シナリオ詳細
きのこたけのこ宗教戦争
オープニング
●山きのこと里たけのこ
「きのこです」
「たけのこである」
「甘み成分の多さから山きのこが優れていることは明白。神もそう言っています」
「自分で立つことも出来ない劣等種を神がお認めになるとは思えない。里たけのここそが正義。きのこは不正義である」
「きのここそ正義!」
「たけのここそ正義!」
「「おのれ……!」」
教会ごとに細かく宗教観が異なるのは天義ではよくあることである。
ゆえに正義性の違いからうっかり戦争が起こることも決して少なくは無い。
だがそのたびに互いの人口を減らしていては文明崩壊急降下。当教会はこういった正義性の違いが生まれたとき、代理宗教戦争を用いて決着をつけることに決めていた。
『赤き純血』キーノ神父、『天翔る白光』ケノコル神父。
両神父は特殊なチェスピースを二本指に挟んで顔の位置まで掲げると、吠えるようにコールした。
「「コールドビショップ――ラグナロク!!!!」」
説明しよう!
コールドビショップとは魔術錬金術精霊術の混合によって作られた人工戦闘妖精である!
およそ5センチほどの小さな妖精は専用の『ウォーボード』の上でのみ行動ができ、指揮官の命令によって動作する。
このコールドビショップを用いた妖精代理戦争。それこそが、コールドビショップ・ラグナロクなのだ!
「キーノ神父。あなたの手の内は既に研究済みなのですよ。もう以前のようなチーム構成は通じません」
「フ、それは貴殿もおなじこと。だから我々は――この戦いのために新たな指揮官を揃えたのだ!」
ザンッ、と音をたてて現われた赤きマントの指揮官たち。
彼らもチェスピースを手に、コールドビショップを召喚しようとしている。
「どうやら、考えは同じだったようですね」
ザザン。白いマントをひるがえし、チェスピースを翳す指揮官たち。
そう、君たちは彼らが誰かを知っている。
彼らこそ世界の助っ人――ギルド・ローレット・イレギュラーズ!
●アツくてクールな代理戦争
時を遡ること数時間前。
「ということなのです」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は二つの依頼書をスッとテーブルへ並べた。
「天義に所属するある神父どうしが宗教観の違いから宗教代理戦争を起こすのです――」
この時点で響きがアレすぎるが、どうかもうちょっとだけ聞いて欲しい。
「山きのこ派筆頭キーノ神父と里たけのこ派筆頭ケノコル神父を中心として人工妖精コールドビショップによる代理戦争を行なうのです」
そして依頼書には、『指揮官募集』と書かれていた。
なぜこの戦いにローレット・イレギュラーズが呼び込まれたのか。
「それは、話すと長くなるのです。この教会では毎年のようにきのこ派とたけのこ派が宗教戦争を繰り広げてきたのです。
けれど幾度も同じ刃を交えるうち互いの手の内が分かってしまい、研究が進みすぎて拮抗状態が続いていたのです。
そんな状態に決着をつけるべく、互いに新たな風を入れ状況打破を試みたのです」
コールドビショップは戦いのために作られた妖精だ。
指揮官の思想にそって力を調整し、指揮官の思考にそって戦う。
そして戦闘レベルもまた同一であるため、チームの配分と戦術、そして指揮こそが勝敗を分けるといっていいだろう。
「ローレットとしてはこの依頼を両方同時に受けるつもりなのです。担当メンバーはランダム。どちらがかってもうらみっこなし、なのです!」
- きのこたけのこ宗教戦争完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年01月28日 21時50分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●せんそうはなくならない……なくならないのか……!?
ふう、やれやれ。のテンションで『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は長い前髪を振った。
「書物にあったあの戦争が、まさか混沌世界でも開かれているとは……」
はらりとさがった髪の間から、片目だけを覗かせる。
「きのここそが優れた菓子だというのに!」
「自力で立てない劣等チョコのどこがすぐれてるのです!? たけのここそが至上究極なのですよ!?」
目を血走らせ両手に火炎瓶を持って顔を近づける『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)。
「ん?」
「は?」
「やるのです?」
「やりますか?」
「まだやるな」
K1の記者会見みたいな場外乱闘が始まろうとする中で、『張子のヒャッハー』ヨシト・エイツ(p3p006813)は胸ポケットから出したサングラスを颯爽と装着した。
「まだ戦いは始まってねえんだ。おい、二人に何かいってやってくれよ」
助けを求められ、『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)はおっとりと頷いて返した。
「うん……仲良くどっちも美味しい、というのは」
「だめですね」
「共存などできないのです」
「うん……」
にっこりと笑って振り返るウィリアム。
顔というか頭上のキラキラに『これむり』って書いてあった。
「あの」
それまでじっと状況を見守っていた『夜啼赫咬猟獣』ネリー・エイト(p3p006921)が、小さく手を上げた。
「ところで、きのこもたけのこも大差ないですよね?」
「「!!!!????」」
一時期の不良漫画みたいに『!?』が乱舞した。
さて、きのこたけのこのことばかり話していると戦火が広がりそうなので別の本題を話そう。
「オーッホッホッホッ! さあ! 行きますわよマイフェアリーズ!」
『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)が椅子に座って顔の横で指を鳴らすと、バトルフィールドに並んだコールドビショップたちが中央へ波をつくるように順番にポーズした。
『きらめけ!』
『ぼくらの!』
『タント様!』
「の! 素敵な舞台の始まりですわーー!」
斜め後ろでぱちぱち拍手したりクラッカーを鳴らしたりする『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)。
「フフ、しかし……人工の妖精、ですか。むしろそちらにシンパシーを感じるのは、アンドロイドゆえ、でしょうか」
「こんども、たのしいバトルにしちゃおう!」
『ちょう人きゅーあちゃん』Q.U.U.A.(p3p001425)。ある意味では同じ人工物である彼女はその辺をすっぱり気にすること無く、タントを挟んでエリザベスと両サイドでポーズをとった。
「キノコ」
「タケノコ」
「しゅうきょうせんそう!」
言葉の意味など、もはやなんでもよいではないか。
●史上まれに見る珍戦
イカしたメンバーを紹介するぜ!
「きゅーあちゃんチーーーーーーーームッ!」
踵を揃えて膝を後ろに折り両手を広げて飛ぶというやろうと思ったら結構度胸の居るジャンプをしかけるQ.U.U.A.。
彼女が率いる妖精たちはQ.U.U.A.と酷似した衣服、エフェクト、モーションを設定し、明確な違いとして各員異なるテーマカラーをもっていた。
「あかフェアリーは、ちからもち!」
「みゃー!」
ハンマーを持ち上げる赤いQ.U.U.A.。
「あおフェアリーは、てくにかる!」
「みゃー!」
俵型の物体に乗る青いQ.U.U.A.。
「むらさきフェアリーは、りょうりじょうず!」
「みゃー!」
秒でおにぎりを握っては積んでいく紫Q.U.U.A.。
「だいだいフェアリーは、胃がじょうぶ!」
「みゃー!」
作ったおにぎりを端から秒で食べていく橙Q.U.U.A.。
「きみどりフェアリーは、めんきょもち!」
「みゃー」
コンバインに騎乗しで架空の畑をゆーっくりごうんごうんしていく黄緑Q.U.U.A.。
「テーマは……おこめ!」
全力のQ.U.U.A.フューチャリングおこめフェアリーズに、ヨシトは顔を覆った。
「俺たち……依頼を受けて全面戦争をしてるんだったよな……? 幻想と鉄帝の時みたいによ」
「で、ございますね?」
熱心に何かのメモをとっているエリザベス。
「ですが、リアクションをとるのはまだ早いかも知れませんよ」
「そ、そうだな」
一人が秋田のご当地ヒーローみたくなっていても大丈夫。四人ちゅう一人くらいこういうひとがいることだってある。
そう思っていたら。
デーッデ。デーッデ。
ウィリアムがゆっくりと会場へやってきて、無言でパプリカを手に取ったかと思うとおもむろに囓り、そして虚空を見てなんともいえない表情をした。
「僕の記憶が確かならば……このチームのテーマは料理……そして、鉄人だよ」
どうしちゃったの。キャラを家にでも置いて来ちゃったの?
とかやってるとフィールドに黄色、赤、青、白、茶色の衣装を着た溶性がせり上がるかんじで現われた。フィールド平面なのに。
「中華の妖精」
中華包丁を手に先端のふわっとしたコック帽を被りカッと目力を出す妖精。
「フレンチの妖精」
あのなんか黄色い果物みたいなのを手に長細いコック帽を被りカッと目力を出す妖精。
「和の妖精」
腕を組み青い和服とあのなんか寿司屋がよく被ってる帽子でカッてする妖精。
「イタリアンの妖精」
パスタをのばす棒を手に目力をギラッてさせる妖精。
「カレーの達人」
あのカレーのルーがよく入ってるあのなに急須の親戚みたいなやつを手にしてずっと踊ってる妖精。
ちなみにあれグレイビーボードっていうんだよ。
「これが、僕のアイアンフェアリーだ」
「…………」
再び両手で顔を覆うヨシト。
ままままだ慌てるような時間じゃ無い。
希望を託して顔を上げると、ネリーが妖精を召喚した。
「私の妖精チーム。それは味方の士気を高め、重装備を協力して運用する連携を前提としたドリームチーム……つまり」
パーラーというなんかアラビアンな笛の音と共に現われた、移動式カレー屋台であった。
「カレー部分押し始めてんじゃねえか……!」
「お待ちください。まだ一人残っています」
といって振り返れば。
「スパイスはパワーなのです」
巨大な鍋に大量の唐辛子を投入してぐるぐる混ぜて火にかける妖精たち、アンド、クーア。
揺れる小さな炎をじっと見つめていつまでも両目をかっぴらくという自分ちの娘がやってたら即電話する行為に浸っていた。どこに電話するのかって……知ってるだろ!
「全員火炎放射器と火炎瓶を標準装備しているのです。目に付く全てを燃やすのです……」
「そっかー、マトモだな」
「ヨシト様、もう常識感覚が麻痺を……?」
「ていうかやっぱりカレーじゃねえか! 米も含めて実質全員カレーライスじゃねえか!」
「ハッ、裸エプロンでスプーンをくわえる必要が……!?」
「今の若い子わかんねえよそれ! そして俺もわかんねえよ!」
かるく次元に矛盾した台詞をはきはじめるヨシトである。
「ご心配には及びませんわ!」
パッとおちる照明。カッとおりるスポットライト。
翼を広げた水鳥的なポーズをとったタントが勢いよく振り向いた。
「相手がカレーなら……こちらは、ミュージカルですわ!」
カカカッとおりるちっちゃいスポットライト。
「タント・アンはお姫様――願いを叶えるキノコを探すたびに出た無垢なる乙女ですわ!」
「みゃー」
「タント・ドゥはは山賊!」
「山賊!?」
「タント・トロワも山賊!」
「山賊が増えた!」
「そしてタント・キャトルは照明係!」
「裏方か……」
「そしてタント・サンクも照明係ですわ!」
「ほぼ裏方と山賊じゃねえか!」
「姫が主役ですのよ!?」
「八割! 八割がな……!?」
なるほど、と呟いてエリザベスと利香は腕組みをした。
「他チームの支援を目的としたワントップスタイルのチーム構成でございますね?」
「バファーを強化するためのバファーを別途用意しヒーラーで保護することでチームの戦力を終盤まで底上げし続ける作戦ですね」
「え、真面目なのか? これ置いてかれてるの俺だけか?」
「味方のチームテーマに合わせて編成したかいがありましたよ。私のチーム、それは……」
真面目な顔でふぁさっと前髪を払うと、利香はきりっとした姿勢で妖精をサモンした。
「リカ・アマミヤ吹奏楽団です!」
「ミュージカル側に合わせてんのかよ!」
立派な衣装を着込んだ妖精たちがチューバ、トロンボーン、トランペット、小太鼓とシンバル、そしてユーフォニアムで構成された小単位吹奏楽団であった。
「チューバをヘイトコントロールと耐久力に回し残るメンバーを極端に破壊力へふった一点突破型のチーム編成ですね」
「案外真面目か!」
途中からツッコミ方がわからなくなってきたヨシトである。さておき。
ゆっくりと振り返りエリザベスの方を見た。
腕を首の後ろから回して反対側の横髪を耳へかきあげるというなんかアクロバティックなポーズをとってるエリザベス。
「お、おまえもまさか」
「SMG、重火器、狙撃銃、医療キットで揃えたエリザベス・アーミーですが」
「お前はお前で真面目なのかよ!」
完全にツッコミ方を見失ったヨシトであった。
あとヨシトのチームは忍者だった。ツッコミに尺をとりすぎた。
「よーし諸君、クソったれた戦場へようこそ。私が指揮を務めるエリザベス軍曹だ。
いいかクソ共。この汗と埃にまみれた無法地帯で貴様等がする事。それは! 敵を見つけたら殺す事だ!! そこに理屈なんか存在しない! いいか。見つけたら、殺す。貴様等のピーナッツみたいな脳味噌でもできる仕事だ。分かったら行ってこい! そして必ず生きて帰れ!! 動いてる奴は敵だ! 動いてない奴は訓練された敵だ!!!」
もうこれ言いたいだけのやつ。言いたいだけのやつを一通り言ってから、ビッと敬礼する妖精たちにエリザベスも敬礼した。
「我がエリザベス・アーミーのモットーは――親切! 丁寧! 仲良しだ!」
「なんだその保険会社みてーなモットー」
「武運をいのーる!」
ホラ貝の音が、色々吹き飛ばして話を先に進めていく。
●忘れてるかもしれないけどこれは天義の依頼だよ
「双方台座の前へ」
八人は紅白それぞれの手すりの前に立ち、自分のチェスピースを翳した。
巨大なチェスボードを見下ろすような位置にあり、ボードからわき上がる妖精の光が彼らを淡く照らす。
アンパイアという審判的役割の人間が中央の台に立ち、高くフラッグを掲げた。
「これよりきのこたけのこ宗教戦争――その妖精代理代理を始める。レッツ」
「「ラグナロク!!」」
エフェクトと共にそれぞれの戦闘妖精が出現、塔を守るように初期展開を初めて行く。
中でもまっさきに敵陣への突撃をはかったのはネリー率いるカレー屋台『ねり屋』。胃袋を刺激するカレーを初期展開時に素早く味方へ配り戦意を上昇させていたという彼らは速攻で敵陣へ飛び込んでいった。
「範囲付与効果をつけたら即突撃……短期決戦向けのチームか!」
見た目の割に案外ちゃんと動くな! とヨシトは忍者装束の妖精たちを発進させた。
「まずは味方の盾になれ! 伊達にNINNJA装束を着させたわけじゃねぇぜ……!」
ネリーの屋台は積み込んだ寸胴鍋を次々に投擲。
爆発するカレーを浴びたヨシトの忍者妖精たちはきゃーと言いながら次々と消え、忍者装束だけがはらはらと落ちていく。
が、やられたわけではない。
「そう、俺の狙いは隠密行動。やられたと見せかけて回り込み塔の攻略を狙う……一発逆転のチームだぜ!」
忍者装束を捨てTAIMANINスーツを纏った妖精たちが忍者走りで塔へ回り込んでいく。
あえて負けて見せ、本来の目標を狙う。敵を打ち倒すことに執着しないその姿勢は実に強かな戦略性をもっていると言えた!
ただ!
このフィールドは!
「平面のフィールドを見下ろしてる以上すぐにバレるのでは?」
「実際味方の私たちにも丸見えですしね」
「!?」
ヨシトはエリザベスと利香を二度見し、サングラスをかけなおし、明後日の方向を向いた。
「エイツ忍軍! 作戦変更! 遊撃だ遊撃!」
ヨシトは腕をぐるぐる回した。
「ということで、総員突撃! ――でございます」
ピッと指を突きつけるエリザベス。
バランスのとれたアーミーチームがフィールド中央を突っ切っていく。
鍋と屋台で防御を固めるネリーチームだがヨシトの手裏剣援護射撃も加わりやや押され気味だ。
「カレーが、カレーの威力が足りません!」
「委細承知。――まかされたのです」
クーアが地の底から燃え上がるような声で妖精たちにコール。
妖精たちは灼熱のカプサイシンボムを抱えあろうことかエリザベスたちのチームへ突撃していった。
広がる真っ赤な粉にみきゃーと悲鳴あげる妖精たち。
「味方が弱った今こそ出番――タント歌劇団、開演ですわよ!」
両手で開くスリーピース。きらめく姫のシルエットを照らすスポットライト。存在感ときらめきがフィールドを支配する。
クーアのファイヤーチームが火炎放射器を放射。
それでもひるまない姫とそれを支える照明。
範囲付与効果は人数が多くなればなるほどその威力を増し、計算上n人分の人員が追加された状態になる。その付与元が倒せないということはそれだけの戦力増強が常に乗る。数の勝負で負けるということだ。
急に真面目に説明したのはどっかでやっとかないと機会を失う気がしたからだ!
「けれど、好きなようにはさせない……カモン、アイアンフェアリー!」
ウィリアムが指をぱちんと鳴らすとフェアリーの料理人たちが包丁を持って突撃していく。
ネリーチームが範囲付与から即突撃する短期戦タイプだったのに対しウィリアムのチームはヒーラー、バファー、アタッカーで構成されたチームとチームを接続するためのチーム。
それぞれバラバラに戦っていたネリーチームとクーアチームのバランスがとられていく。それはまさにカレーとスパイスを料理人が正しく調理するさまに似ていた。
であれば、最後に投入するべきは。
「ごはーん!」
Q.U.U.A.が両手を振り上げ大声で突撃をコール。
妖精たちはみきゃーといいながら(>▽<)顔で突撃していく。ご飯食べてばっかのチームと侮るなかれ。近接攻撃、射撃、遊撃、敵へのデバフとピンポイント破壊によって大体のチームに打ち勝てる万能の戦力。そうまさに炊いた白米そのものである。
「くっ、やべえ……こっちの戦力が削られてる。タントのチームもこのままじゃもたねえ」
ここへ来て敵のタンクチームが邪魔になってきたのだ。これを強引に突破できる破城槌のような存在が必要だ――ということを、利香は経験則で知っていた。
「さあ、突き抜けますよ――リカ・アマミヤ吹奏楽団!」
進軍の足は遅い。楽器を演奏しながら進む利香チームが戦線に到着したのはワンテンポ遅れてからだ。だが、遅れることにも理由があった。
演奏によって各自の攻撃力と、タンクの防御力をそれぞれ増強。まるでシールドマシン(トンネル掘削機)が突き進むように、強引に削り取るための下準備である。
一人で守り残る全員で打ち壊す。ある意味、利香の得意戦法だ。その中でも最も理想的な組み合わせだ。
「「交響!」」
利香楽団がタントミュージカルと合わさり凄まじい貫通力を発揮。ネリーの屋台を粉砕し、後続のQ.U.U.A.コンバインを破壊していく。
これを切っ掛けにして――しばしの激しいぶつかり合いの末、きのこたけのこ宗教戦争は『きのこ派』の勝利に終わったのだった。
「……フッ」
「フフッ……」
両代表キーノ神父とケノコル神父。
二人は顔を見合わせ、そして腹を抱えて笑い始めた。
「なんというラグナロク。こんな戦いは見たことが無いぞ」
「同感です。まさかカレー屋台とミュージカルが戦うなど。それだけではありません。我々が最適解だと思い込んでいたチーム編成に新たな風穴が空いた」
「やはり、まだ奥が深い……」
そんな様子を見て、イレギュラーズはどこかしら満足げだった。
代理代理戦争を引き受けるという依頼を、少しばかり優れた方法で達成したと、言えたのだろうから。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
天義で妖精を扱われたとか。珍しい体験をなさいましたね。
珍しいのは相手方も同じだったようで、今までに無い自由な発想と極端なビルドに驚きと感動があったと、伝え聞いております。
皆様にとっても、きっとよい経験になったことでしょう。
GMコメント
ネメシス聖ボビー教会で毎年のように行なわれるきのこたけのこ宗教戦争に助っ人指揮官として参戦します。
冒頭でいかにもやる気を出していましたがキーノ神父とケノコル神父は参戦しません。後ろで存在感を出す係です。
ルールと概要をお読みの上、レッツ――ラグナロクッ!
●チーム分け
奇数組(赤チーム)と偶数組(白チーム)に分けられます。
簡単に言うと『参加者一覧』の画面向かって左側が奇数組(赤チーム)、右側が偶数組(白チーム)です。
この4対4で戦うことになります。
●ユニット構成
『妖精代理代理戦争』は妖精が戦う儀式です。人は自分の配下に指示を出すことしか出来ません。
一人につき5人の妖精を配下とし、これを一ユニットとして扱います。
ユニットの構成は自由に選ぶことができ、『服装』や『能力傾向』を指定できます。
よって、プレイングには『こういうメンバーがいい』と書いてください。
何も書いてない場合はオーソドックスなバランス型メンバーが組まれます。
PCのオリジナル装備を真似たユニットやコスチュームを統一したユニット。なにかしらコンセプトを決めたユニットを作ってお楽しみください。
ただし素体の妖精自体はいじれないので、馬とか犬とかはできないと思います。着ぐるみで勘弁してやってください。
●戦闘フィールド
巨大なチェス盤のような平たいエリアです。
よって奇襲や罠といった特殊な戦闘方法はとれず、かなりシンプルな集団VS集団のバトルになるでしょう。
●人工妖精コールドビショップ
地面から数センチくらい浮いて飛行する妖精です。
中性的(若干女子より)の若い人間の容姿をしていて、背中にチームカラーで染めたトンボめいた羽根をつけています。
妖精たちにとって肉体は仮アバターみたいなもんなので、いくら壊れても気にしませんし、好きなように衣装や装備を変えることができます。
ダメージを受けたときにウワーとやられたような動きをしますが、あくまで人間のマネをしているだけで別に痛くはないようです。ある程度肉体が傷つくとパッとはじけて戦闘不能になります。
ちなみにこっちの言ってることは通じるけど妖精たちはとくに言語を喋りません。ミャーミャーいってる動物みたいな感覚です。
●勝利条件
・自チームの妖精が全て倒される
・全員が降参する
・相手チームの塔水晶に5人以上の妖精が侵入する
以上のうちひとつを満たせば勝利となります。
特に三つ目の塔侵入ですが、妖精たちは塔をがしがし登っていかねばならず、その間無防備になります。
よっぽど敵陣ががら空きな時、一点突破的な勝利を目指す際にご利用ください。
大体は相手を殲滅しきる形での勝敗になると思われます。
【アドリブ度(やや多め)】
チームで戦闘をこなすためちょこちょこアドリブが挟まることがあります。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。
【おまけ解説】
このシナリオの舞台はなにげにこちらの教会と同じです。
『妖精代理代理戦争』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/902
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