PandoraPartyProject

シナリオ詳細

嘆きの獣

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●嘆きの果てに
 幻想南東部に広がる深き森。
 その森の奥深くには古くから聖獣と呼ばれる獣がいた。
 人の数倍は有ろうかという巨体に、三本の巨大な角をもつ巨獣。
 森を護る雄々しき姿に、目にした者は皆畏怖と畏敬の念を抱いたという。
 森に潜む動物たちもまた、聖獣の力に恩恵を預かりながら、静かに暮らしていた。
 平穏はいつまでも続く。そう思われていた。
 どのような逸話、信仰があろうとも、己が欲求の赴くままにそれを犯そうというものがいる。
 街の開発を行う責任者デポスもまたその一人であり、聖獣の話を知りながらも、その住処たる森を資源と見做して伐採を初めとした資源回収を行い始めた。
 人の手による開発は、自然に暮らす獣たちにとって為す術のないものであり、獣たちは逃げ惑うだけである。
 そうして住処を追われた動物、獣たちは、追い詰められるように聖獣の元へと集まった。
 オォォ――ンン……。
 聖獣は嘆く。
 心ない人々の侵略。住処を追われ家族すらも奪われた獣たちの嘆きを汲んで。
 嘆きは暗き感情を呼び起こし、暗き感情は悪性を芽生えさせる。
 急激に肥大化する悪性は、清らかな心持つ聖獣を取り込んで、爆発的に広がった。
 もはや元の清心など忘れたかのように、聖獣トパリスは獣を率いて走り出す。
 嘆きの声が高らかに響いた。
 失われた住処を取り戻す。聖戦が始まったのだと――


「幻想南東部に位置するクレトカの街を開発しているデポス氏から魔獣退治の依頼が来たわ」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)はそう言って依頼書を手渡した。
「魔獣トパリス。元は聖獣なんて呼ばれていたようだけど、今は見る影もないようね。兎に角街の側へと姿を現しては、破壊活動を行っているようよ」
 その原因が人間側にある、というのは承知しているが、だからといって街の開発を止めるわけにはいかない、というのがデポスの意見のようだ。
「一年前に現れた『生気喰らい』なんて存在の例もあるし、あまり人間側の尺度で行うのはどうかと思うのだけれど、依頼として成立した以上対処する以外道はなさそうね」
 オーダーは、トパリスの沈静化。当然生死は問わない。
 嘆きの理由が分かっている以上、トパリス側を説得というのは難しいだろう。
「とはいえデポス氏も頑なだからね。
 手早くトパリスを退治してしまうか……それともどうにか両者の折り合いをつけるか。判断はお任せするわ」
 トパリスを生存させるのであれば、依頼難易度はかなり高くなるだろう。
 どのようにこの事態に対応するか。
 イレギュラーズは思案を浮かべながら席を立つのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 森を追われた聖獣の暴走。
 獣たちの嘆きが響き渡ります。

●依頼達成条件
 魔獣トパリスの沈静化(生死は問わない)
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●魔獣トパリスとその仲間の獣について
 三本の角を持つ巨躯の獣トパリス。
 その巨体に見合う耐久力と防御技術を持ち、CTも高めである。
 反面反応は低く、先手をとることは可能だろう。
 悪性に染め上げられ、嘆きと怒りのままに行動していることもあり、動物疎通などでの会話は少々手こずるだろう。
 トパリスの周囲には集まった動物、獣たちが三十体おり、トパリス同様嘆きを抱えて、その身を顧みず攻勢にでてくる。
 戦闘能力は高くないが、囲まれれば痛い目を見る事は想像に容易い。

●デポスについて
 街の開発を行う責任者。
 街をより良くする事に命を懸けており、その為ならば自然破壊もやむを得ないと考えている。
 熱意ある男だが、自身の行いを何一つ悪びれていないのが問題か。

●戦闘地域
 幻想南東部の街クレトカ側にある森の外縁になります。
 視野は多く取れ、位置取りによっては森の木々を利用する事も出来るでしょう。
 戦闘に支障のない場所となります

  
 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 嘆きの獣完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月01日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
酒々井 千歳(p3p006382)
行く先知らず
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●未来を見据えて
 此度の依頼、嘆きのままに街を破壊する聖獣トパリスを、依頼人の意向のままに打ち倒せばそれで解決するであろうシンプルなものだ。
 だがそれは各人の心情を汲まないものだ。
 ローレットに置いて依頼の成功要件は必須項目であり、しかし、そこに至るまでの過程は依頼を受けた特異運命座標達に委ねられる。
 故に、イレギュラーズは自身の思いを、現実的な依頼成功へのラインに乗せる努力を行う。どのように進めば、理想的な未来を掴めるか。まさに特異運命座標たる可能性の蒐集だ。
 此度の依頼を受けた八名は、聖獣トパリスとクレトカの街の開発を進めるデポス、両者の心情を汲み取り一つの答えへと突き進む道を選んだ。
 それは、一つの理想の形だ。
 当然、その道を往くのは困難で在る事は想像に容易い。だがそれでも八人は進むと決めたのだ。
 イレギュラーズの想いが結実するか――クレトカの街へと辿り着いたイレギュラーズは勝負に挑む。

「デポスさんはやり手の開発責任者って感じよね。
 街を良くしてくれてるのはわかるし応援したいけれど、少し急ぎすぎてる感じかしら?」
「聖獣か……確かに居場所を奪ってしまうのは可哀相かもしれないけれど、それで街が住みやすくなるなら仕方ない気もするね。
 あぁ、でももし共存できるならそれは素晴らしいことだろうね」
 デポスに対する街の人々の感想は、ほどほどに好感のあるものだった。
 人々に話を聞く『行く先知らず』酒々井 千歳(p3p006382)と連れ添うように歩くマルク・シリング(p3p001309)はその感想を聞きながら、街の人々が自分達の住居環境が良くなる事を好意的に想いながらも、聖獣に対しても同情する気持ちがあることを知った。
「多くの人達が動物たちを蔑ろにしているわけではないようだね。
 開発に反対する人も少なからずいるようだけれど、少数派ということで声は小さいようだ」
 千歳の言葉にマルクは頷いて、
「反対派の人々も開発の恩恵は受けてきたわけだしね。それを捨ててまで森や動物たちを保護するとは言えないようだよ」
 だが、強く反対できないまでも強硬な開発を止めたいとは少なからず感じているのだ。これをデポスに伝えることは、必要なことだろうと思った。
 街での情報収集を終えた二人は仲間達と合流し、デポスとの会談に臨む。
 デポスの家に辿り着いたイレギュラーズは、自分達が用意したプランを伝える準備を行った。デポスが姿を見せる。
「やあ、君達がローレットの方々かな。聖獣の対処について話があるとか。聞かせて貰おうか」
 やり手のビジネスマンを思わせるデポスは、早速イレギュラーズへと促すと話を聞く体勢になった。
 その表情は笑みを浮かべているが、鋭い目つきは少しばかりの意見など受け付ける気はないと語っているようだ。
「私達が伝えたいのは聖獣との共存。それがこの街と貴方なら可能なのではないかということだ……!」
 『暴食の守護竜』ヨルムンガンド(p3p002370)の言葉に興味深げにデポスが眉を動かす。
「共存というのは聞こえが良いが、それは人々の環境を自然へと回帰させるようなものなのかな? だとすればそれは受け入れがたい所だがね」
 住み慣れた環境を捨てて自然と融和する形を取るのは、ナチュラリストやネイチャリストであれば良いかもしれないが普通の人間には難しいものだ。
 だが、それは目指すべき形ではないとヨルムンガンドは首を振る。後の言葉を『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が引き継いだ。
「聖獣と呼ばれるトパリスを讃え、人々に興味を持って貰うのです。そしてそれを外部へと周知し、クレトカの街を聖獣と共存する街として観光地へと発展させるのです。
 観光客が増えれば収益も見込める事となり、街全体が潤うことになるはずです」
 聖獣を模した各種グッズ、土産品を自前で生産すれば、街全体が大きく発展するチャンスとなるには違いなかった。
 デポスは鋭く視線を送りながら思案する。
「街の人に話を聞いたが、少し開発を急いでいるようだとか。急速な発展に少なからず置いていかれていると感じる街の人もいるようだ」
「観光地としての発展ならば街の人々と共に一緒に進む事ができる。反対の立場を持つ人達も協力的になるのではないかな?」
 千歳とマルクの言葉に、「確かに」とデポスは頷く。
「急ぎすぎてる開発は、自然のサイクルを破壊してしまっているのだわ。
 ただ伐採を闇雲に進めていては、いつか開発が止まる事となるでしょう?
 自然を奪うにしても計画的に、そして同時に植林などで自然の領域を増やしていくことも必要よ」
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)の言葉を聞いたデポスは一つ頷いた。
「なるほど。そうして緩めた分を観光資源とした聖獣で回収しようという話ですか」
 デポスの理解にイレギュラーズ達は頷く。
 デポスの手腕は確かなものであろう。だが同時に開発を急ぐ余りリスク管理を見誤っていた。そのことを 『リローテッド・マグナム』郷田 貴道(p3p000401)は内心ひどく下に見る。
 そんな内面をおくびも出さず、貴道はワイルドに鋭い笑みを浮かべながら、得る事のできる利益について語る。
「HAHAHA! 人間だからな、どこの世界でも森林伐採くらいするさ!
 だがな木材はいずれ無くなるが、観光資源は無くならない資源だ。金だけの話じゃない。多くの人が集まり、他の商売も潤う」
 自然を売りにすればその環境整備も最低限で済む事だろう。維持に大きな金は掛からないはずだ。
「聖獣が死んだとき? そんなときは銅像でも立てて象徴にすればいい。その偉容を語り継げばそれこそ一生涯の観光資源さ」
 言葉巧みに、しかし感情論を捨てた言葉はデポスの耳に刺さる。思案するデポスが天秤を揺らしているのは火を見るより明らかだった。
「この街の側の森は、他の街にはない『特別』なものだよ。今のペースでいけばいずれ森は無くなってしまうよね。それはきっと勿体ない事だよ。
 他所にはない魅力を持つ街として発展できる未来があるのに、それを選ばないのはどうなんだろう?」
 『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)の言う『特別』は森であり聖獣トパリスのことでもある。
 それら特色を生かした街作りが出来れば、それは更なる発展をもたらすに違いなかった。
 他にも森林ツアーなどのイベントを催せることや、植林や間伐材の利用など、今していない出来る事があるはずだと訴える。
「聖獣による恩恵で豊かな自然があるんだ……! その聖獣を討てば、今後どのような影響があるか分からない……。
 繰り返し同じ事が起こる可能性、いやそれ以上の厄災がある危険性もあるんだ……!」
 ヨルムンガンドは訴える。
 デポスは思案を繰り返し、そしてそっと口を開いた。
「……話はわかりました。
 興味深い話、実のある話だったのは間違い有りません。
 この街を観光地へと発展させる。なるほど確かに、その方向性は間違っていないように思えます」
 納得するように言うデポスは、しかし重く言葉を続ける。
「しかし、私はただ、この街をより良くしていきたい。人々の利便性に溢れる街へと変えたかったのです。
 観光地となれば、多くの人が流入する。様々なトラブルも懸念されるでしょう。そうなったとき、その街は住みやすい街と呼べるのか? 私は違うと思います」
 デポスの言葉は真に街を、街に住む者達を憂うものだった。
 その思いは理解できるもので……同時に、それを自然や動物たちに向けられないものか、イレギュラーズ達は言葉を紡ぐ。
「動物たちにも住まう場所があるのです。
 人間達から見れば悪い環境のように見えるかもしれません。が、それが彼等の良い環境なのです。
 それを破壊せずに互いの領分を守って生きていくことはできませんか?」
 リゲルの言葉に、目を細めたデポスは歯切れの悪い返事をする。
「可能……とは私は断言できませんね。
 自然との境界が曖昧になれば、街へと自然が侵蝕してくる。動物たちも餌を求めてやってくることもあるでしょう。
 ふれあえる観光地。聞こえは良いが、動物たちの自由が効きすぎてもだめでしょう」
 デポスは何よりも人々のことを第一に考えている。ただ、観光地への発展という新たな未来に対しても、話しながら模索を続けているのがわかった。
 それがわかるからこそ、『ド根性ヒューマン』銀城 黒羽(p3p000505)は口を挟まずには居られなかった。
「分かるぜ、こんな良い街なんだ。もっと良くしたいって思うのは当然だよな」
「ええ、今のこの状況を後悔はしていません。開発は必要なことでした。
「ああ、そうだろうな。
 でも、少し疑問なんだが良い街って何なんだろうな?」
 黒羽の言葉に、デポスが顔を上げる。
「環境が整っている。清潔で、危険の無い安心出来る場所」
 デポスの言葉に黒羽が頷く。
「そうだな。アンタが上げたように景観が良い、機能面の充実は必要なことだろう」
 そこで黒羽は言葉を途切れさせると、一つ顔を突き出して、デポスへと迫った。
「――だが、それを決めるのは制作者……開発した人間か?
 答えはNO。
 決めるのはそこで暮らしている住人達だ」
 黒羽の言葉にハッと顔をあげるデポス。
 いつからだろうか、エゴとも取れる自己の未来像をこの街に押しつけていたのは。
「街の人達は良い街だとは言っていたよ。けれど同時に進みすぎている開発や失われていく自然に不安を覚える人は増えていったようだった」
 千歳の言葉にデポスは首を振る。
「私は自分の思う理想の街作りに邁進していました。
 それこそが、街の為になると。そう考えて」
「そうはならないさ。
 聖獣についてもそうさ。ただ討つ事が街の為になるか。新しい未来像を描けた今ならば、聞くべき相手はできたんじゃないか?」
 観光地へと発展させるのであれば――それは街の人々の協力は不可欠であり、街が一丸となって取り組む事業となる。
 多くの利益を開発担当者の一存でフイにすることなど、もってのほかなのだ。
「とはいえ、開発担当者であることは事実だ。アンタの一声で状況は大きく変わるだろう。
 どうするか、決めるのは――」
 デポスは思い悩み、そして決断をする。
「……私一人で決める。それは少々混乱を齎すことでしょう。
 委細承知しました。
 貴方達の言う観光地への転換は実に魅力のあるものです。同時に起こりうるリスクが良いものかは、私が一人で決める事ではない。
 すぐに地域の代表者を集めて、提案と共に話をしましょう。
 ですが、それには――」
 そう問題はこれで解決というわけではない。現実的に今嘆き暴れる聖獣という存在がいるのだ。
「私は動物と意思疎通ができる……!
 話は必ずつけて見せる……聖獣との共存の街。その未来をどうか、信じてみてくれないか?」
 ヨルムンガンドの言葉に、デポスは力強く頷いた。
「良いでしょう。貴方達を信じて、私は私の出来る事を致しましょう」
 デポスは説得に応じ、新たな未来を見据えたようだった。
 あとは嘆きに苦しむ聖獣を押さえるだけだ。

●声よ届け
 オォォ――ンン……。
 嘆きの悲しき咆哮が響き渡る。
 クレトカ側の森の外縁に出現した聖獣トパリス。多くの獣たちを引き連れたその姿、なんと威風堂々たるものか。
「聖戦という奴なのかもね。
 嘆きの余り悪性に囚われた彼等には、人々は憎むべき対象にしか映らないようだ」
 ウィリアムが悲しげにそう言葉にする。
 襲いかかる獣たちを威嚇術を持って不殺のままに力を奪うことに尽力する。
「トパリスよぉ、仮にもお前は聖獣何だろうが。
 人間を怨めしく思うのは分かるが、悪意に飲まれて暴れまわるようじゃお前も人間と変わらねぇよな」
 言葉は通じなくとも、想いをぶつける黒羽。その嘆き、悲しみ、怒りは全て受け止めると、不滅の肉体を曝け出す。
「オオオォォ――!!
 さぁ、かかってきな!!」
 幾度となく吠え上がる黒羽の咆哮が、多くの獣たちを引きつけた。何も心配はいらない、彼は死ぬ事はないのだから。
「トパリス聞いてくれ……!
 もうなにも嘆く事はないんだ! 人は君達と手を取り合っていくと約束してくれた……!」
『それを信じろというのか! 多くの自然を奪った人間に与する者達が……!』
 怒りに震えるトパリスの致命的な突撃をヨルムンガンドがその身を盾に受け止めブロックする。
 此処で怒り果てる必要はないのだと、最後でいい自分達を信じてくれと、動物疎通によって語りかけ続ける。
「怒りに我を忘れているようね。
 力任せになるけれど……まずは落ち着かせるのだわ」
 レジーナが権能を振るう。乱れ舞い散る黒薔薇の花弁。生み出でたる自身の分身がトパリスを撹乱し幻惑する。
 さらに生み出された無数の武具兵器が黒羽を囲む獣たち三十を牽制する。
 そのどれも相手を殺さない加減のあるものだった。
「怒りも、嘆きも、収められないというのであれば、全て受け止めて見せる!
 俺達は貴方達を殺しはしない! 共存の道を探したいんだ!」
 リゲルが思いの丈をぶつける。言葉は通じなくともその感情は波となって伝わるのだ。
「全ての命が奪われた訳ではないんだ。
 まだ護れる命が、未来がある。
 聖獣である貴方ならわかるだろう? 獣達の未来の為にも、ご協力願えないだろうか……?」
 リゲルの感情は間違いなくトパリスに届いている。しかし、悪性に染められた魂がそれを受け入れようとしない。
「君達の怒りは最もだと思う、けれど──此処で留まれないなら本当に終わってしまうから」
 獣たちを多く巻き込み千歳が手にした霊刀を振るう。多くの獣たちを巻き込む櫻火真陰流、外伝は、その殺意、気勢を殺し、肉体を守る。
「――みんな、死んだら、それまでだ。
 生きて明日になっても、君達の本当に望む物は手に入らないかも知れない」
 けれど――全てを失うわけじゃない。
 千歳は「生きて、くれないだろうか」と、優しい感情を送る。どうか未来の為に、と。
 イレギュラーズの攻撃によりトパリス、そして獣たちはその悪性を発散させていた。
 体力的な限界も見えてきた、その頃を狙って、仲間の回復に全力を注いでいたマルクが、声を上げた。
「頃合いだよ。不殺に切り替えて攻めよう」
 不殺で相手を諫める。それは言葉にするより難しく困難だ。それを支えるのは回復に注力し仲間をサポートするマルクとウィリアムの存在があってこそだ。
 未来への可能性を掴むために、自らの努力を厭わないもの達が傷付きながらも立ち向かう。
「HAHAHA、やんちゃなアニマル達だな!
 ミー達も鬼じゃないんでな、大人しくすれば殺さないでおいてやるぜ?」
 ナックルパートに限定した近代格闘術で獣たちを昏倒させていく貴道。軽やかなフットワークから放たれる高速の拳は、例え硬質の毛皮に包まれていようと、それを抜き貫いて意識を刈り取った。
 その相手が人体の数倍あろうかというトパリスであったとしても、代わりはない。まあ貴道の場合肉体の大きさはそれほど差がないということもあるが。
 ヨルムンガンドやリゲルの説得は届いている。
 しかし、心を蝕む悪性がそれを受け止めようとしない。体力的にも追い詰められたトパリスは自らを蝕む悪性に苦しみ、解放を訴えた。
「少し痛いと思うが……我慢してくれ!」
「KOすればいいんだな? なに、得意技さ、任せて貰おうか」
 リズムを取るように貴道がトパリスに肉薄する。悪性に突き動かされるままに振るわれる巨獣の角を紙一重のスウェーで躱すと、一歩踏み込んだ。
 必殺の一撃を呼び込む弱所を狙った一撃。大きく揺らいだトパリスが痛みと恍惚に振るえる。
 相手の体力を見極める貴道は、その悪性を全て打ち払うように、ノーインチからの爆弾を見舞う。爆裂するように吹き飛ぶトパリスは、しかしまだ意識を失っていない。
「こいつで、KOだ――!」
 崩れ落ちかけているトパリスにナックルパートを叩き込み、ついにその巨獣は音を立てて倒れた。
 同時に黒羽を囲んでいた動物達も、悪性から解放されるように、散り散りに森へと逃げていった。
「心を侵蝕する悪性か。怖い物だね。元の優しい聖獣に戻ってくれればいいんだけど」
 マルクの言葉に目を細めたヨルムンガンドが言葉を零した。
「大丈夫だ、倒れる直前……まるで感謝するようだったよ……!」
 イレギュラーズは倒れた聖獣を慈しむように撫で、意識の回復を待つのだった。

 意識を取り戻したトパリスは、人間達の提案を受け入れた。住み慣れた環境は破壊されたが、植林などによって森が生き返る可能性に希望を抱いたのだ。
 街の有力者を集めたデポスもまた、イレギュラーズの提案した観光地への発展を後押しする。
 多くのものが急な開発の転換に少なからず疑問を持ったが、トパリスの暴走、そしてその原因を反省するデポスの姿を見て、この提案を受け入れたようだった。
 観光地へと変わるには、多くの問題が残されているだろう。それでも自然、動植物達との共存を選んだ以上、その未来に向けて努力をしていくに違いない。
 クレトカの街に明るい陽射しが差した気がした。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 街の新たな発展策の提案、その内容、そして熱意をよく感じるプレイングでした。
 またトパリスをいたずらに撃退するのではなく、街同様(それ以上に)トパリス側に寄り添っていて素晴らしかったです。
 いくつかのダイスロールにも恵まれ、文句なしの結果になったと思います。
 よくがんばりました! ぱちぱち! MVPは全員です。

 依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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