PandoraPartyProject

シナリオ詳細

アタック・ザ・ウォーマシン

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●飛行機墜落事故についての報告
 未明、幻想北東部の未開拓地に飛行物体が墜落。
 墜落による住民被害はなかったが、付近を通行していた商人が墜落した物体を発見、近隣の村に報告した。
 飛行物体はガソリンと魔法によるハイブリットな動力源をもち、鳥のように翼を広げ飛行する仕組みの半魔導飛行機械であると推測される。翼の片方は破損し、再びの飛行は不能と断定された。
 操縦者と死亡同乗していた数人の乗組員が発見されたがいずれも発見時点で既に死亡。
 医者の診断によると操縦者は墜落時の物理的ショックで死亡したとみられるが、乗組員はその時点で生存していたという。
 ではなぜ彼らが殺されたのか。
 彼らの死体からは無数の銃弾(金属製弾頭。雷管と火薬によって発射されるタイプだと推測される)が発見され、その多くは体内で開くように破裂して留まっていた。
 恐らくは殺傷力の強い弾を用いた機関銃による殺害がなされたのだろう。
 別の死体からは大きく硬いもので頭部を殴られた形跡がある。傷跡の形状から推察するに機関銃や棍棒といったものとは違い、強いて言うなら人間の何倍もある拳で殴られたかのようであった。
 また特筆すべきは現場に残された足跡だ。
 非常に大きな二足歩行の跡がついており、土へ沈む深さからそれがとても大きくて重いということがわかった。
 これらの情報から推察するに――。


「ロボ! なの! です!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はロボの構えをした。
 あの、手をU字方にしてかくかくになる構えである。
 そんなユリーカから視線を外してテーブルを見れば、『覚醒超人壱号』と名の付いた人型マシンの資料が開いてあった。
「今回はそのロボの破壊と、乗っている人たちの捕縛を幻想貴族さんから依頼されたのです」

 覚醒超人壱号。
 人間が乗り込んで使用するタイプの行動拡張ギプス……の延長型だ。
 魔法と科学を融合させたいわゆるケミカルゴーレムで、とてもメカメカしいフォルムが特徴だ。
 ポットのようなものに丸ごと入り、機械の手足を使ってパワフルな作業もラクラクというふれこみなのだが、勿論戦闘にだって利用できる。
 普通の人では持ち運べないような重機関銃と戦闘に適した頑丈な腕を備え付け、戦闘用にカスタマイズした機体をこしらえることができるのだ。
「その戦闘カスタムの機体数機がヒミツに運ばれる最中だったって報告があるのです。
 けど途中で裏切りが発生して飛行機は墜落。犯人は仲間を殺害してロボを持ち出しているとのことなのです」

 ウォーマシンの武器はなんといってもその重機関銃と腕だ。
 激しい銃撃と腕力は油断できない。
「犯人は強盗や殺人を沢山してる悪いひとたちなのです。
 そんな人たちがロボを持っていれば、きっとひどいことが起こるのです。
 そうなる前にロボをやっつけて、この人たちを捕まえてほしいのです!」

GMコメント

 ご機嫌いかがでしょうか、プレイヤーの皆様。
 混沌には練達(探求都市国家アデプト)という国があるように、ロボやそれに準ずるメカもあるようで、今回はそんな敵とのバトルです。
 メカに強い方、メカがお好きな方、鉄を殴るのが大好きなお方はいらっしゃいますか? きっと気に入りますよ。

【依頼内容】
 『ロボ(覚醒超人壱号)の破壊』『操縦者の捕縛』が依頼内容です。
 最悪操縦者が死んでしまってもOKらしいのですが、生きているほうが断然よい……というのが依頼主からのやんわりとしたオーダーでございます。
 ロボもこのまま悪用されたりすると大変なので、依頼主は破壊した機体の回収も行なうつもりのようです。

【シチュエーション】
 情報屋によって足取りはつかめているので接触は可能です。
 家屋が並ぶ廃村があり、犯人グループはそこに逃げ込んでいるとのこと。
 相手は索敵能力がそれなりにあるらしいので、色々すっとばして即戦闘がスタートすると思われます。

【エネミー】
●覚醒超人壱号 ×5体
 人間がまるごと入っているだけあってデカいロボで、身長は2~3mほどあります。
 全身が金属で覆われており頑丈でタフ。そのうえ力持ちです。
 機関銃射撃(物遠列)
 パワーハンド(物近単【麻痺】)
 ターボタックル(物中範)
 といった攻撃バリエーションがあります。
 攻撃の集中をふせぐには三列くらいにばらけると有利になるでしょう。

 現場には無人の家屋が沢山残されておりそれらをばしばし破壊しながら戦います。
 遮蔽物をうまく利用したり、身を隠して不意打ちをしたりといった作戦がたてられます。

【背景の補足】
 覚醒超人壱号は(噂によると)旅人技術と現地技術が混ざった末に生まれた半魔道機械だと言われています。
 混沌に拠点をおく大きめの犯罪組織が購入して取り寄せたところ、潜入していた何人かが結託してこれを奪取・逃走しました。
 これさえあれば盗みも殺しも思うままだと考えているようです。
 さくっと潰したい脅威ですが、位置的に幻想貴族が手を出しづらい地域なのでローレットに依頼が回ってきました。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • アタック・ザ・ウォーマシン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月12日 20時50分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

アート・パンクアシャシュ(p3p000146)
ストレンジャー
リィズ(p3p000168)
忘却の少女
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
逢魔ヶ時 狂介(p3p000539)
きぐるいドラゴン
キーリェ=V=ディアス(p3p000629)
鋼汗鉄血
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
Mika・Hakkanen(p3p001923)
白銀の死神
XIII(p3p002594)
ewige Liebe
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ

リプレイ

●be so easy
 遠くからかすかに灰と鉄の香りがする。
 長く続く足跡の先からだ。
 自身の足よりずっと大きな足跡に重ねるように立って、『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)は両手を下腹部の上に揃えた。
「人間の技術というのは素敵ですね」
 その上に、骨でできたような腕を更に揃えて重ねる。
「今回の機械も色々な可能性を感じますよ」
 ぼろぼろのマントから写真シートをぴらりと出して、目を細める『孤兎』コゼット(p3p002755)。
 砂の混じった風に白い髪が上がり、少し遅れて長い黒兎耳が僅かに揺れた。
「ロボ、硬くて、大っきくて、強そう、でも、中身が、台無し……」
 そしてどこか少女らしからぬ赤い目で、隣を見やる。
「超強力なパワードスーツと対決だってー、こわーい」
 『きぐるいドラゴン』逢魔ヶ時 狂介(p3p000539)は怖がるフリをしているようだ。表面的にも分かるほど、反応は冷めている。
 コゼットは一個飛ばしてもうひとつ隣の反応も見てみた。
 『白銀の死神』Mika・Hakkanen(p3p001923)が同じ写真シートをつまんで、冷静な顔をしていた。
 余人にはわかり得ぬことかもしれないが、鉄と火薬の兵器はMikaにとってとてもなじみ深いものだ。肌で知っていると言ってもいいかもしれないほどに。
 見た目の印象は戦車の延長。話に聞く限りは戦闘歩兵の延長。運用方法だけ聞くと戦闘機の延長のようにも思える。
 しかしなぜだか、Mikaはその造形や内容に恐怖を覚えなかった。まるっこいカプセルに手足をつけた容姿は、兵器というよりオモチャに近い印象すら受ける。
 戦闘対象の威圧を目的としていないがゆえだろうか。意図は設計者にでも聞かねば分からなそうだ。
 一方で『輝煌枝』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)と『Esper Gift』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)は無邪気な反応を示していた。
「ロボ!」
「なの!」
「「かー!」」
 ムスティスラーフはクリスマスプレゼントを受け取った子供のように、クロジンデは寒い日の朝に目覚めた子供のような顔で、同じように両手を掲げている。
「よくわからないけどかっこよさそうなのはわかるよ! 僕もあれやってみたいな、マジックパワァハンドォ!」
 マジックガントレットを装備して、手をわしわしとやるムスティスラーフ。
 その姿勢のままくるっとクロジンデに向き直った。
「あと、悪い人は『めっ!』しないとね」
「滅(め)っ」
 グーにした手を顔の高さまで上げて、ものが爆発するようなジェスチャーをするクロジンデ。
 依頼書には、なるべく搭乗者を生かしてとらえてくれたらいいなあというような回りくどい文章が書かれている。
「こんなの五体もいるのにー、なるべく生かしてなんて難しいことを言いよるなー。まー、善処するよー?」
 するよね? という顔で仲間を見る。
 『忘却の少女』リィズ(p3p000168)が可愛らしい表情でウィンクした。
「最低一人は確保ね♪」
 身体全体が柔らかい素材でできているのかというほど豊かに弾ませると、人差し指を立てる。
「まぁ、最悪の場合は死んじゃっても仕方ないかも?」
 かも? と繰り返して人差し指を別の見方に向けた。
 今にも人を殺しそうな手つきをしていた『鋼汗鉄血』キーリェ=V=ディアス(p3p000629)が、ニッと歯を見せて笑う。
「そこは誰かがやってくれよ。そうすりゃ、オレが一人二人『うっかり』中身ごとスクラップにしても問題ねぇな!」
 キーリェの暴力的な、ないしはアンバランスな性格がよく分かる台詞ではあったが、内容的には皆納得できる意見だ。
「勿論、極力生身での捕縛を心掛けますが……そこまで対応出来る余裕があるかはわかりませんので」
 『ewige Liebe』XIII(p3p002594)は表情を変えぬまま、長射程のライフルを背にかつぎなおした。
 目はまっすぐ先を見ている。
 どうやら既に目標地点を、それも攻撃対象を視覚的にとらえているようで、小声でクロジンデたちと配置場所について相談し始めていた。
 廃墟が沢山あるエリアを戦場とする以上、敵を複数の物陰から狙える位置が好ましい。
 マークやブロックを殆ど使わず、射撃組で引きつけて移動中に物陰から奇襲を仕掛ける作戦だったからだ。敵に索敵能力がそれなりにあって、こちらが奇襲に向いた能力をあまり揃えていない今、適切なチョイスだと言えるだろう。
 不安要素があるとすれば、マークをつけずに敵一体ずつへの集中攻撃をしている以上、こちらも同じように集中攻撃に晒されるということだ。
 戦闘不能者が何人か出たり、後半の戦いが長引いたりする想定しておくべきだろうか……? といった具合か。
 『ストレンジャー』アート・パンクアシャシュ(p3p000146)はそれらをひっくるめて考えた上で、口の端だけで笑った。
 皺が深く、しかし不思議と若々しい顔と目が、目標の廃村をしっかりととらえた。
 コートの襟を立て、武器に手をかける。
「そんなに愉快な結末が待っている気はしないが。せめて、少しでもマシな未来を目指して頑張るとしよう」
 締めくくるに相応しく、始めるのに相応しい、そんな言葉で、彼らは戦闘状態に突入した。

●be so crazy
「誰か近づいてるな」
 肉眼で確認できる程度の距離に人影を確認して、男たち『覚醒超人壱号』に駆け寄った。
 素早く搭乗し、システムを立ち上げる。装備した機銃をいつでも撃てるようにして、腕をぐっと広く構えた。
 はじめに撃ってきたのはムスティスラーフだ。
「僕が相手をしてやるぞ!」
 大きく叫ぶと、突きだした手から魔法の弾を発射した。空をわずかに飛んでいるせいか、反動で軽く後ろに身体が流れる。
 そうして攻城弓のように高く飛んだ弾は覚醒超人壱号たちの居る場所へと着弾。彼らは対抗すべくキャタピラのついた足で前進し、機銃射撃を始めた。
「敵は3……いや6だ! 分散する前に一斉射撃で潰せ」
「「了解」」
 五体の覚醒超人壱号が、隊列を組んで射撃を始めた。

「撃ってきた!」
 防御姿勢をとるムスティスラーフ。
「着弾した機体はあれかな? じゃあまずはあいつからだね、印つけとこ!」
 リィズは遠術の構えをとると、敵先頭機体に向けて反撃を始めた。
「あれ、何だかデジャブ? でも、リィズの思い当たるロボットはもっとおっきかったような? まぁ、いっか☆ 物騒だから全部壊しちゃお♪」
「ポイント移すよー」
 ムスティスラーフにあわせてマギシュートを撃っていたクロジンデは、十字路を右に走り出した。敵集団を引きつけるような逃げ方だ。
 ぱっと見の外観で村の形状を記憶したようで、クロジンデはまず敵の右側面に回り込むかのような動き方を始めたのだ。
「《見えざる手》のひとー、どう?」
「あと10メートルってところかなあ」
 勿論、敵を味方にとって都合のいい位置につけるためだ。

 一度、覚醒超人壱号たちの視点でものを見てみよう。
 先頭の機体が敵を追ってカーブした直後、その死角から二人の男が飛び出してきた。
 剣やハルバードを装備した二人組だ。
「危ない、後ろだ!」
 リィズたちへの射撃に集中していた先頭機体は、味方からの呼びかけに気づいたが動きまでは間に合わず、ハルバードの打撃を派手にくらってしまった。
 金属のボディがぐわんと派手な音をたて、安定性のあるボディがわずかに揺らぐ。
「今この敵にてこずってるのが今の俺達だ。諦めんだな」
 男の一人が何か言ったように聞こえたが、意味は理解できなかった。

 視点をアートたちへ移そう。
 アートは狂介の加えた初撃に乗じるようにして、覚醒超人壱号の頭部(?)に鋭く剣を叩き付けた。
 なかなかボディが硬いようで、手がしびれるような感覚が返ってくる。
 だが手応えはある。相手はただでさえ遅れた反応に加え打撃へのショックで大きく動きの正確さを欠いている。
 アートは敵機を蹴りつけると、その反動ですぐさま細い通路へと逃げ込んだ。
「ネズミが隠れていやがった! ナメやがって!」
 ぎゅん、と身体をターンしてアートを追いかけようとする先頭機体。
 腕を振り上げ、今にも人を握り殺しそうな手を広げる。そして、アートたちを追って細い通路に突っ込んでいった。
「そいつは奇襲だ。おい、深追いするな!」
 味方からの呼びかけも、もはや聞いていないようだ。

 アートたちを追いかけた機体は大きな道へと飛び出した。
 道を横切って別の小道へ飛び込む彼らを追いかけるべくスピードを上げるが、側面から射撃をうけた。
 正確には廃屋の窓から狙うMikaによる射撃だ。
 アサルトライフルを使った射撃に、覚醒超人壱号の機体表面が泡だったように激しい金属音をたてた。
 何かを庇うように腕を翳し、機銃の狙いをつける。
「くそっ、邪魔だ!」
 窓から離れて屋内へ引っ込むMika。窓枠ごと粉砕する勢いで射撃を加える覚醒超人壱号。
 すると別方向から四音が遠術による攻撃を始めた。

「廃村に隠れ潜むとはなんともらしいですね」
 覚醒超人壱号に遠術を叩き込みつつ、ポイントの移動を開始する四音。
「『らしい』とは」
「いえ、こちらの話です」
 今日の物語はどのような結末になるでしょうか? とどこか楽しげに、もしくは愛おしげに呟く四音。
 XIIIはそんな様子にあまり反応することなく、覚醒超人壱号の動きや部位を凝視していた。
 ライフルを向け、狙い澄まして引き金を引く。
 覚醒超人壱号の翳した腕が、目標箇所への着弾を阻んだ。
 それでも衝撃は殺しきれないのか、僅かに身体を揺する覚醒超人壱号。
 XIIIは目を細めるようにして『なるほど』と呟いた。

 覚醒超人壱号。それも今現在集中攻撃目標としている相手は集中力に乏しい人間であるようだ。
 攻撃をされれば逆上されたように気がそれ、反撃をしてしまう。
 それゆえ、キーリェが攻撃可能距離までこっそり近づくのはそれほど難しく無かった。
 馬小屋の壁に背を突け、覗き込むキーリェとコゼット。
 コゼットはナイフを抜くと、刃を受けやすいように整形されたナックルガードをちらりと確認した。
 これで殴っても、随分と痛そうだ。
「先に、行く」
 短く唱えると、コゼットは俊敏に飛び出した。マントを靡かせ、覚醒超人壱号の背中めがけてダッシュする。
 がら空きだ、最後は跳躍し、身体全体で殴りつけた。
 が、覚醒超人壱号はその動きを読んでいたのか察していたのか、ぎゅんと振り向いてアームを繰り出してきた。
「二度も同じ手を――」
「うるっせえ!」
 鎧を瞬時に装着していた飛び出していたキーリェが、巨大な剣でもってアームを粉砕した。
 めきめきと音を立てて崩壊する腕。
 完全にがら空きになったボディに叩き付けられるコゼットのパンチ。
 転倒した覚醒超人壱号から搭乗者が飛び出し、キーリェは『生きてやがる』と舌打ちした。
 恐怖に歪む男の顔。
 コゼットは表情を変えぬまま、彼の側頭部にハイキックを入れた。

●be so
 気絶した男が、べっこりとへこんだ覚醒超人壱号の期待にくくりつけられている。
 それを発見した四機の味方たちは警戒を密にした。
 一人を殺さずに放置したことで、彼らが敵の強さに気づいたのだ。
 彼ら(イレギュラーズたち)はやろうと思えばこちらを殺せるだけの戦力がある。
 うかつに飛び出さない。挑発に乗らない。固まって身を守る。できるだけ広い場所に出る。
 そんな動きにシフトしつつあった。
 対するイレギュラーズたちは、そんな彼らを囲んで殴る作戦へと順調にシフトした。
「オラァ!」
 キーリェの拡張鎧が繰り出すパンチと覚醒超人壱号のパンチが正面から衝突し、とてつもない音と衝撃をまき散らす。
 横からタックルをぶつけられ、地面を滑るようにして民家の柵を破壊するキーリェ。
「下がって下がって! 交代!」
 リィズがむにゃむにゃっと回復魔術を詠唱してキーリェを回復すると、彼女の鎧を飛び越えるように狂介が殴りかかった。ハルバードが覚醒超人壱号の腕を粉砕する。
「さっさと終わらしてメシいこーぜ」
 覚醒超人壱号が捨て身のタックルをかけようとするが、狂介がそれを無理矢理押しとどめた。
 距離をとった別の覚醒超人壱号たちが射撃を浴びせてくるが、狂介はハルバートを翳して防御に徹する。
 と、そんな彼のすぐそばを抜けるようにライフル弾が飛んだ。
 彼の後方で身を起こすキーリェの更に後方で追加の回復詠唱を行なうリィズの更に後方。積み上げた藁に紛れるようにしていたXIIIが、射撃を行なったのだ。
 彼女はまるで歯車仕掛けの高級時計の如く正確かつ精密にトリガーをひき、きわめて正確に叩かれた銃弾が正確に弾頭を打ち出し、長い筒で回転をつけ、空中で更に分離し、推進力を得て、覚醒超人壱号に存在するとてもとても狭い弱点箇所を打ち抜いた。
 回避行動どころか装甲すら無視して内部の操縦者に着弾。
 覚醒超人壱号はがくんと力を抜き、その場で動きを停止させた。

「回復だけしてると思った? 残念!その隙を突かせてもらうよ!」
 急速に接近を受けたムスティスラーフが、手を翳して小爆発を起こす。ちいさな打ち上げ花火のごとく光が散り、覚醒超人壱号が高熱に包まれる。
 内部からぐわあという声が聞こえた。
 すかさず飛びかかったMikaが思い切り射撃を浴びせていく。
 破れかぶれになったのか覚醒超人壱号が機銃の狙いをMikaに定める。が、今は引くべきではなさそうだ。Mikaはさらなる射撃を加え、覚醒超人壱号のボディをべこべこにしていく。
 対する射撃でMikaの周囲の壁がもろとも吹き飛び、爆発したような衝撃が走る。
「そろそろ諦めな。その大層な身体で、俺の膝すら落とせていないだろう」
 それ以上は攻撃させまいとアートが飛び出し、挑発をしかけた。
 剣で正面から殴りつけるアートと、彼に掴みかかる覚醒超人壱号。
 クロジンデがすっと物陰から飛び出し、べこべこな覚醒超人壱号に強烈なマギシュートを叩き込んだ。
 まるで側頭部を打たれた人間のように、ぐらんとゆれて崩れるがごとく倒れる。
 違いはカィンという小気味よい装甲貫通音がしたことくらいだ。
 そろそろ頃合いかな、とクロジンデは手を上げる。
「受けた依頼は殺してこいじゃなく可能なら捕縛なんだよねー。武器を捨てて手を上げたら依頼主との交渉くらいはできるよー。周りに散らばってる烏合の連中とは違ってさー」
「だ、だれが……!」
 残された機体の一方が戸惑ったように動きを止めた。最初の一人が生きたまま放置されていたことでクロジンデの言葉に真実味が出ているのだ。
 もう一方は頭に血が上っているのか、銃めちゃくちゃに乱射し始めている。
「う、うるさい! どうせ殺されるんだ! 死んでたまるか!」
「このままだと死んでしまいますよ? もう止めにしませんか」
 四音は攻撃の姿勢をとったまま、相手にゆっくりと呼びかけた。
 それまでクロジンデやMikaたちの回復に集中していたので射撃にさらされづらい位置にいたのだが、ようやく姿を見せた形である。
 四音は順を追って、依頼主が生きたままの捕縛を望んでいること、今死ぬよりはマシかもしれないということを説明した。
 どういう経緯かは、外から見た限りでは分からないが、乱射していた方も動きを止め、機銃をパージした。
 機体を捨て、外に飛び出す操縦者たち。
 一人が恐怖にかられて逃げ出しそうになったが、それをコゼットが足を蹴りつける形で転倒させた。
「生かしてた方が、いいんでしょ?」
 起き上がろうとする相手をグッと踏みつけて動きを止める。
「生かして、なにするか知らない、けど……拷問、かな?」
「もう少しマシになることを祈っておくといい」
 アートがもう一人に組み付き、丁寧にしめ落とした。

「静かに、してて」
 コゼットが生き残った連中をまとめて縛り上げ、万一自殺しないようにあれやこれやの処置を施していた。
 後に依頼主が人を差し向けて彼らや機体の残骸を回収するという話だが、少なくとも深く関わる話ではないだろう。
 今受け止めるべきは、強力な兵器に搭乗した五体の敵を相手に勝利したことと、がんばりの結果として三人を生きたままとらえることに成功したという事実である。
 褒められるべき成果を残し、彼らはこの依頼を終えた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 ただ勝利するだけでなく、やんわりと出されたオーダーにも応えようとする姿勢は立派でございました。
 勿論、相手を侮ること無く殺してしまう気でぶつかる姿勢も、立派なものでございます。偏ること無く、充分な成果が出せましたね。

 それでは次の依頼まで、またのお越しをお待ちしております。

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