PandoraPartyProject

シナリオ詳細

波間に揺れる命

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●波間にて
 目を閉じれば、聞こえてくるのは波や風の音。海独特の香りが鼻を突くが、男たちには慣れたものだった。
 生きてるか、という声にまばらな返事が上がる。どうやら数名生きているらしい。
「やっぱり待った方がよかったんじゃ……」
「今更だろ」
 そんな会話をする男たちは皆、海に浮かんでいた。とは言えその筋肉質な体で木の破片にしがみつき、どうにか浮いている状態である。
 勿論この状態で岸からやってきたわけではない。ちゃんと男たちには船があったし、この木の破片はその残骸である。
 天気も良く、波も穏やか。しばらくはこのままでも生きながらえそうに見られたが、男たちは早急にこの海域を離脱する必要があった。
 黙って、なるべく音を立てずに足を動かす。波が邪魔してくるのでさほどの距離は稼げていないが、『急げ』なんて言葉は出てこない。
 誰もがそうしなければいけないことを分かっていて、同時に言えば焦りが生まれることも理解している。
「おい、あれ」
 先頭を進んでいた男が声を上げた。全員が前を向くと見えるあれは──船影、だろうか?
「なんだってこんなところに」
「俺らが言えた義理じゃねぇだろ」
「こっち近づいてないか」
 ともあれ、乗せてもらえばこの窮地からは脱せるはずだ。まだ『奴ら』は損壊した船に載せていた肉に注意が向いている。今のうちに──。
「ギャッ」
 短い悲鳴と水飛沫。はっと男たちが振り向けば、海底へ引きずり込まれていく仲間の姿。共に見える海洋生物の姿に男たちの顔が強張った。

●時は遡る
 幻想と鉄帝、両国からの依頼。さらに砂蠍の侵攻により、ローレットではあちこちで作戦会議が行われていた。
 そこへ、声。
「誰かっ、誰か手の空いてる方はいませんかー!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)だ。
 どうしたどうした、とイレギュラーズが集まるとユリーカは羊皮紙を皆へ見せつける。
「海洋の方からも依頼が来たのです! 国からの依頼ではありませんが、大切な依頼であることに変わりはないのです!」

 大雑把に言ってしまえば、今回の依頼は『人命救助』らしい。
 早朝に出た船が戻って来ない。漁師たちは「遅くとも朝メシには間に合わせる」と言っていたのだそうだ。ところが昼前になっても、水平線に船影1つ見えやしない。
 残っていた島の者たちはすぐさまローレットへ依頼を出した。というか、漁師たちの姿が見えない時点でローレットへ人を向かわせた。
 それは何故か。

「漁師さんの向かった海域に行くこと、他の人たちは反対してたみたいなのです。危ないからせめて強い人を雇ってほしいって」

 まあ、結果としては待てなかったわけである。
 聞けばその海域は危険な生物が住んでいるらしい。しかし虎穴に入らざれば虎子を得ず、というべきか。どうやら希少価値の高い獲物が多いようなのだ。
「もし無事に帰ってきたのなら、それはそれで良いのです。依頼自体は受けていますから報酬もちゃんともらえます。どうか、よろしくお願いするのですっ」

GMコメント

●成功条件
 海の男たち半数以上の救助

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●雑食イルカ×8体
 大きめなイルカです。雑食です。人も美味しく戴けます。
 噛みつく、体当たりなどの攻撃を仕掛けてきます。また、時に船を破壊し、時に人間を海へ引きずり込もうとする動きが見られます。
 攻撃を仕掛ければ割と簡単に注意を引き付けられるでしょう。
 物理攻撃力・防御技術が高く、水中だと全体的なステータスがやや上がります。

●救助対象
・海の男×5人
 漁師の男たちです。大きめの木の破片に捕まって一時的に助かりました。
 軽く脱水症状を起こしていますが重傷者はいません。何事もなければ木の破片に捕まって浮いていられます。

●ロケーション
 天気も海の機嫌も良いです。晴れており波も高くありません。
 救助対象がイルカに追いかけられているところを発見する形となります。

 皆様には船が向かう予定だった海域は事前情報として伝えられています。また、船を2隻まで貸してもらえるのでそれを使う事ができます。(操舵手は付いてきません)
 1隻でもイレギュラーズ+救助対象者を乗せることが可能であるとします。

●ご挨拶
 愁と申します。
 全員救助できれば勿論良いですが、数人は犠牲となってもまあ良いと思います。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • 波間に揺れる命 完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月18日 22時05分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エリック=マグナム(p3p000516)
(自称)海の男
主人=公(p3p000578)
ハム男
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
リナリナ(p3p006258)
原始力

リプレイ

●発見
 波間に見えた人影に『輝く太陽の息吹』リナリナ(p3p006258)は船体から身を乗り出した。
「漁師のオッサン達とっても偉い人! 美味しいお魚捕る漁師のオッサン達、ゴハンの味方、ニンゲン国宝!
 キュージョ! キュージョ! はやく助けるゾッ!」
「もちろんでごぜーますよ。落ちないようお気を付けを、……リナリナさん、そのお肉は何処から持ってきたんでしょーか」
 『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)は、リナリナの手にいつの間にか握られていた骨付き肉を見て目を眇めた。
 おかしい。船の乗る時はそんなもの持っていなかったし、リナリナの服装はそんな肉を隠せるようなものではない。
 しかしリナリナは一切の説明なくあーんと口を開け、マンモの肉を食べようとして寸前「はっ!」と何かに気が付いた。
「肉、リナリナ食べちゃダメ! 雑食魚にあげる分!」
 これはイルカたちへ食べてもらうのだ、と口を閉じるリナリナ。
 我慢するその様子を見ながらマリナは自らの船を操り、船の性能と自らの腕前を十分に生かしてイルカたちに接近していく。
 敵が入り乱れる海を何度も乗り越えて来た彼女の操舵に迷いはない。
「人間でも食べちゃうイルカなんて混沌世界には居るんだね」
(背中に乗せてくれるぐらい人懐っこいイルカもいたのに……)
 軽防具を身に着けた『ハム子』主人=公(p3p000578)は船の横からイルカを見遣る。波間に浮かぶ男達と、その後ろに見える大きな影。あれがイルカだろう。
 とにかく、全力を尽くして全員を救助せねば。
 マリナ操る船は男たちとの接触を避けるように進路を逸らし、その後ろから迫るイルカを射程圏内へ入れる。威嚇射撃のようなマギシュートがイルカ近くの海面へ撃ちだされ、軽く水柱が上がった。
 イルカたちの注意が水柱へ。そして──。
「──オーッホッホッホッ!! さあさあご安心あれ! 皆様の命は預かりましたわ!」
 海上に不釣り合いな高笑い。海の男とイルカたちの注目を浴びながら 『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)は力強く指を鳴らした。
「そう、このわたくし!!

  \きらめけ!/
  \ぼくらの!/
\\\タント様!!///

――が!救助に参りましたわよーー!!」
 どこからともなく降って来た大合唱と共にミラクルエンジェリックファンタスティック波瀾絢爛ポーズが決まる! タントの周囲がキラキラと輝いて見える気がするのは最早一種の才能であろう。
 世界の贈り物に拍手喝采を浴びるタントに海の男たちは唖然。だがイルカたちは目論見通りにタントたちへ向かい始める。
 マリナは舵を持つ手を確りと握りしめながら、視線を男たち、そしてもう1隻の船へ向けた。
「同じ海の男仲間として、絶対に助けなければいけねーですね。……まぁ……私は女ですけど」

「マグナム殿、見えたでござる」
「おうよ、任せな!」
 高所から海を観察していた『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が声を上げる。『(自称)海の男』エリック=マグナム(p3p000516)はそれに応えると舵を操った。
 借り受けた船はちゃんとしたものであったが、マリナの船の方が性能は上。前方を行く彼女の船はどんどん距離を広げていき、男たちをやや迂回する形でイルカたちと接敵を果たしたようだ。
 ──オーッホッホッホッ!!
 遠くから聞こえる高笑い。タントのものだ。
 イルカが囮の船に向かって行く様子を見ながら『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)は小さく眉根を寄せる。
(過ぎた事をどうこう言っても仕方ないとは思うが……危険な海域と分かっているのなら、なおさら行く前に綿密な準備をしておくべきじゃと思うがのう)
 それでも冒険心に負けてしまった、といったところなのだろうか。
 何を思えど仕方がない。一先ず、苦言を呈するのは救助してからにするとしよう。
 海を撫でる風に『穢翼の黒騎士』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は小さく吐息を零した。
「この時期に海に放り出されるのは辛そう」
『低体温症を引き起こしかねないな』
 胸元の十字架が答え、ティアは頷いて視線を海へと移す。
 まだ木の破片に捕まっていられる程度の時間。けれど、それは決して短いものではない。
「雑食イルカも付近にいるし、早く助けてあげないと」
『運ぶ時は迅速かつ丁寧にな?』
「りょーかい」
 ティアは2対4枚の羽を広げ、海上へと飛び立った。

●救助&応戦
 空から美女が。
 漁師は頭にかかった影に空を見上げ──そんなことを思った。
「船まで運ぶからじっとしてて」
 ティアはそう告げると漁師の胴をしっかりと抱えて持ち上げる。これは役得──なんて漁師が思ったのも束の間。
「ティア、こっちだ! おめえももう大丈夫だからな! がっはっは!」
 ディープシーの男が船を操って接近し、美女にさっさと下ろされてしまう。
「ほれ、これで暖まると良い」
 別のディープシーに渡されたのは紅茶だ。毛布も巻きつけられ、自分の体温が酷く下がっていたことを感じる。感じるだけの心の余裕ができている。だが。
「ほ、本当に大丈夫なのか? あいつらは、」
 まだ仲間が海に取り残されている。そう言いかけた言葉はエリックの笑い声にかき消された。
「がっはっは! 俺は海の男、エリック=マグナム! なあに、俺たちに任せろ!」
 出た腹を叩けばぽんと音が鳴る。それは気の抜けてしまうような音だったが──舵を握ったエリックの瞳には真剣な色が宿っていた。
(同じ海の男、俺たちが助けねぇわけにはいかねぇよな!)
「エリック、漁師が1人流されとる!」
「おう、そっち向かうぜ! おめえは先行って捕まえてくれ!」
 エリックが船を動かし始めるのと同時に潮が海へ飛び込む。泳いで流される漁師の体を確保した潮は、今度は船へ向かって泳ぎ始めた。
 潮の方へ向かって行く船の傍でぼちゃん、と何かの落ちる音がする。その近くからはロープが垂れており──それを命綱にと結んだ下呂左衛門は、辺りを漂う木の破片に瞳を眇めた。
(欲をかくとろくな目に遭わないという事でござるな。拙者もこんな稼業ではござるが)
 何はともあれ、状況は刻一刻を争う。潮が救助に向かった漁師も流されていたということだから、こちらも衰弱している可能性が高いだろう。
 下呂左衛門は海水の中を進んでいきながら、潮が向かったのと反対側にいる漁師を救助に向かう。捕まえて反応を見るが──弱々しく、鈍い。自力で泳ぐのは困難か。
「捕まるでござる」
 腰に捕まらせ、命綱を手繰るように泳ぎ始めた下呂左衛門。ゆっくりながらも徐々に船へ近づいていく。ざばりと海から上がれば、先に上がっていた潮が漁師に紅茶を渡しているところだった。
 下呂左衛門も積んでおいた毛布や温かい食べ物を漁師たちへ渡し、一刻も早く体温を上げるよう告げる。
「あと1人だね」
 新たに漁師を船へ下ろしたティアはぐるりと海上を見渡した。残る1名の姿は──。
「危ない!」
 声を上げる下呂左衛門、勢いよく海へ飛び出す。同時に飛んでいき、反対側からも飛んでくる2つの衝撃波。最後の1人に襲い掛かろうとしていたイルカが衝撃波に止まり、体の向きを船の方へ──救助船へと向ける。
 その前へ下呂左衛門は身を投げ出し、纏った武者鎧でイルカの突撃を耐え凌いだ。その間にティアは漁師を海からすくい上げる。
 優れた運搬性能で1度イルカの攻撃範囲から離脱し、船へ漁師を運ぶティア。潮が漁師に毛布と食事を与え、少しでも楽になるようにと治癒魔術を展開する。
「エリック、全員揃ったぞ」
「下呂左衛門はまだイルカのところか?」
「うん。私は囮側と合流するから、引き付けてくる」
 エリックの言葉に頷いたティアは再び飛び立つ。漁師たちの具合がさほど酷くないと判断した潮も追って海へ飛び込んだ。
 イルカと下呂左衛門を見つけると、反対側──囮側の船から妖精が飛んでくる。妖精は牙を剥くようにイルカへ攻撃を仕掛けた。
 その間にティアは下呂左衛門の傍へ舞い降り、声をかける。
「船に戻って大丈夫。こっちは任せて」
「かたじけない。頼むでござるよ」
 頷いた下呂左衛門が船の方へ泳いで行くのを見て、ティアは視線をイルカへ戻した。妖精は掻き消え、イルカは辺りを見渡して敵意をぶつける相手──ティアを見る。
『あくまで引き付けだ、大怪我をしないようにな』
「勿論。まずは皆と合流しないとね」
 ふわりと囮の船へ飛び始めるティア。イルカはそれを追いかけ始めた。
 ──さあ、短い追いかけっこの始まりだ。

 時は戻りて。
「おーっ、漁師のオッサン達食べるの禁止! この肉食え! この肉、旨いゾッ! 食え!」
 ぴょんこぴょんこと船の上で飛び跳ねるリナリナ。その手にはやはり、いつの間にか骨付きのマンモ肉。
「その肉一体どこから──」
「食えっ!!」
 公の問いかけに被るようにリナリナが肉を振りかぶり、投げる。綺麗に孤を描いたそれはイルカの1頭に当たり、海へ沈んだ。
(これは答えてくれなさそうだね)
 或いは本人も知らないのかもしれない。
 公はリナリナから海へ視線を送り、未だこちらに注意を向けていないイルカへ向けて魔砲を放った。破壊的な魔力の塊が突き抜け、海に一時穴を開ける。
「集まってきましたねー」
 マリナはイルカたちの意識が全てこちらに向いたことを感じ取り、舵を強く握った。彼女のギフトは船の形状をしていなければ機能しない。腕の見せ所である。
「オーッホッホッホ! 心配いりませんわ、だってわたくしがいるんですもの! さあ! 手早く片付けますわよ!!」
 船の中央で華麗明媚煌めくポーズを取るタント。そのきらっきらぶりは周囲の仲間の戦闘士気を高め、イルカへの狙いが研ぎ澄まされていく。
 公の魔砲が再び海を貫く。その絶大な破壊力に、しかしイルカの強靭な皮膚も負けていないようだ。
 マリナの巧みな操舵は付かず離れずで辺りを移動するが、公が不意に「マリナ、あっちだ!」と声を上げた。
 見れば、イルカの1頭が注意を逸らしてしまっている。向かっている先は──未だ残された漁師の方だ。
 マリナが船を動かす中、公が衝撃波を放つ。イルカの注意は向こうに向いたままだが、救助側の仲間が上手く押し留めているようだ。
 船を止めたマリナがそのイルカへ向けて妖精を放つ。ほぼ同時に囮の船を追いかけていたイルカたちがイレギュラーズへ襲い掛かった。
「るらー!」
 リナリナ、マンモの肉を持ったままイルカへ向けてパンチ!
 骨付き肉は食べられたが、リナリナの右ストレートがイルカの顔面に入る。イルカはぐわりと牙を剥き、リナリナに噛みついた。
「リナリナ、食べられない! ダメ!」
 どうにか引きはがすリナリナ。傷は浅くないが、再びリナリナは向かって行く。そこへメガヒールをかけるのはタントだ。
「オーッホッホッホ! 皆様、まだまだいけますわ! 回復はお任せくださいませ!」
 公とマリナ、リナリナがイルカを蹴散らしタントが支える。このままでは押し負けるが、耐えるのも救助が終わるまでだ。
「私の船傷つけるなら、永遠に水底へ沈みやがれです」
 マリナの魔力放出が船体へ体当たりするイルカを捉えた。イルカは船体へ上がってくるものの、公の魔力撃に海へ落とされる。
「おーっ、肉! 肉! 食らえ肉!」
 船体へ飛び込んできた別のイルカは肉を持ったリナリナに殴られ、蹴落とされ。しかしすぐ別のイルカが上がってくることに、リナリナはどこか楽し気だ。
「お待たせ。救助は終わったから戦うよ」
 ティアが先ほどの1頭を引き付けてやってきて、救助が終わったことを伝える。
「それじゃー私は船を動かすので──」
 ティアに攻撃を変わってもらおう、とした時だった。
「ウギャッ!?」
「うわぁっ!」
 お嬢様らしからぬ悲鳴を上げたタントと、公。2人がイルカに噛みつかれ、そのまま船の上から姿を消した。
「お2人とも!」
 マリナが咄嗟に魔力を上がってきたイルカへぶつけながら海を見下ろせば、公が顔を出した。
「危うく海の藻屑になるところだった」
「まだ危険ですぜー、これをー」
 ロープによって船と繋がれた浮き輪が投げられ、公はそれに捕まって船へ泳ぎ始める。その後ろから狙う影にはっと振り返ると同時、公は肩に鋭い痛みを感じた。
「ぐっ……」
 力が抜ける。傷に海水が沁みて激痛となる。だが──こんなところで負けられない。
 公は再びこちらを狙ってくるイルカに向け、渾身の力で魔砲を放つ。それに飲み込まれたイルカはゆっくりと海へ沈んでいった。
 一方のタントは──上がってこない。海の中で光っているアレはもしや、タントだろうか。
「私が飛んで近くまで、」
『いや、結局は海に入らなければいけないだろう。無理だ』
 ティアの言葉を遮ったのはその胸元にある十字架。だが、ここに海へ入れる者は──。
「光ってるの、近付いてるゾッ!」
 イルカを蹴り落としたリナリナが声を上げる。
 そう、段々と光が海面へ近づいてきているのだ。近づいて、近付いて、ざばりと上がってきたのは──物理的に輝くタントと潮だった。
「待たせたのじゃよ」
「た、助かりましたわ……っ」
 船へ上がり、立ち上がるタント。潮も回復手に加わり、仲間を支える。
 マリナは舵を持つと救助船から距離を取りつつ、追いかけるように海域を脱し始めた。
「このままだとキリないね」
「肉! 肉食え!!」
「回復お願いしていいかな?」
「勿論じゃとも」
「皆様、もうひと踏ん張りですわよ!」
「ええ、あと少しで海域を抜けますぜー」
 マリナの言葉から本当に、ほんの少し。イルカの攻撃が唐突に止んだ。

●海域を脱し
「抜けた、じゃろうか?」
「みてーですねー」
 潮の言葉にマリナが頷く。救助船は前方にあり、変わった様子もない。
 イルカが追ってこない事を再度確認し、囮船のメンバーはほっと息をついた。
「どうせ雑食なら海藻でも食べてればいいのに」
 栄養が偏るのだろうか。……そもそもそんなことを考えているのだろうか?
「肉! 肉もいいゾ!」
 公の言葉にすかさずリナリナが程よく焼けた骨付き肉を掲げ──最早誰もツッコまない。『世界の贈り物って不思議だなぁ』と思う者はいるかもしれないが。
 それをむしゃむしゃ食べ始めるリナリナの横ではびしょ濡れのタントが盛大にクシャミをする。
「風邪?」
「まあ! このわたくしが風邪なんて引くはずありませぶぇっくしょん!」
「ボクは風邪引きそうだよ」
「確かあっちの船には毛布とかが積んであったはずですよ。借りられるか聞きましょー」
 ティアの問いかけに否定しつつも、きらめくタントの大声はそれ以上のクシャミに続かない。公は素直に頷き、マリナは船を操ると前を進んでいた救助船の横へ移動した。
「毛布でござるな。多めに確保しておいたが故、構わないでござるよ」
 下呂左衛門が頷き、2隻は一旦停止して毛布を受け渡す。公とタントは毛布に包まると流石にほっと息をついた。
 再び動き出す船。救助用の船からは潮のお説教が──言い聞かせると言った程度だが──聞こえてくる。これから村に帰れば家族からも何かと言われるだろうが、男たちは既にしおらしい態度であった。いつもとは異なる身の危険から何かを学んだらしい。
(海は慣れた人でも色々な要因が重なって、あっさり事故ってしまいますからね……)
 油断大敵。慢心も絶対にダメである。
 マリナはもう1隻にいる男たちへ聞こえるよう、声を張り上げた。
「次からは是非、事前に我々を呼んでくだせー。協力は惜しまないですよー」
 その言葉に男たちは言葉ではなく、手を振ることで応える。

 彼らの家族が待つ村まで、あともう少しだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。無事救出です。

 きらめくあなたへ、称号をお贈りします。いつも素敵ですが、今回はキラッキラが際立ってましたね。

 今後もご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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