シナリオ詳細
<ジーニアス・ゲイム>無限軌道砲破壊作戦
オープニング
●大司教の戦争
北部戦線における、中央大教会の作戦に協力してほしい――。
中央大教会に招かれたイレギュラーズに対し、大司教、イレーヌ・アルエの発した言葉は、教会が戦争に参加するという、些か似合わぬものであった。
『『盗賊王』キング・スコルピオ』の手により、幻想南部はその地の多くを奪われた。南部を足掛かりに、王都メフ・メフィートを狙う砂蠍。同時に、北部戦線では鉄帝軍が侵攻の動きを見せ、幻想は上下から、『敵の敵同士による連携せざる連合軍』にはさみうちを受けた形になる。当然、貴族達による正規軍だけでは、人手が足りない。
「幻想とはすなわち、神に祝福されし地であり、その民は神に選ばれし民である。その地と民を侵すのであれば、それはすなわち神の敵である――それが、正規軍が私達を動かす方便でした。屁理屈ではありますが、私達が幻想と言う大木に住んでいる、それは事実です」
たとえその大木がシロアリに食い散らかされていようとも――いずれ何らかの手段はとるにせよ、今はまだ、この大木に縋らなければ、民は生きてはいけない。
「そのため、全体に比べればごく少数ではありますが、我々も僧兵を派兵する事になりました。ここからが本題になります」
イレーヌによれば、貴族達が教会へ攻撃を指示した戦場が、問題なのだという。
ゼシュテルには、発掘された古代兵器が存在する事が知られているが、この戦場には、それが試験的に導入されていることが判明した。
『無限軌道砲』と名付けられたそれは、無限軌道――履帯と呼ばれる特殊な車輪を持つ車両で、巨大な砲塔を持つ。言ってしまえば、巨大な戦車のような物である。
無限軌道砲の存在は、鉄帝の将軍クラスのトップエースを相手取るよりははるかにマシとは言え、一般兵にしてみれば充分以上に脅威である。手は打ちたいが、交戦すれば相応の被害は免れない。
だから貴族達は、その対応を教会側に丸投げしたのだろう。自分達の手勢の被害は避けつつ、厄介者を処理する形だ。
とは言え、イレーヌも、黙って部下たちを死地に送るような真似は出来ない。だが、これを見過ごすわけにもいかなかった。この砲塔が、街に、そして民間人に向く可能性も否定できないのだ。
「そこで、皆さんの力を、お貸しいただきたいと思います」
作戦はこうだ。
敵は、無限軌道砲一機を軸とし、その前面に歩兵部隊を展開し、進行している。この、前面に配置された歩兵たちの相手を、教会の僧兵達が相手取る事になる。
イレギュラーズ達は、前線で衝突が起きている隙を突き、無限軌道砲本体へと肉薄。これを破壊する……と言ったものだ。
「無限軌道砲には、10名の歩兵が随伴している模様です。皆さんが直接相手取るのは、この10名と言ってもいいでしょう。勿論、その間、無限軌道砲による援護攻撃などはあるとは思いますので、充分のご注意を。そして、これを」
そう言って、イレーヌは、30cmほどのケースを取り出した。アルミか、それに類する金属で作成された、極めて近代的な物である。イレーヌがケースを開けると、中には長方形の物体と、先端にボタンのついた棒状の物が収められていた。
「練達より、極秘で取り寄せました。遠隔操作により起爆可能な、爆弾です」
いきなり何を言っているんだ――と、イレギュラーズ達は唖然とした。しかしイレーヌは静かに頷くと、
「皆様の技量によっては、斬鉄……鉄を斬る、という事も可能でしょう。ですが、私としては、件の古代兵器に対しては、万全を期しておきたいもので。これを用い、確実に、破壊してください」
しかし、些か乱暴ではある。付近の兵達を駆逐すれば、無限軌道砲自体は無力化できるし、或いは奪い取ってしまえば、こちらの戦力として数えることもできる。何故、そこまで破壊にこだわるのか――イレギュラーズ達の疑問に、イレーヌは静かにほほ笑んだ。
「理由は簡単です。まず、私達には古代兵器運用のノウハウがない事。そして、仮に使えてしまった場合、古代兵器がどの貴族の手に渡っても、その砲塔が向く先は民衆であることは、想像がつくからですよ」
なるほど、とイレギュラーズは嘆息した。幻想貴族であれば、治安維持やらの名目をつけ、その程度の事はやるだろう。また、仮に教会で保管したとして、貴族側からの圧力は、ひっきりなしとなるに違いない。
結局、ここで確実に破壊しておくことが、後にも先にも、一番安心できる、というわけだ。
「皆さんが最も危険である、という事実には変わりはありませんが、これが、現時点で私がとれる最良のプランである事もまた事実です。作戦の遂行を、何卒宜しくお願い致します」
そう言って、イレーヌはイレギュラーズ達に頭を下げたのであった。
- <ジーニアス・ゲイム>無限軌道砲破壊作戦完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年12月15日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●地を踏みしめ、車輪は回る
きゅら、きゅら、きゅら、と音をたてて、巨大な『砲』が地を踏みしめる。
草花を踏みつけ、地を抉り、履帯ベルトが回転した後には、独特な形状の足跡が刻まれる。
北部戦線のとある戦場、鉄帝側陣営に、その化物はいた。『無限軌道砲』と呼ばれる怪物は、その長い砲塔を高く掲げた。一拍置いて、轟音と衝撃と共に、それは噴煙を吐き出した。いや、吐き出されたものは煙だけではない。放たれた巨大な弾丸は放物線を描き、はるか遠く、鉄帝と幻想大教会所属の僧兵達が激突する戦場へと飛んでいく。
何かを狙って撃った一撃ではなかった。だが、この戦場においては、命中率など無視できるものであった。何せ、空から10cmほどの大きさの鉄塊がふってくるのだ。でたらめに撃って敵にあたれば良し。そうでなくとも、落着する弾丸の存在は、敵兵へ恐怖を抱かせるには充分すぎた。
しばしの間があってから、その弾丸は落着。どん、という音と共に、砂ぼこりが舞い上がる。敵兵には命中しなかったようだが、敵に脅威をもたらせることが出来るなら成功だ。
一方、その砲へと迫り、駆けるいくつかの影があった。少数精鋭にて、無限軌道砲を破壊するための作戦を遂行する、イレギュラーズ達である。
「……っ! なんて恐ろしいものを持ち出してくるのでしょう……!」
砲撃の瞬間を見ていた『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)が、その衝撃にまゆをひそめた。ノースポールの脳裏に浮かぶのは、その砲が向く先、発生する被害についてだ。早く、あの兵器を止めなくては。その想いが、自然、ノースポールの足を速めていた。『白雪の翼』にて、低空を、ノースポールが飛ぶ。
「わ、わ! 鳥さん待ってー!」
その後を追うように、『方向音痴』ノーラ(p3p002582)、そして『剣狼』すずな(p3p005307)が駆けた。
「あの兵器……あまりにも危険すぎます……!」
すずなの言葉に、ノーラが頷いた。
「うん! 絶対やっつけるぞ! 危ないからな!」
果たして三人は、無限軌道砲をその射程に捉えた。無限軌道砲の周囲には、10名の武装した鉄帝兵士の姿がある。無限軌道砲の護衛達だ。兵士達はイレギュラーズ達の姿を認め、臨戦態勢に入る。勢いを殺さぬまま、ノースポール、ノーラ、すずなの三人が、戦車砲至近距離へと一気に接敵した。距離を取り、その手法に狙われることを嫌っての事である。
「決死隊か!? 古代兵器を狙って……!」
鉄帝兵士が声をあげ、その武器を振りかぶる。同時に、その鎧に何かが直撃した。甲高い音をあげ、何か――銃弾が、その鎧を抉る。
「ハ――長距離攻撃はアタシも得意なんだよネ」
がちゃり、とライフルのレバーを引き、空薬きょうを排出する『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)。超長距離レンジに位置取り、射撃による援護を狙う。
「さて、バンバン狙い撃チさせてもラうヨ!」
そして、ノースポール達のちょうど反対側より、同様に駆け抜けるものが現れた。
「ふうむ、アレが噂の戦車とやらか。南方の方でも、蠍どもが巨大戦車を持ち出しとっての。そっちの対応もせにゃならんから、ここで一つ実践トレーニングと行くかの」
『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)と、
「古代兵器……ロマンがありマスねぇ……! でも、今はお仕事優先、ガツンと頑張りマスよぉ!」
『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)だ。
さらに別方向から、新たな影が突撃する。
「まったくまったく! とんでもない兵器みたいですね……!」
『暗躍する義賊さん』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)。そして、
「無粋にして武骨な『砲火』は、私の末路には不要な物なのです。私の『放火』で消し去って見せるのです……!」
『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)だ。
都合三方からの突撃……しかも、古代兵器への接触。イレギュラーズ達の行動、その真意を、
「別動隊か……奴ら、古代兵器を奪い取る気か!?」
鉄帝兵士は古代兵器の奪取と受け取った。
「大外れ、むしろ真逆じゃが……まぁ、戦力を分散してくれるに越したことはない」
小声で言うゲンリー。鉄帝兵士達は分散したイレギュラーズ達を食い止めるように布陣する。敵の混乱は、こちらの狙う所である。
イレギュラーズ達の布陣は、無限軌道砲主砲の攻撃を避けつつ、さらに小銃の被害を最小限にとどめるための物だ。その上で直掩の兵達を下し、無限軌道砲を破壊する。
「困難デスが……そんな中にも幸運を見つけてきたのがワタシデスので」
美弥妃が呟く。意を決し、巨大な砲を見据えた。
きゅらきゅらと音をたて、砲がイレギュラーズ達を狙う。随伴歩兵達もまた、イレギュラーズ達を逃すまいと、その武器を構えた。
――そして、ホウカは飛び交う。
●無限軌道砲破壊作戦
主砲の射程からは離れたイレギュラーズ達だったが、残る小銃の威力もまた、充分に脅威と言えた。
そんな攻撃の矢面に立つことを買って出たのは、ノースポールである。随伴歩兵達の攻撃も引きつけ、盾となるノースポールだが、殺到する攻撃に、少しずつ傷ついていく。
「くっ……まだまだ! ほらほら、狙いやすい的がここにいるよ!」
痛みをこらえ、ノースポールが敵の気を引き付ける……無限軌道砲の小銃がノースポールを狙い、乾いた銃声をあげた。
体をかすめていく銃弾――熱と衝撃がノースポールの体に、新たな傷を付ける。
そんなノースポールに追い打ちをかけるように、随伴歩兵達はノースポールを狙った攻撃を続けた。
「蠍の対応に追われている今戦争をしかけてくる……その上女の子一人寄ってたかって、のーきんなだけじゃなくて卑怯者なのです……!」
挑発も兼ねた文句を言いながら、ルルリアが歩兵を狙い撃つ。『漆黒魔銃テンペスタ』より放たれた『狐式対能力者用魔力弾』が歩兵に直撃し、その力を封印する。
「くっ……俺達にも、やらなきゃならん理由がある……!」
歩兵が吠える。
「だとしても……だとしてもですよっ!」
やり場のない思いを、ルルリアが吐き出すように叫んだ。
「鳥さん、無茶しちゃだめだぞ……っ!」
ノーラはノースポールの回復に専念するが、それでも、その傷を完全に癒すには至らない。傷ついていく仲間の姿に、ノーラは思わず、唇をかんだ。
「やれヤれ、少しペースを上げなきャいけないカナ……?」
超遠距離からの狙撃――ジェックが歩兵を撃ち抜き、無力化した。イレギュラーズは、既に3名ほどの歩兵を無力化しているが、それでもまだ、その防御を突破し、無限軌道砲へと張り付くのは難しい。
このままノースポールだけに攻撃を集中させては、恐らく限界が来る――。
「ヘイ、そっちはどうだイ!」
ジェックの問いに、答えたのは美弥妃である。
「残念デスけどぉ、こっちも手一杯デスねぇ……!」
言いつつ、手にした杖を振るい、疑似神性の力を以て歩兵を薙ぐ。追撃をお見舞いするように、ゲンリーは手にした戦斧で殴り掛かった。歩兵がその意識を手放す。
「まだ近づくのは難しいようじゃな……!」
と、ゲンリー。
「私も前に出た方がいいのです……?」
声をあげたクーアに、美弥妃は頭を振ってみせた。
「辛いかもデスが……念のため、あなたは目立たない様にしていてほしいのデスよぉ」
美弥妃の言葉に、クーアはザックの紐を、ぎゅっと握りしめた。
「……私が、砲の注意を引いてみます……!」
すずなは距離をとると、声を張り上げた。
「や、やーい! のーこん兵器! その主砲は飾りですか! 貴方の砲撃なんか当たりませんよー、です!」
その言葉に応じたのか……無限軌道砲はすずなへとその砲塔を向けると、その主砲を撃ち放った。轟音と衝撃。高速で飛来する銃弾を、すずなは武器で以て受け止めた。途端、身体を駆け抜ける衝撃! 見えないハンマーでぶん殴られたような感覚が体中を駆け巡り、そのまま吹っ飛びそうになる意識を、無理矢理引きずり戻した。意識が戻れば、自分が後方に倒れそうになっていることに気付いた。すずなは慌てて体をひねり、手をついて着地する。
「くっ、流石の衝撃ですが……でも、まだです!」
すずなは気丈にも刃を構え、無限軌道砲へと相対した。
ルルリアの銃撃が、歩兵をとらえる。うめき声をあげ、しかし歩兵は倒れず踏みとどまった。
「あまり時間をかけていられないのですが……!」
ルルリアが言った。
ノースポールは拳の衝撃波で歩兵を打ち据える。
「相手も必死、って事でしょうか……!」
「だけど、僕達だって負けられない理由があるんだぞ!」
ノーラが声をあげ、仲間達を、そして自分自身を鼓舞し、そのスキルで傷を癒していく。ノーラはチームの生命線と言っても過言ではない。
ジェックが狙撃で兵士を狙い撃ち、
「打撃には打撃で迎え撃ってあげましょう!」
美弥妃が兵士たちを再び薙ぐ。
「やれやれ、鉄帝の名は伊達ではないようじゃな! 流石に堪えるわい!」
兵士達から打ち付けられる攻撃を捌き、反撃の戦斧を振るいながら、ゲンリーが言った。
「少しくらいなら、援護を……!」
クーアはルルリアに触れ、再生の力を与えた。ルルリアの傷が癒えていく。
「ここが正念場です……こんな兵器、幻想で好き勝手させるわけにはいきません……!」
すずなが言い、兵士達と切り結んだ。
ホウカは飛び交い、センカを交える。
イレギュラーズ達の決死の攻撃に、随伴歩兵は一人、また一人とその数を減らしていったが、それに比例するように、イレギュラーズ、とりわけノースポールとすずなの傷は増えて行った。それだけ無限軌道砲の攻撃は苛烈な物であったのだ。
「うう、鳥さんも、すずなも、限界だと思うぞ……」
ノーラが言った。必死のサポートの甲斐もあり、長く戦場へと残らせることは出来た――だが、それももう限界だろう。
しかし、随伴歩兵達も、残り2名――アタックできるタイミングか。これ以上、無限軌道砲を放置するのは、致命的かもしれない。だが、随伴歩兵が残っている以上、確実性には欠けるかもしれない。
どうする。動くべきか、耐えるべきか。
無限軌道砲が、その小銃を、ノースポールへと向ける。
イレギュラーズ達は、決断した。
「――行ってください!」
ノースポールが叫んだ。途端、無限軌道砲の小銃が、ノースポールを貫く。
仲間達に後を託し、ノースポールがその意識を手放した。
「あなたは此処で抑えます!」
「ここまで来て、邪魔はさせないデスよぉ……!」
ルルリアと美弥妃が、残る随伴歩兵の内、一人を抑えに回った。残り、1。
「おおっと、動くんジャねェぞ!」
残る一人に、ジェックが銃弾を撃ち放ち、
「邪魔はさせないぞ!」
ノーラが張り付き、その動きを止める。
「斬鉄も、やれなくはないですが――今狙うべきは――!」
度重なる攻撃にボロボロの体を引きずり、すずなは刃を抜き去った。
放たれる一閃。履帯への一撃。一撃がその足まわりにダメージを与え、無限軌道砲がひるむ。限界を迎えたすずなは、そのまま倒れ伏した。
「ぬん……っ!」
その隙を突き、ゲンリーはフック付きロープを放り投げた。無限軌道砲上部にフックが引っ掛かり、道を作り上げる。
「行けい! 叩き込めい!」
ゲンリーが叫んだ。頷き、クーアはロープを手に、無限軌道砲の外装を駆けのぼった。昇り着いた先、上部には、取っ手のついた丸いパーツが見える……ここがコックピットハッチだ。クーアがそれを引き上げると、中に居た一人の男と目が合う。ぎょっとした様子を見せた男は、短い悲鳴をあげると、コックピットから飛び出してきた。
クーアはそれをよけながら、ザックを手に掲げた。中にはイレーヌより託された、爆弾が入っている……クーアの役目は、爆弾の投下だった。この時の為に、仲間達はクーアを温存していたのだ。
クーアは手にしたザックを、コックピットへと放り込んだ。同時に、装甲を思いっきり蹴っ飛ばして、宙へと飛んだ。そのまま起爆スイッチを取り出す。
「これでお終い、なのです――」
呟いて、スイッチを押した。一瞬の静寂。途端、凄まじい爆音とともに、コックピットハッチから火の手が上がった。それだけでは足りず、ズドン、と音をたて、内部に発生した爆発のエネルギーが、無限軌道砲内部を駆け巡り、無限軌道砲そのものを大きく揺らした。
「馬鹿な……」
あっけにとられたように、残された歩兵が声をあげた。少しばかり、イレギュラーズ達にも、その気持ちは分かった――結構な衝撃と威力だった。
「……くそっ、こうなったらお前達だけでも……!」
声をあげ、最後の抵抗を行おうとする歩兵だったが、その身体を、ルルリア、そしてジェックの放つ銃弾が貫いた。2人の歩兵はその一撃によって無力化される。
長く、激しい戦い――その終わりが、訪れたのだ。
●戦いの終わり
無限軌道砲は沈黙し、鉄帝兵達も全て無力化された。
主力の喪失を悟った前線の兵士達は、速やかに撤退を開始した。
幻想北部にて開かれた、一つの戦場……それは、幻想側の勝利という形で幕を閉じたのだ。
「鳥さんとすずな大丈夫か? みんなの盾役ありがとうだ!」
ノーラが、ノースポールとすずな、二人に声をかける。傷は決して浅くはなかったが、戦闘終了後、すぐに二人は目を覚ますことが出来た。
「えへへ……皆が無事で、よかったです」
ノースポールが、にっこりと笑う……今は、身体の痛みも、気にはならない。
「ええ、最後まで役目を果たせたこと、嬉しく思います」
すずなもそう言って、笑った。
「イヤぁ、しかし、派手にぶっ壊れたナ!」
ジェックが肩をすくめた。無限軌道砲のコックピット内部は、爆薬によりずたずたになっている。ここまですれば、再利用は不可能だろう。クライアントの依頼通り、この古代兵器が平和を脅かすことは、もうない。
「何か役に立ちそうなものを……と思いましたけど、これは使い物にはならなそうデスねぇ……」
美弥妃が残念そうに言った。残った何かを再利用できれば……とイレギュラーズ達は思っていたが、流石にそれは難しいだろう。
「いやはや、こりゃあ完全なスクラップじゃな!」
ガハハ、とゲンリーが笑う。
「あれだけの爆発でしたからね……」
ルルリアの言葉に、
「はい、中々大きな炎だったのですが……でも、やっぱり、何か違うのです」
クーアが自らの感想を述べる。クーアの望む『炎』ではなかったのだろう。
ひと時の休息を得るイレギュラーズ達の目に、こちらへと向かう一団の姿が見えた。この戦場へと派遣された、僧兵達だ。イレギュラーズ達を迎えに来たのだろう彼らを眺めながら、イレギュラーズ達は作戦の成功、その喜びをかみしめるのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様の活躍により、無限軌道砲は無事に破壊されました。
鉄帝を追い払うとともに、後顧の憂いも完全に断てた事になります。
イレーヌも、作戦の成功と、皆さんの無事を、心から喜んでいる事でしょう。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
鉄帝との最前線にて、古代兵器を破壊してください。
●成功条件
『無限軌道砲』を破壊する
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●シチュエーション
幻想北部、鉄帝との戦場と化した草原が舞台です。
時刻は昼、天候は晴れ。敵味方共に百名ほどの兵士が戦いを繰り広げていますが、皆さんが向かうのは、後方敵側陣地、『無限軌道砲』と呼ばれる古代兵器の下です。
無限軌道砲の下へは、特に問題なく到達できるものとします。
無限軌道砲の付近には、10名程度の随伴兵が存在し、全て無限軌道砲の前面に展開しています。
シナリオ中に前線の兵士が戻って来たり、増援が来ることはなく、無限軌道砲が破壊された時点で、全ての鉄帝兵士は撤退する事になります。
●敵データ
随伴歩兵 ×10
特徴
鉄帝軍人。強敵ではないが、ザコと言うわけでもない。
全て、大剣・斧と言った近接武器を装備。殴って解決する人達。
至近・近距離の単体物理属性攻撃を使用。
稀に『乱れ』や『出血』を付与する至近・単体物理攻撃を行う。
無限軌道砲 ×1
特徴
古代兵器。大き目な戦車として考えてもらえれば間違いない。
基本的に、イレギュラーズの攻撃でダメージを与える事は出来ない。
しかし、レベルやクリティカル、弱点を探すプレイングがヒットすれば、ダメージと共にひるませることが出来るかもしれない……。
倒し方は簡単。車体上部のハッチを開けて、コックピットに爆薬を放り込む。
とは言え、随伴兵がいる場合、近づく事は難しいだろう。
攻撃はどれも高威力。至近~中距離・扇範囲物理攻撃の『近接防御小銃』に、中~遠距離単体物理攻撃の『主砲』を使って来る。特に主砲の威力はすさまじい。
何らかの方法で無限軌道砲の注意を引くことが出来れば、その人物へ攻撃を誘導する事が可能。
なお、パイロットは存在するが、戦闘能力は持たない。コックピットに爆薬が入れられた時点で逃げ出す。
●その他
爆薬
練達で再現された、異世界のリモコン爆弾。使い方は、棒状の起爆スイッチを押すだけ。
適切な位置で爆破できれば、古代兵器一台くらいなら、無力化できるだろう。
希少・かつ高価な代物で、一般的に流通する事はなく、練達でも量産はされていない。
イレーヌは、これを手に入れるために、相当苦労したようだが。
●戦果につきまして
このシナリオは成功失敗の他に『戦果』を数字判定します。
これは幻想側と鉄帝側の有利にイレギュラーズがどれだけ貢献したかを示す数値であり、各GMが判定を行います。
全ての対応シナリオで積み上げられた数字によって北部戦線の最終戦闘結果に影響が出る場合があります。
以上となります。
それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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