シナリオ詳細
ジプシーソング&ダンス
オープニング
●『カーム』とジプシー
半拍子で手を打ち鳴らす。
弦楽器と小太鼓の音に合わせ、褐色の肌を大胆に晒した女が高らかに歌声をあげていた。
箱馬車の御者もリズムに合わせて肩をゆらし、乗り合わせた女たちは手拍子を強めていく。
ここはラサの砂漠からずっと西。
大きな橋や森を抜けた、砂地の多い街道だ。
今日は、彼女たちの話をしよう。
ある市場で踊りを披露する褐色の女がいた。
カード占いを請け負う老婆がいた。
古くから伝わる民族音楽や色鮮やかな衣に包まれた彼女たちを、ひとはジプシーと呼んでいる。
「私の家? 第二の家はあの箱馬車よ。そばにテントを立てて、火をたいて、歌って踊って暮らしているの」
酒場に現われて沢山のチップを稼いだ女シルシュは、そんなジプシーの一団で暮らしているという。
「第一の家はどこかって? 第一の家は、ココにあるの」
トン、と自分の胸に指をつくシルシュ。褐色の、そして艶めいた肌だ。幼さはとうに喪った、しかし若くて逞しい肉体だ。
シルシュのさした場所を、彼女たちの民族は『カーム』と呼んだ。
心のありか、自らの原点、魂の故郷、死して帰るべき場所、基軸、誇り……そんな意味をもつ言葉だ。
彼女たちは特定の家を持たず、誇りを胸に生きていた。
「けど、第二の家を維持するにもオカネがいるのよね」
胸に当てた手をすぐにマネーサインに帰るシルシュ。
なんだかげんなりとした顔で、テーブルに指でぐるぐるを描いた。
「今度、幻想の町でお祭りが開かれるっていうでしょう? 私たち、そこに参加して一稼ぎしたいの。歌って踊って占いをして、華やかにね? けど……」
●箱馬車の護衛
「あら、いいところで会ったわね。あなたに依頼を紹介したいと思っていたのよ。
気に入るかどうかはわからないけど……きっと、あなたならこなせると思うわ」
場面はギルド・ローレット。『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はテーブルにつくなり、あなたにそんな話を持ちかけた。
香りのよい紅茶とチョコチップスコーン。
指先でぱきりとスコーンをちぎって、プルーは依頼について話し始めた。
「依頼内容は箱馬車の護衛よ。
より正確に言うなら、箱馬車で幻想地域へ移動中のジプシーたちを無事に送り届けること」
箱馬車というのは屋根とドアのついた馬車だ。ジプシーたちの使うものは特に大型で、最低限の居住環境を備えている。
今回はこれに荷馬車(最低限の屋根がついた移動するためだけの馬車)で動向し、幻想地域のバルツァーレク領まで護衛するのだ。
「護衛がギルドに依頼されるだけあって、勿論キケンはつきものよ。出せる限りの情報を出すわね」
キケンは大きく分けて二つある。
第一には、幻想地域にかかる橋を塞ぐ傭兵グループだ。
彼らは橋を通行する集団を適当に見繕っては自分たちを護衛につけるように要求し、多額の護衛料金をむしり取るという。
断わればずっと進行を妨害されるという意地悪さだ。
多少のお金を渡して通してもらうこともできるが、この場面で助けてくれると嬉しい……ということらしい。
第二に、バルツァーレク領までの街道に張っている盗賊たちだ。
日中に通過するので闇に紛れて襲われる心配はないが、武力でくるなら武力で追い払うしかない。
ジプシーたちはどうしてもという場合は殺しもやむなしと考えているが、『カームが遠ざかる』という理由から殺人や略奪といった行為に好意的ではないらしい。
これらのキケンをしのぎ、目的のバルツァーレク領まで入れば依頼は完遂だ。
ジプシーたちは街で開かれるお祭りに加わるそうなので、もし興味があれば楽しんでみてもいいだろう。
「ガブリエル・ロウ・バルツァーレクの納める領土は芸術家が保護され、お祭りになるととても華やかになるわ。
けれどその華やかさを作っているのは芸術よ。歌をうたう人、楽器を奏でる人、色鮮やかな服で踊る人。
そんな人々を守ることは、華やかな世界そのものを守ることと言っても、過言じゃないかもしれないわね」
- ジプシーソング&ダンス完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年02月14日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●1本のマッチ棒を金貨二枚で売るには?
砂地をことことと進む蹄と車輪。
馬車の御者席に腰掛けた赤いずきんの女――『夢見る幻想』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は開いていた本のページを白い指でなぞった。
馬の声にせかされるように顔を上げ、追って本を閉じる。
「まあ、もうついたのですね」
ドラマは馬車をおりると、馬を撫でてその場に止めた。
向かいにはジプシーたちの大きな箱馬車がとまっている。
どこか華やかで、古く趣のある馬車だ。
「こんにちは。それが皆さんの馬車ですか? 変わった馬車に乗っているのですね」
「……あなたもね?」
褐色のジプシー『シルシュ』は首を傾げてドラマの馬車を見やった。沢山の本が積み重なり、馬車というより動く本棚のようだ。
それでも乗るスペースは残っていたようで、『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)がぴょんと荷台から飛び降りた。
チャロロが長い銀髪をふるふると振ると、端正った顔立ちが露わになる。
「へえ、あれがジプシーか。興味深いね」
「同感――でございますわね」
馬車の下からニュッと出てくる『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)。
「うわあ! どこから出てくるんだよ!」
「下からですわ」
「そういうこと聞いてるんじゃないよ!」
「初見でインパクトを残すと顔と名前を覚えられやすいからですわ」
「そういうこと聞いてるんじゃないよ!!」
エリザベスが長い銀髪をふるふると振ると、整った顔立ちが露わになる。
「カーム……人の価値観は多種多様。興味深いですわね」
「あっ、話戻した」
「私も嫌いじゃ無いわよ、彼女たちの生き方」
腕組みした『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)が最初からいたかのように横に立っていた。
「歌と踊り、ジプシーとカーム。とっても独特だけど、なんだか分かるわよね」
綺麗な顔をして振り向くと。
『祈りの拳』原田・戟(p3p001994)がいた。
いつもの姿勢で目をぎらりとさせ、拳を強く握りしめていた。
「振らない賽の目は出ない」
「えっ……と、そうね」
「可能性が低かろうが試みる価値はある」
「う、うん……わかるわ」
「この拳(ハラパン)を振るうべき獲物と、巡り会う時が来よう」
「ごめんね? 適当に話を合わせたのは謝るからその目で見るのやめてもらっていい?」
ドラマたちの馬車とは別に、レンタル馬車でジプシーたちの箱馬車の横につける『紅薔薇の剣賊』メテオラ・ビバーチェ・ルナライト(p3p000779)。
銀髪をかき上げ、ふるふると振った。なんだかこのモーションが小さく流行っているようだ。
「最初の難関は傭兵の押し売りだったかな?」
「やれやれ、ごろつき共が虫の様に湧いてくるとは難儀なものだ」
車から顔だけを出す『堕眠』モルフェウス・エベノス(p3p001170)。
彼女の全体からあふれる生クリームのようなとろんとした雰囲気が、どこか甘い香りにのって広がった。
一方で大きなぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)。
赤い眼鏡を片手で押し上げると、ぶつぶつと何かを唱えていた。
これから行なう交渉ごとにむけてのシミュレーションである。
メテオラがちらりと振り返った。
「もし腕ずくってハナシになった時は任せろ。まとめて相手してやるさ」
「そうならないのがイチバンなんですけどね……」
あはは、と乾いた笑いを浮かべる葵。
自分の胸をとんと叩くと、目尻をきりっとさせた。
「これでも一応商人の端くれ! ギリギリまで値段交渉してみせますよ!」
ここで見ててね、とぬいぐるみを車内(モルフェウスの隣)に座らせると、葵は馬車から飛び降りた。
向かうは戦場。
武器は商業知識。
敵は金。
葵のワンマンファイトが幕を開ける。
ラサ方面から幻想へ向かうにはいくつかのルートのひとつ。ジプシーたちが生活する大きな箱馬車が通るための橋を傭兵団が抑えていた。
護衛の押し売りが目的なのだが、雇ってはいけない地雷案件だ。もし彼らの言うまま同行させれば道中であれこれ理由をつけて賃金を引き上げ、払えなければ略奪に走る恐れがある。まずもって信頼ができない相手なのだ。
「第一、ここで助けが必要なんて言ったら私達の信頼問題ですし」
事前にジプシーたちと話し合ってみたが、『どんな形にしろ同行させるのはナシ』という結論に至った。
最初からそれを突きつけてもいいが……。
「契約交渉より値引き交渉、なんですよねえ」
葵は自分の顎をトントンと叩いて、これからの策を練った。
こちらから断わるのではなく、相手に利益にならないと分からせる作戦をとることにしたのだ。
橋の前にたむろする傭兵団。しかし見るからにゴロツキの集まりといった連中だ。
「バルツァーレク領まで行くんですけど」
彼らの前で、葵は油断なく構えた。
戦闘の構えと言っても過言では無い。商人にとって値引き交渉は命を賭けた戦いだ。
彼女の後ろにはジプシーの箱馬車と二台の馬車がとまり、チャロロやメテオラが目力を効かせている。その隣ではエリザベスが謎のポーズをとり、そのまた隣では戟がおかしなポーズをとっていた。
それらを一瞥してから、傭兵の一人がハンドシグナルで価格を提示してきた。
随分と法外な価格だ。それは最初からわかっている。
では、ジャブといこう。
「確かに護衛のいない商人方には傭兵は必要かもしれませんが、今回は我々が護衛として雇われているので基本的には必要ないですねー」
「それは分からないぞ。この先大量の盗賊が出るかも知れない。安全を金で買えるんだ。これから暫くコーヒーを我慢するだけでな。お前のために言ってるんだぞ?」
悪徳商人みたいなことを言い出す傭兵。いや、悪徳商人そのものだ。
「連れて行くとしても一人か二人ですねえ。払えるお値段もこのくらいですよ」
葵は切り込むように相場の価格を提示。
更に5割を前払いする条件を書いた紙も提示した。
「ジプシー達が売るのは歌や踊りなので、今はあまりお金になりそうなの無いんですよね」
追撃で支払い限度額も提示して、残りのカードを伏せておく。
どこまで搾り取っても損をすること。そのトライ自体が赤字になることを暗に示すのだ。
それがお互いに理解できた所で、葵は即座に切り出した。
「では、橋を通る間だけ護衛してもらって……こんなお値段でどうでしょう?」
危険な赤字と保証された黒字、どっちが欲しい?
葵は眼鏡の奥で目を光らせた。
●車輪を最初にまあるくした人間は偉大であるか
ことことと揺れる馬車。カロリーを使い切った葵は馬車でしおしおになっていたが、彼女の代わりにぬいぐるみが馬車の上に出て見張りをしていた。
竜胆はその横顔にお疲れ様と声をかけてから、交代のためにぬいぐるみを抱っこした。
「それにしても、うまく乗り切れてよかったわね」
「ああ、大人しくしていたかいがあった」
見張りに出るべく馬車を降り、同じ速度で森を先行するモルフェウスと竜胆。
「かの傭兵団。いい顔をしてございました」
馬車の上に乗る形で声をかけてくるエリザベス。
橋を通り抜ける際に竜胆が『お金儲けも良いけれど程々にする事ね』と言ってやった時、傭兵たちは返す言葉も無く苦々しい顔をしていたものだ。
「後先考えずに目先の欲に飛びつけば、大局を見失うものだ」
いつのまにか一緒に先頭を歩いていた戟が重々しく言った。
話を合わせるかどうか迷っていると……。
「時に生き延びてより多くのハラパンの機会を選ぶ判断も必要だ」
合わせなくて正解!
そうこうしていると、エリザベスがポンと手を叩いた。
「茂みの先に熱源を感知」
温度視覚で、薄暗い森の中に潜む人影を発見したのだ。
すこし時間を遡る。
休憩する葵と共に見張りを交代したメテオラは、ドラマの馬車で息をついた。
横ではチャロロがおやつをつまみながら、ジプシーとした話を語っている。
「それでさ、占いは本当にあたるのかって聞いたらおばあさんが――」
話に耳をたてていたメテオラ。しかし続きを聞くことはできなかった。なぜならエリザベスの指笛が響いたからだ。
それも……。
「『ぴ~ひょろひょろごー(ダイヤルアップ接続音)』」
「やっぱりその音はおかしいだろ。どういう音なんだよ!」
メテオラは馬車から顔を突き出した。
盗賊発見。戦闘を開始せよ。
その合図である。
馬車に積んでいた大きな剣をとり、メテオラは外へと飛び出した。
「さぁ、狩りの時間だぜ……!」
箱馬車の天井に片膝をつき、エリザベスは上唇を舐めた。
両手で銃を持ち、自分の肩を台にして身をひねるようにしてライフルを構える。
赤い目がギラリと光り、エリザベスはライフルのトリガーを引いた。
「隠れていても、無駄ですわ」
飛び出した魔術弾は空中で分裂。長いロープのように開くと、茂みに隠れていた盗賊の足に巻き付いた。
飛び出そうとした盗賊が派手に転倒する。
それで奇襲の意味をうしなったと判断したのか、隠れていた連中が一斉に姿を見せた。
端から目測で人数をかぞえるドラマ。
「随分と多いですね。装備も整っているようで……」
ドラマは馬車の御者席から立ち上がると、そばに置いていた本を手に取った。
両手でようやく抱えられるような大きな本を大胆にがばりと開く。
ドラマが大きく呼吸をすると、まるで彼女の呼吸に合わせたように光る文字が膨らみ、浮き上がり、膨れあがっていく。
彼女の馬車を奪おうと蛮刀を手に駆け寄ってくる盗賊。
ドラマはちらりと視線をやると、二本指をぴっと差し向けた。
膨らみ上がった文字が魔術となって飛び、盗賊の腕を破壊していく。
「相手は取り囲むつもりのようだ。かえって好都合だな」
モルフェウスは丁度いい位置に陣取ると、薬の入った小瓶を胸の谷間から引っ張り出した。
集中攻撃を受けづらい状況なら、大幅な回復ができるこちらが有利と考えたからだ。
「この身は既に修羅(ハラパン)に堕ちた。必要とあらばお前の命すら破壊(ハラパン)するまで」
戟が片足を上げたおかしなフォームで滑るように距離をつめ、拳が強そうな盗賊にハラパンを入れた。
思わず身体を折ったところにさらなるハラパン。
相手は破れかぶれで殴りかかるが、防御の薄くなった相手を戟はほぼ一方的に殴りつけていた。
そんな戟に『それっ』と言って薬瓶を投げつけるモルフェウス。
なかなか偉大な話だが、彼女の薬瓶一回が盗賊の攻撃3~4回分に匹敵していた。
「回復がはかどるが、おかげで手が空くな……よし」
と言ってモルフェウスは奇妙な言語で虚空に囁きかけた。虚空がまるで歪んだように変化し、魔術を形成していく。
形成された魔術は破裂した水風船のごとく放出され、盗賊へと浴びせられた。
「いい調子ね!」
一方で竜胆は腰の刀を引き抜いて盗賊の斬撃をガード。ねじり込むように相手の後ろに回り込むとさらにもう一本抜刀。背後に翳して後ろから切りつける盗賊の斬撃をガードした。
「盗賊風情何するものぞ! ってね」
竜胆はぐるりと回るように斬りつけ、切り払い、盗賊たちの間をかき分けていく。ポニーテイルが軌跡をなぞるように複雑な螺旋を描いた。
その動きに圧倒された盗賊のハンターへと一気に距離を詰めると、揃えた刀を同時に叩き付け、彼からライフルを跳ね上げた。
「味方に守って貰えなくて残念ね」
「まるでノーマークだ。悪いね、ちょっと寝ててもらうよっと!」
ずん、と顔面に拳を叩き込んで気絶させるチャロロ。
振り向くと、追いかけてきていた盗賊たちに呼びかけた。
「こい盗賊どもめ、オイラたちがこらしめてやる!」
チャロロは手をぱっと翳すと、炎で軌跡を描いた。
すると彼はまるで螺旋状の炎に包まれたかのように輝き、次の瞬間には立派な鎧姿へとチェンジしていた。
大きな剣を燃えるように赤く光らせ、盗賊たちへと斬りかかる。
馬車を奪うはずだった盗賊たちは竜胆とチャロロに引きつけられ、そうでない連中も彼らの派手な立ち回りについつい引き寄せられていた。
おかげで戦闘は馬車から離れた場所で激化することになる。
「いいぞ……」
飛んできた銃弾を剣で受けると、チャロロは豪快なスイングで盗賊たちを打ち払っていく。
防具で固めた盗賊たちも、彼の全力スイングには流石に吹き飛ばされるようだ。
「頃合いですね」
それまでハンドパペットで魔術を放っていた葵が、魔術の種類を切り替えた。
「ぬいぐるみパンチっ」
ハンドパペットで盗賊の顔をぽすんと殴ると、どういうわけか盗賊は強い衝撃を受けて膝から崩れ落ちた。
「かわい子ちゃんたちがお望みなんでな、殺さないで置いてやる!」
死にものぐるいで殴りかかってくる盗賊を蹴飛ばすと、メテオラは大きな剣を叩き付けた。
衝撃で宙に浮き、木の幹に叩き付けられる盗賊。
「おっと動くな」
メテオラは強引に詰め寄って襟首を掴むと……。
「動くと死ぬぜ」
そのまま相手の後頭部を木に叩き付けて気絶させた。
ちらりと振り返る。
すると、銃を持っていた盗賊が銃を投げ捨て、両手をあげて逃げ去った。
ここまで手酷い返り討ちにあったのだ。もう襲ってくることはないだろう。
盗賊たちをぎちぎちに縛り上げ路肩に寄せておく。
もう出てきていいぞと呼びかけると、箱馬車からジプシーたちがおそるおそる顔を出した。
「死んでるの……?」
「安心しな。寝てるだけさ」
『薔薇の名にかけてって言ったろ?』とウィンクすると、ジプシーたちがまあと妖艶に微笑んだ。
若々しい美女ばかりが微笑んでくれればいいのだが、その横で皺の深い老婆たちも顔を赤くして微笑んでいた。
「あと20年若かったらほっとかないね」
「あたしゃ今でもいけるよ」
「落ち着け。落ち着け」
『メテオラはみんなのもの』と標語みたいなことを言って両手を挙げるメテオラであった。
●オルガンを奏でたとき兵隊たちは言語を必要としなかった
カスタネットの音。
大勢の手拍子。
艶めかしくも情熱的に踊る褐色の美女。
エンドロールには相応しいくらいの、華やかな祭りの風景だ。
盗賊たちを倒したイレギュラーズたちはあのあと危険な森を抜け、平和な街道を歌いながら進んだ。
誰かが自然と古い歌を歌い始め、誰かが弦楽器を奏で、手拍子が重なり、馬車はジプシーとイレギュラーズといっぱいの歌声をのせて走った。
歌いながら祭りで賑わう町へつけると、まるでそれが演目の一部であるかのように飛び出し、ジプシーたちは踊り出したのだ。
さあいらっしゃい。手招きをするジプシーたち。
メテオラや竜胆たちが混ざって踊り始め、通りがかった町の人々も調子乗って踊った。
誰もが愉快そうに笑い、ドラマやモルフェウスや葵たちも手を叩いて笑った。
エリザベスが奇妙な声で歌い始め、チャロロがそんな様子を書きとめながら見回す。そして戟が目を血走らせたのを見て羽交い締めにした。
祭りは日が暮れても続き、ジプシーたちは踊り続ける。
彼女たちが歌や踊りをやめることなんてないのだろう。
きっとこの世界が終わるまで、ずっとずっと。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
とても愉快で、素敵で、そしてちょっぴり激しい旅路になりましたね。
次もまた、どこかの街道でお会いしましょう。
ごきげんよう!
GMコメント
ようこそおいで下さいました、プレイヤーの皆様。
こちらはジプシーの一団を守るべく傭兵団とやり合ったり、盗賊たちと戦ったり、そしてお祭りの街へと送り届ける護衛の依頼を受けるシナリオです。
交渉能力や、人に取り入ったり脅したりする能力、はたまた人を追い払う能力や戦う力……などなど。そんな技能を持った方はいらっしゃいますでしょうか?
【依頼内容】
『バルツァーレク領までの護衛』が依頼内容です。
大きく分けて
『傭兵団を切り抜ける』
『盗賊を追い払う』
の二つをクリアする必要があります。
それぞれ細かく解説していきましょう。
【傭兵団を切り抜ける】
ジプシーたちはどうやっても橋を渡る必要があるのですが、その橋を傭兵団が一時的に通せんぼしています。
お祭りの時期に合わせて商人たちが通るのを分かっているのですね。
位置的にもビミョーなところですし、幻想貴族の手もとどかないようです。ローレットの出番というわけですね。
順当に行くと、傭兵団にお金を払って通して貰うことになるでしょう。
お金を払うのはジプシーたちなのですが、できるだけ払うお金を減らしたいというのがオーダーです。
具体的な金額交渉をしたり、いっそ取り入ったり、やり方はイロイロです。
全員で口々にやろうとすると混乱しちゃうので、担当者を決めてスマートにトライするのをお勧めします。
役立つ非戦スキルは色々ありそうですが、もしすっぴんの状態でも頑張ればそれなりの成果がきっと出せるはずです。
(傭兵団はとっても数が多いうえ決して弱くないので、武力による解決はお勧めできません)
【盗賊を追い払う】
街道には盗賊が出るそうです。
情報屋プルーが時間帯やルート的に現われそうな盗賊の戦力を教えてくれています。
ただし『情報精度C』。人数や配分にズレがあるかもしれません。
・出現地点:街道の途中にある森。
・人数:5~8人
・予想戦力:全員で戦えば恐らく勝てる程度
・クラス配分:アウトロー、ハンター、グラップラー
戦闘中、ジプシーたちは箱馬車に籠もっています。
馬車を一旦止め、襲ってくる盗賊を倒すか追い払うかしてから再度出発することになります。
【お祭り】
バルツァーレク領で行なわれる二月のお祭りです。
小さなお祭りなのですが、露天が出たり大道芸人がきたりと華やかです。
ジプシーたちはここで歌や踊りを披露してチップを稼ぎます。
見物しても、なんならジプシーに混じっても構いません。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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