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シナリオ詳細

<泡渦の舞踏>揺れ動く/氷海/霧の使者
<泡渦の舞踏>揺れ動く/氷海/霧の使者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●揺れ動く霧
 ──かつて、幻想にその名有りとされた楽団が在った事をもうどれだけの人間が思い出すだろうか。
 混沌世界で何かが蠢いている事を誰が想像していただろうか。
 『シルク・ド・マントゥール』が討たれてより日が経って、それから。
 争乱のあった幻想ならともかく。ネオ・フロンティア海洋王国でそれを考えて何があったと言えよう。
 誰かが守って来た平穏、或いはありふれた日々の中で過ごして来た海洋の民からすれば答えはそれに順じた物になるだろう。
 ……その目と鼻の先に”大きな穴”が開いていたとしても、人は下ばかり見ているわけではない。

 ──魔種『チェネレントラ』が再び動き出す。
 『シルク・ド・マントゥール』残党の彼女が発生させた大渦。その周辺に文字通り渦巻く魔種と魔物達の動きが海洋を突き動かした。
 幻想は違い、元より純種の多い海洋は魔種による『呼び声』の影響を受けやすい。
 チェネレントラの目的は明らかに狂気の復讐劇を目論み、魔種達を利用してのパンデミックを起こす事だ。それだけは絶対に防がなければならなかった。
 大渦周辺に存在する魔種達が『嫉妬』と『色欲』の大元となった魔種の命令等を受けて動いている事も明らかとなった今、一刻も早く対処に当たる必要があった。

 ──事態は急を要する。
 女王、或いは貴族からの依頼でチェネレントラと周辺魔種の掃討に動き出したローレット。
 各魔種達が命令を受けての物だとすれば、如何にイレギュラーズといえど危険は高まる。敵は必ずしも魔種ばかりとは限らない。
 何故なら其々が大渦へと乗り出す中、海上では幾つかの不穏な影が蠢いていたのだ。
 それは『霧』……小規模な濃霧が海上を滑り、イレギュラーズの乗る船へと襲いかかっていた。

●氷海の使者
 貴方の元へと届いた依頼書にはこう書かれている。

『現在海洋を襲っている魔種の脅威に対処すべく、魔種チェネレントラ周辺の魔物を退けて欲しい。
 チェネレントラといえば既に過去、各調査や討伐作戦に参加した者の記憶に新しい名だが。今回貴君に対処して欲しいのは他でもない海上の掃討である。
 大渦周辺に確認されている魔種・魔物等の脅威は確かに恐ろしいが、これの対処に向かった船団を襲撃する敵は更に恐ろしい。
 ──敵の遊撃隊。霧と共に海上を移動する、氷の悪魔の一団。大渦によって誘われたか
 貴君等の力を疑いはしないが、敵の目的はローレットの侵攻の妨害に見える。ただ戦うのではなく遊撃に徹されては貴君等の友軍も被害が出るであろう。
 それは我が国においても望む所ではない、断じてだ。
 よって、敵に関する情報資料を収集した物を同封した。そちらを確認の上、後日海洋首都港まで来て欲しい。
 出来る限りの装備、物資を貴君等に支給するようにとの事。これは女王の意思である。
 ……健闘を祈る』

 貴方はそれをどう思い、そして応える事にしたかは誰にも分からない。
 だが、少なくとも貴方はその依頼書を棄てる事は無かった。


 ────霧に見えるそれは、正確には霧では無い。
 恐るべき高密度の冷気が噴出している事によって生じている現象なのだ。
 霧の中に呑まれた者達は対峙する事になる。
 青き海の上を氷上と変わらなく滑り行く、妖艶な舞踏を魅せる女性型の結晶体。それらは体内のキューブが幾重にも連なって破砕と生成を繰り返し、何らかの動力を生み出して動いている。
 それが船の鼻先を過ぎれば氷塊に衝突する。それが船を囲んだなら海は氷海となって船を止める。
 それが船上へと上がり一戦交えれば相対する者に思わぬ重量による一撃を見舞うだろう。
 氷の悪魔は少女の様な音を放って嘲笑うかのように翻弄するだろう。

『けらけらけらけらけらけら』

 勇猛に挑みにかかろうと船から飛び降りたなら、その足を止めてはいけない。
 氷の悪魔の通り道となった氷は数秒もすれば割れてしまうのだ。華奢なフォルムだと思っても、その性質と見た目はそのまま敵の脅威度を知らしめている。
 戦えば強い。つまり、ただ単純に『厄介』なのだ。
 その数は6体。いずれも能力に差は無く、ただただ近付いて来た船を襲っては半殺しにして直ぐに別の敵を狙う。
 これを、誰かが倒さなければならなかった。

GMコメント

 ははーん、さては氷属性だな?

 以下情報。

●情報精度A
 不測の事態は起きないでしょう。

●依頼成功条件
 敵エネミーの全滅

●ロケーション&小型船等について
 今回の作戦は海上での戦闘になります。時刻・天気は日中曇り。
 大渦へ近付けば向こうから高速接近して来る為、イレギュラーズ側の操舵手の反応値が45以上でなくば先手は打てないものとします。
 皆様には今回、人数分の『海中戦闘用スーツ・ナウス』の他、『大型船』を支給され。また今回に限り作戦に必要な道具等を少しだけ借りられます。(ロープ・砲弾・火薬等)
※大型船を選ばれる場合、甲板上で40m四方のフィールドで戦闘が可能です。
 海上での戦闘となる為、必要な方には水中戦闘に関する対策やスキル等、空中戦闘等に関してのプレイングで多少補正を掛けます。
 各種アイテム、『小型船』等をシナリオ中使用される場合は最大三隻までとします。

●氷の悪魔
 6体。いずれも体躯は人型で見上げる程度の大きさですが線は細く華奢に見えるでしょう。
 しかし反応の高さは勿論、厄介なのはパッシヴとして【棘】(ダメージを受けた時、相手に自分が受けた30%の確定ダメージを与える)を有している点。
 これは至近範囲での対象に及ぼされる効果・スキルですが、上手く立ち回らなければ窮地に陥る可能性もあります。

 氷の悪魔×6(【棘】……至近での物理攻撃を受けた時限定)
 ・氷塊格闘(物至単・【連】)
 ・加速氷結(神中域・【氷結】)
 ・共鳴振動(特特レ……レンジ3以内の仲間の数だけ防技補正に+)
 ・その他特殊行動(船の進路を塞ぐ等)

 以上。
 皆様の健闘を祈ります。

  • <泡渦の舞踏>揺れ動く/氷海/霧の使者Lv:4以上完了
  • GM名ちくわブレード
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月12日 22時10分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクア・サンシャイン(p3p000041)
トキシック・スパイクス
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
シグ・ローデッド(p3p000483)
『知識』の魔剣
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
ティスル ティル(p3p006151)
風纏い
リナリナ(p3p006258)
おにくにくにく
リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)
勝利の足音

リプレイ

●『沈め』
 曇天の下、海洋首都近海に面する港から何隻もの船が出航する。
 波は天候の印象に比べれば比較的穏やかだ。彼等が向かう先、空に響く唸り声の在処である大渦へ特異運命座標達が集まって行く。
 魔性の気配が色濃く溢れ出す。
 遠目に海上に広がる大渦が視えれば、或いはその周囲に漂う気配を察知した者達はどれほどか。各船、イレギュラーズ一同は臨戦態勢に入るのだった。

 ──その最中。漂い始めた空気を突き破り、全速力で突き進む大型船の姿。
 戦場に集う者達の目に止まる一隻の船は迷い無く。そして一直線に、大渦へと疾走する。
 大型船上を激しい揺れが襲う中、『トキシック・スパイクス』アクア・サンシャイン(p3p000041)による報せに応じた『特異運命座標』リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)が更に舵を切った。
「右舷、敵影! 光り輝く霧……例の悪魔よ!」
「皆さん、しっかり掴まって下さい──!」
 半ば急旋回気味に動いた大型船に合わせ、大渦の傍を彷徨っていた霧が進路を変じて。回り込もうと距離を詰めて来る。
 海上に残される薄い氷の膜が霧の尾を引くように後に残されているのを
 数十秒すれば接敵、それも恐らくはこちらから行動に出る事さえ可能だろう。
「チェネントラ周辺の魔物退治ね。これをやっておかないと本隊の横腹を食い破られる、油断できない相手だけど、絶対ここで倒しきるわ!」
 立ち処に冷気が追い風に乗って吹き付けて来る。
「敵の遊撃隊の排除……脇役だけれど、大事な役目ですわね」
「あの渦をなんとかするにも、行くまでの道を作らないとだものね……じゃあ、まずはこいつらをなんとかしないと!」
 甲板をゴロゴロと転がる鉛玉。
 それを爪先で蹴り上げて手に取った『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は、手にした”砲弾”を『エアーコンバット』ティスル ティル(p3p006151)へと放り渡す。
 左右舷側に設置された大砲へ流れる様に装填。今回に限りイレギュラーズが海洋の近海警備隊から使用を許可された固定砲台である。
 ティスルが教わった通りに照準を調整する横で、『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)は船と並走する輝く霧を見据える。
「氷の海に霧の使者、か……足場の悪さも加えて、中々に厄介だし悪趣味な相手だな。だからと言って、負けるわけには行かないが」
「リナリナ、着る苦手! キビシイ! キビシイ!」
「さてさて海の化け物だ。船を漕ぎ出して撃退する感じ、なんだっけこれ」
 ゴロゴロゴロゴロ。
「ああそうだ、遠洋漁業ってやつだ。ちょっと漁獲対象としては物騒なのが気になるけれど、まあ問題ないね」
「お尻、お尻、リナリナのおしりぃー」
 ゴロゴロゴロゴロ。
 転がり、這いつくばって豊満な肢体を窮屈なスーツに押し込んでいる『原始力』リナリナ(p3p006258)が『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)の後ろを通過する。
 船の揺れがいよいよピークに達した時、言葉にも出来ない程のあられもない姿でポーンッと甲板を転がり吹っ飛んで行ったリナリナをポテトは真顔で見送った。
「……!」
 同時に、視界の端で海上を駆ける『霧』が動き出す。
「そろそろか」
「シグは水中からの奇襲か……不味いと思ったらすぐに私達の傍に戻って来てくれ」
「なに、無理をしても求める答えは出せない。忠告感謝する」
 二手に分かれようとする霧の動きを牽制するように、リリアーヌが操る大型船が大きくカーブする。『天理の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)はその中を悠然と歩き船尾へと向かって行く。
「おおー! リナリナ勝った! スーツに勝った!」
(……彼女は先ほどから何を?)
 舵を握るリリアーヌの視界の隅でキュッポンという気の抜ける音。海中戦闘用スーツ・ナウスを纏ったリナリナが涙を流していた。
 不器用ここに極まれり、しかし戦闘開始前に着れた事は僥倖だったと言えるかもしれない。
「おー、氷のノッポ来たゾッ! 氷! 氷!」
 ザバリ、と。
 風と波と大型船の駆動音が交わる最中。距離が相当開いている筈の船上へ聞き慣れぬ水音が轟き、一同の耳に届いた。
 二度目、それも今度は緊張の混じった声が走る。
「敵影接近、10カウント……射程、間合いに入るわ! ヴァレーリヤさん!」
「ふっふーん、飛んで火にいる冬の氷と言ったところね! これでも喰らいなさい!」
「砲撃用意! 撃ぇー!」
 敵の動きを注視し続けていたサンシャインからの警笛が鳴らされた瞬間、ヴァレーリヤに続いて砲撃音が連続する。
 船上から伸びる火線は放射線を描いて、海上を疾走する濃霧の中心に着弾。次いで巻き起こる業火の爆散、氷の結晶を含んだ水柱が天高く突き立って飛沫を上げた。
「……直撃したが、耐えたか」
「接敵するよ! 後衛は下がって……あれ?」
 降り注ぐ水飛沫の向こうで再び噴出する、輝く霧が敵の生存を示していた。
 と、そこでサンシャインは不意に空を見上げて声を漏らす。

『けらけらけr……ぴぎゃああああああ!!』

 船に接敵する瞬間、フォークボール顔負けの350度カーブを描いて飛来するマンモス肉巻き砲弾が氷の悪魔の一体を粉砕。耳をつんざくような悲鳴を伴い爆散したのである。
「おー、当たった! 当たった!」
「ナイスですわ! 逃げないなら好都合。ここで確実に倒してしまいましょう!」

●──沈め。
 大型船を囲む様に接近して来た霧を前に、甲板上を駆けるサンシャインが掌を薙いで叫ぶ。
「そこ!」
 輝く霧の中心部に放たれる瘴気。直後に散布したそれは、収縮する様に濃密な猛毒の霧となって敵を取り囲む。
 罅割れ行く氷上。
 海中にもはっきり”パキリ”と鳴るそれは、氷結晶の悪魔だけが放つ足音である。
「さて……その共鳴は興味深い能力だ……『研究』させてもらうとしよう」
 誰に聴こえるとも知れない呟きを一つ。
 海上から接近して来た悪魔の内一体を海中から観察。そして海面を通過した後に生まれる氷のカーペットの硬度と厚さを測るべく、シグは浮上する。
 透視を以てして視えた事実を念頭に彼は頭上で船へと進攻する敵の姿を改めて捉えた。
「……足下にも気を配るべきであったな? 地雷ならぬ『水雷』を踏んでしまったようだぞ?」
『……!……』
 海面を覆っていた足元の氷結部が爆ぜ、炸裂した雷球が悪魔を襲う。
 閃光と伴い一帯に電流が走る。海面で乱反射し満ち溢れた電撃が上空へ微かに散ったのを船上の仲間は驚き見るだろう。
 しかし。

 ────ザバァ──ッッ!!

 シグの目の前で確かに雷球に包まれた筈の悪魔が彼を無視して、船上へと躍り出る。
 猛毒の霧に包まれようと、雷球に包まれようと、己が使命を全うする為に。
(……感電? はしてるよね、じゃあつまり。あれは船の上に居る私達を優先したって事かな)
 下がり、既に演奏を終えたリンネが目を細める。船上へ四方から飛び着いて来た悪魔達は一定の間隔で隊形にも見える位置取りを企んでいるようにも見える。
 否、それは事前の情報で示唆されていた特性によるものだと悟る。
『けらけらけらけら』
 嗤う。
 それが、その声が、互いに共鳴し合って体躯を異常に硬化させていた。
「自らの特性を理解した上でそれを維持するとは」
 僅かに開いた距離。
「だいぶ強そうな相手だけど……きっとなんとかなる! ううん、なんとかする!」
 リリアーヌを抜いてティスルが悪魔に肉薄する。
 冷気放つ体表面から聴こえて来る耳鳴りの様な音、後衛のポテト達へ行かせないとばかりに立ち塞がるティスルはその威容に息を呑む。
 踏み締める様に、言い聞かせるように、背中の翼で空気を思い切り叩いた。
「海洋の一大事なんだ。私、もう黙って見てるだけなんて嫌なんだよ……!」
 剣を抜いた彼女。無貌に等しい悪魔達の視線を読める筈も無いが、敵意が幾重か束となるのを感じる。
 だが文字通りの反射的行動結果として、氷の悪魔はティスルの後方から放たれた圧に叩かれて後退し船外へ跳躍して行く。
 ダメージ軽微と見たリリアーヌが静かに首を振る。
 前へ出て来た彼女達に降り注ぐ、ストラディバリウスの音色。次いで奏でられる凍結の衝撃波が不協和音を生み出す。
「ぁ……くぅ!」
「おー、戦いのま……寒い! 冷たい、痛い!」
 突如溢れ出した冷気の渦が左右から押し寄せ、瞬く間に甲板上を凍結させる。吹き付ける潮風を形にしたように固まる氷にサンシャインとリナリナ達が巻き込まれた。
「分かってはいたが、厄介な……!」
 躍り出て来た一体がティスルを横合いから襲う最中、ポテトから祝福の光が飛ぶ。
 向かう先は。

「どっせえーーーい!!!」
 炎纏うメイスが唸りを上げ、リナリナが抑えていた悪魔の懐へヴァレーリヤが突撃する。
 薙ぎ払われる氷塊。舞う猛火。
 小柄ながらもその武器、メイスに刻まれた聖句を体現せんとする猛攻が冷気すら相殺して粉砕したのである。
『ぴぎぃぃいいい!!』
 胸元に直撃した悪魔が悲鳴の様な声を挙げて仰け反る。
「怯んだ今なら……!」
 サンシャインの魔力が励起し、青の瞳が瞬く。
 投じられるは異能の焔である。何処からともなく突如顕現した炎は氷の悪魔を押し流す様に包み込み、消えぬ炎が冷気を完全に封じる。
 その直後に船外で巻き起こり、聳え立つ氷の剣山の中からその身に結晶飾るシグが宙空へ飛び出す。
「……如何に共鳴しようが……これを防ぐのは困難かと思うぞ?」
 彼は、船上で炎に包まれた悪魔が先の初撃を浴びた個体だと一目で見破った。
 指先から弾かれた一投。呪術の一式が悪魔の全身を包み込む。
『……っ、──!?』
 バギン、と。氷の悪魔を構成している外殻、そのフォルムを保っていた冷気が一瞬途絶えた事で全身に亀裂が走った。
 咄嗟に船外へ逃れようとしても、それを許す筈も無い。
「逃がさない!」
 抜刀するティスル。肩口を覆う霜を振り払い頭上から一気に振り下ろした剣撃が伸び、悪魔を遂に打ち砕く。
 刹那の攻防を終えたその瞬間、前衛の傷を癒すべく展開され奏でられた。ポテトとリンネからの癒しの旋律と共に、辺り一帯の氷結晶が爆砕した音が響き渡った。

●沈め──!
 散り行く氷塊の破片。
 輝く霧は要の二体を失った事で散り散りに、晴れてしまった甲板を氷の悪魔達が速やかにその場から撤退しようとする動きを見せる。
 一体、また一体と船外へ逃してしまうも。最早たかがマンモの肉如きに吹き飛ばされた人形だと思っているリナリナは狩猟本能全開で回り込み、正面から格闘戦を挑んで行く。
「おー、硬い、痛い 、近くで殴る、キビシイ!」
 凍てついた強化外骨格を奮い殴打するリナリナ。速やかに拳が霜焼けに襲われ困り顔になる。
(彼女は先ほどから何を……?)
『けらけらけらけらけらけら』
 氷塊がブロック状に連なり、パズルの様に高速変形してリナリナと打ち合う背後。リリアーヌの渾身の一打が射抜く。
 共鳴振動の範囲外となっていたのだろう。先の集中砲火に届かぬ火力でも氷の悪魔の体表に亀裂が入る。
「シグさん、無事!?」
「問題無い。戦闘に集中してくれ」
 撤退した悪魔達を追うサンシャインが船外へ身を乗り出す。
 しかし眼下には氷の残滓が取り残されているのみで、シグが船体に張り付いているのを見つける。直後、彼女の足元に振動が伝わって来る。
「……嫌がらせというわけか」
 一時舵を手放し速度が落ちていたとはいえ、大型船の質量が急ブレーキに掛けられればその衝撃は並ではない。
 流れて来た氷塊が船体を削る。船体の周囲へ視線を巡らせた其処には、悪魔達が通った軌跡の跡。
 大型船を幾重に囲むよう、シグを避けて駆け抜けた悪魔達はその能力を以てして船を氷塊にて固め。氷海と化した一帯に大型船を閉じ込めたのである。
「んー、ここからどう沈められるのか分からないけど。さっくりと始末した方がよさそうだねー」
「船外へ逃げられたのが面倒だな。やろうと思えば追撃もできるんだろうが」
 癒しの旋律が前衛のいずこかへ届く。
 甲板に取り残されていた悪魔に傷を負わされたリナリナが復帰する中、ヴァレーリヤの一撃に悪魔が砕かれる。
 未だ余力を残しているポテト達後衛を頭に入れれば、残り三体を相手取るならば既に十分な戦力に思える。
「あぁ、もう! 船体に張り付いていて、これでは砲撃も当たらないですわ!」
 だがそれは敵が初撃と同じくこちらの意図に嵌ればこそ。どういった背景があるにせよ、悪魔達の動きは完全に遊撃のそれである。船上へ出れば打たれると分かれば易々と前へ出たりはしないだろう。
 サンシャイン、ヴァレーリヤがタイミングを見極めて船外を回る悪魔に遠距離攻撃を浴びせるも、その効果は仕留めるには遠い。
 加えて。船体を時折揺らす振動が悪魔達の攻撃による物ならば、いずれ彼等は一様に水中での応戦を余儀なくされるのは明白であった。
「おー、揺れてる、船グラグラ! リナリナ止めて来る! 近付かないで殴る! 答えカンタン!」
「……は?」
 不意にどっぼーんと鳴った音に誰かが振り向く。
 海中へリナリナが飛び込み、眼下を通り過ぎようとした悪魔達の間に割り込んだのだ。
 ビクン、と反応する女性型の悪魔は不意の出来事に素直に驚いたようにも見えた。
「るら~っ!」
『……ッ!!?』
 氷塊に躍り出た少女の背に阻まれ動きを止める悪魔。
 その一方で、彼女が振り抜いて空を切った拳の延長線上にいた悪魔が、壮絶な音を奏でて海中へ沈められたのである。
 当然リナリナを悪魔達は取り囲み、一斉にその氷塊を奮う──だが。
 好機。
「……さて、力を封じさせてもらおう。共鳴をも止められるかも、興味あるのでな?」
 シグの瞳が妖光を放つ。
 凍り付いた海面に映し出される無数の紅き紋様が眼となり、魔法陣が展開される。

『────』
「……ほう? これは面白い成果が見れた」

 海中から飛び出し、氷塊を振り上げていた悪魔がその動きを完全に停止する。体内で忙しなく変形していたキューブが沈黙したのを、シグは確かに確認する。
「無茶をしては駄目ですよリナリナさん!」
「行きますわよ! 頭上にご注意下さいませーー!!」
 降り注ぐ稲妻と業火の濁流。翼を広げ降下するティスルが放った迅雷と烈風の一撃が氷塊の人形を抉り穿ち、次いで渦巻く火炎が凄まじい熱気を伴って悪魔諸共大量の海水を撒き上げたのだ。
 最早海中へ完全に没した悪魔の姿は見えず。辺り一帯に蒸気が漂う。
 それまで響いていた悪魔達の共鳴振動の『声』も、既に掻き消えている。
 迷いがあるのか、或いは仲間が減った事で何かの行動に支障が出ているのか。二体だけとなった氷の悪魔は海上を漂う様に揺れて静止している。
 その静けさがイレギュラーズに不穏な気配を悟らせた。
「!!」
 刹那、突如海中のリナリナ達を瞬く間に猛烈な冷気が襲い包み込む。間を抜けて船体を駆け上る冷気が風を切る。
 咄嗟に反応したのは、リリアーヌだった。
「仕方ない……避けたい手だったのですがね」
『────!』
 凍てつく息吹が、甲板を走る氷結領域がポテト達後衛にまで届く。だがしかし、悪魔の懐へ踏み込んだ拳が、リリアーヌの眼光がキューブを捉えていた。
 数瞬の空白。音速を越えた強打が齎す爆砕の花が結晶を散らし、交わる様に噴き出す鮮血が花を彩る。
 炸裂音が轟いた直後、破砕した悪魔の一部が白く染まりつつあった甲板に散った。
「下がってリリアーヌさん!」
「私の事は構いませんッ」
「……! 分かった、なら全力で行くわ!」
 一言交わしてから応じるが早いか否か、悪魔の背中を取ったサンシャインが式符を投じる。
 飛来する最中に数多の毒蛇へと変じたそれは氷塊の悪魔へと絡み付き。抵抗する間もなく、バギリと鳴った毒牙の一撃を起点に全身を亀裂が走って行く。
 そして、遂に。
『ぴ……ぎゃああああああ!!』
 氷塊の悪魔がその身を散らした結晶がリリアーヌ達に降り注ぐ。霧散する氷の破片は風に流され、消えて行った。
「無茶をする……でも助かった、ありがとう」
 リンネとポテトから癒しの光が伸び、血に染まったリリアーヌの腕を包む。

 船外で響き渡る轟音。ヴァレーリヤの掛け声。閃光が瞬いた後に破砕音が鳴り響く。
 暫しの間の後、息を切らして濡れ鼠となったヴァレーリヤ達がシグと共に船に上がって来て告げる。
「検証終了……こちらも終わった」


 凍結された大型船の甲板上から水平線の彼方を見渡す。
 未だ大渦が静まることは無く、救助に来る気配も無い現状では何を思う事も出来ないが。ティスルは海の底で戦う仲間達の無事を祈りながら一息を着いた。

「まだ当面は動きそうにないですわねー、私やサンシャインが氷を溶かすのも考えましたけど……それでは船体に負荷を掛けてしまうらしくて手が出せないですの」
「仕方ないね。暫くは休みながら待つしか無いのかな」
「スクリューの凍結さえ治れば船を動かす事も出来るのですが、そちらは未だ暫くかかりそうですので。それがいいかと」

 ポテト達に怪我を診て貰うリナリナ達を見やりながら、リリアーヌはティスル達と並んで海を眺めている。
 この一連の事件が終われば、また違う機会に美しい海も見れるだろう。
 誰が何を言ったわけでもなく。彼女達は静かに頷くのだった。

成否

成功

MVP

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵

状態異常

なし

あとがき

返却が遅くなりご迷惑をお掛けして申し訳御座いません。

依頼は成功、皆様の連携により無事に敵の掃討を完了しました。
全体的にそれぞれがバランス良く戦えていたと判定しています。幾度と味方の傷を癒し、声をかけて前線維持に尽力していた貴女にMVPを

ご参加ありがとうございました。

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