PandoraPartyProject

シナリオ詳細

吹雪に隠れの殺人者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝国の中でも北部にその町はあった。
 雪降り積もる雑踏を人々は一様に、足早に歩いていく。
 極寒の鉄帝の北部――地獄のような寒さから逃れて暖かい家に帰りたいからというだけでは決してない。ましてや、住民たちがせっかちだからだとかでも決してなさそうだった。
 道行く人々の表情はまさしく真に迫っていて、何かから逃れるようですらあった。
「はぁ、はぁ、ッ」
 そんな町の裏手に、一人の若者が迷い込んでいた。
 普段ならこんな場所には来ないだろう。
 普段なら、それを笑い飛ばしていただろう。
 けれども、けれどもその噂は真実で。
 どうしようもないほどに近づいていて。
「た――」
 酷くぼんやりとした視界、いつの頃からか吹雪き始めたような白っぽい世界の中、若者は前に何かを見つけたように手を伸ばし、小さな町に小さな赤を遺した。
 若者の前から現れた影は、うつ伏せに倒れた若者を無造作に蹴って仰向けにすると、まだ熱のある若者の胸元に手を置いて――直後、ぐちゅりと音を立てた。
 それは、しきりにすすり、食らい、舐り、やがて満足したようにぽいと捨てる。

 やがて晴れ――偶然にそれを見つけた女性の悲鳴が、冬の町に轟いた。


「切り裂きジャック……私はウォーカーの友人からそんな殺人鬼の逸話を聞いたことがある」
 遥々鉄帝国の北まで訪れた君達に、男が言う。
「この町には今、そんな殺人鬼かもしれないやつがいる。ソイツは、数日に一度、町の中にいる十人を無差別に一人殺す。殺された者は鋭利な刃物で後ろから引くように急所を斬られて即死している」
 恐らくは、意識して事務的に男性はそう告げる。
「そして、殺された者達は皆、心臓を引っこ抜かれ、貪られたうえで欠片を捨て置かれているんだ」
 それなら、歯形とか残ってるのでは?そう問う君達に、男は静かに頭を振って否定する。
 少なくともこの町ではそんな技術はまだないのだという。
「警察や自警団、軍の手の者も殺されていて、住民はただ、次に自分が狙われないことだけを願って帰るしかない」
 けれども、そうやっているうちに一人、また一人と着実に殺される。
 人々は恐れ、嘆き、悲しみ、絶望している。
「奴が出るところは裏路地が多い。誰か一人を囮に立てないといけないだろう。すまない。それから……あいつは、もしかすると複数犯かもしれない」
 情報を淡々と告げていく男は、そこで一つ、呼吸を置いて、君達に視線を投げかける。
「実のところ、奴に関しての情報は君達に提示できるものはこれだけしかない。……あぁ、だが、路地はそれほど広くない故、流石に5人は超えないだろう」
 そこまで言うと、男はぎゅっとこぶしを握り、頭を下げる。
「どうか頼む。この町を救ってくれ」
 悔しそうな、男の声が響いた。

GMコメント

冬の鉄帝ターンな春野紅葉です。こんばんは。
そんなわけで切り裂きジャックと戦う感じのあれです。

以下、詳細情報をば。

・オーダー
切り裂きジャック(仮名)の討伐

・切り裂きジャック
ここ数ヶ月ほど、町を騒がせている何者かにつけられたニックネーム。
どんな奴なのかは今のところ分かりません。
狂人のか、侵入した魔物なのか。

ですが、状況を判断するに
「1:周辺に対して吹雪にも似た現象を起こし、視界を悪化させる(戦闘時には足止め、混乱、暗闇のBS)」
「2:後ろから的確に急所を斬る一撃を放つ」
「3:心臓を手で抉り取る」
といった行動が見受けられます。
この、精細な2と強引な3の不自然さから、複数犯の可能性が高いです。
足跡などは残念ながら見つかっていません。

戦闘時には斬り殺している方は何らかの刃物で、抉り取る方は何らかの神秘性で攻撃してくるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 吹雪に隠れの殺人者完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
武器商人(p3p001107)
闇之雲
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
狩金・玖累(p3p001743)
PSIcho
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
不動・醒鳴(p3p005513)
特異運命座標
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人

リプレイ


「動機の分からない連続殺人とはね」
 男性からの任務内容を聞き終えたところで『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)はふぅと一息つく。防寒用に持ってきた手袋に収められた手をぽふぽふと叩く。
「ジャックどもの正体は不明、個人なのか複数なのかも分からねぇが、ここで仕留めなけりゃ更に犠牲者が出るからよ、気合い入れていこうぜ」
 茶髪の髪に浅黒い肌をした、任侠と呼ぶべき男――『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が愛用の煙草を燻らせる。
「ヒヒヒ、切り裂きジャックか」
 長いフードの下で『闇之雲』武器商人(p3p001107)は笑う。影の中の黒い不定形のナニカが跳ねる。
「奴らにしては回りくどい上、被害が小さ過ぎる……狂気に染まった者がいると見るべきか」
 もしや魔種の仕業であろうかと疑う『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)は思案していたことをぽつりと呟いた。
「なーんか、給餌してるように見えるんだよね。この切り裂き魔って。きっと、動物への慈愛に満ちた心優しい人なんだよ! ほらほら、ペットを飼ってる人に悪人はいないって迷信があるじゃん?」
 笑顔で語る『PSIcho』狩金・玖累(p3p001743)はいつものようにふざけた様子で朗々と語る。
(あー……不穏な気配がする。面倒くさい話になりそうだぜ)
 そこそこ我の濃い面子と事件の内容を聞かされた『特異運命座標』不動・醒鳴(p3p005513)は頭を抱えるようにして思うのだった。


「うーさむい……」
 町中を囮役を買って出た『孤兎』コゼット(p3p002755)は一人で歩いていた。
「こいつを連れていきな」
 そう言って『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)に預けられた鼠がちゅうと鳴いていた。
 肌を刺す空気は寒いばかりか痛みさえ伝えている。
 多くの人々は彼女のことを眼中になく、ただひたすらに進んで行く。ちらり。なんとなく感じた物に振り返れども、仲間達であろうとすぐに視線を戻す。
 少しだけ、歩幅を早め、今度は敢えて緩め、ぴくりと黒い耳が動いた。小さな息が白く染まり、瞬く間に冷える。
 その瞬間、少女は走り出した。
 振り返る。雑踏の中、自分と同じ方向に向けて迫る影。
 コゼットはひたすら走った。
 狙い通り、冬ということもあり、瞬く間に黄昏は消え、夜の黒と街灯の白が支配していく。
 事前の予定通りのところを曲がり、今度は跳ねるように動きを止める。
「……誰か、いる、の?」
 その声はきっと、警戒と寒さ、普段の口調も相まって、震えたようにも聞こえただろう。
 視界の先、不意に白く染まった。
 雑音がするのは前から。足音は殺されていた。
 瞬く間に白く染まったその場所で、コゼットが動けたのは種族としての本能か。
 少女は身体を腰から折って落とし、横に動かした。
 コゼットのいた場所で何かが風を切る。

「女か?」
 襲撃場所として選んだ一つの裏路地、コゼットを待っていたレイチェルはやや目を細めた。超視覚に捉えたそれは、髪の長いどこにでもいそうな女の姿だった。
 不意に、周囲を吹雪が囲っていく。間違いなく、彼女が切り裂きジャック――少なくともその一人だろう。
 鼠と共有している聴覚がコゼットの問いを聞き、同時にその動きを共有した視界で収める。
「もう一人――上か」
 コゼットへの襲撃を把握したのと同時に、暗視ゴーグル越しの視界を上に向けた。
 青く染め上げられた視界、本来であれば町中のそれも裏路地で必ずしも標的の位置だけを把握するのは少々難しさも伴う。
 けれど――この状況下、暗がりとなった真冬の鉄帝の夜、屋根の上に人がいる、などという状況は限られる。
 それも、突如として吹き上がり濃くなってきた吹雪の中へ、飛び降りていく影とくれば、それはひとつだろう。
 レイチェルはすぐさま吹雪の中に突入すると、その気配を悟ったのか、女が振り返った。
「どなたでしょう?」
 判然としない視界の中で女の風貌を確かめると、やや間合いを開ける。吹雪の奥からは、剣戟の音が聞こえてきた。
「――俺は悪を葬る悪。罪人は逃がさん。今度はてめぇらが心臓を置いてく番だぜ?」
「……警察か、軍の方でしょうか? 私、迷ってしまって」
 レイチェルの言葉にきょとんとした様子を見せる女が、一歩近寄ってくる。その足元で、緋色の光を帯びた魔術式が顕現する。
「な、なんですかこれ!?」
 噴出した闇が、狼がごとく女へと牙をむく。
「何時もと大して変わらない、いい夜だね。ただ、君らが殺るか僕らが殺るかの、些細な違いだぜ」
 玖累はそう言っていつものごとく笑いながら、音のする方へ青い衝撃波を放った。
「こんなところで迷子もなにもあるかよ。なぁ、切り裂きジャック」
 醒鳴はF・ブレイカーを肩に担げば、一気に女へ近づいて振り下ろす。女はそれをあろうことか両腕で掴んで防いだ。
「なっ」
 がっしりと握られた大剣を通じて感じるのは、女だてらには信じがたい膂力だった。
「いつもはさっくり殺してさっくり帰ってるのですが、仕方ありませんね」
 返すように女が打ち込む強烈な拳が、醒鳴の腹部を強かに撃つ。魔術めいた痛みが身体を駆け抜けた。
「」

「むう、この霧は噂に聞く……!」
 コゼットから少し離れ、路地裏を囲うようにして待機していた鈴音はそれに気づいて立ち上がる。
 発生した何かへ飛び込むように、鈴音が走り、続くようにしてそちらにいた面々も突入する。
 吹き付ける白の世界の中で、鈴音が味方を見失わぬ位置に立ち止まると、その横を武器商人がゆっくりと抜けていく。吹雪の向こうから現れた少女と相対して、敵を観察する。
「ヒヒ。ブラックジャック、良い武器(コ)を持っているようだね」
 少女は答えない。静かにそのまま吹雪の向こうへ消えていく。代わりに、横合いから現れた別の少女からの攻撃を、武器商人はゆらりと躱した。
 その少女へ向けて義弘が動いた。至近距離まで近づいて放たれた義弘の拳が少女の肩を打つ。痛打には至らぬも、体勢を崩した少女に向けて、アカツキによるオーラキャノンが炸裂する。
 続けざまの二連撃を受けた少女が無感情な瞳でイレギュラーズを見る。
「油断しなければ脅威にはならなさそうだよ!」
 鈴音は互いの間合いを図るような前衛の様子を見ながら超分析による号令を発すると、その一方で敵の様子を見る。
 戦闘に支障がない程度には目が慣れてきたが、それでもはっきりと思うのは、自分達がいる場所から吹雪を出した元凶であろう人物を攻撃するのは難しいということだ。
 距離の問題はないが、路地という立地上、如何せん場所が狭い。吹雪の向こうから現れた二人の少女を無視して、他の敵を攻撃するのは困難だ。
「つまり、どっちにしろあの嬢ちゃんたちをやらねえと進めねえわけだ」
「結局は、倒すのは手前の奴からということだな?」
 義弘に続けてアカツキが言えば、武器商人が笑いながら少女と相対し、鈴音がマジックロープを飛ばす。
 ロープは惜しくも少女の動きを捉えこそしなかったが、その手の甲を強かに打った。

 追いすがるようにして近づいてくる少女を、コゼットは軽やかに跳ねて蹴り飛ばすと、その勢いのままに距離を開けて走る。
 仲間と交戦する女の隣を駆け抜けて、醒鳴の隣へとたどり着いた。
「ざんねんだけど、狩りはこれでお終いだよ」
 振り返り、一つ呼吸を整えて女に視線を向けた。
「美鈴、貴女、殺せなかったの?」
「ごめんなさい、足がすごく速くて」
 ちらりと、女がコゼットを追ってきた少女に視線を送れば、少女がしゅんとした様子で言う。
「いいえ、良いのです……潮時のようですし」
 女が艶のある笑みを浮かべた。レイチェル、醒鳴、玖累の攻撃を受けて多数の傷を負っているにしては、あまりにも危機感のない笑み。
「この人達は私達を殺しに来たのでしょう。だから、今までと同じ。殺される前に食べちゃわないと」
「私達で切り拓くから……アナ、お願い」
 美鈴と呼ばれた少女が、女――アナを呼んで感情の読めない顔で笑う。
 その直後、美鈴が構えを解いてだらりと身体の力を抜き、静かに視線を上げる。
 そのまま一気に駆け抜け、向かう先は玖累。一瞬、動きの遅れた玖累の首筋に、浅い赤が奔った。
 レイチェルは玖累の方へ醒鳴が走ったのを見ると、再び魔術式を構築し、夜ノ牙を噴出させる。白の世界に映える黒い闇が、アナに襲い掛かる。
「鬱陶しいですね!」
 コゼットを抜けて、アナが至近し、その手に濃密な魔力を纏い、突き出してくる。咄嗟に身体を動かして躱せば、尋常じゃない握力が左腕に襲い掛かってきた。
「痛くねえなァ! どこ狙ってんだ?」
 端正な顔立ちに理知的な殺意を覗かせて、吹雪の中、超視力の捉えた悪に嗤う。
 アナの顔に、苛立ちが滲む。
「だいじょうぶ、あたし達は、心臓とったり食べたり、趣味わるいことしないから」
 アナの動きがレイチェルの言葉に一瞬止まったのを確認するより先に、コゼットは動いている。
 コゼットはアナへと声をかける。振り返ってコゼットの方を向こうとする彼女の懐へもぐりこめば、身を低くして黒魔を衝きこんだ。黒い衝撃波を伴った一撃が、アナの肺辺りを捉えた。よれよれと、アナが後退していく。
「あんしんして、殺されて」
 静かに残した声に、女が狂ったように雄叫びを上げた。
「いいね! もっと叫んでみなよ」
 貼り付けた笑みのままに、玖累は魔弾を女へ撃ち込んだ。

「流石に一人で私達四人を相手にするのは荷が重いみたいだねっ」
 割と軽い印象を受ける声で鈴音が笑う。
「ヒヒ、その剣の攻撃は脅威だったよ。ちゃあんと我(アタシ)を倒してくれるんだろぅ? 切り裂きジャック」
 武器商人は星官僚のタクトで作り出したモノで何度目かのクラッシュホーンを叩きこんでいる。不気味に、一切の表情を変えることなく笑い続けるソレは、少女の攻撃を幾度となく受けている。
 鈴音のヒールによっていくらかは回復できているが、壁として立つ不気味な商人は致命傷に当たりうる攻撃を数度受けたことで徐々に疲弊しつつある。
「――」
 目を細めた少女の一撃が、遂に武器商人を捉えた。剣に籠められた呪いが彼の復活を阻害していく。
 床に伏したソレの周囲で影がひたひたと踊る。
 けれどそれ以上に少女の方が致命的だった。義弘、アカツキ、武器商人、それに回復をやらなくていいと判断した時の鈴音の攻撃を受けて、彼女の身体も明らかに満身創痍というべきものだった。
「っらァ!!」
 武器商人の背後に回っていた義弘の裂帛の雄叫びと共に放たれた拳が、少女のナイフを捉え――バキンと音を立てた。
「なっ!?」
 少女が目を見開いて反応を見せる。
「今も声は聞こえているか?」
 得物を失いった少女に向けて、身体を低くして至近したアカツキが、少女に問うた。
「なんの、話?」
 ぎらりと剥かれた眼は容赦のない、生きるためにがむしゃらな人間がするソレで。
 打ち据えた強烈な一撃が、少女の心臓に痛打を叩きこむ。一瞬、少女が目を見開いて、がくりと膝から崩れ落ちた。
 誰かが、合流しようと声を出した時、不意に吹雪が晴れていった。

 玖累は夥しい量の血を流しながら大地へ沈んだアナと呼ばれていた女に近づいた。
「ほら、大事な仲間の心臓なんだから、無下に扱っちゃダメだよ」
 にぃと笑んで、アナの心臓あたりへ近づく。美鈴と呼ばれていた少女が、玖累の方を向いて目を見開いた。
「や、止め――」
 ぐちゅり。彼女から見れば、心臓をくりぬいたように見える角度で、音を立てる。
「あ――あぁぁぁああああぁぁ!!!」
「どうしたんだい! キミらがやったことじゃないか!」
 激昂と共に、美鈴が玖累に向けて走る。
 すさまじい速度でイレギュラーズの合間を抜けて、ぎらついた目で玖累に辿り着いた美鈴は、そのまま剣を振るう。
 二度、三度、それで玖累の動きを止めるには充分だった。
「あぁ、あぁ……あぁあああぁぁ」
 ぽつり、ぽつりと涙を流し――やがて小さく笑んだ。
「もう、ふたりぼっちだってさ」
 吹雪が晴れ、もう一人の少女の姿を視認して、美鈴はゆらゆらと立ち上がる。
「いつかは、いつかはこうなるってわかってたから――お土産を作らなきゃ。違う?」
――けたり
「じゃあ、終わりにするから……一人、選ぶね」
 もう、吹雪の中で人を殺す殺人鬼たちなどいない。
 ここにいるのは、一人――いや、一匹の、けだものだ。
 狂った獣は、視線を巡らせ、目を細める。
 それを見ながら、レイチェルは再び夜ノ牙を発動させる。しかし、大地に顕現した魔術式を少女はその場から飛びのいてあっさりと避ける。
 鈴音は女との戦いで一番疲弊していたレイチェルへ緑の抱擁を放って回復を施すと、そのまま美鈴を見る。
「そろそろ、終いにしようや」
 遅れて駆けつける形になった義弘は美鈴を見て、静かに言葉を紡ぐ。
「きぃめた」
 ことんと首を落として美鈴は壁に向かって飛ぶ。
「逃がすか!!」
 逃走経路として利用する可能性を考慮していたアカツキがそれに反応して放ったオーラキャノンに肩を打ち込まれて少女が呻く。
「どうせ死ぬんだから――痛くなんてない!」
 獲物を目前にする空腹の獣のように目を剥き、少女が猛る。そのままタンと跳び、着地するは鈴音の後ろ。
 後ろに引くようにして動かされた刃を、薄皮一枚のところで何とかかわすと、舌打ちが聞こえた。
 醒鳴が反応し、思いっきり横殴りにF・ブレイカーをぶち込めば、ぐにゃりと身体を横に追って少女が壁に叩きつけられた。義弘とアカツキが追撃の一撃を見舞った後、美鈴の動きは完全に停止した。


「全てが終わった後に調査を報告するのもあれだが、どうやら彼女たちは同じ孤児院を出身としていたようだ」
 調査報告の束を依頼主が机の上に置いた。
「医者の方は孤児院を出て、軍医を経験した後、戦争から逃れるようにこの町に着て診療所を立てたようだ。少女の方は、この町に養父母に貰われてきたらしい……どうやらそのすぐ後に養父母は亡くなってしまったようだ」
 孤児院を出て、知り合いもいない町で再び孤児になった。そんな少女たちの前に、同じ孤児院を故郷とする医師がいれば、きっと彼女たちはそこを頼っただろう。
 その後、何があって連続殺人に手を染めたのかは、分からなかったという。
「ただ、診療所と言ってもあまり儲けは出てなかったようだ。最初は食うに困って、かもしれないな」
 そう言って依頼主が一つ息を整える。
「彼女たちは生きて捕まっても確実に極刑は免れなかった。ただ、どこにでもある闇が産んだ悲劇――そう、簡単に言い終えたくはないが」
 言い淀んだまま、男は目を閉じた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

というわけで、なんちゃってサスペンスホラーでした。
まだまだ精進せねばならないジャンルですが楽しんでいただければ幸いです

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