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シナリオ詳細

わがまま聖騎士己の弱さを悟る

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●自尊心の高さが災いして……
 天義……聖教国ネメシスは、無辜なる混沌の東部に位置する大国だ。
 宗教国家であるこの国は神という高位存在を尊び、敬虔な国民が多い。
 信仰というものは素晴らしく、神の名の元に正義と理想を掲げる人々。
 聞こえは非常に良いが、その思想がゆき過ぎた者も珍しくはない。そんな土地柄である。

 この国に所属する聖騎士達。
 国の為、そして神の為に戦う者達ではあるが、その一部では国の裕福さもあって親の七光りを受けて実力の伴わない聖騎士となっている者もいる。
 クレメントという若者もその1人だ。
 神の為なら身を投げ出すと彼は強い信仰心を抱き、それなりの鍛錬を積む若者ではあるが……。
 彼はかなりちやほやされて育ったのだろう。任務ですら地が出てしまうことがしばしばあり、わがままな行動をとることすらある。
 それは態度や普段の振る舞いにも表れ、鍛錬にも身が入らずに実力が伴わないのが残念なところ。
 ある日の鍛錬中、クレメントは部下に剣で打ちのめされてしまう。
「こんな、こんなはずは……!」
 自尊心の高いクレメントのことだ。己の弱さを認めるなど、彼にとっては許されないこと。
 思い立った彼はすぐさま休暇届を出し、翌朝、剣と荷物を纏めて天義を出立する。
『――神に仕える力を持つ為、己を見直してくる』
 そんな書き置きを残して。

●お坊ちゃん騎士を助けてあげて
『聖騎士クレメントがいなくなったので、捜してほしい』
 そんな依頼がローレットに届く。依頼人は、天義のとある一家からだ。
「以前、天義で集落民を困らせた聖騎士さん達がいまして」
 その依頼に参加していた者もいたが、知らぬ者の為にと『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)がその時の経緯を説明する。
 とある集落を脅かすクマ退治の依頼を受けた聖騎士達。
 彼らは力量不足もあってなかなかクマを討伐ができず、その上であれこれと集落民にわがままな要求をして滞在し続けていた。
「わがままなところ以外は人々のお仕事のお手伝いをしてくれるくらい、素直で誠実な人達なんだそうですけれどね」
 集落民はこの聖騎士達の扱いに困り果て、ローレットへと穏便に事態を解決して欲しいと依頼してきた。
 イレギュラーズ達は聖騎士達の機嫌を損ねよう気遣いながら、罠を張りつつクマを討伐した……というのが事件の顛末だ。
 その聖騎士の1人がクレメントである。依頼人は彼の両親らしい。
 クレメントはその後も無難に天義での職務を全うしてはいたようだが、ある日、戦闘訓練を行っていた際、部下に完敗してしまったのだという。
「よほど悔しかったのでしょうね。その次の日に休みを取って、書き置きを残して何処かへと出かけたのだそうです」
 目撃証言によればどうやら彼は雪山へと出かけたそうだが、冬の雪山は非常に危険だ。
 それに、その雪山には凶悪な雪男が住み着いており、近づく者へと見境なく襲い掛かるのだという。
「その聖騎士さんが勝てる相手かと言われれば……、かなり難しいようですね」
 ともあれ、依頼である以上はクレメントを助け出したい。
 ――備えは十分に。冬の雪山は恐ろしいところと聞きますから。
 そんなアクアベルの言葉を受け、イレギュラーズ達は冬の雪山に登るべく準備を進めていくのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。
 GMのなちゅいと申します。
 天義の坊ちゃん聖騎士が己の弱さに気付いて何とかしようとしている様子ですが、かなり無謀が過ぎるようです。
 ちょっと、いやかなり面倒くさい若者ですが、助けていただければ幸いです。

●目的
 クレメントの救出

●敵
◎雪男……3体
 毛むくじゃらの雪男で、身長2.5mほどもある怪人です。
 かなりの耐久力を持ち、力で攻めてきます。

・怪力(物至単・崩れ)
・雪玉(神超単)
・岩石投げ(物中範)
・吹雪(神中扇・氷結)

●NPC……クレメント
 神に忠実である聖騎士達ですが、神の為の行いを盾にややわがままな振る舞いをすることがある温室育ちの若者です。
 正義感の強く利口な若者ではあるのですが、剣の腕は今一つといった様子です。

 シナリオ『義を盾にする困り者の聖騎士達』に登場する聖騎士と同一人物ですが、前作を読まずとも問題なく参加できます。

●状況
 今回、クレメントは部下に打ち負かされ、1人で山篭りという極端な行動に走った様子です。
 雪山に登ると、彼は雪の積もった傾斜で雪男と交戦し始めていますので、援護を願います。

 雪山は雪が降っている影響で視界がやや悪いこともあって命中にマイナス補正、滑りやすい為に回避にマイナス補正が入ります。
 また傾斜に関して、高所と低所のキャラが交戦した場合、高所のキャラに命中回避がプラス補正、低所のキャラに命中回避にマイナス補正が働きます。

 事後、クレメントに説教、説得、フォローなどを願います。
 自尊心の高い面倒な天義の若者なので、言葉は選ぶ必要があるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • わがまま聖騎士己の弱さを悟る完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
レン・ドレッドノート(p3p004972)

リプレイ

●雪山と男の決意
 天義に到着したローレットのイレギュラーズ達は準備を整え、北にある雪山へと移動していく。
「わー、雪山も来るのは初めてだよー」
 すでに、天義の街並みを初めて目の当たりにしていた色黒の肌を持つ幻想種、『悪意の蒼い徒花』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)。
 故郷のラサ……傭兵とは正反対の場所とあって、彼女はできる限り着込んでいた様子。
 小柄な色白の少女といった見た目の『灰譚の魔女』エト・ケトラ(p3p000814)もスノーシューズを用意し、雪の山道を滑りにくくなるよう対策していた。
 雪道は非常に危険だ。それを金髪の魔法少女、『魔法騎士』セララ(p3p000273)も懸念しており、今回の保護対象の分も含め、雪山を知らないメンバーの為に防寒着や食料も用意する。
 イレギュラーズ達の今回の目的は、部下に負け、己を見つめ直す為にとわざわざ雪山へと登った聖騎士の捜索だ。
「強くなりたい、って気持ちはとっても素敵なこと。でも、なんでこの寒い時期に雪山なのよぉ……!」
 飲んだくれお姉さんといった様子の『酔興』アーリア・スピリッツ(p3p004400)も暖かい服装、歩きやすい靴を用意し、雪降る山道は自身の酒家眼と超視力で悪い視界をカバーしようとしていた。
 漆黒の魔剣を所持する『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)もまた、防寒対策としてマントやゴーグル、さらに山道対策としてホバリングするように飛んで移動する。
「あの、お坊ちゃん騎士、向上心があると言えば聞こえは良いけど、行動が極端すぎる!」
 結は以前の依頼で面識があり、それだけに苛立ちを隠さない。
「助けたら、一言言ってやらないと気がすまないわ!」
「雪山で修行とか極端に走るのが若さかーって感じだけど、その無茶で死んでたら世話無いしねー」
 ちょっと手伝いにとクロジンデもこの依頼に臨んでいたが、準備不足を見かねたセララが彼女にも防寒具を渡していたようだ。
「さくっと助けて連れ戻して、あったかいワインを飲むんだからぁ!!」
 そのアーリアの叫び声は、雪山の吹雪にかき消されてしまう。
 その無茶が過ぎる聖騎士に対して、好意的な意見もあって。
「無力を知り、恥を知る。半ば自棄とは云え、自らを鍛える発想になるのは良い」
 左目の周囲に刺青の入った『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は話を聞き、その聖騎士に見込みがあると感じていたようだ。
「ときに男は命をかけてでも、乗り越えなければならないものがある」
 獣種だが、人間種の姿をとり続ける青年、レン・ドレッドノート(p3p004972)も足場を気にして浮遊しつつ語る。
 記憶を失った彼は、鉄帝で自身を拾ってくれた少女の為、何でもした。
 大闘技場ラド・バウで拳を振るっていた他、略奪などにも手を染めたことがあるらしい。さすがに、命までは奪っていないとは本人の談。
「その決意を否定してはならん」
 少女を救う為に決意したレンだからこそ、例え無謀な行いであっても、男の……聖騎士の決めた覚悟に手出しなどならないと考えているのだ。
(ボクは戦闘の心得でも教えようかな)
 ある程度、仲間の状況が快適に過ごせる状況となったところで、セララはそんなことを頭に過ぎらせていた。
 こちらも滑落予防に鴉の翼で低空飛行を行う、『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)。
「あれは……」
 黒い山羊を思わせる頭と尻尾を持つ彼は、前方で何かが交戦していることに気付く。
 一方は大柄、毛むくじゃらの大男が3体。
 それらを相手にしているのは、剣を握る鎧姿の聖騎士。捜索対象であるクレメントに間違いないだろう。
「魔物などに、我が負けるものか!」
 剣で応戦する彼は、さすがに分が悪い。
 敵よりも低所にいることもあって斬撃を避けられてしまっており、さらに吹雪を浴びて体を凍りつかせている。このままでは危険なのは、誰が見ても明らかだ。
「言いたいことはあるが、まずは敵を退けよう。『座学』はそのあとだ」
 イシュトカに同意したメンバー達はクレメントの援護の為、急いで雪の積もった山道を登っていくのである。

●力で攻め来る雪男達
 イレギュラーズ達はまず、クレメントへと接触を試みる。
「な、何者だ」
「ローレットだ。雪男の討伐依頼できた」
 無関心を装い、レンは嘘をつきつつ目の前の雪男と対する。
 直後、クロジンデが雪男を庇うように前に出ていく。
 サポート態勢が整うまではと、ラルフもクレメントを庇うよう気にかけながらも、最も近い敵目掛けて小さな短剣を突き立てる。
 それはただの短剣ではなく、ラルフが己の血を解して錬成した死毒の刃。その毒はたちまち雪男の体内を駆け巡り、全身を侵してしまう。
 イシュトカも彼の傍に付き、召喚した浄化の鎧を纏わせ支援していく。
 その間に、結、セララが1体ずつ雪男の抑えに当たっていた。
「どうしたの、かかってきなさい」
「にゃーん」
 左手の敵に結が挑発すると、右手の敵にはセララが可愛らしいポーズで相手を魅了しようとする。
 雪男達も黙ってはおらず、拳で殴りかかってきた。
「大事なのはポジション取り。高所を取るんだ!」
 相手の殴りかかりを受けながらも、セララがクレメントのアドバイスとなるように叫ぶ。
「上方を取れば、有利になるはずだ」
 近場のラルフもまた、彼に助言していた。
 その間に、他のメンバーは雪男達よりも高い場所を目指す。
「貴方のご両親の要請を受けて、サポートに来たわ!」
「えっ……?」
 その際、エトがクレメントへと正直に話すと、彼はレンを一度見ていたようだ。
「不満も言いたい事もあると思う。けれど、先ずは生き残る事を優先して頂戴!」
「……了解した」
 この場をクレメントとエトらサポートに当たる仲間に任せ、レンはセララの抑える敵へと迫って。
「この環境、この敵、まるで天義ではなく鉄帝の環境と変わらないな!」
 叫ぶ彼は毛深い相手の胴目掛け、至近距離から衝撃波を帯びた一撃を打ち込む。
「聴けば、凶悪なモンスターであるようだな?」
 体に衝撃を駆け巡らせた敵は唸り声を上げて、持ち前の怪力で殴りかかってきた
「楽しませてもらおうか、雪男よ!」
 殴打されたレンは口元を吊り上げ、殴り合いで応戦していく。
 その間に、エトはアーリア、クロジンデと共に斜面を登る。
 ジェットパックで雪原を一気に駆け抜けていたアーリアは一様に降る吹雪を確認して。
「こっちも当たりにくいけど、そっちだって避けにくいでしょ!」
 ある程度敵から距離をとって仕掛けるアーリアは相手の能力を封じるべく、簡易封印を雪男へと施す。
「…………!?」
 思うように吹雪を吐くことが出来なくなり、敵は戸惑いを見せていた。
 クロジンデは超遠距離へと位置取り、集中してから全力で見えない悪意をセララの相手する敵へと放つ。
 思わぬ一撃を食らった雪男はいきり立ち、近場のセララやレンへと殴りかかってくるのだった。

●地の利を活かして……
 雪山斜面での戦いは続く。
 右手側、高所を取った結が己の硬さと回避能力を活かし、相手の挑発を続けながら雪男を攻めていた。
 妖刀で別れの文字を刻む彼女は非常に素早く、血を流す雪男は翻弄されていたようである。
 中央は、メンバー達に促されて斜面を駆け上がる聖騎士クレメントを中心に交戦を行う。
 全身に傷を負い、所々を凍らせた彼の状態を見て、エトは柔らかな癒しの光で彼を包み込み、凍った部分を元通りに戻す。
 アーリアも時に援護へと入り、治癒術を使って体力を回復していたようだ。
 イシュトカもまたクレメントに援護を続けながらも、仲間達の支援回復を合わせて受け持ち、聖なる光で仲間達を包んで態勢を整え直させていく。
 さらに、イシュトカはクレメントと交戦する敵へと無数の見えない糸を放つ。
「この糸を見切ることはできまい」
 糸を操った彼が雪男の身体を捕えると、そいつ目掛けてクレメントが切りかかる。
 ただ、糸は完全に雪男の動きを封じたわけではない為、クレメントは相手の動きに注意しながら攻め続けていく。
 支援態勢が整ったことで、ラルフはクレメントの傍から動かずに仲間と左手側の一体を狙う。
 敵とは距離がある為、ラルフは拳銃「アウトレイジ」から彼独自の遠距離術式を込めた弾丸を撃ち出す。
 それが相手の腕を射抜いたが、雪男は気にする素振りもなく殴りかかってくる。
 セララはそれを避けようとして態勢を崩しかけたこともあり、光翼のブーツで瞬間的に低空飛行を行う。
「道具の事前準備も強さの一つ!」
 その上で彼女は再度、両手の聖剣に正義の心を宿して相手を十字に切り裂いていく。
「山ごもりとは、己を鍛え、己と向き合うもの。貴様らのようなモンスターがいては、雑音になるではないか」
 同時に、傍ではレンが直接我流の喧嘩殺法を使って相手へと殴りかかっていて。
「山ごもりができぬ環境、腹立たしい! 疾く消えて失せろ!」
 連打を浴びせていたその拳が相手の胸部を強く打ち、さらにその顔面までも砕いてしまう。
 態勢を崩した雪男は、斜面を転げ落ちてしまった。
 次なる敵を狙おうとしたレン。その時、クレメントを相手にしていた1体が吹雪を吐き出す。
 態勢を整え直せなかったレンは全身を凍らせしまい、パンドラの力に頼ってその氷を砕くことになる。
「ここはわたくしが」
「ボクも手伝うよー」
 相手の攻撃の威力を見ていたエトはすかさず、倒れかけたレンへと高等治癒魔術を行使する。クロジンデもそのサポートにと、メガ・ヒールを重ねていたようだ。
 イシュトカはそのまま近場のクレメントに再度、聖なる光に包む。
「吹雪の範囲に味方を巻き込みそうなら、敵の向きを誰もいない方へ向けるのを優先だよ」
 その際、抑えの任から解かれた形のセララが直接クレメントへと呼びかける。
「頑張れ、負けるな! 生き残るんだ、クレメント!」
「…………!」
 声を聞くクレメントは戦いながらも、複雑な思いを抱いていたようだ。
 そして、イシュトカも再度、相手の体を見えない糸で絡めとる。
 ラルフはクレメントのカバーをしながら、挑発を続ける結が抑える雪男目掛け、呪いの魔力を持つ銃弾を発砲した。
「!?」
 呪いを受けた雪男が硬直したことを受け、雪上を舞う結が抜いた妖刀で雪男の全身を切り刻む。
 そして、クロジンデが放つ悪意が相手の意識を完全に遮断してしまうと、泡を吹いた雪男は先ほどの1体と同じように斜面を転げ落ちていった。
 残る1体も、かなり追い込んできている。
「後は任せるー」
 攻撃の手を止めたクロジンデは、回復に専念する形をとる。
 回復支援が厚くなったこともあり、糸に絡まれたままの敵へとイシュトカは威嚇術を使い、体力を削っていく。
 エトも一条の雷撃を迸らせ、さらに雪男の動きを制していた。
 メンバーは皆、クレメントが止めを刺すことを期待し、支援を続ける。
「力押しの敵にはフェイントが有効だよ」
 その最中も、セララは目の前の雪男と応酬を続ける聖騎士へと声がけし、アドバイスを行う。
「思い出して。キミはその剣で何を守りたかったのかを」
 それだけでない。彼女はクレメントの勝利を信じて声援を送り続ける。
 直後、幾度目かのアーリアの簡易封印が雪男を包み込んだ。
「今よぉ!」
「おおおっ!!」
 一際大声で叫んだクレメントが剣を振り下ろし、相手の肩から腰にかけて切り裂く。
 雪を朱に染めた猛獣は意識を失い、斜面に崩れ落ちていったのだった。

●弱さを悟る強さ
 雪男達を倒したイレギュラーズ達だが、戦闘の熱すらも冷めかねないほどの吹雪が周囲へと吹き荒れる。
「クレメントとやら。こんなところで一人、何をそんなに思いつめているものか」
 レンがうな垂れる聖騎士へと声をかける。
「とりあえず寒いから、洞穴の中で鍋でもしつつ話聞くか?」
 その後、メンバー達は近場で雪が凌げそうな洞穴を見つけ、火をつけて暖を取り始める。
「お疲れ様ぁ、格好良かったわぁ」
 場が暖まり始めたところで、アーリアがクレメントを労う。
「あの一発が決め手になったのよぉ」
 最後の1体に止めを刺したのは、間違いなくクレメントではあるが……。
「我は……」
 イレギュラーズへと気を払ったところで、アーリアは仲間に一旦預ける形で身を引く。
「ふふ、こんな見た目だけど、あなたよりずっとおばあちゃんなのよ?」
 少女の見た目のエトも説得とお説教をと近づく。
「自分を変えようと足掻く姿勢は貴いわ。けれど、自分の力量を見極めなくては蛮勇になってしまう」
 エトが一言発したところで、溜まりに溜まった感情をぶちまけようと結が迫ってきた。
「負けて悔しくて、修行するのは大いに結構。でも、いきなり1人で雪山に篭るとか無茶にも程があるわ! こんな事で簡単に強くなれる訳ないじゃない」
「山ごもりの、覚悟はいい。しかし、今回は状況と運が良かっただけだ」
 結の剣幕に圧倒されるクレメントへ、レンも修行は何があるか分からないと告げる。
「己の弱さを悟り、修行とは見事な心がけだ。然し何故、此処を選んだ?」
 ギフト「原初の勅令」を使うラルフはクレメントの態度を認めつつも、敢えて雪山にきたクレメントを咎めるように問いただす。
 修行の果てに死ぬ気もあったのでは、とラルフは考えていたのだ。
「だ、だが、倒すことはできたではないか」
「思い上がるな。結局成せたのは、他の人間と賜であろう?」
 体裁を取り繕うとしたクレメントに、ギフトの効果も相まってラルフの言葉がクレメントの心へと強く響く。
「君に一つ訊きたいのだが、騎士とは何かね?」
「騎士とは……」
 問いかけに明確な答えを告げられぬクレメントへ、イシュトカは続ける。
 ――騎士道にその身を捧げる者、剣を持たぬ人の盾となる者。
 なお、ロマンチストであり嘘吐きであり紳士であり商売人であるイシュトカ。騎士ではありえぬ彼は、自らの思う騎士について語った。
「そうであるならば、騎士たる者は徒に命を投げ棄てるべきではないと思うのだよね。人の命を預かるのだから」
「人の……命……」
 さらに、ラルフが告げる。
「騎士である前に君は人間なのだ」
 ――張れぬ見栄を張るな、男が見栄を張る時は命を懸けて張り徹せ。
 ――然し無為に死ぬべからず、死ぬだけならば誰しもやれる。
 説教に続き、説得を耳にするクレメントはすっかり自信を失ってしまったようにも見える。
「うちの父の受け売りだけど、戦士の成長は石を積んで塔を建てるが如し、なんだってー」
 肩を落とす彼に、クロジンデが話を切り出す。
 石を持ち上げている間は、塔の高さに変化はない。
 だが、積み上げたなら、石の分だけ一気に塔は高くなる。
「キミは今日一つを積み上げた、そういうことだろー」
 そんなクロジンデの言葉にラルフは頷いて。
「弱さを悟った君は昨日の君より強い」
 ――その悔しさを忘れぬことで、きっと君は誰かの光になれる。
「未熟とは云え、他者の為に戦おうとした者は、私は好きだよ?」
「そうだ。我は国の為、神の為に……!」
 クロジンデ、ラルフの話に、幾分か励まされたのか、クレメントの語気に力が入り始める。
 そんな彼に、己は己で守れるようになることから始めるようレンが勧めるが、それも簡単なことではない。
「……ならば、仲間を作れ」
 それに、結、アーリアが共感して。
「私達だって、トレーニングする時は複数でやる事が多いんだから」
「私だって、接近戦は苦手だから仲間に助けてもらってるのよぉ」
 本気で強くなりたいなら、ローレットに『私を強くしろ』と依頼くらい出してみろと結が促すと、アーリアもいつでもローレットにいらっしゃいと微笑んで見せた。
「貴方だって、一人じゃないんだもの」
「そうだな。ローレットはいつでも待ってるアンタのことを」
 レンもまた、仲間の提案に同意して見せた。
 そして、それまで黙っていたセララが近づき、自身のギフトで作った漫画を渡す。
 それは、漫画としてこの一連の戦いを記録したもの。要所要所で彼女が叫んでいたのは、この為でもあったのだ。
「戦闘で、皆が何を気にしてどう戦ったのか。意識して読んでみて」
 知識を得ること、考え続けることこそ、強くなる為の一歩だとセララは指摘する。
「キミはきっと強くなるよ。ボクが保証する。だから諦めずに頑張って!」
「あ、ああ……」
 いずれは一緒に人々を守ろうと、セララは彼に約束する。
「この世界はそう遠くない未来、きっと大きな嵐が吹く。魔種が齎す闘いの風が、ね」
 さらに、エトが魔女として予言して見せた。
 そんな時、力なき民の大切な人を守るのは、「世界の」盾であるエト達イレギュラーズではない。「国の」盾である貴方達騎士団だ、と。
「忘れないで、その背に何を背負うのか。何を護りたいのか。……その為に、今何を為すべきかを」
「……守る為に、何を為すべきか……」
 思い悩むクレメントに、エトの言葉は大きく響いたらしい。
 それを傍目で見ていたアーリア。
(……こんな彼も、いずれは「断罪」を叫ぶ騎士になっちゃうのかしらぁ)
 わがままなれども、まだまだ純粋な部分の多い天義の騎士がそうならないと信じたいと、彼女は密かに願うのである。

成否

成功

MVP

エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女

状態異常

なし

あとがき

リプレイ公開です。
聖騎士の捜索、保護、並びにフォローとお疲れ様でした。
MVPは天義の彼だからこそ響く言葉で説得に当たった貴方へ。
参加していただき、本当にありがとうございました!

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