シナリオ詳細
<常夜の呪い>夢現へようこそ
オープニング
●ある手記より
『私は出会ってしまった。邪教徒があがめる神ならざる神は実在した』
『神ならざる神は私に呼びかけた。甘く囁くように呼びかけた』
『私はその声を聞いてはならなかったのだ』
『私が正気で居られるのはいつまでだろう。私を構成するいくつもの事柄が頭から抜け落ちていくように思える』
『原罪の呼び声か。いや違う。もっと直接的で、もっと恐ろしい』
『私が壊れてゆく』
『私が壊れてゆく』
『私が壊れてゆく』
『私が壊れてゆく』
『真なる夜魔をたたえよ』
●<常夜の呪い>事件
「みなさーん! 大変、大変なのです!」
ギルド・ローレットが頻繁に利用する酒場に駆け込んできた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に、イレギュラーズたちはいつものように振り返った。
ギルドボードの前に立ち、真新しい依頼書を掲げる。
依頼書の名義人は、天義教会スナーフ神父。
内容はきわめて深刻。
『呪われた町の調査と奪還』である。
天義西部に位置する町、ムーンボギー。
ごく一般的な町であり、ごく一般的な神父と教会によって納められていた町。
そんなムーンボギーが、たった一夜にして呪いの夜に閉ざされた。
「今、町の周りは夜色の霧でドーム状に覆われているのです。
調査に入った騎士も8割が帰ってこなくて……残った兵士も不思議なことばかり言うのです」
生還した騎士は非常に錯乱していたが、『町がおかしい』『あれは知ってる町じゃない』『みんな殺された』『これは現実か』といったことばかり話すようになったという。
「皆さんには、今からムーンボギーの町……厳密には町を覆っている夜色の霧の内側へと侵入し、状況を探索して、そして可能なら呪いを解いてきて欲しいのです。
けれど話から察するに戦闘が起こる可能性もあるのです。
だから充分に注意して、そして必ず無事で……そしてしっかりと情報を獲得して帰ってきてほしいのです!」
- <常夜の呪い>夢現へようこそ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年03月08日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●夜魔を尋ねて
宗教国家ネメシス、通称天義。
そのなかに、ごく普通に位置する町ムーンボギー。
国の端にあるというわけでも、運河がつながっているということも、特別防衛が薄いということもない。ごくごく普通の、よくある町であった。
その周辺区域はどこも封鎖処理がなされ、全ての住民は完全な避難を終えていた。
「こういう時、天義の統率力には舌を巻くねえ」
『“旧き夜”』武器商人(p3p001107)はヒヒ、と薄く笑って静かな町を見回した。
等間隔に設置されたマンホールと街灯ポール。
ゴミひとつ落ちていない清潔な歩道と、整備された馬車道路。
国民が規則正しく清潔に生きていることが、風景の端々から見て取れた。
ゆえに、避難も迅速かつ完璧なのだ。それらの情報は、武器商人ともう一人がムーンボギーの評判や資料情報から集めてきたものとぴったりと一致している。
そういう部分もふくめて、キッチリとした国柄である。(幻想の場合、欺瞞情報や誤情報が紛れることが珍しくない)
「地図も正確だ。流石、といったところかな……」
『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は隣町の神父から無料で複製された地図を開いてみた。
地球世界のジャパンで暮らしていると地図くらいその辺に転がっていると思いがちだが、正確な測量を定期的に行なう人件費が公費から支払われ続けるというのは相当恵まれたことである。
逆説。ムーンボギーという町はきわめて公平で、福祉が行き届き、真面目で誠実な市民が健康的に暮らしていることを意味していた。
「確か、『呪われた神殿』の状況に似てたんだよね?」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)が、そのウサギめいたカチューシャかざりを傾けた。
過去のこと。天義の異端審問官ニコライノフが異端的信仰ありやと調査に当たった結果、廃人化して発見されたというものである。
「『誰でも知っていて、誰も気づいていないもの、なあんだ』……かあ。夢かな?」
「どうだろうねえ。夢なら、自分で気づけるとおもうけど……とても正解に近い、とは、思うよ」
武器商人のいわんとすることに、セララは更に首をひねった。
「誰が、どうやって。たった一ヶ月の間に、騒がれる事もなく、生首の山を築いたのだろうね?」
「んん?」
もうすこし、更にひねる。
――武器商人がこの時点で『ある事実』に気づいていてあえて言わなかったのか、それともまだ確信を得ていなかったのか。それはわからない。
「夜色の霧。夜魔。神ならざる神。……不可解で不気味な事ばかり。この中に、なにがあるって言うの?」
『青の十六夜』メルナ(p3p002292)はムーンボギーの町を覆う夜色の霧に手を伸ばし、触れる寸前で止めた。
「ともかく。中には沢山の人が取り残されてる筈。行かなくちゃ。言って、確かめないと!」
ぎゅ、と手を握りしめるメルナ。
その横に、『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が靴音たかく立ち止まった。
「これまでの記録を見る限り、生きて残っている保証もありませんわ。依頼内容は調査と解消ですけれど……できる限りの人は、助けていきたいですわね」
「ん……」
翼を畳み、着陸する『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)。
「この国の純白さは嫌いだけど、常夜の純黒に沈めば良いとも思わない」
「狂気……汚染……洗脳……まるで『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』ですね」
『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は過去の資料。特に『呪われた神殿』で発見されたというメモの内容を見返していた。
かつてサーカスが幻想にもたらした狂気や、ある海賊が魔に堕ちた際の出来事に、これらは類似しているように思えた。
『もっと直接的』という言葉にひっかかりがある、が。
「まずは、調べる必要がありますね」
「生還した騎士もあの有様ですし。呪いの正体、皆で解き明かしましょう」
『記憶の欠片』Selah(p3p002648)たちはそれぞれ注意事項を書き記したメモを共有し、三つのチームへ分かれて散った。
ムーンボギーに隣接する町の三方向から、それぞれ探索を進めるためである。
そして彼らは、『常夜の呪い』を本当の意味で知ることになるのだった。
●大草原のたのしいたのしいたのしいコロコロタイム・前編
「夢ーーーーー!!」
セララは両手をグーにして、青空に向けて突き上げた。
夜色の霧を抜けてすぐ、セララは大草原のド真ん中にいた。
お日様がぽかぽかと照っていて、そよかぜが気持ちよく吹いている。
きっとお昼寝などすれば素敵だろうと思えるような、そんな場所に、セララはいた。
「絶対夢が幻術だよ。あっ、ほっぺつねろう! 痛い! 幻術の方かな!?」
「どちらでもありませんね」
Selahはパープルカラーの目を大きく開いて、空や空気を『看』ていた。
「何らかの力で形成された異空間とみるべきでしょう。実際、出入りは簡単にこなせるようですし……」
Selahが外から持ち込んだ小石を思い切り来た道(?)へ投げると、途中でスッと消えてしまった。落ちる音も聞こえないが、おそらく夜色の霧を抜けて外に出たのだろう。
「音や空気は遮断されていますが、確かに地続きなようです。広さまで調節できているのかは……確かめようがありませんね」
「えー、ざんねん。夢だったらドーナツ沢山食べられると思ったのに」
ごろんと寝転がるセララ。
ふと、あのなぞなぞめいた言葉を思い出した。
「ねえ、夢って自分で操作できるし、夢を見てるなって思ったら自由自在だよね」
セララが急に言い出したことに、同行していたメルナが振り返った。
「そう、かな?」
「ボクだったら、夢の中でスーパーセララになってドーナツ食べ放題するなー。お友達も沢山呼んでパーティーしたり冒険したり……」
「夢なら、そういうこともできるね。ん?」
セララのいわんとすること。もとい、途中まで考えたが言葉にならずパスしようとしたことに、メルナはようやく思い至った。
「夢の中に出てきた人たちは、自分たちが夢の中にいるって気づかないものだよね」
メルナは考えた。深く、深く考えた。
幻想でかの場所が『常夜の谷』と呼ばれていたこと。天義では『呪われた神殿』と呼ばれていたこと。……であるにも関わらず、あの不気味で特徴的なあれこれが、全く過去の文献に残っていないこと。
そして第一の探索隊と第二の探索体の間で生じた、『もしあったなら見つけていないとおかしいもの』の存在。
「変化……してる。そもそも、神殿なんて無かったんじゃ……」
その時である。
草原の向こうから、まるっこい物体が姿をみせた。
きゅるきゅると音を立てて現われたのは。
あの、床を掃除するときに使う、コロコロするやつだった。
「……あっ、野生のコロコロだ! 天義にも居るって聞いたけど、こんなところにも出――」
身体を起こすセララ……の前に、Selahが素早く立ち塞がる。
「待ってください。あれは危険です!」
「……だね」
セララはすぐに、剣にてをかけていた。
二人の様子に何かを察するメルナ。
コロコロが近づいてくる。近づいて、近づいて、近づいて……全長10メートルを超える凄まじい巨大さで、目の前に停止した。
●ミスターホイップクリームと甘いお菓子の町・前編
レイヴンは風景に目を細めた。
ムーンボギーを覆った夜色の霧は、過去の依頼報告書にあった霧と同種のものであったため、きっと内部も暗いのだろうと考えていたが。
茜色の大きな太陽が昇り、町は夕焼け色に染まっていた。
真昼のように明るくはないにしろ、持ち込んだカンテラやサイバーゴーグルは不要だろう。
「まあ、想定していないほどじゃあない」
鞄に夜間活動用の道具をしまい込んでから、レイヴンは町を歩き出した。
「聞いていた話とだいぶ違うね。それに、すごく甘いににおいがする」
ミニュイは顎をあげ、空気のかおりを吸い込んだ。
バタークッキーとチョコレートと、ホイップクリームが混ざったような香り。
よく見れば、あちこちの民家はそれらで出来ていた。
つまり。クッキーの外壁とチョコレートの窓と、ホイップクリームの屋根でできていた。
「随分と……」
「随分と不気味だねえ」
武器商人が『不気味』というワードを使ったことに、他二人は警戒を露わにした。
武器商人が何かを感じ取った。そう判断したのだ。
「誰も助けを求めてない。これだけ賑やかなのにねえ」
武器商人が常時発動させていた人助けセンサーに『たったの一人も』ひっかからないのだ。
町には結構な数の人間がいたはずだ。
たとえどこかに隠されていたとしても、きっと助けを求めるだろう。
それが無いと言うことは。
「死んでいるか、気を失っているか」
「もしくは狂気に犯されたか、だね」
暫くすると、子供たちの歌が聞こえてきた。
三時のおやつを讃える歌が。
無数の行進と共にやってくる。
その無邪気さといびつさに、三人は本能的に戦闘態勢をとった。
ウェディングケーキのような物体が飛び跳ねながら道路をゆき、歌うクッキー人形たちが付き従う。
「みんなー、見てごらん。夢を邪魔するやつらがいるよ。こういう時はどうするのかな~?」
ウェディングケーキが呼びかけると、クッキー人形たちはチョコペンで笑顔を作って一斉に叫んだ。
「「殺戮!!」」
●ちまみれうさぎちゃんと死ぬほど愉快な遊園地・前編
「月ですわ。綺麗な満月」
暗い夜のなかにぽつんと浮かぶ月を、ヴァレーリヤは見上げた。
辺りは夜闇にすっかり沈んでいたが、しかし真っ暗ではない。
なぜなら。
メリーゴーランド。
観覧車。
コーヒーカップにジェットコースター。
まばゆい程の電飾で綺麗に飾られた、そこは夜の遊園地であったのだ。
「いくらなんでも、面妖が過ぎます」
雪之丞は刀を強く強く握りしめた。
遊園地の中を探索する雪之丞。
混沌にこんな場所がないというわけじゃあない。メリーゴーランドも観覧車もなくはないし、知らないわけでもない。
が、天義のごく普通の町にこんなものが突然あってはたまらない。
それに。
「霊魂の気配が、あまりにもなさ過ぎます」
人間は町のあちこちに思い入れを持っていて、弱い霊魂であれば道ばたを適当に歩いていたりもするものだ。墓地や心霊スポットめいた場所にはそれこそぎゅうぎゅう詰めになることもあるが、雪之丞はそれらをかぎ分ける(?)ことに長けていた。
そんな彼女からして。
この場所は無菌室が如く霊魂の気配がなさ過ぎるのだ。
まるで、このためだけに新しく作られた清潔な箱である。
「それにしても、『邪教徒があがめる神ならざる神』……だったかしら。何か信仰に関わる儀式やアイテムがあるのかしら。この場所がそうだとは、とても思えませんけれど……」
耳に痛いほど流れる陽気な音楽。
回るメリーゴーランド。
そんな中に、ぽつんと。
ウサギを模した着ぐるみが立っていた。
小首を傾げるヴァレーリヤ。町の人かしら? そんな風に思って歩み寄ろうとしたところで。
足を止めた。
後ろ手を掴まれた。
それは同時だった。
ウサギの着ぐるみは血まみれで、手にはチェーンソーを持っていた。
「あそぼうよ」
くぐもった裏声がする。
ヴァレーリヤは後ろ手を掴んだ雪之丞へ頷くと、メイスを手に取った。
「あそぼうよ」
「あそぼうよ」
あちこちから、合計三体ほどのウサギの着ぐるみが現われる。
それぞれ斧やバールを握っているが、とても日曜大工をするようには見えない。
「敵意は?」
「全個体に」
「了解……ですわ!」
ヴァレーリヤは、メイスに聖なる炎を宿らせた。
●大草原のたのしいたのしいたのしいコロコロタイム・後編
「セララフェニックス――!」
フェニックスカードをインストールした聖剣ラグナロクが炎の翼を広げて巨大コロコロの柄を打った。
根元から派手に切断された柄は飛んでいき、延焼した炎はコロコロ本体をも焼いていく。
しかし! コロコロは表面のシートをはがすことで炎ごと引きはがしてしまった。
「まだだよ! まだボクたちの攻撃は終わってなわあああああ!」
コロコロに巻き込まれてコロコロされていくセララ。
「セララ!?」
「ボクは大丈夫~!」
全く大丈夫に見えないがどうやら本当に大丈夫らしい。
Selahは状況を理解し、セララに超分析を放った。
シートごと切り離し、ぺいっと離脱するセララ。
Selahはそんな彼女を回収して走ると、ターンして追いかけてくるコロコロに振り返った。
窮地(ピンチ)? 否――勝機(チャンス)だ!
「今です、メルナ!」
回転するものは正面からの攻撃を受け流し押しつぶす。しかし横軸からの攻撃には、ひどく無力。
メルナはそれにいちはやく気づき、身を伏せてセララたちの『誘い』を待っていた。
そして今こそ、仕掛けるとき。
『イノセント・レイド』――光を纏った剣の突きが、巨大な光の剣となって巨大コロコロの横軸を正確に打ち抜いた。
ギャリ、という軋む音と共に崩壊する巨大コロコロ。
と同時に、周囲の風景がガラス細工のように崩壊した。
●ミスターホイップクリームと甘いお菓子の町・後編
「ヒヒ、苦手な状況だけれど……悪くはないねえ」
武器商人は名状しがたいものを肉体に纏い、ウェディングケーキへと突撃していった。
そんな彼へ真正面から飛びつき、どぷんと飲み込んでいくウェディングケーキ。
「ぼくの中でケーキになっちゃえ~!」
ぼこぼこと泡立つように、ウェディングケーキが暴れる。
「…………」
身構えるレイヴンとミニュイ。
通常なら武器商人を助け出すべく飛びつくところだが、『そうしなくていい』理由を彼らは知っていた。
「『起動せよ、起動せよ、魔砦の巨蟹』――カルキノス!」
レイヴンは強く足踏みをしかけると、ビスケットの大地に巨大な魔方陣を展開した。
群がるクッキー人形の子供たち。
その一部を、魔方陣から飛び出した巨大な蟹の腕がたたきつぶした。
彼らの上を駆け抜けるように飛翔するミニュイ。
傾けた翼がクッキー人形たちを次々と粉砕し空へと舞い上がっていく。
「思っていたのと随分違う状況だけど」
構わない。やることは一緒だ。
ミニュイは翼を派手に振り回し、血の混じった羽根を飛ばしていく。
クッキー人形をいくつも破壊した所で、残ったクッキー人形がウェディングケーキの周りに集まっていった。
ケーキを手づかみでむしると、むしゃむしゃと食べ始める。
だがよく見れば、ケーキには赤黒いものが多く含まれているのが分かった。
ストロベリージャムなどではないことも、見ればわかる。そして直前に取り込んだのが何だったかも、しっかりと見ていた。
そんな異様な光景に、しかしレイヴンはひるまない。
「信じるよ。この程度じゃ――死なないって!」
破壊のルーンを発動。放物線を描いて飛んだ雹の嵐が、ウェディングケーキとその周辺に群がった人形たちを破壊し尽くした。
そして最後に残ったのは。
「ヒヒ……」
満身創痍なれどまだ死なぬ。武器商人ひとりであった。
と同時に、風景がまるでチョコレートのように溶けて消えていく。
●ちまみれうさぎちゃんと死ぬほど愉快な遊園地・後編
「『主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に』!」
祈りの言葉と共に繰り出されたヴァレーリヤのメイスが、バールを振りかざしたウサギの着ぐるみを粉砕した。
と同時に、雪之丞の抜いた刀が眼前の着ぐるみを瞬時に三分割し、斜めに崩れさせていく。
「あそぼうよ」
「遊んでいる暇は無いのですよ」
チェーンソーがうなりを上げる。
雪之丞は大きく踏み出し、ヴァレーリヤは飛び上がる。
二人の刀とメイスが、それぞれ着ぐるみウサギに交差した。
燃え上がり、切り裂かれる血まみれの着ぐるみ。
「あそ……ぼ……」
崩れ落ちる着ぐるみ。
うるさいほどの音楽がやみ、電飾が落ち、火が消えたように風景は無くなった。
気づけば、そこはムーンボギーの町であった。
露天商も通行人も、そのままの姿で地面に座り込むなりして眠っている。
眠っていないのは、ヴァレーリヤと雪之丞と、そして一緒に町へ入った仲間たち。
――と、銀色の神をした耳長の少女だった。
「「――!!」」
咄嗟。
なれど、その場の半数以上が少女を『最も危険な存在である』と認識し、ほぼ同時に襲いかかり、その様子を見た残る全員が同じく攻撃に移った。
が、しかし。
「どうして……邪魔……するの……」
全ての攻撃が少女をすり抜け、霧のようにかすむだけだった。
「みんな……眠ったまま……死ねば……幸せ……なのに」
少女は霧のように消えた。
そして残された皆は、強く強く確信したのだ。
彼女が『真なる夜魔』。
魔種である、と。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――新たな魔種『真なる夜魔』の発生を確認しました
――天義にて非同時多発的に同種の『常夜の呪い』が発生しました
――天義各協会は対応に繁忙を極め、ローレットへ依頼が集まろうとしています
GMコメント
【成功条件】
『町の呪いを解くこと』
イレギュラーズの皆さんは装備を整え、2~3チームに分かれてムーンボギーの町へと侵入します。
町は夜色の霧に覆われていて、中の様子を一切探ることができません。五感情報は勿論、ファミリアーによる共有情報やハイテレパス等の信号も遮断されてしまうようです。
まずは中で何が起きているのか、イレギュラーズたちは探らねばなりません。
【※注意※】
このシナリオでは未知の危険、未知の存在、未知の遭遇が起こる可能性があります。
ですが皆さんの手元には……厳密にはPLの手元には、『3つのメタ情報』が握られています。
これらを駆使し、この先に起こる現象を予測し、調査プレイングを立ててください。
●メタ情報1
かつてローレットは『常夜の谷/呪われた神殿』という場所を二回にわたって調査したことがあり、その内部情報を文書で記録している。
そのことから、今回の事件の状況が当調査内容に酷似していることに気づいてよい。
また、参考リプレイA及びBに描写された内容を共有・理解していることにしてよい。
・参考シナリオA
『常夜の谷へようこそ』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/739
・参考シナリオB
『Anyone knows――no one knows』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/841
●メタ情報2
町の呪いを解くための条件は、特定のエネミーと戦闘し、撃滅することである。
エネミーは『スリーパー』といい、戦闘力は個体ごとにまちまち。複数の個体がおり、その全てを撃滅する必要がある。
ただしPCはそれを知らないため、2~3人のチームを組んで調査・戦闘をするプレイングを書いておく必然性があるはずだ。
エネミーの外見、戦闘力はわからない。どんな相手が出てきてもいいように、準備を整えよう。
●メタ情報3
この事件は『はじまり』にすぎない。
ただし調査が行なえるのは今回が最後になる。
よって、今回の調査内容が今後の全てに影響する。
あくまで戦闘をおろそかにはせず、呪いに閉ざされた町を可能な限り探索、調査する必要があるだろう。
だがしかし、町が元通りに町の形状をしているとは、限らない。
また、PCたちは呪いを解く方法を知らないため、必然的に調査は重要になるだろう。
【情報精度:D】
当OPで生還した騎士が述べた情報、及び参考シナリオに描写されているキャラクターの見解には多くのミスリードが含まれており、それらは『状況的矛盾』としてリプレイ文章に表われています。
文章をそのまま鵜呑みにはせず、そしてさらなるミスリードに注意して下さい。
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