集中しないと)
 息を吸う。
「──おいで。見せたいものがあるんだ」
 十三は紫色の瞳を細め、フィーネに手を伸ばす。くすりと笑うフィーネ。
「もう、いいのかしら」
「何のことだ? 解らないな」
 十三は強引に手を引く。今度は黄瀬の視線が触れる。

 誘われたのはビーチ。
「コニャックの水割りでもいい?」
「大好きだわ」
「それは良かった」

 それから──
 二人はグラスを傾け、ともに笑う。
「貴方の賭場の話、好きよ」
「ありがとう。今、グリーンフラッシュが」
 近づき囁く十三。首を傾げるフィーネ。
「太陽が完全に沈む直前、水平線に緑の光が瞬いて見えるんだ。珍しい現象だから、前いた世界では「見た人は幸せになれる」なんて言われてたよ」
「そう……」
 目を細めるフィーネ。十三はグラスを置き、腕を引く。瞬く間にバランスを崩すフィーネを、抱き留めるような形で背後から抱き締める。
「なあに、いきなり」
 笑うフィーネの耳に唇を寄せ、十三はフィーネの黒い髪を梳くように撫で、「だからさ。俺が幸せにしても、いい?」と甘く、低く囁く。
 そして、フィーネが何かを言う前に優しい口づけを耳へと贈り、腕に力を込めた。
「……さぁ、行こう。今日が終わってしまう前に」
「ええ、ありがとう」
 見つめ合い手を繋ぐ。人肌の温もりとさざ波の音がフィーネを癒す。十三は指を絡ませフィーネを送り届ける。


 『月影の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208) は、目を細める。颯爽と歩く美しい人。
「今日はどう、楽しませてくれるの?」
 フィーネは立ち止まる。
「あ、ええと……」
 弥恵の強ばった表情をじっと見つめるフィーネ。
「大丈夫よ、別に。あたくしが勝手に銃を向けたのだから。好きに呼んでくれてけっこう。でも、今日だけはフィーネと呼んで。その方が素敵だもの」
 弥恵は頷き、フィーネを導く。フィーネは弥恵を盗み見る。淑やかな腰つき、手を伸ばせば触れられそうな無防備さ。一つ一つの動作が艶かしい。

 振り返る。
「おば……いえ、フィーネ」
 恥じらうように名を呼ぶ。水面に映る月と木製のステージ。
「なぁに?」
「私を見てください」
 舞う。月光が宝石、ガラスの靴を濡らす。靡く髪、ダイナミックな動き。潮騒の心地よいリズム。弥恵は、触手のような視線を感じながら、全身を、激しく動かし続ける。時折、風の悪戯によって、下着が露になる。

 フィーネが舞い終えた弥恵に近づく。
「美しかったわ。ただ、下着が見えていたけれども。まさか、誘っているの?」
 弥恵の臀部に触れ、撫でる。
「あっ!?」
「冗談よ、本気にしないで」
 飛び上がる弥恵にフィーネは笑う。
「もう、フィーネは」
 弥恵は怒りながら、ふと、真剣な顔をする。伸ばした左手が、フィーネの視界を塞ぐ。世界も、弥恵もみな、消えていく。感じるのは闇と、音、そして、手の温もり。フィーネは闇の中で目を閉じた。途端に触れる、柔らかな唇。フィーネは笑う。そして、舌を滑り込ませる。
「──!?」
 弥恵は顔を赤くしながら、フィーネにしがみつく。もう、何も考えられない。

「フ、フィーネ!」
 弥恵は涙目でフィーネを見る。
「なぁに? とても良かったわ」
 にたにたと笑うフィーネ。そして、あらと笑う。
「え?」
「貴女の下着」
 指差した先に、弥恵の下着が落ちている。紐の切れたレースのパンツ。
「ぁ、きゃーー!? 下着が……! み、見ないでくださいませー!」
 弥恵は目をぐるぐると回す。フィーネは騒ぐ弥恵を見つめ、楽しそうに笑う。

 『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062) は、悩ましげに息を吐く。
(フィーネさんに、ご満足いただけるキスができる自信が、ありませんの。でも……何度、繰り返したとしても、最後にはご満足いただかねばなりませんの……)
 夜空は、ノリアがいちばん好きな光景――深い海の、はるか波間に弱々しく光る太陽が、ふり注ぐマリンスノーを白く照らす様子に、よく似ている。
「あたくしを楽しませてくれるのでしょう?」
「……フィーネさん、怒られてしまうかもしれませんけれど──」
 くすりと笑うフィーネ。目を瞬かせるノリア。
「良いわ、聞きましょう。でも、まずは座ってもいい? こんなに美しい夜に焦ってはいけない」

「正直に、打ち明けますの」
 ノリアはフィーネを見上げる。
「わたしには……焦がれる方がいますの。だから、いつか、必要になったとき……ゴリョウさんを失望させてしまうようなキスは、したくありませんの……」
「そう」
 フィーネはノリアを眩しそうに見つめる。
「ですので、わたしは、フィーネさんのお話をよく聞いて、ご指導のとおりに、キスしますの」
 視線は惑い、彷徨う。フィーネは微笑し、悪魔のように囁く。

 伸ばした手がぎこちなく、フィーネの頬を撫でる。
「ふふ、くすぐったいわ」
「あ……」
 震える身体、怯えたような視線をフィーネに。
「大丈夫よ、続けて?」
「フィーネさん」
 声は擦れ、ノリアは頬に唇を寄せる。柔らかな肌、至近距離から見つめた瞳がノリアを見つめ返す。
「綺麗な瞳ね」
 フィーネがノリアの首筋を撫で、首筋を吸う。
「あっ……!」
 ノリアは震え上がり、無意識にフィーネに両腕を回し、耳に口づける。フィーネは笑い、ノリアは息を吐く。押し潰されそうになる心。それでも──
 目を閉じ、唇に触れる。

「素敵な口づけだったわ」
 フィーネは満足げに立ち上がる。
「フィーネさん……!」
 ノリアは慌てる。触れた場所は、頬。
「別に何も言わなくていいわ。それに、好きな人となら、どんな口づけでもいいと、あたくしは思うの。だから、初めては彼にね?」
 フィーネは妖艶に笑う。

 闇を星と潮騒が払う。『永遠のキス』雨宮 利香(p3p001254) は颯爽と歩み寄るフィーネを知る。利香は誘うように手を伸ばす。
「フィーネちゃん、待っていたわよ」
「お待たせしたわね」
 眼差しを強め、口角を上げる。手が簡単に触れ合う。月が照らす夜の砂浜。
「私と行きましょう?」
 利香の息がフィーネの鼓膜を揺らす。
「ええ、貴女となら何処までも──」
 フィーネは目を細め、利香の胸元を眺める。
「正直な人」
 利香はくすくすと笑い、フィーネを労わる様にゆっくり歩き出す。足元のシーガラスが、冷たい光を反射させる。
「風がとても気持ちいいわねえ。こんな素敵な海岸に二人きりだなんて、贅沢しちゃってるわね」
 利香は銀色の髪を揺らし、フィーネを見上げる。二人の肌を月光が彩り、風が通り過ぎていく。
「この時間が永遠なら良いのに。それに、潮の香りが心を穏やかにするようで……眠ってしまいそう。なんて、嘘。貴女がいるもの、眠れやしない」
 フィーネは利香の手の甲に口づけ、「甘い」と笑う。利香は目を細める。
「ねえ、フィーネちゃん? あそこに行かない?」
 波の音が響く。
「いいわ。あたくしは貴女に従うしかないのだから」
 微笑むフィーネ。降り注ぐ月気。

 二人はチェアに座り、砂浜に打ち付ける波を見つめる。波は砂を攫い、儚く散っていく。利香はフィーネの横顔を眺める。寂光が、フィーネに陰影を与える。
「フィーネちゃん」
 利香はしなやかな指先に触れる。途端にフィーネが利香を見つめる。無防備な顔を利香だけに見せる。くすりと笑う利香。
「可愛いひと、今宵は素敵な夢を見せてあげるわ……これはそのおまじない」
 利香は耳に唇を寄せる。熱い息がフィーネの身体に響き、甘い吐息を漏らす。そのまま、熱い舌先が蠢き、フィーネの耳を濡らす。
「好きよ、フィーネちゃん──」
 笑う。利香は傾いた顎先を強く押し上げ、震えるフィーネの唇を吸う。漏れる甘い声。
「……ああ、御馳走様ね?」
 利香はフィーネの濡れた唇の端を軽く舐め取り、サディスティックな笑みを見せた。

 手なら尊敬
 額なら友情
 頬なら厚意
 唇なら愛情
 瞼なら憧れ
 掌なら懇願
 腕と首なら欲望
 さてそのほかは、みな狂気の沙汰。

 月の光が砂浜を照らす。規則正しい足音。
「最後は愛しい貴女の為に」
 フィーネの笑みは、血など知らぬ貴婦人のよう。『性的倒錯者で快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)は口元を歪ませる。
「傷の調子はどうなのぉ?」
「もう、すっかりよ」
「それは良かったわねぇ。あら、血の匂い?」
 濁りきった蒼眼を細める。
「やだわ、新しい服なのに。あたくしに纏わりついているのかしら?」
「困ったものねぇ。でも、気をつけなさいよねぇ、唯でさえ貴方狙われやすい質なんだからぁ」
「そう、皆、晴雲秋月のあたくしを愛しているの。ああ、治療はいいわ……」
 甘く掠れた声。目視で傷を確かめようとするニエルを背後から抱き締める。
「フィーネ、どうしたのよぉ?」
 ニエルは笑う。
「急に貴女が欲しくなった」
「甘えん坊さんねぇ。ねぇ、今までどんな雰囲気で、どんなキスをしたの?」
「ああ……」
 毒に似た愛をニエルの耳に滴らせていく。

 吐き出した愛は羨望を生む。
「あぁ、貴方と私の欲求は似てるから、とても羨ましいわぁ」
「なら、あたくしが何を望んでいるか解るでしょう?」
「そうねぇ、だからこそ」
(思い通りになってあげない)
 背後のフィーネに片手を伸ばし、顎先を撫でる。指先をゆっくりと動かしながら、ニエルは指の腹で踊る様に唇に触れ、噛みつくように──
 いや──
 漏れる吐息。
 ニエルはフィーネの腕を解き、離れる。唇を押し付けのは、喉。

「私は私を満たすために、貴方と関わっている。私は貴方を縛るつもりはないし、きっと貴方もそう。ねぇ、フィーネ? 互いが求め合う欲求を、これからも満たしましょう?」
 ニエルは、にゅっと笑うフィーネを眺め、息を吐く。

 私は絶対に愛さない。
 愛すれば求めずにはいられない。
 その人のすべてを。
 その人のすべてを奪うため、その人を手にかけずにはいられない。
 愛するからこそ……そのすべてを余すこと無く我が物としてしまいたくなる。
 それだけは……絶対に駄目だ。


「フィーネ様」
 フィーネに近づく十三。
「待っていたの?」
「そうだよ、一人は寂しいからね。それとこれを渡したくて」
 気まぐれに十三は恋文をフィーネに手渡す。
「俺達との一日を経て、会いたくなった恋人がいたら……わざと見える場所にコレを置いとくと面白いんじゃない? お好きでしょ、悪戯するの」
「ええ、そうね。最高の遊びよ」
 月影の元、猫のように笑う。

「愛しのフィーネへ 機械眼の騎士より」
 記されたその中身は、今まで舐めたどんな菓子より甘い。



成否

成功

MVP

御幣島 十三(p3p004425)
自由医師

状態異常

なし

あとがき

 ああ、楽しかった。とても、幸せだった。ありがとう、愛しているわ──
 MVPは、機械眼の騎士、貴方に与えましょう。

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