シナリオ詳細
<秘密結社NF>ルーナ・プレーナへの求愛
オープニング
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――ネオフォボスは幻想支配をもくろむ悪の秘密結社である。
――幻想防衛を依頼されたイレギュラーズは幻想の自由のため戦うのだ!
「号外!」
頬を薔薇色に染め上げて『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)は両手をぶんぶんと振り回している。好きな事になるとつい早口になってしまうディープな趣味を持つ山田ァッ! は瞳をきらきらと輝かせ「怪人が現れた!」と少年の様にそう言った。
『秘密結社ネオフォボス』。
皆、その名を聞いた事はないだろうか。幻想総支配計画を目論む、総帥ナンイドナイトメア(通称フォボス)を代表とした練達のアンダーグラウンドより現われた組織である。
今までにも様々な怪人が幻想へと攻撃を仕掛けてきていたが、見事、撃退!
しかし、新生・砂蠍によって情勢が大荒れの幻想は狙うならば今、そう、今だ――!
「まるで特撮ヒーローになった気分で、あーー、こういう時、ほら、番組の進行度に合わせてアクセとか玩具がめっちゃ販売されるって言うか、時期的にクリスマス商戦なんですよね」
やたら早口でそう言った雪風は特異運命座標の視線に気付いた様に目を逸らす。
「あ、あ、えーと……秘密結社ネオフォボスが幻想支配に向けて本格的な襲撃作戦。
幻想でも貴族たちが応戦する準備をしてまっす。けど、それだけじゃ足りないので至急、助けて下さいヒーロー! ってのが今日のオーダー」
ウキウキとした調子の雪風。少年(オタク)心全開で幼い頃に見た巨竜戦隊デッカイジャーだとか覆面ライダーだとか色々な話を織り交ぜてきている。
「敵は?」
そう、問い掛けられて彼は大きな咳払いを――まだ、話して居たかったとでもいう様に――ひとつ。
「ポエム怪人アライグマーン!」
●
その躰には鉄の車輪がついていた。歪な歯車を思わせ、潮の気配に怯える様に背を縮こまらせたふくよかな体躯にはふさふさとした尾がぐるりと巻き付いて居る。
悴む掌を幾度も擦り合わせて、水の中にじゃぶじゃぶと手を浸し続け洗い続けるのは彼の性分なのだろう。
ぐるりと巻きついている尾は下半身に位置する歯車に毛を巻き付かせぬ様に気を付けている。
「ルーナ・プレーナ――」
愛しい人の名を呼ぶように、彼はそう言った。
何時の日か共に在る約束のため……。
そう誓って愛しい人と共に指先に飾ったプルタブ――いや、イージーオープンエンドと呼ぶのが相応しいだろうか――を失くしてしまった悲しみは今だ彼の心をいやせない。
プルタブ――いやいや、やはりイージーオープンエンドと呼ぶべきだ――は何処に消えてしまったのか。あの、薄く緑に色付いていた美しい指輪――プルタブ、いやイージーオープンエンド――は。
最愛のルーナ。満月の下で微笑みを浮かべて居た彼女とはもう、出会う事は出来ないのだろう。
彼女は月。茫とした輪郭で地を照らし、冴え渡る様に照らしてくれた天の人。
地に潜り幻想を手にせんと泥に塗れて『幻想ポエム化計画』を目論む自分ではとてもじゃないが届く相手ではなかったはずなのに。
たった、一度、もしも『目的が達成できたならば』と伸ばした手が届いたことでこうも苦しまねばならぬのか。
愛しいルーナ・プレーナ。どうか――あと、もう一度だけ。
見て居て呉れ、愛しいルーナ・プレーナ。
そうは言うが、彼は誰が見ても下半身にキャタピラを付けられたかわいそうなアライグマだった。
- <秘密結社NF>ルーナ・プレーナへの求愛完了
- GM名日下部あやめ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年12月29日 21時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「ポエム、ポエマー、ポエテスト」
もふもふとした白い尾をゆらりと揺らして『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)は『こやっ』とその姿を見せる。
「怪人はポエムを語り、立ち向かうはポエムの使徒。ポエムに染まる街に慟哭のポエムが木霊する。誰がポエムの使徒ですか誰が。そんなことを言うやつは誰だ。私だ」
じと、と世を見る紅玉の瞳に、雪色の耳がぴょこりと揺れる。狐の申し子たる狐耶はパカダクラの背を撫で乍らゆっくりと目を伏せた。
「そんな感じで日々独白をするのが癖の私ですが、これポエムってことでなんとかならないでしょうか。なりませんかそうですか。そんな悲しい気持ちをポエムにしたためてアライグマーンに叩き付けていきましょう」
無論、狐耶は独白をするためにこの穏やかなる『単調シティ』に来たのではない。
怪人アライグマーンを倒すが為――秘密結社NFを倒すが為――立ち上がったヒーローなのだ。
「ぽえむーぅ? おーっ、ぽえむーって何だ? むずかしいな!
リナリナよくわからないゾッ! みんなわかってるのか? 頭良いなっ!」
こてんと首傾げ、茶の瞳をぱちぱちと瞬かせた『原始力』リナリナ(p3p006258)はワイルドな服に身を包み、動向を見守っている。
「それでは聞いてください――『ネタ切れ』」
狐耶の一声に「ポエムって難しいのかっ?」とリナリナは首を傾げ「むむ」と唸った。
「ああ、難しい。そして――強敵だ」
緊張を滲ませ、その端整な顔立ちを歪めた『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は可愛らしく首を傾げた儘のリナリナへと説明するように「危険だ」と静かに告げる。
「ついに恐れていた事が起こった。
秘密結社NFの本格的な幻想侵略が始まりやがったぜ。
このままでは単調シティがアライグマーンのポエミーな雰囲気に飲み込まれてしまう……プルタブ如きで街をポエム化されててたまるか!
俺達、幻想戦士イレギュラーズがアライグマーンに真のポエムって奴を教えてやる」
説明するかの如く『幻想戦士イレギュラーズ』として怪人を倒さねばならないと告げるジェイクに『海月』メーア・クヴァーレ(p3p006841) が瞳をきらりと輝かせる。
「正義のヒーロー! 格好いい響きだよね。素敵だよね。
格好よく決めたいけど、今日はポエムも決めないとね」
半透明の体に、身体の末端をぷるりと揺らしたメーアは『正義のヒーロー』として悪の怪人を倒さなくてはならないとその両の拳に力を込めた。
円らな瞳をぱちりと瞬かせて。『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はつい最近、幻想の街を襲った『新生・砂蠍』を思い出す様に唇を尖らせる。
「ついこの間、深緑からいきなり召喚されてはい決戦! にはびっくりだったなー。
そして今度は変な怪人……? 幻想ってすごいんだね、色んな人がいるんだ!
でも、街がめちゃくちゃになるのはだめ! やっつけないと!」
――素直に感心したのはフランの心根の美しさからだろうか。
「うんうん、わかったぞ! 変な動物を倒すんだなー!」
頷くリナリナに『月影の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)も柔らかに笑みを浮かべる。
「ええ。単調シティの皆様を楽しませる。これこそが踊り子としての矜持」
弥恵は聞こえるアライグマーンのポエムを耳にして『ルーナ・プレーナ』――満月を出されるのは月影の舞姫としては微妙な気持ちだと静かに目を伏せた。
●
――大切なモノを失った哀しみは、まるで深くて昏い海のよう
海は、どこまでも深く、どこまでも広い
その中に我が身が堕ちて、あてどなく漂い沈んでいく
昏い昏い海の中、僕は僕という境界すら捨てて、
昏い海と一体になっていく、闇に染まった心の中のように――
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は困惑していた。アライグマーンの心の内を思っていたらポエムが胸へと過ったのだ。
「これがポエム力……!? もし幻想中に、この能力が広がってしまえば――」
幻の脳内に浮かんだのは、パンツを求めるパンツ風邪的な奇妙なテイストの物語。胸中に募る思いを『ストレート』に言わず奥ゆかしくもパンツを思うが如く、口にしたなれば、その文字列も変わっていることだろう。
『ぱんつとその防具交換して下さい』――きっとその言葉も変化する。
『嗚呼、貴方のその防具は僕を灼熱の太陽のように焦がれさせてならない。
でも僕が貴方に捧げられるのは只一枚の乙女心のつまった白い白いぱんつ』
かたり、と幻の指先が震えた事をジェイクは見逃さない。
「幻……」
「ええ……秘密結社NF……なんて恐ろしいことを考えるのでしょう……」
身体を震わせた幻の隣で『こやーん』と指先丸めた狐耶が首を傾げる。
「さて、ポエムに怯むという事ですが」
「お任せを。より良い商品を提供することこそがビジネスマンとしてのマナーです」
眼鏡をくい、と弄り『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)はアタッシュケースをゆっくりと地へと置いた。特異運命座標達の様子に愛らしいおててをくしくしとさせていたアライグマーンが「何だ」と冬空に晒された寂し気な心を隠すことなく寛治へと向き直る。
――冷えこんだこの冬に……ただ熱いのは…俺たちのPoem――
「なッ――!」
戦闘員は寛治が突如として口にしたその言葉(ポエム)に怯む様に目を見開いた。慄くが如く、その身を震わせ戦闘ポーズを整えた戦闘員の許へと距離を詰めるは自立式の爆弾。自走し、周囲に爆炎を広めるその景色の中で寛治はゆっくりと目を伏せる。
――色褪せたEasy Open end.……Full Moonは消えても、
Undergroundにmemoryは残り続ける…………けれども。
So,sad.……今の私はSweeper……終わりなのさ、御伽噺の時間は――
「なんと……まるで冴え冴えと照らす月が如き言葉の羅列――魅せられる……」
「お? おお? タンチョの街にキャタピラの変な動物!!
よくわからないけど、街がぽえむー化! それから、なんかよくわからないけど、感動してるぞー!」
びしり、と指さすリナリナは戦闘員たちへと肉体言語を以て――そう、ポエムは口だけでないのだという様に――攻撃を仕掛け続ける。
「『爺ぃオンブ粘土』が何か知らないけど変な動物殴って中止させる!
ぽえむー、道路コーツーホー違反! 禁止! 禁止!」
「イージー……ううん、プルタブならきっとどこかにあるはず」
誓いの指輪ことイージーオープンエンド。フランは植物たちにその行方を知らないかと語り掛ける。宛らラプンツェルの様に、自然と対話するフランはどうしたものかと顔を上げて頬を掻いた。
「えーと、ポエムが効くのかなー。
深緑の隅っこであれこれ夢見ていた田舎娘のあたしの力、見せてあげる!」
フォールーン・ロッドを手にしたフランが前線へと走りだす。それを追い掛けるように、ひらりと身を回した弥恵は目を伏せ、ブレイクダンスを思わせる様にその身を反転させてゆく。
深く地を踏み締め、すらりと長い脚を動かせば舞姫は蠱惑的に唇を釣り上げ笑う。
「月の舞姫 華拍子! 天爛乙女の津久見弥恵、参上です! 皆様に魅せて差し上げましょう」
光返す黒をその身に纏い、戦乙女のベールを揺らす弥恵に単調なる人々の歓声が響く。そう、舞姫にとって歓声は何よりも『言葉』だ。アライグマーンにとってのポエムに通じるといえるだろうか。
跳ね上がる様に動き、凍て付く氷の鎖が放たれる。それはメーアが放つ情愛の色をして、絡みつく鎖に動きを止められて声を上げる戦闘員の足元に僅かに雪が寄る
「凍れ凍れ、氷菓のように!
それは凍てつく心、溶かせば甘い恋の味!
それは溶けない心、解けば切ない愛の色!」
言葉を尽くし、攻撃重ねるメーアへと襲い掛からんとする戦闘員へと爆炎が襲う。
「…Raccoonの悲しみに哀悼を捧げよう……
……だが、それは言葉では紡げない……千の言葉よりも、一つのバトルさ……」
寛治のポエムに「ネタ切れ」とこやーんとしていた狐耶はこてりと首を傾げた。
「暴れる怪人、戦闘員。立ち向かうは私達イレギュラーズ。
ならば高い所から現れるべきなのでは?知りませんけど」
『とう』っと地に足付けた狐耶は悲しんでいるのでしょうとアライグマーンを見据える。
「月は遠く消え、二度と届かないかもしれない。
胸が張り裂けそうなその思い深く、沈んだ気持ちは浮かび上がれない」
月――その言葉にアライグマーンの慟哭の如き攻撃が降り注ぐ。
受け流すが如く優美に動いた弥恵が顔上げ、反応した様にリナリナが戦闘員へと距離詰める。
「おおっとー?」
頬を掠めた一撃にリナリナがにい、と笑みを浮かべた。成程、伊達や酔狂で戦闘員ではないという事がその攻撃より伝わってくる。肌寒く柔肌を刺す凍て付く風さえも忘れるように彼女はアクロバティックに動きを見せた。
「大丈夫、君は一人じゃない。
君の周りには共に進む仲間達がいるから、今倒したけど
溢れる涙はじゃぶじゃぶと洗い流してしまおう、まるでアライグマのように
前を向いて歩こう、そろそろポエム飽きてきた――オーイエーソースイートベイベーナウ」
「最後なんて言った!?」
戦闘員が顔を上げる。狐耶は「飽きて来た」ともう一度、そのじとりとした瞳で見遣り乍ら告げた。
アライグマーンは絶望したように涙を浮かべている。幾ら言葉を尽くそうと、その気持ちは全て伝わらず、幾ら言葉を尽くそうと何時かは飽きて捨てられる――そう、ルーナ・プレーナもきっと自身を忘れてしまったのだと哀しみ乗せて。
――魂と血潮がぶつかって熱い火花が舞い踊る
火花は闇夜を照らす光となり、冷めた体を温めていく
蝶に出会って俺の中で何かが変わった、
胸の中の火花は炎となりこの身を焦がしていく
そしてこの思いは二人で一つ、それがふたりの愛なのだから――
とくん、とときめくは幻。ジェイクの告げるその愛紛れもなく愛しい彼女へ向けてのラブソング。白い指先を絡めるように動かして幻は彼の愛の暖かさの中ならば冬の凍て付く寒ささえ忘れるようにアライグマーンへと攻撃を仕掛けた。
――胡蝶が知ったのは狼が醸す甘い甘い蜜
だけど、その蜜は罠。蜜は胡蝶を蝕む
狼なしには生きられないように――
幻の謳う愛にアライグマーンが怯んで見せる。そのポエムに乗せて、氷上を舞うように、するりと踊る弥恵は観衆に向け、蠱惑的な笑みを浮かべて見せた。
「歌は日々を華やかな物に変えるもの、己に酔う為の物ではありません。
声を上げろ! 足を踏め! カスタネットを打ち鳴らせ!
さぁ、皆様、手を叩いてください楽しんでくださいませ!」
堂々なる口上に乗せ、その宵色の髪がひらりと揺れる。甘く細めた瞳の向こう側、今だ言葉を口にするアライグマーンが駄々こねるかの如くその動きを苛烈に見せた。
「るらー! ぽえむー!」
ばしりと殴りつけるリナリナ。
『べんキョー! べんキョー!』と頑張ってみても――分かったのはとりあえず体でぽえむーすればOKだという事だ。
「嗚呼、駆け出しの特異運命座標のあたしは非力な存在。
それでもあたしには無限に湧き出る力(インフィニティ・パワー)がある。
大気に漂うマナ、賦活の力、そして堕天の杖よ――あたしに力を授けて!」
手を伸ばし、フランが求めるは戦うための力。ただ、いのちを繋ぐために離れたR3(距離)はこれほどまでも遠く。
「下を向いてばかりじゃ、捜し物も愛も見つからないよ!
上を向いて、空を見上げてみて? きみが、ルーナ・プレーナを照らす太陽になるんだよ!」
言葉と共に、その胸贈深くから湧きあがる力がフランを支え続ける。
ヒーローとしてメーアはミラーシールドを手に只、ルーナ・プレーナへの愛を伝えるアライグマーンと相対した。
「きゅらきゅら きゅらきゅら 満月見上げて彼は行く
きゅらきゅら きゅらきゅら 夢を見上げて彼は行く
――月に魅入られ、月に見送られ」
月の如く動く弥恵の描いた弧。それはまだルーナ・プレーナと呼ぶには遠き三日月だったのかもしれない。
ただ、それでも、ルーナ・プレーナへの愛謡うアライグマーンの哀愁に乗せ、メーアは歌い続ける。
「きゅらきゅら きゅらきゅら どこまでもどこまでも
月を追いかけ彼はどこに着く――」
アライグマーンが吼える様に距離詰める。リナリナがぶつけた一撃がその顎へと飛び込み、アライグマーンが鈍く唸りを上げた。
――嗚呼なんて貴方は意地悪 胡蝶は狼の虜だというのに
甘い蜜を垂らしながら、甘い言葉を囁くの
愛の言の葉は甘い牢獄 狼なしには生きられぬように――
まるで甘美なる果実の様に。幻のポエムが響き、獣はその口を噤んだのだ。
●
愛を謡った獣はがくり、と項垂れ頭を覆う。
「ポエムは人の心を感動させる素晴らしいものだ。しかし、お前のやっている事はただの押しつけだ! 今のお前をルーナ・プレーナが見てどう思うか考えろ!」
ジェイクの一言に、アライグマーンは「ルーナ・プレーナ」とその肩を震わせる。
寛治は眼鏡をくい、と動かしながら震え,打ちひしがれるアライグマーンの傍へと膝をついた。
――なぜ悲しみに打ちひしがれながら『幻想 Poem Project』を追い求めるのか…………それは私には理解できない。私のBusinessesでは無いからな――
「ビジネス――ただの、金だというかッ」
吼えるアライグマーンの横面をべしりと殴りつけたリナリナは「ひとのはなしはさいごまでって誰かが言ってたぞ!」と頬を膨らませる。難しい言葉だらけ、彼女には『難しいこと』と認識されているがアライグマーンには確かに通じている。
――だが、聞こえてしまうんだよ……Easy Open Endを交わしたFull Moonを……
お前は、今も追い求めている……終わりにしよう。
……ここがお前の、見果てぬ夢のEndhingさ――
がくりと。項垂れたアライグマーンの戦意が消えていく。
「は、恥ずかしいかも……先輩たち、聞いてなかったよね!?」
振り仰ぎ頬を赤らめたフランにふわ、と宙を舞うように動いたメーアが首を傾げる。
「素敵だったと思うなあ」
「えっ、う、うう、わ、忘れて……!」
美しき言葉の旋律――ポエム――によって心に傷を得てしまったかもしれないとフランが両手で顔を覆い首をふるふると振った。
「どこかにプルタブがあったら、一緒にしてあげたいね。
洗っちゃう癖があるなら、水の中にあるかも? アライグマだし」
「アライグマですしね……」
アライグマが手をこしこしと洗う様子には見おぼえがあると弥恵は視線を向ける。敵へと甘さを見せるのか――そう呟きながらもどさり、と倒れたアライグマーンがゆっくりと宙へと手を伸ばす。
その姿を見詰めながら幻は「アライグマーン様……」と涙を浮かべ俯いた。
彼女の肩を抱くジェイクは悲しい愛の結末を見届けんと顔を上げる。その誓いは、その愛は――イージーオープンエンドを失った時に決まっていたのかもしれない。
――ああ、愛しのルーナ・プレーナ。
君への愛を力に代えて、それでも尚、この愛は大地を侵食することを赦さなかった。
此処で終わりなのだろうか。嗚呼、君が空で笑っている気がする――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
秘密結社NF……とても恐ろしい集団です……。
この度はご参加ありがとうございました。また、ご縁がございましたら。
GMコメント
日下部あやめと申します。
よろしくお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ポエム怪人アライグマーン
失せてしまったイージーオープンエンドを哀しみ、心まで闇に落ちたアライグマです。
愛しいルーナ・プレーナのため、幻想の街『単調シティ』を襲っています。
下半身にはその身には似合わぬ巨大なキャタピラや歯車仕掛けののびーーる腕などが装着された歪な怪人です。
話す言葉は全てポエムナイズされており、彼が居ることで周囲はポエム色に染まります。(素敵なポエムには怯みます)
●戦闘員*15
皆、持ち前のポエム力を発揮してポエム力(物理)で殴り掛かってまいります。
物理攻撃中心。アライグマーンの指示には従います。それなりに統率がとれていてgood。
●物語の舞台『単調シティ』
この町の人々は皆、単調な口調、暮らしをしています。地の分さえも質素な雰囲気です。
(例では「街は広かった。立つ家々は皆、質素で街の人々は柄のないドレスやズボンを身に着けている」くらいに単調です)
ポエム怪人アライグマーンの効果で街さえもポエミーな雰囲気になっています。助けて、このままじゃ街がおかしくなっちゃう!
皆さんはヒーローです。ポエム怪人アライグマーンから街を救え!
ちょっとおちゃらけた雰囲気で。
しかし、アライグマーンは居たって真面目にシリアスしています。
どうか、アライグマーンの魔の手から街をお救い下さい!
よろしくお願いいたします。
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