シナリオ詳細
鋼の狼
オープニング
●Winter Steel
「雪原に咲く一輪の……俺……!」
「言ってる場合かよぉ! 走れ走れ走れー!!」
雪上を駆ける二人の鉄騎狩人が口々に叫ぶ。
その逞しい鉄腕を振り乱して逃走している彼等の背を狙う追跡者達は、一様に沈黙のまま雪原を恐るべき速度で駆け抜けて行く。
引き際を誤った狩人達の前へ回り込むのにそう時間は掛からなかった。
狩人達を狙う追跡者、それは鋼の狼である。
「畜生……ここまでか」
「諦めるのは早いぜブラザー。どっちかが囮になればこの窮地を切り抜けて組合に駆け込めるぜ」
「お、お前まさか俺を囮に……!?」
「なーに言ってやがる。俺が囮になる、お前は生き残る、んでもって助けが来れば俺は生き残る! 最高の名案だろうブラザー!」
手にしていた銃剣を振り回して鋼の狼に向かって行く機械腕の狩人。
炸薬が爆ぜ、轟音が鳴り響く。襲撃者を前に反射的に散開して包囲網を崩した鋼の狼、機械腕の狩人が「行け!」と叫んだ。
「相棒……待ってろよ、必ず助けを呼んで来るぜ!」
鋼の狼の群れに囲まれながら幾つもの剣戟の音を響かせる友に一声掛け、鉄腕の狩人はその場から逃げ出すのだった。
●ライカンスティール
極寒に包まれた集落にある一軒の小屋。
イレギュラーズは馬車から降りた後に小屋へ入ると、中で待ち構えていた数人の大男達を前にローレットから来た事を告げた。
男達の中から一人の鉄腕の男が前へ出て来る。
「良い面構えだな。待っていたぜローレット、お前達に声をかけられるツテがあった事に今日ほど感謝した事はねえ」
いつかの幻想北部戦線の事を示唆しているのだろう、イレギュラーズにそんな事を言いながら鉄腕の男は小屋の奥へと案内する。
「特異運命座標、お前達には集落から北西に進んだ先に広がる雪原での狩りを頼みたい。
というのも……ここんとこ、どうにも見慣れねえモンスターが狩場に出没するようになっちまってな
鋼の狼みてぇな野郎だ。デカいし速いし硬い。とにかく厄介なんでな、このままじゃ集落の連中が飢えちまう」
小屋の奥には複数のテーブルを並べた上に彼等と同サイズの機械の残骸が置かれていた。
確かに外観は狼のように見えるが、その顎に牙は無い。
「こいつらの攻撃方法は爪だ。分解しただけじゃ分からんが……オーラソードか何かの技術か? よくわからねえ
おまけに群れの中には1、2体程度変形して戦い方を変える奴もいる。見た目が獣だからって油断したら大怪我するぜ」
イレギュラーズは一様に頷くと、直ぐに作戦を立てようとする。
しかし、そこへ鉄腕の男は近付いて来た。
「……どうかしたのか?」
「実は他にも頼みてぇ事があるんだ。俺の狩り仲間……相棒がこの数日間、雪原のどっかで狼どもとやり合ってる筈だ。
たとえ何日経とうがきっと生きてる。なんだって奴はギャグ補正が掛かってるからな、必ず見つけろとは言わねえ。だが見つけたら助けてやってくれ」
頼む、と頭を下げた男にイレギュラーズは「承知した」と応えた。
- 鋼の狼完了
- GM名ちくわブレード(休止中)
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年03月27日 21時40分
- 参加人数8/8人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●それは銀の――
樹氷から落ち行く氷柱の重みある音に被さって、『獣』の遠吠えが雪原を震わせた。
震える純白のベールが被せられた山間部の一端。
遠くない距離から聴こえて来た獣らしい声に視線を巡らせる。
「機械の獣かぁ、鉄帝産は物騒なのが多いね―――ああ、向こうで動物らしき影が見えたよヨルさん」
「おぉ……! 情報提供に感謝だ、ちょっと見て来る!」
樹氷の陰から身を乗り出す『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)の眼が青一色に染まった景色を見据える。
彼は瞬きに合わせ視界を切り替え、横切った熱源体を”素”で確認した。
雪原に生息する小動物を捉えた威降から報せを受けた『暴食の守護竜』ヨルムンガンド(p3p002370)が近場の樹氷帯へ駆け込んで行く。
「牙が無いなんておかしな狼ね。普段は何を食べているのかしら……不思議ね?」
「爪はともかく、機銃やらビームやら、完全に兵器……鉄帝とはいえ、こんなのが自然に発生するものなのかな」
かっくん、と『祈祷鬼姫』六車・焔珠(p3p002320)が訝し気に首を捻っていた傍に降り立つ梟の翼。
「―――それはそうと見つけたよ。スティールライカンの群れが二つ、向こうの樹氷帯と山岳で見えた」
上空からの索敵に出ていた『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)はその場から二方向を指し示した。
報せを受け、木の上から飛び降りて来る影。事前に依頼人達狩人から受け取っていた地図を広げた。
「凡そ、依頼人とその相棒が別れた地点から少し移動した程度でござるな。リゲイン殿が未だ生きていればそれを追うかとも思っていたが、そうはならなかった様子」
「……どうか無事に助ける事が出来ますように」
『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が目を通す限り、依頼人が相棒と最後に別れたであろう地点から鋼の狼達はそれほど動いていないのが分かる。
或いは手遅れなのかもしれない。
だがしかし、依頼人は確信を持って件の相棒の生存を信じている。依頼の優先度が討伐に譲っているのはその表れだろう。
「友を逃がすために自ら囮になるなんて、そうそう出来る事じゃないよね。そんな事が出来る人物を見捨てるわけにはいかないし、無事に連れ帰ってあげよう」
頷き、踏み出す『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)がスカートを翻して。
「とりあえず、群れを分けて行動しているなら今のうちに倒してしまいたいかな。上手く片方だけ誘き寄せられればその分いいんだけど」
「それなら私に名案があるぞ!」
「本当ですかヨルさん……何ですかその後ろの!?」
「マッスルリスのキャサリンだぁ……!」
いつの間にか威降の後ろに立っていたヨルムンガンド、その後ろに立っている巨大なボディビルドモンスターが「ニカッ」と微笑む。
造形とヨルムンガンドの言によりそれの正体が鉄帝の雪原で稀に見られる希少動物だと判明する。
おもむろに下呂左衛門からロープを貰い、いつの間にか二匹に増えたマッスルリスを従えた、不敵に笑みを浮かべるヨルムンガンドの秘策とは───!!
●白銀兵狼
静かな雪原に不釣り合いな騒音が轟けば、否が応でも耳に入るだろう。
【VooLLLL……!】
機械音なのか喉を鳴らしているのか、警戒の意を持った唸り声。
6頭の群れはそれぞれ言葉を交わす事も無く機敏に陣形を変え、総体で動き、音の発生源を捉えようとする。
樹氷の合間を縫って移動する黒い影。
ゴタゴタと不快な衝突音を立てるそれに機械仕掛けの狼共は何を思ったか、脚部からブレードを出して咆哮する。
駆け抜けるスティールライカンはその体躯を構成する材質のためか、樹氷と雪原を生み出す白のフィールドにあっという間に溶け込んでしまう。
──だが、その群れが追っているのは数匹のマッスルリスがロープで引く丸太。
濛々と雪煙を上げてそれらを追いかける狼ども。犬まるだしである間抜けな姿は、上空からなら特殊な眼なくとも煌めく鉄板の反射光と微かに飛沫を上げ尾を引く煙だけで捉える事も出来るだろう。
そして事実、これを捉えた。
「距離が離れた────今なら支障無く、片付けられる」
「了解」
一挙に狼共が動き出したその時を見計らい、ミニュイが勢いよく降下して来て報せる。
『小さき盾』ユー・アレクシオ(p3p006118)を始めとするイレギュラーズが駆け抜け、樹氷帯へ向かう群れとは別の狼達へ奇襲を掛けた。
山岳を駆けていた狼達は機を見た彼等の動きに一動作、反応が遅れる。
「先手……ッ!」
傾斜を駆け上り、側面から鋼の群れに向け一刀を抜き放つ威降。射抜く様に、足元の積雪を交えて白銀の一閃を飛翔させる!
【ギャン!?】
先頭を駆けていた一頭に直撃した瞬間、無数の火花を散らした狼が横薙ぎに吹き飛び土砂と雪を撒き上げて沈む。
【VoLLLLLッ!!】
「おー、鋼のオオカミ! 食べられないうえに危険! 危険!
………むー、コイツら何か違和感ある! 注意して観察しながら戦闘だな!」
テンテケと小粋な舞いを見せつける少女と鋼の狼の眼光が交差する。
側面からの奇襲に成功したと思ったのも束の間。『原始力』リナリナ(p3p006258)の眼前で一斉にイレギュラーズを前面に迎えて散開、瞬く間に体勢を立て直して見せたのだ。
「……今回はハードな仕事になりそうだ」
守りを固めるユー。
リナリナの言葉は正しい、本能的直感に基づく違和感が示した狼達の行動にはある種の一貫性が垣間見えたのである。
「群体として特出している……でござるか。件の相棒殿の安否がますます気になるところではあるが、して──」
小柄な体躯が跳ぶ。
「やあやあ我こそは『井之中流』河津下呂左衛門! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!!
是こそ鋼にも勝る闘気の堅鎧、其処な爪に易々と引き裂ける物では無いと知れい!!」
得物を奮い、剛毅を以て身に纏った武者鎧が鈍く輝いて狼どもを牽制する。
【────ッ!】
下呂左衛門の牽制が効いたか、或いは別の要因か。赤く眼光が複数瞬く。
数瞬の空白を経て狼どもが狙いを定めたのは下呂左衛門となったのだろう。先陣を切ったリナリナやユーを無視して、淡く閃いた鉤爪で地面を抉り彼に向かい殺到して行く。
幾重にも火花が散り重なる。迫る凶刃を見極めた下呂左衛門が小駆を活かし、最小限の動きで往なす。
「……む、せぇい!」
刹那の猛攻に退く事無く、自身の肩口へ爪を突き立てた狼を脚力だけで後方へ弾き飛ばした瞬間。
【VoLLLッ……ギャッィン!?】
「一昼夜前……マッスルリス達はお前達と戦うリゲインを見たそうだ……!
生きているならこの近くなんだ。捜索の邪魔をする、この地を荒らし回る鋼の狼には早々に退場してもらわないとなぁ!」
下呂左衛門が背負い投げによって飛ばした狼を、煌めく鱗が覆う両手がガシリと掴み取る。
鋼鉄の頭部を獲ったヨルムンガンドから星屑が如き火粉を至近で吹きかけられ。消えぬ夜色の炎がボディを蝕む。
「動きが遅い人を狙っているのは間違いないみたいだけど、思ったよりも単純なのかな」
「──どうかな、常に各個撃破を意識した密集隊形は”狩り”のそれを思い浮かべるよ」
炎に包まれていた機体が内側から爆ぜる様に吹き飛ぶ。
蒼白い妖気を纏う両翼がギャリン、と奏でて。ミニュイが直前の勢いそのままに雪原を滑り、軽やかに飛翔する。
「目立つのがいるなら取りあえずは狙う。仲間が狙えば取りあえず狙う……面倒なのは複数で来るから無傷で捌くのが難しいって所か」
爆ぜ飛んで来た残骸をひらりと躱し、メートヒェンはミニュイの下を潜るように前へとステップする。
「ほら……狼さんこちら、ってね」
咆哮、雪を溶かし大地を抉るブレードエッジが一斉にメートヒェンに剥く。
踵を返して来た狼の姿も見える。緩やかに距離を図るように、メイド服を翻す彼女は四対のブレードを後転と同時に弾く。飛び散る火の粉の熱は雪の冷気に掻き消されるだろう。
瞬きの間に二度、三度と四方から繰り出される一撃を正確に弾いて捌くメートヒェン。
しかしその瞬間。
横合いから、
「二人共! 上手く避けてちょうだいね──!!」
「「!?」」
稲妻の如く走る焔珠の声。
反射的にその場から大きく飛び退いた前衛は、対峙していた狼達が纏めて朱い極太の熱線に薙ぎ払われる瞬間を目の当たりにする。
【V……ッッ…………!!?】
前衛、ユー達が引き付けていた狼達を巻き込み幾つかの爆風が立ち昇る。
焔珠は宙を踊っていた曲刀を二本掴み取って胸を張って。
「乾坤一擲! 賽の目は私にツイたわね!」
稀に見る、微かな賽の目を引き当てて実現する会心の一撃。
爆散した狼を目の当たりにした彼女は、言い様の無い爽快感を両刀を打ち鳴らす事で表して見せたのだった。
●雪月花
混沌では耳にする事が無い音。しかして懐かしみと親しみのある、鉄の歯車が噛み合うそれをユー・アレクシオは知っていた。
「! この音……奴だ、敵のどれかが変形するぞ!」
「……!」
ユーの声に反応するより先に、疾るミニュイが跳躍する。
風を切り裂いて翼が閃く。両側面から鋼の体躯へ突き立てられた硬質化した羽根が、弾丸と変わらぬ威力を以て狼を薙ぎ倒した。
白い粉塵撒き上げ、地を滑る鋼の狼を踏み台にして彼女へ迫るのは、人型へと変形したスティールライカンである。
【ターミネイト!!】
「……喋った──ッ!」
思わず驚くミニュイの眼前で、鏡面となった狼の胸部が紅く熱を帯びた。息を呑む間もない。
咄嗟に彼女が飛び立とうと翼を振るったのも一瞬、突如として足元の積雪──或いは地中か──から飛び出した他機体の狼が彼女の行く手を阻んだのだ。
(これは……)
「ところがそうは! いかないんだなぁ……!!」
恐ろしくシンプルに高威力な光線が正面から殺到する。莫大な熱量と衝撃波が僅か十数mの距離を縮めてミニュイへ突き刺さろうとする、その軌道は見る者に少なくない危機を察知させた。
しかし。そこで割り込んで来たヨルムンガンドがそれら暴威を両掌で受け止め、尽く霧散させて庇い切ったのである。
視界が白く染まる中、変形態となったスティールライカンの眼が紅く光って唸る。
「……ありがとう、正直今のはびっくりしたよ」
「キャサリン達が誘き寄せた狼どもがこっちへ戻って来てるらしい、早々に畳みかけないとなぁ……!」
下呂左衛門と威降からの報せである。
遠吠えによる警報の類を警戒し、吠えようとする動きを見せていた機体をメートヒェンが積極的に狙ってはいたものの。件の変形する機体が現れた時から別所の狼どもが異変に気付いたような動きを見せたのだという。
ここで一人、ある仮説に確信を抱いた者が怒号を上げる。
「リナリナ思った! コイツら………連携が巧みというより全部で一つの生き物って感じする!
群のボスを倒す必要があるゾッ! おー、リナリナ、ボス狙いでいくっ!!」
「全部で一つ……そうか。紛れているから気付かなかったが、全体の動きがあの変形機体だとすれば辻褄が合う──」
リナリナが「るらーっ!」と突撃する最中。ユーは彼女の言に思い当たる事があった。
彼と対峙していた狼がヨルムンガンド達の方へ向く、そこへ回り込んだ風が鋭く重い一刀の下に鋼の装甲を切り裂いて薙ぎ払う。
静かに頷いて肯定するのは、威降だ。
「あの機体は確か最初に俺が斬りつけた機体ですね。なるほど、
奇襲に成功した時点で相手方の動きが鈍ったのにはこういう絡繰りがあったと。皆言っていたけど、つくづくおかしな特性を持っているなぁ」
「せっかく私が何度か妨害していたのにね」
「メートヒェンがそうして動いていたから、ここまで順調に数を減らせたとも思えるよ」
或いはもっと早く援軍が来ていたかもしれない。
狼の形状を有する彼等がここまで徹底した狩りのスタイルを取っていたのだ、【ハイセンス】に類する能力を更に持っていたとしてもおかしくはないのだから。
【ワンワン……ドッグ! ターミネイト!!】
「おー、何言ってるかわからない! とりあえずお前は食べられないのはたしか! るらー!!」
正面から殴りに行っているように見せかけて、僅かばかりの間合いを挟み謎判定の亜空間打撃を連打するリナリナに変形型の狼が装甲を徐々に軋ませ、歪みを広げる。
一方で。
「ぐっ……! しっかし変形出来る個体もいるってのは驚いた、魔物だが男心を擽るぞ……ッ子供でも居たらお持ち帰りしたいくらいだ!」
「鉄帝は魔物も一味違う様子でござるな。油断大敵でござる」
当然の如くリナリナへ揮われる猛攻の数々を防ぎ、押し返そうとしているユーの傍ら、下呂左衛門が変形型に追従する狼を斬り払って押し返す。
既にこの場に残るは二頭のみ。
【ターミネイト!! ターミn────?】
瞬間、この場で最も異彩を放つと同時に、シンプルに浪漫砲で猛威を揮っていた人型歩行戦術ワンワンの頭上に影が差す。
胸部装甲に熱が収束しようとしていたのだろうか。傷付いたユーの前へヨルムンガンドが飛び込んで来ていたのが、距離を置いていた威降の視界に映っていた。
樹氷帯から複数の咆哮が聴こえていた事もあり、目を離していたミニュイもまたその存在に気付いていなかった。
唯一その光景を目の当たりにした者と言えば。
「その首、獲った──ッ!」
弧を描くかの如く。宙を舞い降って来た焔珠が二刀の曲刀を振り被り、全身を奮い動かして断頭台さながらの強烈な一撃を落としたのである。
魔力を纏い、朱い妖気が尾を引いて流れるその軌跡には切り離された頭部が残される。
リナリナの眼前で火花を吹いて倒れたスティールライカンは直後に爆散するのだった。
「おー、ボス倒した……! 群のボス、片腕獲った!」
「まだこれからまた戦うのだけどね?
でも、少なくともこうして私達が狼を引き付ける事で誰かさんの安全が保たれるなら──一匹残らず蹴散らす価値はあるのよね!」
瞬く間にもう一頭を薙ぎ倒したイレギュラーズは暫しの休息を挟みつつ戦闘態勢を整える。
丘の下方、樹氷帯から遂に姿を見せる群れの先頭には既に人型へと変形を遂げた機体が奔っている。焔珠はそれらを一瞥して、仲間達を見回した。
全員、これから続く連戦に支障は無いとばかりに頷いて見せる。
【────ォォォオオオオン!!】
猛然と駆けて来る鋼の狼ども。
先の奇襲とは違い、今度は相手方のターンから始まるだろう。そうなればきっと戦闘は激しさを増すに違いない。
下呂左衛門はその身に武者鎧を纏い、横合いの仲間達と共に名乗りを挙げようとする。
「ん……や、はて…………?」
ふと、先頭を走る人型のスティールライカンに目が留まる。
なんか首から提げているなと思い、彼はその超視力で目を凝らして見詰めた…………ボロボロではあるものの厳ついオッサンが胴体に巻き付いているように見える。
というか、明らかに謎のオッサンが巻き付いていた。
「か、顔の三本キズ……キャサリンが言ってた、依頼人の相棒のリゲインだ……!?」
「なんで狼の首に巻き付いてるの!?」
一同が困惑している、次の瞬間。
敵のボスへ問答無用で殴りにかかったリナリナがオッサンごと敵を吹っ飛ばして第二ラウンドが始まるのだった。
●鋼の。
「おー、生きてる? 死んでたら返事する!」
「アァ……しんでるぜぇ……」
その後……何やかんやイレギュラーはあったものの、誰一人として危うい状況に陥る事無く戦いを終えた。
戦闘中、まさかの動きを見せるリゲインに何度も一同は誤爆しては吹っ飛ばしてしまったが、恐るべき強運で立ち上がっては巻き込まれるを繰り返していたのである。
それに何度肝を冷やしたか分からないだろうが、最終的に全員生きていれば事は無し。
帰路に着いた一行は最高にイカした馬(ハイパーメカニカル子ロリババア)に揺られるリゲイン氏にそれぞれ声をかけていた。
「ヘイ、ブラザー! よくやったな、ボロボロになっても……相棒を信じた君は最高にクールだぞ……
一緒に帰って温かいシャワーを浴びてから美味い飯でも食いに行こうか」
「おいおい、ニューフェイス。そこはまず飯が先だろ? 喰われる心配ばかりしていた俺には食い気が欲しいとこなんだぜ? ……だがまあ、俺の相棒共々お前らには感謝だな!」
末恐ろしそうに眼下の残骸を眺めている彼に、メートヒェンが馬上のリゲインに温かい紅茶をポットごと差し出した。
「道中、何もないのでは一息吐こうにもお寒いでしょうから」
「おお! さすがだな、一杯貰うぜ!」
グビリ。品も何もあった物では無いが豪快に、しかし感謝の色を浮かべて飲み干してから彼は彼女へポットを返した。
「無事で何よりだが、なぜあの変形した個体にぶら下がっていたのだろうか……」
「『マッスルリスが来て狼達に見つかったから咄嗟に抱き着いた』って言ってたのだから、そうなんじゃないかしら?」
「色々ツッコミたい所はあるけどね……まぁ、無事で良かったんじゃないかな」
苦笑いを浮かべながら威降は件のリゲインを見上げる。
彼は戦闘中、確かに聞いたのだ。
『これに懲りたらおっかねえ研究者の女には手を出さない事にするぜ……!』
──と。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ちくわブレードです。
今回の戦闘中における判定はプレイング提出当時の仕様に沿って処理されています。
その上で、皆様の結果は元より成功となっていました。
具体的には増援の危険性、または警戒。尚且つ自陣営の優勢を得る為に行われるプレイング等の積み重ねによる、戦闘またはシナリオ中の成功判定に大きく良い方向へ動いていたと思えるものでした。
大変素敵なプレイングをいただき、ありがとうございました。
それだけに、この度の大幅な遅刻により皆様にご迷惑、ご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
シナリオにご参加いただき誠にありがとうございました。
またのご参加をお待ちしております。
GMコメント
●依頼成功条件
スティールライカン13頭の討伐
●情報精度B
一部不明な情報があり警戒が必要です。
●ロケーション
雪に覆われた地表。山間部。
傾斜面はそれほど急な物ではありませんが、雪に覆われた景色は鋼の体を持つ敵エネミーをカモフラージュさせ、発見距離を縮めてしまいます。
リスとかマッスルリスが生息してる。
●エネミー
スティールライカン(13頭)
群れで動いているようですが、13頭の内半数に分かれて行動しているようです。
戦闘隊形は基本的に密集隊形で襲って来る節があり、動きの遅い者から狙う傾向にあります。
少数だけとはいえ、中には第二形態らしき姿で機銃やビーム等の兵器で戦闘をする個体もいるとか。
●要救助者
依頼人から別件として頼まれた救助依頼です。
リゲイン・アムステルダムという鉄騎の狩人がロケーションのどこかにいる可能性があります。
もしも彼を発見する事があれば助けてあげて下さい。
以上。
ちくわブレードです、今回はスタンダードなシナリオとなっていますので気軽にご参加くださいませ。
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