PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ジーニアス・ゲイム>ダニッシュギャンビット

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●勝利のための連敗
「はじめに言っておく。この部隊は敗北する」
 北幻想辺境貴族ボリス・トパロフは集まった兵とイレギュラーズたちにそう述べた。
 戦いとは勝利すべきもの。そう教わった若い兵士たちの反感に、ボリス氏は手を翳してみせる。
「幸いなことに相手の将軍はプロだ。プロである必ず以上一定の法則によって動く。それゆえ絡め取ることも可能なのだ」
 ボリス氏はそう述べると、チェスボードに白黒双方の駒を並べていった。
 双方がぶつかり合い、白い駒が倒され黒駒が進軍してくる。
 一見負けているように見えるが、その隙に白駒は完璧な迎撃陣形を作り、黒駒は一歩も前へ進めずそして退くことすらもできなくなっていた。
「これは勝利のための、『きわめて攻撃的な敗北』である。
 血を流すこと無く、職務を忠実にこなし、かつ最良の成果をあげるのだ。
 さあ――美しき敗北を見せつけようではないか!」

●永きにわたる戦争
「鉄帝がずっと前から幻想に南下作戦を仕掛けていて、それを幻想の貴族たちが器用にかわし続けてきたのは知ってるよね。
 領国の平和はこの『永続する戦争』によって守られている……と言っても過言じゃあないね」
 そんな鉄幻戦争を引き延ばすことに長けた将軍貴族のひとりが、ボリス・トパロフ氏である。
「ボリス氏にとって戦争に決着がつくことや、両軍のバランスが大きく傾くことは自身の損益になるし、陣地の取り合いが活発になれば両国の国力も低下する。長い目で見て損……と、考えているらしい。
 そこで、鉄帝軍の一部を誘い込んで戦線を停滞させる作戦を立てたんだ。
 そこへくると貴族の将軍はプライドが高い人が多いからね。そういうことを気にしない、中立的な立場をとりやすい人員を使うことにした。
 つまり、ローレットの出番ってわけさ」

 さて、ここで一旦当戦争の状況を説明しよう。
 新生砂蠍に占領された南方拠点と進軍してくる鉄帝軍による北方戦線。幻想国家はその両方へ同時に対応することを迫られていた。
 一方で世界的に中立の立場をとるギルド・ローレットは幻想と鉄帝両軍からの依頼を受託。ギルドはそれぞれの作戦への参加を決定した。

「南下してくる鉄帝軍にも何かしら重大な事情があるらしくて、矛を収めてくれる様子はないらしい。
 だから戦闘を受け、あえて敗北し、相手を誘い込むんだ」
 むろん、ただ敗北するだけでは相手に意図がばれてしまうだろう。
「そこで重要になってくるのが『鉄帝気質』さ」
 今回この戦場に投入される鉄帝の兵は軍隊というより闘技場あがりのファイターたちだ。
 それゆえ、戦闘が白熱すればするほど戦術的判断を失いやすい。
「こちらの強さや戦いの美しさを見せつけ、互角な戦闘を演出し、そしてあえて負ける。こうすることで彼らは必ず進軍してくるはずだ。
 世情的にも作戦的にもチョット難しいけど、そんな綱渡りをこなしてこそローレット……だよね?」

GMコメント

 こちらは全体シナリオ<ジーニアス・ゲイム>のひとつ。
 幻想サイドの依頼です。

 目的は『白熱した戦闘を行ない、あえて敗北すること』です。
 戦いの過程が白熱すればするほど良く、撤退の引き際が気持ちよければなお良いでしょう。
 逆に、こちらの戦闘に工夫がなさ過ぎたり相手を侮辱するような挑発をしすぎると敵の将軍に冷静さをもたらしてしまい、作戦の失敗リスクが高まります。

【任されたエリアと予測される敵兵】
 ボリス氏は戦場をいくつかに区切って細かく作戦を同時進行しています。
 皆さんに割り当てられたエリアは森林地帯。北側から向かってくる鉄帝兵を迎え撃つ形となります。
 また別の部隊によって上手に戦力分散が済んでいるので、皆さんが相手をする敵も限られています。

●鉄帝闘技チーム『ブラックサンズ』
 今回の作戦で割り当てられている相手チームです。
 普段は鉄帝の闘技場でランク争いをしている闘技チームで、今回の戦争に前線戦力として投入されました。
 誇高い幻想民(そしてローレット)のことは特に嫌いではなく、『良い戦闘』ができることを内心期待しているようです。
 メンバーの特徴は以下の通り

・太陽:バランスのよい格闘家。古代のベルトで変身する空手の達人。
・大地:戦いを記憶し変形する古代兵器で戦うテクニカルな戦士。棒術、砲術、剣術の三つを使いこなす。
・木蓮:複数の魔法カードを駆使して戦う中距離型のハーモニア。
・烈花:花と精霊の力を封じた押花で戦う遠距離型のハーモニア。
・海生:古代の秘薬が込められたボトルを駆使して戦うディープシー。ポーションや爆弾などを駆使する。
・大河:古代メダルに封じられた獣の力を宿して戦うブルーブラッド。爪による斬撃や跳躍&アクロバット戦法が得意。
・雷電:古代兵器のエネルギーカセットを差し替えて戦う帯電体質のオールドワン。
・空寺:引き連れた歴代ファイターの霊魂を召喚して戦うオールラウンダーのスカイウェザー。

【激戦のススメ】
 このシナリオの要は『白熱した戦闘を行なうこと』にあります。
 敵の戦力が(予想では)こちらとほぼ互角であるため、手を抜く必要は全くありません。逆に手を抜くとそれがバレる可能性すらあります。
 意図的な敗北は「これ以上戦うと不利だ、撤退しよう!」と誰かに主張させ、相手に次の戦いを期待させる『引き』を作ることで成立させられるでしょう。

 戦闘を白熱させるコツは8対8の構図を平等に作ること。
 全員が何かしら機能する状況を作ることです。
 一番シンプルなのはマークしまくって1対1(ないしは2対2)の状況を個別につくって互角に渡り合うことです。
 オレこいつにピッタリだなという相手を見つけてみてください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

【戦果につきまして】
 このシナリオは成功失敗の他に『戦果』を数字判定します。
 これは幻想側と鉄帝側の有利にイレギュラーズがどれだけ貢献したかを示す数値であり、各GMが判定を行います。
 全ての対応シナリオで積み上げられた数字によって北部戦線の最終戦闘結果に影響が出る場合があります。

  • <ジーニアス・ゲイム>ダニッシュギャンビット完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月12日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子

リプレイ

●偽りの迎撃
 森の中を進む『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)たち。
 アムドゥシアスに跨がったルーキスは周囲を見回してみた。
「闘技場チームと競り合いねぇ。おまけにオーダーはあえて負けろと来た、さてどう攻略するべきかな」
 会話の相手は『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)。
「なんとも面倒なオーダーが来たもんだな。競り合いした挙句に負けろ、か……とはいえ相手が同格位であれば手抜きは不要、全力でぶち当たるのみ」
 もう少し楽な方がよかったとはあえて言わず、苦笑するルナール。
 幻想貴族ボリス・トパロフが彼らに依頼してきたのは『上手に戦って負けよ』というものだった。万事そうだが、常に勝ち続けると大事なところで負けたりする。丁度良く負けてやることでより多くの利益を得るというのが、幻想らしいやり方であった。
 一方で戦いに勝つばかりが依頼ではないというのが、ローレットの何でも屋らしいところである。依頼され受理したからには達成に努力する。そういう約束だ。
 戦う相手は鉄帝の兵士だが、情報によれば闘技場でランク争いをしている闘技チームであるという。
「鉄帝の戦士達かぁ。どんな戦い方するのか、凄く楽しみかも!」
 『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)はわくわくした様子で森を進んでいく。
 ユーリエの意見に『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)も小さく頷き、だらりとさげた右腕をさすった。
「敗北が決まった戦いに参加とは早々できない。レアだな。それに白熱させなければいけないとは……」
「それなりの演技をせよ、ということでしょうか」
 『白銀の剣』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は自分の胸に手を当てて見た。
 こっくりと頷く『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)。
「これはブラフ。散々殴り合い、覚えてやがれと撤退する。名誉もくそもないやつですね。大丈夫、きつねですからやられ役も得意です。強敵のふり、見せてあげますよ」
「ヒヒヒ……ああ、恐い恐い」
 一方で不気味に笑う『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
 イレギュラーズたちは『負けかた』には慣れてない者が多い。
 そんな中で武器商人には不思議な自信があるようだった。
 シフォリィが首を傾げていると、『麗しの王子』クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)が不滅の聖盾を掲げてキラリと光った。
「僕はあくまで異世界の人間だ。国同士の戦争なんて関わるべきではないのだろうけど……世話になった人々へ、恩は返さなければね!幻想のために、正々堂々戦おうじゃないか!」
 気持ちをしっかり声に出して見せると、クリスティアンは跨がっていたハイパーメカニカルコロリババア・プロダクションマスターの首を叩き、がっしょんがっしょん走り出した。

●鉄帝闘技チーム『ブラックサンズ』
 あえて、鉄帝側より状況を語ろう。
 深い森を進む闘技チーム『ブラックサンズ』は敵の気配を探っていた。
 地雷探知機なのか掃除機なのかわかんない道具を翳して先行する海生が、ぴたりと足を止める。
「この先に敵の反応があるっぽいんだよなーなんか」
「ぽいって何ですか。真面目に探してください!」
「まあまあ。一旦ご飯にしません? 今日は回鍋肉作って来たんですよ」
「森で食べる料理じゃないよねそれ」
「森ってか敵陣なんすけど……」
「そうだなあ。警戒もいいけど腹ごしらえも……どうしたの木蓮」
「グウジザン! ダニミデルンディス!」
「皆! 来るよ!」
 空寺が二本指を立てると、茂みを切り裂いて一人の女騎士が現われた。
 レイピアを水平に構えた銀髪の女騎士。
 そう、シフォリィである。
 明確な敵意にブラックサンズは一斉に身構える。
「こういう時でなければ、また別の形で戦う事も出来たでしょう、ですが、これも戦場の定め……」
 ふと見ると、あちこちに潜んでいた武器商人やユーリエたちが姿を見せる。
「まずいっすよ、囲まれてる」
「分かってます。この人は任せて――」
 雷電は古代のエネルギーカセットを突き出すと、目を見開いてニヤリと笑った。
 どこか鬼気迫る様子に、シフォリィは迎え撃つように剣を握りしめる。
「今ここであなた達と出会えたことを大いなる意志に感謝し、誇り高く、正々堂々と戦いましょう!」
「わかりました――やってやるぜ!」
 雷電はカセットをハンマーにセットすると、シフォリィめがけて斬りかかった。
 剣で受けながらも後退するシフォリィ。連続で打ち込まれるハンマーアタックを剣で次々に受け止める。
 その途中、横目でランドウェラに合図を送った。
 ランドウェラは左腕だけで鉄爪を構えると、掃除機的な道具をしまい込む海生へと斬りかかった。
「だるいな……早く終わらせようか」
「うおっと!」
 爪撃を飛び退く海生。
 ホルダーから取り出した爆薬ボトルをシェイクすると、ディープシー的特徴である眉部のエラをついっと撫でた。
「そういわずに付き合ってけよ。こいつの実験に」
 海生が逃げながら投擲する爆薬ボトルを切り裂きながら追いかけるランドウェラ。
「あーあー始めちゃったよ」
「あの人たちいつも勝手ですからねえ」
 古代の変形武器を棒状にして振り返る大地。武器商人が手翳しによって放つ衝撃を棒の回転によって打ち払った。
「さて、噂に名高い古の武具(コ)たちに興味はあったんだよねぇ。視せておくれ。万が一、か弱い我(アタシ)なんかに負けるなんてことがあったら……連れて行ってしまおうか! ヒヒヒヒヒ!」
 武器商人は不気味な笑いを浮かべたまま連続で衝撃を発射。
 防御しきれなかった大地は派手に飛ばされ、それをユーリエと大河が追いかけていく。
「私の名はユーリエ・シュトラール!」
「これはどうも、俺は大河って言います」
「貴方達にここでデュエルを申し込む! 私たちを倒さない限り前には進めないと知りなさい!」
 ユーリエは剣を抜くと、大河へと斬りかかった。
 古代メダルを握りしめ、虎のような鉄爪を発生させる大河。
「おたくは幻想の人?」
「ローレットの者です!」
「それは良かった。ちょっと期待してたんだ!」
 大河は更にバッタのようなフットパーツを発生。木々の間をジグザグにジャンプし始める。
 ユーリエはそれを追い、武器商人たちのほうへと走って行った。

「早速バラバラだなあ」
「レッガザン! ギマズ!」
 咄嗟に振り返る裂花。
 竜をかたどったガントレットを翳すと、『グラーシャ・ラボラス』の一撃を受け流した。
 幽艶なるイグニスを突きつけているルーキス。
「見た目だけの飾りじゃないでしょう?」
「そちらこそ――」
「最近手応えが薄くてねぇ、遊び相手になってくれると助かるわ」
 ルーキスは更に魔銃を連射。次々と開く召喚ゲートから暴虐的な爪がのび裂花を襲う。
 裂花は押し花をガントレットに差し込むと、精霊のシールドを展開して防御し始めた。
 そこへ襲いかかるルナール。
 剣を握った木蓮が割り込み、ルナールの剣を受け止めた。
「ヴェイ!」
 麗刃・紅緋と幻刃・蒼碧の二刀流。それを剣に差し込んだ魔法カードの電撃で打ち払いながら、木蓮はルナールに反撃を試みる。
「さて、やり合おうか。歯ごたえはそれなりにあるんだろ?」
 ルナールは挑発的に述べると、華麗な刀さばきで襲いかかった。

 四つに分断された戦場。
 太陽は眼前に立つ狐耶ににっこりと笑いかけた。
「俺の相手はあなたですか」
「ええ、ミスターサンシャイン。ここで会ったが運の尽き、あるいは思わぬ幸運ですね。コヤンドルフ、あるいは最上の名に相応しい狐の御業をご覧あれ、です」
 狐耶は舞うように接近すると、顔面めがけて手刀を叩き込んだ。
 それを腕で絡め取るように腕の下を抜ける太陽。
 斜め後ろをとると、左の掌打を繰り出す。
 それをかがみ、転がってかわす狐耶。
「分かりました――お相手します!」
 太陽は一度自らの下腹部に両手を当てて気合いを入れると、狐耶に回し蹴りを繰り出した。同じく蹴りを繰り出しぶつけ合う狐耶。
 その一方。
 クリスティアンは剣を突きつけて煌めきを放っていた。
「君の相手は僕だ。ここから先へは、通さないよ!」
「仕方ない。先輩方――お願いします!」
 空寺は二本指をたてて歴代ファイターの霊魂を呼び寄せると、自らもふわりと浮き上がった。
「いくよ!」
 クリスティアンの剣に炎が宿り、空寺めがけて繰り出される。
 が、空寺はふわふわとした不思議な機動でクリスティアンの攻撃を回避。周囲を飛び回る霊魂を魔弾にして次々に発射してきた。
 盾を翳して防御するクリスティアン。
「距離を取った所で、無駄だ!」
 フロストチェインを発射するクリスティアン。
 腕に絡みついた鎖を引っ張りあい、二人は死霊弓を放ち合った。

●『良い戦い』
 エネルギーカセットを入れ替え、ハンマーから電撃の刃を生やして構える雷電。
「ハイスコアで勝利してやるぜ!」
「できるものなら――!」
 対するシフォリィもフェンシングスタイルでの連続突きで雷電を牽制する。
 その横ではランドウェラが海生の次々投げる溶解液や催涙弾を振り払って戦っていた。
「その右腕、怪我でもしてるのか? だらんとしたままだぞ」
「おもしろい……お前には、こっちの腕も使ってやろう」
 ランドウェラは右腕を覆っていた布を取り払うと、腕に刻まれた呪印を撫でた。
 びきびきと走るエネルギーライン。
 指先まではしった入れ墨のごときラインが呪術の輝きを発し、ばちばちと雷を纏った。
「やべっ」
 危機をさっして飛び退く海生めがけ、ランドウェラは右腕を突き出した。
 激しい電撃がほとばしり、咄嗟に防御する海生と周囲の草花。樹木。その更に先にいる雷電までもを巻き込んで爆発させた。
「うわ!」
 思わぬ攻撃に吹き飛ばされる雷電。
 ランドウェラは真っ黒に染まった右手を顔の位置に翳してゆっくりと近づいた。
「遊びは終わりだ」
「ああ……こっちも実験は終わりだ!」
 海生はそう叫ぶと、雷電とバトンタッチして前後を入れ替わった。
「くらえ!」
 さらなるライトニングを放つランドウェラに突撃してくる雷電。
 一方で、海生は腕にドリルを装着してシフォリィへと突撃してきた。
「ならば――!」
 シフォリィは刃に白銀の魔力を纏わせ突撃。
 海生のドリルとシフォリィの刃が交差し、花弁のようなオーラが舞い散った。
 激しい火花を散らして爆発する海生のドリル。
 その一方で、シフォリィは膝を突いて胸元を押さえた。
「またいつか、どこかで会いましょう」
「次は負けん」
 シフォリィとランドウェラはそう呟くと、牽制の雷撃を放ちながら逃走した。
「えっちょ!」
「いいとこだったのに!」
 ――一方その頃。
「流石にこれは不味い……ルーキス頼む」
「ほら、頑張って私の騎士様ー」
 ルーキスとルナールが並び、飛来する炎や雷撃を振り払っていく。
 『ストラス・アーミラリ』の回復を試みるルーキスの援護をうけ、ルナールはじりじりと相手へと近づいていく。
 一方のルナールは生命力を戦う力に変え、木蓮へと突撃した。
「相変らずの燃費の悪さで嫌になるが仕方ない」
 ルナールの鋭いフェアウェルレターと木蓮の電撃剣が交差。
 幾度となくぶつかる剣がスパークとなって飛び散っていく。
 裂花はガントレットにストレリチアの押し花を差し込むと、中に封じた炎の精霊を開放した。
 対抗するようにエメスドライブを打ち込みに行くルーキス。
「こういうことも出来るのよ。伊達に修羅場は潜ってないから」
「このままじゃ勝負が付きそうに無いっすね」
「ヤリマジョウ! レッガザン!」
 木蓮と裂花はそれぞれ魔法と精霊の力を身体に纏うと、ルナールめがけて全力の攻撃を仕掛けてきた。
 麗刃・紅緋と幻刃・蒼碧を使って防御姿勢をとるが思わず吹き飛ばされるルナール。
「あー……うん、これは潮時だな」
「ふーむ流石に不利かな、撤退させてもらうよ」
 二人は駆けつけたアムドゥシアスとパカダクラに飛び乗ると、あっけにとられた裂花たちをよそにその場を撤退した。
「あ、あれ? もう終わり?」
「ニガザン!」

「セイヤー!」
 バッタ状の足で蹴りを繰り出す大河。
 派手に蹴り飛ばされた武器商人は樹幹を破壊して転がったが、自らを覆う闇のようなものによって無理矢理起き上がる。
「なんだ……? いくら倒してもきりがない」
「ヒヒヒ……」
 武器商人は星官僚のタクトを怪しく翳し、不気味に笑うばかり。
 その底知れなさに大河は攻めあぐねていた。
「手数で押し切るしかないかな……けどこれは最後までとっておきたいし……」
 緑の古代メダルを握って悩む大河。
 その一方ではユーリエが大地とがちがちにぶつかり合っていた。
 『神聖な戦いに邪魔が入るのは興が削がれるでしょう。場所を変えますよ』というユーリエの誘導に素直に『はい!』と頷いてついていった結果である。
「さすが、やりますね」
「そちらこそ……ではこれならどうですか!」
 強引に詰め寄り剣を打ち込んでいくユーリエ。
 対する大地は武器を剣に変形させ、ユーリエの激しい攻撃を打ち払う。反撃にと棒術にシフトして打ち込むが、ユーリエは今度は剣と盾を上手に使って大地の攻撃を打ち払っていく。
 一進一退の攻防。
 二人同時に飛び退き距離を取る。武器をボウガンのように変形させた大地に対し、ユーリエは剣のエネルギーを飛ばすようにして発射した。
 互いの間で爆発する衝撃。
 粗く息をする二人。
 ユーリエは剣を盾へと収納すると小さく首を振った。
「悔しいですが、貴方達の勝ち……ですね。貴方達のその名は幻想に轟くでしょう」
 ユーリエが合図を出すと、武器商人はニヤリと笑って衝撃をまき散らした。
 咄嗟に防御する大地たちをよそに、一目散に逃走していく。
「一体なんだったんだ……?」
「けど、もう少しで何かがつかめそうでした」

 残るは狐耶とクリスティアンのエリア。
 狐耶はいつもより華麗に見える戦い方で太陽と格闘を繰り広げていた。
(試合試合。ええ、本当は試合なんかじゃありません。戦争ですよ、戦争。生きるか死ぬか、戦争とはそういうものです。大丈夫、慣れてます。主に家庭で。なんで家庭で命の危機に慣れるのかはわかりませんが、そういうものだったのです)
 狐耶の拳をガードし、強烈な拳で返してくる太陽。
 派手に吹き飛ばされ、狐耶は樹幹をなぎ倒して転がった。
 跳躍し、キックを繰り出してくる太陽。
 対して狐耶は神薙による迎撃を謀った。
 交差する衝撃。
 競り負けたのは狐耶の方だった。
 傷ついて膝をついた太陽に対し、狐耶は爆発を起こして吹き飛び、地面をバウンドしてぺたんと寝転んだ。
「クッ……!」
 クリスティアンはその様子に歯噛みしながらも、空寺の撃ってくる連続死霊弓に苦戦していた。
 彼を中心に渦巻きを描くように飛行する空寺はそれぞれのレンジに対応した攻撃を次々と打ち込み、その一方でクリスティアンの攻撃を器用に回避していた。
「ここで仲間を失うわけには行かない。一度引いて体制を立て直そう! 一時撤退だ!」
 『了解』と言ってむくりと起き上がる狐耶。
「逃がすか!」
 霊魂の力をパーカーのように纏った空寺がフライングキックを繰り出してくる――が、そこへ猛烈に割り込んだHMKLB-PMが空寺を突き飛ばし、狐耶をぱくっとくわえるとそのまま走り出した。
 その上に颯爽と飛び乗るクリスティアン。
「いい戦いだった。また会おう!」
 ピッと二本指を立ててウィンクするクリスティアンに、空寺は思わず同じ挨拶を返してしまった。
「さあメカニカルコロリババア、撤退だ! こらワキの臭いをかぐな! かぐなったら!」
 走り去っていくクリスティアンたち。
 空寺と太陽はその様子を見送り、自分の拳へと目を落とした。
「確かにいい勝負だった」
「この続きができればいいんですけど……そうだ、いいこと考えた!」

 『ブラックサンズ』を含めた鉄帝の戦力はわざと敗走した幻想戦力を追いかけて森へ深入りし、その後周囲からの牽制に動けなくなりほぼ浮き駒と化すのだが……それはまた後の話である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 当作戦は成功しました。
 幻想サイドに戦功点が入ります。 

PAGETOPPAGEBOTTOM