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シナリオ詳細

<秘密結社NF>レッドロード化工事計画を阻止せよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●メフ・メフィート近郊の街
 もういくつ寝ると、シャイネンナハト……な週末の夜。突如、繁華街に人々の叫び声と建機の爆音がとどろいた。
「我々は『秘密結社ネオフォボス』ドル! ただ今、王都メフ・メフィートまでレッドロードを敷設中ドル!」
 怪人ドリカンガルーが石畳を足のドリルで粉砕し、土をえぐりながら行く。
「舗装材のご提供に、ご協力願います!」
 頭に赤の三角コーンを被った黄色タイツの男たちが、誘導刀を振り回しながら買い物を楽しむ人々を無差別に切りつけて、怪人ドリカンガルーが開けた穴の中に放り込んでいく。
 最後に、怪人サイローラーが倒れた人々が投げ込まれた穴の上をゆっくりと通り過ぎる。
「ガァハッハッハ。キリキリ働け、三角コーンども! 総帥ナンイドナイトメア様のために街中の道を作り変えるのだ!」
 突然の凶行に、居合わせた人たちはパニック状態に陥った。
 人々は我先にと、街から逃げ出そうとした。だが、怪人たちは街中の道という道にゲリラ的に現れては工事を始め、人々の行く手を塞ぐ。あっちも工事中、こっちも工事中。
「ダメだ、あっちへ逃げよう」
「ああ、ここもダメだ。先回りされている」
 そうこうしているうちに通れる道がなくなって、人々は次第に街の広場へと追い詰められていった。


●ローレットにて
「秘密結社ネオフォボスが、幻想支配に向けて本格的な襲撃作戦を開始した」
 ネオフォボスは練達のアンダーグラウンドから現われた魔種による組織である。
 秘密結社ネオフォボスはこれまでに怪人『油圧ワニファラオ』の幻想ナイル化作戦、怪人『バズーカライオン大佐』による幻想サバンナ化計画を実行したが、ローレットと地元の戦隊の活躍に阻まれて失敗。
 生半可な戦力では攻略できないとみたネオフォボスが、大量の軍勢を率いた一斉襲撃に出たのだ。
 『未解決事件を追う者』クルール・ルネ・シモン(p3n000025)は集まったイレギュラーズたち、一人ひとりの顔を見る。
「幻想の貴族たちは兵をさいて迎撃作戦をたてているが、ネオフォボスの電撃的な勢いに押され気味だ。お前たちにはその間を縫うように王都に攻め上がる軍勢の一つを叩いてほしい」
 クルールの卓に集まった者たちが迎え撃つのは、怪人ドリカンガルーと怪人サイローラー、その手下の三角コーン男十名によるレッドロード部隊だ。
「やつらはこの年末年始のクソ忙しい時に、全く必要のない道路工事を勝手に行っている。迷惑なんてもんじゃない、ただの犯罪だ」
 怪人ドリカンガルーが石畳を破壊して道に穴をあけ、手下たちが人々を襲って穴へ投げ込み、怪人サイローラーが上から均して作る……人肉で作られる、呪われた赤い道だ。
「お前たちの力で狂気の道路補修工事を止めてくれ。頼むぜ、イレギュラーズ」

GMコメント

秘密結社ネオフォボスによる、狂った道路工事計画を阻止してください。

●依頼内容
・怪人ドリカンガルー、怪人サイローラー、三角コーン男10名の撃破。

●日時と場所
・王都近郊のとある街
 街の中心にある広場(シャイネンナハトのマーケットが開かれています)に続く大通り
・夜
 月が出ていますし、街はシャイネンナハトの装飾で明るく、にぎやかです。

●怪人ドリカンガルー
フォボスによって作られた改造人間。
足が掘削ドリルになったカンガルーの怪人です。
頭に黄色いヘルメットをかぶっています。
【ガガガガ】………近単/尻尾で体を支えてドリルキック!【流血】【二連】
【尻尾アタック】…近列/太い尻尾を振り回して敵を薙ぎ払います
【びよーん】………自付/大ジャンプ。空中にいても油断できません。

●怪人サイローラー
フォボスによって作られた改造人間。
前脚と、後ろ脚がローラーになったサイの怪人です。
頭に黄色いヘルメットをかぶっています。
【おっもいローラ】近列/ローラーの下に巻き込んで……【重圧】
【暴走ローラ】……近単/おらおらおら!

●三角コーン男……10体
フォボスが作り出した魔物。怪人の使い魔的存在。
一般人よりは少し強いがイレギュラーズには束になってもかなわないという宿命がある。
【誘導刀スラッシュ】近単/光る刀で切りつけます。

  • <秘密結社NF>レッドロード化工事計画を阻止せよ完了
  • GM名そうすけ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月05日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
双世ヲ駆ケル紅蓮ノ戦乙女
金鯱 統(p3p006085)
特異運命座標
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
リアナ・シンクライ(p3p006831)
ドリルブレイク・ドリル

リプレイ


「何がレッドロードっスか」
 満月を背負い、屋根に立つ影が八つ。
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は、白い息とともに苛立ちを吐き出した。意味なく血が流れされるなんて、無性に腹が立つ。
 滅多なことでは崩れない顔の表情を崩し、めくった唇の下から牙のような八重歯を覗かせる。
「せっかくの血を趣味の悪いもんに使いやがって、もったいねぇだろ」
 葵は瓦を強く踏みつけた。
「この足で地獄まで蹴り飛ばしてやるっス」
 割れた瓦を避けてしゃがみ込み、片頬をついた『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は、いや、怒るところが違うだろ、と内心で葵にツッコミを入れた。
 ゴブリンには生血を飲む文化はないので、もったいないという気持ちがわからない。ただ、悪趣味という点については同感できる。
「ふざけた名前と見た目の割にやる事がえげつねえ、というのは確かだな」
 キドーは騒音をまき散らしながらやって来るバカ、いや怪人たちを冷めた目で見下しながら、ぶつぶつと呟いた。
「ま、所詮はおもしろアニマル。さっさと終わらせて一杯やりに行くか」
「ええ、さっさと終わらせましょう。人肉で出来た紅い道は吸血鬼にとっても害でしかないわ」
 『黒焔の意志継し紅の片翼』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)は、屍で組んだ玉座に座りながら、肩にかかるワインレッドの髪を左手でさらりと払った。
「まず全員で手下を倒しましょう。それから私とキドー様で……ここからはまだ見えていませんけど、サイローラーとかいう怪人の足止めをいたします」
「うむ。頼むぞ。その間に妾たちは、道に穴を開けるカンガルーを倒すのじゃ」
 秘宝、大壺蛸天を小脇に抱え、すらりとした人の足でモデル立ちするのは『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)だ。
 本当は八本足だが、陸上、とくに屋根の上とあっては動きにくいので人型になっている。夕日を飲み込んだ直後の海面色――深い青紫色の八脚も美しいが、月光に縁取られた二本足もなかなかセクシーである。
「じゃが、その前に――」
 目を下へ向ける。
 路地から鼻と頬を赤くした野次馬たちが、騒音に惹かれて集まってきていた。ほかにも、麺伸ばし棒を片手に家から飛び出してきた恰幅のよいおかみさんや、マーケットが立つ広場から家に戻る途中らしき子供づれ、逆にマーケットへ向かうカップルたちが、怪人たちがやって来る道の上にいる。
「避難を呼びかけねばならぬな」
「でも、これだけうるさいとちゃんと聞こえるか……不安ですわ」
 手で両耳を覆いながら、『黄金角娘』金鯱 統(p3p006085)は大きな声で言う。
 ガガガ、ドドドの騒音に、麺伸ばし棒を振り回すおかみさんの怒鳴り声まで加わって、いよいよ音の暴力がひどい。
 統は冬桜の花びらが舞う振袖をふって、いやいやと体をくねらせた。
「鼓膜が破れてしまいそうです。迷惑なおおきなネズミさんたちを、犠牲者が出る前に倒しちゃいましょう」
 すぐ上にイレギュラーズたちがいるとは知らず、ドリカンガルーが鼻歌混じりで道に穴を開けながら通りすぎていく。光る棒剣を手にした三角コーンたちが、イーだとかヒーだとか、奇怪な声をあげながら人々を襲い始めた。穴に投げ入れるつもりなのだろう。後から来るサイローラーが上から均して固めれば、レッドロードの完成だ。
「もちろん、そんなことはさせない」
 自分で言うのも何だけど、と『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は表情を険しくした。
「割と寛容な方だと思ってる僕でもこれは気分が悪い。手加減は無しだ」
 堕天の杖に仕込まれた二個の魔石が、持ち主の怒りに反応して妖しく光る。
「コテンパンにやっつけてやるうぜ!」
 『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)が、威勢の良い掛け声とともに瓦をけり、空へ飛び出した。
(「それにしても年末恒例の道路工事、混沌世界でもやるんだなぁ……て、やっているのは怪人で凶悪迷惑行為だけどな」)
 一悟は袋の中から、赤と緑のリボンが掛けられたプレゼントボックス型爆弾を取りだして待機する。
「貴方たちもお行きなさい。行って街の人々を守るのです」
 アリシアは椅子から降りると、屍たちを地上へ派遣した。
 屍は自分で判断して動きはしないが、最低限、人々の楯にはなるだろう。
「年の瀬の忙しい時に道を塞ぐ悪い動物どもにお仕置きするのじゃー!!」
 デイジーの歌声を受けて夜空がうねり、寒風の波が地に吹きおろされた。
 ウィリアムが堕天の杖を掲げて雨雲を呼び、寒風の波にこぶし大の雹を乗せて落とす。
「いまだ! 行け、コウモリたちよ!」
「ハッピー・シャイネン・ナハト! 異世界からやって来た一悟サンタから悪い子たちに爆弾のプレゼントだ。つつしんで受け取りやがれ!!」
 葵が放ったコウモリ型のエネルギー弾とともに、一悟が爆弾入りプレゼントボックスをばら撒いた。
 同時にたくさん爆発が起こり、金や銀に輝く光玉が、積みあがった雹のツリーを飾りつけた。
 雹のツリーが崩れて道に開けられた穴の中へ落ち、吹きあがった土と氷片の煙が辺りを白くする。
「ここは妾たちに任せて皆は早く逃げると良いのじゃ!」
 デイジーが避難を呼びかけるが、息苦しさから涙と鼻水が止まらない様子の人々は動かない。
「オレが安全な場所まで連れていく」
 一悟は地上に降り立つと、小さな子を抱きかかえ、親の手を取った。
「すまねぇ、みんな。この人たちを安全なところへ送ったら、すぐ戻ってくる!」
「慌てなくてもいいぜ。こっちがピンチになることはまあないだろうよ」
 キドーは弦を引き絞ると、おかみさんの腕を掴んで引きずる三角コーンの一人に狙いをつけた。
「俺たちを舐めてるのか? いい的だぜ、まったく」
 音もなく放たれた矢は、斜め上から三角コーンの胸に刺さり、心臓を貫いた。錠前を開けるより簡単だ。簡単すぎてあくびが出てしまうぜ。
 もう一体を、統が桜の花びらを象った魔弾で倒した。
 悲鳴を上げて家の中へ駆け戻るおかみさんを、爆発で半焦げになった別の三角コーンが追いかけていく。
「ナニモノだルー!」
 怪人ドリカンガルーは、ようやく屋根に立つ影を見つけ、ピョンピョン飛び跳ねながら怒鳴った。
「オーホッホッホ! 私こそがドリルの中のドリル! ドリル怪人、リアナ・シンクライですわ!」
「ドリル怪人!? オマエはもしや――ル―の妹機かルー!?」
「違いますわ!」
 『ドリルロボ娘』リアナ・シンクライ(p3p006831)は怖気に身を震わせた。
 どちらも練達で作られたドリル怪人……もしかしてもしかしたら、ということもあり得るが、あんな糞ほどクオリティーの低いデザインの怪人と同一人物に設計、改造されたとは絶対に思いたくない。
 リアナはパカラクダのドリル号に騎乗したまま屋根から飛び降りると、おかみさんと三角コーンの間に着地した。
「さあ、私のドリル! 畝って穿って貫きなさい!」
 たたらを踏んで止まった三角コーン頭をドリルで貫き、粉砕した。
 ドリカンガルーのまぬけ顔に指を突きつける。
「カンガルーにドリルとか……似合わないにも程がありますわ! それ以上にやってる事が人肉敷き詰めたレッドロードの為の掘削用員とは……悪趣味な上に情けない! 折角のドリルが泣いていますわよ!」
「な、なにを言うルーか。ルーは総統のための道を敷く立派なお仕事をしていルーよ! な、相棒」
 そこへ、ドドドド、ドシンドシンという土固めの音を響かせて、怪人サイローラーが姿を現した。


「そのと――オ、オオオオ!?」
 怪人サイローラーは登場早々、地滑りの音とともに道路の穴へ落ちた。
 サイローラーが穴に落ちる瞬間に、いくつもの異なる言葉が呟かれたが、思ったこと言った内容はみな同じだ。

 ――アホや。

「ウワァァぁ! サイローラーぁ! 無事かルー!」
 ドリカンガルーが飛び跳ねながら、サイローラーの落ちた穴に近づく。生き残っている三角コーンたちもアリシアの屍を引きずって、穴の縁に集まった。ひざまずき、どんどん穴の前に屍と土を落としていく。
 サイローラーは体勢を立て直すと、鼻息も荒く、前脚のローラーを持ち上げた。
「オノレ、卑怯な手を! 名を名乗レ、まずは赤目。キサマからだ!」
「え、オレ?」
 よく片目が赤いことに気づいたな。葵は妙に感心しながら、律儀に名乗った。
「日向 葵っス」
「こらぁ、赤目! ヨウシキビ……戦隊もののお約束を無視するなー!」
「いや、夜で屋根の上だからって別にヒーローっぽい演出はないっス」
「デハ、その赤い目はナンダ! 何のために片方だけ赤イ!」
「何の為にって……いや、別にカッコイイからとかそういう理由じゃねぇっスよ」
「そうか! じゃ、次!」
 聞いたくせにあっさり流すサイローラー。がくりと肩を下げる葵。
 次はキドーだった。ローラーがどこを指しているのか少々判りにくいが、順番からいってたぶんキドーで間違いないだろう。
「俺ぁ盗賊であってヒーローではないんだが……まぁいい」
 つきあってやるか、と弓を背に回し、胸を反らせる。
「おうおうネオフォボス! なーにが悪の組織だ。こちとら特定指定外来ゴブリンのキドー様だぞ、オラ。サバンナの生態系を破壊してやろうか」
 サイローラーから見て穴の前方附近で小さくジャンプを繰り返し、土を削り落としていたドリカンガルーが止まった。小さな目を吊り上げてキドーを睨む。
「カンガルーはサバンナにいないルー! 動物園だルーよ!!」
 これを聞いてアリシアは盛大に溜息をついた。ゆるりと振る首の動きが、妙に芝居がかっている。
「愚かな」
「む、ルーを馬鹿にするオマエはダレだルー!」
 アリシアはスカートの布を指でつまんで裾を持ち上げると、妖艶な、見る者によっては尊大な笑みを浮かべて軽く膝を曲げた。
「ご機嫌、吸血鬼アリシアと申します。私達の街に手を出す愚者さん。教えてさしあげましょう、カンガルーは本来、サバンナの草原に生き、暮らす動物です。覚えておきなさい」
 吸血鬼がなんでそんなことを知っているのか、という疑問はこの際どうでもいい。某世界ではアフリカ大陸にクロサイ、オーストリア大陸にカンガルーが。どちらもサバンナの動物である。混沌世界ではどうなのか、それもまたどうでもいい話なので割愛する。
 知の衝撃にドリカンガルーはよろめいた。斜面を転がり落ちそうになって、慌てて飛び跳ねだす。
「し、知らなかったルー」
 アホか、とキドーがまたもや突っ込みを入れる。
「ヨシ、次だ。次! 時間がないぞ」
「なんの時間っスか? そんなに地獄へ行きてぇんなら、今すぐやってやるっスよ」
 まあまあ、とデイジーが口を挟んだ。練達でいま流行りの魔法少女アニメの主人公を真似てポーズをとる。
「愛と正義のディープシー美少女戦士、デイジー・クラーク! 月に代わってお仕置き(死刑執行)なのじゃ!」
 穴の中からサイローラーがむさくるしく、でいじ~ちゃぁぁぁん、と声を張り上げた。三角コーンたちも手を止め、妙な振りつけで屋根の上へ声援を送る。こいつら、どうやらアニメオタクらしい。
「新番組カ? 後でサインくだサ~イ!」
「アンタたちに後なんかないスよ」
 葵が冷めた声を怪人たちに落とす。
「うるサイ、うるサイ! だいたいキサマら誰に命じられてキタ!」
 どや顔の統が、腰に両手を当てて答えた。
「空に浮かぶお月さまに、お願いされましたの。“月夜を穢す、馬鹿どもを叩き出せ”と」
 月の光に照らされて、黄金の角がキラキラリーンと光る。
「そこのおっきいネズミさん。私がお相手しますわ」
「ネ……? ルーはネズミじゃないルー!! ドリカンガルーよ」
「栗カンガルー? 知りませんわ、そんな生き物」
「ルーを知らないとは。さてはオマエたち、異世界から渡ってきたウォーカー、いや、イレギュラーズだルー!?」
「いかにも我らイレギュラーズ。ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ、役儀により冥府へのご案内仕る」
 森の緑のマントが風を受け、満月の中でひるがえる。
 ウィリアムは古い友人の口上を真似て見得を切ると、ノリノリで最後を締めくくった。
「あ! わたくしも改めて名乗りを――」
「オレも、オレも!」
 ドリル号とともに地上へ降りたリアナと、避難先から戻ってきた一悟が同時に声をあげて抗議する。
「二人とも一度やっているからいいじゃないか。では、攻撃続行!」
 えーという声を聞き流し、『夜明けの虹』はさっと堕天の杖を振り上げた。


 魔石の光が空にルーン文字を描き出す。
「先ほどから穴に土を入れて『坂』を作ろうとしているようだが、無駄だよ。サイ君、君は穴から出さない!」
 ウィリアムに小細工を見抜かれた怪人たちは、大慌てして土を穴へ落としだした。
「無駄だと言ったよ」
 凄まじい音とともに容赦なく降り注ぐ大きな雹。地面に当たって砕ける様子を見ても、かなりの大きさの雹が降っていることがわかる。
 ドリカンガルーは跳んで逃げた。三角コーンたちは頭や背を容赦なく叩かれて、つぎつぎと穴の中へ落ちていった。
「イタイ、イタイ。これはタマラン!」
 サイローラーが、三角コーンたちをローラーで踏み固めながら坂を上がる。
 キドーが矢を放って牽制する間に、イレギュラーズたちは屋根の上から飛び降りた。
 葵は坂の上がり口に立つと、荒波が描かれた白いサッカーボールを足元に置いた。周りを見て、いまだに残っている酔っ払いたちへ声を張り上げる。
「戦いはいまからが本番っス。巻き込まれて怪我する前に、さっさと逃げろっス!」
 酔っ払いたちが路地へ駆けこんだのをしっかりと見届けてから、立てた人差し指を夜空に向ける。
 葵が放つ超ド級の必殺シュートを期待して、街の人々のざわめきが荒波のような勢いで開いた窓と窓を駆け抜けていく。怪人たちがだす騒音さえ聞こえないほどだ。
「サイローラーはやらせないルー!」
「かかったな。そっちから射程圏に入るのを待っていたっスよ」
 葵は半回転すると、右足を大きく後ろへ振り上げた。
「行くぜ! レーザーシュート!」
 怪人を憎む気持ちが凝縮された力強いシュート。サッカーボールがドリカンガルー目がけて一直線に飛んでいく。
 ボールが腹に強く食い込み、怪人は苦しそうに上半身を前に倒しながら落ちた。ドリルを回転させたまま、石畳の上を転げまわる。
 鉄壁の戦振袖を優雅になびかせて、統は前にでた。転げまわる怪人のドリルが誰の脚も傷つけないように身を盾にしてガードする。
「さあ、みなさま。私が押さえているいまのうちに、海苔カンガルーを倒しちゃってださい」
「『ノリ』じゃないルー、『ドリ』だルー!」
 ドリカンガルーは肘をついて上半身を持ち上げた。
 その背後へリアナが密かに忍び寄る。
「どうでもいいですわ。どちらがドリル怪人に相応しいか……いざ、勝負ですわ!」
 怪人が振り返る前に、ドリルで背中をずぶりと突き刺した。
「ひひひ、卑怯者。やり方が汚いルー。ヒーローならヒーローらしく、子供の見本になるように正々堂々やれだルー!」
「正々堂々? 汚い?」
 リアナは口元に手を添えて、高笑いした。
「何か勘違いしてません事? 私は怪人でもありますのよ? 『勝てば何でも良かろう!』の精神ですわ!」
「それダ! 違和感の正体ハ!」
 キドーとアリシアに両側から攻められ、半ば埋まりかかっているサイローラーが鼻から血を流しながら怒鳴った。
「ドリル娘とそこの緑チビ! あと、偉そうに死体の上でふんぞり返っているキサマ……どう見てもこっち側、我々の仲間ダロ。立ち位置間違えて――」
 キドーは式神の黒鴉を立て続けに放った。サイローラーの全身を太い嘴でつつかせて、話を止める。
「俺の体を流れる血は青黒いが……オマエら面白改造怪人の一員になった覚えはねぇな」
「今からでも遅くないルー! そのダサいモヒカンをカッコイイブーメランに改造してやルーよ。だから、こっちに寝返ルーよ!」
「黙れ、大ネズミ!」
 ぴしゃりと言って、キドーはドリカンガルーの尻に矢を放った。
「ちなみに、私はどんな風に改造してもらえるのかしら?」と、アリシアが屍の椅子から立ちあがる。
「まず、コウモリ怪人らしく鼻をブタ鼻に――」
「埋めておしまい!」
 アリシアが命令すると、本来は盾として使われるべき屍たちは次々と穴へ飛び込み始めた。土の代わりにサイローラー回りを埋めていく。
「しかたありませんわ。ちょっとアレンジしないと……おバカ怪人たちが弱すぎて、癒し手の出番がほぼないんですもの。ねえ、ウィリアム様」
「まったくだね。さっさと穴を埋め戻してしたら、みんなでおいしいものを食べに行こう」
 ウィリアムはドリカンガルーの尻に刺さったキドーの矢を避雷針に見立て、太い雷を一本落とした。
 ヒクヒクと痙攣するドリカンガルーの喉を、デイジーが召喚した黒き妖精たちが一丸となって襲い、切り裂く。
「お主も一緒に埋められるがよいのじゃ」
 デイジーとリアナでドリカンガルーを穴の中へ落とした。
「最後に埋葬品を入れてやるぜ」
 一悟はにやっと笑い、爆弾を穴の中に投げ入れた。
 直後、ドーンと派手な音をたてて爆発が起こり、月を貫くような土柱が立った。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 最後はお約束。怪人爆発で見事、倒しました。
 怪人たちが開けた穴は、すぐさま埋め戻され、新しく石が敷かれたそうです。
 イレギュラーズたちも街の人たちを手伝ったとか……。

 ご参加ありがとうございました。 

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