シナリオ詳細
まだ音沙汰があるうちに……!
オープニング
●集落に襲来する悪魔、再び
とある幻想内の村落。
何気ない日常を送る人々の前に、ふらりと1人の旅人が訪れる。
「少しよろしいでしょうか?」
「あ、はい!」
白い素肌に黒い光翼を持つ美青年とあれば、うら若き乙女がときめかないはずもない。
女性は瞳を輝かせ、美青年と丁寧に対して村落内へと案内する。
現状、数え切れないほどの旅人が召喚された混沌の地において、うらびれた田舎であったとしても旅人が訪れるのは別段珍しくはない。
一見すれば、何事もない旅人の来訪。
だが、この男は、幻想各地に指名手配される賞金首となっている「再生」を司る悪魔・イヴァクである。
その顔を物影から見ていた中年男性は青年の正体を察し、慌てて村落長へと状況を報せに駆けていく。
「また……か」
話を聞いた村落長が深く溜息をつき、くわえたパイプから煙を燻ぶらせる。
どうやら、先日もイヴァクは村落を訪れていたが、すぐ村から去ってしまったようだ。
今回もイヴァクは何事もなく、姿を消す可能性も否定できない。
下手に不安を煽ると、村落が大混乱となる。
そうなれば、イヴァクの思う壺。相手は秩序が乱れた状況を楽しむ狂人なのだ。
被害を防ぐなら村からの一斉避難が早いかもしれないが、果たしてそれをイヴァクが黙って見過ごすだろうか。
また、村落民は皆それぞれの生活がある為、簡単にはそれを放棄などさせられない。
「早急にローレットへと伝達を。あと……」
指示を出す村落長はしばし、頭を抱えて。
「あと、避難民がパニックを起こさぬよう、せめて日暮れまでは野良仕事や山菜狩りを頼んでおいてくれ」
イヴァクも敢えて、名乗ってはいない。自身の悪名が高まっていることも自覚しているのだろう。
その青年がイヴァクだと、村落民には告げないように。
村落長が最後にそう注意を促すと、大きく頷いた中年男性は外へと走っていく。
「果たして、我等の命運はどうなるものかな」
村落長は再び煙を吹かしながらも、言いようもない悪寒を止められずにいたのだった。
●危険な悪魔の討伐依頼
先日、幻想国内某所において、1つの村落が壊滅的な被害を被った。
それは、黒い光翼を持つ白皙の美青年が1人で行ったとされる。
彼の名は、「再生」を司る悪魔・イヴァク。
とある世界から召喚された旅人で、『生誕の刻天使』リジア (p3p002864)と面識があるらしい。
そいつは自らの快楽の為に平和な村落へと現れ、人々を手にかけて「再生」を行う。
されど、力が不十分なのか。それとも、意図的にそうしているのか。
理性のない状態で再生した死者を生前の友人、家族らに襲い掛からせ、秩序の乱れた光景に興じる狂人である。
イヴァクの存在を危険と判断したローレットは指名手配を行いつつ、懸賞金をかけた上でさらなる目撃情報を募る。
『目撃した場合、すぐに報告を。集落壊滅の危機あり』
ただ、敵もかなり狡猾だ。
イヴァクは幾つかの集落に姿を現すことで、周囲の住民とイレギュラーズをかく乱している。
次に襲撃するのはどこになるのか、不安を煽ろうとするイヴァク。
しばらく、人々が神経を尖らせ、すり減らすのを見て、そいつは再び自らの快楽の為に動き出す。
とある村落に再び現れたイヴァクが狙ったのは、自らが壊滅された村落民が避難した場所。
それを聞いたローレットのイレギュラーズ達はすぐさま、王都を出立する。
到着は夕方予定とのこと。
行きの馬車の中、メンバーは手早く作戦を立てながらも、イヴァクの討伐を目指す。
- まだ音沙汰があるうちに……!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2018年12月16日 22時40分
- 参加人数10/10人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●「再生」を司る悪魔
馬車に乗り、幻想のとある村落へと向かうイレギュラーズ達。
「鉄帝だ蠍だなんだで、忙しいって時にねぇ?」
幻想中の混乱に乗じたかのようなこの厄介事を、『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)はどう攻略したものかと考え込む。
「悪魔イヴァク……今度こそ仕留めるわ。気分悪すぎだもの」
真剣な表情で告げた『銀蒼棄狼』詩緒・フェンリス・ランシール(p3p000583)に、『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)が頷く。
「……前回は逃げられてしまったけど、次こそ倒してやるわ」
詩緒やユウは以前、別の村落をこのイヴァクが壊滅させたものだという調査結果をローレットへと提出している。
これくらいしかできないとユウは考えながらも、皆の仇をこの場で討つと堅く決意して。
「その為にも、冷静に行動をしないとね……。リジア、無理はしないでよ」
だが、ユウの言葉にも、『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)は反応を見せない。
「……リジアさん、多少熱が入っているようです」
「宿命の敵という奴か……」
そんな彼女の様子は珍しいと『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)が印象を口にすると、『世界喰らう竜<ワールドイーター>』ヨルムンガンド(p3p002370)も張り詰めた彼女の雰囲気を察して。
「心配だが、私に出来る事を全力を尽くしてやろう……友の為に!」
気合を入れるヨルムンガンドの様子は、非常に頼もしい。
「件の悪魔……ですか」
「ふん、命を弄ぶ悪魔ときたか」
Lumiliaの言葉を受け、『鳳凰』エリシア(p3p006057)は今回の相手に何か思うことがあるのか鼻で笑う。
「再生といえば聞こえはいいですが、やっていることはただの人殺しなのです」
事情を聞いた『暗躍する義賊さん』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)は、素直な感想を吐露する。
「このまま捨て置いていたら被害が広がりかねないですし、なんとしてもここで倒してしまいましょうっ!」
『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)もルルリアに同意して。
「『再生』だかなんだか知らないけれど、ヤバイ宗教ならこのセカイは天義でマに合ってるんだ」
悪魔は地獄へお帰り願おうと、彼は拳を握り締める。
一方で、『脱兎』真菜(p3p006826)は恐怖に身を震わせて。
「お仕事なんです。怖いのも、痛いのも恥ずかしいのも……」
村の人を守る為、真菜は依頼の成功の為に己を奮い立たせる。
「到底許されるものではありません。確実に討伐しましょう」
Lumiliaが告げるとメンバー達は頷き、視界に入ってきた村落を見つめるのだった。
●悪魔が襲来するまでに
黄昏に近づく頃、村落に到着したイレギュラーズ一行。
日が沈むまでの間、メンバー達は大きく索敵と避難に分かれて散開していく。
真菜が村落民に行った聞き込みを元に、イヴァクが……昼間に訪れた青年がどこに向かったのかを調査する。
その痕跡を探す詩緒は村の地理を覚えつつ、戦いとなった際の射線の確保、遮蔽物などを確認していく。
ルーキスは呼び出した鴉のソラスと視覚共有しつつ、遠方の監視を行う。敵も安易に姿を晒さず、夜更けを待っているようだ。
「黒い光翼を持つ男がこの地に住む命を脅かそうとしてる……。私達はそいつを倒す為に来た、力を貸して欲しい」
集落の周囲を歩く野良犬などの動物へ、ヨルムンガンドは見つけ次第吠えるなどして位置を報せるよう頼み、他の動物にもその伝達を託す。
ユウはというと、こっそりと村中を探してもらうよう精霊達に協力を仰いでいた。
さらに、ユウは前回顔を確認していることもあり、自身も村落民へと聞き込みを行う。
(確か、こういう時は……)
親友が言うには、井戸端会議をしているおば……もとい、お姉さん方に話を聞いてみるといいとのこと。
そうして、ユウは昼間現れた青年について情報収集していたようだ。
一方で、避難誘導に当たるメンバー。
エリシア、イグナートは今回、ローレットに相談を持ちかけた村落長の元を訪ねる。
「日が沈むと、この村を壊す悪魔が現れる。一刻の猶予もない。我らに従って欲しい」
自分達がローレットだと名乗ったエリシアができるだけ村人が一所に集めて貰うよう頼むと、村長も危機は感じていたのかすぐに同意する。
エリシアに続き、イグナートはその場から出ないようにと頼んで。
「村に近付けないように戦う予定だが、村の中に入られたり火を着けられたりした場合に備えておいてほしい」
村落長は頷き、指示に従って避難を決めたようだ。
それを受け、ヨルムンガンドはバイク『Rex-2400』に跨り、集落民の避難に当たる。
「危険な敵がこの村にやってくるという情報があり、この村が戦場になる可能性があります」
ローレットが村落民の安全を保証するから集会場への避難をと、ルルリアは練達上位式で呼び出した式神も使い、人々を誘導していく。
「一度混乱が生じれば、その後に『統率』するのは困難です」
とにかく、パニックを起こさぬように。Lumiliaは細心の注意を払う。
さらに、リジアは自らのカリスマを活かし、上目遣いで村落民と意思疎通を図ってそのサポートを行っていた。
(イヴァクの名を出さぬように……か)
時にリジアは光翼で空を飛び、逃げ遅れた者がいないか上空から確認していく。
その際、彼女は周囲を見回し、アレ……イヴァクがいないかと確認していたのだった。
●悪魔、襲来
辺りが暗くなる中、索敵を行っていた真菜。
避難誘導にも彼女は当たっていたが、あくまで相手の接近を察するのがメインの役割だ。
ジッと耳を澄ましていた彼女は、こちらに向かってくる一団を察知する。
ザッ、ザッ、ザッ……。
10名程度の人影を従え、宙を浮遊する青年。
聞いていた情報通りの容姿だと確認し、真菜は急いで仲間達の元へと戻る。身の危険が及ばぬところで気付いたこともあり、彼女は気の進まぬギフトの使用には至らずに済みそうだった。
日が暮れ、星空が瞬き始める頃になっても、イレギュラーズ達の避難誘導は続く。
「皆さんの安全の為、従ってほしいのです」
ルルリアの声が村落に響く中、イヴァクに襲われた村落の行き残り……避難民達も戻ってくる。
それを確認した詩緒は、彼らをそのまま集会場に向かうよう促す。
どうやら、彼らの処遇についてもメンバー間で齟齬もあったようだ。
状況を考えれば、彼らはイヴァクの名を出さずとも、襲撃という事実を報せるだけでもパニックを起こす危険がある。
その時だ。動物達は吠え、精霊達がざわつき、徐々に外が騒がしくなってきたのは。
「敵……来ました!」
仲間を呼びにやってきた真菜。
すでに、ルーキスが相手と対する最短ルートを割り出してくれている。
避難民に同様が走る。たかだか数日程度で、住処を追われ、知人に襲われたトラウマが癒えるはずもないのだ。
そこで、エリシアがこの場の人々を一喝した。
「従わないならばそれも良し。しかし、お前程の力で悪魔に抗えると思うな。死にたくないなら我らに従え!」
エリシアの一喝で一時集会場内は静まり返るものの、それでも、この場から逃げたいという声も上がり始める。
興奮冷めやらぬ人々の為、Lumiliaが笛の音を響かせて落ち着かせようとしていく。
「私達は、危険な敵を倒す依頼を受けたローレットだ」
そこで、ヨルムンガンドがその場の人々へと名乗り、パニックは避けたい旨を伝える。
イグナートはかつてローレットに救われた事実を示しつつ、言葉を選んで呼びかけた。
「もう一度、自分達を信じてほしい」
その上でイグナートは窓、扉を開けない様にと告げ、敵の出現場所へと向かっていく。
「あと、施錠を勧めるわ」
詩緒も付け加えるように一言残し、仲間を追っていったのだった。
ルーキスが待ち構える村落の入り口付近。
一足早く、リジアも駆けつけて黒い光翼の青年を出迎える。
「……どうやら、村落民は気づいていたようだな」
やや眉を顰める「再生」の悪魔、イヴァクに対して、リジアは怒りに満ちた表情で4枚の青白い光翼を広げる。
「滅ぼさねばならない……。貴様という存在はよもや、一刻の生存すら認められない」
「くくく、君に俺が止められると思っているのか?」
リジアの姿を認め、イヴァクが高圧的な視線で問いかける。まだ、敵は自身の優位を疑っていないようだ。
その証拠にそいつが指を鳴らすと、足元から多数のゾンビが姿を現す。
10体程度の何処かの村人らしき姿の他、犬の獣種と思われるナイトと幻想種と思しきマージが1体ずついる。
「之は世界の意志に非ず……。だが……、生き物らが許されぬとした。故に、破壊する……お前を……!」
丁度、駆けつけてくる仲間達を背に、リジアは防御重視の耐性をとった。
さらに、ヨルムンガンドが到着してすぐ、イヴァク目掛けてブロックを試みる。
相手がそれほど高く飛んでいないこともあり、ヨルムンガンドはイヴァクを自由にさせぬようにと抑えつけていく。
なお、少し後ろにLumilia、その後ろにユウが控え支援を行う構えだ。
黒い光翼を振るい、イヴァクはヨルムンガンドやリジアを振りほどこうとしながらも問いかける。
「くくく、だが、君達に『再生』した彼らを倒せるかな」
悠然と構えるイヴァクが指を鳴らすと、ゾンビ達は呻き声を上げて、イレギュラーズ達へと歩み寄ってきた。
「先に、あれをどうにかしないとですね」
それらのゾンビに先んじて真菜が飛び込み、アドレナリンを噴出しつつ殴りかかっていく。
真菜の呼びかけに応え、イグナートは右手に全身の力を集中し、ゾンビ達へと叩きつける。
彼の一撃は大きな爆発を巻き起こし、ゾンビ達を炎に包み込む。
燃え上がる敵は身をよじらせ、肉片を飛ばし、怨嗟の声を上げて反撃してくる。
「生を祝福する神が相手になってやろう!」
エリシアも相手が密集している所を目掛け、心の奥底に渦巻く悪意を殺傷の霧へと具現化し、ゾンビ達の身体を切り裂いていく。
続けざまにルーキスは仲間の位置を気がけ、降魔の禁書を手に取る。
一条の雷撃をと考えていた彼女だったが、スキルの用意ができていなかったこともあって止む無く黒の翼狼を呼び、敵へと食らいつかせていく。
「できれば、最初にマージを狙いたかったけれどねぇ」
ゾンビマージは大きな杖を振るい、炎の術を発してくる面倒な相手。
ただ、ゾンビを相手取るメンバーは多くが数を減らすことに重点を置く。
「ゾンビの数が多く放っておけないので、ルルはゾンビを先に倒すのです」
多少ゾンビから距離を取りつつ構えを取るルルリアは、取り出した式符から冥闇の黒鴉を呼び出す。
ルルリアの黒鴉は一直線に飛び、ゾンビの身体を貫通していく。
真菜はヒットアンドアウェイの立ち回り。相手の攻撃の隙を見つつ近寄り、ルルリアが一撃を与えたゾンビを殴りつけて地に沈めていく。
「なるべく、一体一発で決めたいけど……」
幸い、近辺に集落民はいないこともあり、集中力を高めた詩緒はライフル『コールド・ブラッド』を相手の頭を狙い撃つ。
狙撃の名手である詩緒は一見すれば両手で扱うはずのライフルを片手で操るかのようにして、銃弾を発射していく。
彼女は攻撃直前の敵を優先して攻撃していたが、さすがに一発で仕留められるほどゾンビも柔ではなかったようだ。
●「再生」したモノ達
徐々に、イヴァクも本気を出してくる。
「そんなに戯れたいか、ならば……」
イレギュラーズ達がゾンビの殲滅を優先させているのを見て、イヴァクは再生の光を煌かせてその数を増やそうとする。
指を鳴らして地中から現れる新たなゾンビに、皆、苦慮することとなる。
ただ、その分、イヴァク狙いのメンバーは負担が楽になっていた。
とにかく自由にさせぬようにとヨルムンガンドはイヴァクに張り付き続け、黒・瑠璃色の異形の腕をもって殴りかかっていく。
Lumiliaは一歩下がった位置で身構えながら白銀のフルートを吹き、神の剣を授かりし英雄の詩曲を奏でる。
それによって、近場のイヴァクと対するメンバー達に、加護を与える力を与える。
相手を見つめるリジアはこちらにも寄って来るゾンビに辟易としながらも、空間ごと掌で裂いてゾンビ達の身体を切り捨てようとする。
空間は元に戻るが、ゾンビの体が元のようにくっつくことはない。
後方から、ユウが後詰めするようにブレスレット型の魔導具『雪華』から発した青い魔力によって、そのゾンビの身体を吹き飛ばしていった。
イヴァクがゾンビを増やすことで、そちらの数を減らそうと動くイレギュラーズ達は徐々に傷を深めてしまう。
練達の治癒魔術を行使するエリシアが仲間の癒しへと当たるものの、ゾンビ殲滅を図るメンバーには辛いところ。
ゾンビマージを叩きたいイグナートだが、目の前のゾンビナイトに邪魔をされており、長剣で連続して切りかかられていた。
ただ、前線にいるゾンビナイトはイレギュラーズ達の範囲攻撃にもかなり巻き添えとなっており、すでにふらふらとなっている。
一通り相手の攻撃に耐えたイグナートは、至近距離から拳をその腹へと打ち込む。
衝撃波を浴びたゾンビは耐えられず、その場に溶けるように崩れ落ちてしまった。
一方、ゾンビマージを狙っていたルーキス。
結果的にマージが最後に長く残ってしまったこともあり、彼女は敵の炎に幾度も焼かれてしまう。
運命の力を砕いたルーキスが己を奮い立たせるのと同時に、詩緒がライフルでゾンビマージを射抜く。
「散々手を焼かせてくれたわね」
そいつは腕を突き出した状態のまま、後方に吹き飛ぶように消滅していく。
「そこ、邪魔しない」
さらに近場のゾンビを『幽艶なるイグニス』で撃ち抜いたルーキスだったが、埒が明かないと感じてイヴァク狙いへと切り替えて仕掛けていくのである。
●再生に執着した故に
イレギュラーズの疲弊を見たイヴァクは小さく笑って。
「そろそろいこうか」
敵はリジアへと迫り、触れることで再生能力を逆転させる。
彼女も負けじとイヴァクに触れ、逆再生の力で相手の体を破壊していく。
その攻防を、一歩下がった位置で身構えるLumiliaは注視しながら、短節の呪歌を歌う。
すると、無数の光条がイヴァクへと絡み付いていき、その身体を凍りつかせていった。
イヴァクがゾンビ再生の手を止めれば、その数は徐々に減っていく。
エリシアがすかさずメガ・ヒールでの回復に当たり始めたことで、ユウは少し前に出て氷の鎖を放つ。
「リジアだけに戦わせはしないわよ」
そう告げるエリシアだけではない。自分を支えてくれる仲間達を信じて、リジアは戦い続ける。
その横から敵へと飛び込んできた真菜は速力をもって相手を翻弄しようとし、目にも留まらぬ蹴りを浴びせかけていく。
だが、敵は涼しい顔のまま、黒い光翼を振るう。
それに切り裂かれる真菜。ここまで前線で耐えてきたヨルムンガンドもついに膝を突く。
――倒れるわけには行かない。
2人は自身の大切な品からパンドラを少しだけ使い、戦場に意識を繋ぎ止める。
仲間達に気を取られる隙に、イグナートも忍び足で迫ってイヴァクに拳を叩きつけようとしたが、少し距離を取った敵は宙へと極光を放ち、彼の身体を切り裂く。
その瞬間、『運命逆転力』を行使したイグナートは僅かにその身体を癒して、身を引いていた。
繰り返されるイヴァクとイレギュラーズの応酬。
並々ならぬ破壊力を持つ黒い光翼を持つ敵に、ルルリアは魔法銃『漆黒魔銃テンペスタ』から魔力弾を発射する。
「特別製ですよ!」
それはただの弾丸ではなく、相手の能力を阻害する『狐式対能力者用魔力弾』。
しかし、イヴァクはルルリアの魔力弾に抵抗してみせ、自らの光翼が黒く煌くことを確認する。
ボロボロになるメンバーを癒すべく詩緒が短尺の詠唱を紡ぐと、その術で幾分か傷を塞いだイグナートがイヴァクへと肉薄していく。
「ただで済むと思ってないよね?」
相手の身体へと、彼は憎悪の爪牙を刻み込む。
出し惜しみなどする余裕もない。ルーキスは刹那の間のみ稼動できるエメス……擬似生命体をけしかける。
猛然と殴りかかったエメスが崩れ落ちると、そこにはイレギュラーズの度重なる攻撃で全身に傷を負うイヴァクの姿が。
「『再生』の為、止まるわけには、行かぬ……のでな……」
傷ついてなお、笑みを崩さぬイヴァクが黒い極光を放つ。
ここまで、その身を持たせていたリジアだったが、壊れかけた懐中時計を握りしめた彼女は、『運命逆転力』の力がその時計から漏れ出すのを感じながらも、イヴァクへと告げる。
「……私は……生き物を守る」
逆に、リジアは白い極光を発し、イヴァクの身体を包み込む。
「くくく……これこそが、破壊……!」
光に灼かれるイヴァクは自らにも『再生』を使うかと構えていたルーキスだったが、イヴァクの体は完全に滅して跡形もなく消え去ってしまう。
――『再生』を司る悪魔。
その消滅を確認したリジアは張り詰めた神経が緩み、その場にへたり込んでしまったのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ公開です。
MVPは仲間を信じ、
己の倒すべき相手へと全力で立ち向かったあなたへ。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
こちらは、シナリオ『音沙汰なくなった村落へ』の続編ですが、
今回だけで独立した話になっておりますので、
前作を知らない方でも問題なく参加できます。
とある村落の壊滅被害からほとんど期間をおかずして、
「再生」を司る悪魔が動き出しております。
新たな事件を引き起こす前に討伐を願います。
●目的
イヴァクの討伐
●状況
村落は200人弱の小規模なものです。
以前の依頼にて、
壊滅させた村落民10名ほどが避難している地です。
しかし、昼間すでにイヴァクは村落内に姿を現しており、
一部の村落民を除き、
村落民はイヴァクの素性を知らぬ状況です。
(ただし、イヴァクが起こした事件自体は村落民も周知の事実です)
イレギュラーズ達の到着は夕方、日没前1時間ほどです。
避難誘導も可能ですが、
イヴァクにトラウマを持つ村落民が交じっている為、
(OPで村落の外に出ていますが、夕方には戻ってきます)
パニックとなる可能性の十分にあります。
人命第一と判断して混乱覚悟で避難に動くか、
人命が危険に晒されるのを覚悟で人知れずイヴァクの討伐に動くか、
判断の分かれ目となるでしょう。
○「再生」を司る悪魔・イヴァク
黒い光翼を持つ白皙の美青年です。
以下のスキルを使用します。
・逆再生……神至単
・Ether broken……神中単(弱点)
リジアさんの使用するスキルと同様です。
・黒い光翼……物近列
近寄る者を硬質化した翼で切り裂いてきます。
・再生の光……
ゾンビを1、2体戦場に増やします。
・飛行……
イレギュラーズが使用するものと効果は同様です。
====以下、プレイヤー情報です====
●敵
○ゾンビ×10体(戦闘開始地点の数)
イヴァクの手で「再生」した死者です。
近距離で引っかき、喰らいつき(ドレイン)を行う他、
中、遠距離に向けて肉片、怨念(不吉)を飛ばすこともあります。
○ゾンビナイト
死した犬の獣種を「再生」させた存在です。
長剣を使い、めった斬り(物近列)、
クロスブレイク(物近列・連)を使用します。
○ゾンビマージ
死した幻想種を「再生」させた存在です。
2mほどある杖を操り、火の術を行使してきます。
フレイムウォール(神中列・火炎)、
フレアバースト(神遠扇)
●状況
イヴァクは日中に村落民へと顔をさらした後、
日暮れまで姿を消します。
日が暮れると彼は自らの快楽の為、
村落民の『再生』にと動き出します。
====ここまで、プレイヤー情報です====
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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