PandoraPartyProject

シナリオ詳細

屹立する三角
屹立する三角

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あり得ない筈のもの
 フィッツバルディ領内の、とある河川にて――。

「おい、ありゃ何だ」
 村が所有する河川漁業用桟橋に木製のボートを寄せた時、川魚漁を営むベテラン漁師のビーロ・シェスが夜の川面に何かを発見して、波に揺れるボート上でじっと目を凝らした。
 妙なものを見た気がしたのだが、あれは錯覚だったのか。
 若き漁師見習いのイーズ・バラホーは桟橋上からボートを固定する為のロープを差し出しながら、師匠のビーロと同じように漆黒の川面を凝視する。
 何も、おかしなものは見られない。
「どんなのが見えたんです?」
「いや、俺の見間違いだったようだ。まさか、川にあんなものが居る訳……」
 そこまでいいかけた時、不意にボートが大きく揺れた。いや、揺れたというよりも、下から何か強烈な力で突き上げるような衝撃が襲いかかってきた、というべきか。
 まるで横転するかの如き勢いで、船体が宙空に浮き上がった。当然ビーロはその衝撃に堪え切れる筈もなく、頭から水中へと放り出された。
「ビ、ビーロさんッ!」
「俺なら、大丈夫……」
 そこまでいいかけて、ビーロの声は不意に途絶えた。何かに引っ張られるようにして、ベテラン漁師は水中に消えてしまったのだ。
 そして数秒後、イーズが見たもの――。
「ひぃ……ビ、ビーロさんッ!」
 川面に姿を現したのは敬愛する師ではなく、鋭い歯の列の間から人間の腕がぶら下がっている、巨大な鮫の姿だった。

●頼れるのはイレギュラーズだけ
 翌日、イーズはビーロの妻ケイティと共にローレット本部を訪れていた。
 応対に出たユリーカ・ユリカ(p3n00002)は、イーズの説明に目を白黒させている。
「川に鮫が出た、んですか?」
「はい。間違いなくあれは、鮫でした」
 ユリーカはイーズの言葉を信じない訳ではなかったが、少しばかり想定外の依頼に頭が追いついていない様子だった。
 イーズ曰く、師匠のビーロは既に鮫に食い殺されて故人となっているだろう。しかしこのまま事態を放置していれば更に被害が拡大する恐れがある。
 だからあの鮫を退治して欲しい、というのがイーズと、夫を失って悲しみに暮れるケイティの依頼だった。
 イーズはまずローレットを訪れる前にフィッツバルディ領の役所へと駆け込んだのだが、川に鮫が現れる筈などないと、まともに取り合ってくれなかったらしい。
 であれば彼らが頼れるのはもうイレギュラーズしか居ない、という結論に至ったとの由。
 鮫が一匹だけなのか、或いは複数居るのかは明確ではない。
 しかし人間を一撃で食い殺すことが出来るほどのサイズであることは、間違いなさそうだ。
 そんな化け物を相手に出来るのは、国軍以外ではイレギュラーズしか居ないだろう。
 それならば、とユリーカは胸を張った。
「どうか、任せるのです。適切な人員をすぐに派遣してみせるのです」
 ユリーカは早速、本部ロビーに足を走らせて鮫退治人員募集の告知を打ち出した。

GMコメント

 こんにちは、革酎です。
 今回も水にまつわるシナリオですが、場所は前回と違って幻想領内となります。
 以下は、本シナリオの補足情報となりますのでご一読下さいませ。

●依頼達成条件
・川に出現した鮫の排除

●鮫
 イーズが目撃したのは全長5~7メートル程度の鮫ですが、夜だったこともあり、種類は不明です。
 神出鬼没ながら、人間を襲って食い殺す習性があるようなので、人里近くに出現する可能性は非常に高いとのことです。
 通常の大型鮫と同等の生命力と戦闘力を保持していると考えて結構です。

●捜索方法
 河川漁業用のボートを借りることが出来ますが、自前で捜索手段を用意出来る場合は無理に借用する必要もありません。

●同行NPC
 桟橋まではイーズが案内してくれます。

  • 屹立する三角完了
  • GM名革酎
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月10日 20時55分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

トラオム(p3p000608)
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
ハクウ(p3p001783)
静寂の白
リック・狐佚・ブラック(p3p002028)
狐佚って呼んでくれよな!
アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)
モノクローム・ウィスパー
Pandora Puppet Paradox(p3p002323)
兎人形
エレム(p3p003737)
虹の騎士

リプレイ

●静かなる捜索戦
 小春日和の柔らかな陽気が気持ち良い、とある日の午後。
 日常の疲れを癒やす為にちょっとした散歩にでも出かければ、随分と良い気晴らしになるかも知れない、そんな穏やかな空気すら感じられる川辺の小道――。
 だが、その川と周辺区域は寧ろ、物々しい雰囲気に包まれていた。
 複数の小舟が自由に行き交うことが出来るほどの広い幅を持ったその川は、本来ならばひとびとの糧を提供する母なる水源である筈だったが、今は違う。
 ひとを襲う獰猛な鮫の出現。
 その恐るべき凶牙に、それまでの平穏は完全に崩れ去っていた。
「さて……大体、こんなものか」
 川辺から沖合に向けて突き出る漁船用桟橋の先端付近で、トラオム(p3p000608)は漁師達から借り受けた大型の固定銛を設置したところでひと息入れた。
 借用した大型固定銛は全部で五本。いずれも威力は申し分ないが、銛自体の重量の問題で、射程は極端に短いらしい。聞けば、追い込んだ大型の得物を至近距離から確実に仕留める為に使用するものらしく、こればっかりは如何ともし難いのだという。
 大型固定銛を設置した桟橋は、沖合に向かって右手側にちょっとした浅瀬状の入江を望んでいる。
 ここに鮫を誘い込み、勝負を仕掛けるという算段になっていた。
「先程少し浅瀬に入ってみたが、私の腰ぐらいまでの深さがある。アンタは矢張り、ボートの上を主戦場にした方が良さそうだ」
 実際の戦闘時には至近距離での盾役を任される『虹の騎士』エレム(p3p003737)が、同じく盾役として前衛に立つ『兎人形』Pandora Puppet Paradox(p3p002323)に向けて幾分渋い色の混ざった声を向けた。
 Pandoraはしかし然程に困った様子も見せず、トラオムの傍らでもっふもふの体躯を軽くぴょんぴょんと跳ねさせながら陽気に笑った。
「にひひっ。ま、しょうがないにぃ。念の為、足場のボートは三隻ぐらいお借りするにぇ~」
 桟橋には今回の討伐作戦の為に用意された小型の川漁用のボートが浮かんでおり、それらボートの群れを桟橋から入江を覆う形で展開することで底引き網での包囲網を形成することが出来る。
 それ以外にも何隻か予備のボートが浮かんでいるから、Pandoraの足場用として用いることも十分可能であろう。
 エレムは小さく肩を竦めた。Pandoraには既に戦闘の際の青写真がある程度出来上がっているらしい。ならばエレムとしても、そこまで心配する必要は無いといって良かった。
「後は捜索組と囮班の連絡を待つだけだな」
 トラオムは一羽のカラスが入江から沖合に向かって飛び去ってゆくのを漫然と見上げた。
 実はそのカラスは、ただのカラスではない。『狐佚って呼んでくれよな!』リック・狐佚・ブラック(p3p002028)が放った、ファミリアーだった。
 リックの五感と直接リンクしているその漆黒の翼は、入江から上流方面の空を滑るように舞い、川面に異常を発見すればその場で旋回するという役回りで捜索活動に入っていたのである。
「ふひぃ……お腹空いたなぁ。結構、血ィ抜いたもんなぁ」
「採決と空腹は、直接関係無いんじゃなくて?」
 入江を望む小高い岩場の上で幾分疲れた様子を見せるリックだが、その傍らで人血による囮作戦を指揮する『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が呆れた様子で小さく笑った。
 イーリン自身も囮に用いる為として自ら採血し、その血液を少なからず提供しているのだが、別段空腹に悩まされるという気配は無い。リックの空腹感は単純に、とっとと凶悪な鮫を捕まえ、漁師飯に仕上げて食ってしまいたいという願望が肉体に表れているだけの話だろう。
「それにしても、わざわざ海から川を遡ってまでひとを襲いにくるなんて、どこまで貪欲なのよって話ね」
 トラオムが漁民から借りてくれた望遠鏡を覗き込みながら、イーリンは呆れたように溜息を漏らした。
 仲間達と共に掻き集めた情報を総合した結果、出現した人食い鮫がもともとはこの川の河口先で頻繁に目撃されていた個体と同一であることが判明していた。
 しかも河口先に常駐していた人食い鮫のうち、姿を消したのは一体だけではなかったのだという。
「敵は二体……さぁて、どこに居るんだぁ?」
 ファミリアーから得られる高高度の視界を脳裏に広げつつ、リックは低く呟いた。腹は減っているが、任務への集中力は微塵にも失われていなかった。

●迫り来る三角形
 最初に鮫を発見したのは、入江から見て下流側での上空捜索を担当していた『静寂の白』ハクウ(p3p001783)だった。
「……見つけた」
 川面をゆっくりと下っている巨影を見た瞬間、自分でも気づかないうちに武者震いがその体躯を小さく震動させた。
 荒波猛々しい外洋ならばいざ知らず、この内陸の穏やかな水面に映る異形の巨躯はどう見てもその存在自体が不自然であり、且つ異様に過ぎた。
 森で育った為、実物の鮫を見るのは今回が初めてだったのだが、それでも――否、それ故にハクウはあの化け物が極めて危険な存在であるということを半ば直感的に、そしてほぼ一瞬で理解するに至った。
 ハクウはここで逡巡した。すぐに仲間達のもとへと引き返し、鮫発見の報を入れるべきか。
 だが現在、あの鮫はゆっくりとではあるが入江から遠ざかりつつある。ここですぐにでもあの鮫を入江方面に誘導しなければ、次に発見出来るのはいつになるか分からない。
 情報共有は鮫を入江に誘導した後でも良い。ハクウは僅かな迷いを捨て、左の足首に吊り下げている血袋を右足で軽く蹴り上げ、川面に向けて少量ずつ血液を投下し始めた。
 この血袋は万が一遠方で鮫を発見した場合に備えて、イーリンから借り受けていたものだ。もっといえば、この血袋に詰められている血液の半分は、ハクウ自身が提供したものだった。
「さぁ、ついて来い」
 ハクウはその場でわざと乱高下を繰り返し、或いは不自然な軌道で数度旋回した。自分を見張っている筈の仲間に、異常を知らせる為だ。
 その間にも投下されている血液は鮫の嗅覚を刺激し続けている。やがて、ハクウの眼下で不気味な巨影がその鼻っ面の向きを変えた。
 囮の血液に、食らいついてきたのだ。

 入江下流の上空でハクウが見せている不規則な飛行軌道に、川岸の斜面で静かに待機していた『神話殺し』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)と『暗闇を覆う光』アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)の両名はすぐさま反応した。
「わあい、釣れた釣れた。鮫がこっちに来るんだねぇ」
「害為すものは排除するのみ。行くぞ」
 おっとりとした笑みを浮かべて嬉しそうに目を輝かせているアリスターとは対照的に、エクスマリアの鉄面皮はどこまでもクールだ。
 だがふたりとも、やるべきことは分かっている。
 アリスターは嬉々とした表情とは裏腹に、驚く程の速さで川辺の小道を駆けた。彼の仕事場は、桟橋の川岸寄り付近だ。そこに陣取り、自らが最も頼みとする狙撃技術を駆使して、鮫を入江に追い込みつつ機動力を奪うというのが、アリスターの主任務だった。
 一方のエクスマリアは前衛に立っての接近戦が主な役割だ。可能ならば飛び道具での牽制もと考え、長弓も携えてはいるが、水中の敵に対して弓矢がどこまで通用するのかは不透明だ。
 その儚い少女のような外観からは中々想像しにくいかも知れないが、今回の対人食い鮫戦では至近距離に於ける真正面からの殴り合いが基本戦術となるだろう。
「そろそろハクウが入江に到達する。上手く奴を浅瀬に追い込んでくれ」
「はあい。任せて~」
 桟橋付近で、エクスマリアはアリスターと分かれた。
 アリスターは桟橋と川岸の境界で足を止めるや、素早い動作で狙撃態勢に入る。対してエクスマリアは緩いカーブを描く入江の岸を駆け抜け、自らの衣服が濡れるのも躊躇せずに水面へと駆け込んでいった。
 既にハクウの合図を受けて浅瀬へと移動していたエレムとPandoraの両名が、接近戦での主火力を担当するエクスマリアを出迎える。
「イーリンとリックは?」
「もう一体を警戒中~。こっちでゴリゴリやってる間に不意打ち喰らったら、目も当てられないもんにぃ」
 膝上まで水に浸かったエクスマリアに対し、Pandoraがボート上で岩場の方を指差す。
 一体目は入江奥深くの浅瀬までハクウが囮誘導し、もう一体は発見し次第、イーリンとリックが入江口付近に誘導して分断しておき、確実に最初の一体目を仕留めるという算段だ。
「……来るぞ」
 エレムの緊張を伴った硬い声が、エクスマリアとPandoraに戦闘開始の合図を告げる。
 入江奥の浅瀬上空へと突っ切ってゆくハクウに続いて、三角形の背ビレが川面を鋭く裂いて、こちらに近づいてくる光景が視界に飛び込んできていた。

●連戦
「よし、今だ……行け、イーズ」
 一体目の鮫が浅瀬付近へと駆け抜けていった直後、トラオムは底引き網で連ねたボートの先頭を操るを若き漁師見習いのイーズに指示を出した。
 イーズは少しばかり青ざめた顔を見せていたが、決して怯んだり臆した様子は見せず、手慣れた様子でオールを漕ぎ、幾艘ものボートを率いる格好で桟橋から入江口を一気に横切っていった。
 底引き網のカーテンが入江口を覆い尽くし、これで一体目の鮫を袋小路に追い込んだ形となった。
 直後、桟橋根元付近から乾いた射撃音が連続した。アリスターが目論見通り、その秀逸なる狙撃技術で鮫を浅瀬方面へと確実に追い込んでいる。
 次いでPandoraがボート上から投げ網を広げ、エレムに向かって巨大な歯列を上下に広げた鮫の鼻先から背ビレ付近にかけて、上手く覆い被せることに成功していた。
 だが、網に絡められた程度で動きが鈍るような相手ではなかった。
 浅瀬であろうとも、鮫は容赦なくエレムに牙を剥き、ひとを一度の噛みつきで呑み込んでしまうほどの巨大な顎で一気に食い殺そうと迫ってくる。
 対するエレムは大型の盾を巧みに駆使し、鮫の攻撃を辛うじていなしていた。
 その防御技術で致命傷を受けるには至っていないが、兎に角体力を消耗する為、長期戦は絶対に避けなければならない。疲弊したところで胴部をがぶりとやられては、堪ったものではないだろう。
 一方エクスマリアはエレムの背後に位置を取り、文字通りエレムを盾として猛攻を繰り出していた。
 鮫は前方への直線移動しか出来ない為、左右への回避や、エレムをかわしてその後ろに居るエクスマリアに攻撃を仕掛けるという芸当は不可能である。
 その大型魚類の弱点を衝いた戦術が功を奏し、鮫は徐々に打撃が蓄積してきたらしく、動きが鈍ってきた。
 ここでハクウが引き返してきて、鮫の真上から長弓による攻撃を加え始めた。まさに文字通り真上からの射撃である為、矢の威力が水圧に阻まれて損なわれることもない。
 そしてアリスターの狙撃も的確に鮫の生命力を削り続けていたが、決定打には至っていない。時間をかければ鮫の生命活動を停止に追い込むことも出来ただろうが、それではエレムの体力が持たないだろう。
 ここで、トラオムが桟橋上から大声を張り上げてきた。
「銛を叩き込むッ! 奴の動きを一瞬で良い、止めてくれッ!」
 その声にいち早くエレムが反応し、大型盾で鮫の鼻先を強打した。
 鮫の動きが一瞬、止まった。そこへ三本の銛が立て続けに飛来し、鮫の胴部に深々と食い込んだ。これが事実上の致命傷となったらしく、鮫の動きはほぼ完全に停止した。
「やったか?」
 鮫と間合いを取りつつ、エクスマリアは横向けに浮かぶ不気味な巨躯を凝視した。
 どうやら動く気配は無い。完全に息絶えたと見て良いだろう。
「流石に、疲れたな……」
 エレムは必死に呼吸を整えようとしていたが、消耗した体力はすぐには回復しそうにもない。
 だがここで、無情の通達が飛び込んできた。
「二体目、接近中ッ! 底引き網を突破ッ!」
 岩場の上から、イーリンが鋭い叫びをあげて警戒警報を放った。
 見ると、たった今仕留めた個体よりも更に大きな巨影が、底引き網のカーテンを強引に突破して浅瀬へと突進してくる様子が見えた。
 本来なら静かな川面が陽光をキラキラと跳ね返すだけの穏やかなその一角に、荒れ狂う波しぶきが激しく揺れていた。
 ここでPandoraが八艘飛びの要領でボートからボートへと巧みに移り渡り、エレムに代わって前衛に出た。
 力で防御するエレムとは異なり、Pandoraは敏捷性で勝負する手に打って出たのである。
 二体目の鮫は底引き網もろともボートの群れを入江内に引きずり込んできている為、Pandoraにとっては飛び移る足場の宝庫のようなものだ。
「でっかいフカヒレがやってきたにぃ。こんなご馳走を逃がす手は無いにぇ。にひひっ」
 二体目の注意を引くべく、わざとギリギリまで引きつけてからボート間を飛び回るPandora。
 既に一体目との勝負で体力、手数共に消耗し切っているエレムとエクスマリアは一旦、川岸に後退した。
 だが、戦力はまだまだ温存されている。
 岩場の上から、リックのガトリングが猛然と火を噴いた。

●食欲は爆発だ
 満を持して、とはまさにこういうことを指すのだろう。
 二体目との戦闘は、リックの火力が戦局を左右するといっても過言ではなかった。
 勿論その為には、Pandoraがボート間を華麗に舞う回避型盾役として十分に機能していることが大前提ではあったが。
 イーリンも岩場から飛び降りて浅瀬へと入り、囮作戦の指揮役から回復補助へと担当を切り替えた。
 その一方で、ハクウも上空からの長弓攻撃を加え続ける。このハクウと、そしてリックが発揮した動物特攻が相当に威力を発揮していることは、傍目から見てもよく分かった。
「もう一丁、網引くぜぇッ!」
 リックがPandoraと同じようにボート間を八艘飛びに飛び廻っていたが、途中で予備の底引き網を引っ張り出し、一方の端を自らが握り、もう一方の端をPandoraに投げ渡した。
 鮫はPandoraに狙いを定めて及び廻っている為、網を投じるタイミングと方向を見定めるのは容易い。
 リックの合図で、Pandoraは網を広げるようにボートからボートへと飛び廻った。
「よっしゃあ捕まえたッ! トラオム、銛だぁッ!」
 網の端を力強く引いて鮫の動きを一方向に封じたリックが、桟橋へと指示を飛ばした。その応答だといわんばかりに、巨大な銛が続けて二本、鮫の胴部と尾ビレを正確に貫通した。
 ここで鮫の動きが極端に鈍くなった。
 イレギュラーズの誰もが、ここが勝負所だと攻勢に出る。
 それまで距離を取っていたアリスターが桟橋上を駆けてきて、近距離から威力十分の狙撃を連続して叩き込むと、ハクウも上空から残りの矢を全て鮫の背中へと、文字通り雨あられと降り注がせた。
 一方のリックは再び岩場の上へと駆け上がり、ガトリングの残弾を全て叩き込む。
 それから数秒後には、二体目の鮫も腹を上に向けて川面に浮かび、ぴくりとも動かなくなっていた。

 川の漁師達を恐怖に陥れた二体の鮫は、無事に排除された。
 ふたつの大きな屍骸は、川岸に引き上げられた。漁師達は何ともいえぬ渋い表情でその二体を取り囲み、素直に喜んで良いのか、仲間の死を悼めば良いのか、複雑な空気の中で静かに佇んでいた。
 それらの人影の中に、イーズとケイティの姿を認めたPandoraがのそのそと歩を寄せて哀悼の意を表明してから、静かに笑いかけた。
「ボク達がきちんと、仇は取ったにぇ。だからビーロさんも、安心して天国に行けるにぃ」
 Pandoraの心遣いにイーズとケイティは素直に感謝の意を表しつつも、矢張りビーロを失ったという悲しみが改めて込み上げてきたらしく、言葉も無いまま、ふたりして小さく肩を震わせて嗚咽を漏らしていた。

 ところで、二体の巨大な鮫の屍骸をどうするかということで協議を進めた結果、ひとまずイレギュラーズが持ち帰るということで決着がついた。
 川の漁師達は鮫の調理法や始末法などの知識は全く持ち合わせておらず、このまま放置されても屍骸が放つ強烈なアンモニア臭で桟橋周辺が使いづらくなるとのことで、イレギュラーズの屍骸持ち帰りには特に異論らしい異論も出てこなかった。
 但し、ビーロの遺体だけは残して欲しいとの強い要望があった為、アリスターとリック、トラオムの三人が率先して二体を解体し、内臓からビーロのものと思しき遺骨や衣服を取り出してケイティに引き渡すという一幕もあった。
 それらを全て終えてから、イレギュラーズはふたつの屍骸を持ち帰る段取りに入った。
 しかし、屍骸を持ち帰ってどうするのかという点で、ハクウが驚くべき要求を出してきた。
「本気で全部、食べるつもり?」
「食べる」
 恐る恐るといった調子で、イーリンが問いかけた。が、ハクウは断固たる決意をみなぎらせて、大きく頷き返した。
 基本的に鮫の屍骸はアンモニア臭が酷い為、食用には適さない。フカヒレなどは旨い食材になるだろうが、それ以外の部位はとても食えたものではないのだ。
 それでもハクウは、全部食い切るのだという。イーリンが驚くのも、無理は無かった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 本シナリオを担当させて頂きました革酎です。
 このたびはご参加頂きまして、誠にありがとうございました。

 鮫を撃退するだけでなく、ちゃんと後始末や依頼者へのフォローがあるなど、皆様の優しさが滲み出るプレイングに心癒されました。
 尚、鮫の骨は基本的に全て軟骨であり、歯も鋭くはあるものの決して頑丈ではないので、飾り物以外では余り実用的な利用法はありません。よって、全部始末されたものとしてお考え下さい。
 但し、本当に全部食べきれたかどうかは皆様のご想像にお任せします。

 では機会がございましたら、またどこかで。

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