PandoraPartyProject

シナリオ詳細

甘い香りに誘われて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ギルド・ローレット
「今回はリエラ商会さんから荷馬車護衛の依頼なのです。リエラ商会さんは大きな商会ではないけれど、女性向けの商品を多く扱っているのですよ」
 グラオ・コローネ(バレンタインデイ)が近づいてきている。リエラ商会だけでなく、どの商人達もここぞと言わんばかりにチョコレイトを売り捌くつもりだった。
「けれど最近、ゴブリンが荷馬車を襲う事件が発生しているのです。しかも、チョコレイトを積んだ荷馬車ばかり」
 攻撃することが目的ではないようで、ゴブリンに危害を加えなかった者は無傷で済んでいる。ゴブリン達も荷馬車の中身、しかもチョコレイトのみを奪って逃げていった。
 しかし、商品が届かなければ売ることもできない。
 真っ先にローレットへ依頼を持ちかけたのがリエラ商会だった。
「皆さんにはチョコレイトの載った荷馬車の護衛をお願いしたいのです。1日かけてゆーっくり移動なのですよ」
 強い衝撃NG! と両腕でバッテンマークを作る『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 聞けば、今回荷馬車に載せているチョコレイトは薄く平べったいのだそうだ。割れて商品にならなくなったら元も子もない。
 どんな商品なのだろうかと興味も湧くが、残念ながらそれはまだ販売を始めていないそうだ。情報流出を防ぐ為、ユリーカも聞かされていないらしい。
 何にしろ、まずは商品が届けられなければ売ることはできない。
「討伐ではなく護衛、なので必ずしもゴブリンが出るとは限らないのです。けれどゴブリンが出たって皆さんならきっと楽勝なのですよ!」

GMコメント

●依頼内容
 リエラ商会の荷馬車を目的地まで護衛

●失敗条件
 荷馬車の護衛失敗
 ゴブリンにチョコレイトを盗られる

●情報確度
 A。想定外の事態は起こらない。

●概要
 町から別の町まで荷馬車が移動する、その間を護衛。
 無事に荷馬車を護衛できても、その間にチョコレイトを盗まれてしまった場合失敗となる。

●行程
 町からでると草原が続き、やがて森に入る。目的地の町手前まで森は続く。
 道は整っており、荷馬車が2台楽々通れるほどの幅がある。戦闘の場合にもこの道の中であれば足を取られることはない。

●敵
・ゴブリン
 森寄りの草原〜森の中で出没。
 小柄で子供ほどの背丈しかない。尖った耳と鷲鼻、緑色の肌。ボロ布を纏っている。
 甘い物が好きで鼻がきく。
 森に捨てられていたと思しき短剣と小さな盾を装備している。
 相手からの攻撃を盾で受け止める、くらいの知恵は働く。

 他の商会が傭兵に護衛を頼んだことがあり、積極的に戦闘を仕掛けてくるわけではなく目的はチョコレイトの略奪であったという証言がある。
 当初は12体いたが、その際に2体倒され現在は10体の群れとして確認されている。

●荷馬車
 リエラ商会から荷馬車の御者が1人出される。御者は戦闘技術を持たず、ゴブリンと遭遇した際は馬が暴れないように宥めようとする。
 荷馬車には商品の小箱が大量に積まれているが、その後ろにイレギュラーズ達も乗ることのできるスペースがある。
 1日かけてゆっくりと目的地へ進み、ゴブリン達との遭遇時にも急ぐことは出来ない。

●ご挨拶
 初めまして、或いは再びお目にかかれまして幸いです。愁と申します。
 ゴブリンを討伐するか撃退するかは依頼内容で問われていません。イレギュラーズの皆様にお任せいたします。
 チョコレイト、無事に届けてあげましょう。
 よろしくお願い致します。

  • 甘い香りに誘われてLv:1以下完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月21日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メイファース=V=マイラスティ(p3p001760)
自由過ぎる女神
アインス・リーヴェ・ホムンクルス(p3p002010)
意志ある禁忌の愛玩人形
七瀬 雪乃(p3p003329)
優美に舞いし雪華
リエッタ(p3p004132)
カレイド
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
フランチェスカ(p3p004432)
天翼
シェリル・クリスフォード(p3p004598)
特異運命座標
ライ(p3p004608)
血濡れた白い虎

リプレイ

●甘い愛を届けましょう
 のんびりと歩く散歩。もしくは景色を楽しむ旅。
 そう思わせるほどにゆったりと進む馬車は、徒歩でも引き離されることはない。ユリーカの情報によるゴブリンの出現区域に入ってからイレギュラーズ達は2つの班に分かれ、一定時間ごとに見張りと休憩を交代しながら馬車と共に進んでいた。
 そしてその旅は、今のところ順調である。
「あの花は夕方から咲きますの。それより少し前の時間に何かが争って、仲間が踏まれてしまったりしたそうですわ。ただ、最近はそういったこともないようですわね」
 蕾をつけた花の傍から戻ってきた『ちゃっかりしっかり無敵アイドル』メイファース=V=マイラスティ(p3p001760)は、見張りを担っていた仲間にそう報告した。
 出てこないに越したことはないし、この辺り一帯で見られないのなら出没する確率は低いだろう。
 メイファースの言葉を受けて、馬車の周囲を歩いていた仲間達の表情がほっとしたように少し和らぐ。
「奴ら、もっと森に近い場所で出るという事でしょうか」
 そう心配する御者に恐らくは、とメイファースは1つ頷いた。
「グラオ・クローネは年に1度の大事なイベントですものね。チョコレイトを守りぬいて、しっかりと依頼を果たさせていただきますわ」
「グラオ・クローネ……バレンタインデーのようなもの、と聞きました。であれば、チョコレイトは……その日は無くてはならないもの、ですね」
 メイファースの言葉に続いたのは『優美に舞いし雪の華』七瀬 雪乃(p3p003329)。そこへ更に言葉を重ねるのは『カレイド』リエッタ(p3p004132)だ。
「うむ。ちょこれいととやら、何やら祭事に使うと聞くな。祭りは大事。民心も安まるのじゃ」
 うむうむと小さく頷くリエッタ。その煌めく外皮は弱い日差しに照らされ、複雑な色合いに輝いている。
 雪乃も外ハネした銀髪を揺らしながら頷き、御者の方を見た。
「楽しいグラオ・クローネにするために……チョコレイト輸送の護衛。頑張ります」
 参加したイレギュラーズの内、半数が全く依頼を受けたことのない者達。雪乃もその1人だ。
 グラオ・クローネの為、そして初めての依頼ということ。その儚げな容貌に反して気合は十分と言っていいだろう。
(沢山の人の、大切な気持ちの架け橋となるチョコレイト……何が何でも届けなくっちゃ!)
 『ふわふわ』ノースポール(p3p04381)は3人の言葉を聞き意欲を燃やす。そして手元に持っていた時計へ視線を落とし、あっと声を上げた。
「そろそろ1時間ですね! 中にいる人たちに声をかけましょうか。それにお昼時ですし、休憩中にご飯を食べてしまいましょう!」
 ノースポールは持ち物からパンや飲み物を少しだけ見せ、にぱっと微笑んだ。
「腹が減っては何とやら、ですしね! 御者の方もいかがですか?」

 時は少し遡り、馬車内。
「この依頼は重要だ。何故ならこのチョコ達には沢山の愛が込められるんだからな」
 『特異運命座標』シェリル・クリスフォード(p3p004598)の言葉に、そこにいた者は揃ってチョコレイトへ視線を向けた。とはいえお昼時なので、軽食を各々取りつつ。
(お腹は減っては何とやらと言いますからね。……自分が食べたいからとかじゃないですよ? ええ、決してそのようなことはありません)
 そう心の中で『天翼』フランチェスカ(p3p004432)は理由付けをしつつ用意してきた食料を食べる。
 馬車の中はチョコレイトが積まれていることもあり、甘い匂いが外に漏れだす程満ちていた。
 しかし、匂いはそれだけではない。香水による甘い香りを漂わせているのは『意志ある禁忌の愛玩人形』アインス・リーヴェ・ホムンクルス(p3p002010)。
 アインスは携帯食料を咀嚼しつつ、積まれたチョコレイト――を入れた木箱を横目で眺める。
 木箱は頑丈に、且つ揺れた時に中のチョコレイトが割れてしまわないよう封がされている。簡単に盗まれないようにというメイファースの案だった。
(ゴブリンにも事情はあるのだろうけど、これがなかったら愛は伝えられないわね)
「グラオ・コローネに興味はありませんが、チョコレイトは好きなのです」
 心の中で呟いたアインスの隣でそう言葉を零したフランチェスカ。
 甘くて、ほろ苦い、不思議な味――それが、チョコレイト。
「そんな素敵なお菓子を奪わせる訳にはいきません、絶対にっ!」
「愛ある行動のための物資。きちんと守って、皆の愛を広めてあげないといけませんね?」
 お菓子の為と愛の為。フランチェスカとアインスの理由は違えど、目的は一緒だ。
 そこへ「とはいっても」と呟く声。
「護衛の仕事、ね……ゴブリンは命がけでもチョコが食べたいか」
 溜息をつくように言葉を吐きだしながら『血濡れた白い虎』ライ(p3p004608)は小さく肩を竦めた。
 今回護衛しているチョコレイトは商品だ。商品は売られ、買われる。こんな襲撃で奪うよりはちゃんと仕事をして、稼いだ金で食えばいいとライは思うのだ。
(……ま、そんな事言っても通じねえから野党なんてやってんのか)
 言葉を理解できるほどの知能を持っていれば違ったのかもしれないが、と馬車から見える景色に視線を移したライ。
 その隣でシェリルが拠り所とする者から貰った食料を食べつつ、その合間に口を開く。
「それだけ魅力的なものということだろう。偉そうに言ってはみたが、これが初の依頼になる。宜しくな、皆」
 ローレットには日々沢山の依頼が舞い込んでくるが、依頼に参加することのできる人数は限られている。そんな中で初めての依頼。重要だというその言葉には成功させたいという思いがにじみ出るかのようだ。
 外からノースポールの声が聞こえたのは、ちょうどこの時であった。
「1時間経ちました! 交代お願いします」
「行くか。交代の間も気を抜くなよ」
 ライがそう声をかけて馬車を降りる。
 それに続いて馬車を降りると、先に見張りをしていた班員が待っていた。ノースポールがフランチェスカに駆け寄って時計を差し出す。
「フランチェスカさん、これありがとうございました」
「どういたしまして。ここから1時間は任せてくださいね」
 時計を受け取ったフランチェスカは淡く微笑みかける。
 まだ太陽は天頂を過ぎたばかり。ゴブリン達の襲来がいつあってもいいように、こちらも可能な限り万端の姿勢でいなければならないだろう。


 初めに気がついたのはフランチェスカだった。
 上空から警戒していた彼女は、森の精霊達のざわめきに地上へ降り立つ。
 外を眺めていたノースポールは、降りてきたフランチェスカを見て目を瞬かせた。
「フランチェスカさん、まだ1時間経っていませんよ?」
「森の精霊達がざわめいています。そろそろ来ると思うのです」
 何が来るのかは、明言しなくても伝わる。
 ノースポールは1つ頷くと馬車の中に声をかけた。
「来るかもしれないです。外に出ていましょう」
 その声にカップをソーサーへ戻したのはメイファール。優雅に紅茶を飲んでいた彼女は揺れる馬車の中でもそれをこぼす事なく、落ち着いた様子であった。
「ようやくですのね。紅茶を飲みきってしまいましたわ」
 立ち上がり、馬車から出る為に後方へ向かうメイファール。雪乃もそれに続いたが、リエッタは逆に御者のいる前方へ向かった。
 御者台に顔を覗かせれば、そこにいるのは不安顔の御者。イレギュラーズ達が動きを見せたからだろう。操る者の不安に引きずられて馬達もどこか落ち着きがないようだ。
「く、来るんでしょうか」
「来るであろうな。……案ずるな、敵の目的はちょこである。命は落とさぬ」
 これまでも積極的に危害を加える行動は見られなかったと聞いている。下手に刺激をしなければ御者は無事だろう。
 それに、とリエッタは続けた。
「ちょこを守るのは余達の仕事。余たちに任せーそなたはそなたの仕事をせよー」
 リエッタの歌に御者は思わず小さな笑みを浮かべた。
「……はい。よろしくお願いします」
 御者が宥めるように馬を撫でると、馬もいくらか落ち着きを取り戻したようだった。

「来たぞ、7時の方向だ」
 木々の間を縫うように駆けてくるのは小柄な緑色の影。真っ直ぐに馬車へ向かっているようだ。
 まだ攻撃の届く距離ではない。けれど、馬車とゴブリン達の間にふわりとレースのついた裾が揺れた。
「遠距離ならば任せてくれ。私に、決定的に苦手な距離がある訳では無い」
 間に立ちはだかったシェリルはマギシュートをゴブリン達へ放つ。その攻撃は惜しくもゴブリンの持つ小さな盾に阻まれてしまったが、敵の注意をイレギュラーズ達へ向けるには十分だった。
 こちらへ向かってきたゴブリンへメイファースが遠術を放つ。当たったゴブリンは攻撃の勢いにひっくり返ったものの、起き上がると他のゴブリンよりやや遅れてこちらへ再び向かってきた。
 そこへ着物の袂を風になびかせ、雪乃が刀を抜く。
「行きます」
 短く発した雪乃は、明確にイレギュラーズ達へ敵意を向けたゴブリン達の1匹へ肉薄した。ゴブリンの振り上げた短剣を刀で受け止め、それ以上の前進を許さない。
 雪乃の横をすり抜けて向かって来た敵を足止めするのはノースポールだ。
「ここは通さないよっ!」
 フリーオフェンスで気合いを入れ、ゴブリンの前に立ちはだかる。道を阻まれて短剣を振りかざそうとした敵は、横からとんできたライの拳に盾を突き出して応戦した。
「菓子なら俺も持ってるぞ」
 挑発するように菓子を見せるライ。ゴブリンは短剣を掲げてライへ突っ込んでいく。半身を翻して避けたライは、敵の背後へ回し蹴りをくらわせた。
 蹴とばされたゴブリンはよろよろと立ち上がるが、そこへノースポールが槍を構えて突っ込んでいく。
 その鋭い突きに貫かれたゴブリンは、ゆっくりと地に伏していった。
「悪いがこっちは仕事なんだ、恨んでくれていいぜ」
 倒れた敵を一瞥したライは次の標的へと視線を移した。
「この先へは行かせませんわ」
 フランチェスカは向かってくるゴブリンへ向けて魔力を放出する。
 破壊力へと変換されたその攻撃は紙一重で避けられ、向かってきたゴブリンの攻撃をフランチェスカも躱す。両者は武器を持って睨み合った。
 そこへ。
「チョコならここにもあるよ! かかっておいでー!」
 ノースポールの声と、掲げたチョコレイト菓子にゴブリンの視線が移る。視線の外れたその隙にフランチェスカは大鎌を振り上げ、その命を刈り取った。

 多くをその香りで惹きつけているのはアインスだ。想定以上に向かって来た敵に対して組技で応戦するも、何せよ数の利はあちらにある。
 しかしアインスを支援するように、周りのゴブリンへ遠距離術式の攻撃が降り注いだ。先ほどまで前衛となっていた場所から、馬車に向かう敵を倒すべく戻って来たメイファースだ。
 次いでメイファースが放った魔弾は回避されるが、そこへコンビネーションですかさず雪乃が刀を振り下ろす。
 さらにノースポールの多段牽制により攻撃の手が薄くなったアインスを、リエッタの放った緑の光が優しく癒した。
 けれどもその中、甘い香りを放つアインスではなく本来の目的であるチョコレイトへ、ひいては馬車へ手を伸ばすゴブリンもいる。
 だが、それに気づいたシェリルが杖を向けた。
「喰うんならこいつを喰らって寝てな!!」
 ゴブリンの手が馬車に触れたその瞬間、真横からの威嚇術に敵の体が道を転がる。起き上がろうとした敵は、しかしその心半ばで再び地に沈んだ。
 その攻撃は敵を殺すことなく、どうにか気絶へと持ち込んだのである。
 しかし、その事に安心する暇はなかった。
「馬車右方からも来ておるぞ! 3匹じゃ!」
 リエッタの声に何人かがそちらを振り向く。その気配に馬車の馬が怯え、御者が必死に宥めにかかった。
 森から飛び出して来たゴブリン達は一直線に馬車の方へ――と、思いきや。
「そのチョコレイトは、数多もの愛を載せます! だから、絶対に、確実に! 届けてあげてください! 愛を広めるために!」
 狙っていた菓子より甘い物を隠し持っている、とでも思われたのか。
 今最も、甘い香りを漂わせるアインス。バニー姿の誘惑が効いたかどうかはわからないが、結果として3匹はただでさえゴブリンにたかられているアインスへ群がって行った。
 信仰蒐集による異常な程のカリスマ性。その愛を届けるための言葉と、何より敵がアインスに惹きつけられたことによるものか。宥められていた馬が平静を取り戻す。
 甘い香りの元を寄越せと言わんばかりにアインスを襲おうとする敵に菓子を見せたのはリエッタだ。
「ほれほれ、お菓子こっちにもあるぞ! これ食え!」
 そう言いながら彼女が道に投げたのは、両手いっぱいの飴玉。
 目に見える形で菓子がばら撒かれたことに目を白黒させるゴブリン達。
 そこへライが一喝を放つ。
「馬車を襲撃するなら容赦はしない! 命が惜しいならこれ以上はやめておくんだな!」
 ライの眼光とそれに、敵はびくりと体を震わせた。
 そして、ゴブリン達はようやく気付く。
 各々がチョコレイトを狙っている間に、イレギュラーズにより何匹かは戦闘不能と化していた。頭数はイレギュラーズ達よりも少ない。
 崩れないバベルの通じない知能であっても、本能的な恐怖を感じたか。あるいは不利を明確に悟ったか。
 残っていたゴブリン達は互いの視線を一瞬交錯させ、足元の飴玉を素早く拾うとイレギュラーズ達に背を向けた。

●町の明かり
 無事にゴブリンを退けたイレギュラーズ達。逃げるものを敢えて追いかけることはしなかった。
「疲れた人や怪我した人は、ゆっくり休んでくださいね?」
 ノースポールの言葉に、疲労を自覚する何人かが馬車の中へ。
 御者と馬の無事を確認すると、再び町へ向かってゆっくり動き始める。
 森の木々と自然会話を行ったシェリルは、この周辺でゴブリンを見たという情報がないことにほっと胸をなで下ろした。けれどこの先では目撃情報があるかもしれない、とすぐに気を引き締める。
 シェリルの伝えてきた言葉を聞き、雪乃はこれから進む道を見遣った。
「目的地に着くまで、油断せず……ですね」
「ええ。第2波に気をつけないとね」
 雪乃の呟きにアインスが同意の声を上げる。
 2人だけではなく、ライやメイファース達も同じ考えのようだ。
 ライは影が木の上などに潜んでいないか、と警戒を怠らない。メイファースもここで油断してはいけないと考えたのだろう、警戒を一気に緩めるようなことはしなかった。

 空の色は水色から橙色、そして藍色へ。
 イレギュラーズ達はゴブリンが再び襲来することを警戒したが、暫くしてそれがないと判断すると接敵前と同様に見張りと休憩で交代しつつ進んだ。
 相変わらず森からゴブリンを見かけた情報はなく、シエルとライが危惧していた木の上からの襲撃もない。
 馬車に備え付けられた明かりだけでなく、リエッタの持っていたカンテラもあって道はよく照らされている。
 整備された道と十分な光源。馬車は安全にその行程を進んでいった。
 やがて。
「明かりです! 町がもうすぐですよ」
 馬車の上空を飛んでいたフランチェスカが声を上げる。
「あっ本当だ! チョコレイト、売ってるところ見られるかな」
 馬車の横を歩いていたノースポールが、フランチェスカに次いで町の明かりを見つける。
(折角だから、自分が守った商品がどんなものだったのか見たいよね。1個お土産に買って帰れないかな……)
 到着後のことに思いを馳せるノースポール。
 その隣に馬車から上半身を乗り出したのはリエッタだ。
「うむ、見えてきたの! 余の菓子の代わりも、ここで買う事ができそうじゃ!」
 ゴブリンに持っていかれてしまった菓子。使わなければ皆で食べようと思っていたが、残念ながら手元にはもうない。町につけば新しく買う事が出来るだろう。

 馬車とイレギュラーズの一行は、無事町の門をくぐり抜けたのだった。

成否

成功

MVP

アインス・リーヴェ・ホムンクルス(p3p002010)
意志ある禁忌の愛玩人形

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。無事チョコレイトを届ける事ができました。
 襲撃があるまでの見張り体制や、襲撃の際の足止めと反撃で分かれていたこと、菓子で敵を引き付けるなどとても良かったと思います。
 また、御者や馬に対しての心遣いもありがとうございます。実は予想だにしていませんでした。

 その姿と香りで文字通り体を張ってチョコレイトを守った貴女に、今回のMVPを贈らせて頂きます。

 ありがとうございました。またご縁がありますように。

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