シナリオ詳細
薬草採取と森の魔物
オープニング
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「うぅむ、手近な所の薬草は粗方採っちまったな……」
とある村。集会所としても使われる、古い木造の村長宅。
数人の男達がテーブルを囲んで椅子に座り、上座に位置する初老の男性が悩ましげに眉をひそめて腕を組む。
まだ探せばあるだろうが、特に浅い場所の薬草を採り尽くすのはまずい。
「そうだな……そろそろ森の奥に入ってみるか?」
少し森の奥に入れば、手付かずの場所がまだある。
しかしながら、森は自然の恵みの宝庫だが同時にモンスターの存在する場所でもある。
村人だけでは危険が伴う。
薬草を採りに行って、傷を負っては世話がない。
「うむ、例年通り、冒険者に依頼するとしよう」
そうして資金を出し合い、ギルド・ローレットへ依頼を出すことに決まった。
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「こんにちは、皆さん。ユリーカなのです!」
明るく朗らかな笑顔を浮かべて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が挨拶する。
「皆さんにお願いしたいのは、薬草採取の護衛なのですよ」
村人共同でお金を出し合って護衛を雇い、普段は入れないような場所で薬草を採取するといったものだ。
こういった生活に密着した依頼は時折あり、駆け出しの冒険者の小銭稼ぎになる。
獣の縄張りは避ける方針だということなので、動物を殺める事に抵抗を覚える者も安心だ。
「それと一部、モンスターの討伐も含まれてますね」
目当ての薬草の群生地には、おそらく魔物がおまけについているとのことだ。
魔物がいない場所にも生えていると思われるが、数は期待できない。
村人達にとっては少なくない出費、群生地でできるだけ多く採りたいようだ。
ついでに倒した魔物からも、薬に使える部位が採れるらしい。
「とはいえ、さほど危険なモンスターはいないようなので、新人さんでも大丈夫です」
ぺらぺらと紙を捲り、調査内容を確認する。
予想される脅威は、植物系モンスターが数種類。
長い蔦を触手のように操り、獲物を捕える蔦の魔物。
鋭い棘と刃物のような葉を持つ茨の魔物。
綺麗な花を咲かせているが、花粉に毒を持つ毒花。
「どれも特徴をおさえて戦えば、何てことないのです」
どれが普通の植物で、どれが魔物かは同行する村の薬師が見分けてくれる。
但し蔦の魔物は足元に蔦を張り巡らせており、不意を打ってくる場合もあるとのことなので注意が必要だろう。
「採取自体は村の人達がしてくれるので大丈夫なのです。でも多少のお手伝いは、サービスとしても良いと思うのですよ」
依頼は護衛のみであり、見張っているだけでも十分仕事していると言えるが、心象は良くなるだろう。
一期一会の縁だろうが、村人との交流を深めてみるのも良いかもしれない。
- 薬草採取と森の魔物完了
- GM名白黒茶猫
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年02月22日 21時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「おーっす! 俺はカイトってんだ、よろしく頼むぜ!」
約束の場所に集まった一団と村人達が顔を合わせる。
鳥人の姿をした『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)が、一番に元気よく挨拶する。
「……僕はグレイル……よろしく……お願い……します」
次いで挨拶するのは一対照的な大人しい狼人『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)。
歩み寄ればそのもふもふオーラに癒されるかのように村人達の表情が和らぐ。
各々自己紹介を済ませ、森の中へと入り群生地を目指す。
「私の足跡を辿ってきて頂戴ね」
冒険に慣れ、感覚に優れた『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)が、後ろに声を掛けながら数歩先、先頭を歩く。
凸凹で足場が良いとは言えない場所だというのに、石畳で舗装された道を歩くような足取りだ。
何者かが此方にアクションを起こした際には真っ先に気付くだろう。
「やっぱり森の中は落ち着くなぁ。このままのんびり出来たらサイコーなんだけど」
道すがら、『Hydrangea』紫・陽花(p3p002749)が嬉しげに大きく伸びをする。
ぽかぽかと暖かな陽気に包まれ、森林浴といった風情だ。
「容易な相手とはいえ、油断は禁物です。気を引き締めて行きましょう」
「勿論さ。今日はお仕事だからね。キミ達、近くに魔物がいたら教えて欲しいな」
犬耳メイド、『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が促すと、陽花はマイペースににこりと笑う。
ドルイドである陽花が植物に話しかければ、草葉が風に吹かれてサラサラと音を立てて返事をする。
「主からは『領民の為に尽くしてこそ真の正義よ!』と私が使わされた訳ですが……」
もう一人のメイド、『魔法少女スノードロップ兼メイド』飛騨・沙織(p3p004612)にとっては、初の依頼となる。
ツリ目を閉じてクールな表情の中には不安と緊張が垣間見える。
「どうせなら楽しくやりましょ、ちょっと危ないピクニックみたいなものよ。あ、お弁当がないからハイキングかしら?」
先頭で警戒するリノが振り返って和ませようと声を掛ければ、沙織は背負っている少し大きめの荷物を指す。
「お弁当でしたら私が作ってきたものがあります」
中身は沙織が用意した全員分の軽食だ。
荷物にならないよう一人当たりの量は多くないが、小腹を埋めるには十分。
「あら、気が利くわね」
「おっ、メシか! サンキューな!」
「いえ、本職はメイドですからこれくらいは嗜みです」
リノやカイト達、村人から掛けられる感謝の言葉に、無表情ながらも安堵する沙織から程よく緊張が落ちていく。
「……そういえば……魔物の部位からも……薬になる材料が……採れるんだよね……?」
隊列として村人を中心に護ると同時に、持ち前のもふもふオーラで無意識に皆の中心になっているグレイルが口火を切る。
「ククッ、薬草の重要性はボクもよーく理解している。医療の際には必要不可欠だからな」
『夢は現に』ディエ=ディディエル=カルペ(p3p000162)がどや顔でその知識を披露すれば、村の薬師も興味深げに聞き、『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)もディエの講釈に耳を傾ける。
「毒花は花床……茎と花の付け根の少し膨らんだ部分だな」
「毒花も薬として使うか。ククッ、薬と毒は表裏一体、生かすも殺すも使い手次第。その程度は心得えはあるようだな」
村人の言葉をディエが不敵な笑みを浮かべて次ぐ。
「薬草は、馴染みが薄いですが、人には必要なもの。でございましたね」
雪之丞が本来持つ身体能力からすれば解毒や治癒の必要などないのだろうが、それ故に人の脆弱さを補う知識や工夫には関心が高かった。
「蔦はそのまま蔦の部分だな。刃物なんかにゃ弱いが強靭な縄代わりになる」
「……なるほど……」
グレイルが持ち込んだメモ帳に特徴を書き込む。
茨は大して使える部位もないようなので気遣う心配はなそうだ。
「ふむ。それならば花の部分を斬り落としてしまえばよろしいでしょうか」
雪之丞が腰に下げた刀に触れ、魔物との戦いをイメージする。
毒は手早く仕留められるよう両断し、茨は大技を狙って踏み込まず、慎重に斬ればよさそうだ。
「気遣いありがたいが、無理はしないでくれ」
村人は依頼分以上に配慮してくれるイレギュラーズに、軽く頭を下げる。
「心配いらないわ。報酬分働くだけよ、オジサマ」
リノは黒い尻尾をゆらりと揺らして、口元に指を当ててウィンクする。
村人は年甲斐もなく顔を赤らめながら、ゴホンと咳払いして誤魔化した。
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「傭兵だった頃を思い出しますね……森の中では戦闘は、苦労した記憶しかありません」
鶫が軽くぼやきながら、煩わしげに枝葉を手で払う。
木々が視線や射線を遮ったり、草葉に覆われて足場が分かりづらいのは困る。
「蔦が潜みやすい足元の草が増えて来ましたね……薬師さん、遠目でよいので確認いただいても?」
「どうでしょうね……恐らくいないと思いますが」
鶫が弓士の目で確認するが、草が生い茂った森ではどこに隠れていてもおかしくない。
潜んだ蔦を目で発見するのは困難と判断し、餌としたであろう動物の死骸へと切り替える。
「なぁ、この蔦は薬じゃないよな? 突いてもいいよな?」
カイトが空中で羽搏きながら見付けた蔦を槍で突いてみて確認するが、今のところはただの蔦だ。
「この水の音と日光……植物が良く育ってるわね。群生地もそろそろかしら?」
「あれは……動物の死骸ですね。魔物にやられたものでしょうか」
リノが気付いた通り群生地に辿り着くといった所で、目を凝らしていた鶫が小動物の死骸を見つける。
「うん……周りの子達も、危ないってざわめいてるみたい」
陽花もまた、『耳』を澄ませて、植物の意思を感じ取る。
「調べてみましょうか」
斥候として近づこうとしたリノが、ぴくりと足元で動く気配を感じて後に続く者へ手で止まるように制する。
「ビンゴ。ここから縄張りみたいね」
リノが指し示した先には、足元の草に隠れるように伸びた蔦が捕えようとするように僅かに持ち上がっていた。
足を半歩戻すと、蔦もまたするりと地面へと戻り、草むらに隠れてしまう。
「どうやら近づいてこない限りは、襲って来なそうだね」
踏み込もうとした瞬間、陽花が魔物から感じたピリリとした攻性の感覚は、今は眠っているように落ち着いている。
敵は手前に茨と蔦が2体ずつ、奥には蔦と茨が1体ずつ。毒花は4体が中央に固まっていた。
「毒花が固まってて助かるわね。その分一度近づくと毒に晒されそうだけれど」
「けどちょうどこっち側なら風上だ。花粉が風に流されてくる心配もないぞ!」
カイトが翼をばさりと一羽搏きする。
カイトの風読みは正確無比、突然風向きが変わる心配はなそうだ。
「まずは手前の茨、次いで蔦を処理し、毒花を殲滅。次に奥の塊を仕留める。というところでしょうか」
「……蔦は僕が……吹き飛ばすよ……」
予め決めていた優先順と実際に見た敵の配置から、戦術プランを組み立てる。
優先順位は近づかれると危険な茨、次いで毒花。蔦はグレイルと鶫の魔術で処理することになった。
「危ないから村の人達は安全な所まで下がってね」
「任せて……ここは……僕たちが……守るよ……」
「村人の方々はあちらへ退いてください。他の魔物を見つけたら、すぐに大声で呼んで!」
陽花やグレイルが、改めて魔物と村人の間に庇うように立つ。
鶫はどこで戦闘が起こったとしても良いように、予め想定した避難場所まで後退を促す。
「ああ分かった、そっちも気を付けてくれ、怪我しないようにな!」
「ボクは痛いのとかわかんないからへーきへーき」
陽花は強がりではなく本心からひらひらと手を振る。
守られる村人は余計に心配そうな顔を浮かべるが、大人しく指示に従って下がった。
「……臆してはいけませんね。精一杯、勤めを果たすのみです」
沙織はすぅと深呼吸し、魔物を強く見据えて覚悟する。
煌びやかで派手な演出と共に謎の光に包まれつつ、メイド服から魔法少女に変身する。
「愛と正義の魔法少女スノードロップ! 華麗に可憐に参上! 悪い魔物さんはお仕置きだぞ♪」
魔法のステッキの代わりに大鎌を携えた決めポーズと共に、トーンを上げた可愛らしい声で高らかに決めゼリフを言い放つ。
(うう……こんな台詞恥ずかしいです……)
「見え……ないっ!」
本来そういうキャラではないというのに、人前で恥ずかしいセリフを言わされる沙織の顔は紅潮する。同時に、変身時に色々と無防備になってしまう点も。
幸いにして相対するのはそういう本能を持たない植物だが、悲しいかな男の性故に心底悔しがる村人の視線も背中からひしひしと感じ、羞恥を増す。
「皆さんは私達が守りますから! 心配せずに応援してください! それが私達の力になります!」
しかしそれでも正義の為に行動すべく、村人と己に活を入れる。
「ふふ、まずは先手頂きね」
リノはくすりと微笑み、踏み込んだ瞬間に伸びて来た蔦を素早い身のこなしで容易くかわしながら茨を射程に捉える。
茨の棘の心配をする必要のない位置から、牽制に投げナイフを数本投じればその棘を削ぐように突き刺さる。
恐怖など感じることのないであろう植物が、もぞもぞと足元に刺さったナイフを警戒するように蠢く。
「我が呪われし右腕を解放してやろう……!」
ディエは右手でルビーの目を強調し、意味有りそうで特にないポーズを付ける。
「面倒な茨め、我が魔弾の餌食となれ!」
茨へと右腕を伸ばし魔弾を放ち、吸い込まれるように命中する。
(……護衛対象の位置、敵との距離、射程)
鶫は常に鋭く観察し、頭に入れていた空間ごと計算する。
幾度かの攻撃で蔦の射程距離と間合いを見定め、背後に護る村人を捉えられる可能性を見出だす。
村人をこれ以上下げるのも危険。ならば。
「受けた依頼は完璧に。ええ、蔦一本たりとも、触れさせませんよ?」
鶫は村人を安堵させるような微笑みをたたえ、ロングボウに矢を番える。
放たれた矢は青い気を纏い、蔦へと命中した途端激しい衝撃を生み吹き飛ばす。
毒花とは位置をずらし、グレイルや陽花、長射程の攻撃手段を持つ者からも離し、各個撃破にするにも最適だ。
「……村の人達には……触れさせないよ……」
同様の術を持つグレイルも、村人の安全を最重要と考え、集中力を研ぎ澄ませてもう一体の蔦へと青き魔術を放つ。
鶫が吹き飛ばした位置へと押し出せば、最前線の茨が孤立した。
(……この魔物達も、自分の身を守ってるだけなんだろうけどね)
攻撃を受ける魔物を見る陽花の鮮やかな七色の髪は、僅かに色味を薄らいでいた。
紫陽花の髪を持つ植物に近しい森の賢者は、森の植物にこそ共感する。
縄張りを荒らしているのは自分達だという認識を持つが、同時に弱肉強食もまた自然の摂理。
「だからといって手を抜くつもりもないけどね」
魔法の銃の弾倉に神秘の力を込め、全力で放たれた魔弾に茨はなすすべもなく苦しみ悶える。
「まずはいつものおまじないっと……よし、やるか!」
身体強化の魔術によって準備を整え、カイトの高い敏捷性を更に強化した速度で猛禽類が如く獲物を捉える。
「でりゃぁーッ!」
威勢の良い気合の声と共に放たれた多段突きは、茨の持つ棘によって傷つくことなく一方的に攻める。
「気を付けろ! 依頼人は絶対に護……って、なんか俺ばっか狙われてねぇ!?」
吹き飛ばした横側や後方から、蔦が複数伸びてくる。
遠くにいる者達はまだしも、地上で前に出てるリノも差し置いて空にいるカイトを。
「あー……そいつらは小動物やその、鳥なんかを獲物にするから……」
あっ(察し)。
「俺なんか喰っても旨くねーぞ!?」
カイトを捕食しようと伸びてくる蔦を打ち払うために振るう槍に、先程の鋭さとはまた違った必死さが籠っていた。
「行きます! 必殺、マギシュート!」
集中攻撃を浴びて弱った所に、沙織改め魔法少女スノードロップが、必殺と決めた魔法を撃てば、順調に茨が沈む。
「少し大仰な草刈でございますが、肩慣らしと参りましょう」
前衛が崩れた所に、雪之丞の小柄な体で一足で一気に踏み込む。
草刈の鎌の代わりに鋭く煌めく刀を手に、前もってイメージした通りに毒花を椿の花の如く一刀両断する。
しかし仕留めるまでには至らなかったのか、花粉を撒き散らす。
それに続くかのように近くの毒花から集中攻撃を受けた雪之丞は不快げに着物の袖で口元を覆う。
「雪之丞さんっ!」
「心配ご無用。今の拙に毒など効果はありません」
姿を一時隠すような毒の霧の中から、平然と姿を現す。
村人であれば死なずとも吸った瞬間七日七晩苦しむような毒でも、抵抗を高めた雪之丞を蝕むには至らない。
「とはいえ、このまま多量に吸えば危険ですね。何とか引き離さなくては。村人の護衛、お任せします」
鶫は村人の護衛をグレイルと陽花へ任せ、素早く横へと移動する。
先程と同じく青い気を纏って放たれた矢は、毒花を横へと吹き飛ばし雪之丞から引き離す。
「悪いけど、アウトレンジから攻めさせてもらうわね」
先程の攻撃で花粉の範囲を見極めたリノはギリギリのラインから投げナイフを素早く投げる。
牽制はできないがのろまな植物に足止めは不要と判断し、投げナイフの射程から攻める。
「敵の殲滅は順調……ならば、コレを試してみるか」
ディエが採り出した薬瓶を指に挟んで構える。
一斉攻撃での火力は足りている。
ならばと蔦に目掛けて投げ放てば、殆ど動かない植物には容易く命中する。
精製された猛毒の液体が蝕み色を落とし、蔦は苦しげに身体を捩る。
「植物とて我が錬成術によって作りし毒には抗えぬか。ククッ、冥府の海へと還るがいい!」
十分な手応えを感じ、ディエはニヤリと満足げに笑む。あとは他の敵を倒している間に自滅を待つのみ。
グレイルと鶫が残った毒花を吹き飛ばして孤立させた事により、毒を同時に受ける心配はなくなった。
カイト、リノ、雪之丞達前衛組がそれぞれ毒花を押さえて再び集まるのを防ぎつつ、陽花と沙織が攻撃を重ねて仕留める。
「けほっけほ……気持ち悪……こんにゃろぉーッ!」
カイトが咳込み強く羽搏き、花粉を散らせながら上昇し、降下の勢いと共に、最後の毒花を貫く。
残った蔦と茨はディエが撒いた毒薬によって、半死半生だ。
「……これで……おしまい」
「失せよ! 灰燼と化せ!」
茨にはグレイルが遠術を叩き込み、蔦にはディエが自称呪われし右手で触れて、完全に破壊した。
「よっし、終わりっと! 酷くやられたなあ……」
敵は全て倒したものの、カイトは翼に毒の花粉がついてる気がして、どうにも気持ち悪く風下でバサバサと羽搏かせた。
●
「周辺の安全確認終わりました。近くにもう魔物はいないみたいですね」
鶫が見回り、グレイルが村人を常に視界にいれて位置を確認する。
「薬草か、俺ら船乗りは世話にはなるが採取はしたことねーな。どんな風なんだろう」
軽傷とはいえ負った傷の手当を村人にしてもらったカイトは興味深げに眺める。
「採取手伝うよー」
陽花は戦闘の疲れを見せずに、にこにことマイペースに名乗りを上げる。
「なんだ、そこまで手伝ってくれるのか?」
「……ナイフも……用意してある……採取の仕方……教えて欲しいな」
「こう言った事自体、経験がありませんから。良い機会です」
大人しく口数少ないグレイルや、感情の読めない無表情な雪之丞からも、それは決して人を拒む物ではなく、無感情な人形ではないのだと感じさせた。
「その代わりに少しばかり分け前を頂くがな! クククッ!」
カッコつけたポーズを取りながら楽しげに不遜に笑うディエもまた、その本質は人と関わることが好きなのだろう。
「はは、悪いな。んじゃま、薬草採取体験ついでに頼むよ」
土を少し掘って根本ギリギリから、根は残して次の年にまた生えるように……などと丁寧に教えてくれた。
「この魔物からはどんな薬が出来るんだろう?」
陽花は花粉に気を付けながら採取した花を見つめる。
「ええ、こいつは花粉の毒とは別に麻痺毒があるんですが……」
「ククッ、鎮痛薬だろう? 感覚が麻痺すれば痛覚も麻痺する。すなわち麻酔や痛み止めとなる」
ディエがドヤ顔で薬師の台詞を取れば、その通りと頷かれる。
「痛覚かぁ、ボクにはわかんないや」
痛みという感覚を知らない陽花は不思議そうにするも、だからこそ思う。
「怪我や病気を治したり出来るって、カッコいいなって思うんだ」
薬草の知識を持ち、技術を持ち、その恵みを頂く。
それは、植物と生きる事を選んだ自分達の祖先と同じではないだろうか。
「……それにしても青臭いわねぇ。苦い薬になりそうだわ」
リノも率先して手伝いつつも、ナイフに付着する汁をジト目で見つめる。
「皆さん、一区切り付きましたら召し上がってくださいませ」
魔法少女姿からメイド服姿に戻った沙織が、皆が警戒や採取している間にお弁当の準備を整えていた。
「折角宜しければ薬草の知識をご教授くだいませんか? 我が主は無鉄砲の正義馬鹿なので、よく怪我をして帰ってくることが多いので」
「折角ならば拙も。食べられる木の実などあればご教授をお願いします」
「はは、ここいらに生えてるのしか知らないが、それでよけりゃいくらでもいいぜ」
興味深々なイレギュラーズ達に囲まれ、和やかなランチとなった。
「帰り道も気を付けてね、オジサマ達」
意図的か無意識か、リノはその妖艶な笑みを投げかけて促す。
村人を護り切った一行は、足取り軽く森を後にした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
最も優れた護る方法とはそもそも狙わせないこと、ですね。
皆さまのお陰で無事採取を終えた村人の生活は、慎ましやかに守られることでしょう。
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
初めまして、白黒茶猫と申します。
新人冒険者向きの簡単な依頼です。
どなた様もお気軽に参加くださいませ。
●成功条件
村人の無事と、一定量の薬草採取。
同伴する村人は4、5名程度。
支払った金額の元は取りたがるが、基本的に指示に従ってくれる。
●採取
村の近くにある深い森。
基本的に獣道だが、ある程度人の手が入っている為、開けていて明るい。
ピクニックのような気分も多少ながら味わえるかもしれない。
●敵
敵は3種類。内訳は不明だが、多くとも全部で10体を超えない。
また、何れも動きは鈍い。
『蔦の魔物』
中距離レンジまで攻撃可能で、攻撃には『足止』を伴う。
『茨の魔物』
至近攻撃に対して、スキル『棘』を発揮し、攻撃には『出血』を伴う。
『毒の魔物』
近接レンジの範囲に花粉をまき散らし、攻撃には『毒』を伴う。
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