シナリオ詳細
幻惑の花園
オープニング
●夢朧に
ふわふわと意識が浮かぶ。
あたりには靄がかかっており、遠くは見通せない。
ただわかるのは美しい花園であるという事だけ。
何故ここにいるのだろう、どうしてこんなことをしているのだろう。
ふと、そんな事を思えば意識が覚醒し、次々と記憶がよみがえる。
ローレットから掲示された依頼、魔物退治かならずもの退治だったか。
無事にそれを終え、報酬を受け取りにローレットまで戻る道のりだったはず。
そんな折に、ふと意識が遠のいたかと思えば、いつの間にかここにいた。
「うふふ、うふふ、迷い子だ。迷い子だ」
笑い声と共に、周囲に何かが飛び回る。
周囲を見回せば、そこには可憐な容姿をした少女達が飛び回っていた。
一瞬それを見て妖精か何かかと思いはしたが、その考えは翼を見て一瞬で違うと判別できる。
「いろんな夢、きれいな夢、きたない夢」
背中には禍々しい、悪魔のような翼。手には銃剣付きの拳銃のようなものを持っている。
「目覚めたい? メザメタイ? ダメだよダメ、ここで私達にずっと夢を見せていて、夢をずっと頂戴チョウダイ」
可愛らしい微笑みを見ていると、いいよと答えてしまいそうになる気持ちを抑え込む。
間違いなく幻惑の類、このまま彼女達の相手をしていたらどうなるかは分からない。
「強情ね、強情ね。でもそれなら眠ってもらわなきゃ。眠って、眠って、起きちゃだめ」
しかし一つわかることは確かだ。
こいつらをぶちのめさないと、目覚めることもできないという事。
「怖い怖い。皆を呼ばなきゃ、仲間を呼ばなきゃ」
武器を構える素振りを見せれば、少女たちは一目散に飛び去ってしまった。
仲間を呼ぶ、敵の数も多そうだが、やる事は一つ。
準備と作戦を立て、彼女達を叩きのめして脱出する。
受けた依頼の達成のためにも、こんなところで倒れないためにも、戦うしかないだろう。
- 幻惑の花園完了
- GM名トビネコ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年12月27日 21時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
ふわりふわりと花弁が舞う。
陽光が照らし、この場にいるだけで微睡に身を委ねたくなる花畑。
その花畑を歩くのは8人のイレギュラーズ。
「んふふ~、こんな素敵な花畑をお散歩できるなんて、とても幸運よね~」
「わっわっ!きれー……でも、マボロシ?」
あまり危機感を感じさせない『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)と『星頌花』シュテルン(p3p006791)は周囲を見渡すように歩いていた。
青空が見えるが、地平線の先には何も見えず、ただただ花畑だけが広がっている。
「ほんとココドコ? さっきの子たちおれみたいな深海魚をこんなところに連れてくるとはネ」
その後ろを歩くように『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)はきょろきょろと周囲を眺めた。
目の前の二人がはしゃいでいる気持ちはよくわかるけれど、水に浸からないとそもそも自分のココロが落ち着かない。
そして何より、ここは危険だ。ここまで生き延びてきた彼の勘が危険を確かに告げていた。
「夢か現かと言えば、夢。幻だろうな、これは」
シュテルンの疑問に答えるように『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)はふうとため息をついた。
「全くです。厄介なのに巻き込まれましたが、帰らねばなりませんからね」
『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)にポテトは頷く。
せっかく仕事が終わっても、ここで足踏みしていては心配されてしまうだろうから、早く帰らねばならない。
「夢……悪魔……」
水瀬 冬佳(p3p006383)は彼女達の言葉とその容姿を見て思う事があった。
「夢魔……というものでしょうか」
夢魔、サキュバス。夢に住まい、精を喰らう。
そんな魔物の存在が浮かんだが明確な答えは出ない。
「話はここまでだな」
がちゃりと音を立て、『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)が特殊改造された対戦車ライフルを構えた。
「うふふ、ふふふ、目がいいのね」
「見つかった、見つかった」
「ちっ……」
イラつかせてくれる。
ふわふわと周囲に浮かぶ彼女たちは、露骨にこちらを煽るように飛び回る。
対策していなければ、これで目を奪われていたと思うと更にそのイラつきは加速した。
この状況で、逸れることが危険と踏み、イレギュラーズ達は一斉に円陣を組む。
その周囲をふわふわと彼女たちは飛び交う。
「そこっ!」
惑わすように飛び回る彼女達が一列になる隙を見計らい、『フェアリィフレンド』エリーナ(p3p005250)が雷撃の術式を解き放つ。
見られていたこともあってか、相手はその場から蜘蛛の子を散らすように飛び散っていく。
それを糸切りとしたのか、一斉に手に持った銃による射撃が放たれる。
「おっと、これはまずいネ!」
波状攻撃気味に放たれる斉射。固まってしまったのがまずかったか、とにかく避けきれるものではない。
飛び出したイーフォは咄嗟に地中からなりそこないの死者を呼び出し、壁とする。
弾丸を受け、瞬く間に崩れ去るそれだが、弾丸を最大限防いでくれたおかげで大きな被害はない。
「けど、厄介だネ」
自身に打ち込まれた弾丸を見て、イーリスは冷や汗を流す。
体に走る痛みと同時に、自身から力が抜けていく感覚。意識まで眠りに落ちてしまいそうだ。
「ちょっといいかしら~?」
ふわふわとレストが一歩前へと踏み出る。
攻撃するわけではない、その行動に相手も攻撃の手が緩む。
「とっても素敵な花園なのだけれど、みんな帰らなくてはいけない場所があるの。帰してもらえないかしら~?」
レストがお願いすると「どうしよっかなー」と彼女たちは笑う。
答えはすぐに出る。
「っ……!」
放たれる銃弾。魔法の品である日傘を展開し、何とか直撃を防ぐ。
「面白くないからだーめっ!」
けらけらと笑いながら、彼女達は戦闘を再開した。
「お仕置き……必要そうね?」
「そのようですね……! いい加減こういう手合いは、前回の惚れ薬でお腹いっぱいですからね!」
あまりにひどい目にあった経験を思い出しながら、ラクリマは怒りを込めた歌を歌い始める。
広がる悲哀と怒り、そして呪いが周囲に広がり悪魔の彼女達を飲み込んでいく。
「ふふ、凄い凄い。怒りの歌だ、悲しい夢だ」
「気に入った、キニイッタ」
呪いに飲まれたにもかかわらず、彼女達は楽しそうだ。
「気味が悪いな」
「……本当ですよ」
エリーナの雷撃で散開した相手の中で、多くの相手をまとめて撃ち抜けるところに狙いを定め、ラダがライフルの引き金を引く。
重い銃声と、凄まじい反動と共に打ち出された銃弾が1体の胴を撃ち抜き、そのまま後方で構えていた少女達へと突き刺さる。
「よし……」
会心の一撃、1体撃破したうえで一気に攻勢に出るチャンスができた。
「いい一撃、今のうちに態勢を整えよう」
ラダの一撃で相手が怯んだのを見て、ポテトは自分自身に祝福を施す。
淡い光が自身を包めば、体にかかっていた不可が少しだけだが軽くなる。
そのままポテトは続けて他の者へと祝福をかけに回っていく。
「ありがとうね~。おかげで余裕ができるわ」
一番被弾したイーフォへ治癒を施しながら、レストはポテトに微笑んだ。
実際、治癒を施して回るだけでも疲弊し、意識が飛びそうになるのだがポテトの施す祝福によってその辛さもだいぶ軽減されている。
「シュテ、も、頑張れる……!」
ラクリマの歌から一転、甘く切ないバラードが奏でられる。
その柔らかい音色は、聞いているだけで意識をはっきりとさせてくれた。
精神的な干渉をシャットアウトすることに長けていなかった者たちも、これで存分に戦えるというものだ。
「いやな歌だ、消しちゃお、ケシチャオ」
けたけた笑いながら、少女たちが一斉に舞う。
標的は無作為ではなく、連携をもって単一に絞ってきた。
「こっち……きた……」
シュテルンの補助が厄介と判断したのか、まっすぐ彼女達はシュテルンに向かう。
攻撃を避けようと意識を向けるが、四方八方から迫る弾丸を躱しきれない。
「い、た……ぅ……」
一撃、二撃、弾丸が突き刺さりシュテルンから力が抜けていく。
意識が完全に飛ぶ、その瞬間に笑う少女の姿と向けられた銃弾が見えた。
「あれ?」
しかし、いくら待っても銃弾は来ない。
「んふふ~、大丈夫よ。おばさんがついてるわ~」
目の前にはパラソルを広げて銃弾を一身に受けたレストの姿があった。
「けけけ、違ったけどもう眠れ、ネムレ!」
ぐらり、とレストの身体が揺れる。
全ての攻撃をその身に受けたのもあり、完全に耐えきるのは難しかった。
「大丈夫か!」
倒れるレストを受け止めるようにしてポテトが割り込んだ。
急ぎ、祝福をかけなおせば、レストはうっすらと目を開ける。
「まだ大丈夫か……回復を頼む!」
「すぐ回復します……アモル、おいで」
駆け寄ったエリーナが愛の妖精を召喚すれば、傷ついたレストの身体が癒えていく。
一先ずは戦闘不能を逃れ、意識も切られてはいない。ぎりぎりだった。
「やってくれるね。数を減らさないと」
素早く印を切ると同時に、冬佳の影が揺れ動き、花畑を縫って動き出す。
「相手は違いますが、これもまた私の役目」
花畑の隙間から延びる影が、少女の一体を貫くと即座に切り裂いた。
ふわりと少女は消えていく。
「これは……」
正体すらわからない。なんだというのか。
ともあれ、あと6体。疲弊は大きいが、それは相手も同じ。
「大丈夫……ダイジョーブ……アカ、怖くない……怖くない、よ」
目の前でレストが自分をかばったここで舞った鮮血。
血液恐怖症である彼女は必死に恐怖を抑え、そっと囁くように唄を紡ぐ。
やわらかい音色が癒しの光となり、レストをはじめとした仲間たちを癒していく。
「でも……あの子達、花……ない」
こころを見通す花が、全く持って見えないのだ。
「しかしそろそろ余裕ないネ?」
続く戦いの中、完全にこちらの余力は無くなり始めていた。
いや、確かにまだ余力はあるが相手の火力とこちらの消費も併せて、長々と戦えないのだ。
「だったら一気に行く……!」
イーフォの雷撃に穿たれた少女をラダが撃ち抜き、一つ落とした二人の判断と共に、一気に勝負に出る。
それぞれが消費のない戦術を持ってはいるが、それを使うという事は実際に敗北を意味していた。
「お願いします、スティーリア!」
エリーナの呼び出した氷の妖精が、正面を舞う少女達に向けて無数の氷柱を降り注がせた。
次々と降り注ぐ氷柱を避けるように舞いながら、こちらにしきりに笑顔を向けてくるが、それに惑う者はいない。
「捉えた……!」
ラクリマの目が、翼を大きく傷つけた少女を捉える。
あれを逃す手はないと、自身の胸を裂くように傷つけ鮮血の鞭を自身から引きずり出し振るえば、その一閃が少女を捉え、引き裂く。
「あと4……ぐっ!」
しかし、相手も黙っていない。
攻撃したラクリマの隙をつくように、飛び込んできた少女が銃剣を突き刺し、引き金を引こうとする。
「させませんよ!」
しかし、その少女が引き金を引くよりも早く冬佳の影が少女の足元から延び、引き裂く。
「助かるよ……!」
「気にせず……あと少しです」
二人が背中合わせに周囲を見渡せば、ふっと体が軽くなる。
「気持ちはわかるが飛ばしすぎだ。思う壺になるぞ」
ポテトが祝福を二人にかける、火花を飛ばして近くの少女を追い払う。
派手な動きにはなっていないが、この状況を確実に保たせ意識を失いものがいないのは彼女の活躍に違いない。
「お前……嫌いだ」
「嫌いで何より。こんなところでお前たちに付き合って、お前たちを楽しませるつもりはない!」
明確に敵意をポテトに向けた相手に彼女が大きく啖呵を切る。
「うふふ、おばさんも頑張らないと」
まだ万全ではないが、余力の戻ってきたレストがラクリマの傷を癒す。
鞭を使った反動の傷も、突き刺された傷も一瞬で癒えたのを見ると、レストは式符から白鳩を生み出し放つ。
「流石のおばさんもちょっと怒ったかな。話、きいてもくれないでしょう?」
けたけたと笑う少女達。レストの優しさをあざ笑うように、むしろ利用してやろうという魂胆さえ見える。
「相手が悪いな。倒すしかない」
ライフルに銃弾を再装填し、ラダは再び狙いをつける。
目の前には2体。どちらを狙うか……2体?
「ちっ!」
咄嗟にスコープを除くのをやめ、ラダが周囲を見渡せばすぐ横に少女が1体銃を突き付けている。
回し蹴りを放ち、叩き落そうとするもふわふわと浮かぶ彼女はひらりと身をかわし、銃撃を一撃ラダに叩き込んできた。
「流石にそれはよくないケド。近づきすぎだネ!」
即座に、真横から漆黒の閃光が少女を飲み込む。
全員が近くに備えているからこそ、互いにカバーし合える距離を保てていたイーフォの一撃が少女達を減らす。
「助かる……その分は戦果で返す」
ライフルの単射が少女の一体へ放たれる。
「当たらない、アタラナイ」
けらけらと笑いながら、少女は銃撃を躱す。
しかしラダは続けざまに射撃を放ち続けていく。
「逃がさ、ない……」
突如として、少女たちの動きが完全に止まる。
その体にはオーラの縄が縛り付けられており、数の減った様子を見て反撃に転じたシュテルンの放ったものだった。
「いい援護だ」
最後の一射が、動きの止まった少女を撃ち抜き、吹き飛ばす。
「あと一つ……だいぶ意識がふらついてきましたけど。ポテトさんのおかげで余裕はありますね」
「ええ、動きも抑えられてますし、終わらせましょう。ネリー」
ラクリマが歌を蒼き刃と転じさせ、エリーナは悪戯好きな妖精ネリーを呼び出した。
妖精の魔力が少女を撃ち抜き、続けざまに蒼の刃が降り注ぐ。
銃は砕け、羽は切り落とされ、最後の少女も戦う力を完全に失った。
「終わり」
とどめを刺すように、影が少女を撃ち抜く。
「あなた達は何、なんでこんなことを?」
冬佳が少女に向けて話しかける。
完全に仕留めたら消滅する。素性を知るにもとどめを刺す前に聞いておきたかった。
「そうね、おばさんにも聞かせてほしいわ」
レストも落ち着き、少女に問う。
「くふふ、夢はユメ。夢を現に、望むものをミタイデショ?」
「何を」
それ以上を聞くよりも前に、少女はひとりでに消え去った。
力尽きたか、自決したかは分からないが、少女が消えると同時に周囲の風景がぶれる。
花は消え、辺りの風景も見知った幻想のものへと変わっていく。
「戻ってこれましたね……」
周囲を見渡し、ラクリマは一息ついた。
ふと思い立ち、周囲の植物に問いかけてみるが答えは一切分からない。
「わかりませんか……でもこれ、残業手当でますかね?」
「完全に契約外だ」
「出ないデショ」
ラダとイーフォに突っ込まれ、ですよね、と落胆するラクリマ。だがまぁ、報告だけはしっかりしなければなるまい。
「ハナバタケ……消える、しちゃった……いつか、ホンモノ、見る、出来る、かな?」
消える花畑を見送りながら、シュテルンは彼女達を思って呟いた。
「そうね~夢を見たかったのかしら……でも、きっといつか見れるんじゃないかしら」
夢を現に。この言葉が引っ掛かりはするが、レストは彼女に優しい言葉をかけることにした。
今はちゃんと戻って、しっかり休んで本当に見たい夢をしっかり見よう。
帰還するイレギュラーズ達の周りで、ふわりと柔らかい花の香りだけが舞い散った。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
おはようございます。無事に皆さん帰宅出来て何よりです。
非常に戦いづらい環境でしたが、対策と対応がしっかりしており被害は最小限となりました。
何かしら怪しい動きがありそうですが、今はしっかり身を休めてください。
ご参加、ありがとうございました。
GMコメント
最近花ばかり題材にしている気がしています、トビネコです。
今回は、無事に依頼を終えた帰りに皆様は突如として不可思議な現象に巻き込まれました。
現時点で思考ははっきりしておりますが、謎の空間に閉じ込められていることに違いはありません。
脱出方法は定かではない状態ではありますが、とりあえず空間を作った少女達を全て叩きのめせば脱出は容易でしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●状況について
幻想で依頼を終えた帰り道、不思議な空間に巻き込まれています。
辺り一面花畑のふわふわした空間で、遮蔽物となりそうなものは一切見当たりません。
しかし、空間が作用するのかどんどん体から魔力の様なものを吸い取られている感覚があります。
システム的には、APを使いすぎてAPの現在地が50以下となってしまった場合、行動に支障が出始め、完全になくなったら戦闘不能と同等の状態になってしまいます。
本来の環境よりも過酷な状態であり、短期決戦かAPを温存して立ち回る事が推奨されるでしょう。
●少女達について
全長80㎝程で、悪魔の翼で宙を舞う少女達です。
合計で8人存在しており、その全てが手に銃剣付きの拳銃を装備しております。
飛行高度はそこまで高くないため、飛行戦となることはございません。
機動戦での射撃を得意としながらも、術式による直接攻撃や【魅了】【恍惚】といったBSを付与する術式を用いてきます。
連携力にも長けているため、3体以上がまとめて行動すると本来よりも高い命中や威力を用いた連携攻撃を行ってきます。
弾丸には特殊なものが使用されているのか、着弾するとAPにもダメージが入る仕組みになっているようです。
どちらかといえばとどめを刺すよりも行動不能にさせてしまう事を考えているようで、全員APがなくなってしまった場合は脱出ができなくなるかもしれません。
以上、突如現れた強敵ではありますが、無事に目覚めて帰ってきていただける事を祈っております。
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