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シナリオ詳細

<Butterfly Cluster>大山猫の要請

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●賊徒の執念
 砂蠍。
 元々はラサで討伐された“はず”の盗賊団。しかし幻想地域に落ち延びた彼らは盗賊王キング・スコルピオの台頭、そのカリスマ性によって勢力を盛り返し、他の大勢力との挟撃を行って幻想の兵士やイレギュラーズを大いに苦しめた。
 盗賊団の身に余る軍勢。もしかしたら彼らは盗賊の身でありながら国を一つ収める様な形になっていたかもしれない。

 ――イレギュラーズという邪魔な存在が居なければ。

 生き残った盗賊団の残党、その一部を纏めるリセアという盗賊はこれまで砂蠍に起こった出来事を思い返して苦い顔をした。
 彼らは幻想に居場所を失った。命からがらラサ南部の『アルダハ遺跡』に逃げ帰れたはいいものの、そこは無人の廃墟である。酒や女もなければ、食べるものさえ何もない。
 そも、ラサは砂漠に囲まれた不毛の地。村や街でもなければそういう物資はマトモに望めない。かといってラサ本国に赴けば、あの傭兵達は名誉挽回に喜んで自分達を血祭りにあげる事だろう。
 リセアは周囲の盗賊達に目を向ける。――悲しい事に。実力、士気共にキングスコルピオが居た頃とは比べるべくもない。ラサの傭兵に見つかりでもしたら正面切って勝てるかどうかも怪しいところである。他の生き残りみたいに、自分達の部隊にも魔種が居たのなら、少しは芽があったのだが。
「……まぁ、いいさ。わざわざ虎穴に入らずとも、近隣の村から金や食料でも奪い取って、それから考えりゃいい」
 それに、魔種に頼らなくたって凌ぎようはいくらだってある。俺達は極悪非道の盗賊さ。王みたいに恵まれない雑兵蟻には元々“そういう手段”に頼るしか能が無いさ。
 リセアという盗賊はラサの村一つを目の前に、もうあの様な隆盛には戻れないのであろうとなんとなしに悟りながら自嘲気味に笑っていた。

●馬は馬方、蛇の道は。
 情報屋に「ラサ傭兵国家から早急の呼び出し」と聞き及び、ラサ南部にある現地に向かわされたイレギュラーズ。
 現地に到着したのは夜。砂漠の荒野にて獣種だけで構成された傭兵団の出迎えを受け、彼らとの挨拶も略式に団の長と思しき大山猫のブルーブラッドと対面する事になった。
「よぉ、お前らがイレギュラーズか。俺はジョニー・マルドゥ。ラサ傭兵団『柄久多屋』の頭領だ」
 大柄な彼から発せられる特徴的なドラ声。如何にも、曲がった事が嫌いといった印象を受ける。それだけに、今回の事態について少々不機嫌そうだった。
「おっと、そう警戒するな。何もお前らローレットが気に入らねぇってワケじゃねぇ」
 そう言って、遠方に見える村に視線をやった。村はまるで無人の様に静寂に包まれてる。
「いつもは夜になってもガキや酒飲みの声で賑やかな村だ。騒がしいが、皆良い奴らさ。ウチの傭兵の中にゃアレが故郷だって奴も居る」
 そう語るジョニー・マルドゥの顔は険しいものだ。その理由は、自分達が此処に呼ばれた事から察しが付く。
「竜胆――黒之衆(クロノス)の奴ら、砂蠍がラサに逃げ帰って来たっつー情報を持ってきた。幸い、ココを襲おうとしてる盗賊に魔種が居ない様子だったから俺達の手でカタを付けようとしたんだが……」
 ジョニー・マルドゥは不満そうに鼻を鳴らした。傭兵団の練度をイレギュラーズからも推測するに、正面切って戦えば――ハッキリ言って柄久多屋の方が勝つだろう。しかしそう出来ぬワケがあるらしい。
「お前らのお察しの通り、あの村が丸々人質ってワケさ。村人殺されたくなきゃ俺達を見逃せ、ってな。隠密が得意な黒之衆なら難なく対処出来たんだろうが、間の悪い事にアイツらはアイツらで別の場所でやりあってる」
 おおかた、逃げおおせれば魔種が居る他の部隊と合流して傭兵団に仕返ししてやると盗賊は目論んでいるのだろう。傭兵として名高い柄久多屋の面々といえども、純種であるからには魔種が来れば分が悪い。
 そういうワケで――ジョニーは村の構造をローレットに示すべく、地図を広げてから快活そうにニッと笑う。
「やり方はお前たちに任せる。柄久多の獣どもはお前らを見ているぜ、ローレット。お手並み拝見だ」

GMコメント

 稗田ケロ子です。初めての関係者依頼ですが、関係者さん上手く描ける様に頑張ります。
 以下の情報をご参照下さい。

●この依頼は『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)様の関係者依頼となります。

●情報精度:A
 黒之衆と柄久多屋が提供してくれた情報はかなり正確です。
 以下の情報を御覧ください。

●依頼成功条件:
『人質の被害が無し~軽微』
 村丸ごと人質に取られている様な状態なので、若干の被害は許容されます。
 ただし二桁(10)人以上命を落とす事があれば、確実に傭兵団は成功とみなしてくれないでしょう。
 そして、盗賊団は軽々しくそれを行います。
『盗賊団の殲滅』
 盗賊自体の実力は大した事はなく、また分散している事などから逃走自体に気をつければ達成は容易でしょう。

●環境情報
 ラサ南部の村。現地前、夜。移動時間を考慮する必要などを省略する為に今回は依頼開始時で傭兵団に合流、現地前という形になっています。
(ローレットから持ってきた・傭兵団に提供してもらったなどの理由で簡単な物資なら確保する余裕はあります)
 ちょうど月明かりは少なく、光源が無い状態は何らかの手段が無い限り盗賊・イレギュラーズ共に視野確保は困難です。
 
 村の環境は砂漠の地であり、オアシスの周囲に残った民家や施設、または人が住み着いた浅い遺跡などが点在している様相です。
 その建物各所に別れて盗賊達が人質を複数人取って立て籠もり、傭兵団へ逃走用の馬やパカラクダを寄越せと脅しをかけている状態です。
 視覚的に遮蔽物が多く、隠密するにしても有利な点が多いでしょう。

●NPC
 ジョニー・マルドゥと傭兵団『柄久多屋』:
『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)のお父ちゃんとその傭兵団。
 豪快な性格だが、旨い酒や飯、ロマンを愛し友人を大事にする明朗快活な人物。息子に対しては少し心配性。
 柄久多屋は獣種のみで構成された傭兵団で、実力的には盗賊団より明確に格上ですが、隠密は得意ではありません。
“善側の何でも屋”と評される彼らは、同胞の人質を見殺しにする事はよしとしない。イレギュラーズに求める事は人質の安全と盗賊団の排除。
 そのついでに何処かイレギュラーズの実力を試している節がありますが、ここで上手くやれば彼らに――ひいてはラサ傭兵国家に良い印象を与えられるかもしれません。

 依頼開始直後は傭兵団柄久多屋が馬を提供する等の交渉・準備をして注目を集める手筈です。
 彼ら単独の場合は20分程度の時間稼ぎが行えるでしょう。口先が上手いイレギュラーズが交渉役を担う場合は更に引き伸ばしが出来るかもしれませんが、それは確実に戦力の低下を招く為、非常に考えて選択する必要があります。
 人質解放が完了した合図が何らかの形でイレギュラーズからもたらされた場合、彼らはいかんなくその実力を発揮するでしょう。
 つまりは――イレギュラーズと共同で彼らの戦力を撃滅せしめるのです。
 その為の指示は余程無茶な事でなければ聞いてもらえるでしょう。

●敵対勢力と人質、及び場所ごとの環境情報
名も知れぬ盗賊:全員Lv1~2程度。耐久性は全体的に中の下。
 砂蠍の残党といえど、彼らの実力は今のイレギュラーズからしてみれば大した事はないはずです。その上、各所へ分散している為に戦力的には対処しやすいです。
 もしイレギュラーズが完全な不意打ちを行った場合、戦闘ターン1ラウンドはほぼ完全に無防備な状態で何も出来ないでしょう。人質に手を出すにしても、その間は何も行えない扱いです。
 ……それでも処理しきれなかった場合、彼らは以下の様な言葉を大声で村中へ向けて叫ぶ事でしょう。
『傭兵の野郎がやってきやがったぞ! 人質を殺せ!!』

村の出入り口:北と東に盗賊2人と人質1人ずつ、南の一箇所盗賊3人。
 遮蔽物がなく、篝火を焚いて10m先までの視野確保は出来ている扱い。傭兵団が入って来ないか見張っています。
 三方向とも寝ずの番をやらされている為、警戒能力は今現在かなり薄い。しいて気をつける事があるとすれば、内部の壊滅が彼らに知れれば真っ先に逃げるだろう事。

民家前:盗賊4人・人質10人
 人質を民家の前に並べて、脅しつけたり、あるいは食料の在り処を聞き出して家探しを並行しています。
 全員光源の松明を持っており、物資確保の探索に集中しています。警戒意識は薄めですが、家探しついでにイレギュラーズが見つかってしまう可能性もありその点は注意。

オアシス前:盗賊2人・人質3人
 北部戦線からの生き残りで、傭兵団の存在にかなり殺気立って周囲を警戒している様です。
 実力は他盗賊と同じですが、警戒意識だけ気をつけねばなりません。
 光源は少なく、弱い光で辺りを警戒してる。

市民館(遺跡):盗賊6人・人質20人
 大岩に複数の穴をくり抜いて作られた遺跡を、市民が手を入れて市民館として使っている様な状態です。
 村にある箇所としては一番広く、それだけに多くの人質を押し込める場所として使っている様です。
 警戒意識・士気はまばら。光源は篝火や壁に付けた設置系のものだけ。要注意点は、この市民館には六人の内に以下の部隊長が居ます。

⇒狡猾なリセア:
 不足した人員から充てがわれた部隊長ともいうべき人物です。北部戦線の生き残りの有力幹部と実力は比べるべくもないですが、それでも他の盗賊よりは多少腕が立つ事、また隠密にある程度対抗し得るスキルを持っている事が確認されています。
 何より、自分が逃げる事に執着している事と追い詰められると嫌がらせの如く市民を虐殺する様な性根の厄介な人物です。
武器:銃(遠距離武器) 複数攻撃有り
スキル:聞き耳・看破・統制持ち それ以外特筆すべきもの無し

  • <Butterfly Cluster>大山猫の要請Lv:5以上完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月24日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)
大悪食
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
七鳥・天十里(p3p001668)
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
銀(p3p005055)
ツェペシュ

リプレイ

●門前の……
 逃げちまおうか。
 村の南門を守る盗賊の誰かが言った。
「バカを言うなよ。あの傭兵が俺達を逃がすと思うか?」
 寝ずの番に憔悴しきった盗賊の一人が、呆れた様に言葉を返した。
「そりゃ思わないさ。でも交渉に応じるとも限らねぇし、そっちの方が利口じゃないか」
 逃げようかと提案した盗賊は、そんな事を本気で考えている表情で言う。正直な所、負けず嫌いなラサの傭兵が人質を取った交渉に応じるとは思っていないのだ。彼以外もそれは同様である。
 だったら、素直に散り散りになって逃げた方がまだ可能性があるんじゃないか。

 一瞬、この南門を守る他の盗賊二人はその言葉に唆されかけた。しかしその考えを振り払う様に頭を振る。
「逃げたら逃げたで身内にぶっ殺されるぞ」
 それにそうなれば魔種の居る盗賊部隊に合流して再起を図る事など出来ない。彼らの士気をかろうじて繋ぎ止めていたものはひとえにそれだった。
 仲間を諌めた盗賊は、眠たげだが血走った眼で周囲を見渡す。
「分かったらあいつらが忍び込んで来ない様に見張――
 何かが弾ける音がして、彼の言葉が途切れた。傍に居た二人が問いかけるも、返事は無い。
 それどころか、そのまま力なく倒れて大地の砂を赤い液体を滲ませた。
「!!」
 何事か理解した二人は他の盗賊へそれを伝えるべき、声を張り上げようとする。しかし事が起こったのと同時に、灯りの届かない闇夜の中から次々に何者かが盗賊二人へと襲い掛かってきた。

「他の奴らは気づいてないみたいだな」
 倒れ伏した盗賊を横目にしながら、村内部の様子を伺うブルーブラッド、『養父は帰宅を決意する』ウェール=ナイトボート(p3p000561)。
 柄久多屋から依頼を受けたイレギュラーズだが、一般市民の命が大勢かかっているだけにイヤなプレッシャーを感じる。人質の中には幼子も混じっているのだろうから、息子が居るウェールにとって尚更だ。
 だが早々と門三箇所を制圧出来た事は幸先が良い。特に彼らの班は火力で圧殺する事が限りなく上手く行った。
 このまま帰った時に息子に胸を張れるよう助けなきゃなと内心で呟きながら、彼は連れてきた柄久多屋の傭兵数人と目を合わせた。傭兵らには指示通り、門前の気づかれない位置で人質の迎え入れを行ってもらう手筈である。
「ジュノー。坊っちゃんの手伝いは頼んだぞ」
 彼らにそう言葉を向けられ、軽く相槌を返すジュノーと微妙な顔をする坊っちゃん――もとい、『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)。その呼び方はやめろと言いたげだが、今はそんな事で問答している場合でもない。
 だがしかし……ジョゼはこの依頼を寄越したジョニー・マルドゥの息子その人。いつの間にか柄久多屋がラサの四傭兵団の一角とまで扱われていた事にやはり当惑するものはある。「お前、まさか知ってて言わなかったんじゃないだろうな」と、自らの隣に控えるジュノーを睨んだ。ジュノーも柄久多屋の団員の一人だからだ。
「詳しい事は親父殿に聞けばいいだろう。坊っちゃん」
 からかう様にそう呼ばれて、ジュゼは複雑そうに顔を歪めた。募った不安を和らげる様にジュノーは言う。
「分かってる。ソッチが救出したヤツを無事に門の外まで誘導するのは任せてくれていい」
 だが、救出はアンタらが頼りだぜ。そう言わんばかりに柄久多屋一同の視線がイレギュラーズに向けられた。彼らはやはりローレットやイレギュラーズの資質を見定める事も兼ねている節がある。それらをヒシヒシと感じて、任務の内容以上に重苦しいモノを感じるイレギュラーズ。
 その中で、ウェールは少々思案した後、静かに頷いて彼らの言葉を返す。
「そっちにも誇れる様な結果を持って帰ってくるさ」

●準備万端
 市民を脅しつける暴漢の罵倒。子供や女性がそれに怯えてすすり泣く声。監視している盗賊はその態度が気に入らなかったのか、はたまたこんな状況に追い込まれた憂さ晴らしか彼女達の眉間を武器の柄で軽く小突いていた。
 七鳥・天十里(p3p001668)は民家の物陰からそれらの様子に思わず銃のグリップを握りしめる。
 ペアを組んでいた『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442) は、手を翳す様にして天十里を制止した。人質が殺されてしまっては元も子も無い。周囲の仲間達もそれは承知の上だ。
 だからこそ改めて、天十里は民家の周辺に居る盗賊らの索敵を慎重に行った。
 人質の監視している二人。事前の情報で此処を警戒しているのは四人だと聞いている。おそらくは民家の家探しをしているか、あるいは周辺の見回りをしているのだろうか。
 ジェスチャーでそれを伝えられたリゲルは、打ち合わせ通りに透視の術を使って民家の壁や遮蔽物越し周囲を見回した。

「食い物も何もねぇ……おーい、そっちはどうだ?!」

 一方の盗賊は監視役と視界が通る方の民家。もう一方は孤立して木箱に目ぼしい食べ物でも無いか調べている様子だ。リゲルは周囲の仲間たちへそれを伝える。
 天十里は機転を利かせて練達上位式を痩せぎすの犬に見立て、彼の元に近づかせた。物の見事に、孤立した盗賊は食糧になりそうなソレに注意を惹かれた。
 好機と見てリゲルはすぐさま背後から斬撃を飛ばし、一刀のもとに切り伏せてみせる。自身に何が起きたかも分からない内にその盗賊は絶命する。
 リゲルは手で十字を切り、即座に他の盗賊の方へ向き直る。
「まったく見つからねぇよ。交渉こじれて籠城も有り得るんだから気張って探せ」
 彼らは仲間がやられた事に気づいてない様子だ。しかし数十秒もすれば仲間の声がしない事を不審に思うだろう。
 イレギュラーズは互いに頷き合い、残った盗賊達へと奇襲を仕掛ける。一番早く動いたのは天十里だ。彼女は何かしらの静音を処理を施した銃弾を、屋内に居る盗賊へ窓越しに浴びせた。
 ――命中。頭に銃撃を受けた盗賊は、南門の盗賊と同じ様な形で前のめりに倒れ込む。
 視線が通っていた盗賊達はそれを認識して咄嗟に声を出そうとする。しかしそれはマトモな音に鳴らなかった。僅かな煌めき走ったかと思えば、その盗賊の喉元は一閃に切り裂かれていたのだ。リゲルがまたも一太刀入れたらしい。
 なんだってこいつら暗い中でこんな正確に戦ってきやがる……!!
 生き残った盗賊はそう思いつつも驚いている暇も無く。ウェールの鉤爪で胸を切り裂かれてしまう。その一撃は致命傷には至らずとも、盗賊は大いに取り乱してしまったのか破れかぶれにナイフでウェールに切り返した。――ウィールの爪には相手を怒りに導くウイルスが潜んでいる事は此処に付け加えておく――
 そのさなか、飛びかかってきた三人の風体が視界に映る。そして即座に視界の悪い中で、何故此方の位置が完全に把握されていたのかを理解した。相手は一様に、練達辺りから流通している様な暗視装置を付けて視界を確保していたのである。
「おい、嘘だろ……」
 盗賊はヤケクソ気味に乾いた笑いを漏らし、直後にジョゼの追撃で喉元を砕かれて息絶えた。

●最悪の事態
「見えるか、鶫」
 ファミリア越しに村の上空から索敵を行っている『永久の罪人』銀(p3p005055)。彼は傍らに居る狙撃手の肩へ手を添えながら呼びかける。
「えぇ、はっきりと。……他の二人も遮蔽の後ろに移動し終えましたね」
 『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)。狙撃手の彼女は言葉を返した。
「俺は夜のほうがよく見えるからな…さしずめ動く暗視ゴーグルといったところか…?」
 銀は夜において五感強化、鶫は感覚等を共有するギフト。彼らはこれを活用し、敵の位置を把握していた。
「相手は又二人だ。先と同じ様にやればいい」
 いつも通りにやるまでだ。鶫の内心を注ぐ様に銀はそう言った。
 ……鶫の指先の感覚が鈍くなって感じていた。技術不足、という訳ではなかった。彼女の腕前はイレギュラーズの中でも類稀な命中精度を誇っていると言ってもいい。その証に、同様の方法で南門や北門で超遠距離からの奇襲を立て続けに成功させていた。
「……ええ。全力で、対応します」
 しかしそれでも、物事に絶対は無い。今回は失敗する可能性がある。鶫の脳裏にそれが掠めていた。
『もしこの一発で仕留め損なったら。そうでなくとも近くに潜んだ味方が盗賊を仕留め損なったら、そこで“何人も人質が死ぬ”』
 スコープ越しに見える盗賊の警戒心に満ちた血走った目が、それを今になって彼女に感じさせたのかもしれない。時折それが此方に向いて、勘付かれたのではないかと錯覚する。
 二人が位置取っているのは鶫が最も得意とする射程距離の30~40メートル。その上で一切光源になるものを持っていない真っ暗闇の中なのだから、余程でもなければ相手は此方の居場所を到底認識出来ないはずなのだ。
 彼女は、ゆっくりと息を止めてから異様に重たく感じる引き金に指をかけた。……それと同時に、偶然、運が悪く、狙っていた盗賊が少しだけ首を動かした。

 ――!!!!
 
 弾丸が放たれた瞬間、盗賊、人質、イレギュラーズの皆が凍った。片方の盗賊の眼前を掠めて、傍にあった石壁に着弾した。硬い物が砕ける音が小さく響く。
 凍りついた時間が動き出す様にして、遮蔽に潜んでいた『双色の血玉髄』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)と『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)は、盗賊を沈黙させるべくすぐさま攻撃を加えようとする。
 盗賊は慌てて口を開こうとするが、その動作に入る前にヴェノムは彼の喉を易易と食い破った。グレイルも即座に片方の盗賊の喉を潰す様に攻撃を加える。
 首元を穿つ術式に、盗賊の意識は朦朧とした。しかし声、そして命を奪うにはあとほんの少し足りない。
「……よ、傭兵――ッ!!」
 盗賊が絞り出す様に声を上げた瞬間、一拍後に間合いを詰めた銀が剣でその開いた口目掛けて刺突する。
 絞り出された最期の断末魔は、それで止む。
「急ぐぞ」
 すぐに剣を引き抜いた銀は、味方の返答も待たずに足早に市民館へと歩を進めた。
 その場に居る他のイレギュラーズ達も、それは同様である。


「何か聞こえなかったか」
 この部隊の長であるリセアは、人質である老婆のこめかみに銃口を突きつけたままのそう呟いた。
「そうですかい? 外は静かですよ」
 リセアの言葉を聞いて、下っ端の一人が外の様子を伺ってみせた。何の騒ぎも聞こえない。静寂そのものだ。
 その様子にリセアは納得した様に顎を撫でた後――まるでなんでもない風に軽々しく引き金を引いた。目を見開いたままの老婆の死体は、力なく倒れ伏す。
「……っ」
 下っ端は思わず怯んだ。死体に慣れていないのかもしれない。そうでなくとも人質は自分達の“命の蔓”だ。傭兵の前で見せしめならまだしも、何故。そんな風にリセアの顔を伺う。
「断末魔が聞こえた上に、外で見張ってる奴らのうるせぇ減らず口も全く聞こえなくなったら。そりゃ攻められてるって考えた方が良いだろうよ」
 そう言って年老いた夫婦を続けざまに撃った。
 ――それに多すぎる人質は、逃げるに邪魔だ。それも足が遅い老人や抵抗出来そうな野郎(オトコ)は最悪だ。何かと使えるガキや女だけ持って帰るぞ。
 そんな風に淡々と言いながら、人質の男性へと銃口を向ける。人質は覚悟を決めた様に項垂れるが、その射線に小さな子供がよたよたと割って入る。
「ぱ、パパを殺さないで……」
 子供はリセアに対して涙を流しながら懇願する。彼は感慨もなく鼻で笑い、子供の眉間へと銃口を突きつけた。
「じゃあ、お前から殺してやるよ」

「うわっ!!」
 引き金を引く寸前。下っ端の盗賊が驚いた様に声をあげた。何事かとリセアを含めた盗賊ら全員の視線がそちらへ向く。
「さ、刺された! 蠍が! 俺の足刺しやがった!!」
 どうやら、現地の毒蠍に刺されたのだと彼は喚いている。これはリセアならずとも他の盗賊達が苛立った様子で彼に詰め寄った
「砂蠍ともあろうヤツがただの蠍にやられてガキみてぇに喚きやがって! 今すぐ此処で殺してやろうか!」
 その喧騒にリセアは呆れた顔を浮かべる。キングスコルピオが居た頃とは見る影もないからだ。
 やはり、俺達にゃもう無理なんだろうなと落胆しながら子供の方へ向き直った。相変わらず、子供は射線を塞いでいる。
「まぁ、ウチらよりお前さんの方がよっぽど勇敢だよ。せめて苦しまずに」
「そうはさせない……」
 近くの侵入口から何かが撃ち放たれ、それと同時に何者かが腕を叩きつける様にしてリセアに飛びかかってくる。リセアは、咄嗟に大きく飛び退いてそれを避けた。
 同時に、篝火に照らされた侵入者の正体を認識する。飛びかかって来たのは、白狼のブルーブラッドが二匹……。
「獣種……柄久多屋、か?」
「悪いが、少し違うな」
 白狼のブルーブラッド――ウェール=ナイトボートとグレイル・テンペスタはその射線を封じる様にリセアと人質の間に立ち塞がった。それを皮切りに、後ろの喧騒が次々と断末魔へと変わっていくのが手に取る様に分かる。
「なんだおま――うわァ!?」
「屑な悪党らしいことをしたんだ。頭ぶち抜かれて死ぬ覚悟くらいあるんだよね?」
 断末魔に付け加えられたのは立て続けになるリボルバーの銃声と、怒りが滲んだ新たな侵入者らしき者の声。その上、ウェールの後ろから、リゲルやヴェノムといった獣種以外の手勢が押し入って来てはリセアを集中的に取り囲んだ。
「ふん、大山猫は罪もない市民を見捨てたってわけだ。四傭兵団だと持て囃されてながら、白状なもんだねぇあいつも」
 余裕そうにせせら笑ってみせるリセア。ジョゼは、その言葉に思わず拳を握りしめる。
「ジョゼ、堪えろ」
 ウェールが冷静な態度で彼を制止した。ジョゼ以外から見れば、明らかにイレギュラーズの隙を作ろうという見え透いた挑発だ。
 ジョゼはぐっと堪え、リゲルと共にリセアが逃げられぬ様に取り囲んだ。
「そっちはただの蠍に刺されて騒ぎ立てて、名前負けもいいところッスがね」
 仲間の仕返しとばかりに、ヴェノムが言葉を返す。尚もリセアは強気に受け答え、隙あらば逃げるか、後ろの人質達を虐殺して疵痕を残すか、その様に機会を伺っていた。
「その態度見るに、てめぇの差金か――――……いや、待て……お前らの風体どっかで聞いた事あるな」
 リゲルとヴェノム。二人は訝しげにリセアから顔を見られ、宣誓する様に名乗りをあげる。
「イレギュラーズ、リゲル=アークライト」
「右に同じく。ヴェノム・カーネイジ」
 リセアは少し目を見開いたかと思うと、まるで笑いが堪えきれない様に声をあげ始める。
「はは、お前らの名前聞いた事あるぞ。蠍殺しに貢献した英雄サマ達じゃねぇか――俺達をこんな目に追い詰めたァ!!!!」
 一頻り笑い終えると――内に秘めていた激憤を吐き出す様に。彼はヴェノムの顔面を銃床で殴り掛かる。ヴェノムは大して避けもせずにそれを受け、頬を横殴りにされるが――その瞬間に完全にリセアの“勝ち目”が潰えた。
 振り抜いた瞬間の大きな隙をリゲル、ジョゼ、ウェールの三人は見逃さず、三方向から彼の胴体を串刺しにしてみせる。
「ヒトの親父をバカにすんじゃねぇよ」
 ジョゼは、吐き捨てる様にリセアに言い放ち、心の臓を貫いた剣を引き抜いた。
 どっと、彼の胸から赤いものが溢れ出る。リセアは先の老人らを打った時とは打って変わって、悲痛な表情を取ってみせた。
「ちくしょう……お前達さえいなけりゃ……」
 ……彼を最後に、この村を占拠した盗賊達はイレギュラーズ達の手によって皆、殺害された。

●後の始末
 人質の誘導は無事に完了し、依頼は遂行された。この結果をもって、傭兵達のイレギュラーズに対する態度もおおよそ良好なものだった。
「よくやってくれたな。流石は”イレギュラーズ”だ」
 そして村から出てきたイレギュラーズは、柄久多屋の頭領ジョニー・マルドゥの出迎えを受ける。
 しかしジョニーの顔は笑ってなかった。依頼は問題なく成功したとはいえ、同胞の犠牲者が出た手前、彼の人柄から笑顔でいられる気分ではないのだろう。
 とりわけ、ジョゼは非常に気まずそうに顔を背けている。見せる顔が無いと思ったのか、はたまたジョニーがそんな顔をするのが珍しかったのか。
「……ジョゼ、あのおばあさん達の事……一緒に、弔おう……」
「ん、あぁ……」
 彼が気まずそうにしているのを察してか、そう言ってジョゼの手を引くグレイル。ジョゼを中心とした若人達が共に老人達の弔いに行くのを、大山猫ジョニー・マルドは何も言わず見送ったのち、思い悩んだ風に低く唸った。

「随分悩んでいる様だな」
 その様にジョニーへ話しかけるウェール。
「分かるか、ローレットの」
 ウェールは静かに頷いた。
「俺もあなたと同じ父親だから、こういう事があった時には息子へどう話せば良いか、思い悩む」
 ジョニーはそう言われ、尚更低く唸った。どうやら言い当てられたらしい。柄久多屋の傭兵らの期待が大きかった原因の一端はこれか。
「思い切って、二人っきりで話してしまえば案外上手く行くかもしれない」
「そういうもんか?」
 ジョニーにそう言われ、ウェールも少し悩ましげに頷いた。父親とは、やはり難儀なものである。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れ様でした。被害は出てしまいましたが、おおよそ良好といえる結果だといえるでしょう。
 スキル、火力、命中率、バッドステータス付与の面としては今回の状況にとても適っていたと思われます。
 確率で論じれば、どうしてもファンブルという存在がシナリオに一度くらいは現れるのが難しい問題ですが……プレイングや状況によってケースバイケース。

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