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シナリオ詳細

屑に然るべき制裁を

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●罪と罰
「君は憎いと思わないのか? あの小心者で傲慢な男が今や侵略者やおさがわせ道化を撃破した『英雄』と讃えられている現状を」
「……そう、ですか……あのろくでなしの男は今や英雄気取りですか」
 寒気が吹き込み、ピュウピュウ音を立てるオンボロの小屋。唯一の明かりは今にも消えそうなろうそくが2,3本。そこに二人の男が、椅子に座り、お互いの顔を眺めている。一人は幻想貴族風の仮面を付け、手にずっしりと金貨の入った袋を持った男。もう一人は……みすぼらしい、ボロボロのマントを纏った一人のカオスシードの男。
「例えそうだとしても、今の私には関係ない……ここから出ていって、二度と姿を見せないでくれますか?」
 そのカオスシードの男は頭を抑え、苛立ちを隠しきれない顔で立ち上がる。
「君は真面目だ、本心では『何が救世主だ、あんな奴、仲間ごと滅んでしまえ』……そう思っているというのに」
 そこに差し込む、仮面の男の誘惑。その傲慢ながらも甘美な声にカオスシードの男はピタリと止まる。
「その様な事を、この私が――」
「何、警戒しなくてもいい、君の評判はかねてより聞いている……その実力もだ」
 仮面の男はケラケラと笑うと、ろうそくの隣に、金貨の袋をどさりと乗せた。
「だからこそ私は協力したい……いや、君の手を借りたい。何、私の主人も前々からローレットには手を焼いていてね、君の事を聞いて直ぐに手伝いたいと私を遣わせたのだよ……ああそうだ。君の性格を考慮して言うとこの金はきれいな金だ。なんならそれなりの機関に提出してくれても良い」
 カオスシードの男はただ立ち続け、仮面の男が置いた袋を……そして一通の手紙をクマのついたその瞳で見続ける。小屋の隙間から吹き込む風はより強くなり、男のぼさぼさの前髪をふわりと動かせた。
「どうだね、ローラン君。あの男、灰達を……『正当な手段で』地獄まで追い込むというのは」
 仮面の男は、その男……ローランへ甘い言葉をささやき続けた。

「清く正しい、強い心にこそ英雄と呼ばれる価値がある……そうは思わないかい? あの男に、君は英雄と呼ばれる資格があると……おもうかい?」

●罪と揉み消し
「全く困った案件が入ったよ、ここは一つ君達に頼みたい。何、無関係ってわけでもないしね」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)が集まったイレギュラーズ達の顔を見渡し、深い溜息をつく。
「刀根はいるかい? 何? いない? まあいいさ、後で来たら教えてやるといい」
 ショウはニヒルに笑うと、イレギュラーズ達の方へと向き直り――。
「刀根がピンチだ。具体的には牢屋に数年はぶち込まれかねない危機だ」

 ざわつくローレット。どうしてあの人が。信じられない。何やったんだ?まああいつなら仕方ない。様々な声が室内のあちこちから上がっていく。
 無理もない。何の脈絡もなく、突然彼らとは無縁の施設の名前が提示されたのだから。
 彼らの『仕事』はローレットの庇護と相当なピンハネの元に、安全が保証されている。それが依頼内容に記してあることならば、最悪『殺害』であってもその後始末まで自動遂行、生還さえすれば何食わぬ顔で街角に顔を出すことだってできるのだ。
「皆の知って通り、世界の救済のために依頼主が居る限りローレットは時に『あくどい』事にだって手を出す。分かりやすい例を挙げれば『景観のための孤児院焼却』。あの依頼を知っているイレギュラーズは多いだろう?」
「だからこそ、ローレットや各国はイレギュラーズ達に最大の配慮をするという『ギルド条約』がある。何、これから話す事柄のためのほんのちょっとした復習さ」
 パーカーを整えると、ショウは話を続ける。
「でも頭のお硬い貴族の連中の一部はそれが通用しない。それもイレギュラーズが『イレギュラーズになる前』の悪行であればなおさらだ……ここだけの話、刀根という男にそれが『あった』という通報が幻想のとある憲兵達へと届いた」
 本当とは思わないけどね、聞いた時は驚いたよ。そうショウは大げさに言う。
「何とは言わないけど。もしここが天義だったら即ゲームオーバー。翌日には首が転がってる、そんな代物さ……ともかく、そんな代物を刀根はかつて使用していて。その証拠が数年の時を経て何の因果か現れたというのさ……嘘かもしれないけどね」

 通報者はローランと名乗るカオスシードの男性。数年前までは極めて優秀な騎士ながらその真面目すぎる性格故に低い地位に甘んじていたようだが、最後は同僚の汚職を咎めた事がきっかけで複数の同僚に暴行や濡れ衣を着せられ、哀れな身分へと落ちぶれてしまったのだそうだ。
「彼は幻想王都のある憲兵所へ彼の罪とその証拠がある旨を伝え……数日後の夜、それが入った鞄を手にその憲兵所へと持参するらしい……ひと目のつかない場所を狙ってね」
 情報源は傭兵たちのギルド。その傭兵の一人によると、ある日ローラン本人が大金の入った袋を持参し、事情を全て説明した上で引き受けて欲しいと頼み込んだからだそうだ。
「その傭兵さんは不気味がって依頼を断って、代わりに俺達に情報を売ったのさ。無理もないね。ここだけの話、これはかなり怪しい。ローランの経歴を考えたら今頃浮浪者でもおかしくないはずだ。それが何故、大金を持ってあちこちの傭兵に挨拶しにいけるんだろうね?」
 ショウは椅子に座り込むと、イレギュラーズ達の方を眺め、ニヤリと微笑んだ。

「……まあ、罠にせよ事実にせよ、これはかなり重大な依頼だ。仲間を守るため、そして自分を守るため……君達には頑張ってもらわないとね」

GMコメント

●ご挨拶
 塩魔法使いです。
 この依頼は『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)様の関係者依頼となります。

●依頼条件
 1.ローランとその支援者達から『バッグ』を奪い取る。
 2.ローランとその支援者を撃破(撤退or殺害)する。
 イレギュラーズ達には人気のない裏路地を通過するローラン達を食い止め、彼らが通過することを阻止してもらいます。
 それが不可能だとしても、彼らから『証拠品』のバッグを奪う事だけは絶対に行ってください。

●エネミー
 判明している情報、及び攻撃方法『のみ』を記す。
 『決定的証拠』のバッグは『ローラン』か『バッカス』のどちらかが持っている。

○元衛兵『ローラン』
 かつて騎士とは名ばかりの衛兵的業務に就いていた男。刀根を始めとしたかつての同僚、ひいてはイレギュラーズを心底憎しみ、破滅に追い込んでやろうと燻っていた。
『憎しみの棘』という戦闘術を利用する。全盛期程ではないものの未だその防御力は高く、衰えるどころか逆に『肉を切って骨を断つ』境地へと彼を到達させた。
 その他にも複数人へ【怒り】を引き起こす銃撃、剣や盾による摩擦熱を用い相手を出血させ同時に焼き焦がす戦術等。1対1ではどれも苦戦を免れない攻撃である。
 とは言え彼は人間、憎しみに燃えるとは言え完璧ではない。そしてイレギュラーズ達を破滅させるという強い決意を持ちつつもあまりにも『真面目』すぎる……。

○使者『バッカス』
 仮面を付けた男、ローランに多額の資金と『決定的証拠』を持ち込み交渉した男。種族年齢本名全てが不明。
 何者かの裕福な者の支援を受けた事が推測されるが、その正体に至る情報を得るのはかなり難しい。
 ローランに反しかなりの『幸運』に恵まれていると妄語する彼に襲いかかる不幸など1つも無い。
 常に上機嫌で静かに笑うが、彼が得物である毒の塗られた斧を手に取った瞬間、突如ブチ切れたかの如く連続攻撃を繰り出してくるという。
 ローランと反して、その男には欠けた所がありながらも完璧すぎる。そして――傲慢すぎる。

○傭兵達
 バッカスが雇った傭兵(?)。盾や弓を用いた戦術を使うものの熟練したイレギュラーズ達より若干弱い。当然ローランやバッカスには及ばなく、多才な芸を持っているわけではない……が、彼らのバッドステータスを『サポート』する状態異常を付与する可能性はある。

●ロケーション
 幻想の裏路地。冬の寒気が差し込む満月の夜。月明かりがほのかにイレギュラーズ達と石畳の床を照らします。
 裏路地というだけあって、一度に並んで通れるのは多くても3~4人程。

●『決定的証拠』について
 練達性の真空パックに入った『天義なら極刑不可避』なもの。彼らの持つバッグの中に入っている。
 文字通りそれが然るべきところに提出されれば『幻想でも刀根氏が数年は牢屋に入るであろう』代物。中身は白い粉が入った小袋。ラベルの無い瓶に入った怪しげな液体。そのどれもにべったりの刀根の指紋が付いている。
 本人、或いはそれなりの非戦スキルを持つものならばその正体はすぐに分かるだろう。だが彼の名誉のために、実際に彼が持っていたものかは不明であるということを改めて記述しておく。
「それに、人の過去をあまり深く詮索しないほうがいいよ」

●注意事項
 この依頼は『特殊な悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
 それを防ぎたい場合はプレイングの末尾に『揉み消しをする』旨を記載すれば名声が上昇します(失敗時は、通常依頼と同様名声が減少します)。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 更に依頼失敗時かつ刀根さんが参加していた場合、その成果度や行動に応じて彼の身が『大変な事』になってしまう場合があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 それでは、よろしくおねがいします。

  • 屑に然るべき制裁を Lv:10以上完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別通常(悪)
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年01月27日 22時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
死神二振
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
沈黙の御櫛
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
無影拳
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
ジェック(p3p004755)
ガスマスクガール
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
戦神

リプレイ

●棘と盾
 寒い冬の夜だった。満月だけが佇む不気味なほど静かな幻想の裏路地。
 そのそびえ立つ倉庫と倉庫の間に、『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)が鬼気迫った表情で来るべき時を待っていた。彼がそのような表情をするのには訳がある。
「カイのジンセイを賭けた大勝負だからね。キッチリ勝ちにいかなきゃならないね」
『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の言う通り、今から彼が対峙するのは自らの過去がそれを生み出す一端となったものであるからだ。
「白盾の過去ねぇ……まぁ、そういうものは付き物ではあるが」
『影刃赫灼』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)が、彼なりに灰を励まそうとしたのかそれとなく呟いた。
 灰がかつて絶望の淵に追いやった勤勉な元衛兵、ローラン。実際の主犯は同僚達であり、彼自身が関与したのはほんの一部ではあるものの、それでも恨みを買うのには十分な事をしてきた男だ。
 そして、その男が今宵灰が不利になる『あるもの』を手に然るべき場へと提出するべく向かっている――。
「すみません皆さん、私の為にここまで」
 そう灰が引け目を感じて謝罪をするのも無理はない。
「いいんダヨ」
 だが、ローランがどんな感情を抱いていても構わない。『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)は物陰に身を潜ませながらそんな灰の肩を持つように話しかけて。
「タスけるよ――こんな小悪党でも、イチオウ、仲間だからね」
「皆さん――」
 灰の顔が明るくなり、皆へ感謝の意思を伝えようとした其の時――。

「随分と素晴らしい仲間に恵まれたようですね」
 一人の男の声が、4人の会話を阻害するように差し込まれた。その声色を聞き、思わず固まる灰。
「ローラン……」
「お久しぶりです、刀根さん」
 振り返れば、そこには目の下に濃いクマを持つカオスシードの男――ローランの姿があった。
 その傍らには、彼が雇ったであろう数人の護衛の姿と怪しげな仮面の男の姿もある。
「来ると思っていました。そしてここに来たという事は、私を止めに来たという事ですよね?」
 ローランは懐に手を伸ばすと、古ぼけた盾と剣を取り出し構える。
「ならば話は無用、覚悟してもらいます!」
「マちなよ! カイはタタカうキはナいって!」
 イグナートがローランを静止し説得させようと試みる……しかし、その男に止まるという意志は最初から無かった。
「問答無用! 鉄帝の騎士であるならばまず力を示して物を語るのです!」
 その言葉と同時に、ローランを守護する傭兵達もすかさず武器を構え、次々と飛びかかった。だが、仮面の男は杖を手に満足そうに笑うだけ。
「……危ないですから下がっていてください」
「私なら問題ない。君がいるからね」
 ローランはその言葉を聞くと、灰達の方角を向き直り、盾を構え突撃。
「テバヤク数を減らさないとね! ミンナは下がって!」
 それに呼応するようにイグナートが飛び出し拳を握ると、ローラン含む敵陣へと叩きつけた。

●復讐と傲慢
 裏路地が喧騒に包まれる中、4つの影が灰達とは逆の出口からその光景を眺めていた。それはローラン達をつけながら隙を見て奇襲し、証拠品を奪い取る為の別動隊。
「……白盾がピンチ」
 そのうちの一人、『狼少女』神埼 衣(p3p004263)が煙草をふかしながら戦況を伺う。
「ああ、上手く場所の探知が出来ないが新手の気配もある。人の恨み程この世に怖いものはねえぜ」
『「幻狼」灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は優れた嗅覚を利かせながら、敵が持っているであろう証拠品の位置を丁寧に探っていく。
「革の匂いがするな。おめえ、確かにどっちも革製らしきものは身に着けてないっていったよな?」
「ええ、確かに言ったわよ」
 『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)がジェイクに対し小声で応える。
「しっかり観察してたもの……少なくとも革の物は身に着けてなかったわ」
 その返答にジェイクが頷き、「仮面をつけてない男のあたりから革の匂いがするぜ」と伝えると『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が髪を捻じりながら。
「相手はこちらが奪取に来ると予期していた、そのから実力者、恐らくローランが持っていると見ていいだろう、なら新手が来る前に速攻をかけた方がマリアは良いと思う」
 行こう。そうエクスマリアが声を発するよりも早く、その全員が交戦中のローラン達の背後へとなだれ込む。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
「ぬっ!?」
 秋奈が大声を張り上げ、乗り込むとその場にいた仮面の男が振り返り警告を発した。
「ローラン君、新手だ!」
 杖を構えエクスマリアの魔法を弾き、秋奈に応戦する。だが、その時には全てが決していた。
「ま、こんなもんだろ」
 ジェイクが弾丸でローランのマントを引きはがし、衣が露出されたショルダーバッグの帯を手早くその短い剣で切断していたのだ。……そこからはみ出していたのは半透明の袋。
「ああっ、そ、それは! 私のま――」
「はい、黙ってる」
 衣はすかさずローランの元を離脱し、もごもご動く灰の口を抑えながらやり遂げたかのように一服。
「一切の傷を与えず奪い取るとは……見事です……流石あの男の仲間」
「何か嬉しくない」
 ローランが傷のついていない肩を眺めながら、衣へ皮肉混じりの称賛をする。それにエクスマリアが髪を心なしか揺らしながら言い返す。
「法を破るのは、良くない。だが、民を守る為に在る法を、怨恨に利用する。それもまた、法に依らずとも、罪だろう」
「なるほど、それがあなた達の考えですか」
 肩をすくめるローラン。直後、エクスマリア達の背後で何か金属質な物が落下する音がする。それは装備を固め、弓を構えた傭兵たちであった。
「新手……」
「こちらも数を増やさせてもらいます――それでは、決闘の続きと行きましょうか!」
 放たれる弓矢、そしてローランの反撃と攻撃が一体となった激しい連撃の雪崩。
「悪いがこいつには貸しを作っておく事で利用価値が生まれるんでな。アンタらはここで殺す!!」
 バッグを守り回避に専念する衣へ向かう殺意を灰が必死に食い止める中、クロバと秋奈が傭兵達へ向けて刀を振り下ろし邪魔な傭兵たちを薙ぎ払う。
「逃がすもんか! ここは絶対通さない!」
「モチロン! ギアをアゲテ行くよ!」
 傭兵達も能力が低いとはいえ、決して油断ができない。イグナートは拳に全ての力を籠めると、立ちふさがる敵を一撃と言っていいほどの強烈な鉄拳で消し飛ばす。隣の仲間が吹き飛んだ衝撃波によろけた別の傭兵は、足元の蛇型の装置に気を取られている隙にジェックに華麗に狙撃され、地に伏す事になる。
 だが、相手は数。混沌において手数ほど厄介な物は無い。1体1体を倒す事は容易くとも、相手はそれ以上の勢いでこちらを窮地に追い立てる。ダメを押すようにローランは、こちらの後衛に向けてある奇策に出た。剣を大きく振るい、周囲の敵を焼き斬りながら盾の裏から取り出したのは、練達製の光線銃。
「他愛もありませんね……これで終わりと致しましょう!」
 そう言い放ち、エクスマリア達がいる方向へと射撃する。エクスマリアはそれをとっさに弾き、攻撃を辛うじて躱すも……自らの足が光り輝いている事に気付く。
 一歩、また一歩、彼女の意思に反して足が自然に動き、髪が波打つ。
「こういう事もあるのか、驚いた」
「もはや打つ手なしでしょう。これで終わりです」
 ローランがそう宣告し盾撃を振るうその寸前――エクスマリアの蒼い瞳が光り輝き、ローランの攻撃をあらぬ方角へと向けさせた。
「ぬ、ぬおっ!?」
「……まさに使いどころに使えるとは」
 頭を押さえ、意識が混濁したようにふらつくローラン。太刀筋が鈍り、自慢の反撃術もままならない状態になってしまう。
 決闘の決着は意外か必然か。決定的な一撃はその直後に入った灰の反撃の一打によるものであった。
 信念と信念、盾と盾が激しく打ち合い、激しい火花が散る。その押し合いに灰が打ち勝ち――ローランに膝をつかせたのだ。それを見た傭兵達は武器を納め、イレギュラーズ達も異変を察知し、警戒に当たりつつも攻撃の手を止める。
「今の攻撃の主は、まさか、そんな事が」
 誰の攻撃かわからなかったのだろう。顔を見上げると、クマの無い目で灰を見つめる。
「止まってくれましたか……」
「本当にあの刀根さんなのですか? 盾の構えに迷いがない。このような男が、何故」
 驚愕の声を放ち、俯くローラン。今なら言葉が通じるかもしれない。
「申し訳なかったです!周囲の不正に乗らなくては私も危うかったのです……」
 灰が懇願するかのように懺悔の言葉を吐くと、ローランは唇を噛みしめ手を震わせる。
「なぜです? こんなに嘘臭い言葉だと言うのに、過去の罪を清算する気も無いというのに、なぜその言葉に説得力があるのですか……?」
「牢に入るよりも、よりこの世の為になることを見つけたからです。私はかつての私のような不正をする奴や、巻き込まれる貴方のような方を減らしたいと思っています!」
「なっ……!」
 その言葉に驚き、見上げるローラン。灰の目は嘘をつくそれではなかった。
「うん。前の事は知らないけど今は悪い事してない」
「その証拠、いや償いに……今の噂は聞いてるでしょう……?後ろ暗い仕事はしていません……」
 衣が補足するように話しかけ、それに俯き、何かを静かに考えるローラン。
「確かにそうだ……これっぽっちも悪い噂は聞いていなかった」
「ローラン君!?」
 ローランはゆっくり立ち上がると灰の方ではなく、協力者たる仮面の男へと降伏を呼びかけた。
「バッカスさん、言いましたよね。『清く正しい、強い心にこそ英雄と呼ばれる価値がある』と。……兵を退きましょう」
「ローラン君、何を言い出すのかね」
 狼狽える仮面の男に、ローランが答える。
「ほんの少しだけですが……私がかつて騎士であった頃を思い出したのです、信じられませんが、かつて私が持っていた光をあの男は――」
 ローランが言葉を止める。
 否、止められたのだ。

 仮面の男のマントの下から放たれた凶刃が、ローランの腹部を貫いていたのだ――。
「ローラン君」
「持……って……!」

「君はちょっと疲れているのだ、少し休みたまえ」
「ローラン!」
 灰が崩れ落ちるローランを支えようと駆け込むも、仮面の男が血と緑色の液体が滴る斧を食い止める様に伸ばし妨害する。先ほどより遥かに強大で、背筋に寒気を感じる威圧感を放ちながら、男は叫ぶ。
「何という事だ……貴様が余計な事を吹き込むからこの男は私に歯向かった!」
 その瞬間、灰は強大な殺気を感じとり、防御を固める――だが、灰の抵抗をものともせずに仮面の男の斧は灰へと食い込み、その威力は鎧を貫通し灰の肉を切り裂き、毒を塗り込んでいく。
「犯罪者集団のイレギュラーズどもが!」
 男の狂気は止まらず、更なる一打を加えんとする。ジェイクがそれを防ぐべく、狼牙に込められた弾丸を放ち……舌打ちをした。
 なんと確実に当てにいった筈の弾丸はその男に当たる直前、不運にも男が作り出した風圧に軌道を曲げられ、全てあらぬ方向へと飛んでいったのだ。
「チッ、とんでもない奴と組んでやがったぜ!」
 灰が辛うじて飛び退き受け身を取ると、仮面の男――バッカスは狂気の声をあげ、残っていた傭兵達と共に突撃する。
「屑、などに――許すものかぁ!」
 鼓膜を破りかねないほどの怒りと高笑いの混じった狂気の声が、裏路地に響く。
 バッカスはけたたましい雄叫びをあげながら全力で突き進み、味方をも巻き込む暴力と怪力で暴れまわり、全てを破壊していく。イグナートが後衛を守るべく必死に食い止めその身に攻撃を受けとめるも、運が悪ければその攻撃の前には数秒持つかも怪しい程の力。総崩れになるのも時間の問題だ。
「せめてあのオトコの攻撃さえ何とかナレバ……」
 弾丸を込めながら、ジェックが呟く。かすかに流れたその言葉に、犬っぽい衣の耳がぴくりと跳ねて。
「エクスマリア、あれできる?」
 若干後ろにいたエクスマリアに声をかける。
「一か八かだが……やれるだけはやってみよう」
 衣の言葉に頷き、エクスマリアが後ろに後退り……ゴムのように髪をしならせるとバッカスの顔の仮面目掛けて髪を伸ばす!
 バッカスが暴れ、髪を切断しようと斧を振り上げた直後、魔弾が放たれ――仮面が宙を舞い、月光の下へと晒されたのは無数の触手が蠢く、顔と言うのが憚られるほどの得体の知れぬ何か。バッカスは顔を抑え苦しむと、地面を必死に探し回りながら仮面を探し始めた。
「やりましたな、このまま畳みかけますぞ!」
「ああ、次はないだろうからな」
 仲間を鼓舞するべく歓喜の声をあげ、残った体力を振り絞りバッカスに対しぶつかっていく灰に対し、エクスマリアが無意識に自分の身体を毛で覆うようにしながら応える。
 恐らく今の手段はもう通用しない、執念でほんのわずかな幸運をつかみ取ったからこそできた行為だ。奴は自分を脅威と見なし全力で始末しにかかるだろう、ならば今するべき事は一つ。
「ローレットの名誉の為に! 全員、突撃!」
「了解よ!」
 好機を逃さず即座にこの化け物を倒す他ない。始めに灰の突撃命令に応えたのは秋奈。彼女は戦神の武装たる長刀を引き抜くと、バッカスに向かい神速の突きをお見舞いする。
 そのマフラーが彼女の動作にワンテンポ遅れてはためくと、同時に秋奈は切り裂き、バッカスの背後から鮮血が噴き出した。
「叩っ斬る!」
 バッカスはよろめきながら秋奈を押しのけると、自らに屈辱を味合わせた女を排除しに体当たり気味に突撃する。だが、それもイグナートの決死の体当たりで止められた。苛立ち余りに男が振り向いた瞬間、衣が裁爪を片手に神速の一撃を浴びせる。
「キミのアイテはオレだよ!」
「あと、私」
 苛立ちながら薙ぎ払うように刃を振るうも、負けじと放たれる刃に追い詰められ。男がよろめいた瞬間。彼との間を隔てる物が無くなったジェックが迷わず引き金を引いた。
「イッキに終わらせるんダネ、コンドこそ当てるカラ!」
 その弾丸は『顔』のど真ん中に命中、怯んだ所に更にジェイクの弾丸が突き刺さり。血が噴き出た所に、更に一発。
「こいつは流石に効くぜ、バケモン!」
 バッカスが大きくよろめき斧を辛うじて握った時には既にクロバが双刀を構え、彼の前に立っていた。
「来いよ、運勝負は得意だろう?」
 バッカスは唸り声をあげながら、斧を大きく振り上げクロバの心臓を目掛け振りあげる。それに対してクロバが放ったのは一世一代の大博打――終ノ太刀・秋水。自らの生命すら厭わぬクロバの三つの斬撃は、その怪物をその斧ごと叩ききり、致命傷を叩きこむ。
「この、不届き物ガァ!」
 なおも叫び、殺さんと暴れる男に対しクロバは静かに黒刀を振り上げると、引導を渡すべく、最後の斬撃を解き放った。
「ご自慢の運にも見放されたようだな、これで終わりだ」
 月光に照らされた刀の軌跡はまるで星空の様に瞬けば、それは豆腐に包丁を立てるかのように、男の顔を真っ二つに切り裂いた――。

●力と使命
 死闘が終わり、10分後。
 イレギュラーズ達は新手に警戒しながらも、一人の男の治療に当たっていた。ジェイクが激戦で疲労しきった仲間達の応急処置や後始末をしながら、彼の今後について危惧する。
「……支援者とやらがあのバケモン一人だけならいいんだがな」
「ま、その時はその時よ。ローレットが狙われるのは今更でしょ?」
 それに対し、秋奈は軽く流しながら未だ目を覚まさぬ男に寄り添う灰の方を見つめていた。
「誰もあの人を責める事はできないわ。私だって」
 自らが肌身離さずつける、このマフラーの前の持ち主の事を考えれば――。
 一方。
「灰。過去は言うまい。だが、改めるべきは、わかっているな」
 その視線の先、エクスマリアが灰へと静かに尋ねれば、灰は肯定の意思を示す。その様子にエクスマリアは頷き返すと治癒術を男の腹部の傷へとかけた。
 輝く光に導かれるようにその男……ローランは意識を取り戻すと、何も言わぬイレギュラーズ達の顔を見渡し、傍らに倒れていた『協力者』のおぞましい亡骸をしばらく眺めた。
「すまない、ローラン……」
 灰が絞り出すように出した声にローランは反応することなく、イレギュラーズの方へと向き直り。
「制裁を下すべき屑は……ここにはいなかった様です」
 ただ、そうとだけ語りローランは背を向けた。しばらく何かを考えるかのように落ちていたマントを拾い上げると空に浮かぶ満月を眺め、ゆっくりかつはっきりと、最後の言葉を投げかけた。
「刀根・白盾・灰。ろくでなしの英雄とその仲間よ。証明できますか? あの言葉がその場限りの嘘で無い事を、その善なる心が力ゆえの傲慢で無い事を」
 男の憎しみは決して消える事は無い。だが灰の持つ盾のように輝ける心を前に憎悪を維持できるほど、堕ちきる事も出来ない。
「二度と会う事が無い事を祈っています」
 男は再びマントを羽織ると、静かに夜の幻想へと消えていくのであった。イレギュラーズ達は何も声をかける事をせず、その男が消えていく様を見守り続けるのであった。


成否

成功

MVP

刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男

状態異常

刀根・白盾・灰(p3p001260) [重傷]
煙草二十本男
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377) [重傷]
無影拳
神埼 衣(p3p004263) [重傷]
狼少女

あとがき

 大変お待たせいたしました。リプレイは以上となります。
 揉み消しをする旨が無かったため、加算されるのは全員悪名点となります。ご確認ください。

 得体の知れない男は倒れ、復讐の鬼はその刃を納めました。
 ローランは決してイレギュラーズ達を許したわけではありませんが、灰氏が誠実であり続ける限りはもう貶めようとはしないでしょう。

 HARD故シビアな判定となりましたが、それでも尚イレギュラーズ達の力と信念が勝ったようです。
 MVPは、その力の示し方に一点の陰りも無い男に。
 称号は、その男と怪物に効果的な一撃を刺したあなた達に。
 そしてこの成功を、一人の男を救うために死力を尽くした皆様に。

 ありがとうございました。またお会いできるその日を心からお待ちしております。

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