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シナリオ詳細

<ジーニアス・ゲイム>南部籠城攻略戦線

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その日、幻想の夜は明るかった。
 いつもなら静かに、星々の輝きを眺めることの出来る場所だ。それが今は、地上の光が目立って見えやしない。
「困ったねー困りものだよ!」
 森を横に、前は平原、後ろは街。そんな砦の壁の上。
 平原を眺める貴族の青年は笑って言った。
 眼前、そこには布陣する敵の集団がいる。
 盗賊王、キング・スコルピオが纏め上げたならず者達。『新生砂蠍』と名付けられたそれらの軍だ。
 先の戦いで、砦より南部の拠点が幾つか陥落した話は、既に幻想中の話題となっていて、
「困ったね」
 簡易な拠点を築き上げたそれらは、昼と夜の境目なしに、砦を攻めている現状だ。
「狙いは首都だろうけど、やれやれ……容赦無いなぁ」
 ただ籠城するだけならもう暫く持ち堪えられるだろうか。そう思うが、しかし無理だと判断する。
 その最たる理由は、単純な戦力差と戦略だ。
「夜に休めないのは痛いよねぇ……こっちは交代人員も少ないってのにさ」
 砦の戦力を10としたら、敵は20。半数が攻めている間に半数は休むという、引きこもりには辛い手を打たれているわけだ。
「援軍は、来ないのでしょうか……」
 隣にいる貴族の兵士が、疲れた顔で呟いた。
 彼もまた、休めていない。目の下のクマがそれを物語っている。
「出来ないだろうね。聞いた? 北部戦線の話」
「北部……って、まさかゼシュテル鉄帝国ですか!?」
「あちらさんも動いたらしいよぉ」
 偶然にしてはやはり出来すぎなタイミングだ。不確かな報告によれば、帝都の穀物倉庫を失ったらしいと聞き及ぶが。
「……冬越え間近に、痛いところだよね」
 ただでさえ、普段から厳しい気候の土地だ。そこに暮らす者達の不平や不満、不安。それらの入り交じりも激しい所で、政治的にも経済的にも大変なのだろう。
「新生砂蠍に便乗して、幻想の領土を奪いに来る、と……」
「今までは、のらりくらりと出来たけれど、今は余裕も無いしね。あちらに対抗する為に、他の有力な貴族連中も動いてる頃だよ。それに……」
 攻められている南部の砦は此処だけではない。
 幻想国の戦力は、既に等しく分散したと言えるだろう。
「じゃあ、もう援軍もなく、ただやられるのを待つだけなんですか……!」
「そんなことは言ってないよ。僕らにはまだ、頼りに出来る戦力が……ローレットがいる」
 依頼は既に出した。
 これ以上、幻想国を荒らさせる訳には行かない。
「夜明け前には、きっと来てくれる。その時こそ、私達も底力を出す時さ」


「さて」
 慌ただしいローレット内部に、『黒猫の』ショウ(p3n000005)が声を上げた。
 目の前には八人のイレギュラーズが居て、他の場所にもそういう組がいくつかある。
「時間も無い、手早く説明を済ませよう。……ああすまない、他の案件もいくつか重なっていてね、悪気は無いんだ」
 おざなりに見えただろうか。そう心配しての言葉に、イレギュラーズは「大丈夫だ」と頷きを見せて先を促した。
「ありがとう」
 それに謝辞を済ませ、ショウは口を開いた。
「既に知っていると思うが、北と南から幻想への侵攻が進んでいる。北、こちらは鉄帝からの侵略になるが、今集まってもらった君達にお願いするのは南方面。つまり、『新生砂蠍』への対応だ」
 あれこれと紙の貼られたクリップボードに、新たな資料を上に張り付ける。
 南に設置された、ある砦の位置図面だ。
「砦には少数の兵士がいる。籠城し、前面に展開した砂蠍の一団をなんとか凌いでいる所だね。
 が、もう陥落してもおかしくない劣勢だ。急いで現地に向かい、これを打破してもらいたい」
 どうやら奴等は簡易なテントと柵を作り拠点を構え、断続的に砦への圧力をかけ続けているらしい。
 疲弊を促し、戦力を削り、確実に砦を落とすやり方だ。
「……なんで一気に攻め落とさないんだ、こいつらは」
 資料を眺めていた一人が疑問を口にした。
 戦力差は歴然。単純に砂蠍の兵力は砦の倍だ。それなのに攻めないその理由は、
「それこそ反撃の狙い目だよ。どうやら奴等、砂蠍の中でも数だけ揃えたならず者が多いらしい。もちろん中にはきちんとした指揮者や戦士もいるが、逆にそこを崩せば一気に形勢を傾けられる」
 兵士としての練度が未熟な点だ。
 故に、提案される作戦がある。
「砦に到着した後、貴族の戦力が突破口を作って君達を送り出す。中枢に辿り着き、指揮者と有力戦士を撃破して、残る敵を蹴散らす」
 つまりは、力で持って力を征す。そういう作戦だ。
「どこを突破されたとしても、敵を王都に近付けることになる。それだけは、許してはいけない」
 北も南も、一切の予断を許さない。
 それを1つずつ解消する、その一歩。
「詳細は書面に纏めておいた。道中でめを通してくれ。それじゃ、気を付けて」
 ショウの見送りを受け、イレギュラーズはギルドから出立した。

GMコメント

 ユズキです。
 あっちもこっちもそっちもどっちも全力で抗う戦いですね、燃えます。

●依頼達成条件
 敵の中枢部隊を撃破。
 砦の兵士の生死や、中枢以外の敵戦力の残存数は成否に関わりません。

●現場
 砦前の平原。

●砦戦力
 戦える兵士が40人弱。消耗激しく、短期決戦用の底力だけでイレギュラーズの突破口を切り開きますを

●敵戦力
 戦士八人が中枢部隊。
 八人全員が統率能力持ちであり、戦闘スタイルは剣と魔法を使い分け、BS付与も行うオールマイティータイプ。
 その他有象無象が約100人。

●その他

 ・砦の兵士が突破口を開け、突っ切った所から始まります。
 多少邪魔は入るでしょうが、余程モタモタしない限りはすぐに中枢へ到達出来るでしょう。

 ・戦士との戦闘開始から少しずつ、砦の兵士は減っていきます。
 時間を掛けすぎると、有象無象が乱入してくるでしょう。その分不利になる可能性があります。

 ・余力が残れば有象無象を相手に大乱闘が始まります。が、重要では無いので、戦士の方に注力するのが良いかと思います。


 以上、それでは、ちょっとした戦争、始めましょう。

  • <ジーニアス・ゲイム>南部籠城攻略戦線完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月15日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
アト・サイン(p3p001394)
観光客
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
終焉語り
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
酒々井 千歳(p3p006382)
行く先知らず
モルセラ・スペアミント(p3p006690)
特異運命座標

リプレイ

「夜明けだ」
 空の白みが広がる頃。閉じられた、外へ続く砦の門前に、彼らは揃っていた。
 40人程、群れと言えない軍勢と、それから。
「今までここで頑張ってきた皆の努力、絶対、無駄にはしないからね!」
 両刃の巨剣を背負う、『命の重さを知る小さき勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。
「……正面たっての戦闘なんて苦手なんだけどなぁ」
 諦めたように笑う、『観光客』アト・サイン(p3p001394)。
「ま、八人揃って正面衝突なんて、初めての経験で面白いよ?」
 うって変わって楽しげに笑うのが『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)だ。
「くくっ、ふふふ……あぁ、すまない。皆の輝きがあまりに眩しくてね、見蕩れてしまっていた」
 人の胸に輝きを視る『応竜』華懿戸 竜祢(p3p006197)は微笑みを浮かべて。
「信用には働きで見せるとしようか。そのために、あなた方の力はどうしても必要ですから、そこは頼りにさせてもらいます」
 腰に下げた二振りの刀に腕を乗せた、自然体に構える『行く先知らず』酒々井 千歳(p3p006382)。
「砂蠍、ね。護国の兵も、彼らが守り抜いてきた街も珠玉よ。何者も、蝕ませたりしない」
 魔術書を小脇に抱え、決意を新たにする『特異運命座標』モルセラ・スペアミント(p3p006690)。
「地上の光も嫌いではないが、この国に歓迎出来ない輝きが多いようだ。この第二の母国、騎士の誇りに懸けて……!」
 力強い盾と剣の男は『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)。
「兵力の差は歴然、押し潰し楽に勝てる。敵兵はそう思い込んでいるでしょう。しかしだからこそ、指揮系統中枢を狙う」
 と。前へ踏み出した『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は振り返る。
 仲間が、兵が、その顔を見た。
「ーーさあ、レガド・イルシオンの意地、示しに参りましょう」
「開門……!」
 軋む音を立てて、両開きから漏れ出す黎明の太陽をその身に受ける。
 並び立つイレギュラーズとその後ろに40人の兵士を照らし、そうして始まる。
「全員、私達に続け!」
「オオオオオオオ!!」
 声を挙げ、倍以上の戦力を有する敵軍へと。
 彼らは突撃した。


 陽光の到来と共に迫るその姿を、砂蠍の軍勢は見ていた。
 矢尻を思わせる隊列で、勇ましさを示す雄叫びを上げながらの突撃だ。
「っ、囲め! どうせ悪あがきだ!」
 それに対して、周りから包み込み、数の差で押し潰す動きを取る。
「皆さん、お願いいたします!」
 しかしそれは散会するという事。一点突破を狙う幻想軍として都合が良い。
 だから、衝突する。
「私達が必ず成し遂げて見せます」
 踏み鳴らす地響きの中、モルセラの凛と響く声が先端を開く幻想軍に戦意を奮い立たせ、リースリットの示す声が士気を上げる。
「ーー御武運を!」
 そうして押し広げた人の道、幻想軍が踏み堪えたその真ん中を、イレギュラーズは駆け抜けた。
 塞がる道はそのまま軍が壁となり、圧倒的な戦力差のまま混戦となって。
「行くよ」
「迎え撃つ」
 イレギュラーズが侵入する、簡易拠点の中。指揮を任された八人との相対が始まる。
 動きとしてはほぼ同時、両者がまずするのは隊列の確定だ。
 前に出るもの、下がるもの。それぞれの役割として適切な立ち位置の選択をする。
 動きの初動を得るのはバラバラで、
「噂に聞くイレギュラーズか、随分ちんちくりんな編制だな」
 敵側、前列。接近をしながら発した一人の言葉は挑発だ。その狙いは、注意を引いて攻撃を絞らせる事だろう。
「言ってくれる。我が剣の錆となり、幻想に害為した罪を悔い改めるがいい!」
 だがそれならこちらとしても狙い通り。火力を集中させ、確実に一つずつ削ぎ落とす。最初からそういう作戦だ、と、反応が早く、敵の対象内だったリゲルが構えた。
 ……距離は。
 敵が詰めてくる動きに、こちらは迎える形で、すでに近い。ならば、
「斬る!」
 手にした武器は軽く、鋭い刃だ。迫る敵に合わせてそれを振り下ろす。
「やってみろ」
 ぶつかり打ち鳴らすのは、甲高い金属音。振り上げる剣でリゲルの一撃を受けた敵は、拮抗する力にニヤリと笑みを浮かべる。
「ーー!」
 それは、したりの顔だ。
 前に引き寄せたリゲルを、後ろの仲間が放つ魔法で一気に叩く。そういう、作戦を上手く運んだ笑み。
 結果、三発の攻撃をリゲルは受ける事になる。
「くっ、これは……」
 それは炎。空間を揺らめきながら走る熱源だ。咄嗟に構えた大盾に直撃し、余波と共に肌を焦がす。更にそこへ、追撃をかけるべく別の戦士が行く。
「ああ、もう!」
 姿勢を低く、構える盾を迂回して迫るその間に、悪態にも似た声を出してアトが割り込んだ。片手で握る短い柄の剣を握り、
「本来の僕は斥候兼観光客だってのにーー」
 鋭く、切っ先を点として突き出した。狙いは敵の首、頸動脈だ。
「ならば下がれ、観光者風情が」
 戦士はそれを、自分の刃で滑らせて逸らし、近づいたアトの体を思いきり蹴って吹き飛ばす。だが。
「だがねぇ、舐めてもらっちゃあ困る」
 着地と同時、片手を着いて体に制動を加え、反動で屈伸する足で思いきり地面を蹴って行く。
 間隙なく再度の剣が狙うのは、首狙いを防いだ時に浮かした腕の下。
 腋の部分だ。
「僕の剣。これは絶対に下手を打たない、故に」
 斬り付ける。開いた肌の間から、血液は脈打ちと共に吹き出した。
「お前が打った下手は、絶対に逃さないんだよ!」
「チッ……貴様みたいなのが、観光客でたまるか」
「うん、それには僕も同感だけれど」
「!」
 頷く声は上からだ。当然アトではないし、リゲルでもない。吹き出す空気の射出音と共に言うそいつは、
「とりあえずーー沈めッ!」
 背負ったジェットパックで飛ぶルチアーノだ。真上から二人の戦士に向けての一喝は空気を圧して、真下に重く叩き付ける衝撃を与えた。
「おっ、とと」
 その瞬間に、ジェットパックの中身が尽きる。推力を失った体は自然、重力に引かれて落ちるしかない。そんな彼の着地はアトとリゲルの間で、その降り立った硬直を、後衛に位置した戦士の一人が狙う。
「これは……!」
 使ったのは、神秘を起こす術式。掲げた短杖が空を指し、三人の頭上に冷気を巻き起こす。
「破壊のルーンか!」
 そうして降るのは大粒の雹だ。弾丸にも似た威力のそれが、三人を狙って撃ち込まれる。盾を持つリゲルと障壁を広げるルチアーノはそれを凌ぎ、アトは腕をクロスさせて急所の防御だけを実行する。
 そして、それが収まり出す頃合いで、一歩。
「櫻火真陰流が一刀、酒々井千歳」
 踏み込み、前へ体を蹴り出して千歳が行く。二振りの刀は既に両手が握り、狙うのはアトが斬り傷を刻み込んだ敵だ。
「最初から飛ばして行くよ……!」
 両腕を大きく上に反らして肩に添え、軸足で大地を踏み締めて、二閃。振り下ろしの刃が銀の軌跡を描いて斬ったのは、敵の両肩だ。
「妖怪だとか、良く解らない生物が相手じゃなくて助かるよ」
 ズルリ、と。長い刀身が斬った片側の腕が落ちる。それに合わせて男は膝を折り、体を崩れさせ、
「首に両腕とそれから両足。斬り飛ばす箇所が分かりやすいーーッ」
 その背後、死角を利用して迫る敵がいた。思いきり飛び込み、引き摺る様な鈍重さを見せる大槌を横薙ぎに振り抜く戦士だ。
 避けられない。
「ぐ、ぅ……」
 自然、受けるしかない千歳は、腕を使ってそれを食らう。ミシリと軋む骨の音を感じ、衝撃で下がる体を足が地面を削って制止。痛みの余韻に体勢は乱れるが、それより。
「仕留め損ねた……」
 その事が口惜しい。
「大丈夫」
 だが、それを、ルアナが言う。大丈夫だと。
 だって、
「ルアナだよ、悪いけどこの砦は落とせない。だって」
 ルアナ達が来たのだから。そう言って、彼女は走った。向かうのは、わざと倒れて千歳への一撃を成功させた、隻腕となった男の所。
 行く。
 数として五分、実力として、バラつきがある分イレギュラーズが若干不利と見える。だからここで、敵を一人減らせば、流れは方向を変えるだろう。
 だから、行く。
 千歳を迂回し、大槌の戦士から距離を取りながら対象を倒すべく迫った。
「させぬぅ!」
 行く横合い、ルアナの進路上に突撃槍を構えた戦士が進んでいた。そのまま突っ込めば、彼女の横っ腹に風穴を開けることになる。それは妨害として最適な動きだろう。
「!」
 だが、ルアナは構わない。走る速度は変えず、ただ標的を目指して進む。
「やれやれ、文字通り横やりとは。お前の輝きも濁ると言うものだぞ」
「なっ」
 なぜなら、その動きを食い止める者がいるからだ。
 本来の予定では、遠距離スキルを持つ相手を抑える役割だった竜祢。動き出すのが一番遅かった為出遅れ、しかし結果として、一対一を作り出す目的はある意味、最良のタイミングで達成された。
「だがその輝きもまた愛おしい……が、残念ながらそれに加担出来ないしするつもりもない、ゆえに」
 くくっ。
 喉を鳴らして笑いの声を作り、肉薄した竜祢は拳を握って、思い切り振りかぶってから槍兵をぶん殴った。
 一撃。横顔へ打ち込まれた拳が敵の動きを止める。が、同時に竜祢の腹にも槍が刺し込まれた。
「くくっ、ゲホッ……行くといい」
 笑いと血を吐きながら、二人の横をルアナが通る。両手に握る剣を振り上げ、利き足で踏み込んで跳躍。一気に距離を詰め、隻腕の敵へそれを振り下ろす。
「はあああっ!」
 受ける様に掲げた腕をひしゃげさせて斬り、その勢いのまま脳天から股へ抜けさせた刃が、敵を両断した。


 8対7の状況を作り出したイレギュラーズに、流れは傾いていく。だが負った傷も決して浅くはない。
 特に、リゲルの体には炎が燻り、雹に打たれた身体は痛む。高い耐久力が無ければ危険だっただろう。そして、防御の点で少し心許ないアトと竜祢も、長丁場になれば不利は免れない。
 だから、リースリットは前に出た。
「一気に討ち取りましょう」
 鞘から引き抜くクリスタルのレイピアを、刀身を水平に腕を引く。切っ先が狙うのは、リゲルの前にいる敵だ。
「……ええ」
 チラリと視界の端で仲間と敵の動きを認め、一人頷く。ギュッと柄を握る手に力を込め、瞬間、刀身を緋色が染める。
「行きましょう!」
 そうして、レイピアを繰り出すより早く、燃え盛る炎の様な奔流が敵の眼前へ広がった。
「なっ」
 気を取られた瞬間、斜め下へと身体を身体を落としたリースリットの突きが敵を連続で刺し、
「燃えろ……!」
 怯む隙を狙ったアトが、本当の炎をそこにぶちこんだ。空気を、肌を、喉を焼いた火は、断末魔すら上げさせず敵を炭へ変えた。
「危ない!」
 しかし、攻撃後の隙もある。
「もう遅い、狙えぇ!」
 敵の、後列に位置した四人が同時行動を成したのだ。負傷と、防御の少しの甘さ。そこを狙い、アトへ術式の光が四つ重なって飛来した。
「つぅ……、くっ。だから、正面きっては嫌なんだ……!」
 痛みに意識が吹き飛びそうになる。いや、事実、一瞬目の前がブラックアウトする感覚を彼は味わった。それを、パンドラで無理矢理引き繋いだだけだ。
「しぶとい男じゃ、これで落ちろ!」
 そこに、大槌の一撃が迫る。
「それは」
「こっちの台詞だ」
 だが槌が打ったのは壁だ。いや、壁の様に堅固なリゲルの盾だ。
 防がれた。そう気付いた時にはもう、男は千歳のニ刀に切り裂かれ、グラリと傾いた身体は倒れる前に、リゲルの剣が縦に割いた。
「くくっ、やはり、彼らの輝きの方が強いね」
 撃破を感じ、竜祢が笑う。しかし身体は血塗れで、槍兵との一騎討ちは相当の負荷だと見える。
「無理はしないでほしいわ」
 貫かれ、肌に空いた穴を、モルセラの癒しが塞ぐ。一度で足りないから、もう一度。
「……決してしまいましょう」
 モルセラは思う。流れを引き寄せた今なら押しきれるはずですね、と。その為に、ここで竜祢という抑えを失うわけにはいかない。
「残存、残り六人ですか……」
 有利に事を進められていると、そう思う。そして残存兵、それらはほぼ後衛での塊だ。
「そっちがルーンなら、こっちはこれだよ」
 先程の広範囲の雹は効いた。そのお返しとばかりにルチアーノが投げたのは、火薬を積んだミニ走車。地面に接地したと同時にタイヤを回し、一直線に敵後衛へ辿り着き、炸裂する。
「どかん、てねーー斬り込むよ!」
「任せて!」
 そしてその爆煙の中へと、ルアナはまた走って行った。


 攻撃を集中させて各個撃破。そういう作戦を実行したイレギュラーズの狙いは成功した。リースリットとモルセラの持つ、支援能力が活きた部分も大きい。
 無ければ直撃や大ダメージの可能性もあったからだ。
 ともあれ、後衛部へと斬り込んだ事で敵の連携を乱し、負傷はあるものの戦闘不能に追い込まれる事も無く、彼らは指揮系統を担う八人を撃破した。
「敵中枢、全滅!」
 だが。
「まだ、終わりじゃない」
 モルセラの宣言で、中枢が全滅したのは雑兵の知る所であるはずだが、戦場での争いは続く。だから、この戦争はまだ終わっていない。
「敵の核となる者達はローレットが討ち果たした!」
「まだやるっていうなら、ルアナ達が相手になるよ!」
 反撃だ。
 地面に横たわる、幻想軍の十数人の亡骸が目につく。
「正念場というヤツだ。さぁ、尽きてなお輝くお前達の光を見せてくれ!」
 それらへの想いは思考から弾いて、八人は突撃する。ダメージの大きい竜祢も、身体に鞭打って行く。
 両の手で握る純白の巨剣は、薙いで行く血に赤く染まる。しかし、死ぬ気での反撃も当然あって、それらは囲む様に竜祢へと剣を突き立てるものだった。
「ぐ、ぁーー」
「この……!」
 緋色の閃が、群がるそれらを駆逐する。リースリットの放つ魔術と剣閃だ。
「あと少し、もう少しです! この戦いを、私達の勝利を!」
「一気に敵兵を薙いで行きます! さぁ、ラストスパートだ!」
 叫びに、辺りから鬨の声が上がる。勝ちを得る、雄叫びの声だ。
 リゲルが大盾を敵に叩きつけ、剣で斬り回し進み、瀬戸際の幻想軍を助けた事でその声は更に上がる。
「大丈夫、もう、大丈夫です」
 助けとなるのは直接的なものばかりではない。モルセラが混戦の場に戻ることで、有効範囲内の幻想兵士の能力は少し底上げされる。瀕死の兵には回復を振り撒き、損害の軽微に努めたのだ。
「そこを、退けーーッ!」
 深く、斬り込むルチアーノの一喝が、纏めて有象無象を吹き飛ばす。そこに、アトが追加で炎をぶちこんで炎上させた。
「うん、観光客っていうのは、こういう姑息な手段でこそ光るものだよね」
「え、いや、観光客ってそういうのじゃないと思う……」
「お話は終わってからにしようね?」
 ルアナは二人のやり取りに突っ込みつつ、吹き飛ぶ兵士へ追撃の一刀を叩き込んで更に行く。
「真っ向よりは良いと思うけど、って危なっ」
 独りごち、迫ってきた敵を斬り伏せながら、アトもまた殲滅へと戻る。
 朝焼けから、約半日。太陽が真上に辿り着く少し前の時間。
 被害死者およそ20数名、撃破数およそ108人。
 南部戦線の一角での戦績は、幻想国の勝利で幕を閉じた。

成否

成功

MVP

リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
終焉語り

状態異常

なし

あとがき

ユズキです。
戦争お疲れ様でした。
エスプリの効果が凄く上手く判定に食い込んで来て驚いたのは内緒です。

それでは、また別の依頼で。

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