シナリオ詳細
享楽に浸る残忍な魔女
オープニング
●妖艶なれど冷酷な
ある日の夜更け。
とある町の酒場へと現れたのは、黒い革製のブラに紐のようなハイレグのパンツという艶めかしい風貌をした銀髪、幻想種と思われる女性だった。
その色黒の女性は、2人の可愛らしい少女を連れていた。
「ライラさん、カウンター行きましょう」
「ああん、ライラ様。素敵……」
ライラと呼ばれた女性は連れの娘達の頬を軽く撫で、酒をオーダーする。
そこへ、むさ苦しい男2人が彼女達の背後から近づいてくる。
「ねーちゃんよ、俺らと一緒に飲まねぇか?」
「なぁ、楽しくやろうぜぇ」
1人は小太りの中年。もう1人は髭もじゃ屈強なワイルド系だ。
だが、彼らはライラのお眼鏡には叶わなかったらしい。
「……不幸になりな」
鋭い視線で睨みつけたライラは素早く手にするメイスで殴打した後、魔力弾を放出して完膚なきまでに男達を叩き潰した。
「「きゃあああっ、ライラ様ぁぁっ!」」
その姿に、娘達が黄色い声を上げる。
倒した男には気を払うことすらせず、髪をかき上げたライラはウェイターの若者へと視線を向けて。
「あなたいいわね。私の好みよ」
どうやら、アルバイトをしている剣士らしいが、まだ童顔で可愛らしい。
ライラの瞳に見つめられた少年は目から光が消え、こくりと頷く。
酒場の主人も何も言わない。すでに少年同様にまどろむような視線を向けて。
「さ、飲みましょ。人生楽しまなきゃ損よ」
ライラは連れを1人加え、自分好みの客らと共に楽しげに酒場で飲み食いし始めるのだった。
●噂の女性の確認を
魔種(デモニア)。
純種が反転、変化した存在で、大いなる狂気を秘める。
彼らは、原罪の呼び声(クリミナル・オファー)によって、さらに純種へと狂気を伝播させる能力を持つ。それは、この世界を大きく歪めることにも繋がってしまう。
また、堕落してしまった純種が魔種となり果てると、その力は純種をはるかに凌駕する危険な存在だ。
少なくとも、イレギュラーズにとって許容できない相手であることは間違いなく、ローレットも率先して討伐依頼を出している状況だ。
幻想のローレット。
数人のイレギュラーズが集まって会話をしていたのだが、『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)がこんな風の噂を耳にしたという。
「私の恩師とも言える人が生きていた……かもしれないのよ」
旅人である暁蕾は記憶をなくし、この無辜なる混沌の地を歩いていた。
そんな折、彼女に手を差し伸べ、助けてくれたのがライラ・ティリスという女性だ。
「切れ長の目に白く美しい肌で、異性だけでなく同性すらも虜にしてしまうような幻想種の女性だったわ」
とても明るく、世話好きな面もあり、暁蕾のことを放っておけなかったのだろう。
ライラは彼女へと自らの占いの技術を伝え、服も自身のおさがりを与えた。
「そんなある日……、ライラは家の近くで大量の血痕を残して失踪してしまったのよ」
暁蕾はライラが何者かの襲撃を受け、命を落としてしまったのではないかと思っていた。
しかし、最近とある街に現れたという女性『ライラ』。
話を聞く限り、その女性は暁蕾が知っているライラと同姓同名なだけでなく、風貌も似ているように思えたと言う。
「ただ、違う点も多いのよね……」
暁蕾が知っているライラは色白の肌を持ち、慈愛に満ちた瞳だった。
だが、街に現れた女性の肌は色黒。妖艶な瞳で相手を見つめ、時に残忍な一面も見せるそうだ。
その女性は気に入った男女を侍らせ、店を渡り歩いている。
また、気に入らない者が寄ってきたならば、容赦なく手にするメイスで殴打し、魔術で半殺しの目に合わせてしまうらしい。
「ともあれ、本人と直接会いたいのだけれど……、もう一つ気になることがあって」
どうやら、その街には魔種の存在も確認されているようだ。
それが本当であれば、この街の人々が狂気に侵され、魔種へと落ちてしまう危険がある。早急に対処せねばならないだろう。
改めて、目的は2つ。
この街に現れた女性『ライラ』と接触、素性を確認すること。
そして、この街にいるという魔種の確認だ。
魔種がいた場合は改めて、対策を練りたいところ。相手の能力まで確認できれば、今回の成果は上々といったところだろう。
「私的なお願いとなる部分も大きいけれど……、どうかよろしくね」
暁蕾はそうして、この場のイレギュラーズ達へと同行を願うのである。
- 享楽に浸る残忍な魔女完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年01月31日 21時35分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●真相を探る為に
日が暮れた頃、イレギュラーズ達が訪れたとある街。
そこはそれなりに人が集まり、活気づく印象を抱かせる場所だ。
そこに、一行はとある調査に訪れたのだが……。
「調査で終わるとも思えない仕事だなあ」
とある魔術世界出身である悪魔憑きの女性、『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)。
体の所々が鳥のような特徴を持つ彼女は、この街に現れたというライラとの接触、あわよくば魔種の確認だと今回の目的を端的に告げる。
「暁蕾、恩師に会いたいだろうし、魔種が居るなら人々が魔種に落ちる前になんとかしなくちゃ」
自称海の男であるものの、むしろ女の子に近い見た目の『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)が気合を入れる。
「海の男は正義感が強いんだからなっ!」
なお、本人はまだ海に行ったことはないそうだが、それはさておき。
「暁蕾さんの占いは本当によく当たるんですよ」
茶髪ロングの少女、『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)が思い返す。
占いを教えてくれたのもまた、その恩師だったとのことだ。
「姉御肌の恩師ってカッコイイね」
愛称ルークこと、『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)の言葉に、シマエナガの獣種であるポーこと、『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)が相槌を打つ。
「彼女が恩師のライラさんだとしたら、一体、何があったのでしょう……」
ノースポールはちらりと、『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)の方に視線を向けた。
(死んだと諦めていたライラが生きているなら、ぜひ会いたい)
当の本人は動揺を表にはあまり出さずクールなままだが、彼女なりに思い悩んでいる様子。
「雰囲気や異なる肌の色、それに大量の血痕……魔種になってたり取り憑かれてたりしてる?」
状況から、卵丸が口に出すようにライラ本人が魔種化しているという推論はさほど想像に難くない。
「……占い師の彼女は、未来や世界に絶望を見てしまったのかも」
暁蕾もそんな予感を抱いていて。
生きていてくれたのなら嬉しいが、魔種化してしまったのなら、治す方法は……。
「魔種化からの解放が死だけだとは思いたくないけれど……」
もし、それが事実なら、治す方法も探したい。
煩悶する彼女を、周囲のメンバー達が支える。
「暁蕾は俺の仲間だ。その仲間が真相を探りたいってんなら、手を貸すしかねえだろ」
狼の獣種である『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は裏の魔種の存在を示唆し、早めに手を打つ必要性があると指摘すると、ルチアーノがその判断の為にもと一言。
「情報を掴まないと」
「まあ、無理のない程度に頑張ろうか」
ルーキスも同意すると、そばでは、『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)がなんとなく伊達眼鏡を装着する。
そばでは、ユーリエもラッキーからの赤いリボンで髪を縛り、気合を入れていた。
「暁蕾さんに危険が迫ったら、僕達が守るからね!」
そう言うルチアーノに合わせ、ノースポールも意気込む。
頼もしい仲間達と共に、暁蕾は真相究明に当たるべく、町へと踏み込む。
●ライラはいずこに
イレギュラーズ達は2班に分かれ、この広い街に出没するというライラの捜索に当たる。
こちらは、劇場を訪れるB班4人。
ルーキスはファミリアの鴉を放った上で、建物へと入っていく。彼女は超視力も働かせ、捜索対象であるライラを探す。
もし、それらしき姿が見つかれば、ルーキスはA班の方へと鴉を向かわせるつもりだ。
何せ人も多い場所。人を魅了し、あるいは暴力を振るうというライラがここにいるなら、明らかに違った人々の動きがあるはず。
卵丸も自分の目で確認し、聞き込みを行う。
ただ、それらしき人の目撃証言自体は多数あるが、この場で当人の姿は確認できない。
ユーリエは感情探知とエコーロケーションを働かせつつ、スタッフへと問う。
「今の時間帯の作品はどのようなジャンルが人気ですか」
「そうですね……」
話によれば、劇場の舞台は喜劇ものと悲劇もので人気が二分しているのだとか。
不安定な幻想の状況を忘れようと笑いたい人、一方で共感できる悲劇に感情移入したい人、大きく2つのニーズがあるのだろう。
サンディもユーリエの補助として捜索に動き、スタッフに公演時間を尋ねる。
現状、こちらに視線を送る者はいるが、警戒とまではいかない。
人々へとエネミーサーチをかけ、サンディは悪意を向けてくる者がいないか。または人助けセンサーを使い、ライラに理不尽な暴力を振るわれる者がいないか気がけつつ、彼は仲間と共に劇場を後にしていく。
こちらは、飲食店を渡り歩くA班4人。
同じく、暁蕾がファミリア―で呼び出したコウモリで頭上から捜索をかけながら、市民へと聞き込みを行う。
「少々抵抗はあるが、しゃ~ねえよな」
暁蕾が着ている服はライラのお下がりだという話だ。
それもあって、ジェイクは彼女が着ている服、道具の匂いを嗅がせてもらい、超嗅覚を働かせて飲食店を片っ端から回っていく。
街に魔種が潜むという危険もある。
ギフトの夜目を働かせるルチアーノは、路地裏、屋根を飛行して伝い、街路を見回していた。
「この辺で、銀髪で色黒の美しい幻想種の女性を見ませんでしたか?」
訪れる店で、ノースポールはライラ様と仲良くなりたいと主張しつつ人々に聞き込みを行う。
内心では、命の恩人であり、大ファンの騎士様を思い浮かべることで、ノースポールは尊敬、緊張の気持ちを込めて熱弁を振るう。
すると、飲食店アルバイトの女性が思いっきり共感を抱いて近寄ってくる。
しばし、その素晴らしさを延々語る女性の話を何とか遮り、メンバー達はこの場を後にしていく。
「次は酒場ですね」
いつも現れる酒場の情報を得たことで、暁蕾は同班メンバーとそちらに向かう。
再び、B班メンバー。
この街にライラが留まっているなら、最終的に立ち寄る可能性が高い場所だ。
ユーリエは先ほどと同じく、この場の人々の恍惚、憧れといった感情を探知し、受付の男性に尋ねる。
「銀髪、幻想種で肌が黒い大人な女性が泊まりにきませんでしたか」
「ああ、それなら、酒場に行く方が早いんじゃないかな」
受付の青年がその姿を思い出してうっとりしながら答えると、ルーキスも変に怪しまれぬよう綺麗な人だよねと調子を合わせる。
「んー……」
その時、消灯時間と空き部屋の有無を確認していたサンディがエネミーサーチで、こちらへと悪意を向けてくる存在に気づく。
「すでに、虜になっている人がついてきているようですね」
それを、卵丸も察する。
相手もどうやら、イレギュラーズ達の動きに気づいたのだろう。
ともあれ、この場をやり過ごそうと、卵丸が人心掌握術を使い、人々の気持ちを汲み取っていく。
「綺麗な人がいるっていうなら、一目見てみたいよね」
カリスマを働かせ、卵丸はこの場の人々をやり過ごし、仲間と宿を離れる。
とりあえず、荒事にならずにはすんだが、早いところライラ本人を発見したいところ。
「どうやら、向こうが見つけたようだな」
人助けセンサーで何か感知したサンディ。
ルーキスの手に、暁蕾が放ったコウモリが降り立ってきたこともあり、この場のメンバーは別班との合流を急ぐことにした。
●ライラ・ティリスという女性
少しだけ時間を遡り、A班が酒場へと向かう
ここでも、暁蕾が聞き込みを行い、客へとライラのことを尋ねて回る。
「いい女はいねえか? 特に色黒で色っぽい、銀髪の幻想種とか俺の好みなんだがな」
酒を嗜む振りをしつつ、ジェイクは店の主人へと聞き込みを行う。
ここで見つからなければ、メンバー達は公衆浴場へと向かうことにしていた。
湯に浸かりながら裸の付き合い。それも悪くはないだろう。
ただ、状況は逆に緊迫してくる。
屋根の上を飛んでいたはずのルチアーノがこの場へと姿を現す。どうやら、彼は何かを発見したようだ。
「私、彼女に一目惚れしてしまって! お近づきになりたくて探してるのですが、どこにいらっしゃるか知りませんか?」
ここでも、ノースポールが店の利用者へと熱弁していると、この場の人々の表情が一気に明るくなって。
「あら、私のファン? 嬉しいわね」
その時、酒場へと入ってきて近づいてきたのは、色黒の肌、銀髪、そして露出の高い服を纏う幻想種の女性だった。
「ライラ様!」
1人の女性客がうっとりとした顔で声を上げる。
本人に間違いないと判断したノースポールも近づいて。
「あのっ、私、貴女に一目惚れしてしまいまして……! 私も、ご一緒させていただけませんか?」
「全く……僕よりライラ様がいいだなんて、嫉妬しちゃうよ」
さりげなく、付き添いの立ち位置へと入るルチアーノ。
敢えて、彼が媚びずに振る舞うのは、ライラが落としにくい相手に燃える性質を持っているかもしれないと考えてのこと。
すると、窓から自らのコウモリを遠くへと放った暁蕾が近づいてくる。
(確かに、雰囲気は違うけれど……)
あの優しげな彼女とは一転。妖艶さを漂わせる仕草や振る舞いや色黒な肌など、異なる点も多い。
だが、恩師としてしばらく時を同じくした人を、暁蕾が見間違えようはずもない。
「間違いなさそうだな」
ジェイクの鼻も当たりだと告げており、同一人物に間違いなさそうだ。
(魅了の魔法さえ使わなければ、今のままでも悪くないと思うけど……)
まだ、状況がどう転ぶかはわからない。
ルチアーノは相手が暁蕾の恩師である可能性は高いと判断し、丁重に接しようと考える一方、恋人が誘惑されそうになっている状況を見て、前に出る。
妖艶な瞳でノースポール、そして、ルチアーノを見つめてくるライラ。
ノースポール、ルチアーノの2人は互いの笑顔を思い浮かべ、なんとか正気を保ってみせた。
「あら、お熱いことね」
自らの魅惑の術に落ちなかった2人に、ライラはくすりと笑う。
「ライラ、生きていてよかった」
「……暁蕾、ね」
相手はどこか違和感のある態度で、彼女に声を掛けてきた。
当然ながら、暁蕾もその変化に警戒を強める。
「ライラ……?」
「あなたが呼びかけているのは、眠っている方よ」
相手は自らの胸を軽く叩いて主張する。
どうやら、ライラは多重人格者らしい。
いくつ人格があるかは不明だが、彼女はサディスティックかつ好色な性格が非常に強く出た人格が前に出ている状態である。
「そうだ。あなたも一緒にならない? 『彼女』も喜ぶわよ?」
「残念だけど、断らせてもらうよ」
申し出を断った暁蕾はエネミースキャンで相手の素性を確認する。
すると……。彼女は眉を顰め、一歩、二歩と後退りして。
「この臭いは間違いないぜ」
確信をもって告げたジェイクも、相手との距離をはかる。
すでに、ライラは魔種へと落ちてしまっていたのだ。
「そう、残念ね……」
彼女が指を鳴らすと、この場の15人ほどが一斉に表情を変え、イレギュラーズ達を囲む。
「ライラ様……」
「敵なす者は、倒さないと……」
外からは、これまでつけてきた手練れの者数名が酒場へと入ってくる。
すでに、ライラにたぶらかされているのか、主人も止める様子はない。
「さあ、やっておしまいなさい」
こちらは……イレギュラーズ達は、一般人に手出しなどできない。
そう確信しているからこそ、ライラは自身が惑わした人々をこちらへとけしかけてくるのである。
●この場からの脱出を
丁度、そこにB班メンバーも駆け付ける。
「新手だ!」
「ライラ様をお守りするのよ!」
惑わされた人々の声で状況を察したメンバー達は、別班メンバーを助けるべく酒場へと突入していく。
「これは、もう話をする様子ではなさそうだね……」
直接相手と話をしたい気持ちもあったが、卵丸はやむなく刃を手にして戦闘態勢へと入る。
「どうやら、演技してまで占ってもらう必要はないようですね」
とはいえ、恩師の占いにも興味を抱いていたユーリエだったが、さすがにそんな状況ではなさそうだ。
ともあれ、信念の鎧を纏い、ユーリエは赤い色のポーションを投げつけ、気を引こうとする。
ルーキスも漆黒の翼狼を呼び出し、確実に襲い来る一般人を叩く。
とはいえ、やりすぎぬようにとは彼女も配慮している。
一撃だけ与えたら、ルーキスはその一般人を仲間に託し、次なる人へと翼狼を差し向けていく。
託された形のサンディは高速回転し、小さな竜巻を生み出して近辺の人々を吹き飛ばす。
倒れ伏す人々は起き上がってこないが、気絶程度に留めてある。
「やれ、やってしまええ!!」
直接殴りかかってくる、住民達。
場合によっては、適当な食器、ナイフなどをもって襲ってくる者もいたが、ジェイクは狼爪で峰打ちして相手を倒してしまう。
「当たると痛ええぞ!」
叫ぶジェイクはさらに魔性の弾丸を発し、人々を牽制して動きを止めていたようだ。
(あの人格なら、暁蕾さんの恩師だったことなんて覚えてなんだろうな……)
別人格を出すことができればいいが、どのみち魔種へと堕ちてしまった相手。暁蕾を手にかけても後悔すらしない可能性だってあり得る。
「ふふ、隙だらけよ」
そんな中、ライラはさらにイレギュラーズ達を惑わせようと、暁蕾を含むメンバー達へと怪しげな視線を向けてきた。
生やした白雪の翼を羽ばたかせ、周囲の人々を倒していたノースポールは、仲間達が惑わされているのに気づいて。
「皆さん、目を覚ましてください……!」
彼女の呼びかけに合わせ、暁蕾も危険と判断し、とりわけライラが好みそうな見た目をした卵丸へと警告する。
「心を奪われたらいけないよ」
実際、ライラから熱視線を送られ、卵丸は茫洋としていた。
「……そうだ、町の人を撃退しないと」
暁蕾の一言で目を覚まし、彼は近場の一般人を蹴り倒して卒倒させていったのだった。
イレギュラーズと一般人の戦いであれば、前者が圧倒的に有利なのは間違いない。
「ノースポールです。ライラさん、あなたの目的は!?」
名乗り口上しながら、彼女は相手の気を引き、合わせて情報を得ようとするが、相手はなおも卵丸をたぶらかそうとする。
「う、ううっ……」
当人もそれに耐えようとしていたが、気力が尽きたのかそのまま地面へと倒れてしまった。
ライラが本気で攻勢に出る前に、なんとか一般人の囲いを突破したいところ。状況的に、情報なしで勝てるほど魔種は甘い相手ではない。
ユーリエは明らかに手練れと判断した一般人の狩人へ、赤黒い鎖を伸ばして無力化をはかる。
(このままでは……)
すでに、ジェイクも退路を探し、動いている。
光柱を放って1人を倒したジェイクは卵丸を抱え、防御態勢をとって後退する。
刹那の疑似生命を、ルーキスは人々へとけしかけて。
「目的は達したよ。ここは引こう」
人々が混乱し始めた隙を突き、彼女も無理せず仲間に撤退を促す。
「ライラ……」
生存を確認できた喜び。そして、魔種へと堕ちた哀しみ。
暁蕾は気持ちの整理が出来ぬまま、徐々に後退する仲間達の盾となる。
「本当、残念ね。あなたは『彼女』の一番のお気に入りなのに」
どうやら、人格は違っていても、記憶自体は共有しているのか、暁蕾の知っているライラの気持ちを代弁してみせた。
だが、目の前のライラはただ、相手を惑わす魔種でしかない。
見つめられたサンディは伊達眼鏡ではその視線を防げぬと悟り、外していたようだ。
そこで、サンディは再度、高速回転していく。
暴徒と化した人々を張り倒して、彼は仲間と共に酒場から脱出していく。
「これ以上、暁蕾さんを傷つけるようなら、本当に殺すよ?」
「ふふ、やれるものなら、やってごらんなさい」
ルチアーノは相手に威嚇し、手にする短刀を拳銃へと変化させて発射する。
すると、相手はメイスでそれを受け止め、さらに魔力弾を発してきた。
魔術師としての力を持つのは間違いないが、さすがにこちらが撤退へと転じていることもあり、手の内は明かさぬようだ。
「皆で逃げるよ!」
ルチアーノの言葉に、他メンバーの撤退を優先させようとルーキス、ユーリエが盾となる。
一般人もほとんど残っていない状況もあり、ライラも追撃してくる様子はない。
「ふふ、またいらっしゃい。でないと……」
背を向けた暁蕾へ、ライラは告げる。
「この街、どうなっても知らないわよ?」
その一言を聞き届けてから、彼女は酒場を後にする。
そして、ルーキス、ユーリエ両名もまた外へと飛び出したところで、この場で襲ってきていた人々が一斉に倒れこむ。
「楽しくなりそうね……」
そんな中、ライラは小さく微笑み、彼女の再来訪を心待ちにするのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ公開です。
MVPはルチアーノさんに。
ライラを最初に発見したことと、
最後に、ライラへと攻撃をさせた点での評価です。
ライラが魔種となっていたこと、
そして、彼女がこの街の住人を惑わし、
狂気へといざなっているのは間違いないことが判明しました。
ただ、彼女が魔種となった理由は不明のままです。
次はもしかしたら、それが明かされるかもしれません。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)さんの情報から、
調査依頼が出されましたので、ご確認願います。
●状況
街は1500人程度の規模。
問題の女性『ライラ』は夜になると、
飲食店や酒場、劇場、公衆浴場、宿屋などに出現し、
気に入った若い男女へと声をかけているようです。
次の施設へと向かう途中は、
複数人の男女を侍らせていることも。
どこかで本人確認をして会話するのが目的ですが、
相手もこちらがローレット、イレギュラーズとわかれば、
抵抗は必至でしょう。
====以下、プレイヤー情報です====
●敵
○人間種……人数不明
状況的に、最低でも5~6人、
多い場合は2~30人を相手にすることになります。
いずれも、狂気に惑わされた町の住民達です。
全員、魔種にはなっておりませんが、
一度倒し、正気に戻す必要があります。
中には近場で狩りを行う者、
魔導の研究を行う者などもおり、
一筋縄で行かぬ者もいます。
○ライラ・ティリス
暁蕾さんの恩師とも言える方です。
ただ、彼女の話す人となりと今回現れる相手は、
かなり性格の乖離が見られます。
また、肌の色が異なる点も大きく違うようです。
●状況
街のどこに、
狂気に惑わされた住民がいるかわかりません。
状況によっては、
かなりの数の住民に取り囲まれることとなりますので、
注意して接触する必要があるでしょう。
====ここまで、プレイヤー情報です====
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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