PandoraPartyProject

シナリオ詳細

唐揚げレモン問題

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●事件はある夜に
 鉄帝南部のとあるバーで、財産家のフィーネ・ルカーノ (p3n000079) は言い争う声を聞く。
(あらあら、素敵な声……癖になりそう)
 フィーネはくすくすと笑いながら振り返る。そこには厳つい二人の男。
「おい! おめぇ、今、何をした? ほら! 聞いてやるから言ってみろよ、ああ?」
 立ち上がる男、男はテーブルに座る男を睨み付ける。テーブルには、唐揚げと飲みかけのビールジョッキが二つ。
「ああっ? 何って、唐揚げにレモンをかけただけだろうが!」
 男は冷ややかな視線を向ける。
「かけただけ? ああっ? ふざけてんのか、てめぇはよ!!! 俺は唐揚げにレモンをかける軟弱野郎が大嫌いなんだよ!! 酸味? 知らねぇわ、そんなの……取り替えてもらうぜ! てか、一番の問題は許可なくレモン汁を撒き散らしたことだろうが!! てめぇのせいで、全ての唐揚げが死んだ……死んだんだよ! どうしてくれる!!」
 男は唐揚げの皿を引ったくろうとする。
「はぁっ!? ふざけてんのはてめぇだろ、おい!! 唐揚げにはレモンって多数決で決まってんだ、このお子様舌野郎! 帰ってミルクでも飲んでろ、ばーか! ばーか!」
 男は叫びながら、唐揚げを口に放り込む。
「んっまっ! この味が分からねぇとはなぁ、可愛そうになぁ?」
 男はにまにまと笑いながらパセリを口に。
「パセリも最高だ……この苦味……大人の味だぜ! てめぇには無理だろうよ?」
「あ? パセリくらい食べれるわ! あー、不愉快だ! 出ろよ……マナー違反め!」
 立ったままの男がパセリを口に含み、怒鳴る。
(うっ、にが……)
「ああん? 何だって?」
「そ、外に出ろってんだ、この野郎! 揚げ物はな、湿らせちゃ駄目なんだよ! 酸っぱい汁も要らねぇ!!!」
「ああん? なんだ? やんのか、おい!」
 
 騒然するとするバー。 フィーネはすっと立ち上がり、ゾッとするような美しい笑みを与える。
「ああ、貴方達の素敵な話は聞こえていたわ。ねぇ、大丈夫よ。その話、あたくしにくださらない?」
 フィーネに男達は面食らう。

●ということで
 フィーネはギルド『ローレット』を訪ね、イレギュラーズ達に彼らの話をし始める。
 フィーネの話はこうだ、男達は互いの主張を取り下げるつもりはない。このままだと、互いの息の根を止めることになる。
「それはそれで面白いのだけど……あなた達に考えてもらいたいの。誰も争うことなく、唐揚げ(しょう油味)を食べることが出来る未来をね? ふふ、面白そうじゃない?」
 フィーネの口調と内容にイレギュラーズ達は唖然とする。

GMコメント

 ご閲覧いただきましてありがとうございます。
 唐揚げ美味しいですよね。幸せの味が致します。

●目的
 誰も争うことなく、唐揚げ(しょう油味)を食べることが出来る未来を考え、男達が納得するような提案をすること。

●シチュエーション
 夜で、言い争ったバーで行われる。
 貸しきりの為、他の客はいない。料理人すらいないために調理や盛り付けの全てをイレギュラーズ達が行わなければならない。ちなみに、バーで出している唐揚げ(しょう油味)は皿に5つで、レモンとパセリが乗せられているようだ。にんにくが効いてとても旨い。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●男達
 互いの主張を譲らず、頑固者。賢くないので、力で解決しようとする。レモン賛成派はテック、反対派はシスという名前である。

【注意】
 依頼人であるフィーネ・ルカーノ (p3n000079)はカウンターで酒を飲みながら皆様の様子を眺めています。ただ、フィーネが口を挟む可能性はあります。ただし、メインは男達が納得するような提案をすることです。フィーネに構い過ぎてはいけません。ちなみにフィーネは塩唐揚げ派です。

  • 唐揚げレモン問題完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年02月13日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
レッド(p3p000395)
赤々靴
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ジョージ・ジョンソン(p3p006892)
特異運命座標

リプレイ

●唐揚げは
 今宵のバーは喧噪と禍乱。この争いは、フィーネ・ルカーノ (p3n000079) が六人のイレギュラーズに、ドリンクのオーダーを取ったところから始まる。
「ローレットの諸君! 待ってたぜぇ?」
「どんな話になるんだ?」
 レモン賛成派のテックと反対派のシスは既に酔っている。
「ええと、とりあえず生で! あ、皆様も生で大丈夫ですか? あれ、とりあえず生も今は駄目なんでしたっけか」
 『銀凛の騎士』アマリリス(p3p004731) はぶつぶつ言いながら、『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073) 、 『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365) 、『特異運命座標』ジョージ・ジョンソン(p3p006892) を見た。
「あ、俺はカシスオレンジを。オレンジの甘さと酸味が唐揚げに合うからな」
 アランは言い、寛治がビールをオーダーし、コーラの数を数え始める。
「あ、ジョージはどうするんだ?」
 アランが訊ね、「僕はお茶をお願いします」とジョージは柔和に笑う。
「なら、生ビールは二つ?」
 確認するフィーネ。
「いえ、生ビールは一つ。アマリリス様は生乳を。そして、コーラを二つお願いします」
「え? え? に、新田さま、なま違いでは? 私、成人して……それに唐揚げにはビールが……」
 アマリリスがちらりと寛治を見るが寛治は黙ったまま。
「ふふ、お嬢さん、残念ね」
 フィーネがアマリリスの肩に触れ、カウンターに消える。そして──
「あぅ」
 アマリリスの前には牛乳をたっぷりと注いだジョッキ。

「では、今宵、唐揚げに捧げる!」 
 『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148) の掛け声とともにグラスやジョッキを天に掲げる。
「乾杯っ!」
 沢山の声が混じり合う。
「お、良いタイミングじゃねえの?」
 『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837) が唐揚げを持って現れる。
「待ってました!」
 『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713) がはしゃぐ。
「こっちは塩唐揚げっす!」
  『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)が叫ぶ。シュバルツとレッドは、スタイリッシュなコックコートとコックパンツ、ネイビーのコックタイを付けている。
「どんどん食ってくれ」
 シュバルツは言う。
「早速、レモンを」
 アランは全ての皿にレモンをかける。
「アラン! 唐揚げにレモンをかける際はもっと周囲に気づかいください!!」
  アマリリスがテーブルに拳を叩きつける。レモンがぷんと匂う。
「あ? なんだって?」
 アランがより目つきを悪くしながら、アマリリスを見つめる。
「なんで、イレギュラーズ間で論争が始まってんだ……」
 シュバルツが三白眼を細める。
「あっ! シュバルツ違うんです、これはその、だって、アランが、はぅ……」
 アマリリスは慌てる。
「あれ? 提案はどこっす?」
 レッドはオッドアイの瞳をわざとらしく瞬かせる。バーで、唐揚げを食べるつもりでいたはずのレッドは、シュバルツと唐揚げを作っている。
「そもそも、食い物の食べ方なんぞ人それぞれだろうが。本人が美味く喰えりゃなんでも良いだろ」 
 シュバルツは息を吐く。ちなみに、シュバルツはどちらかと言えば、そのまま派だ。
「つーか、自分の取り皿に唐揚げを取ってからレモンを絞るって発想はテメェらにねぇのか?」
 シュバルツはそう言い残し、レッドと厨房に戻っていく。アランは掴んだままのレモンの残りをぎゅっと絞る。
「で・す・か・ら! 勝手にレモンをかけないでください!」
 アマリリスはアランを指さす。
「はあぁ? 美味いから良いだろ!」
 アランはアマリリスを睨み、カシスオレンジを一気に飲み干し、テーブルにグラスを叩きつける。
(ふふ、これも彼の仕業?)
 フィーネは寛治を一瞥し、口角を上げる。寛治は涼しい顔でビールと唐揚げを味わっている。
「んー、塩唐揚げにレモンも、唐揚げにレモンも美味しいです!」
 エルが笑顔で唐揚げを頬張っている。
「あー、この熱さが最高です! それに、大きさも程よくて……外は香ばしいほどにカリッとしつつ、噛む度に広がる脂がたまりません。それにコーラと唐揚げは合います。うーん、美味しいです!」
 エルは唐揚げに手を伸ばす。
「きっと、二度揚げしているのでしょうね」
 寛治がビールを飲み干す。エルは寛治の言葉に目を輝かせ唐揚げを食べ続ける。
「なんだ、こいつら」
「何がしたいんだ?」
 テックとシスは困惑し、アランとアマリリスは争い続ける。

「レモンをかけるのが嫌な方もいるのです! そもそも、レモンをかけた瞬間に、カリっとした感触が消えてしまう。それは揚げた職人に申し訳がない! 湿らせずにカリっと揚げるって意外と技術いるのですよ! アラン、ご存知ですか?」
 アマリリスが言う。
「あー? うるせー、馬鹿野郎! そんなん知るか! 唐揚げにレモンをかける奴の方が圧倒的に多いんだよ! それをマイノリティを尊重しろだぁ? んなもん、数で勝てない、弱者の戯言だ! 掛けて欲しくないなら、最初に言え!」
 アランが声を張り上げる。
「き、聞かなかったでしょう!」
「そんなん、秒で言え、秒で!」
「なっ、無茶言わないでください!」
「じゃあ、掛けるしかねぇなぁ! あーあ、残念だ?」
 アランは口角を上げ、唐揚げを頬張る。
「うっま! それに本当に唐揚げを作るのが上手い職人は湿り気を感じさせずに唐揚げレモンを楽しませてくれるだろうし、湿らせるのが嫌な職人ならまずレモンを付けないはず。己の修行不足をレモンのせいにするな!」
 アランは早口で言い放つ。
「ぐぬぬ……」
 アマリリスが唸る。

「僕からも良いですか?」
 挙手をするジョージ。アマリリスとアランが頷き、喉を潤すためにアランはカシスオレンジを飲み、アマリリスは寛治のビールを羨ましそうに眺め、ミルクを飲み始める。
「僕はアランさんと同じレモン賛成派です」
「はいっ!?」
 アマリリスは驚き、ミルクを大噴射。
「わわっ!?」
 唐揚げの大皿は、エルと美弥妃が咄嗟に上空に掲げ、ミルク爆弾から守り抜く。
「て、てめぇ、嫌がらせか!」
 アランがミルクを滴らせながらアマリリスを睨み、すぐに黙り込む。ジョージの説明を聞かなくてならない。
「あ、ええと、そもそも、なぜ唐揚げにレモンをかけるかというとですね。医学的に見るととても理にかなった行動なんですよ。唐揚げは美味しいですが、とても油っこい食べ物です。レモンの成分には腸での油の吸収をおさえる働きや油の抗酸化作用があって、肥満や一部の病気の予防にとても役立つのです。つまり、唐揚げはレモンがあってこそ完璧な食べ物へと進化するのです!」
 ジョージは恥ずかしそうに微笑む。
「それと、レモンを絞るときは皮を下向きにして絞るとより良いみたいですね」
(まぁ、言っといてなんですが、健康を気にするなら、そもそも唐揚げを食べないのが正解なんですよねぇ。細かい事を気にするより美味しく食べた方が心の健康としてもいいのですが、今回は言わないでおきましょう)
 ジョージは微笑み、唐揚げを摘まむ。
「ああ、美味しいですね。酸味が脂をマイルドにします」
 ジョージは黒烏龍茶を飲み、また、唐揚げを。
「ん? なんだか静かになったな」
 シュバルツがカレー味の唐揚げを盛り付けている。
「そうっす! 終わったっす?」
 レッドはタコを切っている。
「解らねえ、唐揚げを出すついでに見てくる」
「了解っす♪」
 レッドは頷く。

「はっ、降参するんだな。既にチェックメイトだ」
 頭にタオルを巻いたアランは楽しそうに三杯目のカシスオレンジに口をつける。
「むむっ。でも、マナー的にも、からあげの精霊さまも」
 アマリリスは息を吐く。バーに存在するからあげの精霊はアマリリスを見つめ、悲しんでいる。
「ううっ! 負けません、私は戦い抜きます!」
 アマリリスは叫ぶ。
(からあげの精霊さまとは、何デスぅ?)
 美弥妃が小首を傾げながら、バーを見渡す。
(総スルーのようですけど、皆さんには見えるんデスかぁ?)
 美弥妃は目を凝らす。だが、何も見えない。男達はきょとんとし、不気味そうにアマリリスを見ている。アマリリスは唐揚げ論にひたすら、熱を注ぐ。
「からあげにレモンをかけるのは、親切心です。その親切心でレモンをかけられたくない方が不幸になるのはいけません! レモンをかける前に、どちらの派閥の方も一言添えましょう。からあげにレモンかけてもいいですか? からあげにレモン、かけないで下さい! どちらかが自己発信する事で全て解決いたします! と言うか! 譲らないと終わらないのよ、この戦いは! でもね、正直、私は……もう、争いたくない……! 戦いたくないよ、アラン……どうしてッ、争いが絶えないの……もう、いや……」
 アマリリスは酔っぱらいのようにアランに絡む。
(なんだ、ミルクで酔ったか?)
 アランは胡乱な目でアマリリスを見つめ、エルは残りの唐揚げを平らげていく。

「フィーネ様」
 寛治がスツールに腰かける。
「あら。ねぇ、これはどういう意図?」
「そうですね。まずはお二人がドン引きして醒めるくらいの争いを演出する、というわけです」
 寛治は囁くように告げる。フィーネは唖然とする男達を眺める。
「そう。今のところ、成功しているわけね」
「ええ、そのようです。そもそも、唐揚げは、その材料に何を選ぶかという時点から戦争が始まっています。鶏か、魚か、或いは豚肉か。衣の種類、味付け……さながら火薬庫のように、火が付けばいくらでも爆発していくのです」
 寛治はフィーネを見つめる。
「ふふ、そうねぇ。あたくしにとってはとても些細なことだけれども……そういえば、貴方はどの唐揚げが好み?」
「私はもも肉に柚子胡椒で下味をつけた唐揚げが好みです。これが一番ビールに合う」
「へぇ、いただいたことは無いわね。ああ、そうだ。レモンはどうするの?」
「レモンはかけません。ですが、マヨネーズに一味唐辛子をかけて醤油を垂らしたものにつけると、これがまた酒が進むのです。知人には、それはあたりめやエイヒレを食べるやり方だ、などと指摘されたものですがね」
「うふふ、そうね。唐揚げでは想像出来ないけども、至極、美味しそう……ああ、べったりと付けたいものね」
 フィーネは想像し目を細める。
「ロゼにも合うかしら?」
「ええ、きっと」
 寛治は頷き、スパイシィな香りを知る。
「あら、今度はカレー」
 フィーネが呟く。

「待たせたな、今度はカレー味だ」
 厨房から出てきたシュバルツがテーブルに大皿を置く。
「わー! んんっ、ああ! とてつもなく、美味しいです!」
 エルは口の周りを脂で濡らしながら叫ぶ。
「ああっ、美味しいデスぅ! 外はカリカリ、中はしっとりと柔らかい……スパイスの刺激が食欲を増進させマスぅ!」
 美弥妃はコーラを流し込む。カレー味は美弥妃のオーダーである。
「だろ?」
 シュバルツは満足げに頷く。
「あ! 皆さんに伝えておきたいんデスぅが、そもそも、レモンをかける、かけないなんて些細な事情デスぅ」
 美弥妃がはっきりとした声で言い放つ。
「──ッ!?」
 ジョージ、アランとアマリリスが驚いた顔をする。新たな火種が落とされたのだ。
「ええと、美弥妃さん。それはどういうことでしょうか? 僕の唐揚げ論に反論の余地があるということでしょうか?」
 ジョージがうろたえ、黒烏龍茶で喉を潤す。
「反論の余地と言うより、レモンはぶっちゃけ、どうでもいいデスぅ!」
「どうでも……?」
 呆然とするジョージ、アラン、アマリリス。今まで何の為に話していたのだろう。
「辛み! コレがあればレモンの酸味はどうでもいいのデスぅ! 七味、カレー、ハバネロ……あ、わさびは苦手なのでスルーで、あれは辛みとはちょっと違うあれれなんで」
 美弥妃は七味の瓶を見せる。イレギュラーズ達と男達にぴりりとした衝撃が走り、厨房では──
「まだ、終わらないようだが、どんどん揚げて俺らも座ろうじゃねえの」
「はいっす! 唐揚げ、唐揚げ、美味しいっす♪」
  レッドは歌う。
「いざ、投入だ!」
「おうっす!」
 シュバルツとレッドは衣を付けたタコ、サバ、クジラをゆっくりと油へ。
「お!?」
 シュバルツが異変に気がつく。油がみるみるうちに跳ねて、破裂音とともに唐揚げが襲いかかる。
「あああああ! あ、危ねえ!」
「あわわわわ!?」
 シュバルツとレッドは青ざめ、唐揚げを避けていく。

「たとえ、タルタルをかけようが、卵とじにしようが、タレをかけようが美味しくして刺激を出してくれる七味は、万能調味料だと思いマスぅ。辛みで痺れた口の中を炭酸や濃厚で甘い飲み物で流し込む感覚は癖になりマスよぉー? ああ、食べてみマス?」
 美弥妃はイレギュラーズ達の反応に満足げに頷き、塩唐揚げに七味を。
「あっ、新しい刺激です!」
 食したエルが驚きつつ、もう一つを口に。
「ううっ! これが一番かもしれません!」
 エルの青い瞳がチラチラと美弥妃を見つめている。
(美弥妃さんがとても、気になって)
 エルは頬を染める。正常な判断が鈍っている。
「そうでしょぉー? 辛みで痺れた口の中を炭酸や濃厚で甘い飲み物で流し込む感覚は癖になりマスぅ! ほら、皆さんもどうぞデスぅ!」
 美弥妃は笑顔を見せる。
「あ、美味しいです。七味がアクセントになっていてとてもよく合います」とジョージ。その顔はとろけ、美弥妃に魅了されている。
「おっ、これはイケる!」
 アランは驚愕の表情を浮かべ、美弥妃を見る。
(ん? 魅力的に見え?)
 一方、アマリリスはしくしくと泣いている。
「もうやだ、こんなの……つらい、お腹すいた……もう、食べて良いよね……」
 アマリリスは混沌の中、唐揚げを食べる。広がる肉汁・ウエーブ。
「から……うま。え、何?」
 アマリリスの言葉に美弥妃が胸を張る。
「ふふ、美味デスよねぇ? ちなみに、辛い物をアルコールで流しこむのもいいんじゃないデスかぁ? 飲んだことないデスけれどそういうものにも合うんでしょぉー?」
 美弥妃はカウンターを見つめる。
「とにかく! 最終的に七味さえかけてしまえばいいのデスぅ、これで解決じゃないデスかぁ?」
 美弥妃は笑い、フィーネの手の甲に唇を落とす。

●宇宙
 「サバとクジラとタコの唐揚げ、出来たっす」
 七味唐揚げ説が優位の中、レッドが大皿をテーブルに。
「あら、鶏肉じゃないのね」
 フィーネの言葉にエルが正気を取り戻す。途端に響くエルの声。
「鶏肉では無いから唐揚げでは無い? ノンノン、違います。唐揚げは器が大きいんですよ! ピーマンの唐揚げも美味しいですよ? え、知らないのですか……そうですか。タコのぐにぐにとした食感が好きで、サバもパンに挟んでも美味しい、マヨネーズをかけて食べても美味しい。さぁ、みんなも食べてみて下さい!」

 ようやく腰かけたシュバルツは、コーラを飲み、タコの唐揚げを頬張る。
「ああ、できたてで美味いな……幸せだ」
 シュバルツの言葉にレッドが頷き、「あ! 全員、好き嫌いはダメっすよ?」と得物をきらりと光らせる。男達とイレギュラーズ達は驚き、フィーネがくすくすと笑う。

「珍しい唐揚げだ」
 アランが呟き、カシスオレンジを飲む。色々とクールダウンしたかったのだ。そして、唐揚げを一つ。
「──ッ! こ、この唐揚げ、レモンが掛かってない! だけど、美味いぞ!?」
(なるほど、アマリリスが言ってたのはこう言うことか……確かにこれはどちらかが譲歩せざるを得ない命題だ)
 急に哲学者のようになる。
「おい、出てきた唐揚げを半分だ。半分だけレモンをかけろ」
「アラン!? ああ、もしかして!」
 アマリリスが叫ぶ。
「ああ、ようやく解ったんだ。俺はこの命題に対して公平性で勝負しよう」
 アランは頷き、アマリリスと固い握手を。その様子をじっと見つめるテックとシス。
「親切心の行動でも他人にとっては不幸かもしれない。不幸が発生する前に自己発信して質疑する事を心に置きましょう」
 アマリリスが男達に伝え、エルが口を開く。
「あのね、今でこそ、ローレットに属して色々な物を食べられる様になったけど昔は……だからね……余り、文句なんて言わない方がいいと思うんだよね。みんな……贅沢者なんだね。わっ!?」
 フィーネがエルを愛しそうに抱き締める。
「そうだな」
「ああ、なんだかもう」
 男達は恥ずかしそうにする。
「シュバルツ様も伝えておりましたし、もうお気づきだと思いますが、レモンをかけたければ、自分の取り皿に取ってからレモンをかければいい。パセリは食べたい人が食べればいい。そう、それはダイバーシティ、多様性を受け入れ、尊重していく生き方」
 寛治は言い、ジョージが言葉を続ける。
「そうです、小皿に自分の分を取り分けてからレモンをかけましょう。あ、お酒を飲む人は飲みすぎにも気を付けてくださいね?」
 ジョージが微笑み、男達は頷こうと──
「新田、ジョージ! そう言う問題じゃねぇんだ!!」
 アランが鋭く叫び、男達は驚く。
「あらあら、解決はまだなの?」
 フィーネが笑うと、寛治は目を細め、「ま、それが出来ないから、戦争は無くならないんですけどね」と補足する。

成否

成功

MVP

アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束

状態異常

なし

あとがき

 ああ、楽しかった。あのあと、少しだけ揉めたようだけど、それもいとをかし。
 ふふ、素敵な唐揚げの話を聞けて良かった。至極、刺激的で沢山、笑ってしまったわ。そうそう、彼らはこれから小皿に取り分けるそうよ。ああ、近々、唐揚げパーティーでも開こうかしら。どう? 楽しそうじゃない? そしてね、MVPは素敵な貴女に贈りましょう。最後に、そう、その封筒の写真を一枚、記念に持っていって頂戴?

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